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■2014年舞台ベスト10

□ 又   演出:田村一行,出演:大駱駝艦 □ 花子について   演出:倉持裕,出演:片桐はいり,西田尚美ほか □ 虚像の礎   演出:中津留章仁,劇団:トラッシュマスターズ □ ヒネミの商人   演出:宮沢章夫,劇団:遊園地再生事業団 □ カルミナ・ブラーナ   演出:デヴィット.ビントレー,舞団:新国立劇場バレエ団 □ トーマの心臓   演出:倉田淳,劇団:スタジオライフ □ 関数ドミノ   演出:前川知大,劇団:イキウメ □ マハーバーラダ   演出:宮城聰,劇団:SPAC □ [àut]アウト   演出・出演:グループ.アントルス □ 無伴奏ソナタ   演出:成井豊,劇団:キャラメルボックス *並びは上演日順。 選出範囲は当ブログに書かれた作品。 映像と美術は除く。 * 「2013年舞台ベスト10」

■止まらずの国

■作:舘そらみ,演出:舘そらみ,劇団:ガレキの太鼓 ■こまばアゴラ劇場,2014.12.19-30 ■よっ、冒険王!! 日本人にとっては、どのような形態でも海外旅行は驚きの体験でしょう。 この雰囲気が舞台からも感じられます。 今でもバックパッカーは流行っているのでしょうか? しかし舞台は過激です。 クーデター?に出会ってしまった! これは未体験ゾーンです。 どうなることか緊張しました。 しかし終幕のオチがよくわかりません。 祭りに出くわしたのでしょうか? 科白がよく聞き取れなかった為です。 たぶん街が解放されたのですね。 過激な体験に出会った時にどのような考えや行動をしなければいけないのか? そしてこの体験を自身の人生や仲間にどのように結び付けるか?を考えてくれ、と言っている芝居にみえました。 名も知れぬ空港で降り立つ時の緊張と不安・・、帰国便の席に座った時に押し寄せてくる安堵・・。 この「緊張」「不安」「安堵」の繰り返しが海外旅行の楽しみかもしれません。 *劇場サイト、 http://www.komaba-agora.com/play/1104

■鼬

■作:真船豊,演出:長塚圭史,劇団:シス・カンパニー ■世田谷パブリックシアタ,2014.12.1-28 ■叔母おとりは山影に裏切られるのでは? 鼬とは誰なのか? これからが面白い!とワクワクしながら観ていたが、母おかじの死で幕が下りてしまった。 年末だというのに半端な終わり方で残念である。 舞台のだるま屋内部はただっ広いだけの空間である。 債権者が家具類を持って行ってしまったようだが、昭和初期の東北にはみえない。 しかしこれで人物に集中できた。 役者たちは喚くような喋り方だが慣れてくると気にかからなくなった。 女性たちが素晴らしい。 特におとりとの対話が活き活きしている。 数々の苦労話が当時の風景を連れてきてくれる。 そして欲望の結晶であるカネはモノの極限にみえる。 札束を数える・札束を隠す・札束を人に渡す・・。 札束はおどろおどろしい。 人の全てがこびり付いるようだ。 振込やカードだとこうはならない。 昭和は遠くなってしまった。 ともかく中途半端な感は否めない。 続編の3幕を作ってくれ。 *劇場サイト、 https://setagaya-pt.jp/theater_info/2014/12/post_376.html

