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■2024年舞台ベスト10

*当ブログに書かれた作品から最良の10本を選出. 並びは上演日順. 映像(映画・配信)は除く. ■ 田園に死す   演出:天野天街,劇団:流山児★事務所 ■ デイダミーア   演出:中村蓉,指揮:鈴木秀美,歌団:二期会 ■ 初級革命講座・飛龍伝   演出:マキノノゾミ,劇場:スズナリ ■ メディスン Medicine   演出:白井晃,劇場:世田谷パブリックシアター ■ 饗宴 SYMPOSION   演出:橋本ロマンス,劇場:世田谷パブリックシアター ■ 朝日のような夕日をつれて2024   演出:鴻上尚史,劇場:紀伊国屋ホール ■ リビングルームのメタモルフォーシス   演出:岡田利規,劇場:東京芸術劇場 ■ さようなら、シュルツ先生   演出:松本修,劇団:MODE ■ 品川猿の告白   演出:マシュー・レントン,劇団:ヴァニシング・ポイント ■ 象   演出:EMMA(旧・富永純子),劇団:SPAC *今年の舞台映像は,「 2024年舞台映像ベスト10 」. *今年の能楽は,「 2024年能楽ベスト3 」. *今年の美術展は,「 2024年美術展ベスト10 」.

■2024年舞台映像ベスト10

*映像(映画・配信など)で観た舞台公演から最良の10本を選択. 並びは観賞日順. ■ 唐茄子屋、不思議国之若旦那   演出:宮藤官九郎,劇場:平成中村座 ■ アマゾンのフロレンシア   演出:メアリー・ジマーマン,指揮:ヤニック・ネゼ=セガン,劇場:メトロポリタン歌劇場 ■ ロメオとジュリエット   演出:トマ・ジョリ,指揮:カルロ・リッツィ,劇場:パリ・オペラ座バスチーユ ■ かもめ   演出:レオニード・アニシモフ,劇団:東京ノーヴエイ・アート ■ ワーニャ   演出::サム・イェーツ,劇団:ロイヤル・ナショナル・シアター ■ ザ・モーティヴ&ザ・キュー   演出:サム・メンデス,劇団:ロイヤル・ナショナル・シアター ■ ナイ、国民保健サービスの父   演出:ルーファス・ノリス,劇団:ロイヤル・ナショナル・シアター ■ 蛮幽鬼   演出:いのうえひでのり,出演:劇団☆新感線 ■ 魔弾の射手   演出:フィリップ・シュテルツル,指揮:エンリケ・マッツォーラ,主催:ブレゲンツ音楽祭2024 ■ グラウンデッド、翼を折られたパイロット     演出:マイケル・メイヤー,指揮:ヤニック・ネゼ=セガン,劇場:メトロポリタン歌劇場 *今年の舞台は,「 2024年舞台ベスト10 」. *今年の能楽は,「 2024年能楽ベスト3 」. *今年の美術展は,「 2024年美術展ベスト10 」.

■2024年能楽堂ベスト3

*当ブログに書かれた能楽から最良の3本を選出. 並びは上演日順. 狂言は除く. ■ 春日龍神  (かすがりゅうじん)   観世流,出演:山階彌右衛門,林本大,武田祥照ほか ■ 放下僧  (ほうかぞう)   喜多流,出演:大村定,大島輝久,則久英志ほか ■ 鵺  (ぬえ)   金春流,出演:高橋忍,舘田善博,善竹大二郎ほか *今年の舞台は,「 2024年舞台ベスト10 」. *今年の舞台映像は,「 2024年舞台映像ベスト10 」. *今年の美術展は,「 2024年美術展ベスト10 」.

■能楽堂十二月「川上」「正尊」

*国立能楽堂十二月特別公演の□2舞台を観る. □狂言・和泉流・川上■出演:野村万作,野村萬斎 □能・観世流・正尊(起請文・翔入)■出演:観世清和,観世三郎太,福王茂十郎ほか ■国立能楽堂,2024.12.25 ■「川上」は・・、盲目の夫が地蔵菩薩に快癒を祈願するが、それが実り目がみえるようになる。 と同時に菩薩は「妻とは悪縁のため離縁しろ」とのお告げをした。 でも離縁をせず夫は再び盲目になる生活を選ぶ。 奇跡を捨て過去からの日常を優先する話である。 奥が深い作品だ。 「正尊(しょうぞん)」は出演者が多い。 地謡と囃子を含めれば30人になる。 刺客である土佐坊正尊が義経の前で起請文を読み上げる場面には圧倒された。 声に役者の心身が充満している。 後に続く静御前の中ノ舞、義経と正尊の両軍の戦いも見応えがあった。 今年最後の能楽堂に相応しい舞台だった。 *劇場、 https://www.ntj.jac.go.jp/schedule/nou/2024/12144/

■世界の果てからこんにちはⅢ

■演出:鈴木忠志,出演:平野雄一郎,石川治雄,飯塚祐樹ほか,劇団:SCOT ■吉祥寺シアター,2024.12.13-22 ■・・舞台奥に狩野派風の襖が見え、薄暗い床に縞模様の照明がおちている。 そこへ車椅子の役者達が次々と入退場し日本と日本人を憂慮する科白を吐いていく。 結婚観や明治維新、組織論などが語られる。 途中、ダンサー6人の力強い踊りが2度入り、美空ひばりで幕を下ろす・・。 昭和時代の雰囲気が充満しています。 社会性ある内容のため感情を抑えたシンプルな流れの舞台でした。 演出家のアフタートークを聴く。 ・・「利賀村の人口は400人に減少している」「南瓜を2000個作った」「トレーニングに32か国150人が参加した、但し日本人は参加してくれない」「利賀の劇場は我々が管理しているので自由に使える、でも東京ではこれが出来ない」「役者を育てるのには時間がかかる」「同志あっての劇団である」。 「「日本について考える」をこの舞台のテーマにした」「西郷隆盛を考えてみた」「日本は地方と東京の格差が激しい」「ダンスには3か月を費やした」「吉祥寺公演は今回が最期かも」「全員を出演させた」等々を話す・・。 将来の利賀劇場をどうする?どうなる? 演出家にとってこれが悩みのようです。 事業継続は全ての分野で現代の課題になっている。 特に利賀は舞台思想を引き継ぐとなると難易が高い。 ところで、客席を見回すと若返っていますね。 中年世代が増えている。 団塊世代が劇場から急速に遠退いているからでしょう。 1960年代後半から舞台を観始めた彼らも今や後期高齢に入った。 よく行く能楽堂の客層も同じ傾向です。 *CoRich、 https://stage.corich.jp/stage/349994 *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、鈴木忠志 ・・ 検索結果は27舞台 .

■グラウンデッド、翼を折られたパイロット

■作曲:ジャニーン・テソーリ,演出:マイケル・メイヤー,指揮:ヤニック・ネゼ=セガン,出演:エミリー・ダンジェロ,ベン・ブリス,カイル・ミラー他,演奏:MET管弦楽団 ■新宿ピカデリー,2024.12.13-19(メトロポリタン歌劇場,2024.10.19収録) ■ジャニーン・テソーリは歌手エミリー・ダンジェロの為にこの曲を書いたと言っている。 はたして主人公ジェスであるエミリーは完璧に嵌まっていましたね。 彼女の安定感ある声に痺れました。 しかもジャニーンは演劇作曲家からスタートしている。 その為かストーリーもリアルで申し分ない。 ・・ジェスは空軍パイロットで「トップガン」ならトム・クルーズでしょう。 彼女は牧場主と出会い女子を出産するが、空が忘れられない。 再び空軍の扉をたたくが、職場はドローン操縦部署へ。 しかし精神的に追い詰められ遂には職務を放棄し軍法裁判にかけられ有罪になってしまう・・。 上下に二分割した舞台構造です。 上が空=空軍=職場、下が地=牧場=家庭と言ってよい。 上では激しい照明や映像が観る者を戦場へ連れていく。 科白も生々しい。 戦闘がモロに出ている場面は賛否もあるはず。 下では家庭生活が描かれる。 ジェスは上下を行き来する。 シンプルかつ機能的で良くできた舞台です。 彼女が遠隔操縦するドローンはリーパーという機種で全長20m以上ありパイロットとセンサー員の2名で構成されている。 米国ラスベガスにある空軍基地で操作をしながら中東戦地の上空  1.5 万mを飛行しながら標的に向かってミサイルを発射する。 現代の戦争の一面が現れていました。 まるでゲームのように進んでいく。 登場するセンサー員は優秀なゲームプレーヤーのため空軍に引き抜かれたらしい。 しかしジェフは画面の中に子供を見つけてミサイルを発射できなかった。 彼女はゲームのような画像だけの世界から逃げたかった。 出産や子育の経験がある彼女こそ肉体が疼く古典的な戦争マシーンなのかもしれない。 「・・私は戦争!」。 ・・! *METライブビューイング2024シーズン作品 *MET、 https://www.shochiku.co.jp/met/program/6007/

■イエス、たぶん

■作:マルグリット・デュラス,演出:長野和文,出演:稲川実加,芹澤あい,深沢幸弘:劇団:池の下 ■劇場MOMO,2024.12.13-15 ■マルグリット・デュラスの舞台を観るのは13年ぶりです。 忘れていた彼女の作品を思い返す。 1968年の作品らしい。 たぶん脂が乗りきっていた時期でしょう。 核戦争後の世界を描いている。 このテーマは映画や舞台で今なら幾らでも見ることができる。 先見の明があります。 ・・舞台は記憶を失った二人の女と生き残った兵士の3人が登場する。 兵士は心身喪失状態です。 断片的な言葉から過去と現在を微かに知ることができる。 それは核戦争の記憶です。 女は、そこから前進するしかない。 あとからくる子供たちの為に・・。 「二十四時間の情事」で被爆地に出会い、「かくも長き不在」の記憶喪失を経て、そして五月革命の中で「・・もうロマンは読めなくなった。 バルザックやプルーストのように書くことは出来ない」とデュラスは言う。 「イエス、たぶん」はその先にあるのでしょうか? *池の下第30回公演海外作品シリーズ *CoRich、 https://stage.corich.jp/stage/343757 *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、長野和文 ・・ 検索結果は2舞台 .

■能楽堂十二月「察化」「通小町」

*国立能楽堂十二月普及公演の□2舞台を観る. □狂言・大蔵流・察化■出演:松本薫,島田洋海,綱谷正美 □能・金剛流・通小町■出演:豊嶋彌左衞門,豊嶋幸洋,飯冨雅介ほか ■国立能楽堂,2024.12.14 ■プレトーク「恋愛妄執物の源流」(小田幸子解説)を聴く。 ・・「「通小町」は唱導師が書いて金春権守が演じ観阿弥が改作」「「百夜通い」と「あなめ」の二つの説話で構成」「前シテは「若女」「老婆」の二つあるが今日は前者」「現代的で珍しい対立対話」などなど・・。 詞章を読んだときの疑問「酒を飲まないことで救われるのが唐突すぎる」の答えとして「些細なことでも成仏できるのが仏教である」。 なるほど。 「通小町」は役者・地謡・囃子の総合力が発揮されていた。 でもシテの登場で現実に戻されてしまった。 からだの衰えがもろに出ていたからだ。 シテ役豊嶋彌左衞門は1年前の「雪」に登場していたがそこまでは感じられなかった。 80歳代が衰える速度は若い時の10倍以上に当たる。 これではシテ面「痩男」とツレ面「小面」の年齢差を元通りにできない。 「察化(さっか)」は太郎冠者の口真似が見どころである。 徹底した真似が究極に至り哲学的にみえてしまった。 *劇場、 https://www.ntj.jac.go.jp/schedule/nou/2024/12123/

■象

■作:別役実,演出:EMMA(旧・富永純子),出演:阿部一徳,牧山祐大,榊原有美ほか,劇団SPAC ■静岡芸術劇場,2024.12.7-15 ■先日の「 正三角関係 」に書いたが今年は原爆関連の舞台が多い。 今回も主人公が被爆者です。 不条理劇とあったがシュールも詰まっていた。 これが冴えていました。 別役実の舞台が面白いと思ったことは少ない。 科白や動き、その余白が計算され尽くしていないことが多いからです。 今日の舞台はこれらをクリアしていましたね。 広い舞台のため役者の入退場でリズムが乱れたが、それ以上に若さ溢れる別役舞台を十分に楽しめた。 背中がケロイドで覆われた主人公の新興宗教に嵌まったかのようなギラギラ感が印象的でした。 戦後の過剰な人間関係を持つ主人公の体に、被爆者への差別が徐々に沁み込んでいく。 そしてジメッとした薄暗い病院へ看護婦や妻がシュールを運んでくる。 患者たちの遣り切れなさが漏れてきます。 シュールは不条理の材料でしょう。 チラシ「被爆者の悲劇は不条理を求める」(大沢真幸)を帰りの新幹線で読む。 「・・悲劇は神の定めたこと。 ・・だから(観客は)主人公に英雄としての尊厳や崇高を感じる」。 被爆は神が与えた使命なのか? 現実の悲劇を受け止めるのに不条理劇がある、と言う。 悲劇と不条理劇の関係に納得です。 この作品は深津篤史演出で観ていました。 別役実の毒気にあてられて深津特有のシュール感を出せなかったが、近未来的に描いたことで不条理劇にまとめ上げたと記憶しています。 *SPAC2024シーズン作品 *劇場、 https://spac.or.jp/au2024-sp2025/elephant

■正三角関係

■作・演出:野田秀樹,出演:松本潤,長澤まさみ,永山瑛太ほか,劇団野田地図 ■配信,2024.12.2-(東京芸術劇場・プレイハウス,2024.7.11-8.25収録) ■配信を見つけたので自宅パソコンで観る。 「一度視聴を開始すると4時間で視聴可能期間が終了します」。 この制約があったが食事等で時間を使い果たし途中で終了、再度チケットを購入するはめになってしまった。 特に野田秀樹の舞台は一気に観ないといけない。 ついウッカリです。 いつもながらのテンポ有る役者の言葉と演技そして場面展開が続きます。 この心地よさを充分に楽しみました。 「カラマーゾフの兄弟」をモチーフにしているようだが気にしなくてもいい?でしょう。 時代は第二次大戦末期、場所は長崎の地ですか? 三兄弟が花火師、核物理学者、聖職者という職業は意味深ですね。 原子爆弾製造を巡り物語の結末が予想される。 舞台の全てが父殺しの被告長男の裁判中継で成り立っていること、父と長男の愛人グルーシェンカを聖職者である三男が二役で演ずること、次男が造る原爆の起爆剤に長男花火師の技を利用すること、ここに構造の面白さが見えます。 「フェイクスピア」では日航機123便墜落だったが、今回は長崎への原爆投下で幕が下りる。 再び「カラマーゾフの兄弟」との関係を考えたがよく分からなかった。 三男の相反する二役が邪魔をしたから? でも、これこそ原作への解釈かもしれない。 そして日航機も原爆も、「星の王子様」も花火師も、空を見上げることから物語が始まりそして終わる。 これは確かなようです。 この舞台を含め「オッペンハイマー」「ドクター・アトミック」など、今年は原爆関連が多かった。 *NODAMAP第27回公演 *CoRich、 https://stage.corich.jp/stage/320034 *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、野田秀樹 ・・ 検索結果は14舞台 . *「白衛軍」(上村聡史演出)チケットを購入したが体調不良で観に行くことができなかった、残念!

■能楽堂十二月「茶子味梅」「鳥追」

*国立能楽堂十二月定例公演の□2舞台を観る. □狂言・和泉流・茶子味梅■出演:小笠原由祠,野村拳之介,野村万禄ほか □能・宝生流・鳥追■出演:辰巳満次郎,内藤端駿,福王茂十郎ほか ■国立能楽堂,2024.12.4 ■「茶子味梅(ちゃさんばい)」は九州箱崎(福岡市)に住む夫婦の揉め事を舞台にしている。 唐人の夫が故郷を懐かしむ。 これを妻は気に食わない。 異国夫婦の面白さが出ている。 「鳥追(とりおい)」は薩摩の領主が長留守の間に彼の妻子を家来が虐める話である。 鳥追いとは稲に群がる鳥を追い払う作業を指す。 賤しい仕事だったらしい。 領主の妻子がこれをさせられるが、そこに旦那が帰ってくる・・。 「時代を越えた人々の普遍的感情と薩摩風景が一体化した作品」と解説にある。 その通りの内容で清々しい舞台だ。 また登場人物の動き、囃子や地謡の調子など全体構造がしっかりとまとまっている。 これも見事だ。 心が洗われた。 シテ面は「曲見(しゃくみ)」(河内作)。 *劇場、 https://www.ntj.jac.go.jp/schedule/nou/2024/12121/

■品川猿の告白

■原作:村上春樹,演出:マシュー・レントン,出演:那須凛,サンディ・グライアソン,伊達暁ほか,劇団:ヴァニシング・ポイント ■神奈川芸術劇場・大スタジオ,2024.11.28-12.8 ■原作は読んでいない。 これが良かった。 謎を持つ展開にドキドキしました。 謎とは名前の不思議です。 観ながら「ゲド戦記」が脳裏に浮かぶ。 「海辺のカフカ」の舞台も同様だった。 知能を持った猿が愛する人間女性を獲得する為に彼女らの名前を盗む。 盗まれた女性たちは自分の名前を忘れてしまう。 猿にとってはプラトニックラブですが、一つの愛の形でしょう。 村上春樹の舞台はいつも凝っている。 下手をすると解説になってしまうからです。 細かい詰めが必要です。 それを乗り越えた今日の舞台は素晴らしかった。 スタッフが2年半の歳月をかけただけはあります。 人物や道具の移動は無理無駄斑がない。 謎解きカウンセラーも出しゃばらない。 猿の演技も楽しい、特に尻尾がいい。 温泉宿も雰囲気が伝わってくる。 下水道の澱んだ空気に響くブルックナーの異様さもです。 二か国語も気にならなかった。 一番は背景にスモッグを利用していることでしょう。 人物たちが異界(煙の中)からやってきて異界(煙の中)へ帰っていく。 これこそ舞台の醍醐味です。 終幕、みずきと母の関係は衝撃的でした。 村上春樹舞台のクライマクスは文学的です。 脳味噌が先ずは優先する。 身体は後回しだが、これも悪くはない。 *劇場、 https://www.kaat.jp/d/shinagawa_monkey

■ウィリアム・テル

■原作:フリードリヒ・シラー,作曲:ジョアキーノ・ロッシーニ,指揮:大野和士,演出:ヤニス・コッコス,出演:ゲジム・ミシュケタ,ルネ・バルベラ,オルガ・ペレチャッコ他,演奏:東京フィルハーモニー交響楽団 ■新国立劇場・オペラパレス,2024.11.20-30 ■「日本での原語上演は初めて・・」とある。 客席は略満席かな? 上演4時間半は長い。 お馴染みの序曲も生演奏で聴くのは初めて。 スイスの山々を木霊するホルン?の響きが気持ち良い。 でも1幕は方向性が無く混乱してしまった。 2幕はそれが見えてきたわね。 皇女マティルドが登場しないと始まらない。 アルノルドとのデュオ、アルノルドとテルと仲間の三重唱でやっと目覚める。 つまり<身分違いの恋>と<スイス圧政からの解放>が平行していく作品ね。 ここまでは前者の方が圧倒的に面白い。 それはアルノルドのテノールが効いていたからよ。 でも4幕迄で両者が互角になる。 観後感が盛り上がらないのは二兎を追ったためかしら? バリトンのテル、ソプラノのマティルドを含め招聘3人のタイムリーな声を聴けたのは嬉しい。 具体的な地方史や村人の生活風景を取り入れた物語と聞いている。 それが架空の時代と国に変換されてしまった。 第二次世界大戦中のレジスタンスのような農民、20世紀アバンギャルド的なダンス、現代の機動隊に近いオーストリア軍隊・・。 スイスを体験できる! と思っていたがその欠片も無い。 ちょっと残念ね。 演出家ヤニス・コッコスは「抑圧される者の歴史を扱いたい」と言っていた。 現代に繋がる演出を強く感じ、厚く熱い声の合唱団にもそれが表れていたのは確かだわ。 車椅子の客が多くなってきた。 オペラは特に高齢化が急速に進んでいるのが分かる。 千人近い若者を無料で劇場に招待するニュースにも驚かない。 *NNTTオペラ2024シーズン作品 *劇場、 https://www.nntt.jac.go.jp/enjoy/record/detail/37_028775.html *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、ヤニス・コッコス ・・ 検索結果は2舞台 .

