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■名付けようのない踊り

■脚本・監督:犬童一心,出演:田中泯,石原淋,大友良英ほか ■アップリンク吉祥寺,2022.3-3.31(日本,2021年作) ■田中泯の生い立ちから現在までを編集したドキュメンタリーである。 戦後の頃はアニメで表現している。 当時の記憶に現れる自身を<私の子供>と彼は名付けている。 しかも彼の朗読は素直で優しい。 牙が抜けてしまった。 この監督の作品は初めて見るが童話作家の出身か? ゴツゴツした濃紺の古コートを着て登場する彼の舞台を何度も見たことがある。 そのコートは彼の父が警察官巡査時代に着ていた形見であったこと。 そして「名付けようのない踊り」がロジェ・カイヨウの言葉からとったらしい。 田中泯のダンスにある<遊び>と<聖なるもの>の関係を知ったこと。 この二箇所が記憶に響き残った。 公演等の映像では福島県浪江町?で一匹の蜘蛛を前にした場踊りが気に入る。 蜘蛛と一体化していた。 また「 形の冒険 」や写真集「 田原桂一 」、松岡正剛とのコラボ「 村のドン・キホーテ 」は当ブログに投稿されている。 近況では「 HOKUSAI 北斎 」に出演していた。 いろいろと中途半端で雑多な感じがする映画だった。 でも、それは多様多彩に囲まれた「場踊り」と同期しているからだろう。 *映画com、 https://eiga.com/movie/95713/ *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、田中泯  ・・検索結果は5作品

■業火 GOUKA

■原作:中村文則,脚本・演出:こしばきこう,出演:三木美智代,劇団:風蝕異人街 ■こまばアゴラ劇場,2022.3.25-27 ■女の一生、いや半生を語る舞台です。 聞き手は精神科医らしい。 8才の頃に火遊びで火事を出してしまったことを皮切りに主人公は語りだす・・、両親の不和、不良仲間との交際、妊娠と中絶、高校時代の退学、工場での労働、そして23才に結婚。 しかし夫の浮気、義理母との確執、・・。 てんこ盛りの人生ですね。 でも一つ一つの事件は古臭く、20世紀中頃までに引き戻されてしまった。 太宰治のダイジェスト版を読んでいるような感覚がやってくる。 医師の人生肯定の説教で彼女が立ち直るのも拍子抜けです。 熱演の一人芝居でした。 明るく湿度の低い演技です。 どろっとした戯曲とからっとした身体のせめぎ合いに面白さがあります。 でも二つは交わらずに終わってしまった。  *劇場、 http://www.komaba-agora.com/play/11187 *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、こしばきこう  ・・検索結果は4舞台.

■能楽堂三月「袴裂 はかまさき」「岩船」

*国立能楽堂三月特別企画公演の下記□2作品を観る。 ■国立能楽堂,2022.3.25-26 □狂言・袴裂■出演:野村又三郎,奥津健太郎,奥津健一郎 ■小田幸子のプレトークを聞く。 「天正狂言本」と江戸時代の「狂言絵」をもとに新たな解釈を加えて蘇らせた舞台らしい。 一着しかない袴を切り裂き、太郎冠者と舅の二人がエプロンのように付けて聟入りの対応をする話である。 袴は繋がっているので二人は一緒に行動しなくてはならない。 舞いの場面では珍しく笑ってしまった。 □復曲能・岩船■出演:大槻文蔵,大槻裕一,福王和幸ほか ■天野文雄のプレトークを聞く。 彼の著書・編著には目を通すことが多い。 祝言能に前場を復元、後場は天探女(あまのさくめ)が岩船に乗って登場し龍神がその船を牽引し住吉の浦に着岸させるという舞台である。 前場から囃子の大鼓、ワキの臣下・隋臣それに供女に力強さがみえる。 緊張が感じられる。 後場の天探女の舞、つづく竜神登場と舞は圧巻である。 探女の静と龍神の動が見事に噛み合っている。 岩船や宝珠などの小道具も舞台を程よく修飾している。 全体の流れもよく考えられている。 脇能で興奮するのは久方ぶりだ。 *劇場、 https://www.ntj.jac.go.jp/schedule/nou/2021/3108.html?lan=j