■トロイアの女  ■からたち日記由来

■トロイアの女 ■原作:エウリピデス,演出:鈴木忠志,劇団:SCOT ■吉祥寺シアタ,2014.12.19-26 ■2作品を上演。 でも最初の「トロイアの女」はよくわからなかったわ。 途中に鈴木忠志のトークがあり、その間に配られたパンフレットを読んでどうして分からなかったのか?が分かったの。 そこには、王妃は苦難の人生を想いながら自分の境遇を嘆いているだけで「ストーリが希薄」そして「劇が描かれていない」ようにみえると書いてある。 物語が遠のいた理由かもしれない。 これで侍たちの動きや王妃の喋り方などが大げさになっていたのね。 間接的にギリシア兵やトロイア人などのグループ間や、老婆や神像・廃車男の役者間の結びつきが弱められ舞台が散らばってしまった。 この弱さがわからない原因よ。 アンドロマケ=花売り娘の存在は光っていたわ。 「敗戦後の予想のつかない人生を想像する状況ほど劇的なものはない」と言っているけど、舞台の劇的さも想像するしかない作品のようね。 でも最後に高橋康也の解説を読んで全体が見えてきた。 ■からたち日記由来 ■作:鹿沢信夫,演出:鈴木忠志,劇団:SCOT ■発狂したチンドン屋の母親が講談、それは伯爵令嬢鎌子とお抱え運転手倉持の心中未遂事件を語るストーリーなの。 母を介護している息子と伯父が横でハーモニカとクラリネットを持って伴奏や歌唱を担当。 「人は誰でも心の片隅に、からたち日記を持っている・・」。 母親の力強い講談が心の奥にしまっていた歌を見事に舞台へ現前させていたわ。 令嬢の一度でいいから愛したいという心情が伝わってきたの。 伴奏は大正時代の風景を広げていた。 物語が凝縮された素晴らしい舞台だった。 でも終幕、母親の口調が激し過ぎたようね。 これが島倉千代子に上手く繋がらなかった。 内に秘めるように終わらせればパーフェクトよ。 「こころで好きと 叫んでも 口では言えず ただあの人と・・」 *CoRich、 https://stage.corich.jp/stage/60516

■カストラート

■監督:G.コルビオ,出演:S.ディオニジ ■(フランス.イタリア.ベルギー合作,1994年作品) ■歌劇入門書の文献欄に必ず載る作品です。 1994年作成ですからちょうど20年前ですね。 やっと観ることが出来ました。 バロック時代の歌手ファリネッリの伝記です。 作品はたぶん当時に忠実であろうとした為か躍動感がありません。 そして兄弟関係を重視しているのでパッとしない内容です。 去勢手術をしているので二人で約一人前ということのようです。 ポルポラやヘンデルが登場しますしハッセの歌もあります。 しかしファリネッリがイタリア・オペラの下地を作った後半は描かれていません。 メタスタージオもグルックも登場しません(見落としたのかもしれない?)。 監督は台頭するオペラ・セリアを横目にカストラートの全盛期を描きたかったのでしょう。 18世紀のカストラートを取り巻く風景というものを感じ取ることは出来ました。 これだけでも観た価値があります。 *映画comサイト、 https://eiga.com/movie/43318/

■シンデレラ

■音楽:S・プロコフィエフ,振付:F・アシュトン,指揮:M・イェーツ,出演:寺田亜沙子,井澤駿 ■新国立劇場・オペラハウス,2014.12.14-23 ■「シンデレラ」は時間を意識する作品だからクリスマスの恒例になっているのかしら? でも「胡桃割人形」と比べると面白くない。 二人の姉を道化にしたのがその理由。 主人公に強敵がいるかどうか? お伽噺でも緊張感が必要条件よ。 子供たちが沢山観に来ていたけどこれが分かるはず。 そしてプロコフィエフの音楽はいつも不安感が漂っている。 姉たちはこの音楽を料理する腕前が必要かもね。 この演出は当時の時代の要請らしいからしょうがない。 新ソリスト井澤駿が登場したけどプロコフィエフは踊り難そうに見えたわ。 でも緊張ある場面は熟していたしダイナミックな持ち味も感じられた。 舞台は仙女と道化師の切味の良さが全体を引き締めていたし、四季の群舞も素敵だった。 シンデレラの家は天上梁の形の古さや出入口や暖炉にカモシカが飾られ物語の詰まっている豊かさが表れていた。 いつもの舞台美術とは違うの。 やはりクリスマス時期の作品ね。 楽しかったわよ。 *NNTTバレエ2014シーズン作品 *劇場サイト、 http://www.nntt.jac.go.jp/ballet/cinderella/