■冥王星の使者

■作:高取英,脚本・演出:流山児祥,音楽:巻上公一,協力:天野天街,振付:池田遼,人形:山田俊彦,劇団:流山児★事務所 ■新宿スターフィールフド,2024.11.21-12.1 ■高橋和巳「邪宗門」に想を得た舞台らしい。 「アマテラスに奪われた地上の統治権を奪い返すべく国津神の復権を唱える宗教団体」の話です。 これに源頼朝の義経追放が加わる。 国家や宗教を相手にするので物語は暗く重たい。 「信仰とは何か? 救済なり。 救済とは何か? 死なり。 死とは何か? 安楽なり」と教団教義は吠える。  複雑な流れです。 スサノオウとアマテラスの争いが現代の世直し教団と国家権力の闘いに再現される。 現天皇は偽者である! 義経と頼朝の争いにも広がっていく。 北条政子にアマテラスが乗り移った! 傀儡(くぐつ)は敵か味方か? 時空は飛び回る。 昭和の匂いがする舞台です。 肉体の匂いと言ってよい。 そこに天野天街の振付も被さる。 これで舞台はリズムを持った。 追い詰められた教祖高橋はあたかも冥王星の使者のごとく民の平穏な暮らしを求めて幕が下りようとする、、民のみえない舞台ですが。 同時に縄に絡めとられた役者が身動きできずにフェードアウトしたのは闘争がこれからも続く予感がしました。 聖師の次女マキが小児麻痺を克服し継主としての将来を見据えるかのように。 奥深い背景を消化したとは思えないが勢いで舞台をまとめる巧さが出ていた。 加えて、物理的に小さな舞台を十分に熟していました。 *流山児★事務所創立40周年記念公演 *CoRich、 https://stage.corich.jp/stage/335210 *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、流山児祥 ・・ 検索結果は7舞台 .

■魔弾の射手

■作曲:C・M・ウェーバー,指揮:エンリケ・マッツォーラ,演出:フィリップ・シュテルツル,出演:マウロ・ペーター,ニコラ・ヒンブラント,カタリーナ・ルックガーバー他,演奏・合唱:ウィーン交響楽団,ブレゲンツ音楽祭合唱団,プラハ・フィルハーモニー合唱団 ■NHK・配信(オーストリア・ブレゲンツ・ボーデン湖上ステージ,2024.7.12-19収録) ■美術の凝り方が尋常でない。 遠くには大きな青白い月が懸かり、湖畔の丘に古汚い民家が点在し、教会の時計台が倒れかかっている。 湖中では大きな蛇が馬車がベッドが機械仕掛けで大げさに動き、骸骨が泳ぎ回る。 火も多用する。 起伏の激しい道や水の中をびしょ濡れになりながら歌手たちは歌い動き回る。 合唱団の衣装や仕草もブリューゲルの絵画から飛び出してきたような中世の農民や猟師そのものね。 そこに悪魔が進行役にように登場し物語を進めていくの。 現代にも繋がるストーリーには強く引き付けられる。 悪魔に多くを語らせたのが面白い。 隠者との勝敗が有耶無耶で幕が閉じるのも異様と言ってよい。 古さと新しさが混じりあった現代ドイツ語圏の宗教感覚が滲み出る。 歌手がマイクを付けていたので歌唱はとてもよく聴き取れたわよ。 主要歌手はびしょ濡れになってもブレない。 歌唱量が少ない作品でもあるけどね。 調べると湖上舞台は80年の歴史を持つらしい。 これだけの激しい内容をキャストやスタッフが難なく熟しているのがここからも理解できる。 おっ!と驚く楽しい舞台だった。 *ブレゲンツ音楽祭2024 *NHK、 https://www.nhk.jp/p/premium/ts/MRQZZMYKMW/episode/te/QGWJ1JX5GZ/

■能楽堂十一月「住吉」「空蝉」

*国立能楽堂十一月企画公演の□3舞台を観る. □箏組曲・空蝉■箏:萩岡松柯 □箏曲・住吉■箏:萩岡松韻,岸辺美千賀,三絃:鈴木厚一,笛:福原徹彦 □復曲能・空蝉■出演:大坪喜美雄,安田登,高野和憲ほか ■国立能楽堂,2024.11.23 ■箏組曲「空蝉(うつせみ)」は源氏物語「空蝉」「関屋」を基に六歌構成になっている。 物語に沿った歌詞で親しみ易い。 作曲は北島検校。 筝曲「住吉」は住吉大社への参詣を歌う。 作曲は山田検校。 筝の調べは空気が乾き引き締まる。 大陸風土を感じる。 そこに日本語の湿った発声が入り混じり独特な雰囲気が醸成されていく。 能楽の囃子も同じだろう。 復曲能「空蝉」は空蝉の霊を弔うシンプルな構成だ。 序の舞では久しぶりに恍惚感がやってきた。 シテの動きに雑音が無いからだ。 シテ面は「節木増」(満総作)。 鼻が少し大きく親しみを感じる。 でも源氏物語から想像する「空蝉」には似合わない。 *古典の日記念公演・特集源氏物語 *劇場、 https://www.ntj.jac.go.jp/schedule/nou/2024/11191/

■ガラスの動物園 ■ノイマイヤー、ライフ・フォー・ダンス

*以下の□2作品を観る. □ガラスの動物園 ■原作:テネシー・ウィリアムズ,振付:ジョン・ノイマイヤー,指揮,ルチアーノ・ディ・マルティーノ,出演:アリーナ・コジョルカ,アレッサンドロ・フローラ,パトリシア・フリッツァ他,舞団:ハンブルグ・バレエ団,演奏:ハンブルク交響楽団 ■NHK・配信(ハンブルク国立歌劇場,2024.5.28-29収録) ■ノイマイアー80歳で振り付けた作品です。 彼は17歳に原作を芝居で観ている。 感動したことでしょう。 私が初めて観たのは演劇集団円の舞台でした。 やはり痛く感動したのを今でも覚えています。 これでテネシー・ウィリアムズにのめり込んだ時期があった。 でもバレエは初めてです。 はたして不安が的中しましたね。 複雑な心理描写をバレエに乗せるのは至難の業、特にこの作品はです。 でも見応えはある、さすがノイマイアー。 それよりも過去の演劇がバレエを邪魔してしまった。 観ていなければ違った感想を持ったはずです。 □ノイマイヤー,ライフ・フォー・ダンス ■出演:ジョン・ノイマイヤー,ヘザー・ユルゲンセン,ジャクリーヌ・チュイルー他 ■NHK・配信(ドイツ,2024作) ■ハンブルク・バレエ団を今年退任するノイマイヤーのドキュメンタリー映画です。 「人間に寄り添う現代振付家」と彼は言われている。 それは「踊り手の感情や内容や意図が形を決める」振付をするからです。 「形が内容を決める」クラッシク・バレエと逆ですね。 しかも「クラッシクもミニマルも表現舞踊も何でも扱う物語作家」でもある。 彼は言葉を続ける。 「舞台で命の息吹を感じたい」「劇場で感動するのは自分(の一部)と再会するから」「私は踊る人を見たいのではなく人間をみたい」。 ノイマイヤーの人間主義が現れていますね。 *NHK、 https://www.nhk.jp/p/premium/ts/MRQZZMYKMW/blog/bl/p1EGmp948z/bp/pVWann5pvP/ *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、ジョン・ノイマイヤー ・・ 検索結果は4舞台 .

■テーバイ

■原作:ソポクレス「オイディプス王」「コロノスのオイディプス」「アンティゴネ」,演出:舟岩裕太,出演:植本純米,加藤理恵,今井明彦ほか ■新国立劇場・小劇場,2024.11.7-24 ■ソポクレスの3作を一つにまとめた舞台です。 「オイディプス王」はコンパクトにまとまっていて楽しく観ることができた。 神託が舞台の面白さを深めていますね。 次の「コロノスのオイディプス」は初めて観ます。 オイディプスの家族が前面に現れてくる。 家族の広がりは新鮮です。 今井明彦がオイディプスを見事に演じていたのが印象的でした。 「アンティゴネ」は<家族の物語>から<倫理と法律>へと舵を切る。 そこにはクレオンがいる。 彼は20世紀の独裁者のように描かれます。 クレオンを押し出し過ぎて<家族の物語>が薄まったように感じる。 でも、神託・家族・国家の三つが拮抗している三作を一つにすることでオイディプスの全体像を浮かび上がらせたのは確かです。 *劇場、 https://www.nntt.jac.go.jp/play/thebes/ *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、船岩裕太 ・・ 検索結果は2舞台 . *追記・・購入してあったプログラムを読む。 「・・船岩君はクレオンに注目するとのことだが、まさにこれは近代主義を理解せぬまま近代国家へと移行した私たちの近代、その再検討以外のなにものでもない」(「船岩裕太とリアリズム」(鐘下辰男著))。 クレオンの行動こそ現代日本で続いている近代なき国家と同じであることに納得します。 それと「死と生物学と演劇」(小林武彦著)を面白く読む。 「・・積極的に寿命を縮める働きのある遺伝子の存在に気が付く・・」。 これは現代に届く神託の声かもしれない。

■演劇島

■台本・演出・美術:佐藤信,振付・出演:竹屋啓子,出演:櫻間金記,龍昇,内沢雅彦ほか,劇団黒テント ■座高円寺,2024.11.8-12 ■ドラマリーディングに近い? 上演テキストは演出家が馴染んだ30作品から選んでいるようです。 その台詞をコラージュにして喋り演じる。 数分ごとに作品が入れ替わっていく。 このため集中力が必要です。 特に「金島書」「テンペスト」「地がわれらを圧迫して」を構成の柱にしているらしい。 テンペストしか知らないがコラージュのため気にならない。 しかし幾つもの物語断片が一つにまとまっていく流れは見え難い。 ゴダールの「映画史」を真似て「演劇史」だと演出家が言っていたが、どれだけ作品を観ているかが勝負になるのかもしれない。 よく知る「ゴドーを待ちながら」の場面でそう考えてしまった。 観る側に厳しい舞台ですね。 そのなかで能楽師櫻間金記とダンサー竹屋啓子の二人の絡み合いが面白い。 追放者役の櫻間は「私は世阿弥だった」「私はプロスペローだった」・・、後半になると「私は世阿弥ではなかった」「私はプロスペローではなかった」・・!? エアリエル役竹屋啓子も存在感ある塵になっている。 役者たちも皆熟れていて声も動きも整っている。 男女比は同じだが後期高齢者が目立つ客層です。 1970年代前後から黒テントを知っている者は皆この歳に入ったのですね。 この劇団は考えさせられる舞台が多い。 科白の裏に社会性が塗り込めてある。 今回もそうみえます。 ところで櫻間金記の科白「金島書」には字幕が必要です。 やはり聞き難い。 また作品の説明が映されたが、いま観客がそれを知っても舞台を分断するだけかもしれない。 *劇場、 https://za-koenji.jp/detail/index.php?id=3227 *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、佐藤信 ・・ 検索結果は7舞台 .

■能楽堂十一月「寝音曲」「蝉丸」

*国立能楽堂十一月普及公演の□2舞台を観る. □狂言・大蔵流・寝音曲■出演:大藏教義,大藏基誠 □能・観世流・蝉丸(替之型)■出演:上田拓司,上田公威,大日方寛ほか ■国立能楽堂,2024.11.9 ■「寝音曲(ねおんきょく)」。 謡の巧い太郎冠者は主人の前では謡いたくない。 毎回謡わせられるからだ。 しかし主人の膝枕の上でリズムに乗って気持ちよく謡ってしまう。 酒を呑む豪快な場面が楽しい。 プレトーク「蝉丸の謎・蝉丸の能」(佐伯真一解説)を聴く。 「百人一首の坊主めくりでは蝉丸は坊主か否か?」から始まり「世の中はとてもかくても同じこと宮も藁屋も果てし無ければ」を百人首と比較する。 そして「後撰和歌集」「新古今和歌集」「今昔物語」「無名抄」等々から「最初は盲目ではなかった」「途中から帝の皇子になった」など蝉丸説話の成り立ちを追う。 「蝉丸(せみまる)」は舞踏的な作品である。 蝉丸が登場する時はいつもドキドキする。 今日はそれほどでもなかった。 輿舁(こしかき)が蝉丸にピタリとへばり付いていなかったからである。 歩行姿も大事だ。 席も良くなかった。 クリ・サシ・クセで逆髪と蝉丸を正面から見ることができなかった。 動きのない二人の姿をじっくりみたい。 姉と弟の再会と別れの物語は表面的である。 美しい詞章と舞踏的な動と静が全てである。 両シテは声を含め動きも似ていた。 調べたら兄弟だった。 *劇場、 https://www.ntj.jac.go.jp/schedule/nou/2024/11189/

■能楽堂十一月「仁王」「白楽天」

*国立能楽堂十一月定例公演の□2舞台を観る. □狂言・和泉流・仁王■出演:深田博治,野村万作,月崎晴夫ほか □能・金剛流・白楽天(鶯蛙)■出演:廣田幸稔,宇高徳成,則久英志ほか ■国立能楽堂,2024.11.6 ■「仁王(におう)」は負け続きの博奕打ちが仁王像に変装して参詣人から供物を巻き上げようとする話である。 参詣の一人が仁王の体を触ったが柔らかいので変装がばれてしまう。 仁王像の不動姿と参詣6人の揃いの動さが重なり合い舞台に面白いリズムを作り出していた。 「白楽天」は唐代の詩人白楽天一行が筑紫にやってくる。 しかし魚翁に化けた住吉明神に追い返されてしまう。 中国の詩と日本の和歌の違いを二人で披露するところが見所である。 一行の衣装が中国風で楽しい、それに歩き方も。  間狂言では鶯と蛙の精が来序して和歌を謡い舞を舞う。 活き活きとした発声と動きが効いていた。 次の荘厳な真ノ序ノ舞と対比させて作品を活性化したからだ。 シテ面は「三光尉」から「石王尉」へ。 ところで大鼓が強くキンキン耳に響いた。 後半から慣れてきたが、唐からの一行のために盛り上げたのかな? *劇場、 https://www.ntj.jac.go.jp/schedule/nou/2024/11188/

■光の中のアリス

■作:松原俊太郎,演出・出演:小野彩加,中澤陽,出演:荒木知佳,伊東沙保,古賀友樹,東出昌大 ■シアタートラム,2024.11.1-10 ■劇場の特徴である凸型舞台の奥に演奏機器(ドラムマシン?)を配置して納まりの良い形にしてある。 演奏者の上には英語字幕板、その上に役者達を映すモニターが6台みえる。 客が入場している時から役者が舞台を歩いたりしているが、全員そろったところで皆で握手などをして幕が開く。 役者たちの声は明瞭、動きは明確で鍛錬されているのがわかります。 隙がない。 観客と目が合う時がある。 緊張感が漂います。 抽象的な用語も科白に入るので尚更です。 理解できた場面は東京ディズニーランドの批判くらいでした。 現代は「のアリス」を舞台に乗せると極端に二分化される。 この舞台は極めて難解な部類です。 振り落とされてしまった。 作者松原俊太郎の名前は聞き覚えがある。 調べたら劇団地点がいつも選ぶ作家でしたね。 地点の舞台を思い返すと今日の科白に似ているようにも感じられる。 でも似て非なるもの、劇団の違いでしょう。 たぶん抽象化を身体で受け止める方法に違いがあるらしい。 芸術監督推薦の<フィーチャード・シアター>だけあって今日の舞台は未来志向でした。 *劇場、 https://setagaya-pt.jp/stage/20768/

■さようなら、シュルツ先生

■原作:ブルーノ・シュルツ,構成・演出:松本修,出演:石井ひとみ,榎本純朗,大宮京子ほか,劇団MODE ■座高円寺,2024.10.18-27 ■ガラーンとした空間、響く声、舞台と客席の間に谷があるような距離感・・。 この劇場にいつも戸惑ってしまう。 シュルツ1930年代の作品らしい。 6話のオムニバスのようです。 幕が開き照明を絞った舞台でやっと集中できるようになる。 ・・小学校に通う年金暮らしの男、鳥を飼う父親、マネキン人形と父、サナトリウムでの父と息子の再会、人物画のある部屋・・。 父親とその家族が中心だが18人の役者が歩き語りポーズを取る。 話が繋がっているようだが筋は追えない。 カフカやドイツ表現主義映画を思い出します。 しかも「変身」より奇譚な物語で占められている。 ザリガニやゴムホース、父の再生など驚きの連続ですね。 性の挑発や倒錯もみえて退廃的な雰囲気が漂う。 そこにナチス影響下の東欧の暗さが被さる。 「劇的とは何か、・・」。 演出家の挨拶文です。 物語を内在する役者の身体そのもので劇的を表現する。 このようにみました。 先導する音楽と照明のなか、奇譚・性・ナチス・都市などの物語を持つ(ように観客の私からみえる)役者が静止する場面で劇的さを現前させる。 静止ポーズが多いのはこのためでしょう。 面白く観ました。 ところで劇的が希薄な場面もあったように感じる。 その理由は動の不足でしょう。 娼婦が歩く、小学生が騒ぐなど動から静への移行では静と動の残照が劇的へ繋がった。 しかしマネキン人形や人物画はこの動が省かれている。 動の無い静止は劇的さが薄まる。 動の残照には物語の過去が詰まっているからです。 MODEの舞台は10年ぶりですね。 カーテンコールで演出家が「(この舞台は)今の日本に無いもの」と言っていた。 MODE独自の劇的をより発展させてほしい。 *劇場、 https://za-koenji.jp/detail/index.php?id=3255 *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、松本修 ・・ 検索結果は5舞台 . *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、ブルーノ・シュルツ ・・ 検索結果は2舞台 .

■吉原御免状

■原作:隆慶一郎,脚色:中島かずき,演出:いのうえひでのり,出演:堤真一,松雪泰子,古田新太ほか,劇団☆新感線 ■新宿バルト9,2024.10.25-11.8(青山劇場,2005年収録) ■いつもとは違うゲキXシネを感じました。 原作の人間味が滲み出ているのでしょう。 吉原の裏話は多いが、しかし前半は盛り上がらない。 主人公松永誠一郎が夢で過去を知った後からが面白い。 誠一郎と勝山太夫、二人の情念が完全燃焼しましたね。 傀儡(くぐつ)の民が自国として遊郭吉原を造るが、徳川秀忠に忠実な裏柳生一族はこれを邪魔する。 関ヶ原で戦死した徳川家康の身代わりになった傀儡の者が遊郭を承認したからです。 替玉家康の出身を隠す為、そして政権を脅かす傀儡吉原を滅ぼす。 これが秀忠の遺言を守る裏柳生が動く理由です。 いやー楽しい!、テンコ盛りです。 流浪民の存在と性の解放は国家権力が特に恐れることです。 これが通奏低音のように響いている。 深みが出ている。 その存在が裏にある天皇制をも照射している? いやー面白い! 高尾大夫の説得で誠一郎が吉原楼主として残るのも安定感のある終わり方でした。 *劇団☆新感線2005年作品 *ゲキXシネ、 http://www.geki-cine.jp/yoshiwara/ *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、いのうえひでのり ・・ 検索結果は15舞台 .

■セツアンの善人

■作:ベルトルト・ブレヒト,音楽:パウル・デッサウ,台本・演出:白井晃,出演:葵わかな,木村達成,渡部豪太ほか ■世田谷パブリックシアター,2024.10.16-11.4 ■・・主人公シェン・テが失職中の飛行士ヤン・スンに恋をしてから盛り上がってきましたね。 そして一人二役のシュイ・タが登場して俄然面白くなった。 後半、彼の煙草事業の成功や従業員の対応で物語の二面性が見えてくる・・。 音楽劇というより歌唱の多い演劇とでも言うのでしょうか? 舞台美術も箱家の丸窓がアジアの都市を、天井の扇風機は飛行機を連想させる。 衣装はカラフルだが派手さを抑えている。 そして歌唱は10曲くらいあったがこれも衣装に合わせた歌詞です。 演奏も歌手の動きを邪魔しない。 演出家の好みと総合力が発揮されていました。 現代は善と悪の二項対立の表面が見え難くなっている。 この舞台は一つの善ともう一つの善を比較、具体的には互酬社会と資本社会を対立させている。 時代は前者が不利だが、一人二役で両者が一心同体であることを演出家は言いたいのかもしれない。 ところで、老人が劇の終わり方に不満だ!と言っていた。 後味を噛みしめるところで解説して舞台を壊してしまいましたね。 <一人二役>のまま幕を下すのがこの作品の妙味でしょう。 *劇場、 https://setagaya-pt.jp/stage/16042/ *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、白井晃 ・・ 検索結果は20舞台 .

■ピローマン

■作:マーティン・マクドナー,翻訳・演出:小川絵梨子,出演:成河,木村了,斉藤直樹,松田慎也ほか ■新国立劇場・小劇場,2024.10.3-27 ■飲酒や麻薬、認知症や精神疾患の人物が登場する舞台は厄介です。 酒や病自身が舞台で役者から離れて独り立ちしてしまう。 それは役者より強い。 現実と舞台の<境界>を崩してしまう。 精神疾患らしい兄ミハエルは言語能力が低い。 彼は現実世界と言語世界の<境界>が分からない。 兄は弟のカトゥリアンが書いた小説を読んで殺人を犯してしまう。 ここで観客(私)は精神疾患という病が犯したという現実に一瞬醒めてしまう。 弟も精神疾患に属する人だが<境界>を越えないので観客は物語から醒めない。 後半、兄の言語能力を向上させ疾患を目立たなくすることで切り抜け、また兄の罪を弟がすべて被ることで舞台をまとめ直した。 弟の対応を正当化する酷い過去は両親の滑稽な行動で漫画にみえる。 両親の感化を受けた弟のサイコパス小説も同じです。 二人の刑事アリエルとトゥポルスキも兄と弟をずらした位置にいます。 これらサイコパス世界を楽しむという観方も有りでしょう。 今回は病の現実が<境界>を乗り越えてしまったが役者の演技力で何とか凌いだ。 力尽くでまとめた舞台でした。 *NNTTドラマ2024シーズン作品 *劇場、 https://www.nntt.jac.go.jp/play/the-pillowman/ *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、小川絵梨子 ・・ 検索結果は23舞台 . *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、マーティン・マクドナー ・・ 検索結果は3舞台 .

