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■フィフス・ステップ

■作:デヴィド・アイルランド,演出:フィン・デン・ヘルトック,出演:ジャック・ロウデン,マーティン・フリーマン ■TOHOシネマズ日比谷,2026.3.20-(ソーホー・プレイス,2025収録) ■6メートル四方の簡素な舞台、その周りに観客が取り囲み親密な雰囲気を映し出している。 物語は、アルコール依存症のルカが、カウンセラーであるジェームスを世話役として選ぶ場面から始まる。 二人だけで進む対話劇は、断酒更生プログラムである「告白の瞬間」に向けて緊張を高めていく。 それにしても、語られる多くが<酒>より<性>に関わるものだという点が印象的だ。 ルカの日常の「性行動」が次々と明かされ、その背景にはキリスト教的な価値観や慣習も織り込まれていく。 そして「告白の瞬間」では、ジェームスの妻までもが物語に巻き込まれてしまう。 この作品はアルコール依存症の話ではない。 むしろ<カウンセラー>=世話役とは何か? 性欲を例にとり、その役割を問いかけているように思われる。 世話役の構造は、キリスト教の<告白>とよく似ている。 しかし舞台が進むにつれ、患者(依頼人)と世話役の立場は徐々に溶け合い、対等な関係へと変化していく。 その過程は、キリスト教の慣習そのものが揺らぎ、溶解していく様子を暗示しているようでもある。 告白を真似たカウンセリング手法の衰弱を垣間見る舞台だった。 情報過多の現代では告白は難しい。 *NTLナショナル・シアター・ライブ2026作品 *映画com、 https://eiga.com/movie/104637/

■ハムレット

■作:W・シェイクスピア,演出:ロバート・ハスティ,出演:ヒラン・アベイセケラ,アリスター・ペトリ,フランチェスカ・ミルズ他 ■TOHOシネマズ日比谷,2026.2.13-(ナショナル・シアター,2025年収録?) ■舞台前半、南アジア的な軽やかさをまとった主人公像が英国演劇の枠組みに否応なく溶け込もうとしているようにみえた。 どこか植民地時代の影が反射しているようにも感じられる。 ハムレットの枯れたようで甲高い声による独白は、キリスト教的世界観から距離を置き、宗教性を感じさせない独特な響きを持っていた。 また、小人症のオフィーリアは身体的な異化を強烈に発揮し、舞台上を奔放に駆け回る。 二人の姿には、現代の若者文化の祝祭的なエネルギーが垣間見られる。 また(映像内の)観客の笑いが絶えず、英語を母語としない私にはニュアンスを掴み切れずもどかしさもあった。 しかし後半に入るとその笑いがピタリと止む。 ハムレットとオフィーリアの奇異な関係性が見事に絡み合い舞台の空気が一変した。 ついに彼女は天使の翼をつけたのだ。 周囲の役者も弱強のビートを刻む科白で緊張感を高め、物語は鮮やかな逆転劇へと向かっていく。 いやー、ハムレットはやはり面白い。 改めてそう実感させられる舞台だった。 *NTLナショナル・シアター・ライブ2025シーズン作品 *映画com、 https://eiga.com/movie/104638/

■ドッペルゲンガー

■作曲:F・P・シューベルト,演出:クラウス・グート,ピアノ演奏:ヘルムート・ドイッチュ,テノール歌唱:ヨナス・カウフマン ■NHK・配信(ニューヨーク・ウェイド・トンプソン・ドリル・ホール,2023.9.24-26収録) ■シューベルトの歌曲集「白鳥の歌」を演劇的な舞台作品に構成した公演である。 ここは馴染み深い「冬の旅」の続編として観ることにした。 全十四曲が歌われ、日本では「影法師」と訳される第13曲目「ドッペルゲンガー」が重要な位置を占める。 今回はピアノソナタ第21番(遺作)第2楽章が途中に挿入されている。 体育館のような広々とした空間に、規則正しく並んだ六十台のベッド。 その中央にピアノが置かれ、舞台を挟んで観客席が左右に広がる。 野戦病院と思わせる光景で、十数人の負傷兵がベットに横たわっている。 その中の一人が歌手ヨナス・カウフマンである。 数人の看護婦も忙しく歩き回っている。 先ずは第2曲「兵士の予感」から始まるが、野戦病院の負傷兵という設定はこの曲に驚くほどよく馴染む。 孤独な兵士が歌う姿はまさに演劇そのものだ。 その病院はそのまま戦場へと変貌し、ベットは銃弾を防ぐ盾となる。 爆撃機の影が横切り爆弾音が響き負傷兵たちは逃げ惑う。 第13曲「都会」では劇場の扉が開かれ、ニューヨークの喧騒が流れ込んでくる。 救急車のサイレンも聞こえる。 そこにカウフマンと瓜二つの人物が現れ第14曲「影法師」が歌われて幕が閉じる。 興味深い舞台だった。 負傷した兵士が歌うという設定により、十四曲のそれぞれが強い意味を帯びて心に迫ってくる。 これは演出の勝利と言ってよいだろう。 *NHK、 https://www.nhk-ondemand.jp/goods/G2025153961SA000/ *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、クラウス・グート ・・ 検索結果は2舞台 .

