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■どうしても地味

■演出:古川貴義、出演:箱庭円舞曲 ■下北沢・駅前劇場、2012.5.16-27 ■ http://stage.corich.jp/img_stage/l/stage27419_1.jpg?1338159327 ■舞台は畳の居間に卓袱台。 またチャブダイである。 どの劇団も同じ舞台構成だ。 自宅で畳と卓袱台を使っている客ならこの舞台を見てゲンナリするかもしれない。 これで役者が喪服で登場したらどうしようか?など緊張場面を考えながら席についた。 線香花火の製造を話に添えて家族と親戚・町内の人間模様が描かれている。 寺の住職が登場するので仏教用語がセリフに多いので舞台に深みがでているようだ。 各場面のフェードアウトは味があったがもっと研究すれば一層良くなるはずだ。 はたして終幕に喪服姿が・・

■キツネの嫁入

■作・演出:吉田小夏(*1),出演:青☆組 ■こまばアゴラ劇場,2012.5.25-6.3 ■ツマラナイ芝居でした。 それは舞台の流れが場面単位ごとで途切れてしまうからです。 大きな流れとなって繋がっていかない。 場面場面で詩的効果を狙い過ぎたことが裏目に出たのではないでしょうか。 そして役者達が気遣い過ぎています。 かつ皆がオドオドし過ぎです。 なにか裏に隠しごとがあるのでは?と考えながら見ていました。 もっと素直に演じたほうが気持ちがよいとおもいます。 ストーリーは面白いのですから。 *1、 「星の結び目」(2011年) *チラシ、 http://stage.corich.jp/img_stage/l/stage26650_1.jpg?1338159156

■PHⅡ顆粒

■作・演出:宮川賢、出演:劇団ビタミン大使「ABC」 ■スペース107、2012.5.22-27 ■ http://stage.corich.jp/img_stage/l/stage27297_1.jpg?1338074217 ■PHⅡ顆粒とはヒト用冬眠薬である。 主人公がこれを服用し1年、20年、300年と冬眠する話だ。 手塚治虫「火の鳥」の劣化版のような物語である。 冬眠は時間を飛び越えて長生きできる、つまりは不死とほぼ同義語として使っているからだ。 舞台は安っぽい畳の居間に卓袱台。 冬眠から目が覚めた時点での家族や妻、世間との関係を面白おかしく描いていく。 そして覚めるごとに知っている人が減っていく。 300年後に妻が書いた日記を読んだ妻に似ている人と主人公が結ばれる話である。 よくあるストーリであるが笑いが多く流れのよい舞台なので楽しく観られた。 しかし終幕直前にPHⅡ顆粒の効用の話がとても長く続いた。 何故このような寄り道をしたのか理解できない。 演出家自身の宣伝か? これを省いて90分以内にまとめてくれ。

■洗い清められ

■作:サラ・ケイン、演出:川口智子 ■SPACE EDGE、2012.5.26-27 ■ http://stage.corich.jp/img_stage/l/stage27927_1.jpg?1338074075 ■幅が狭く奥行きのある倉庫での公演です。 土が撒かれていて小さな水溜まりもある舞台、そして背景が半透明のトタンで陽の光が眩しいくらいです。 マチネですから。 予備知識がないのでストーリーもわかりません。 舞台との距離が3,4mのため役者の肉体が、土や水・火そして食物まで付着して、そのまま伝わってきます。 厳しさのあるセリフや動きばかりか歌や踊りもあり、ピナ・バウシュの「春の祭典」をコンパクトに芝居化したようです。 これは芝居なのかダンスなのかそれとも儀式なのか? このような舞台はとても衝撃力があります。 舞台を細かくジャンル分けする以前の始原力が発生するからでしょう。 観終わってからも身体が満足していることがわかります。 しかし包丁が入っていない素材の日本料理を食べた時のような違和感もあります。 これを昇華する何かが欲しいところです。 能や歌舞伎が発生した時もこのような舞台ではないかと想像してしまいました。

■パリ・オペラ座のすべて

■監督:フレデリック・ワイズマン,出演:ニコラ・ル・リッシュ,マチュー・ガニオ ■(フランス+アメリカ,2009年作品) ■監督はF・ワイズマン。 「アメリカン・バレエ・シアターの世界」は長すぎる感じだったけど、これも同じだわ。 飽きてきたら遠くのモンマルトルでも見てくれ、そしてダンスに興味があれば3時間くらいは許してくれ、ということね。 コーチとダンサーの練習時の対話と芸術監督まわりの会議しか音声が入っていないの。 監督が言っているコンテンポラリの位置づけやダンサーの年金制度のことなど断片的な言葉だけ。 だから余計強く残るのね。 ワイズマンは偉大なドキュメンタリー作家と言われているけどわかる気がする。 素材を大事にして編集も巧いけど記録映画の域を出ていないのが残念ね。 「コメディ・フランセーズ演じられた愛」を観たいけれどレンタルでは取り扱っていないのかしら? *映画com、 https://eiga.com/movie/54719/