■夢遊病の女

■作曲:V・ベッリーニ,指揮:マウリツィオ・ベニーニ,演出:バルバラ・リュック,出演:妻屋秀和,谷口睦美,クラウディア・ムスキオ,アントニーノ・シラグーザ他 ■新国立劇場・オペラハウス,2024.10.3-14 ■ガランとした広い舞台にアミーナの歌唱が響き渡る。 壊れてしまいそうで少しハラハラしたわよ。 エルヴィーノの筋が鍛えられたテノールは安心して聴いていられる。 合唱団も伸びがあり余裕が感じられた。 団が舞台を動き回らなかったから? それより、この作品はこの劇場の特長と合致しているのかもしれない。 演出がとても変わっていた。 二度目の夢遊状態ではアミーナが屋根の上で演技をするの。 落ちやしないかと又もハラハラ。 夢遊病には罹っていないようにみえる。 しかも屋根の上で幕が下りてしまう。 「人生をどう生きるかを決めるのはアミーナ自身・・」。 演出家が言っていた通りの終わり方ね。 そうそう、10人のダンサーがアミーナの周りで踊るのも驚きね。 彼らは病自身を表現しているらしい。 衣装が灰色系で顔も薄く炭を塗っているので目障りにならない。 これも面白い演出だとおもう、あとロドルフォ伯爵の女好きも。 でも、何枚もの洗濯シーツはどういう意味?、入浴は不要かな、そして大きな動力機械は何なの? すべてが夢遊病的な美術だった。 うん、楽しい。 作曲家が考えた(であろう)恋人や村人の舞台感覚が素直に現れていたとおもう。 MET2008年作の「夢遊病の娘」を8月に観ているが、やはり生舞台は最高。 観後は心身が生き返ったわよ。 *NNTTオペラ2024シーズン作品 *劇場、 https://www.nntt.jac.go.jp/enjoy/record/detail/37_028433.html

■薄い紙・自律のシナプス・遊牧民・トーキョー(する)

■振付:山﨑広太,出演:セシリア・ウィルコクス,ベロニカ・チャング・リュー,松田ジャマイマ他 ■シアタートラム,2024.10.12-14 ■山崎広太が踊りながら登場し、郡司正勝との出会い、岡田利規の演劇について、脱身体へ向かうには、中動態とは、住んでいたブルックリンや映画人のこと、いま住んでいる蒲田の感想、イスラエル問題などなどを話す。 プレトークとプレダンスを合わせたようなものです。 次に5人のダンサーが踊り始める。 日常のヒト・モノ風景に触れる感情の揺れ、その身体感覚を言葉で表現し踊りながら喋る。 しかも多動性障害のような動きが振付に漂う。 この延長に山崎広太の特徴である登場と退場、つまり「立ち上がり消えていく」空間を作り出します。 観ながら2000年頃の舞台を思い返す。 当時はダンサーが<その空間>を横断する仕方が物理的だった。 舞台の上手から下手へダンサーは現れ消える。 25年経った現在は科白という詩的言語でダンサーは空間に残りながら現れ消える。 表現が複雑になったようにみえます。 面白い舞台でした。 上演時間は70分だったが10分ほど短縮してもよい。 詩が入ると緊張感が高くなるからです。 客席は多様性豊かでしたね。 残念ながら、アフタトークは都合が付かず聞けなかった。 *劇場、 https://setagaya-pt.jp/stage/20463/

■能楽堂十月「舟渡聟」「天鼓」

*国立能楽堂十月普及公演の□2舞台を観る. □狂言・和泉流・舟渡聟■出演:三宅右近,三宅右矩,三宅近成 □能・観世流・天鼓(弄鼓之楽)■出演:梅若紀彰,高澤祐介ほか ■国立能楽堂,2024.10.12 ■「舟渡聟(ふなわたしむこ)」は聟入りする男が祝儀の酒を持って乗船するが、酒好きの船頭にせがまれて仕方なく酒を飲ませてしまう。 家に通されると、舅が船頭だった! 舅の失態を描くが、二人が謡と舞で締めるところに舞台的な感動が出ている。 「天鼓(てんこ)」は地謡のゆっくりした基調から律動的な後場の舞楽まで、一貫性のとれた流れが気持ちよい。 子を亡くした父の思いが迫ってくる。 舞楽ではリズムが合ったせいか舞踊特有の恍惚感に浸ることができた。 小書「弄鼓之楽(ろうこのがく)」は前半でシテの心情を省き、舞では太鼓が入りシテがのびやかに舞い遊ぶ。 今日の舞台は期待以上の内容だった。 シテ面は「小牛尉(こうしじょう)」から「童子」へ。 プレトーク「鼓が結ぶ親子の縁」(宮本圭造解説)を聴く。 ・・世阿弥と長男元雅の関係を「天鼓」に繋げた小林静雄の話は現代では否定されている。 「天鼓」は創作能の位置づけと考えてよい。 星は月と違い不気味なモノとして日本では扱われた。 逆に星に愛着の強いのが中国である。 七夕の彦星織姫の別れが「天鼓」に反映されている。 この別れが江戸時代の近松門左衛門や歌舞伎義経千本桜の初音の鼓へ繋がっていく。 ・・。 楽しい話が一杯だった。 *劇場、 https://www.ntj.jac.go.jp/schedule/nou/2024/10168/

■能楽堂十月「酢薑」「巻絹」

*国立能楽堂十月定例公演の□2舞台を観る. □狂言・和泉流・酢薑■出演:佐藤友彦,今枝郁雄 □能・金剛流・巻絹■出演:今井清隆,今井克紀,宝生常三ほか ■国立能楽堂,2024.10.9 ■「酢薑(すはじかみ)」は酢売り商人と薑(生姜)売り商人が秀句を競い合う話。 互いに認め合い高笑いして終わるのが清々しい。 「巻絹(まきぎぬ)」は熊野本宮に絹を奉納し巫女が舞を舞う話である。 都から絹を運んできた男(ツレ)は遅刻をするが巫女(シテ)に助けられる。 その巫女は祝詞を上げ神仏を称えるが神々が憑依し激しく狂い舞う。 巫女の舞は見応えがあった。 ところでツレが目をつむり科白を喋っていたがこれは頂けない。 地謡ならともかく、舞台では役者は目を見開いたままでいるべきだ。 シテ面は「増女(ぞうおんな)」(近江作)。 気品のある白色が際立っていた。 *劇場、 https://www.ntj.jac.go.jp/schedule/nou/2024/10163/

■ふくすけ2024、歌舞伎町黙示録

■作・演出:松尾スズキ,出演:阿部サダヲ,黒木華,荒川良々,秋山菜津子ほか ■Bunkamura・配信,2024.10.5-11.4(ミラノ座,2024.7.24収録) ■ミラノ座夏の公演は行かなかった。 今回、運良く配信があったので観ることにしました。 ・・観始めたがしかし、物語に没入することができない。 よくあることなので見続ける。 そのまま1幕が終わってしまった。 2幕に入っても同じです・・。 理由をいろいろ考えてみる。 場面と場面が繋がっていかない、しかも舞台を空間分割しながら展開するので煩雑過ぎる。 分散舞台と言ってよい。 また、照明が暗いので印象が弱い(映像のため?)。 役者の素っ気ない喋り方、マイクを使うためかコクが沸いてこない。 ・・などなど。 松尾スズキ演出の作品は初めて観ました。 演出方法に馴染んでいなかったのかもしれない。 赤子の死体が掘り出されたところからやっと舞台へ向かうことができた。 歌舞伎町裏組織や新興宗教団体を登場させ、ここに盲目や吃音症・巨頭症など身体障碍者の「不平等や不条理に対する怒り・・」を融合し「悪もまた人の姿」を描き出そうとしているようです。 それにしても散らばりすぎた。 終幕の舞台分割で人物たちを集めてまとめようとしたが遅かったですね。 *Bunkamura、 https://www.bunkamura.co.jp/cocoon/lineup/24_fukusuke/

■アーネストに恋して Ernest Shackleton Loves Me

■作曲:ブレンダン・ミルバーン,演出:リサ・ピーターソン,出演:ヴァレリー・ヴィゴーダ,ウェイド・マッカラム ■東劇,2024.10.4-(トニー・カイザー劇場,2017年収録) ■登場人物は二人だけ? ミュージカルにしては珍しい。 その一人、主人公であるシングルマザーのキャットは作曲家として登場する。 この為か、作曲しながら歌っているような錯覚が時々生じます。 彼女が作詞を実担当したこともあるのかもしれない。 しかもエレキバイオリンを弾きながら歌う。 15曲を歌うが半分以上を弾いていましたね。 鍵盤楽器はたまに見るが、この舞台は珍しいことが一杯詰まっている。 アーネスト・シャクルトンとは誰か? 初めて聞く名前です。 調べると・・、南極探検家らしい。 1909年頃の探検を題材にしている。 彼はキャットが住んでいる冷蔵庫から登場し、この部屋で二人は南極にいるかように探検を続け、再び彼は冷蔵庫から南極へ戻るという楽しい設定になっている。 アーネストはへこたれない楽天主義者ですね。 南極大陸での偉業からも分かる。 生活に疲れたキャットは彼から不屈の精神力をもらう。 全てに於いてオフ・ブロードウェイらしい内容でした。 *松竹ブロードウェイシネマ作品 *映画com、 https://eiga.com/movie/101365/

■蛮幽鬼

■脚本:中島かずき,演出:いのうえひでのり,出演:上川隆也,稲盛いずみ,早乙女太一,堺雅人ほか,劇団☆新感線 ■新宿バルト9,2024.10.-(新橋演舞場,2010収録) ■「巌窟王」を題材にしているようです。 それを、いつもの脚本&演出コンビが練りに練った内容に変えている。 ゲキXシネの中でも特に凝った作品と言ってよいでしょう。 監獄島から脱出した主人公伊達土門は復讐を遂げるが、国家再生の渦に巻き込まれて己を見失ってしまう。 次から次へと登場する人物たちはしっかりと目的を持って舞台に上がってきます。 彼らは主人公に直接間接に絡みながら目的を達成して(多くは死をもって)退場していく。 土門と恋人美古都はもはや過去に戻れないほど社会的精神的に遠くへ離れてしまった。 互いに求める心が残っていながら、土門は大君になった美古都の手に掛かり幕が下りる。 次々と繰り出してくる新たな展開にブレが無い。 見事です。 久しぶりに全力で駆け抜けたようなカタルシスを体感しました。 *ゲキXシネ2010年作品 *映画com、 https://eiga.com/movie/55593/

■リビングルームのメタモルフォーシス

■作・演出:岡田利規,作曲:藤倉大,出演:青柳いづみ,朝倉千恵子,川崎麻里子ほか,演奏:アンサンブル・ノマド,劇団:チェルフィッチュ ■東京芸術劇場・シアターイースト,2024.9.20-29 ■・・演奏者が舞台前面で演奏して下手奥にリビングルームらしき家具を置き役者が演技をする・・。 干しておいた毛布が雨に濡れてしまったり、家主から立ち退きを通告されるところから始まる。 具体的な話が続くので科白に聞き耳を立ててしまいます。 しかし次第に科白に抽象語が増えはじめ家族も家具も解体していき遂に異次元空間が出現する。 気配から始まり世界の終末に行きつく分裂症的展開に衝撃を受けました。 面白い舞台でした。 声技はともかく役者の動きが少し硬いように感じられた。 音楽と同期させる為ですか? 逆に演奏は演技を気にし過ぎているようにみえる。 でも、この巧い努力が芝居と音楽の融合を成功させたと言ってよい。 音楽はもっと主張したいところだが舞台空間としてはちょうど良かったかもしれない。 チェルフィッチュらしい緊張感を楽しめました。 いつもは瞬時に特徴を把握できるのに今日の客はバラけていてそれができない。 男女比もほぼ同じで20代から70代まで均等に散らばっている。 珍しいことです。 これも企画の良さからくる結果の一つでしょう。 *東京芸術祭2024参加作品 *劇場、 https://www.geigeki.jp/performance/theater371/ *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、岡田利規 ・・ 検索結果は14舞台 . *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、藤倉大 ・・ 検索結果は2舞台 .

■仮想的な失調

■演出:カゲヤマ気象台,蜂巣モモ,出演:辻村優子,日和下駄,橋本清ほか,劇団:円盤に乗る派 ■東京芸術劇場・シアターウェスト,2024.9.19-22 ■夢を見ているようです。 舞台が薄暗く役者がゆっくり動き喋る。 その喋り方も普通に録音したあとに再生速度を落としたようなスローです。 これで夢のように<見える>。 なとり=ムサシ丸の声と演技や、シズチャンの静かなダンスがこれに強く沿っていた。 狂言「名取川」、能「船弁慶」を下敷きにしたようです。 原作を読んで劇場に向かいました。 「読んだら観るな観たら読むな」のいつもに反しますが。 主人公?9太郎が誰に何で追われているのか? でも原作を知らない方がより夢に近づけたかもしれない。 そして平岡幽霊はどこか現実的でした、比叡山受戒場面では非現実的へ引き込まれたのに、です。 あっけない終幕でした。 これも夢から目覚めた時のようで良かった。 演出家カゲヤマ気象台の舞台は初めてでした。 既に観ていたと勘違いしていた。 夢を見ていたのでしょう。 *東京芸術祭2024作品 *劇場、 https://www.geigeki.jp/performance/theater373/t373-1/

■球体の球体

■脚本・演出・美術:池田亮,出演:新原泰佑,小栗基裕,前原瑞樹,相島一之 ■シアタートラム,2024.9.14-29 ■劇場に入ると観客は舞台に上りアート作品「Sphere of Sphere」を鑑賞します。 舞台美術をプレ見学するのは初めてかもしれない。 不思議な舞台で戸惑いました。 スタンチオンを動かしたり、神殿様式の柱を切り取ったりする。 美術を展開する流れですね。 役者4人もその展開に沿っている。 主人公本島幸司のダンスも、またホログラフィーで過去を再現・早送り・早戻しする役者の動きもです。 煙草の替わりのシャボン玉も、そして衣装や装身具にもそれを見ることができる。 <美術>を観客に意識させている。 しかもストーリーが変わっている。 パイプカットや精子バンクが何度も聞かれる。 子供を産むか産まないかを日常活動として決める。 もう一つ、大統領に就任するか否かもです。 生命科学と全体主義が融合した近未来を表現しているのは確かでしょう。 全体主義の中の自由を語るがここは深堀しない。 深刻なテーマが見え隠れするが美術で包み込まれる。 面白い舞台でした。 客席は8割が女性、それも青春を卒業した年代が多い。 贔屓筋かもしれないが普段では見慣れない客層でした。 *劇場、 https://setagaya-pt.jp/stage/18961/

■能楽堂九月「薩摩守」「兼平」

*国立能楽堂九月普及公演の□2舞台を観る. □狂言・大蔵流・薩摩守■出演:大藏彌右衛門,大藏彌太郎,大藏吉次郎 □能・観世流・兼平■出演:梅若猶義,舘田善博,大藏教義ほか ■国立能楽堂,2024.9.14 ■「兼平(かねひら)」は久しぶりに観る修羅能のため気持ちが高ぶった。 前場、琵琶湖を渡る舟からの初夏風景に和む。 後場は一転して「白刃骨を砕く苦しみ、眼晴を破り・・」の声で一気に戦場へワープする。 その前にプレトーク「忠節、友愛、そして悲壮」(林望解説)を聴く。 初めに「竹斎」の話が出て混乱した。 先日観た狂言「雷」の藪医師を思い出したからだ。 また今月のプログラムに「刊行400年仮名草子「竹斎」と能楽」(福田安典著)も掲載されている。 竹斎は「にらみの介」を連れて東海道を下った。 つまり主従関係を木曽義仲と忠臣今井史郎兼平に繋げたかったのだろう。 次に配布資料「平家物語巻九・木曽最期」の読み合わせをする。 この能は江戸時代に作られたらしい? 大筋は世阿弥の教えに沿っている。 原作から付かず離れずにするのが良い。 などなどを話す。 実際の舞台を観ると・・、場面間の切り替えが窮屈に感じる。 間に余裕がみえない。 地謡の比重が高過ぎる。 特に後場、義仲の最期では床几に座るシテにもっと語らせたいところだ、兼平の最期はシテ自身が戦場を駆け巡るので気にならないが。 それにしても二人の最期には圧倒される。 作者もここに全力を注いだのだろう。 シテ面は「朝倉尉」から「三日月」へ。 「薩摩守(さつまのかみ)」は秀句(言葉遊び)の話である。 出家の大藏右衛門と船頭の大藏吉次郎、積み重なった年齢から滲み出る二人の遣り取りが面白深い。 また茶屋で出された茶の旨さが伝わってきた。 *劇場、 https://www.ntj.jac.go.jp/schedule/nou/2024/9403/

■ドクター・アトミック ■オッペンハイマー

*下記の□2作品を観る. □ドクター・アトミック ■作曲:ジョン・アダムズ,指揮:アラン・ギルバート,演出:ベニー・ウールコック,出演:ジェラルド・フィンリー,サーシャ・クック,エリック・オーウェンズ他 ■東劇,2024.8.23-9.19(メトロポリタン歌劇場,2008.11.8収録) ■原爆をテーマにしたオペラが登場してもMET演目なら驚かない、でも2008年作と聞いて少しビックリ。 主人公は科学者オッペンハイマー。 原爆を開発したマンハッタン計画、それも1945年7月16日の核実験とその直前数日間を描いているの。 組織のリーダとして開発を推進する主人公は内包しているジレンマを宗教性や詩に求めている。 彼の妻キティもベッドと共に登場するが抽象的歌詞に溢れている。 インディアン?を登場させたのは緩衝としての効果を期待したのかしら? 演出家のインタビューで観客は「ファウスト」を意識するだろうと言っていたのも興味深い。 全体を流れる抽象的心理描写が重い題材を救ったのかもしれない。 「・・原爆実験に日本の指導者を招待して恐ろしさを知ってもらい降伏を促したらどうか?」。 科学者としての切羽詰まった意見も出る。 でも政府はポツダム宣言に間に合わせたい! そして最後は原子雲を背景に、日本語で「子どもたちに水を!」で幕が下りる。 ・・。 *METライブビューイング2008年作品 *MET、 https://www.shochiku.co.jp/met/program/s/2008-09/#program_02 *追記2024.11.04・・ 現代思想( 2024年10月号 )の「原子爆弾完成後の去就をめぐって」(佐藤文隆著)を読む。 ・・1943年12月アメリカに渡った物理学者ニールス・ボーアはロスアラモス研究所に自由な交流・討論を可能にする「コペンハーゲン精神」を持ち込む。 後の科学者共同体を視野に入れていた。 そしてマンハッタン計画へスターリンを招聘する考えを示す。 これにより戦後の核開発競争を防止できると信じていた・・。 これを読んで日本の指導者を原爆実験に招待する場面を思い出す。 □オッペンハイマー ■原作:カイ・バード他,監督:クリストファー・ノーラン,出演:キリアン・マーフィ,エミリー・ブラント,マッド・デイモン他 ■DVD,...

