投稿

7月, 2021の投稿を表示しています

■物語なき、この世界。

■作・演出:三浦大輔,出演:岡田将生,峯田和伸,柄本時生ほか ■シアターコクーン,20201.7.11-8. ■自分探しを発展させたのが物語探しかな? 発展とは「因果律によって世界を梱包してみせる思考ゲーム」に参加することよ。 そう・・、登場人物はいつもゲームに向かってしまう。 主役は誰で脇役は誰か? 監督ならこう考える?演出家ならそう考える? そして皆はその役割をはたしていく・・。 モノハラ(物語ハラスメント)も発生しそう。 そして科白には<物語>という言葉が必ず入る。 これで「世界を梱包」した対象は解説的に陥る。 これは梱包演劇だわ。 しかも梱包すると真面目になるの。 こんなに真面目な作品になるとは演出家も驚いているんじゃないかしら? おっパブやファッションヘルスも肉化されず梱包されてしまう。 二人の主人公、菅原と今井の冴えない関係が面白く描かれていた。 同じように高校時代さえもパケット化されてしまう。 その時代を身体的に関係付けができない。 恩師の話も続かない。 でも今井の歌は二人のシラケを上手に消したかな? 脇役では、スナックママ橋本が二人を3Pに誘うのは全体の流れからみて脱線。 これがなければママ最高よ! それと巡査妻の浮気も不要。 スタッフが物足りないと感じてしまったから。 どれほど足しても解説を呼び込む梱包演劇だから物足りなさは消えない。 観客層はお嬢さんが多いし、ここは直系劇場の限界も出たのかな? それはともかく、物語とは何か? 物語りと舞台の関係をいろいろ考えされられたわね。 ところで、道具造りは最高だった。 建物を展開しながら室内を見せるのは近頃の流行りだけどとても良く出来ていた。 色とりどりのネオンサインに映像を混ぜ合わせた風景は歌舞伎町の華やかさと寂しさに変換されていたと思う。 *劇場、 https://www.bunkamura.co.jp/cocoon/lineup/21_monogatarinaki/ *「ブログ検索」に入れる語句は、 三浦大輔

■砂女

■原作:安部公房,演出:ペーター・ゲスナー,出演:後藤まなみ,荒牧大道,松尾容子ほか,劇団:うずめ劇場 ■調布市せんがわ劇場,2021.7.28-7.29 ■それにしても男は忙しすぎる。 自由というものを失いたくないからでしょう。 ヘビースモーカですか? 苛立ってもいる。 しかし生物本能には抗えない。 それは性の欲望と生の継承です。 女との営みで彼は人間生物の道へ戻ることに悩む。 その後、女の出産でその道を歩き続けることに満足していく。 それを共同体がしっかり後押しする。 共同体=権力は道を外れないで自由を考えろと言う。 砂をどのように表現するのか? 考えてしまいます。 今回は映像や音響で表現しましたね。 これが成功したかどうか? 砂がもう一つの共同体=自然として迫ってきたら成功でしょう。 そして二人の住居を具体?それとも抽象?にするのも悩ましい。 砂と同じにするのは勇気がいる。 前者を選んだ舞台は、二人が共同体から外れてしまった河原乞食のようです。 外部が弱まってしまったことは確かです。 勅使河原宏監督の映画を観た記憶がある。 圧倒される砂の中で女役の岸田今日子が壺から取り出したラッキョウを食べる場面は鮮明に覚えています。 *うずめ劇場第35回公演 *シビウ国際演劇祭2021招聘作品 *CoRich、 https://stage.corich.jp/stage/113244 *「ブログ検索」に入れる語句は、 ゲスナー