■ウォレン夫人の職業

■作:バーナード・ショー,演出:ドミニク・クック,出演:イメルダ・スタウトン,ベッシー・カーター,ケビン・ドイル他 ■TOHOシネマズ日比谷,2026.1.23-(ロンドン・ギャリック劇場,2025年収録?) ■主人公ヴィヴィが母ウォレンの過去と自身の出自を知り、価値観の違う母から独立していく物語である。 科白量が多いので余計なことを考えながら観ている余裕は殆ど無い。 舞台前半はウォレン夫人の自宅の庭、そして後半はヴィヴィが務める会計会社の事務室が舞台となる。 どちらもシンプルな美術で構成されており物語に集中し易かった。 登場人物は六人だが、物語の核心を語るのはウォレン夫人と彼女とホテルを共同経営しているクロフツである。 他の三人、芸術家ブレイド、ヴィヴィの恋人フランク、フランクの父である牧師サミュエルは物語を進める燃料役を担っている。 ヴィヴィは二つの過去を知り動揺する。 一つは、若き日の母が貧困から抜け出すために選んだ道の話、もう一つは、クロフツから聞かされる自身の父親にまつわる真実である。 ヴィヴィが強い精神力と高い教育に裏打ちされた独立心を持つことは理解できるが、過去を知る前後で彼女の行動に大きな変化がみられなかった点は気になった。 この舞台の弱点はヴィヴィの人生観や世界観が物語を通してほとんど揺るがず、母やクロフツのような現実の重みを感じにくかったことである。 一方で「ウォレン夫人の職業」というタイトルの強さは印象的で、まさに夫人の職業が物語を動かしていた。 それでも興味深い舞台だった。 日本の母娘物語とは一味違う価値観に戸惑いながらも、ナショナル・シアターの総合力が舞台の隅々にまで行き渡っていた。 NTL作品に外れは無い。 *NTLナショナル・シアター・ライブ2025シーズン作品 *映画com、 https://eiga.com/movie/104636/ *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、ドミニク・クック ・・ 検索結果は3舞台 .

■カルメン

■原作:プロスペル・メリメ,演出:アントニオ・ガデス,カルロス・サウラ,出演:エスメラルダ・マンザナス,アルバロ・マドリード,ハイロ・ロドリゲス他,舞団:アントニオ・ガデス舞踊団 ■NHK・プレミアムシアター,2026.1.5-(マエスト・ランサ劇場,2025.9.6-7収録) ■この作品は、2011年にマドリード王立劇場で上演された舞台映像を過去に観ている。 素晴らしかったという印象だけは強く残っている。 今回、2025年9月にセビリアのマンスト・ランサ劇場で上演した映像が配信されていたので、改めて鑑賞することにした。 アントニオ・ガデス舞踊団の定番作品だからだろうか、どこを切り取っても無駄が無く、過剰な演出も一切ない。 乾いた雑巾を絞り切ったような、徹底した研ぎ澄ましが感じられる。 背景に流れるギター演奏や歌唱もダンスも完全に一体化しており、「ハバネラ」も「闘牛士の歌」も、まさにここぞという場面で響き渡る。 ダンスは切れ味抜群で、観ているこちらの背筋まで自然と伸びてしまうほどだ。 緊張感は常に高く保たれているが、時折笑いを誘う場面もあり、沈黙の使い方も効果的である。 照明の明暗も巧みに計算され、舞台全体の抽象化に成功している。 これらの結果、ダンサーの肉体が一種の象徴へと昇華され、深い芸術的感動が押し寄せてくる。 アントニオ・ガデス舞踊団の最新「カルメン」を観ることができ、とても満足した。 *NHK、 https://www.nhk-ondemand.jp/goods/G2025153957SA000/index.html *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、アントニオ・ガデス ・・ 検索結果は2ブログ .