■悪態Q

■脚本:西田悠哉,永淵大河,演出:西田悠哉,出演:むらたちあき,荷車ケンシロウ,永淵大河,劇団不労社 ■北千住・BUoY,2024.9.6-8 ■この劇場は初めてです。 チラシの地図を見ながら向かったが路地に入り込み迷ってしまった。 酷い地図です。 この劇団は京都に拠点を置いているらしい。 京都系はときどき観るが皆元気がある。 今日も楽しみです。 地下駐車場のようなコンクリートで囲まれ冷え冷えとした薄暗い空間のなか、受像機で何やら映しラジカセをガンガン鳴らしながら幕が開く。 トレーニングウェアを着た3人が登場してピンポン体操を挟みながら漫才風の科白を絶え間なく発し続ける。 大阪三人漫才を観ているようです。 3人は幼稚園先生から宇宙人まで熟していく。 動物の縫いぐるみを被る場面もある。 日常風だが奇抜な内容が多い。 クエスチョンとアンサーを連発するのは寺山修司的です。 地下の広い場所を動き回る姿、体操(ダンス)はキビキビしている。 身体が鍛えられていますね。 世界と隔絶されている出来事にみえました。 世界は、現実は、どこにでもある!とでも言うように・・。 暗い地下空間でゲームをしてきたような観後感です。 場所を選ぶ作品にみえる。 練れていた舞台でした。 京都系はやはり勢いがありました。 *CoRich、 https://stage.corich.jp/stage/324057

■能楽堂九月「雷」「善知鳥」

*国立能楽堂九月定例公演の□2舞台を観る. □狂言・和泉流・雷■出演:高澤祐介,前田晃一ほか □能・観世流・善知鳥■出演:片山九郎右衛門,安藤貴康,福王茂十郎ほか ■国立能楽堂,2024.9.4 ■「雷(かみなり)」が登場して奇声を発し飛び回る。 その声は雷の光と音を表している。 驚きの演技と言ってよい。 後半に地謡も入り楽しさは倍増する。 さすがカミナリ! 「善知鳥(うとう)」は猟師が背負う殺生の罪や母子の絆を描く。 比較強調のため子方も登場する。 反して本能としての狩猟の醍醐味も演じる。 狩りをする緊迫感が伝わってくる。 この相対する三つが溶け合い深みのある舞台が出現した。 同じ生き物としての人間の悲哀が出ていた。 シテ面は「三光尉」から「痩男」へ、ツレは「深井」。 *劇場、 https://www.ntj.jac.go.jp/schedule/nou/2024/9141/

■どん底

■作:M・ゴーリキー,翻訳:佐藤史郎,演出・美術:V・ベリャコーヴィッチ,O・レウシン,出演:豊泉由樹緒,能登剛,南保大樹ほか,劇団東演 ■シアタートラム,2024.8.31-9.8 ■大きな2段ベッドが4台も舞台に置いてある。 これでは歩き踊り回る場所が無い。 演出家が拘る美術でしょうか? 白系衣装と青赤照明の組合せは緊張感がありますね。 役者たちはベッドの上を転がり、客席前で正面を向き科白を発する。 動きは激しいが動作が一律になり半朗読劇のような構造に感じられた。 この劇場では狭かったかな? ゴーリキーの力を見せつけられました。 自由と真実を語りあう場面は現代でも衰えていない。 ユーゴザパト劇場俳優のロシア語も馴染んでいた。 音楽と力強い踊りがロシアを思い出させる。 宿妻ワシリーサと妹ナターシャ、情夫ペーペルの三角関係が上手く描かれていました。 巡礼者ルカが退場した時に幕を下ろせば、それ迄の議論の余韻が残ったはずです。 以降は説明調になってしまった。 会場はいつもと違う客層ですね。 中高年が多い。 東演の歴史を感じさせます。 座席には初めての背もたれ用座布団も置いてあった。 今回は時代が戻ったかのような不思議な観後感覚がやって来ました。 *築地小劇場開場100周年 *劇団東演公演No.168,創立65周年 *CoRich、 https://stage.corich.jp/stage/324555 *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、ベリャコーヴィッチ ・・ 索結果は2舞台 .

■ナイ、国民保健サービスの父

■原作:ティム・プライス,演出:ルーファス・ノリス,出演:マイケル・シーン,シャロン・スモール,ロジャー・エヴァンス他 ■TOHOシネマズ日本橋,2024.8.30-(オリヴィエ劇場,2024収録) ■イギリスNHS(国民保健サービス)を推進した保健省大臣ナイ・ベヴァンの一生を描いた舞台。 死が近いナイが夢の中で過去を振り返る話です。 ・・吃音で悩んだナイの小学校時代から始まり、炭鉱での組合活動、地方議員から国会議員を経て、妻ジェニーとの出会い、父の死、チャーチルと論争し、医師会と戦い、ついに1948年NHSを設立、・・ナイの呼吸が途切れていくなか親友に囲まれながら幕が下りる。 パジャマ姿で通したウェールズ炭鉱労働者の意地と熱意が迫ってきます。 テンポが速く展開が多いのでナイの心の襞まで描けなかったのは否めませんが。 NHSと言えば「 ロンドンオリンピック開会式 」を思い浮かべる。 NHSやGOSH(子供病院)など社会保障制度を称える開会式は衝撃的だった。 歴史や文化を語るだけではなく、国民の保証制度を描く開会式は他の開催地でも見習うべきでしょう。 休息時間に「NTLナショナル・シアター・ライブ100本達成記念」の映像が流れる。 2009年6月の「フェードル」(ラシーヌ作)で幕を開けたようです。 芝居好きに受け入れてもらえるか? 舞台を映画でみるのは不安がある。 ロンドンの舞台を生で観たいが、そうもいかない。 私にとってNTLは見逃せません。 当ブログでは 55本の感想 が掲載されています。 *NTLナショナル・シアター・ライブ2024作品 *映画com、 https://eiga.com/movie/101147/ *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、ルーファス・ノリス ・・ 検索結果は4舞台 .

■夢遊病の娘

■作曲:V・ヴェリーニ,指揮:エヴェリーノ・ピド,演出:メアリー・ジマーマン,出演:ナタリー・デセイ,フアン・ディエゴ・フローレス,ミケーレ・ペルドゥージ他 ■東劇,2024.8.25-9.21(メトロポリタン歌劇場,2009.3.21収録) ■アンコール上映で未だ観ていなかった作品がこれ。 ベルカント・オペラの傑作らしい。 夢遊病者アミーナが伯爵の部屋に入ってしまい許婚から不倫を疑われてしまう話よ。 「スイスの村が舞台であるこのオペラを、現代のニューヨークの稽古場に置き換えて演出しており、洗練されたコンテンポラリーな舞台が印象的」。 外の眺めはビルばかり、いつのまにか雪も降っている・・。 物語の先が読めてしまうから、どのようにまとめるか心配が過る。 2幕も平凡な流れだが、でも心に染み入る力があるの。 素直な歌唱がジワッと迫ってくる。 演奏も歌唱と心象的に交じり合い心に響く。 アミーナ役ナタリー・デセイは突き刺さるような発声もあり、表情も夢遊病者に近づいていた。 でもベルカントとしてはどうかしら? 実は新国立劇場新シーズンの開幕作品もこれ。 今回は予習として観たけど、10月が楽しみだわ。 *METライブビューイング2008年シーズン作品 *MET、 https://www.shochiku.co.jp/met/program/s/2008-09/#program_09 *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、メアリー・ジマーマン ・・ 検索結果は4舞台 .

■代が君・ベロベロ・ケルベロス

■演出:下島礼紗,出演:木頃あかね,小泉沙織,中澤亜紀ほか,舞団:ケダゴロ ■シアタートラム,2024.8.22-25 ■・・もし戦時中の国民体育大会を見たら、このような舞台だった? 先ずは国歌演奏、衣装は男が褌(ふんどし)で女はブルマ、整列や速足らしき動きと組体操、淫らで楽しい宴会余興も。 20世紀前半日本の風景がみえる。 でも大きな回し車にダンサーが入ってネズミのように疲れ切るまで走り続けるのは何故? そして黒衣装で頭部を前後する踊りはケルベロスのギリシャへワープしてしまう? 混沌たる舞台が続きます・・。 演出家の挨拶文に「日本の国体を考える」とある。 ダンスで<国体>を描くと<国民体育大会>に<宴会余興>を混ぜ合わせたようになる。 <国体>とは支離滅裂なものかも。 はたして振付の多くに「産めよ殖やせよ!」が見え隠れする。 これが挨拶文の答えかもしれない。 観ていながら少子化を考えてしまった。 1億2千万人の今の人口は戦争が影響している。 本来なら昭和初期の人口6千万人を微増減しながら継続するのが自然だった。 現代日本人の生物的歴史的な無意識が少子化を進めていると思う。 将来、日本がより豊かになる条件は戦争を避けながら人口を半減させることでしょう、国体に反しますが。 *劇場、 https://setagaya-pt.jp/stage/18732/

■朝日のような夕日をつれて2024

■作・演出:鴻上尚史,出演:玉置玲央,一色洋平,稲葉友,安西慎太郎,小松準弥 ■紀伊国屋ホール,2024.8.11-9.1 ■暑さが吹き飛ぶ熱い舞台でした。 古臭い紀伊国屋ホールだが舞台照明の配置を見ただけでゾクゾクと震えが来ました。 そこに、役者5人のキリッとした動きと途切れぬ科白が朝日のような眩しい夕日をつれてくる! 演出家が長年拘ってきた情報化社会、特に仮想現実をテーマにしている。 ゲーム会社の社長と部長、マーケティングや技術担当が新しい商品を四苦八苦しながら開発する話です。 特にAI(人工知能)が前面に出ていますね。 人間の相手は人工知能でも可能か? <想像>と<創造>を作れない人工知能でも膨大なデータ処理の結果を人間は可能と判断してしまうでしょう。 人間活動の混乱は必須です。 同時並行して「ゴドーを待ちながら」が演じられる! これは現実舞台として混乱しました。 なぜゴドーなのか? このブログを書いている今でも分からない。 この舞台は<待つ>機会が無かったからです。 久しぶりの紀伊国屋ホールでした。 ところで劇場の椅子が新しくなっていた、デザインは旧と略同じ。 この椅子は窮屈だが座り易い。 舞台に集中できます。 帰りのホールはごった返していましたね。 並んでプログラムを購入しました。 今日の観劇がお盆休みを最高にさせてくれました。 *紀伊国屋ホール開場60周年記念公演 *CoRich、 https://stage.corich.jp/stage/327125 *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、鴻上尚史 ・・ 検索結果は6舞台 .

■ブレス・トリプル BREATH TRIPLE

■作・演出:小池博史,美術:山上渡,音楽・演奏:下町兄弟(pc.rap),中村恵介(tp),衣装:浜井弘治,映像:白尾一博,出演:松島誠,今井尋也,小林玉季,中谷萠 ■EARTH+GALLERY,2024.7.29-8.9 ■舞台図面をみると幅5m奥行9mの広さでした。 その壁に絵を描き、映像を映し出し、床に小道具を置き、演奏者2名を配し、役者4人が動き回る。 1年前に「WE-入口と世界の出口」をここで観ています。 今回も劇場空間にあらゆるものを詰め込んだ凝縮力が凄まじいですね。 美術・音楽・映像・ダンス・演劇を串刺しにした舞台です。 19世紀末のブラジル起きた「カヌードスの乱」を下敷きにしているようです。 農民、宗教者、権力者が入り乱れる。 このため科白が断続的に続くので舞台は演劇に近づきます。 アフタートークで梅村昇史が演劇の話をしたのはこれを感じ取ったからでしょう。 「<演劇>にこだわる人は多い、しかし・・」(演出家の挨拶文)。 演劇にどっぷり浸かることは避けたい。 壁に描いた民衆絵画を映像で映し出すとリアルさを感じます。 そして荒野を撮ったカラー映像がとても美しかった。 そこにアルレッキーノ風仮面を付けた白塗りの役者をみているとブラジルが現前します。 ブラジルと言えば「悲しき熱帯」(レヴィ・ストロース著)を思い出してしまうが、この舞台ではお呼びでない。 むしろ人類学者山口昌男の王権や道化そして祝祭を感じることができる。 猛暑の中の帰り道に今みた舞台を思い返す。 最初はメキシコと勘違いしていた。 いつものことだが私にはスペイン系とポルトガル系の違いが分からない。 そして、やはり芝居に偏った面白さが出ていたとおもう。 少数農民が多勢の軍隊と戦ったことも強調していたし・・。 ブラジル公演も意識するはずです。 いやー、暑い! *小池博史ブリッジプロジェクトOdyssey作品 *CoRich、 https://stage.corich.jp/stage/329370

■本棚より幾つか、ー短編演劇祭ー

■構成・演出:長堀博士,出演:塩山真知子,杉村誠子,加藤翠ほか,劇団:楽園王 ■新宿眼科画廊・地下,2024.8.2-6 ■夏目漱石「夢十夜」より、宮沢賢治「よだかの星」、「風」を一日目に、「赤い靴」、「アオイハル」、岸田國士「紙風船」を二日目に観る。 全6作品です。  観客は20名でほぼ満席。 ここは初めて来たが名前のとおり劇場にはみえない。 舞台中央にある消火栓の赤ランプも付きっぱなしです。 なぜ眼科なのか?も調べていない。 役者は一人から三人が登場し朗読も入る舞台で1作が30分以内で出来ている。 暑い夏には短編が似合います。 それは心身の弛緩緊張を短時間で繰り返すことができるから。 つまり暑い夜に寝返りを多くするのと同じ理由です。 「夢十夜」は原作と古本屋での出来事の枠構造だが着物姿がどういう訳か原作と繋がっていた。 「よだかの星」は台本を一枚づつ床に散らかしていくのが巧い。 終幕には宇宙的感動が広がってきますね。 「風」は三角関係の一つの定番かもしれない。 物語に既視感があります。 「赤い靴」は不倫の話だが現代的な身振りや言葉の遣り取りが楽しい。 日本の童謡とアンデルセンの童話を終幕に結びつけたのは少し無理があるかな? 「アオイハル」は高校時代を、「紙風船」は夫婦の倦怠期を思い出させてくれる。 6作品はどれも旨味が効いていた。 うち幽霊話が4話あり夏らしさと共に人生の過去を振り返ることもできました。 *CoRich、 https://stage.corich.jp/stage/325244 *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、長堀博士 ・・ 検索結果は5舞台 .

■思想8月号「鈴木忠志」

■執筆:柄谷行人,渡辺保,菅孝行,平田オリザ,中島諒人ほか ■岩波書店,2024.8発行 ■演出家鈴木忠志は「日本を捨てて<日本>に行き、そこで世界に対抗する新たな演劇を作り続けている・・」。 新たな演劇とは「劇団創設・劇場創築・俳優創生の三つを一体にした」(菅孝行)、その先にあるものです。 「演劇活動の中で一番本質なことは集団の問題につきる」(137頁)。 「演劇人にとって一番の作品は劇場である」(149頁)。 「他者からの<声=言葉>に身体を変容させるため俳優を訓練(スズキ・メソド)する」(112頁)。 舞踊家金森穣は鈴木の舞台を「・・過剰な照明、過剰な美術、過剰な戯曲、過剰な衣装、過剰な身体、加えて演出家の過剰な意志」と書いている。 私も同感です。 そこから「言葉が俳優の身体によって生きる瞬間」(159頁)がどのように舞台に出現するのか? その答を大澤真幸が論じているが哲学的すぎて理解できない。 舞台感動を言葉化するのは面倒です。 本橋哲也「鈴木忠志演劇論<序説>」は鈴木の言葉を多く挟んでいて読み易い。 序説以降をまとめて単行本にするらしい。 楽しみです。 そして「トロイアの女」を論じる頁が多いのは、これが鈴木の世界的作品であるだけではなく公演回数の多さから来ていることもある。 演劇関係の本が読み難いのはその舞台を実際に観ていないとしっくりこないからです。 書く側はそれ以上でしょう。 特集号を2024年に出したのは感慨深い。 岩波書店はいつか出さなければならなかった。 昨年末の吉祥寺シアターで鈴木が「来年は最後の新作を上演したい!」と話していた。 これからも多くの新作を期待しています。 *岩波書店、 https://www.iwanami.co.jp/book/b650424.html

■それいゆ

■作・演出:天野天街,出演:夕沈,山本亜手子,雪港ほか,劇団:少年王者舘 ■スズナリ,2024.7.25-29 ■時代は敗戦から1960年代までの四半世紀、主人公ショウタロウとその家族の日常を描いているようだ。 ショウタロウを含め母や妹も一人数役で熟す。 得意の分身の術を使い彼らは舞台を駆け巡る。 これは母の夢なのか? ・・B29の爆音、父の戦死。 満蒙開拓団の帰郷は釜山から下関へ。 多くは釜山まで辿り着けなかっただろう。 夕方6時半からのラジオ放送「紅孔雀」。 松島トモ子も登場? 集団就職と飯三杯。 繁華街に屯するヤクザたち・・。 そこに<時間>の議論が入る。 得意のループだ。 これが長い。 ここまで繰り返すのか!? 舞台は映像トリックを極力避けている。 これで昭和のテンポが舞台に現れる。 多くの単語が引き金になり当時の生活がフラッシュバックのように脳裏に甦る。 でもカッタルイ。 この作品は演出家の履歴書にみえる。 7月7日に天野天街が亡くなったことを知る。 彼はアングラ四天王、寺山修司・鈴木忠志・唐十郎・佐藤信と同世代とみていた。 調べると・・、1960年生まれに驚く! まだ若い。 早世が無念であったろう。 終戦前後の記憶は家族から引き継いだのかもしれない。 今日の劇場は椅子を座布団に替えて観客をギュウギュウに詰め込んでいた。 冷房がフル回転しても冷えていかない。 300人は入っていただろうか? カーテンコールで役者全員の紹介がある。 熱気渦巻くスズナリで天街を観ることができて嬉しい。 *少年王者舘第40回本公演 *CoRich、 https://stage.corich.jp/stage/320408 *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、天野天街 ・・ 検索結果は12舞台 .

■Amomentof ■セレネ、あるいは黄昏の歌

 *以下の□2作品を観る. ■彩の国さいたま芸術劇場・大ホール,2024.7.26-28 □Amomentof ■演出:金森穣,音楽:G・マーラー「交響曲第3番6楽章」,レオタード:YUMIKO,出演:金森穣,井関佐和子,山田勇気,Noism1,Noism2 ■・・舞台にはバレエバーが置かれている。 そこで練習する舞員を背景にダンサー井関佐和子が過去を振り返る・・。 公演ポスターも張り出されてNoism20周年記念作品に相応しい内容でした。 おおらかな振付が気持ち良い。 音楽も似合っていましたね。 もちろん照明も。 余裕のみえない舞台が数年前にあったが見違える姿です。 組織を維持していくには並々ならぬ努力があったはず。 これからも素晴らしい舞台を期待したい。  □セレネ、あるいは黄昏の歌 ■演出:金森穣,音楽:マックス・リヒター「ヴィヴァルディ四季編曲」,衣装:中嶋佑一,出演:井関佐和子,山田勇気,Noism1 ■「・・セレネとは月の女神」。 舞台では儀式らしき営みが続いていく・・。 「春の祭典」と表裏の関係にみえます。 「春の祭典」が太陽ならこの作品は月ということですね。 美術も落ち着いていた。 20周年記念を含め、この舞踊団に沿う内容でした。 Noismは音楽も楽しみです。 *劇場、 https://www.saf.or.jp/arthall/stages/detail/99627/

■能楽堂七月「鬼瓦」「定家」

*国立能楽堂七月特別公演の□2舞台を観る. □狂言・大蔵流・鬼瓦■出演:山本則孝,山本則重 □能・金剛流・定家(小書:袖神楽,六道,埋留)■出演:金剛永謹,福王和幸,山本東次郎ほか ■国立能楽堂,2024.7.25 ■因幡堂の「鬼瓦」が故郷で待つ妻の顔に似ている・・!? 人生上向きだから笑ってやり過ごそう。 ハハハッ・・! 「定家」上演時間は130分と長い。 「鬼瓦」の10倍ある。 シテとワキ、シテと地謡の対話リズムに乗ることが必要。 しかし調子が合わず途中居眠り。 式子内親王の墓にまで絡む定家は今なら変態ストーカーと言ってよい。 二人の関係をどうみるかで作品への態度も変わってくる。 観後、プログラムに掲載の「定家葛の創出、世阿弥から禅竹へ」(大谷節子)を読む。 二人の出会いは史実ではない。 作家の創出力に負っているようだ。 小書「袖神楽(そでかぐら)」「六道(ろくどう)」は「序の舞」で囃子が特殊な演奏をする。 素人でも分かる。 「埋留(うずもれどめ)」は終幕に囃子の演奏だけを残すのだが、いつもと変わらないように聴こえた。 それと足拍子が強すぎたかな。 シテ面は「曲見(しゃくみ)」から「泥眼(でいがん)」へ。 *劇場、 https://www.ntj.jac.go.jp/schedule/nou/2024/7165/

■モリコーネ、映画が恋した音楽家

■監督:ジュゼッペ・トルナトーレ,出演:エンニオ・モリコーネ,B・ベルトリッチ,C・イーストウッド,Q・タランティーノ他 ■配信,(イタリア,2021年作) ■面白いドキュメンタリー映画だった。 2時間強は長くない。 エンニオ自身のインタビューが8割を占めていた為もある。 本人の言葉は強い。 彼の思いが伝わってくる。 音楽院時代の1950年頃から2010年代前半迄を描いている。 映画監督のインタビューも多く入っている。 J・S・バッハ一辺倒からエンニオを受け入れたP・P・パゾリーニ監督、現場でエンニオの音楽を流しながら撮影したS・レオーネ監督等々のウラ話は映画好きにはたまらない。 映画音楽というジャンルを高めた彼の功績は大きい。 同時に映画を支配しようとする戦略も感じる、たとえ言葉にしなくても。 エンニオが受け持った映画は50本近く観ている。 衝撃(感動)を受けた3本は「アルジェの戦い」(G・ポンテコルヴォ)、「ソドムの市」(P・P・パゾリーニ)、「1900年」(B・ベルトリッチ)。 すべて観後に音楽担当を知った。 映画音楽は美術や照明と同じ位置づけと考えている、エンニオとは意見が違うが。 映画音楽とは何か? 彼は映画の大事なものを壊しもした(と思う)。 *映画com、 https://eiga.com/movie/96331/