■夏の名残のバラ  ■映像舞踊「BOLERO2020」  ■FratresⅢ  ■春の祭典

■彩の国さいたま芸術劇場・大ホール,20201.7.23-25 □夏の名残のバラ ■振付:金森穣,音楽:F・V・フロトー,衣装:堂本教子,出演:井関佐和子,山田勇気 ■「春の祭典」のチケットを購入したらオマケが3品付いていた。 夏の名残りは今年初めに当劇場で観ている。  ブログ を読み返したが今回も同じ感想だ。 床に散らばった薔薇の枯花の後処理が気になったが、次の上映中に掃除がなされていた。 □映像舞踊「BOLERO2020」 ■振付:金森穣,出演:Noism ■ステイホーム用かな? 分割した画面間の関係が楽しく考慮されている。 リズムあるステイに浸れるだろう。 □FratresⅢ ■振付:金森穣,音楽:A・ペルト,衣装:堂本教子,出演:Noism0,Noism1 ■「Ⅱ」以上に宗教性がでていると思う。 天井から落ちてくる砂をかぶるダンサーたちは滝行の僧侶にみえてしまった。 儀式舞踊とも言える。 □春の祭典 ■振付:金森穣,音楽:I・ストラヴィンスキー,衣装:RATTA RATTARR,椅子:須長檀,出演:Noism0,Noism1,Noism2 ■椅子が並べられた舞台ツラでのダンサーの動きが劇的舞踊を思い出させる。 舞台の心や奥を使わないでツラだけで勝負すると言語的になる。 作品は劇的舞踊とは言えないが制約をかける面白い始まり方だ。 ダンサー達の感情を込めた動きと白の衣装は未熟さを感じさせるが上手くまとまっていた。 重量感はないが逆に春の祭典らしさが浮き出たと思う。 カーテンや照明の動かし方、椅子の使われ方も巧い。 *劇場、 https://www.saf.or.jp/arthall/stages/detail/90425/

■サデ21 Sadeh21

■振付:オハッド・ナハリン,舞団:バッドシェバ・ヤング・アンサンブル ■NHK・WEB,2021.7.19-(パリ・シャイヨー劇場,2018.10.27収録) ■一人から二人そして複数人へと舞台は膨らんでいく。 動きはスローモーションを混ぜて変化をつけていく。 衣装と照明は中間色を配して振付に寄り添っている。 ダンサーの動きをみていると静かな喜びが湧き起こってくるわね。 輪になったり整列したり・・、でも憂鬱さも感じられる。 パレスチナ人との軋轢が日常化しているイスラエル世界を表現しているのかしら? 叫び声が聞こえ幕切れには壁から飛び降りたり・・、この政治状況に打つ手がないと言っているようにもみえる。 バッドシェバ舞踊団若手クラスのダンサーらしい。 近頃では珍しい男性たちの毬栗頭はこの舞踊団の特徴ね。 彼らが黒の女性用衣装をまとっての場面は唯一劇的だったはず(映像のため効果がみえない)。 これはユダヤ教徒の服装と関係があるのかしら? ナハリンらしい、そして充実した舞台だった。 *CoRich、 https://stage.corich.jp/stage_main/30645

■一九一一年

■脚本:古川健,演出:日澤雄介,出演:浅井伸治,岡本篤,西尾友樹ほか ■シアタートラム,2021.7.10-18 ■題名をみて舞台に登場するのは辛亥革命の孫文か青鞜社の平塚雷鳥か? 違いました。 大逆事件の菅野須賀子です。 幸徳秋水は1910年に逮捕され判決は翌年、・・1911年。 配られた資料を読み「予審」の意味と位置づけが分かったところで幕が開く。 主人公は予審判事田原巧という若者らしい。 事件の予審過程が舞台の大部分を占めます。 そこで提出される証拠は不十分にもかかわらず司法組織は嘘で塗り固めていく。 政権と天皇への忖度です。 田原判事は担当者の一人としてその偽りの調書を大いに悩み苦しむ。 そこで奇策を考える。 それは逮捕者26名全員を天皇大権で特赦にすることです。 これには政権へ忖度してきた彼の上司や同僚も賛同する。 逆転かと思いきや、この奇策も政府が先に用意していた!! 結局、幸徳と菅野を含め12名は死刑になってしまう。   菅野と田原が<自由>について議論する場面があります。 菅野は束縛されない強制されない率直な自由論を展開する。 しかし田原は彼女の自由を理解できない。 彼の職業柄や立ち位置から<権利>と<義務>そして<権力>との関係も考えていたのかもしれない。 この議論は途中で有耶無耶になってしまった。 田原判事の予審での熱演は観客に届きました。 観後に知ったのですが1960年代に事件の再審請求があったのですね。 免訴になったようですが酷い裁判だったことが分かります。 しかも権力への忖度は現代も続いている・・。 *劇団チョコレートケーキ第34回公演 *劇場、 https://setagaya-pt.jp/performances/21071911.html