■朧の森に棲む鬼

■作:中島かずき,演出:いのうえひでのり,出演:松本幸四郎,中村時蔵,坂東新吾ほか ■アップリンク吉祥寺,2026.1.2-22(新橋演舞場,2024.11収録) ■作品紹介には「阿弖流為(アテルイ)に続く待望の第二弾!」とある。 第一弾が面白かったこともあり正月早々に映画館へ足を運んだ。 今作は「底知れぬ欲望に捕らわれ、狡猾な詭弁で人々を騙し、底辺から頂上を狙う主人公ライ」に焦点を当てている。 前半はどうにも身動きがとれない印象だった。 森に棲む魔物から授けられた魔力が彼を守ってしまうため、物語の展開が読み易く、緊張感が薄れてしまう。 「マクベス」や「リチャード三世」を思わせる場面が時折登場するものの、ライの心は終始閉ざされたままだ。 彼は何を考えているのか外側からは想像しずらく、天下統一のビジョンも見えてこない。 上映時間200分が長く感じられた。 しかし後半に入ると、ようやくエンジンが掛かってきた。 それは、前半でライと交わりを持った人物・・、上司・愛人・同僚・部下・親友・知人の関係を彼の欲の力で次々と暴力的な解決をしていく展開だ。 ここは作家と演出家の名コラボらしい捻りの効いた流れが見事に発揮されていた。 主人公ライの支離滅裂な強欲だけが突っ走る舞台だった。 そこに<大きな物語>が欠けていたのは残念に思う。 最後に彼は鬼となり、朧の森を支配して幕が下りる。 ヒトがオニになる作品だが、もし彼の欲望を<大きな物語>に向かわせたら、オニではなく、政治の、宗教の、英雄になったのかもしれない。 *シネマ歌舞伎作品 *シネマ歌舞伎、 https://www.shochiku.co.jp/cinemakabuki/lineup/2850/ *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、いのうえひでのり ・・ 検索結果は18舞台 .

■インター・エイリア

■作:スージー・ミラー,演出:ジャスティン・マーティン,出演:ロザムンド・パイク,ジェイミー・グローヴァー,ジャスパー・タルボット ■シネリーブル池袋,2025.12.26-26.1.8(リトルトン・シアター,2025.7-9収録) ■登場人物は主人公ジェシカと彼女の夫、そして息子の3人である。 しかし実際には、ジェシカが複数の役を演じ分けながら物語を進めていくため、ほぼ一人芝居のような構造になっている。 一人数役ゆえに、科白の中にト書きのような状況説明が多く含まれるが、重要な場面では夫や息子も科白を発する。 作品全体の9割以上をジェシカが語り続けるという大胆な構成が面白い。 ジェシカは裁判官で、夫も弁護士という裕福なリベラル家庭に見える。 そして契約書用語のラテン語タイトルが意味深いニュアンスを漂わせている。 彼女は一人息子を深く愛しており、同時に自身の職業にも強い誇りを持っている。 前半はこの二つの軸を中心に物語が展開していく。 素人の私から見ても、特に判事としての仕事の描写は興味深かった。 後半、息子が性加害で訴えられるという重大なトラブルが発生する。 ジェシカは息子を救うため、リベラルが掲げる<権力からの自由>を手放し、<権力への自由>である<法の正義>だけを頼りにして解決しようとする。 しかし息子は<人としての正義>を選び、自ら罪を認めて自首をする・・。 判事という職業を持つ家庭に法的紛争が持ち込まれることで、家族関係は複雑に揺れ動く。 この複雑さを作品は巧みに救い上げ、舞台を魅力的なものにしていた。 ジェシカを演じたロザムンド・パイクの熱演は見処であった。 *NTLナショナル・シアター・ライブ2025作品 *映画com、 https://eiga.com/movie/104635/ *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、ジャスティン・マーティン ・・ 検索結果2舞台 .