■希望の家

■演出・出演:倉田翠,出演:桑折現,白神ももこ,前田耕平,吉田凪詐,舞団:akakilike ■シアタートラム,2024.7.13-15 ■結婚式式場らしい。 会場はてんやわんやです。 マイクを持って叫ぶ司会者かつ神父、ぶつぶつ言いながらうろつき回る招待者、そしてローラースケートで舞台狭しと飛び回る新郎、ダンスに興ずる新婦とその友人? 序破急を一気にぶちまけたような舞台です。 夫婦生活・家族関係、それを包み込む家・部屋・近隣風景を語り、叫び、踊り、動き回る。 うーん、どうみても科白は関西系だ! 関西系は元気な嫌味がある。 その嫌味を昇華して元気がもらえる。 そして、少しばかりチェルフィッチュ系もみえる? 同系を修飾したような喋り方が舞台を引き立てます。 5人の演者それぞれが活き活きしていましたね。 演出家挨拶文余白に「アカキライクは、・・スタッフと出演者が常に対等である・・」に納得しました。 舞台上はバラバラにみえる5人だが、発声と動作が巧く和合され、その全てが一つのダンスとして見えた。 面白い舞台でした。 *劇場、 https://setagaya-pt.jp/stage/17360/

■能楽堂七月「飛越」「鵺」

*国立能楽堂七月普及公演の□2舞台を観る. □狂言・大蔵流・飛越■出演:茂山千三郎,茂山忠三郎 □能・金春流・鵺■出演:高橋忍,舘田善博,善竹大二郎ほか ■国立能楽堂,2024.7.13 ■「鵺(ぬえ)」の前場シテ面は「怪士(あやかし)」。 キマイラにはみえない。 敗者の若者にみえる。 そしてクリ・サシ・クセと流れていく場面のシテの姿・動きに圧倒されてしまった。 鵺が頼政へ次に猪の早太が乗り移ったかのように演じ、ふたたび鵺に戻り暗い海に消えていく。 ここまで興奮するとは、さすが世阿弥、舞台の面白さが伝わってくる。 後場シテ面は「小飛出(ことびで)」。 目玉が飛び出るのは人間絶体絶命の時だけだ。 「ほととぎす名をも雲居にあぐるかな・・」で鵺に頼政が乗り移るが、鵺は我に返り「暗きより暗き道にぞ入りぬべき・・」と和泉式部を読んで海に消えていく。 ここも圧巻である。 プレトーク「敗者が語る勝者の栄光」(表きよし解説)を聴いていたが、敗者が語るのではなく勝者が乗り移るのだろう。 このため舞台は敗者の無念が薄められる。 「鵺」と「頼政」の違いかもしれない。 「飛越(とびごえ)」は相手を傷つける人間の厭らしさがでている。 マウント感情を巧く表現している。 川を飛び越える動きが面白い。 *劇場、 https://www.ntj.jac.go.jp/schedule/nou/2024/7163/

■フェルディドゥルケ

■原作:ヴィトルド・ゴンブローヴィッチ,演出:赤井康弘,出演:赤松由美,葉月結子,大美穂ほか,劇団:サイマル演劇団,コニエレニ ■サブテレニアン,2024.7.4-14 ■女優5人が舞台狭しに動き喋りまくる。 マイクも使う。 万国旗?が天井に飾られているが役者はそれを便器に投げ込み再び舞台に放り出す。 熱演で汗が引っ込みました。 難解な科白ですね。 言葉が留まらず滑っていくだけです。 次々に聞こえる沢山の名前、例えば<フロイト>が耳に聞こえる。 でも取り残されるだけで繋がっていかない。 <ボルヘス>や<シラー>も同じように・・、<ヘンリームーア>は彫刻家だが?<カール2世>?<ジュリアス・シーザー>、<アレクサンドリア>は地名だった?<モーセの十戒>・・きたきたキリスト教!そして<エクリチュール><テキスト>・・哲学用語も! 学校教育を論じているようにもみえる。 目まぐるしい70分でした。 アフタートークが臨時に開催される。 赤井康弘と赤松由美が出席。 トークの開催理由は舞台が難解な為らしい。 ここはスタッフも分かっている。 「戯曲を読んだら夜の大海に一人で投げ出された気分になった」(赤松)。 「舞台は権力批判だ」(赤井)。 観客から音楽等の質問がある。 トークを聞いても難解さは変わりません。 *ゴンブローヴィッチ生誕120周年記念公演 *CoRich、 https://stage.corich.jp/stage/314717 *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、赤井康弘 ・・ 検索結果は4舞台 .

■饗宴/SYMPOSION

■演出:橋本ロマンス,音楽:篠田ミル,出演:池貝俊,今村春陽,唐沢絵美里ほか ■世田谷パブリックシアター,2024.7.3-7 ■劇場の裏側を解放した舞台は広々高々していて気持ちがいい。 音響も照明も深く響き照らす。 この劇場構造を上手く活かしてますね。 演者が遠くに見える。 ダンスかと思いきやパフォーマンスに近い? 科白も入ります。 プラトン「饗宴」を意識しているらしい。 ダンサー・俳優・作家など7人の演者は付かづ離れず、付いて離れて、動き回る。 一人が<笑い>と<平和>について語っていたが少ない科白は舞台を強く引っ張ります。 振付やパフォーマンスに抑圧を振り払おうとする姿もみえる。 演技に余白が有り、それが謎に変換するので、次に何が出るのかドキドキしました。 なんとクマも登場! 音楽・照明・ダンスが分け隔てなく演じられ、計算されているが、嫌味にならず洗練された都市型舞台を出現させていました。 *CoRich、 https://stage.corich.jp/stage/320412 *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、橋本ロマンス ・・ 検索結果は2舞台 .

■ザ・モーティヴ&ザ・キュー

■作:ジャック・ソーン,演出:サム・メンデス,出演:マーク・ゲイティス,ジョニー・フリン,タペンス・ミドルトン他 ■TOHOシネマズ日本橋,2024.7.5-(英国リトルトン劇場,2024.3.21-収録) ■「芝居づくりの過程を楽しんでくれ・・」。 サム・メンデスの言葉です。 ジョン・ギールグッドを演出に迎えてリチャード・バートン主演の「ハムレット」の稽古を舞台化した作品だが、両者を含めてもちろん現代の俳優が演じる。 ・・二人は途中、新旧演劇感の違いから意見が対立してしまう。 ハムレットの動機とは? 生まれや育ち、父との関係などを吐露することで二人は再び近づくことができる。 そして初日を向かえる・・。 演出家の言葉通りに過程の面白さが詰まっていましたね。 タイトルも意味深です。 舞台美術も切れがあり色彩も素晴らしい。 二人の出演した映画一覧を見てビックリしました。 思っていた以上に観ていた。 でも記憶が曖昧です。 当時は俳優から作品を観ていなかった為でしょう。 ところでハムレットを演じた役者の数は世界で20万人もいるらしい。 世の中はハムレットで溢れています。 *NTLナショナル・シアター・ライブ作品 *映画com、 https://eiga.com/movie/101146/ *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、サム・メンデス ・・ 検索結果は3舞台 .

■能楽堂七月「文荷」「弱法師」

*国立能楽堂七月定例公演の□2舞台を観る. □狂言・和泉流・文荷■出演:野村万禄,吉住講,野村万之丞 □能・喜多流・弱法師■出演:香川靖嗣,殿田謙吉,上杉啓太ほか ■国立能楽堂,2024.7.3 ■世阿弥自筆本では「弱法師(よろぼし)」にツレが添う。 今回は原本から離れた現行の演出である。 やはり弱法師は一人で登場しないとサマにならない。 この作品はツレがいると<演劇的>、一人だと<舞踏的>に近づく。 ・・盲目の俊徳丸は難波風景を心眼で見るが、現実に戻り群衆の中に倒れ伏してしまう。 そして父から逃げようとするが、最後は共に家へ帰る・・。 前場からの淡々としたリズムを後場も持ち続けていた。 <演劇的>動きを抑えていて気持ちが良い。 <舞踏的>存在感を堪能できたのが嬉しい。 面は「弱法師」。 「文荷(ふみにない)」は主人が少人に書いた恋文を冠者に届けさせようとする話。 しかし冠者は途中で恋文を破り捨ててしまう。 能「恋重荷」をパロディにしているらしい。 中世男色文化を舞台は批判的に描いているようにみえる。 *劇場website、 https://www.ntj.jac.go.jp/schedule/nou/2024/7162/

■能楽堂六月「誓願寺」

*国立能楽堂六月特別公演3舞台のうち□1舞台を観る. □能・宝生流・誓願寺(小書:来迎拍子・札之仕形) ■出演:朝倉俊樹,大日方寛,野口能弘ほか ■国立能楽堂,2024.6.29 ■「茶壷」「藤戸」は都合がつかなくて「誓願寺」のみを観る。 これは時宗一遍上人が賦算をしている寺境内に和泉式部の霊が登場し往生を願う話である。 小書きが二つ入る。 「札之仕形(ふだのしかた)」は上人から前シテが念仏札を実際に受け取り、「来迎拍子(らいごうびょうし)」は後シテが足拍子を踏む場面が入る。 舞台ではシテとワキ、シテと地謡の掛け合いが多い。 境内の騒々しさが伝わってくる。 一遍の踊念仏が想像できる。 この作品は面白さがイマイチだ。 時宗の宣伝が強すぎるからである。 和泉式部がこの世に戻った理由も深くは感じられない。 一遍が寺の額を掛け替えるのもよく分からない。 でも新仏教が栄えた13世紀鎌倉時代なら、この舞台は時宗の衝撃的コマーシャルとして民衆に受け入れられただろう。 あの和泉式部も一遍上人にぞっこんなのだから。 *劇場website、 https://www.ntj.jac.go.jp/schedule/nou/2024/6184/ *追記・・舞踏家中嶋夏の訃報を新聞で知った。 最後に観た舞台は「もうひとつの共和国」(2009年1月)だった。 調べると「 和栗由紀夫、魂の旅 」(2018年4月)の主催者にもなっていた。 いま彼女の舞台を思い返す・・。

■デカローグ9・10

■原作:クシシュトフ・キェシロフスキ他,翻訳:久山宏一,上演台本:須貝英,演出:小川絵梨子,出演:伊達暁,万里紗,宮崎秋人,堅山隼太,石母田史郎,亀田佳明ほか ■新国立劇場・小劇場,2024.6.22-7.15 ■「デカローグ9」は妻の不倫を夫が悩む話、「デカローグ10」は父の遺産を子供たちが失う話です。 前者は妻の心の内を途中で見失ってしまった。 10話を振り返ると、このようなことはよくあった。 これを謎として受け取りたいが、今回は謎にしてくれない。 謎はドキドキする。 いま「十戒」の言葉をあらためて眺めているが、ドキドキしない理由は「十戒」にも原因がありそうです。 10話は西欧キリスト教的社会が持っている硬直性を描いたのかもしれない。 しかも、舞台が身をもってそれを提示したのです。 *劇場、 https://www.nntt.jac.go.jp/play/dekalog-de/

■デカローグ7・8

■原作:クシシュトフ・キェシロフスキ他,翻訳:久山宏一,上演台本:須貝英,演出:上村聡史,出演:吉田美月喜,章平,津田真澄,高田聖子,岡本玲,大瀧寛ほか ■新国立劇場・小劇場,2024.6.22-7.15 ■聴こえてくるピアノ演奏も、流れていく舞台のテンポも、そしてフェードアウトの場面切替も、すべてに映画を感じます。 「デカローグ7」は母と娘の確執を描きます。 娘の産んだ子供を娘の母が離さない。 母の行動に戸惑ってしまう。 十戒を背負った家族関係と見慣れている家族との違いでしょうか? この戸惑いは今も続いています。 「デカローグ8」はポーランドの過去を出現させます。 1943年のワルシャワへ下降していく。 そして再び現代へ上昇しながら鎮魂へと向かう。 ポーランド映画も考えてしまった。 アンジェイ・ワイダからロマン・ポランスキーへ、そして原作者へ。 デカローグの中では印象に残る作品でした。 *劇場website、 https://www.nntt.jac.go.jp/play/dekalog-de/ *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、上村聡史 ・・ 検索結果は8舞台 .

■ジャンポール・ゴルチエのファッション狂騒劇

■監督:ヤン・レノレ,出演:ジャン=ポール・ゴルチエ,マドンナ,カトリーヌ・ドヌーブ他 ■配信,(フランス,2018年作) ■1年前の2023年6月に東急シアターオーブで上演されたランウェイ・ミュージカル「ファッション・フリーク・ショー」の作成過程を撮影したドキュメンタリー映画です。 残念ながらこの舞台は観ていません。 ゴルチエのゴッツイ感じのファッションに興味が湧かなかった為もあります。 「ファッション・フリーク・ショー」はゴルチエの半生を描いている。 舞台ではゴルチエ役の俳優が子供から大人に成るまで何人も登場する(らしい)。 当ドキュメンタリーの進行役はゴルチエ自身が担当している。 構造は劇中劇と言ってもよい。 これが映画を面白くしている。 「ランウェイ・ミュージカル」とはファッション・ショーの間に歌や踊りを挿入する舞台を言います。 彼のコレクションは舞台によく似合うと思う。 これに彼の激動?の半生を被せるので結構盛り上がるはずです。 でも初日が終わったスタッフの感想は納得できなかった。 彼の半生を描く場面群が断片化され物語の繋がりが弱まってしまったのでしょう、想像ですが。 今となっては<フリーク>が演じられた舞台を観ることができない。 でも完璧主義者ゴルチエの姿を拝見できたのは嬉しい。 *映画com、 https://eiga.com/movie/99194/

■白き山

■脚本:古川健,演出:日澤雄介,出演:緒方晋,浅井伸治,西尾友樹ほか,劇団チョコレートケーキ ■下北沢・駅前劇場,2024.6.6-16 ■敗戦直後、郷里山形での歌人斎藤茂吉の晩年を描いた舞台です。 ・・茂吉の創作活動は衰えていた。 戦争の高揚感が失われた為もある。 戦争支持を謡った茂吉の短歌は息子宗吉から観念的だと指摘されるが今も信念を曲げようとはしない。 「戦争協力はやむを得なかった」と逃げ台詞も吐く。 ある日、茂吉は家政婦に気に入った歌は何か?と質問したが、短歌集「死にたまふ母」と聞いて満足する。 しかし家政婦はこの戦争で息子を亡くしていた。 これを聞いて茂吉は戦争協力歌が腐りきっていたことを認め目覚める。 彼は心を新たにして最上川を謡い始める・・。  物語に引きこまれていく力が舞台にありました。 カーテンコールでの観客の拍手も力強かった。 ベクトルが強い劇団で頼もしい。 帰宅後に茂吉本人、息子の茂太と宗吉、妻輝子や山口茂吉などを少し調べてみました。 そして再び舞台場面を思い出してみる。 背景の蔵王連峰が眩しかったですね。 *CoRich、 https://stage.corich.jp/stage/314600 *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、日澤雄介 ・・ 検索結果は11舞台 .

■消しゴム山

■作・演出:岡田利規,セノグラフィー:金氏撤兵,劇団:チェルフィッチュ ■世田谷パブリックシアター,2024.6.7-9 ■舞台上にオブジェらしきモノが一杯置いてある。 テニスボールや洗剤ボトル、猫看板?、土管や木枠も・・、その奥にあるコンクリートミキサーの回転音が場内に響いている。 役者5人はオブジェを動かしたりするので科白が少ない。 しかも喋る時はコード付きマイクを使います。 この為いつもの身体動作が使えない。 雨具に着替えたりもする。 モノの間を歩くので演技が散漫にみえます。 後半、マイクは使わないがモノをいじったり動かしたりすることが多くなっていく。 話題にするのは洗濯機の故障、タイムマシン、未来人の移民のこと、また詩の朗読も入る。 「津波被害を防ぐ高台の造成工事は驚異的な速度で風景を人工的に作り変え・・」そこから「人間的尺度を疑う作品を作る・・」。 作者の挨拶文です。 洗濯機が故障すると分解され名無しのモノモノに近づく。 防波堤と住民生活の齟齬も語っていたが、巨大な防波堤が生活を圧迫する感覚はモノ不安そのものです。 でも、これらモノモノが舞台上のオブジェに繋がっていかない。 それは、オブジェが舞台に上がると美術を装ってしまうからでしょう。 舞台美術になってしまった。 故障した洗濯機や防波堤とは少し違う。 モノ主役の舞台を長時間も観続けるのはシンドイですね。 かなり疲れました。 いや、この疲労こそ人間的尺度を疑う舞台に接したときの体感なのか? ところで母子の客が目につきました。 小学生低学年が多い。 舞台を解放すれば子供たちは喜ぶでしょう。 *劇場、 https://setagaya-pt.jp/stage/17416/

■能楽堂六月「ぬけから」「放下僧」

*国立能楽堂六月普及公演の□2舞台を観る. □狂言・和泉流・ぬけから■出演:井上松次郎,鹿島俊裕 □能・喜多流・放下僧■出演:大村定,大島輝久,則久英志ほか ■国立能楽堂,2024.6.8 ■プレトーク「放下僧、禅と仇討ち 芸尽くし」(三浦裕子)は放下の全体像を描く。 放下僧とは? 禅宗との関係(団扇、弓矢の謂れ)、世阿弥との関係(自然居士、花月等)、放下の装い、放下の芸(鞨鼓、小歌、こきりこ)、そして仇の正当化、京都「揉まるる」物尽くしを解説する。 「ぬけから」は酒を呑み過ぎた太郎冠者が主人の命を忘れてしまう話。 吞みっぷりがいい。 なんと、太郎冠者の顔が次第に赤くなってきたようにみえた!? 「放下僧(ほうかぞう)」は父の仇討ちをする牧野小次郎とその兄の話。 緊張感ある舞台だ。 弓矢の謂れ「浄穢不二(じょうえふに)」、宗旨の答え「教外別伝(きょうげべつでん)」の場では血気に逸る弟を止める兄の姿、利根信俊や従者の対応など緊迫度は120%。 シテを中心に張りつめた演技がヒシヒシと伝わってくる。 囃子の演奏も聴こえてこない程になる。 後半の芸尽くしも楽しい。 *劇場website、 ぬけから・放下僧

■Medicine メディスン

■作:エンダ・ウォルシュ,演出:白井晃,出演:田中圭,奈緒,富山えり子,ドラム奏者:新井康太 ■シアタートラム,2024.5.6-6.9 ■タイトルから医療関係の話と分かる。 精神科での演劇療法は聞いたことがある。 それに近い? でも混乱しました。 登場人物3人は何者なのか? パジャマ姿の男性は患者で他の二人は医療従事者にみえます。 患者が役者になり自身の過去を演じ精神の解放を目指す治療方法かもしれない。 でも患者は雁字搦めですね。 自分の過去さえ脱線が許されない。 彼は精神を病んでいるのか? 最初に戻るが、やはり医療の話なのか? 「1984年」の類似作品かもしれない。 終幕、過去に出会った近所の女性に患者は癒される。 劇中劇では医療従事者の女性役者です。 彼女は恋人には見えない。 彼の理想の母か? むしろ聖母のような位置づけでしょう。 この劇的な出会いは突然だが平凡な結果にみえる。 ストーリーが深みへ進まず、彼の心に何も堆積されていかなかったからです。 しかし治療からみると謎が残る。 この終幕も治療の一環なのか? つまり、治療は成功したのか? いや、この出会いは治療外のことなのか? そして、なによりも劇中劇から抜け出したのか? ・・? 二人の医療従事者は、変装あり歌ありダンスありの芸達者です。 動きも機敏です。 マイクとスピーカを使い歌唱は録音、科白もリアルと録音を混ぜて複雑な構造になっている。 ドラムも出しゃばらずに巧い演奏をしていた。 わからない事が一杯の舞台でしたね。 帰りにプログラムを買おうとしたが止めました。 作者や演出家の話で情報量を増しても楽しくない。 素直な驚きを何も加えずに持ち続けるのが良いでしょう。 作者は謎や混乱を上手く使いますね。 演出家もこれを巧みに装飾していました。 二人の相性は抜群だとおもいます。 ところで観客の9割以上が女性でした。 贔屓筋でしょうか? *劇場、 Medicine メディスン