■リゴレット

■作曲:G・ヴェルディ,指揮:ダニエル・ルスティオーニ,演出:バートレット・シャー,出演:クイン・ケルシー,ローザ・フェオラ,ピュートル・ベチャワ他 ■東劇,2022.3.18-24(メトロポリタン歌劇場, 2022.1.29収録) ■新演出と聞いて早速映画館へ・・。 背景を特に現代にして上演することの多い作品だが今回は1920年代ドイツらしい。 インタビューで美術・衣装担当が苦労話をしていたけど、でも効果は薄い(ようにみえた)。 客船からヒントを得た公爵館も物語に馴染んでいない。 住居も飲み屋も単純に貧弱だけ。 その三つの建物を取り込めなかった廻り舞台の出来も60点くらい。 退廃的に見えたのはリゴレットの衣装と化粧くらいかな? リゴレットの二面性の面白さも一幕舞踏会で暴力的とも言えるマントヴァ公爵の乱痴気騒ぎで潰れてしまった。 モンテローネの呪いも言葉だけ。 娘ジルダを誘拐するため住居に押し寄せる大人数の公爵部下、彼女を誘拐したあとの館の部下たちの多さに興醒めね。 歌わない合唱団を登場させる事情はわかるけど。 娘の辱めと父親の惨めさしか残らない。 コロナ禍のため演出家の意図が発揮できなかった? ところでピュートル・ペチャワは身体も声も肉付いてノッている時期が続いているようね。 演技も歌唱も自信が溢れていた。 ヴェルディ・バリトンのクイン・ケルシー、二度目のローザ・フェオラの父娘はどうにか役を熟したかな。 ヴェローナへ逃げる彼女の男の子姿は似合っていたわよ。 でもカメラのアップが以前より多くなってきたのは目障りだわ。 *METライブビューイング2021シーズン作品 *MET、 https://www.shochiku.co.jp/met/program/3766/ *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、シャー  ・・検索結果は6舞台.

■椿姫

■作曲:G・ヴェルディ,指揮:アンドリー・ユルケヴィチ,演出・衣装:ヴァンサン・ブサール,出演:中村恵理,マッテオ・デソーレ,ゲジム・ミシュケタ他,演奏:東京交響楽団 ■新国立劇場・オペラパレス,2022.3.10-21 ■アニタ・ハルティヒで観たかった。 昨年末の「 蝶々夫人 」が中村恵理だったこともあるので。 コロナが長過ぎるぅぅ。 そして前奏曲を聴くだけで涙がでてくる。 ヴィオレッタは1幕から走り続けるから大変ね。 中村恵理は蝶々夫人のほうが似合うと思う。 高級娼婦は謎が多すぎるし・・。 アルフレードとジェルモンの息子と父が舞台を固めてくれた。  ヴァンサン・ブサールの演出はこれで3度目だわ。 少し飽きてきた。 そろそろ新演出にしてちょうだい。 *NNTTオペラ2021シーズン作品 *劇場、 https://www.nntt.jac.go.jp/enjoy/record/detail/37_022514.htm *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、ブサール  ・・検索結果は3舞台.

■能楽堂三月「縄綯 なわない」「箙 えびら」

*国立能楽堂三月普及公演の下記□2作品を観る。 □狂言・和泉流・縄綯 なわない■出演:松田高義,奥津健太郎,野口隆行 □能・観世流・箙 えびら■出演:杉浦豊彦,大日方寛,井上松次郎ほか ■国立能楽堂,2022.3.12 ■プレトーク「三つの世界を流れる生田川」(横山太郎)を聞く。 三つとは「来る年の矢の生田川・・」の時象徴の川。 二つ目が修羅世界の「血は涿鹿の河となり・・」。 そして三つ目、梶原景季が修羅の戦いの最中に「心を静めて見れば、所は生田なりけり、時も昔の春の、梅の花さかりなり、・・」と瞬時に平座になって我にかえり、一ノ谷に向かう直前の生田川風景を現前させる。 修羅道の舞は重たかったが一ノ谷再現からは軽やかにみえた。 時空の転換に驚くばかりである。 狂言「縄綯」がH・メルヴィルの「 バートルビーズ 」に似ているとの指摘があった。 主人公は「・・したくない」と言って主人の頼みを拒否する話である。 しかし哲学的な内容より太郎冠者の身勝手な行動が前面に出ていたようにみえる。 主人の妻や子供の悪口もいただけない。 *劇場、 https://www.ntj.jac.go.jp/schedule/nou/2021/3113.html?lan=j

