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■身毒丸

■作:寺山修司,演出:J・A・シーザ,高田恵篤,出演:演劇実験室◎万有引力 ■世田谷パブリックシアタ,2015.1.29-2.1 ■見世物説教歌劇といったところかしら? 舞台は鳥居の朱の柱が何本も立っていて妖しい美しさが漂っている。 箏や琵琶での説経節まで揃って演奏や歌唱に厚みもある。 力の入っている作品だわ。 科白は少なく、20世紀前半を現前させる詩や語りや市井の衣装そして怪しい見世物や音楽が風景としてそれを埋めていくの。 寺山特有の少しギクシャクしている台詞をカバーしていて総合力が出ていたわよ。 生みの母や育ての母・・、母を呪う話なの。 でも作者の母への思いが逆にずしりと響いてきてしまった。 今回はマイクを使っていたけど精度が少し劣るようね。 歌唱が聞き取れない場面が多々あった。 素声の役者は問題なかった。 この劇場は舞台天井から音が抜けてしまう感じだから注意が必要ね。 それは兎も角「舞台は見世物だ」と確信できた渾身の一作だわ。 *演劇実験室◉万有引力・寺山修司33回忌生誕80年作品 *劇場サイト、 https://setagaya-pt.jp/theater_info/2015/01/post_383.html

■お暇をこじらせてⅡ

■原案:A.カミュ,O.ワイルド,構成・演出:島貴之,出演:劇団AJI ■こまばアゴラ劇場,2015.1.1.29-2.1 ■「正義の人々」と「幸福の王子」を交互に演じていきます。 帝政ロシア大公暗殺テロリストの10人は皆「ピエロの赤い鼻」を付けています。 彼らはどこかフランス風です。 食器類や小道具の取扱い方もその様にみえます。 王子役のDJが二階にいて音楽指示や燕と話をしますが、その曲もフランスが多い。 実はプレトークでパリの話もあったのです。 初めて観る劇団は心が躍りますね。 ハンドメイドのカラフルな構造を持った演出と美術が特徴のようです。 それと仏蘭西風アンサンブルも付け加えてよいでしょう。 原作の入口は「子供を殺すのを躊躇うこと」「不幸な人々に施しをすること」ですが進むほどにみえなくなります。 それは正義と幸福が、テロリストと王子がどのように繋がるのか? 愛や憎しみや名誉そして最後は神も絡むからでしょう。 DJである王子がこの結論を喋っていたようにみえます。 しかし科白が抽象すぎてよくわからなかった。 進むほどに拗らせてしまったような舞台でした。 *劇場サイト、 http://www.komaba-agora.com/play/1107

■さまよえるオランダ人

■作曲:R・ワーグナー,指揮:飯守泰次郎,演出:M・V・シュテークマン,出演:R・シヴェク,R・メルベート,D・キルヒ,竹本節子,望月哲也,T・J・マイヤ ■新国立劇場・オペラハウス,2015.1.18-31 ■息を飲む展開が続き観後のカタルシスは最高! 死者の登場が舞台芸術の頂点に立つ為の必要条件だと言っているの。 世阿弥が今でも劇的感動を持ってきてくれる理由と同じね。 しかもこれは救済されるから尚更よ。 ダーラントに娘を紹介してもらう場面で、オランダ人がはにかんでる様子はワーグナーの若さが出ているわね。 でも28歳の作品とは凄い。 オランダ人がゼンタと初めて対面する場は久しぶりの緊張を味わったわ。 特にオランダ人の存在感は重要ね。 「指輪」と違って糸紡ぎや水夫たちの世間を肯定する人々が登場するのも初期作品の面白さだとおもう。 そしてゼンタはもっと不思議さを漂わせてもいいかも。 テノールが脇役でバスやバリトンとの対話が多いからよ。 でも彼女の歌唱は素晴らしかった。 飯守泰次郎はマラソン走法の「 パルジファル 」と違い今回は中距離走の指揮をしていた。 上演時間が半分という理由もあるわね? ともかくまだ一ヶ月しか経っていないけど今年初めての納得する一本だわ。 *NNTTオペラ2014シーズン作品 *劇場サイト、 https://www.nntt.jac.go.jp/opera/15derfliegendehollander/