■能楽堂六月「地蔵舞」「水無月祓」

*国立能楽堂六月定例公演の□2舞台を観る. □狂言・大蔵流・地蔵舞■出演:山本東次郎,山本凛太郎ほか □能・古本による・水無月祓■出演:浅井文義,大日方寛,山本則秀ほか ■国立能楽堂,2024.6.4 ■「地蔵舞(じぞうまい)」は、旅僧が頓智を利かして宿に入り主人と酒を飲み舞を舞う。 後半、酒を飲み交わす所からが楽しい。 地蔵舞は初めて観たが歌詞も舞も面白い。 「水無月祓(みなづきばらえ)」は先日に観た「加茂物狂」と似ている話で混乱する。 男女の別れ場面、見知らぬ男同士の上京など写実的な流れが続く。 早い中入、また物着や中ノ舞もあり全体構成が変化に富んでいる。 囃子・謡に緊張感が出ていた。 シテの声も通っていた。 しかし男女関係が現実的なためか物狂いとしての舞いが豊にみえない。 能としての不思議世界が現れなかった。 シテ面は「孫壱(まごいち)」。 *劇場website、 https://www.ntj.jac.go.jp/schedule/nou/2024/6180.html?lan=j

■つばめ

■作曲:G・プッチーニ,指揮:スペランツァ・スカップッチ,演出:ニコラ・ジョエル,出演:エンジェル・ブルー,ジョナサン・テテルマン,エミリー・ポゴレルツ他 ■東劇,2024.6.1-6(メトロポリタン歌劇場,2024.4.20収録) ■初めて観る作品なの。 期待を持って映画館へ向かう。 舞台は19世紀末の分離派ウィーンを感じる、衣装もね。 でも1920年代のパリらしい。 場面はサロンからカフェ、そして避暑地へと移る。 歌唱を心地よく聴くためのストーリー構造だわ。 ドラマを隠しているからよ。 裏は非日常だが表は日常を、それも疑似的に描いているの。 匿名じみた人物たちはどこか不安が漂っている。 歌詞・歌唱も「愛」の表面をなぞっていくだけ。 でもプルニエとリゼットの一時の笑いがそれを和ませてくれた。 指揮者のインタビューで謎が解ける。 ウィーンからのオペレッタ依頼に変更を加え、第一次大戦さなかの1917年に完成した作品らしい。 「ドビュッシーの印象主義」を掲げていたが「ほろ苦い人生」「振り返る人生」をこの作品は表現している。 普段を整いながらも舞台に漂う雰囲気は大戦の影響からきていることも分かる。 高級娼婦と純心青年の物語だが「椿姫」と比較されるのが痛い。 公演回数も少ない。 心の旅路を歌った燕は静かに身を移すの。 「・・海を渡って飛んでいく。 夏の明るい国へ。 そして再び戻ってくる・・」。  「プッチーニのエレガントで洗練されたオペラ」はじわっと効いてくるわね。 *METライブビューイング2023シーズン作品 *MET、 https://www.shochiku.co.jp/met/program/5533/

■初級革命講座・飛龍伝

■作:つかこうへい,演出:マキノノゾミ,出演:武田義晴,吉田智則,木下智恵 ■下北沢OFFOFFシアター,2024.5.28-6.2 ■いつもと少し違う客層です。 平均すると若くないが老いてもいない。 バラケています。 癖のあるタイトルに興味を持つ客が集まったのか? つかの人気が衰えていないのか? 全学連学生と機動隊の若者が対等にぶつかり合うところが舞台の要です。 二人の出自は戦後日本を代表している。 学生は時代の波にぶら下がった中流階級に属し、隊員は貧しい農村から上京して下町の安アパート住まいをしている。 革命という言葉でアイデンティティを証明しようとする学生の空虚な熱狂、そこに油を注ぎ祭りを終わらせない隊員の熱意。 戦後経済成長時代の青春群像を先鋭化させた舞台は、めちゃ熱い。 その熱量は終幕まで落ちない。 カーテンコールの拍手も今年一番の熱気が感じられました。 *CoRich、 https://stage.corich.jp/stage/308201 *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、つかこうへい ・・ 検索結果は3ブログ . * 飛龍伝前夜譚 ・・熊田「さてと・・、今日のデモは途中で抜け出したいから、フロントは避けてベ平連の後ろにくっ付いていくか・・。 ・・、それッ、アンポォオ!フンサアイ!・・」。 山﨑「なぜ抜け出すんだ?」。 熊田「シモキタで芝居に出る為だよ。 ハッハッハッ!」。 山﨑「オ、オマエは、デモより芝居が大事なのか!?」。 熊田「劇団に入ったんだ。 山﨑も機動隊なんか辞めて劇団に入れよ!」。 山﨑「よし、すぐに辞表を出して俺も役者になるぞ! で、何を演ずるんだ?」。 熊田「飛龍伝!」。

■越境する紅テント、唐十郎の大冒険

■司会:松嶋菜々子,語り:濱田丘 ■NHK・配信,2024.5.27(NHK,2021.2.11作成) ■唐十郎が逝ってしまった。 この追悼映像はドキュメンター形式で3章(司会者は分岐点と言っている)で成り立っている。 1967年8月に花園神社で紅テント初公演。 これが第一の分岐点。 小林薫、大久保鷹、麿赤児、不破万作、根津甚八へのインタビューが続く。 舞台美術の篠原勝之が「唐の手書き台本を劇団員が読み始めると唐本人が感動して泣いていた」「その手書き台本は米粒のような文字で書き損じもなく結末まで一気に書いてあった」。 ・・!! 第二の分岐点は1970年代の戒厳令下での韓国公演から始まる。 記者の菱木一義、作家の村松友視のインタビューが入る。 金芝河と日韓反骨演劇人同盟を設立し「二都物語」をソウルで公演。 続いてバングラディシュ、レバノンのパレスチナ難民キャンプで「風の又三郎」などを公演。  そして中村勘三郎への影響が第三の分岐点。 中村勘三郎は19歳の時から紅テント公演を観ていた。 「紅テントは歌舞伎の原点である」。 平成中村座は紅テントを参考にしたはずです。 唐十郎の言葉と役者身体がシンクロしたとき異次元世界が舞台に出現する。 この<言葉>と<身体>が核融合する唐体験は観客の心に宝として残り続けていきます。 *NHKアナザーストーリーズ運命の分岐点作品 *ステージナタリーwebsite、 唐十郎の大冒険 *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、唐十郎 ・・ 検索結果は15ブログ .

■デイダミーア

■作曲:G・ヘンデル,指揮:鈴木秀美,演出:中村蓉,出演:清水理沙,田中沙友里,渡辺智美ほか,二期会合唱団,管弦楽:ニューウェーブ・バロック・オーケストラ・トウキョウ ■めぐろパーシモンホール・大ホール,2024.5.25-26 ■演奏が始まって古楽器が混じる音色に耳を傾けると久しぶりのヘンデルに癒されていくのがわかる。 舞台ではカラフルな置物が船になり食卓になり、ボールやフラフープそして風船を持ってダンサーたちが踊り回る。 それにソプラノ系歌手が大半の為か、おとぎの国にいるようだわ。 この作品は王の娘デイダミーアとアキッレ(戦士アキレス)の恋愛を描いているの。 しかもアキッレはズボン役で女装の二重変装と凝っている。 終幕、アキッレは鎧に着替えてトロイア戦争に赴き、さいごに戦場で踵を砕かれ戦死してしまう。 デイダミーアの悲恋が多く歌われるが、それ以上にアキッレの戦士への思いが強く出ていたのが印象深い。 アリアの数はデイダミーアが7回、アキッレが3回。 演奏はともかく演出・振付は戦士への軽快さを求めていたから。 鹿の角を付けた合唱団も楽しい。 心が軽くなり都立大学駅迄の帰り道はアキッレのように爽快に歩いたわよ。 ところで、なぜアキッレは踵(かかと)が弱いのか? 母がアキッレを不死にするため黄泉の川に浸した時に母の手が子の踵を掴んでいたのでこの部分だけが不死にならなかった、と聞いている。 *二期会2023シーズン作品 *二期会ニューウェーブ・オペラ劇場 *二期会website、 デイダミーア *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、中村蓉 ・・ 検索結果は2舞台 .

■ワーニャ

■作:A・チェーホフ,脚本:サイモン・スティーヴンス,演出:サム・イェーツ,出演:アンドリュー・スコット ■TOHOシネマズ日本橋,2024.5.24-(デューク・オブ・ヨーク劇場,2024年収録?) ■なんと一人芝居です。 一人8役ですか? 最初は戸惑いました。 誰と誰が舞台に居るのか?、誰が誰に話を仕掛けているのか? でも直ぐに慣れます。 ヘレナはネックレスを触りソニアはナプキンを揉むのは演出の計らいでしょう。 しかもソニアの父は大学教授ではなく映画監督!? 教授の世間知らずは分かるが映画監督は社会や組織に敏感なはず。 組織重視の監督はこの作品に合わない。 そして、やはりですが一人芝居は喜劇性が強まる。 発声や表情、仕草で役を分けるためです。 映像内の観客は笑いが絶えない。 映画館内も珍しく笑いが聴こえる。 もちろん私もですが。 喜劇だ悲劇だと言われているが、どちらにも転べるのがチェーホフの面白さでしょう。 もちろん後半は笑いが少なくなる。 旅立ちの場面はしみじみとしてしまいました。 アンドリュー・スコットは抑えが効いていましたね。 終幕はもっと抑えてもよい。 新鮮な驚きはあったがチェーホフとしては70点かな。 *NTLナショナル・シアター・ライヴ *映画com、 https://eiga.com/movie/101145/

■デカローグ5・6

■原作:クシシュトフ・キェシロフスキ他,演出:小川絵梨子,村上聡史,出演:福崎那由他,仙名彩世,田中享ほか ■新国立劇場・小劇場,2024.5.18-6.2 ■今回も2本立てです。 小川絵梨子演出「デカローグ5」はタクシー運転手殺害の青年が死刑宣告を受け執行される話。 被告はなぜ殺人を犯したのか? 被告から妹のことなどが語られるが動機に結びついていかない。 科白が少ないこともある。 弁護士は被告よりも饒舌だが主人公にはみえない。 そして科白や音楽のリズムはまさに映画と言ってよい。 煮え切れない真相と主人公の不在で迷ってしまうが死刑執行が止めを刺します。 上村聡史演出「デカローグ6」は魅力的な女性の部屋を望遠鏡で盗み見る青年の話。 距離感のある望遠鏡を持ち出すのも映画的です。 ドアの開け閉め、呼び鈴などの効果音も同じですね。 今ならストーカーだが、青年の異性への未熟さが巧く表現されていた。 「人は何故泣くのか?」という青年の質問には驚きましたが。 主人公役の福崎那由他と田中享は演劇と映画の境界を上手に漂っていたのが印象に残りました。 ところで原作者の映画は観ていません。 *NNTTドラマ2023シーズン作品 *劇場、 デカローグ5・6

■能楽堂五月「入間川」「加茂物狂」

*国立能楽堂五月普及公演の□2舞台を観る. □狂言・和泉流・入間川■出演:野村万蔵,野村万之丞,野村万禄 □能・宝生流・加茂物狂■出演:佐野登,福王知登,福王和幸ほか ■国立能楽堂,2024.5.11 ■プレトーク「葵祭の社に舞う女」(梅内美華子)を聴く。 葵祭のこと、橋本神社の藤原実方や彼の左遷を命じた一条天皇、岩本神社の在原業平、復曲作品「 賀茂物狂 」との比較などを話す。 昨年の「賀茂物狂」は前場の神主と狂女の対話が長く110分と記憶している。 今日の「加茂物狂」はコンパクトにまとめてあり上演時間も80分と短い。 前場を神主一人で語る為である。 夫婦の再会をテーマにしているが控えめな行動で清々しい。 狂女がなにを考えているのか迷う場面があった。 物狂とは何かを考えさせられる舞台だ。 ワキ方(神主、都の者)がしっかりしていて舞台に緊張感が出ていた。 シテ面は「若草女」。 「入間川」は入間様という逆言葉を使う風習を取り上げている。 例えば「深い」とは「浅い」という意味になる。 台詞も舞台も上手にまとまっていて笑いが自然と出てきた。 *劇場website、 入間川・加茂物狂

■悪童日記

■原作:アゴタ・クリストフ,翻訳:堀茂樹,台本・演出:山口茜,劇団:サファリ・P他 ■Peatix・配信,2024.4.27-(THEATRE E9 KYOTO,2024.4.12収録) ■原作も知らず、すべてが曖昧のまま舞台は進んでいきます。 ・・少年らしき二人と祖母の関係がみえてくる。 背後には戦争が迫っているらしい。 母もいつのまにかそこに居るが、役者5人が識別できず詳細を気付けない。 司祭と聞いて場所はキリスト教圏と分かる。 終幕、戦場帰りの父も姿を現す・・。 戦争の悲惨と家族の崩壊を描いているようです。 東欧や中東などの戦争や内乱に結びついていく。 戦争下の生活を思い描けるか?を問うているようにもみえる。 ここで「悪童日記」について調べる。 1986年の作らしい。 19世紀末の物語とみていたが時代も場所も書かれていない。 双子少年と家族間にある暴力性、宗教の教えはどれも古臭い。 世界は考えている以上に古い儀礼や慣習で動いている。 このようにも聴こえる。 役者たちが机を動かしながら物語を進めていきます。 そこに切れ味の鋭い動きやダンスそして科白が入る。 簡素で写実的な台詞です。 双子は悪童そのものだが、戦争を肯定してしまう世界と比較すれば彼らは些細な存在なのかもしれない。 記録映像用の固定カメラで撮影しているらしく、パソコンでは役者の表情は見え難い。 カメラをあと2メートル舞台に近づけば役者がよりハッキリするはず。 でもこれだと客席の中にカメラを設置することになりそう。 やはり小劇場の映像配信は確認用でしかない。 *サファリ・P第10回公演 *CoRich、 悪童日記 *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、山口茜 ・・ 検索結果は4舞台 .

■能楽堂五月「隠笠」「夕顔」

*国立能楽堂五月定例公演の□2舞台を観る. □狂言・大蔵流・隠笠■出演:山本則孝,山本則秀,山本則重 □能・観世流・夕顔(山ノ端之出,法味之伝)■出演:岡久広,野口能弘,野口琢弘ほか ■国立能楽堂,2024.5.8 ■「隠笠」の出演者三人の氏名は略同じである。 強く響いてくる声や動きも似ている。 同じ師匠の為かもしれない。 70年代生まれで内二人は兄弟のようだ。 能狂言を支えている強固な構造が見えるが維持していくのは大変だろう。 プログラム「この人に聞く、第7回松野恭憲」では20世紀中頃の能世界が語られる。 当時の稽古の厳しさなどが分かる。 今もこのように引き継がれているのかな? 「夕顔」の詞章を読んでいる時は気にしなかったが、夕顔自身が「源氏物語」を説明する場面がある。 これは劇中劇か? 前場は「源氏物語」が絡まってしまい意識が分散してしまった。 後場はこれから解放されたが。 夕顔は物語から素直に飛び出して欲しかった。 シテ面は「若女」。 *劇場website、 5月定例公演隠笠・夕顔

■かもめ

■作:A・チェーホフ,演出:トーマス・オスターマイアー,劇団:ベルリン・シャウビューネ ■静岡芸術劇場,2024.5.3-6 ■いつもの座席はそのままにして隠し、新しい客席を舞台上に敷設してある。 ほぼ円形のため役者と観客の距離が近い。 しかも役者は観客をときどき挑発します。 チェーホフにしては荒々しい感情を前面に出している。 コースチャとニーナの劇中劇から始まります。 ここが結構長い。 そして二幕の、ニーナとトリゴーリンの会話も長く感じる。 科白も即興のようなところがある。 おもしろい流れです。 でもチェーホフのジワッとした心の揺れがいつものように来ない。 直截のため表層で滑るような揺れが心に突き刺さるからでしょう。 帰りの新幹線は連休のため混んでいたが座れたので「劇場文化」を読むことにする。 「いろいろな愛のあり方を・・、きちんと表現した」(ジョセフ・ピアソン)。 そのように見えました。 「俳優にかなり自由が与えられ、・・俳優の言葉で言い直すようにした」(同)。 これでいつもより長い、あるいは短い、起伏の激しい場面が現れたのか? なかでもトリゴーリンが目立っていた。 「絶望的に悲しいのにおかしい」(同)。 この相反する両者が結果として強調されていましたね。 このブログを書いている今も、舞台の生々しい雰囲気が記憶に留まり続けています。 *ふじのくに↔せかい演劇祭2024 *劇場website、 かもめ

■シンデレラの家

■演出:ジュゼッペ・スポッタ,詩:最果タヒ「シンデレラにはなれない」,衣装:進美影,出演:小林美奈,酒井はな,森優貴ほか,演奏:エレクトロニコス・ファンタスティコス!(和田永ほか),舞団:Kバレエ・オプト ■東京芸術劇場・プレイハウス,2024.4.27-29 ■ヤングケアラーのシンデレラは現代なら有りそうです。 でも継母や父ではなく祖父がケアの対象とは意外でした。 祖父の舞台比重は五月蠅い継母と同じくらいに大きい。 でも介護表現は難しい。 配布資料の詩を事前に一読したので凡そのストーリーは分かりました。 読んでいなければ珍紛漢紛でしょう。 家庭内を演じる場面は意味ある振付が多く楽しさが半減します。 また木材を多用する器械体操のような場面も躍動感が削がれる。 グレーの体操服から黄緑衣装に着替えた後の群舞は一番の見せ場でした。 振付も悪くはない。 それでもオプトの挑戦は見応えがある。 照明や音楽は斬新です。 サティをベースにポップスや映画音楽風の演奏は独特な雰囲気があった。 扇風機のようなギター?やテレビ画面の打楽器?も変わっていますね。 ダンスをみる楽しさがあまりなかったのが残念です。 家具のようなオブジェ操作がリズムを狂わせてしまった。 *劇場、 https://www.geigeki.jp/performance/20240427p/

■天號星 てんごうせい

■作:中島かずき,演出:いのうえひでのり,出演:古田新太,早乙女太一,早乙女友貴,久保史緒里,劇団☆新感線 ■新宿バルト9,2024.4.5-15(ミラノ座,2023.9.14-10.21) ■引導屋の半兵衛と殺し屋銀次の心(=意識)が入れ替わるSF風物語になっている。 この種の話は心が元の身に収まることが多い。 しかし、そうはいかない。 ここが作者と演出家の強いところです。 悪代官とヤクザの談合、用心棒の登場、これに新興宗教が庶民に入り込み、佳境には親子の情を強調し幕が下りる。 歌唱も入り、この手のチャンバラ時代劇はいつ見ても楽しいですね。 役者の演技の激しさは勿論、科白も演技に耐える質・量を持っていました。 *2023年劇団☆新感線43周年興行・秋公演 *ミラノ座オープニング作品 *ゲキxシネ2024年作品 *映画com、 https://eiga.com/movie/100648/

■刀剣乱舞、月刀剣縁桐 つきのつるぎえにしのきりのは

■原案:「刀剣乱舞ONLINE」,演出:尾上菊之丞ほか,出演:尾上松也,尾上右近,中村鷹之資ほか ■シネリーブル池袋,2024.4.5-(新橋演舞場,2023.7収録) ■原作はオンラインゲームらしい。 未来から1550年代に遡り足利義輝の暗殺、いわゆる「永禄の変」を阻止する時間遡行軍と戦う6人の刀剣男子を描く。 物語はしかし、義輝暗殺を実行する気配が無い。 歴史を変えないため刀剣男子が義輝を殺すことになる。 奇妙なストーリーです。 歴史がループしてしまう。 今の歴史が絶対のため面白さも半減ですね。 観後に「永禄の変」を調べたが推測部分も多々あり複雑です。 室町幕府末期のため混乱していたのでしょう。 舞台はヒト・モノを含め歌舞伎のリソースを全て使い切ろうとする構成です。 しかも動きも科白も型に嵌まっていて硬い感じがする。 特に舞踊を取り入れた仕草が際立ちます。 琵琶演奏もある。 新古典派とでも言うのでしょうか? 硬い舞台にもかかわらず観客は若い女性で一杯でした。 贔屓筋ですか? いつものシネマ歌舞伎はオバさんで混み合うのですが・・。 *シネマ歌舞伎作品 *シネマ歌舞伎、 https://www.shochiku.co.jp/cinemakabuki/lineup/2477/

■運命の力

■作曲:G・ヴェルディ,指揮:ヤニック・ネゼ=セガン,演出:マリウシュ・トレリンスキ,出演:リーゼ・ダーヴィドセン,ブライアン・ジェイド,イーゴル・ゴロヴァテンコ他 ■東劇,2024.4.19-25(メトロポリタン歌劇場,2024.3.9収録) ■METでは20年ぶりの上演らしい。 「卓越した歌手の存在と複雑な台本の処理、この二つが揃わないと上演は不可能だ!」。 指揮者がインタビューで答えていたが、今回この二つがクリアできたと言うことね。 はたしてソプラノ、テノール、バリトンの3歌手は聴きごたえ十分。 ただしドン・カルロ役イーゴル・ゴロヴァテンコはMET初出演で張り切り過ぎたかも。 バリトンには聴こえなかった。 そして映像を取り込んだ現代の演出は現実的で、レオノーラの修道院生活との乖離が際立つ。 でも戦争が抽象化され落ち着きを取り戻した後半からヴェルディの世界へ戻っていくことができたわよ。 占い師プレツィオジッラが登場する場面は地獄に直結した雰囲気がでていて興奮、それと存在感ある父の亡霊の度重なる出現もね。 運命の力とは戦争と宗教を絡めて、生まれや育ちなど階級的な社会的出自に関わる力だと思う。 だから当時の皆がヴェルディに熱狂したのね。 *METライブビューイング2023作品 *MET、 https://www.shochiku.co.jp/met/program/5504/ *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、トレリンスキ ・・ 検索結果は4舞台 .