■透き間

■台本・演出:山口茜(イスマイル・カダレ「砕かれた四月」より),作曲:増田真結,振付:足立七瀬,出演:高杉征司,芦谷康介,達矢ほか,劇団:サファリ・P ■東京芸術劇場・シアターイースト,2021.3.11-13 ■舞台には2m四方の台が4x4=16個作られている。 その台の間をぬい、台の下を這い、5人の役者が動き回る。 その動きは振が付いている。 ダンスに近いですね。 科白もそれに合わせて詩的に聴こえる。 初めて聞く作者と作品です。 配られたチラシの登場人物と場面構成を読んでいなければストーリーは意味不明です。 読んでいても同じかもしれない。 役者の動量と話量が比例しないからです。 台詞が少なすぎる。 このため科白が身体に絡んでこない、ダンスも科白も別々でみると面白いが・・。 「掟(カヌン)と呼ばれる伝統的な慣習法に支配された」世界が遠くて敷居の高い舞台に感じられた。 *サファリ・P第8回公演 *劇場、 https://www.geigeki.jp/performance/theater301/ *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、山口茜  ・・検索結果は2舞台.

■牢獄天使城でカリオストロが見た夢

■演出:笠井叡,出演:山田せつ子,杉田丈作,大森政秀,齊田美子,山崎広太ほか,ピアノ:島岡多恵子 ■世田谷パブリックシアター,2022.3.3-6 ■「天使館を通り過ぎ、遠く離れていったダンサーたちが今此処に・・」。 笠井叡と天使館ダンサーの他に大森政秀、山崎広太、山田せつ子の名前も載っている! さっそく劇場へ。 ダンサー17人の控えを左右にとり遠近を出せるように深い舞台にしてある。 さいしょに大森政秀が階から舞台に上り3人のオイリュトミーをコロスにして舞い始める。 次に杉田丈作、山田せつ子、山崎広太と続くの。 「遠く離れていった」4人は自身の振付で舞う。 山崎広太は天使館との距離を語っていたが、この劇場で彼の公演を観ていた頃を思い出すわね。 そして笠井叡は椅子に座って登場。 科白を時々発する。 途中、笠井久子が朗読しながら車椅子で現れる。 どちらもダンスと言葉、革命と自由を語っているように聞こえる。 終幕近く笠井叡は椅子から離れて踊り喋り転げ回る・・。 カーテンコールで足を引きずっていたけど、だいじょうぶ? いつものオイリュトミー公演では身体の解放感が訪れるが今日の舞台は少し違った。 中堅ダンサーたちに苦しみの表情がみられたから、そして科白が天使館の思想面を語っていたからよ。 「天使館ポスト舞踏公演」としての区切りをつける舞台だった。 *劇場、 https://setagaya-pt.jp/performances/202203cagliostro.html

■能楽堂三月「牛馬」「朝長」

*国立能楽堂三月定例公演の下記□2作品を観る。 □狂言・大蔵流・牛馬■出演:善竹隆司,善竹隆平,茂山千三郎 □能・金剛流・朝長■出演:金剛永謹,福王茂十郎,福王和幸ほか ■国立能楽堂,2022.3.2 ■馬を引き牛を追う動きだけでその風景が立ち上がる。 現代と違い、家畜が入ると心が和む。 博労たちのセコセコした様子との対比が面白い。  「朝長」は前シテと後シテが別人の為か物語が繋がっていかない。 しかも登場した朝長は戦いに忙しい。 青墓宿長者と旅僧が語る朝長への言葉を膨らませて主人公の心を覗くしかない。 しかも舞台上の長者と朝長が別演者にみえてしまった。 前場のある場面で長者がよろけそうになり観ていて緊張したが、後場は声も動きも朝長が生き返ったかように若々しかった。 ブログラムには両シテ役ともに金剛永謹と書かれていた・・!?   この作品は朝長はもとより父兄弟の最後の場面が繰返し語られる。 作者は源氏一族のゴシップを描きたかった? 観世元雅が活躍した頃の「平治物語」は未だ同時代だったのだろう。  *劇場、 https://www.ntj.jac.go.jp/schedule/nou/2021/3114.html?lan=j