■解体青茶婆

■作・演出:横内謙介,出演:有馬自由,砂田桃子,山中崇史ほか,劇団:扉座 ■座高円寺1,2021.6.30-7.11 ■死体解剖と聞いて浮かぶのは養老孟司でしょう。 次はレオナルド・ダヴィンチですか? この舞台の主人公、江戸時代の蘭学医、「蘭学事始」「解体新書」著者の杉田玄白は知らないことが多く観後にいろいろと調べてしまいました。 江戸時代、腑分け(解剖)用の死体を得るのがナゼ難しかったのか? 死体は身近にあったはず。 様斬(ためしぎり)を含め死体管理が厳しくなったようだが合点がいかない。 その貴重な献体となる悪人青茶婆がどのような経緯で腑分けにされたのか? 当時の三権と庶民の生活や信仰などを織り交ぜてそれを語り継ぐ流れです。 そこでは玄白と医学塾の弟子たちが、蘭学揺籃期に得られた肉体の事実、つまり人間すべてが同じ内臓を持っていることを基にして人間が平等であることを認め、忌み嫌われた職業、ここでは死体処理を支えた穢多・非人にもこれを適用していく。  分け隔てなく治療し苦痛を和らげるために誠心誠意で努める、という医学の大意が背景にある為か舞台は羽目を外すような勝負に出ません。 このため経緯説明が多くなります。 それは講談の形をとったりする。 説明を重ねながら舞台が進んでいく。 無難にまとめましたね。 久しぶりに古き良き舞台に出会った感じもしました。 得能万兵衛の幕切れの科白「この世は、なかなか捨てたもんではない。・・」に作品のオチが現れています。 扉座を観るのは初めてです。 会場雰囲気が違いますね。 中年男女が多い。 劇団の歴史が窺えます。 *劇団扉座第70回公演,40周年記念作品 *劇場、 https://www.za-koenji.jp/detail/index.php?id=2477 *「ブログ検索」に入れる語句は、横内謙介

■メディア

■原作:エウリピデス,脚色:ベン・パワー,演出:キャリー・クラックネル,ロス・スクギボン,出演:ヘレン・マックロリー,ダニー・サパーニー他 ■TOHOシネマズ日本橋,2021.7.9-(オリヴィエ劇場,2014.9.4収録) ■メディアが追い詰められていく心情変化は激しく速い。 観客が持っている知識想像すべてを注ぎ込んで変化に対応しないと舞台に捨てられてしまう。 話はとんとん拍子に進む。 ヘタな寄り道が無いので気持ちがいい。 役者たちの息の強さが迫ってくる。 リズムも強い。 血まみれになりながら、二人の息子の死体を入れた袋を背負いながら消えていくメディア・・。 これをみて息が詰まってしまった。  この作品は観た後に気が重くなることが多い。 多くの舞台は抽象化などで避けるのだが。 しかし、今回のロンドンは直截を選んだ。 メディアだけではなく夫や子供が血でべっとりになる。 でも、その重さをスピード感が振り払ってくれた。 これは劇画と言ってよい。 この舞台は重さと速さが劇画的に融合してカタルシスを発生させた。 舞台構成は2階建で、1階はメディアの住まい2階はジェイソンの住まいになっている。 映像では明暗調整が単純化されてしまうので両階の差異が複雑に迫ってこなかった。 生舞台ならより迫力が出ていたはずだ。 *NTLナショナル・シアター・ライブ作品 *映画com、 https://eiga.com/movie/95095/