■デカローグ2・4

■原作:クシシュトフ・キェシロフスキ他,演出:上村聡史,出演:前田亜季,益岡徹,近藤芳正,夏子ほか ■新国立劇場・小劇場,2024.4.13-5.6 ■前回と演出家は代わったが舞台の流れは変わらない。 美術も照明も音楽も、そして役者の動きや科白の雰囲気も似通っている為です。 しかし回が積み重なっていくほど人物たちの心の襞は複雑化しているように感じられる。 観客の心に物語が積み重なっていくからでしょう。 今回の2題は結末が分かり難い。 「デカローグ2」は愛人の子供を宿っている妻は重病の夫を前になぜ心境を変化させたのか? 「デカローグ4」は妻からの手紙を夫も娘も読んでいなかったのか? どうであれ、これだけ心を捻り続けるのは十戒の祟りかもしれない。 *NNTTドラマ2023シーズン作品 *劇場、 https://www.nntt.jac.go.jp/play/dekalog/

■デカローグ1・3

■原作:クシシュトフ・キェシロフスキ他,翻訳:久山宏一,台本:須貝英,演出:小川絵梨子,出演:ノゾエ征爾,高橋惠子,亀田佳明,千葉哲也,小島聖ほか ■新国立劇場・小劇場,2024.4.13-5.6 ■二本立てです。 一話完結型の一時間テレビドラマを観ているようです。 重量感は薄い。 「デカローグ1」は安全を検証したにもかかわらず予期せぬ事故で命を落とす話です。 これを宗教に結びつけオチにしている。 「モーセの十戒」を題材にしているらしい。 戒律を読むと当たり前のことしか書いてない。 しかし日本的無神論者の私からみると異様な文章に感じます。 続いて「デカローグ3」を観る。 クリスマスイブに元恋人の女が訪ねてくる話です。 男は素晴らしい家族を持っている。 にもかかわらず、イブの日にここまで女に付き合うのは何故か? 二人の過去をいろいろ想像するが限界があります。 作者は20世紀後半に活躍したポーランドの映画監督です。 数十年前に彼の映画を数本観ているがまったく記憶にない。 今日の舞台も映画らしい雰囲気がある。 例えばパソコン画面の動き、ドライブ場面の処理、ダラダラ続く男女の姿にそれが現れている。 物足りない舞台だったのは映画時間を舞台空間に持ち込んでも熟成し難いからでしょう。 10話で完結するので最後まで観ないと何とも言えないのですが。 *NNTTドラマ2023シーズン作品 *劇場、 https://www.nntt.jac.go.jp/play/dekalog/

(取消)■能楽堂四月「二九十八」「嵐山」他

■国立能楽堂,2024.4.10,4.13 ■体調を崩し寝込んでしまう。 4月10日「二九十八」「嵐山」、13日「靭猿」「吉野静」の観劇はキャンセルする。 布団の中でウツラウツラしていると忘れていた過去が次々に現れる。 退職した仕事の夢もみる。 コンピュータ業務に携わっていたが、いつもスケジュール管理に振り回されていた。 ・・設計書の合意、データベース評価、プログラミング進捗、テスト判定から本番稼働へ・・。 夢に上司や同僚、業者の営業や技術者が登場する。 夢から覚めて、もう<納期>は考えなくていいんだ!と自分に言い聞かせるが・・。 スケジュールは人生に不要だ、と。 *劇場、 https://www.ntj.jac.go.jp/schedule/nou/2024/4149.html?lan=j *劇場、 https://www.ntj.jac.go.jp/schedule/nou/2024/4150.html?lan=j

■NHKバレエの饗宴2024

■指揮:井田勝大,演奏:東京フィルハーモニー交響楽団 ■NHK・配信,2024.3.24(NHKホール,2024.1.27収録) *下記の□5作品を観る. □ルール・ブルー ■振付:イリ・ブベニチェク,音楽:J・S・バッハ他,舞団:東京シティ・バレエ団 ■初めて出会う振付家です。 奇抜さは無い。 動作は大きくもなく速くもない。 バレエ3割ダンス7割の比率ですか? 幾つもの(絵画の)額縁が登場します。 小さな額縁は持って踊る。 薔薇や剣も持つ。 「・・黄昏時にルーブル美術館に飾ってある中世絵画から抜け出した人物たちの恋愛を描いている」。 プレトークで振付家が言っていましたね。 よくある物語だが起伏に富みまとまっていました。 選曲は凡庸だが、ピアノの爽快さから弦楽器の深みへ進む流れが飽きさせない。 □眠れる森の美女-グラン・パ・ド・ドゥ- ■振付:コンスタンチン・セルゲーエフ,出演:永久メイ,フィリップ・スチョーピン,舞団:マリンスキー・バレエ団 ■二人は落ち着いていました。 力量が見えてきます。 永久メイの関節を意識した動きが面白い。 □くるみ割り人形-グラン・パ・ド・ドゥ- ■振付:ピーター・ライト,出演:ワディム・ムンタギロム,金子扶生,舞団:英国ロイヤル・バレエ団 ■二人は貫禄十分です。 安心して観ていられる。 チャイコフスキーを聴くと一気にバレエの世界へ入っていけます。 □幻灯 ■振付:小尻健太,音楽:リヒター(ヴィヴァルティに基づく),出演:中村祥子,小尻健太 ■「人生の節目だ」。 プレトークでの二人の言葉です。 まさに人生の折り返し点の一幕でしょう。 音楽が二人に寄り添っている。 美術と照明は暗いが希望がみえる。 振付も落ち着いていた。 大人の味が出ていました。 □ドン・キホーテ-第3章- ■振付:アレクセイ・ファジェーチェフ,音楽:L・ミンクス,出演:米沢唯,速水渉悟ほか,舞団:新国立劇場バレエ団 ■トリを飾るにふさわしい。 ダンサーたちも最高です。 衣装や美術も素晴らしい。 整然と規律あるところにこの舞団の特徴が現れていた。 米沢唯は知っていたが、いつのまにか知らないダンサーが増えましたね。 新旧交代が激しいのでしょう。 ひととおり観て、気に入った作品は「幻灯」、気に入った振付は「ルール・ブルー」でし...

■TIME

■音楽:坂本龍一,演出:高谷史郎,出演:田中泯,宮田まゆみ,石原淋 ■新国立劇場・中劇場,2024.3.28-4.14 ■中劇場は半年ぶりだが・・、何かが変わった!? 円形客席を180度まで拡張したようです。 吹っ切れた感じですね。 いままでは中途半端で落ち着かない劇場だった。 ただし今日の舞台は奥があるので両端の新客席は使用していない。 そして舞台に目を凝らすと最初はよく分からなかったが水が張ってある? ・・暗いなか、宮田まゆみが笙(しょう)を奏でながら舞台を横切っていく。 水や鐘の音が入り混じる。 田中泯が登場し・・蠢・き・回・る。 映像と朗読は彼本人を事前収録して舞台の演技と同期させていく。 田園や都市の風景も映し出す。 一つ目の話は死に際の女が彼に語り掛ける。 「死にます。 百年経ったら会いにきます」。 そして墓を掘り彼女を埋める。 二つ目の話では彼が旅の途中で夢を見る。 長い夢から覚めたが、「束の間の時だったのだ」。 再び彼は水の中で・・戯・れ・回・る。 百合の花が咲いた。 「百年経たのか」。 終幕、宮田まゆみが笙をふきながら再び水の上を横切っていく・・。 昨日観たジェフ・ミルズのブラック・ホールは空間を意識していたようだが今日の舞台は時間である。 音楽や映像そして二つの語りはとても練られていた。 田中泯も存在感があった。 統合された世界が出現していました。 物語が気になったので帰りにプログラムを購入する。 朗読された原作は「夢十夜」「邯鄲」「胡蝶の夢」。 ブログはここで終わりにしてプログラムの残りを読むことにします。 *パルコ劇場、 https://stage.parco.jp/program/time/ *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、高谷史郎 ・・ 検索結果は6舞台 .

■THE TRIP-Enter The Black Hole-

■演出:ジェフ・ミルズ,美術:C.O.L.O,衣装:落合宏理,振付:梅田宏明,出演:戸川純ほか ■ZEROTOKYO,2024.4.1 ■ジェフ・ミルズのブラックホールへ突入! 音楽・映像・照明そしてダンス、そして詩の朗読が交差する舞台がここに出現する。 ・・宇宙服姿のジェフ・ミルズの挨拶に始まり、彼の操作するドラムマシンから発するテクノポップ、背景にブラック・ホールらしき映像を映し出した舞台。 そこに4人のダンサーたちが踊りまくる。 途中、ボリューム感あるケープを纏う戸川純が詩のような短い科白を朗読し、再びダンス、朗読、ダンスと続く・・。 総合芸術としてまとめあげるのは大変ですね。 ダンス振付はリズム感ある音響に合わない、照明も音響に追随できない、宇宙観を伴う映像は凡庸。 即興が命ですがちょっと噛み合わなかった。 視覚と聴覚そして言語を身体へ凝縮・統合することができるか? *劇場、 COSMIC LAB presents JEFF MILLS『THE TRIP -Enter The Black Hole-』 supported by AUGER | ZEROTOKYO | Shinjuku Kabukicho

■トリスタンとイゾルデ

■作曲:R・ワーグナー,指揮:大野和士,演出:デイヴィッド・マウヴィカー,出演:ゾルターン・ニャリ,ヴィルヘルム・シュヴィングハマー,リエネ・キンチャ他,管弦楽:東京都交響楽団 ■新国立劇場・オペラパレス,2024.3.14-29 ■薬や酒を前面に出すと舞台は大きく揺れる。 これを脇役にできるかどうかが要ね。 当作品の媚薬が効き過ぎるのはいつもの通り。 そして美術は抽象的で歌手の動きは少ない。 すべてワーグナー風だが有機的に熟成していかない。 演出家デイヴィッド・マクヴィカーのワーグナーは初めてよ。 彼はワーグナーが苦手なのかもしれない? 舞台は2010年シーズンの再演らしい。 これは見逃しているの。 指揮は再び大野和士で、休息を含め上演時間は5時間半。 演奏はぶれないし都響が気持ちよく聴かせてくれる。 そしてマルケ王は存在感があった。 トリスタンがちょっと疲れていたかな?、幕が進むほどきつくなるし・・。 今回はタイトルロールの二人が変更になってしまった。 トリスタンは2カ月前の交代のため慌ただしい。 これも媚薬を操れなかった理由かもね。 それでも作品の持つずっしり感は心に届いたわよ。 *NNTTオペラ2023シーズン作品 *劇場、 https://www.nntt.jac.go.jp/enjoy/record/detail/37_027412.html *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、デイヴィッド・マクヴィカー ・・ 検索結果は11舞台 .

■新ハムレット

■作:太宰治,演出:早坂彩,出演:太田宏,松井壮大,たむらみずほ他,劇団:トレモロ,青年団ほか ■こまばアゴラ劇場,2024.3.22-31 ■・・オフィリヤは王妃ガーツルードに「あなたを尊敬していた!そして母の匂いがするハムレットは嫌いだ!」と。 ハムレットは叔父クローヂヤスに「あなたは一生懸命に王の務めを果たしている!」と。 侍従長ポローニアスは留学する息子レヤチーズに「学友は年上一人と同学年一人だけでよい。試験の癖を教えてもらいノートを貸してもらえるから」と・・。 登場人物は思いもよらない言葉を発する。 真坂!な驚きが次々とやってきますね。 原作は読んでいません。 が、さすが太宰治、捻りが効いている。 ・・父殺しの劇中劇を観てクローヂヤスが笑いガーツルードが怒り狂う、そして何と!ポローニアスはクローヂヤスに殺される・・。 他者の心は知ることができない! 芝居はそう言っているようにみえる。 言葉は心を表さない、と。 そして不安になり、より激しい言葉で相手の心を読もうとする。 (「殿下何をお読みで?」「言葉、言葉、言葉!」)。 でもオフィリアは「愛が言葉以外にないとしたらつまらない」と言ってましたね。 「ハムレット」をグッと近くに引き寄せたあとにスカッと遠くへ投げ飛ばした舞台でした。 * CoRich、 https://stage.corich.jp/stage/298409 *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、早坂彩 ・・ 検索結果は2舞台 .

■クリーチャー CREATURE

■振付:アクラム・カーン,音楽:ヴィンチェンツォ・ラマーニャ,指揮:ギャヴィン・サザーランド,出演:ジャフリー・シリオ,高橋絵里奈,猿橋賢ほか,舞団:イングリッシュ・ナショナル・バレエ ■NHK・配信,2024.3.17(マライアン・センター・フォー・ダンス(ロンドン),2021.4.19-5.2収録) ■近未来SF物語をバレエ団も取り込み始めた!? 人類生存のための人体実験を北極圏で行っているらしい。 主人公クリーチャーは野蛮人というか奴隷のように描かれている。 脳と電磁波が同期し心身は乱れロボットのように踊りまくる。 厳しい管理下で人間が持っている原初の心と体を忘れずにいることができるだろうか?  振付家アクラム・カーンの舞台をじっくり見るのは初めてだが、手の動き顔の表情そして鋭い動きはカタックを感じさせます。 美術や雰囲気も混沌とした洞窟街を思い出させる。 途中ボレロが聴こえていましたね。 ダンスのため科白は無いが、観客が台詞を自由に付けられるストーリーです。 どうにでも解釈ができる。 人類の閉そく感が漂います。 *English National Ballet、 https://www.ballet.org.uk/production/creature/

■N/KOSMOS

■原作:ヴィトルド・ゴンブローヴィッチ,演出:小池博史,演奏:ヴァツワフ・ジンペル,出演:松島誠,今井尋也,荒木亜矢子ほか ■東京芸術劇場・シアターイースト,2024.3.21-24 ■・・聴こえてくる太鼓のリズムと熱気ある行進。 社会主義崩壊前夜の東欧狂乱を描いているのでしょうか? 交じり合う映像や小道具が分裂症的世界を招き、舞台は乱痴気騒ぎが充満していく。 ときどき小鼓の響きが空間を引き締め、そして何よりもサクスフォンの生演奏が<リアル>に吠えてくる・・。 ポーランドの役者にスラブ系の荒々しさが漂います。 カトリック(?)司祭の<宗教と性欲>の葛藤が他住人に乗り移っていくような、あるいはその逆のストーリーです。 (いつもと)変わったリズムと面白さがある。 それは<聖と俗>の具体を取り込んだからでしょう。 これが宙吊状態を生み、新たな芸術世界=調和として提出したようにみえる。 世界連携の成果と言えます。 *小池博史ブリッジプロジェクトOdyssey作品 *ポーランド・グロトフスキ研究所共催 *2024都民芸術フェスティバル参加作品 *劇場、 https://www.geigeki.jp/performance/20240321te/

■能楽堂三月「花争」「鸚鵡小町」

*国立能楽堂三月特別企画公演の□2舞台を観る. □狂言・大蔵流・花争■出演:山本東次郎,山本則重 □能・観世流・鸚鵡小町(杖三段之舞)■出演:観世清和,宝生常三ほか ■国立能楽堂,2024.3.20 ■「花争(はなあらそい)」は、「はな?、さくら?」どちらが正解? ・・どちらでもよい。 それは証歌でもわかる。 でも「はな>さくら」の不等式が成立する。 「鸚鵡小町(おうむこまち)」は特別公演のため囃子・地謡は肩衣を付けての登場。 緊張感溢れる舞台だった。 シテ小野小町は雑音を出さない。 小書「杖三段之舞(つえさんだんのまい)」は解説を読んでいたので分かった。 舞の途中で休息も入る。 面は「姥(うば)」だったが嬉しそうに舞っていた。 小町は昔を思い出したのだ。 狂言・能ともに出演者の演技には200%満足。 *劇場、 https://www.ntj.jac.go.jp/schedule/nou/2023/3186.html?lan=j

■田園に死す

■原作:寺山修司,脚色・構成・演出:天野天街,音楽:J・A・シーザー,芸術監督:流山児祥,出演:大内厚雄,寺十吾,小川輝晃ほか ■スズナリ,2024.3.14-24 ■幕が開いて直ぐに<壊れ時計>が演じられたが調子が狂ってしまった。 反復は演出家得意の技法だがここまで繰り返されると諄いとしか言いようがない。 しかし徐々に天街の世界に入っていくことができました。 それは乾いた規則性のある舞台です。 主人公の分身たちの出会いが舞台に堆積していく。 さらに劇中劇が追い打ちをかける。 科白は絡み合い昇華され、ここに懐かしい寺山修司の世界が出現する。 この熟成に2時間半が必要だった。 久しぶりの寺山ワールドを堪能しました。 *寺山修司没後40年記念認定事業 *第44回紀伊國屋演劇賞団体賞受賞作品 *CoRich、 https://stage.corich.jp/stage/303259

■assimilating、梅田宏明

■振付・出演:梅田宏明,製作:S20,プロデューサー:田野入涼子,テクニカルディレクション:岩田拓朗 ■横浜赤レンガ倉庫1号館3Fホール,2024.3.16-17 ■先ずは展示室で「Haptic Installation」(2010)「choreograph1-water」(2023)を観る。 前者は聴覚、後者は視覚に向き合う美術作品で彼の舞台を連想させる。 次に、プレトーク「梅田宏明の活動報告」(スタッフ2名が出席)を聴く。 「Movers Platform」「姿勢教室」「振付家ワークショップ」など彼の多彩な活動歴を知る。 赤レンガ倉庫が彼の本拠地だったことが分かります。 そして「assimilating」を観る。 抽象映像と音響を背景に、足を地面にしっかり付けて上半身は切れ味が鋭く動きの少ない振付でまとめている。 身体は現代舞踏を意識させます。 視覚と聴覚を含めた舞踏ダンスと言ってよい。 途中、宗教とは違うが瞑想状態に入ることができる。 液体のような映像が身体に揺らぎを感じさせる。 明(動)→暗(静)→明(動)の流れか? 以前にみた矢のように走る光とは違う感覚が持てますね。 最後にアフタトークがある(作者、館長、司会の3名が出席)。 「この作品は2023年に作成した」「少しずつ手を加えている」「即興も入る」。 ダンス以外の映像や音響などの芸術活動に若い人への参画を勧めていた。 コンテンポラリダンスを引っ張る彼の態度が頼もしい。 倉庫前の広場で「赤レンガわんさんぽ」が開催されていました。 ドッグイベントらしい。 途中、犬を連れた人が多いのも気になっていたのだが。 「ドッグマッサージ」「ドッグフード」等々の屋台が数十件も連ねている。 犬好きにはたまらないですね。 *劇場、 https://www.yokohama-akarenga.jp/event/detail/1013 *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、梅田宏明 ・・ 検索結果は2舞台 .