■2025年舞台映像ベスト10

*映像(映画・配信など)で観た舞台公演から最良の10本を選出. 並びは観賞日順. ■ マクベス   演出:マックス・ウェブスター,劇場:ドンマー・ウェアハウス ■ ハンマー   演出:アレクサンダー・エクマン,舞団:エーテボリ歌劇場ダンスカンパニー ■ 賭博者   演出:ピーター・セラーズ,指揮:ティムール・ザンギエフ,主催:ザルツブルク音楽祭 ■ 真面目が肝心   演出:マックス・ウェブスター,劇団:ロイヤル・ナショナル・シアター ■ 博士の異常な愛情   演出:ショーン・フォーリー,劇団:ロイヤル・ナショナル・シアター ■ サロメ   演出:クラウス・ゲート,指揮:ヤニック・ネゼ=セガン,劇場:メトロポリタン歌劇場 ■ ラインの黄金   演出:バリー・コスキー,指揮:アントニオ・パッパーノ,劇場:ロイヤル・オペラ・ハウス ■ ワルキューレ   演出:バリー・コスキー,指揮:アントニオ・パッパーノ,劇場:ロイヤル・オペラ・ハウス ■ 蝶々夫人   演出:ロバート・ウィルソン,指揮:スペランツァ・スカップッチ,劇場:パリ・オペラ座 ■ オルフェオとエウリディーチェ     演出:ピナ・バウシュ,指揮:トーマス・ヘンゲルブロック,劇場:パリ・オペラ座 *今年の舞台は,「 2025年舞台ベスト10 」. *今年の美術展は,「 2025年美術展ベスト10 」.

■ニューヨーク・シティ・バレエinマドリード

*下記□の3作品を上映. □セレナーデ■音楽:P・チャイコフスキー,振付:ジョージ・バランシン □スクエア・ダンス■音楽:A・コレッリ,A・ヴィヴァルディ,振付:ジョージ・バランシン □ザ・タイムズ・アー・レーシング■音楽:D・ディコン,振付:ジャスティン・ペック (3作共に出演:ニューヨーク・シティ・バレエ団,指揮:クロチルド・オトラント,アンドリュース・シル,演奏:レアル劇場管弦楽団) ■NHK,2025.10.20-(マドリード・レアル劇場,2023.3.23-25収録) ■「セレナーデ」はチャイコフスキーらしい旋律に沿った作品である。 彼のバレエ作品には寂しさが漂う。 ここが好きな理由なのだが、当作品は違い、温かみを感じさせる。 象徴的な場面もあり神秘的な雰囲気が印象的だった。 3作の中では最も心に残り、バランシンのロシア時代を思い起こさせる。 「スクエア・ダンス」は時代が遡る。 バランシンのニューヨーク時代の作品にちがいない。 彼の得意とする「プロットレス・バレエ」の典型と言えるだろう。 「ザ・タイムズ・アー・レーシング」は現代的な感覚に満ちている。 「ウエスト・サイド・ストーリー」を軽快にアレンジしたような印象を受け、振付家ジャスティン・ペックらしい斬新さが際立っていた。 ニューヨーク・シティ・バレエ団を観るのは数十年ぶりだ。 団は2023年秋に創立75周年を迎えたと知り、今回は創立者の一人である振付師ジョージ・バランシンを讃える意味合いも込められているのかもしれない。 *記事、 バレーニュースダイジェスト2023.10.13

■バレエ・トゥ・ブロードウェイ

*下記□4作品を観る. 振付は全てクリストファー・ウィールドン. □フールズ・パラダイス■音楽:ジョビー・タルボット,出演:高田茜,ウィリアム・ブレイスウェル,マリアネラ・ヌニュス他 □トゥー・オブ・アス(ふたり)■音楽:ジョニ・ミッチェル,出演:ローレン・カスバートソン,カルヴィン・リチャードソン □アス(僕たち)■音楽:キートン・ヘンソン,出演:マシュー・ボール,ジョセフ・シセンズ □パリのアメリカ人■音楽:ジョージ・ガーシュウィン,出演:フランチェスカ・ヘイワード,セザール・コラレス他 ■TOHOシネマズ日本橋,2025.9.19-25(ロイヤル・オペラ・ハウス,2025.5.22収録) ■クリストファー・ウィールドン振付特集だ。 気に入った彼の作品は多い。 でも記憶に残るほどではない。 彼は<核>を作るのが苦手なようだ。 例えば「フールズ・バラダイス」「トゥー・オブ・アス」「パリのアメリカ人」はここぞ!という場面がない。 4作のなかでは「アス」が面白かった。 緊張感があった。 今日はこれが一番かな。 同じデュオの「トゥー・オブ・アス」は歌唱も入り楽しい舞台でもあったが盛り上がりに欠けた。 二人の感情が表層を滑るだけだ。 歌詞がダンサーに重荷だったのかもしれない。 松竹ブロードウェイ(映像)で観た「パリのアメリカ人」は素晴らしい舞台だったことを覚えている。 でも今日は期待外れだ。 似て非なる作品になっていた。 美術・衣装はモンドリアン風でヒールを履いたダンサーも登場し賑やかだ。 しかし舞台のダンサーたちに有機的な統一感はみえない。 「気に入った舞台もあるが記憶に残るほどでもない」というウィールドン印象から今日も抜け出せなかった。 話を変えるが、解説場面で1舞台で用意するシューズ数が話題になっていた。 元ダンサーは「ロメオとジュリエット」が2足、「白鳥の湖」は4足とのこと。 つまり白鳥のほうがロメオに比べてシューズへの負担が2倍かかるということらしい。 素人からみても2倍は妥当にみえた。 *英国ロイヤル・バレエ&オペラinシネマ2024作品 *主催、 https://tohotowa.co.jp/roh/movie/?n=ballet_to_broadway2024 *「ブログ検索🔍」に入れる語句...