■ウィルを待ちながら Waiting for Will

■作・演出:河合祥一郎,出演:田代隆秀,高山春夫 ■こまばアゴラ劇場,2021.7.2-11 ■「ゴドーを待ちながら」の形を取り入れシェイクスピア作品から抜粋した台詞群で作られた芝居なの。 二人の掛け合いが楽しい。 彼らは名前からとったタカとハルで呼んでいたかしら? 二人が出演した過去の実舞台の話を入れ、「マクベス」魔女場面では鍋を囲んで酒を酌み交わしたりする。 途中に落語まで入る。 しかし老いや死について語ることが多い。 特に「リア王」ドーヴァー断崖場面が繰り返し演じられる。 シェイクスピアの40作品から抜粋したから物語は薄くなるが、逆に舞台と現実、役者と現実が入り混じって奇妙な舞台が現前してくる。 ウィルは遺言と言っていたわね。 シェイクスピアの科白を役者(自身)の遺言のように語り、観客は劇中劇中劇・・に巻き込まれていく。 字幕は日本語と英語、作品名と幕場が表示されるので分かり易い。 原作の面白さと繋がっている舞台だった。 会場はいつもと違った客層にみえる。 やはり演劇系より文学系かしら? *シビウ国際演劇祭招聘作品 *Kawai Project公演 *劇場、 http://www.komaba-agora.com/play/11165

■センス・オブ・ワンダー

■振付・出演:山田せつ子,木佐貫邦子,矢内原美邦 ■シアタートラム,2021.7.2-4 ■山田・木佐貫・矢内原ダンサー3人を同じ舞台でみるのは初めてです。 ・・それぞれがソロを踊るが、木佐貫、山田はいつもの振付にみえる。 矢内原は衣装の袖を外したり付けたり、靴を脱いで歩き回る。 しかしこれも彼女のいつもの動きかもしれない。 次には矢内原が箱庭を背負って登場!? それは庭付き家の模型です。 庭には🐘や🦒、🐼などのフィギュアが貼り付いている・・。 箱庭療法は作者の心の風景が現れると言われています。 彼女はこのような大邸宅に住みたいのでは?と考えてしまった。  そして机が一つ用意され、木佐貫が羽ペンで書いている・・。 すると天井から吊り下げられている数百枚の白い短冊に照明文字が映し出され美しく動き回る。 七夕の願いごとでも書いたのでしょうか? と、このような流れでした。 衣装、美術、照明はなかなかですが、でも箱庭は意味が強過ぎて亀裂が入っていた。 パフォーマンス時々ダンスという舞台でしたね。 「センス・オブ・ワンダー」を身体だけで表現するのは難ですか? しかも3人がまとまるのも大変にみえました。 もっとダンスがみたかったのですが・・。 *劇場、 https://setagaya-pt.jp/performances/202107nibroll.html *「ブログ検索」に入れる語句は、矢内原美邦

■ジャニス・ジョプリン  ■ジャニス、リトル・ガール・ブルー

□ジャニス・ジョプリン ■監督:デビィット・ホーン,演出:ランディ・ジョンソン,出演:メアリー・ブリジット・デイビス他 ■東劇,2021.7.2-(アメリカ,2018年収録) ■心の底から唸り叫ぶジャニスの声がテキサス荒野に響き渡るようだわ。 「私は、白人女ブルース・・」。 彼女が自身の立ち位置を話していたけど、日本で言えば北方演歌かしら? テキサスは東北へ、綿花畑は寒村風景へ、汗ばむニューオーリンズは吹雪く港町へ、目指すシスコは東京かもね。 コンサートをここまで再現した舞台は珍しい。 バンド構成や衣装・・、それよりジャニス役メアリー・ブリジット・デイビスの熱演が素晴らしい。 でも実際のジャニスのコンサートは映像でも観たことが無い。 彼女が影響を受けたベッシー・スミス、エタ・ジェイムス、アレサ・フランクリンも登場して彩を添える。 胸に響く舞台だったわよ。 *松竹ブロードウェイシネマ作品 *松竹ブロードウェイシネマ、 https://broadwaycinema.jp/_ct/17460199 □ジャニス,リトル・ガール・ブルー ■監督:エイミー・バーグ,出演:サム・アンドリュー,ピーター・アルビン,デイブ・ゲッツ他 ■(アメリカ,2015年作) ■上記「ジャニス・ジョプリン」の後に観たのは正解ね。 先だと舞台を本物のジャニスと比較してしまったからよ。 このドキュメンタリーをみて舞台でのアドリブの多くがジャニス本人の言葉だと知ったの。 彼女の家族、両親や妹弟のこと、シスコでのビッグ・ブラザー参加、モンタレーフェスティバル、コズミック・バンド結成、ウッドストック、高校同窓会での無視・・。 死の前は薬を断ち切っていたようだけど、だめだったようね。 この2本でジャニスがずっと身近になった。 *映画com、 https://eiga.com/movie/84828/