■諜報員

■作・演出:野木萌葱,出演:植村宏司,西原誠吾,井内勇希ほか,劇団:パラドックス定数 ■東京芸術劇場・シアターイースト,2024.3.7-17 ■ゾルゲ事件を事前に調べておけばよかった。 幕が開いてからそう思った。 それはともかく、久しぶりのパラドックス定数を楽しむことができました。 舞台の構造や照明、役者の動きや立ち位置などが計算され尽くしていますね。 逮捕された3人の生き方が前面にでている。 「国を守りたい」「命を守りたい」「自由を守りたい」・・。 そして作品が強調しているのは警察組織内の評価です。 警察と特高の違いも論じている。 警察では正義と欲の差は法の順守の中で処理される(?)。 逮捕者が解放されたのはこの為でしょう。 特高ではそうはいかない。 演出家の挨拶文に「劇的にしない」「大事件にしない」とあった。 観終わった後、これに納得しました。 当事者にとって事件の全体像はみえない。 観客にとっても歴史の断片が微かに浮かんで直ぐに沈んでいったような舞台でした。 ほどよい緊張感もあった。 でも日常の事件のように数日経てばボヤケていってしまうかもしれない。 *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、野木萌葱 ・・ 検索結果は10舞台 . *パラドックス定数第49項 *劇場、 https://www.geigeki.jp/performance/theater357/

■カルメン

■作曲:G・ビゼー,指揮:ダニエレ・ルスティオーニ,演出:キャリー・クラックネル,出演:アイグル・アクメトチナ,ピュートル・ペチャワ,エンジェル・ブルー他 ■新宿ピカデリー,2024.3.8-14(メトロポリタン歌劇場,2024.1.27収録) ■アイグル・アクメトチナがカルメンを現代に甦らせた! アンナ・ネトレプコを若くしたような姿、適度にネットリ感のある声がセクシーで自由奔放な女を歌い演じる。 ・・舞台はアメリカの今、兵器工場の女工達とそれを取り巻く軍隊や群衆はどこか異様な光景にみえる。 そこで昔ながらの男を演ずるドン・ホセ・・。 「ロマン系ドン・ホセとラテン系カルメンの立ち位置は音楽的にも交じり合わない」(指揮者インタビュー)。 現代アメリカの演出効果は発揮されないまま楽曲の力に引っ張られてしまった。 場面間の繋がりも弱い。 これで人物感情が途切れていたわよ。 作品としての「カルメン」は演出を無視できる強さがある。 アイグル・アクメトチナの歌手としての「カルメン」がこれに加勢していたから尚更ね。 *METライブビューイング2023シーズン作品 *MET、 https://www.shochiku.co.jp/met/program/5489/

■能楽堂三月「鐘の音」「胡蝶」

*国立能楽堂三月普及公演の□2舞台を観る. □狂言・和泉流・鐘の音■出演:野村万禄,能村晶人 □能・観世流・胡蝶■出演:武田宗和,福王和幸,村瀬堤ほか ■国立能楽堂,2024.3.9 ■「金の値」を聞いてきてくれ! 主人はこう伝えたが、「鐘の音」を聴いてきてくれ!と太郎冠者が聞き違える話である。 「コガネのネ」と言ってくれ!と文句をつけていたが後の祭り。 太郎冠者が鎌倉の寿福寺・円覚寺・極楽寺・建長寺の鐘の擬音を演じる。 また終幕の般若心経を引用した小歌も楽しい。 「胡蝶」のプレトーク(三浦裕子)を聴く。 この作品は荘周「胡蝶の夢」・舞楽「胡蝶」・「源氏物語」を参考にしている。 舞楽では「迦陵頻(かりょうびん)」との番舞(つがいまい)になっている。 「源氏物語」は番舞を踏襲したが当能は「胡蝶」だけを採用した。 舞台では<太鼓入り中ノ舞>で演じられたが、シテの冠の蝶がピョンピョンと跳ねまわっている。 舞楽では童舞らしい。 童が演者ならピョンピョンは似合うとおもうが・・。 動きが緩い舞ではしっくりこない、逆に固定した方が観ていても集中できる。 *劇場、 https://www.ntj.jac.go.jp/schedule/nou/2023/3180.html?lan=j

■能楽堂三月「鬼ヶ宿」「志賀」

*国立能楽堂三月定例公演の□2舞台を観る. □狂言・大蔵流・鬼ケ宿■出演:茂山逸平,茂山千五郎 □能・宝生流・志賀■出演:佐野由於,今井基,御厨誠吾ほか ■国立能楽堂,2024.3.6 ■「鬼ヶ宿」作者は江戸幕府大老の井伊直弼である。 彼は「部屋住み」時代に国学・能楽・茶の湯そして武術に没頭していたらしい。 作品は1860年(安政7年)2月に初演されたがその数日後に桜田門外で作者は暗殺されている。 能「黒塚」のパロディであることが作品名からも分かる。 「志賀」の主人公は六歌仙の一人、大伴黒主(志賀明神)。 このため「古今和歌集」はもちろん和歌の世界が散りばめられている。 それにしても最初から囃子、特に笛と大鼓がけしかけてくる。 何故こんなにも急がせるのか? 後場に入り、志賀明神の神楽の舞を見て分かった。 舞のテンポがとても速い。 この速さを囃子は予言しているかのように前場から飛ばしたのである。 この舞は楽しかった。 神妙さを感じさせない。 庶民好みだ。 懐かしさもある。 シテ面が「小尉」から「邯鄲男」に換わったが、賑やかな囃子に邯鄲男のとぼけるような舞が面白い。 シテ方と囃子方の呼吸がズレた場面もあったが、脇能の面白さは十二分に伝わってきた。   *劇場、 https://www.ntj.jac.go.jp/schedule/nou/2023/3179.html?lan=j

■Ate9ダンスカンパニー

*下記□2作品を観る. ■演出・振付:ダニエル・アガミ,出演:マノン・アンドラル,アドリアン・デレフィン,ビョルン・バッカー他 ■世田谷パブリックシアター,2024.3.1-3 □EXHIBIT B ■音楽:オミッド・ワリザデ ■バットシェバ舞踊団は硬さがある。 これを換骨奪胎して柔らかさに変換する派生グループが多い。 このグループ、作品もそれです。  7人のダンサーがスナックを食べ玩具を操作しながら幕が開く。 振付はコミカルの連続で日常生活からの引用が多い。 インド系映画を思い出させる音楽です。 面白い楽曲が6章くらいで構成されている。 途中、ダンサーの歌唱も入るが言葉がわからない。 字幕が欲しいですね。 デュオも数組入る。 椅子などの道具類も利用していく。 音楽がダンサーを生き生きとさせていた。 どのようなダンスカンパニーか見えてきました。 □calling glenn ■音楽・演奏:グレン・コッチェ ■パーカッションを主体とした生演奏です。 ドラマーが素晴らしい。 胸に響いてきます。 前作と違い、雑音を取り除き硬さが前面に出ている。 切れ味がいいですね。 途中、鉄琴演奏で数組のデュオを踊らせて柔らかさを挟み込んでいる。 終幕はマイクらしき道具類を取り出してコミカルに戻るが力強さは維持します。 音楽とのコラボに力を入れているのが分かりました。 初めてのグループだが楽しく観ることができた。 挨拶文にパレスチナ問題が書かれていたがやはり気にしているのでしょう。 これにめげず全力で舞台を作って欲しい。 ダニエル・アガミ、グレン・コッチェ、白井晃のアフタートークがあったが都合で見ることができなかった。 これは残念。 *劇場、 https://setagaya-pt.jp/stage/2147/

■かもめ

■原作:A・チェーホフ,演出:レオニード・アニシモフ,出演:瀧山真太郎,朱花枷寧,小倉崇昭ほか,劇団:東京ノーヴエイ・アート ■カンフェティ・配信,2024.2.24-25 ■チェーホフは忘れた頃にやってくる。 そして人生で忘れていた事を思い出させてくれます。 当劇団を配信で観るのは2度目です。 下北沢の劇場に居るような雰囲気は伝わってくるが、しかし映像や音響の質は良くない。 暗くて狭い居間で上半身だけを映し場面ごとにフェイドイン・アウトを繰り返しダイジェスト版のように繋げていく。 余分な物・事が見えないので各々の恋愛関係がいつもより浮き出ていました。 二組の役者役と作者役が登場する劇中劇の構造が溶けていくような余韻も感じられた。 今、思い返すと舞台上では一度も氏名や渾名をいっていなかった!? あなた、お前、あいつ、大事な人、愛しい人・・・。 チェーホフの舞台で名前を言い合うと耳障りに聞こえる場合が多い。 ロシアの舞台全般に言える。 名前が無いと役者と観客の間が取り払われたような感触が得られます。 *第34回下北沢演劇祭参加作品 *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、レオニード・アニシモフ ・・ 検索結果は12舞台 . *劇団、 https://tokyo-novyi.com/home/2024-online-seagull/

■ロメオとジュリエット

■作曲:シャルル・グノー,指揮:カルロ・リッツィ,演出:トマ・ジョリ,振付:ジョセファ・マドキ,出演:エルザ・ドライシヒ,バンジャミン・ベルネーム,ロラン・ナウリ他,演奏:パリ・オペラ座管弦楽団 ■NHK・配信,2024.2.11(パリ・オペラ座バスチーユ,2023.6.23・26収録) ■今年7月開催のパリ・オリンピック芸術監督トマ・ジョリの演出らしい。 さっそく観ることにする。 舞台は「レ・ミゼラブル」や「オペラ座の怪人」を思い出させる雰囲気を持っている。 暗くて湿気が漂う船のような形をした建物と階段、天井には虚ろなシャンデリア群、そこに屯い奇抜な衣装を纏う合唱団と舞踊団。 でも、彼らの腕や手をバタバタさせる忙しない振付が気持ちを苛立たせる。 ミュージカルオペラと言ってよい。 それも次第に落ち着いてくる。 物語展開は大胆に進み、ロメオとジュリエットに焦点が絞られてくるからよ。 どこにでもいる普通の二人にみえる。 ジュリエットが妙薬を飲む場面は彼女の覚悟が伝わってくるわね。 墓場の中も蝋燭と花で一杯。 この場面では一番厳しいバージョンを採用するの。 それはロメオが毒薬を飲んだあとジュリエットが目を覚まし、二人は愛し語り合う、「一緒に逃げよう」「二人で幸せになろう」と。 しかしロメオに毒がまわってくる・・。 ジュリエットは短剣で胸を刺しロメオを追いながら幕が下りる・・。 やはり涙を誘うわね。 舞台に多人数を乗せてもブレない強さ、展開の巧さがあった。 カーテンコールでは演出家も登場したが、セーヌ川を使ったオリンピックが今から楽しみだわ。 *NHK、 https://www.nhk.jp/p/premium/ts/MRQZZMYKMW/blog/bl/pXKpLarzZx/bp/pYOxy75zJq/

■う蝕

■作:横山拓也,演出:瀬戸山美咲,出演:坂東龍汰,近藤公園,綱啓永ほか ■シアタートラム,2024.2.10-3.3 ■ダンボールの大きな扉が三方向に開き舞台が顔を出す幕開きは衝撃でした。 音楽も激しい。 しかしその後はよく分からないまま終幕迄いってしまった。 <う蝕>という得体のしれない何物かに島が襲われたようです。 どういうわけか歯医者ばかりが登場する。 チラシをみたら「う蝕」とは虫歯のことらしい。 役者の科白・発声を含めた演技からどのような状況なのかが伝わってこない。 コントのような場面もある。 死者への弔いの言葉もあれば概念を論ずる言葉遊びも多い。 かの島から来た白衣の医者らしき者が「ここにいるべきでない人間が混ざっている」。 一人を除いて既に死んでしまっている人々なのか? 集中できない舞台です。 (抽選だった)席も良くない。 作者も演出家も何回か観ているが二人の組み合わせは初めてです。 でも今日はリズムが合わなかった。 不条理劇は観る側の心身の状態も大事です。 こういうことはたまにある。 *劇場、 https://setagaya-pt.jp/stage/2132/

■アマゾンのフロレンシア

■作曲:ダニエル・カターン,指揮:ヤニック・ネゼ=セガン,演出:メアリー・ジマーマン,出演:アイリーン・ペレス,マッティア・オリヴィエリ,ガブリエラ・レイエス他 ■東劇,2024.2.2-8(メトロポリタン歌劇場,2023.12.9収録) ■・・フロレンシアはマナウス公演に出演する為、かつ行方不明の蝶ハンターである恋人を探す為にアマゾンの船旅に出る。 途中、客船エル・ドラード号は嵐で難破するがアマゾネスに助けられる。 しかし目的地はコレラが発生して上陸できない。 そこで彼女は一人ジャングルの奥へ入っていく・・。 旅人たちの人生への倦怠感、愛の行き違いなどなど、日常の些細な淀みが淡々と歌われていくの。 船のように流れゆく演奏で久しぶりに癒されていくのを感じる。 そこに生息する鮮採な魚や鳥、獣が目を楽しませてくれる。 終幕、フロレンシアは恋人が近くにいることを察知する。 「生きていようが死んでいようが、・・あなたを感じる」「あなたが私の歌を聴いているのがわかる・・」。 ・・。 「・・人生を整調してくれる舞台」(演出家インタビュー)の通り、これは<セラピーオペラ>と言ってよい。 フロレンシアが蝶になってジャングルに消えていく姿をみて何とも言えない安らぎが訪れる。 不思議な生と死に挟まれた平凡な日常を肯定できるようになるの。 G・マルケスに触発された作品らしい。 スペイン語オペラは初めてかな? 「・・ラテンアメリカのスパイスが感じられる」(指揮者インタビュー)。 「メキシコ万歳」のもう一つの顔が現れている。 ところで英語字幕が舞台背景に写されていたが観客にとって見易いはず。 この方法は演出家の得意とするところね。 舞台上に字幕を写すのを日本でも流行らせて欲しい。 *METライブビューイング2023シーズン作品 *MET、 https://www.shochiku.co.jp/met/program/5459/

■NOBODY IS HERE

■演出・振付:笠井叡,出演:山東瑠璃,大植真太郎,ピアノ:大瀧拓哉 ■東京芸術劇場・シアターイースト,2024.1.26-28 ■「・・ここには<誰もいない>ではなく、ここに<誰でもないものがいる>としたい!」。 演出家の挨拶文です。 ダンサーの頭先から足先まで薄い衣装がピタリと張り付いている。 もちろん自由に動き回れる。 目鼻口がハッキリしないので<誰でもない者>にみえます。 まさに舞踏的表現です。 生演奏のピアノを背景に二人は踊りまくる。 笠井叡とわかる振付です。 曲はベートーヴェンとバッハですが演出家の好みでしょうか? でも曲に合わせるのでダンサーの動きは忙しい。 コミカルなダンスと言ってよい。 曲に引きずられているようにみえる。   オイリュトミーダンスでは同作曲家でも滑らかな動きをしていたはずだが・・、何故このようなギザギザな振付になってしまったのか? 粗い振付は「アイデンティティを喪失していく姿」を描いているのかもしれない。 この喪失と回復が作品の要のようです。 でもテーマが重いとダンスを観る喜びは薄められます。 ところで、カーテンコールでのダンサー大植真太郎の挨拶は笑ってしまいました。 *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、笠井叡 ・・ 検索結果は10舞台 . *劇場、 https://www.geigeki.jp/performance/theater351/

■マルコムX

■作曲:アンソニー・デイヴィス,演出:ロバート・オハラ,指揮:カジム・アブドラ,出演:ウィル・リバーマン,リア・ホーキンズ,レイアン・ブライス=デイヴィス他 ■東劇,2024.1.19-25(メトロポリタン歌劇場,2023.11.18収録) ■3幕4時間は長い。 でもマルコムの生涯を語るには必要かもね。 空飛ぶ円盤が降りてきた舞台は未来を描いているようにもみえる。 天井の円盤に照明をあて文字を映し字幕としても使う。 子供時代の1幕では家族がKKKの標的に、そして父の殺害が風景のように描写されていく。 2幕直前にマルコムはイスラムの影響で別人と化して出所する。 ここから物語が力強く進んでいく。 農場から都市へ移る衣装の変化が黒人世界を直截に表しているわね。 ジャズ風な楽曲でいつもとは違う。 ピアノやドラムも入りリズムを強調するからよ。 20世紀前半に流行したダンスもふんだんに取り入れコーラスも途切れない。 そこにイスラムの祈りが被さる。 彼は言う「・・400年間奴隷として生きてきた。 今、自由・正義・平等を求める!」と。 しかし使徒との意見の食い違いから彼は組織から離れていく。 そして暗殺される終幕へ・・。 過激な科白が続くし・・、これは<演説オペラ>と言ってよい。 そこに歴史的風景が重なる。 でも芸術的感動は少ない。 昨年の「チャンピオン」あたりからMETの革新が途切れない。 次々と登場する新しいオペラに期待したい。 *METライブビューイング2023年作品 *MET、 https://www.shochiku.co.jp/met/program/5442/

■唐茄子屋、不思議国之若旦那

■作・演出:宮藤官九郎,出演:中村勘九郎,中村獅童,中村七之助ほか ■新宿ピカデリー,2024.1.5-25(平成中村座,2022.10収録) ■「とうなすや、ふしぎのくにのわかだんな」を訳すと「カボチャ売り、不思議の国のアリス」。 ここでアリスは若旦那に代わる。 期待以上!流石クドカンですね。 科白の厚みが際立っている。 落語からの引用が多い為でしょう。 言葉を重ね合わせながら物語が紡ぎ出される。 それは<労働>と<カネ=貨幣>、それを越えた<贈与>と<返礼>が語られる。 「・・生きることは、みっともないことなのだ!」。 カボチャ売りに落ちぶれた若旦那へ、叔父からの言葉である。 心と体のすべてを曝け出し本気にならないとカネは稼げない。 働く、そして生きるとはそういうことだ!と。 その得たカネで貧しい母子を助ける若旦那・・。 共同体の核心を突く人情噺です。 途中、旦那役中村勘九郎がパラレルワールド吉原遊郭へ入り込み歳や身長が伸びたり縮んだりするが、ここは中村勘太郎と中村長三郎を登場させ3人一役で楽しく演じる。 久しぶりに隅田川東岸の面白さを堪能しました。 *シネマ歌舞伎2024年作品 *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、宮藤官九郎 ・・ 検索結果は5舞台 . *シネマ歌舞伎、 https://www.shochiku.co.jp/cinemakabuki/lineup/2390/

■ばらの騎士

■作:フーゴー・フォン・ホーフマンスタール,演出:宮城聰,寺内亜矢子,音楽:根本卓也,出演:石井萠水,大高浩一,木内琴子ほか,劇団:SPAC ■静岡芸術劇場,2024.1.7-3.10 ■元帥家執事のプレトークを聴く。 オペラ「ばらの騎士」とは似て非なるものらしい。 早速場内へ。 生演奏や歌唱はあるが演劇と言ってよい。 元帥夫人の不倫相手がズボン役のため作品が生き生きしている。 そして夫人の倦怠感が随所に見られる。 ここが作品の要ですね。 しかし舞台は徐々に脱線していく。 引き回すのはオックス男爵ですか? ハチャメチャ過ぎる。 ドタバタ劇が続いていきます。 夫人が霞んでしまい高貴な倦怠の世界へ浸れない。 絶妙な均衡が崩れてしまった。 夫人が語る<時間>や<意識>などの哲学的議論が楽しい。 これはオペラでは演奏と歌唱の裏に隠される。 「時は意識と同じ速さで流れている(だから時は見えない)」「時は見えることがある(それは意識がアンニュイに向かう時)」。 終幕、彼女は時が流れ落ちていくことをオクタヴィアンに諭します。 はたして舞台はオペラと同じエキスを追求していました。 *SPAC2023秋-春シーズン作品 *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、宮城聰 ・・ 検索結果は27舞台 . *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、寺内亜矢子 ・・ 検索結果は2舞台 . *劇場、 https://spac.or.jp/au2023-sp2024/der_rosenkavalier

■能楽堂一月「鞍馬参り」「二人静」

*国立能楽堂一月普及公演の□2舞台を観る. □狂言・大蔵流・鞍馬参り■出演:茂山あきら,茂山七五三 □能・金春流・二人静(ふたりしずか)■出演:高橋忍,井上貴覚,原大ほか ■国立能楽堂,2024.12.13 ■プレトーク「形と影、二人の女」(小田幸子)を聴く。 ・・「「二人静」は足利義政の時代の1464年に勧進能として、「鞍馬参り」は豊臣秀吉1593年に上演記録がある」「両作品には<義経>が、「二人静」はそれに加えて<憑き物>がキーワードになる」「憑き物は当時は日常であった」「義経は白拍子を12人も連れ立っていた(義経記)」。 そして山中玲子論文「・・昔は一人であった」、また演者へのインタビュー「舞う時は二人揃うというより互いの個性を出すのがよい」が紹介された。 「物着」については「大口袴に履き替えるのは金春流だけである」。 などなど・・。 次に舞台を観る。 「鞍馬参り」は太郎冠者と主の間で非実体である梨(果物)の遣り取りが、また「二人静」では憑依された実体と幽霊の非実体との間に無言の遣り取りがある。 この非実体への働きかけも両作品のキーワードとしてもよいだろう。 とくに相舞の途中で両者が向き合うのだが、この両体融合の場面は劇的である。 *劇場、 https://www.ntj.jac.go.jp/schedule/nou/2023/11017.html?lan=j

■能楽堂一月「三人夫」「春日龍神」

*国立能楽堂一月定例公演の□2舞台を観る. □狂言・大蔵流・三人夫■出演:山本則秀,山本則孝,山本則重ほか □能・観世流・春日龍神(龍女之舞,町積)■出演:山階彌右衛門,林本大,武田祥照ほか ■国立能楽堂,2024.12.6 ■観応えのある2舞台だった。 「三人夫(さんにんぶ)」は三国の百姓が年貢を納めに上京する話である。 三人が連れ立って上る場面、年貢を納め歌を詠み祝酒を頂戴する場面、そして舞を舞いながら帰郷する場面、どれもが明るく楽しい。 左右上下の人間関係がすべて共感で繋がっている。 年初に相応しい。 「春日龍神」の小書「町積(ちょうづもり」は初めて聴いたが科白の長さに驚いてしまった。 長安へそして天竺へ渡航する明恵上人の思いを留まらせようと末社の神が10分近く喋り続ける。 神は正月返上で暗記をしたはずだ。 これでは明恵上人も諦めるしかない。 龍女が天女ノ舞、続いて龍神の激しい舞働で新年の元気を貰えた。  面は「小牛尉」から「泥顰(でいじかみ)」へ、後ツレは「龍女」。 全ての場面が充実していた。 お年玉宝くじが当選したような気分で千駄ヶ谷を後にした。 *劇場、 https://www.ntj.jac.go.jp/schedule/nou/2023/11016.html