■プッチーニに挑む

■監督:飯塚俊男,出演:岡村喬生 ■東劇,2012.5.19- ■オペラ「蝶々夫人」で舞台上の誤った日本文化を正すため岡村喬生が奔走する記録映画。 目標は2011年のプッチーニ・フェスティバルでの上演よ。 でも作品の改訂が著作権法にひっかかる、日本人歌手が労働協約違反で歌えない、等々難題が降りかかるの。 前者は芸術家なら必修の知識だし、後者はイタリア留学もしているのに分からないとは情けないわ。 それと彼が芸大出身でないこともね。 業界の支援がなかったはずよ。 新国立劇場を批判していたけど彼の立場・心情がわかる。 そしてオッチョコチョイの性格も起因しているようね。 市バスとの接触事故がそれを証明している。 フェスティバルでの公演が無事に終了した時は観ていてもホッとしたわ。 でも一番の問題は、100年前の作品がその国の文化を正しく反映していない言って変更することが良いのか? ということかもしれない。 *映画com、 https://eiga.com/movie/57846/

■婦獄百景

■作・演出:高井浩子、出演:東京タンバリン ■吉祥寺シアター、2012.5.18-27 ■ http://tanbarin.sunnyday.jp/fugaku100/index.html ■舞台や役者の動きはシンプルだけど目まぐるしく動くため複雑にみえます。 ストーリーも時間的な繰り返しがあります。 四方の席を平等にみせるため回転舞台を作り、役者も四方へ満遍なくポーズを取ります。 とても技工を凝らした計算尽くの舞台です。 会社員と画家の兄弟とその家族や知人の日常生活を描いています。 親戚間の借金や母の介護、仕事での出来事や交際などです。 とても現実的で観ている方も身につまされる場面が多くあります。 しかしこのような芝居は数回観れば飽きるのではないでしょうか? 最後には芝居を観に行く理由まで計算尽くになってしまいそうです。 芝居に期待する決定的なものが避けられているからです。

■燕のいる駅

■作・演出:土田英生,出演:劇団MONO他 ■三鷹市芸術文化センタ・星のホール,2012.5.18-27 ■開幕からつまらない科白が続く。 しかしどうも変だ。 ・・なんと世界の終わりの話だとわかった! タイトルからでは想像がつかない。 後半SFを導入した理由もわかった。 死が近づいた時になにをなすべきか? この問いを提出する手段としてである。 多くは老衰や病気で肉体的精神的にマイッテしまった後に死が来る。 だから死の直前には死と対話ができない。 だからシラフで死を向かえる場合は芝居の題材になる。 これがそれだ。 身近な男と女が想いを打ち明けて行動を取るというのが答えである。 水口が真田を、有本が高島を、好きだったことを打ち明けて死に向かっていく。 終幕では前半のつまらない科白場面がとても懐かしく感じた。 *劇場サイト、 http://mitaka.jpn.org/ticket/1205180/

■歌旅

■出演:中島みゆき ■ワーナー・マイカル・シネマズ、2012.5.12-25 ■ http://utatabi-movie.jp/top.php ■2007年コンサートツアーでのライブ作品。 歌の場面しか無くて少しガッカリね。 でも20曲近くも歌っているの。 衣装は最初に赤のドレス、次に白のブラウスと黒タイツ黒ベスト、そして白のドレス、最後はジーパンに白のカバーオール、終曲近くにはカバーオールを脱いで黒のタンクトップよ。 舞台は寂びれて何も無い工場の中、汚くなったガラス窓を背景にしているようでみゆきに正にピッタリね。 楽器は7名から15名、コーラスは3名よ。 途中、歌う横で犬が寝ていたようだけど?? 最初は真面目で年季の入った歌手、女学生を成長させたような歌手だったけど、白のドレス以降は化粧も薄くしてノッてきた感じね。 振付も自然体になって動きもよくなったわ。 このツアーのテーマは聞いていないけど、舞台で彼女が観客に向かって「同じ時代に生まれてありがとう」の言葉にすべてが凝縮されているわね。 楽しかったわ。

■椿姫

■作曲:G・ヴェルディ,指揮:F・ルイージ,演出:W・デッカ,出演:N・デセイ,M・ポレンザーニ,D・ホヴォロストフスキー ■新宿ピカデリー,2012.5.12-18(MET,2012.4.14収録) ■ナタリ・デセイは声・顔・体・演技の総てが枯れてきている感じね。 声を外してしまいインタビューで謝っていたけど緊張感を持って歌っていた。 でも最後まで皺を寄せて表情が真剣過ぎるわ。 もっと体力をつけなきゃ。 そうすれば皺が取れるわよ。 オペラってキャストでガラリと変わるから大変ね。 アルフレードは坊ちゃん過ぎるし、父親は自信が有り過ぎるし・・。 ヴィオレッタ一人では泣けるオペラに到達できない。 少しばかりズレていたけど、個性のぶつかり合いはそれなりに楽しかった。 舞台は楕円を基本とした宇宙観が表現されヴィオレッタの苦悩を無にするような感じね。 大きな時計も印象的だし。 でもコロスの仮面がダメ。 これは漫画ね。 あと主治医の存在が意味深過ぎる。 この二点は突飛すぎて観客の集中度を弱くしてしまう。 これで2011年度のMET は総て終了。 映画だと気軽に観られるのがいいわね。 P・グラスの「サティアグラハ」を見逃したのは痛かったけど。 ・・来年も期待しましょ。 *METライブビューイング2011作品 *作品サイト、 http://www.shochiku.co.jp/met/program/s/2011-12/#program_11