■蝶々夫人

■作曲:G・プッチーニ,指揮:スペランツァ・スカップッチ,演出:ロバート・ウィルソン,出演:エレオノーラ・ブラット,ステファン・ポップ,オード・エクストレモ他,管弦楽:パリ・オペラ座管弦楽団&合唱団 ■TOHOシネマズ日本橋,2025.9.12-(オペラ・バスティーユ,2024.9.30収録) ■ロバート・ウィルソンの訃報を先日に知った。 彼の舞台はいつも気にしていた。 でも多くは接することができない。 「浜辺のアインシュタイン」は1992年10月に天王洲アートスフィアで観ている。 他に記憶に残るのは「ハムレット」(1994年4月、静岡芸術劇場)、「ヴォツェック」(2003年9月、東京国際フォーラム)かな。 10月公演「Mary Said What She Said」に来日を予定していたらしい。 叶わなくなってしまい残念だ。 今回の「蝶々夫人」はスケジュール外の出会いだったので嬉しい。 時間を割いて観に行く。 舞台はなにも無い空間、歌手は彫像のように(余分に)動かない。 衣装もシンプルで古代ギリシャ風?だ。 この抽象化が「蝶々夫人」に合う。 日本文化を翻訳しないからだ。 子供の使い方も巧い。 しかし舞台空間が広すぎる。 間が抜けたようだ、生舞台を観ないと何とも言えないが。 蝶々役エレオノーラ・ブラットもピンカートン役ステファン・ポップも無機質な演技だ。 でも歌唱が加わると有機的世界へ導いてくれる。 たとえ抽象化が激しくても、近代日本の女性の生き方が迫ってきて涙を誘う。 加えてロバート・ウィルソンの舞台を久しぶりに楽しんだ。 *パリ・オペラ座inシネマ2025作品 *主催、 https://tohotowa.co.jp/parisopera/movie/madama_butterfly/

■ニュルンベルクのマイスタージンガー

■作曲:R・ワーグナー,指揮:ダニエレ・ガッティ,演出:マティアス・ダーヴィッツ,出演:ゲオルク・ツェッペンフェルト,クリステイーナ・ニルソン,マイケル・スパイアーズ他,管弦楽:バイロイト祝祭管弦楽団 ■NHK配信,2025.9.1(バイロイト祝祭劇場,2025.7.25収録) ■今月に入りワーグナーは3本目だ。 今年のバイロイト音楽祭から当作品がNHKで放映された。 新演出の為かな? ・・漫画チックな美術が凡庸な舞台に近づける。 2幕「蹴り合いの場」ではリングにロープを張ったボクシングまで登場する。 また3幕ヨハネ祭りはポップな美術・衣装で一杯だ。 これらは作品との深い繋がりはみえない。 見た目は楽しいが興ざめもする。 そしてヴァルターはマイスター称号を拒否したままエヴァと駆け落ちして幕が下りる。 これも後味が悪い。 父親やザックスは無念だろう。 ベックメッサーも惨めすぎる。 競争相手をこれだけ貶めると舞台が盛り上がらない。 ・・。 喜劇と呼ばれている作品だが演出家の喜劇にはついていけなかった。 上映5時間弱(休息無し)は長かった。 ワーグナーの舞台は長いが短い。 この相反感覚が今回はやってこなかった。 騎士のヴァルター役マイケル・スパイアーズは伸びのある声で聴き応えがあった。 また合唱団は臨時編成(?)らしく新鮮味が出ていた。 最近はチケットの売れ残りもあると聞いている。 舞台芸術はどこもしんどい。 盛り立てていきたいものだ。 *バイロイト音楽祭2025年作品 *NHK、 https://www.nhk.jp/p/premium/ts/MRQZZMYKMW/episode/te/V3NJMYWRPJ/