■TRAINING PIECE  ■ASU-不可視への献身-

■TRAINING PIECE ■演出:金森穣,出演:NOISM1ノイズムワン ■KAAT・ホール,2015.1.24-25 ■均質な位置を崩したり組体操のような関係を取り込みながら進みます。 海の中を滑らかに泳いでいる魚のような動きが基本にあります。 毎日のトレーニングを作品にしたようです。 陶酔感が時々訪れます。 マチスのダンスが一瞬見えた気もします。 この感覚に浸りたいのですがNOISMはこれを許しません。 緊張感が漂っているからです。 鏡を多用するのも原因かもしれません。 途中、細鱗のような近未来的デザインの白衣装からカラフルな水着のような衣装に変わります。 高まるテンションにマッチしていました。 「・・バレエを西洋から東洋に解体・発展させる試み」とありましたが、ウーンなるほど。 ■ASU-不可視への献身- ■思いもよらない作品でした。 人類が洞窟生活をしていた頃の、宗教の始原を扱っているかのような舞台です。 観ていて「春の祭典」を思い出してしまいました。 NOISUMの演劇的ダンスからダンス的バレエ、バレエ的ダンス、そしてこの作品はダンス的演劇の位置づけでしょうか? 喉歌が始終歌われていましたがホーミーとは少し違うようです。 舞台も暗いのでイメージが掴み難い。 ということで帰りにプログラムを購入しました。 「不可視への献身」とは可視化情報社会に抗い、且つ20世紀の野生・混沌・直観を越えるエネルギーを舞台に表出させること! ウーンなるほど。 *劇場サイト、 http://www.kaat.jp/d/asu

■リアルリアリティ

■演出:矢内原美邦,劇団:Nibrollニブロール ■シアタートラム,2015.1.23-25 ■移動できる白い壁で二方を囲った小さめな菱形の舞台である。 映像を多用するため白が目立つ。 幕開きから首つり映像が映し出されてびっくり! リアリティは無いが心に引っ掛かる。 ダンサーたちは重ね着をしているから動きが不自然である。 衣装を次々脱いでいく。 もはやダンスというよりパフォーマンスだろう。 そして映像が隅々にまで浸透してくる。  後方に机が積み上げてあり机上の本や筆記具を次々捨て始める。 ダンサーたちが衣装箱から服や日常品を出し入れしている。 演出家がいつも目にしている物々に違いない。 アコーデオンや鹿の剥製もあるがこれは舞台サービスだろう。 モノの感覚は次第に無くなっていく。 最後は浮遊物のように天井から服の切れ端が漂い落ちてくる。 モノもヒトも社会も像と言葉しかないという実感が頭を過る。 チラシにあった作品コンセプトが上手く表現されていた為かもしれない。 感動は無いがいろいろ考えてしまう舞台であった。 *劇場サイト、 https://setagaya-pt.jp/theater_info/2015/01/post_387.html

■DANCE to the Future-Third Steps- ダンス・トゥ・ザ・フューチャー

■振付:宝満直也,広瀬碧,貝川鐵夫,平山素子,高橋一輝,M・トレフバエフ,福田圭吾,小口邦明 ■新国立劇場・小劇場,2015.1.16-18 ■振付家8人の作品を上演。 招待作品「REVELATION」を除くベスト3は以下の通りよ(上演順)。 1.「はなわらう」(振付:室満直也) バレエが好きだがダンスも好きだ、と言っているような作品にみえる。 素直な表現に好感が持てたわ。 バレエ風の8人が舞台に上ると小劇場では少し狭いかな。 2.「PHASES」(振付:福田圭吾) S・ライヒでミニマル風、C・グノーでコンテンポラリ風を踊り分けている。 うまく混ざり合っていたとおもう。 3.「DANCER CONCERTO」(振付:小口邦明) やっぱりダンスよりバレエが好きだ、と言っている作品ね。 J・ブラームスの曲をそのまま物語にしているのでブレが無く力強さが出ていた。 最初の「はなわらう」でバレエから離れようとしたけど、最後の「DANCER CONCERTO」で元の鞘に収まってしまった感じね。 その中で「THE LOST TWO IN DESERT」と「PHASES」はバレエを忘れることができたわ。 曲から逃げられないから選曲も大事ね。 感情表現では「REVELATION」を越える作品は残念だけど見当たらなかった。 このようなチャンスにはバレエから離れた世界に挑戦してもいいかもよ。 *NNTTダンス2014シーズン作品 *劇場サイト、 http://www.nntt.jac.go.jp/dance/performance/150116_003725.html