■ミッション

■作:前川知大,演出:小川絵梨子,出演:イキウメ ■シアタートラム,2012.5.11-27 ■舞台は宗教の始原を扱っているようにみえるわ。 同時に「ブラジルで蝶が羽ばたくと、テキサスでトルネードが起こる」を思い出したの。 宗教の始原と物理学のカオス理論は連続よ。 だから不思議な緊張感がでて芝居が成り立つのね。  この感じの舞台はイキウメでは初めてだわ。 前川知大の原作の面白さが伝わってきたわよ。 演出が違う人になったから? それなら今回のように演出を他者に任せるのが劇団の新しいミッションかもしれない。  ところで鉄の棒を舞台上で移動した意味がよくわからなかったわ。 建屋や家具が変化したことなの? 床が坂のように起伏があったのは素敵な形だったけど、役者の動きはこれを上手に利用していなかったようにみえる。 *劇場、 https://setagaya-pt.jp/theater_info/2012/05/post_279.html

■軍鶏307

■すみだパークスタジオ、2012.5.11-28 ■ http://image.corich.jp/stage/img_stage/l/stage27140_1.jpg?1336866084 ■戦後50年代から60年前半の日本映画から幾つかの場面を拾いだして繋げたような芝居です。 街に流れ着いたヤクザや闇医者、女の生き方を描いています。 当時の映画のダイジェスト版を観ている感じです。 だからリアルさや深みが中途半端です。 メンドリが息子の徴兵に抵抗しますがその理由が語られません。 ヤクザが逃げるのを手伝う場面もそうです。 この時代の逃げる行為は重たいテーマですが、逃げろや逃げろと言っているだけです。 戯曲賞候補が受賞できなかった理由はここにあります。 この芝居で戦後が時代劇になったことを確認しました。 チャンバラ映画の延長ですが戦後を扱うとこうなるのでしょう。 舞台は建物の壁や窓で平面的ですが、時々照明だけにして深みを与え単調化を防いでいます。 役者の熱演が清々しかったですね。

■市川亀治郎大博覧会

■感想は、 http://ngswty.blogspot.jp/2012/05/blog-post_9.html

■マノン

■作:J・マスネ,指揮:F・ルイージ,演出:L・ペリー,出演:A・ネトレプコ,P・ペチャワ ■東劇,2012.5.5-11(MET,2012.4.7収録) ■マノンの艶めかしさは地で行く演技のようだったわ。 感情を表に出さない娼婦のようで凄みが出ていた。 これ以上太ったら惨めになる肉体をあらわにして男を虜にしていく姿は頼もしいくらいよ。 いつもベット付だしね。 目尻を下げ過ぎたサッカー選手三浦知良のような神経質のデ・グリュー、スケベ老人ギョー、賭博好きなレスコー、皆個性があるから歌がかすんでしまったわ。 ルイージが重たくないオケにしたいと言ってたから余計そうね。 そしてこの舞台の欠点はマノンやデ・グリューに同等の敵がいないことよ。 だからドキドキはしないの。 多分原作が悪いのよ。 マノンは六回着替えたけどサン・シュルビス教会の白そしてホテル・トランシルバニアの賭博場での桃のドレスが最高。 舞台背景は壁や鉄の階段、傾斜した廊下、遠近のある波止場など凝っているけどニューヨーク的な風景で物語にしっくり来なかったわ。 観終わったあとは出演者の姿形や性格しか覚えていないのもニューヨーク的なオペラね。 *METライブビューイング2011年度作品 *主催者サイト、 http://www.shochiku.co.jp/met/program/s/2011-12/#program_10

■カフカの猿-フランツ・カフカ「ある学会報告より」-

■原作:フランツ・カフカ,翻案:コリン・ティーバン,演出:ウォルター・マイヤーヨハン,出演:キャサリン・ハンター ■シアタートラム,2012.5.2-6 ■カフカがこのような小説を書いていたとは知りませんでした。 「ある学会報告」です。 彼の作品はストレートに芝居にしても面白くありません。 特にこの芝居は「猿の惑星」を思い出させます。 そして舞台上でこれと無意識に混ぜ合わせてしまうのです。 ですからキャサリンの猿の息遣いが聞こえてくる名演技の楽しさはありますが、猿から離れた野田秀樹との共演のほうが本人に近くて印象強い感がします。 キャサリンが頑張れば頑張るほど「猿の惑星」と競合します。 ポストトークは池内紀のためカフカ一色でした。 ニ種類のノートの使い分けや文章の訂正方法、仕事部屋の事など創作現場の話は面白かったですね。 小説を友人に託したり結婚をしなかったのは彼の統合失調症気質の影響ではないでしょうか。 *劇場サイト、 https://setagaya-pt.jp/theater_info/2012/05/post_275.html