■ワルキューレ

■作曲:R・ワーグナー,指揮:アントニオ・パッパーノ,演出:バリー・コスキー,出演:クリストファー・モルトマン,エリザベート・ストリート,ナタリア・ロマニウ他,ロイヤル・オペラ・ハウス管弦楽団 ■TOHOシネマズ日本橋,2025.9.5-11(ロイヤル・オペラ・ハウス,2025.5.14収録) ■上演時間5時間(休憩含む)は長い、そして短い。 緊張ある対話が続くがヴォータンの存在が流石に目立つ。 「ラインの黄金」ではアルベリヒとバリトン域を競い合ったが今日は彼の独断場だった。 しかも髪を伸ばし義眼に変えたので最初は別人かと思ってしまった。 エルダも舞台を徘徊しているが大丈夫だろうか? 2年の歳月は短くない。 これを意識して若い歌手を多く登場させたのは戦略だろう。 でも彼らの存在力はこれからに期待するしかない。 「環境問題がテーマである・・」、「故郷オーストラリアの山火事を体験・・」。 舞台監督と演出家が語っていた。 フンディングの館をトネリコの壁で覆った1幕、荒野にトネリコの廃木を置く2幕、ブリュンヒルデを埋めたトネリコが炎に包まれる3幕。 テーマも山火事も分かるが環境問題を考えると舞台の面白さが遠のく。 「食卓にはジャガイモとトリ肉を・・」。 舞台監督の飽くなき拘りがみえるが、飲食は最低限にしてもらいたい。 食べる演技はとても難しい、フンディングの食べっぷりは豪快で巧かったが。 ところで指揮者パッパーノが音楽監督を引退するらしい。 「・・22年間で700舞台を熟した」とインタビューで話していた。 感動が遠のく前に新指揮者ヤクブ・フルシャの「ジークフリード」を観たいものだ。 エルダ、それまで元気でいてくれ! *英国ロイヤル・バレエ&オペラinシネマ2024作品 *映画com、 https://eiga.com/movie/102664/ *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、バリー・コスキー ・・ 検索結果は2舞台 .

■ラインの黄金

■作曲:R・ワーグナー,指揮:アントニオ・パッパーノ,演出:バリー・コスキー,出演:クリストファー・モルトマン,クリストファー・バーヴェス,ショーン・パニッカー他,ロイヤル・オペラ・ハウス管弦楽団 ■RBOストリーム・配信(2023.9,ロイヤル・オペラ・ハウス収録) ■英国ロイヤル・バレエ&オペラ・イン・シネマで「ワルキューレ」を9月5日から上映するようだ。 「ラインの黄金」は2023年秋に上映されたらしい。 これは見逃していた。 ウェブを探し回り「RBOストリーム」に辿り着く。 そこで見つけた。 早速観る。 幕開きから驚きの連続である。 裸体の老婆が舞台を歩き回っている? 途中で分かる。 老婆はヴォータンの妻そしてブリュンヒルデの母である女神エルダだった! うーん・・? そして現代的病を持つ人物が勢揃いした演劇をみているような錯覚に陥ってしまう。 一幕2時間半を一気に観てしまった。 他の「指輪」、例えばMET(メトロポリタン)やNNTT(新国立劇場)と比較しても言語的演技的な斬新さがある。 そこに切れ味の良い歌唱がより演劇を意識させる。 ところでRBOは序夜から今回の第一夜「ワルキューレ」まで2年かかっている。 この流れだと第三夜「神々の黄昏」を観るのは2029年かな? NNTTは2015年に序夜を、2017年までに全夜を上演している。 まっ、2年が妥当だろう。 ともかく、第一夜を観に行こう。 *英国ロイヤル・バレエ&オペラinシネマ2023作品 *映画com、 https://eiga.com/movie/100622/