■二人藤娘  ■日本振袖始-大蛇退治-

■二人藤娘 ■振付:藤間勘世,出演:坂東玉三郎,中村七之助 ■東劇,2015.1.3-2.13(歌舞伎座,2014.3収録) ■七之助の面長顔が玉三郎とのシナジー効果を出していました。 話題になった理由がわかります。 この作品は意味があるような短い振付が続き、しかも衣装が次々と変わるため舞台についていくことができませんでした。 準備をしてから観るべきでしたね。 途中の演奏場面では裏舞台の様子が映し出されましたが、舞台から離れず演奏を撮って欲しかった。 他場面も編集されているようで残念です。 ■日本振袖始-大蛇退治- ■作:近松門左衛門,振付:藤間勘吉郎,出演:坂東玉三郎,中村米吉,中村勘九郎 ■岩長姫の酒に酔った姿は姫の二面性が現れていて面白い。 そして素戔嗚尊の動きはロボットのようで楽しい。 見得も決まっていましたね。 三味線も素晴らしかった。 近松ですが舞踊に近い作品ですね。 岩長姫と素戔嗚尊の間に立った稲田姫が控え目だったからでしょう。 これで物語が遠ざかってしまった。 *シネマ 歌舞伎第21弾作品 *主催者サイト、 http://www.shochiku.co.jp/cinemakabuki/lineup/26/

■PLUTOプルートゥ

■原作:浦沢直樹,手塚治虫,演出:シディ・ラルビ・シェルカウイ,出演:森山未來,永作博美,柄本明,寺脇康文 ■シアターコクーン,2015.1.9-2.1 ■主人公たちはロボットである。 それも20世紀発想の旧型である。 演出家は手塚治虫ファンらしい。 舞台は二つのテーマを追う。 一つは、ロボットに感情を移植できるか? だが現代生物学も脳科学も登場しない。 人工知能とメモリチップぐらいである。 話が飛躍しすぎているがこれを承知すればそれなりの見応えはある。 作者と演出家の想像力の賜物だろう。 二つ目は、戦争で受けた憎しみを絶ち、次への戦争を回避することができるか? 結局は人間を引き継いだロボットが憎しみという感情を獲得し戦いは避けられなくなる。 似た作品に「 あの記憶の記録 」がある。 人の憎しみを国家間にまで拡張するとき、国家がいつのまにか見えなくなっている。 作品に限界を感じるのはこの為である。 美術や映像は素晴らしい。 技術と手作業の融合が行き届いている。 ロボットを操る黒子(衣装は白が多い)が文楽のように登場する。 この黒子は装置や道具を動かしダンスも演ずる。 役者の科白量は多くないが舞台全体で台詞を補い劇画のような感覚が迫ってくる。 とても面白く観ることができた。 *劇場サイト、 http://www.bunkamura.co.jp/cocoon/lineup/15_pluto/

■ファラオの娘

■台本:M・プティバ他,振付:P・ラコット,音楽:C・プーニ,出演:S・ザハロワ,R・スクヴォルツォフ,ボリショイ・バレエ団 ■Bunkamura・ルシネマ,2015.1.9-10(2012.11.25収録) ■ザハーロワの存在感はいつも通り素敵ね。 でも盛り上がりのない作品だわ。 そしてエジプトはチュチュが似合わない。 オリエントというより独自な文化が強いからよ。 P・ラコットがインタビュで作成過程の話をしていたけど、この作品のつまらなさはM・プティバに原因がありそうね。 多くの群舞は整然として静かな舞台をつくっている。 この静けさが劇的な感動を持って来なかった。 「真に迫るものが無い」からよ。 *ボリショイ・バレエinシネマ2014作品 *作品サイト、 http://www.bunkamura.co.jp/cinema/lineup/14_bolshoi/pharaoh.html

■ラ・バヤデール

■原振付:M・プティバ,改訂振付:Y・グリゴロヴィッチ,音楽:L・ミンクス,出演:S・ザハロワ,M・アレクサンドロワ,V・ラントラトフ,ボリショイ・バレエ団 ■Bunkamura・ルシネマ,2015.1.2-3(2013.1.27収録) ■脂の乗ったダンサー達は流石ね。 2幕はロシアの肉体を持ったM・アレクサンドロワ、3幕はロシア美人S・ザハーロワ、どちらも相手はV・ラントラートフ。 言うこと無し。 モスクワ・ボリショイ・バレエ団はヨーロッパの裏玄関でありオリエントの表玄関に位置しているから相性が良い作品にみえる。 「3幕はロマンテクバレエからクラシクバレエへの飛躍」と解説者が言っていた通りバラエティの面白さが一杯。 素敵なお年玉ね。 *ボリショイ・バレエinシネマ2014作品 *作品サイト、 http://liveviewing.jp/contents/bolshoi-cinema2014-15/