■ジプシー・フラメンコ

■監督:E・ヴィラ,出演:K・アマジャ,M・アマジャ ■UPLINK,2014.12.20-26 ■「カルメン・アマジャ生誕100周年記念」ドキュメンタリー作品である。 カタルーニャのジプシー・コミュニティがフラメンコを脈々と引き継いでいる姿を描いている。 人々は余所行顔で登場するが、風景に溶け込むと生活顔に戻るのがとてもいい。 カルメン・アマジャの姪たちの練習風景は面白い。 しかし演奏や踊りの場面では顔を中心としたアップが多く全体を見せてくれない。 舞台場面でも観客の子供を撮影し続けたりする。 構成やストーリーは上手いとは言えない。 でも活き活きしていてドキュメンタリーとしては申し分ない。 舞踊関係者なら深読みもできそうだが、フラメンコを沢山観よう!と渋谷に出かけた素人には期待ハズレだった。 ■映画COMサイト、 http://eiga.com/movie/79460/

■スーパープレミアムソフトWバニラリッチ

■作・演出:岡田利規,劇団:チェルフィッチュ ■KAAT・大スタジオ,2014.12.12-21 ■コンビニはチケット発券で利用しているわね。 多くの決済機能を持っているのがコンビニのメリットかな、ATMもあるし。 それと急ぎのコピー。 出先でのアイスクリームも。 これはタイトルと一致して嬉しい! やっぱアイスクリームを買うのが一番多いわね。 アイスクリームの自販機って無いでしょ? コンビニの構造や組織の説明が多く有ったけど芝居を上手に修飾していたわ。 店員とお客や本部担当との遣り取りは問題提起も含まれていて面白い。 でも多くの提起は社会現象として拡散してしまい面白さだけが残ってしまった。 しかもコンビニの進化に付いていけずに、その落穂拾いをしているような舞台にもみえた。 ところで役者の振付をバッハに合わせていたけどこれも古い感じね。 たぶん国際共同制作でこうなっちゃたのね。 作り手は膨大なカネと情報を使っているけど、チャラチャラの軽さが売りのコンビニ空間。 そのコンビニに迫る黙示録を作るならカーツ大佐に会いに行くしかない。 それにしても題名のアイスクリームは美味しそうね。 *劇場、 https://www.kaat.jp/event/33116

■おじょう藤九郎さま

■演出:田村一行,出演:大駱駝艦 ■壺中天,2014.12.13-21 ■舞踏と民俗芸能の関係は意識したことがなかったし、青森県八戸市の「えんぶり」も知識がありません。 舞台は舞踏と芸能の境界線を行ったり来たりしているようで複雑な楽しさを持っています。 この複雑さは「ながえんぶり」と「どうさいえんぶり」、「えんぶり摺り」と「祝福芸」を上手く取り混ぜている為とみました。 稲作農耕の仕草が前面に出ていますが、男女ダンサーのリフトもこれに沿っていて面白い。 また男性ダンサーの「どうさいえんぶり」は圧巻でした。 本物の「えんぶり」を見ていないので何とも言えないのですが、舞踏と芸能が巧く融合された作品と言えるでしょう。 精神面の暗黒性が薄いのはしょうがないですかね? *劇団サイト、 http://www.dairakudakan.com/rakudakan/kochuten2014/ojyou_kochuten.html

■この道はいつか来た道

■作:別役実,演出・出演:富永由美,土井通肇 ■旧眞空鑑アトリエ,2014.12.12-20 ■介護施設から逃げ出した老いた男と女の話である。 二人は道端に茣蓙を敷いて「結婚ごっこ」を始める。 しかし女は死が近づいている。 彼女の右足そして左足と感覚がなくなっていく。 感覚が残っている首をナイフで刺してくれ!と女は男に頼む。 それは女の前夫の死に様と同じだ。 男は、かつて女が前夫を見送ったように彼女の死を看取る・・。 幼児時代の「ままごと遊び」に始まり、老いて「結婚ごっこ」で終わるのも幸せな人生なのかもしれない。