■バサラオ

■作:中島かずき,演出:いのうえひでのり,出演:生田斗真,仲村倫也,西野七瀬ほか,劇団☆新感線 ■新宿バルト9,2025.6.27-7.17(明治座,2024.9収録) ■・・坂東武士のバクフ軍と公家や落武者をまとめたミカド軍の戦いは後者が勝利する。 しかしミカドも父子の確執で東西朝時代がやってくる。 そこにバサラがすきを突き天下統一を企てるのだが・・。 いつもの捻りがみえない。 唸らせる裏ストーリーもありません。 表面的な陰謀や寝返りだけで物語が進んでいく。 拘るのは外見至上主義でしょうか? いわゆるルッキズムです。 容姿の良し悪しで物事が決まる。 これにバサラを被せようとしている。 しかしルッキズムが強すぎてバサラ美意識が満たされていかない。 しかも天下統一後のバサラ時代がどのような社会か?想像できない。 多分、チャンバラ場面が散らばり過ぎて物語が分断されたからでしょう。 それでも、ヒュウガ(生田斗真)とカイリ(中村倫也)の死を突飛だがなんとかまとめた。 キャストの熱演は気持ち良いが、スタッフの苦労が伝わってくる作品でした。 *劇団☆新感線2024年作品 *ゲキXシネ、 https://www.geki-cine.jp/basarao/

■サロメ

■作曲:R・シュトラウス,指揮:ヤニック・ネゼ=セガン,演出:クラウス・グート,出演:エルザ・ヴァン・デン・ヒーヴァー,ペーター・マッティ,ゲルハルド・ジーゲル他 ■東劇,2025.6.27-7.3(メトロポリタン歌劇場,2025.5.17収録) ■この作品は独特な雰囲気がある。 具体的な名詞に溢れているからです。 ・・それは多くの人種や地名、パレスチナのユダヤ人、ローマ人やエジプト人、エルサレム・ガラリア・カペナウム・サマリア・エドム・アッシリア・レバノン・シリア・アレクサンドリア・・・。 たくさんの果物や宝石、葡萄や林檎・柘榴や無花果、エメラルド・トパーズ・オパール・ルビー・メノウ・トルコ石・水晶・紫石・・、そして動植物の名前たちが宗教と絡み合い想像力が膨らんでいく。 バビロンとソドムの娘であるサロメには6人の分身が同じ服装と髪型で登場する。 彼女の子供時代から現在までを同時に現前させる手法は凝っています。 ダンスの場面も変わっている。 「あの人はサマリアにいる? エルサレムに向かった?」。 あの人が近づいてくるのをゾクゾクと感じることができました。 「ヨカナーンは私を愛した・・」。 サロメ役はエルザ・ヴァン・デン・ヒーヴァー。 魅力的な声だが現実的な身体がサロメを遠ざけてしまった。 スタンリー・キューブリック監督の「シャイニング」「アイズワイドシャット」を参照した、と演出家?がインタビューで話していたが、むしろドイツ表現主義映画の技法でサロメを再び甦らせたと言ってよい。 ヴィクトリア朝時代の背景と20世紀初頭のドイツ芸術がシリアの地のあの時代で混ざり合いキリストの到来を予言した。 不思議で怖い舞台を面白く観ることができました。 *MET2024シーズン作品 *MET、 https://www.shochiku.co.jp/met/program/6002/

■台風23号

■作・演出:赤堀雅秋,出演:森田剛,間宮祥太朗,木村多江ほか ■Bunkamura・配信,2025.6.1-14(ミラノ座,2024.10.5-27収録) ■幕が開いて、配達員が悩ましい目つきで空を見上げる・・。 赤堀雅秋が戻ってきた! 一瞬そうみえたが・・、いや、以前とは違う。 わめく台詞が多い。 役者は喚いているだけです。 狂気が息を殺しているような、静けさのある下町が演出家の風景だったはず。 その風景は消えてしまっていた。 調べたら10年以上も舞台を観ていなかった。 変わりましたね。 介護・仕事・夫婦・健康・結婚・・・、それぞれの問題が並べられていたが、しかし積み重なっていかない。 どれも煮え切らない。 どれも到達できない。 巷の生活風景を誇張しただけにみえる。 テーマが絞れなかった? 劇場が大きすぎる? 台風を含め全てが逸れてしまった。 *CoRich、 https://stage.corich.jp/stage/333975 *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、赤堀雅秋 ・・ 検索結果は7舞台 .

■博士の異常な愛情

■原作:スタンリー・キューブリック(1964年同名映画),演出:ショーン・フォーリー,出演:スティーヴ・クーガン,ジャイルズ・テレラ,ジョン・ホプキンス他 ■シネリーブル池袋,2025.5.9-(ロンドン・ノエル・カワード劇場,2025.3.27収録) ■キューブリック監督の映画は数十年前に観ている、・・ソビエト上空で米軍機から投下された原子爆弾に飛行士がカウボーイのようにまたがり落下していく場面しか覚えていないが・・。 米国空軍将校が異常をきたしソビエトへ核攻撃を仕掛けてしまい、大統領と高官がこの対応に四苦八苦する話です。 ブラックコメディだが当時の米ソ対立状況が伝わってきます。 舞台は、反乱軍で混乱している米空軍基地、大統領や高官が対応している国防省戦略室、ソビエトへ向かう爆撃機B52操縦室、この3場面を交互に映し出しながらスピーディーに展開していく。 映像も駆使して緊迫感があります。 核兵器が偶発的に使用されてしまう! この問題を取り扱っている作品です。 現代でもありえる。 しかも複雑化不可視化している。 新鮮な理由でしょう。 人類破滅へ向かっていくなか、似たような場面が積み重なるため舞台が重く鈍くなっていくのがわかる。 次第に飽きてきました。 コメディの粘性も強過ぎるから? それを吹き飛ばしたのが終幕で歌われる「また会いましょう(We'llMeetAgain)」です。 第二次世界大戦のヒット曲が次大戦でも歌われる。 苦い皮肉を含んでいて効いていました。 *NTLナショナルシアターライブ作品 *映画com、 https://eiga.com/movie/103256/

■フィデリオ

■作曲:L・V・ベートーヴェン,指揮:スザンナ・マルッキ,演出:ユルゲン・フリム,出演:リーゼ・ダーヴィドセン,デイヴィッド・バット・フィリップ,イン・ファン他 ■新宿ピカデリー,2025.4.25-5.1(METメトロポリタン歌劇場,2025.3.15収録) ■入り難い舞台です。 違和感のあるストーリで幕が開き、半煮えのまま幕が下りてしまった。 ベートーヴェン唯一のオペラ作品だが、彼は歌劇が苦手だったのでしょうか? 交響曲に叙唱と歌唱を乗せたような作品です。 しかも両唱の落差が激しい。 叙唱があからさまな現実を持ってくるので歌唱が浮いてしまう。 舞台に入り込めるのはレオノーレの長い独唱からでしょう。 そして二幕に入ってのフロレスタンの一声ですかね。 ロッコ役ルネ・パーペが歌い難いと言っていたが、そのまま聴き難いということです。 やはりベートーヴェンの拘りを意識しました。 当時の自由主義を強く感じさせます。 総裁P・ゲルプの挨拶でも現代政治との関係を話していましたね。 逆に政治が強く出過ぎると固まってしまい面白さが伝わらない。 演出にも問題がありそうです。 METでは25年前から変わっていないらしい。 以前観たカタリーナ・ワーグナー演出の当舞台は好感が持てたからです。 次回METでは新演出で上演して欲しい。 *METライブビューイング2024作品 *映画com、 https://eiga.com/movie/102326/

■真面目が肝心

■作:オスカー・ワイルド,演出:マックス・ウェブスター,出演:シャロン・D・クラーク,チュティ・ガトゥ,ヒュー・スキナー他 ■シネリーブル池袋,2025.4.11-(イギリス,2025収録) ■英国上流階級の一端を覗くことができました、事実とどれだけ違うか分からないが、1895年作のため現代との差異もあるでしょう。 喜劇的困難の後に3組も結婚にこぎつけるハピーエンドな話です。 ストーリーはシェイクスピア風だが、内容はとても諄い。 つまり耽美的・退廃的・懐疑的な要素が日常にギッシリと詰まっているからです。 これがオスカー・ワイルド風なのでしょうか? 主人公はエディ・マーフィに瓜二つです。 まさにワイルド仕立てです。 劇場(映像内)の客席からの笑いが絶えない。 映画館では最初は笑いがあったが少しずつ減ってきた。 たぶんワイルドの毒に当てられた? 新郎新婦の品定めは祖先まで遡る。 もちろん資産状況も調べる。 古い日本でも同じでしょう。 こういう時は伯母が煩いのもです。 結婚に興味がある人なら観て損はない作品です。 結婚の落としどころを提供しているからです。 え!参考にならない? そして真面目とは何を指しているのか?、悩みます。 *NTLナショナル・シアター・ライブ2025作品 *映画com、 https://eiga.com/movie/103255/#google_vignette