■新たな系譜学をもとめて-跳躍/痕跡/身体-

■感想は、 http://ngswty.blogspot.jp/2014/12/blog-post_9.html

■星ノ数ホド

■作:ニック・ペイン,演出:小川絵梨子,出演:鈴木杏,浦井健治 ■新国立劇場・小劇場,2104.12.3-21 ■日々の行為の裏には他の可能性があった。 時間を戻して幾つかの可能性をやり直す舞台構成です。 例えば脳腫瘍の検査結果が悪かった場合、次に良かった場合をループシリアルに演じます。  物理学者マリアンヌと養蜂家ローランドの出会・別れ・再会・結婚の話ですが、細かな反復があるので物語が断片化されてしまいます。 これは逆に「星ノ数ホド」もある可能性が一つ一つ寄せ集められ人生を作り出していることを意識させてくれます。 この作品は一種の哲学というか宗教観のようなものを描こうとしたのではないでしょうか?  しかし舞台ではこれを現代科学に繋げようとします。 紐理論も一つの可能性とみるべきでしょう。 そしてマリアンヌは終始厳しい口調で自己と戦っているかのような姿です。 硬いリズムが舞台を覆っています。 この二つが「可能性の一つである人生の不思議さを感じさせる舞台」と拮抗して全体が中和してしまった。 面白い構造の作品でしたが、演出家や俳優がどのような芝居を作ろうとしていたのか観ていて悩みました。 *NNTTドラマ2014シーズン作品 *劇場、 http://www.nntt.jac.go.jp/play/performance/16_003731.html

■スペイン国立ダンスカンパニー

■監督:J・マルティネズ ■KAAT・ホール,2014.12.5-6 ■「SUB」「堕ちた天使」「ヘルマン・シュメルマン」「天井桟敷の人々」「マイナス16」の5作品を上演。 最初の「SUB」は戦士たちが闘い前の準備運動をしているようだ。 体格が良いので重量感が伝わってくる。 これは「堕ちた天使」の女性ダンサーにも言える。  しかし大味である。 振付が指先や爪先にまで届いていないからである。 つまり身体の端がボヤケてしまって大味にみえるのである。 スペインらしく日常性を取り込んでいる場面も多いが物語が中途半端である。 これも原因かもしれない。 「天井桟敷」ではマルティネズが踊る予定であったが怪我のため代役になってしまった。 残念である。  終幕には10名くらいの観客を舞台に乗せたが即興客のようではなかった。 統制がとれていたためである。 でもこれで和んだことは確かだ。  パリ・オペラ座次期監督のB・ミルピエが話題になっているが、こちらスペインの方は静かにみえる。 資本主義世界では経済発展と芸術の面白さは比例するのだろう。 20世紀に戻って舞台を観ているようだった。 *劇場サイト、 http://www.kaat.jp/d/spain

■疫病流行記

■作:寺山修司,演出:高野美由紀,出演:劇団☆A・P・B-Tokyo ■シアターグリーン,2014.11.28-12.3 ■「30年前は陸軍野戦病院だった・・」。 でも「ロメオとジュリエット」の舞台美術だと勘違いしたくらいです。 貧弱ですが黄土色の家壁に蔦が這っていて、ジュリエットが登場してきそうな明るさがあります。 戦後30年の1975年にこの作品を初演、それから40年後の今日が九條今日子追悼公演になってしまいました。 ・・戦後70年もたったのですから野戦病院跡の建物も明るくなるでしょう。 女性演出家色が強く出ている作品でした。 しかもメトロノームで計っているような舞台テンポです。 このテンポで物語も平均化されたのか煮詰まりません。 細かい話は沢山登場するのですが集約できない。 これは作者がメッセージを込め過ぎたせいでもあります。 この作品は舞台が間延びをしてしまうことがよくあるのです。 でも流石APB東京です。 持前の寺山DNAで恰好をつけることができました。 歌唱が数曲ありましたが、音響を抑えて役者が真面目に歌えば舞台に深みが出るでしょう。 *劇団サイト、 https://www.apbtokyo.com/about?lightbox=dataItem-k92horaj