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■バックコーラスの歌姫たち

■ 監督:モーガン・ネヴィル,出演:ダーレン・ラヴ,メリ・クレイトン,リサ・フィッシャ,タタ・ヴェガ,クラウディア・リニア ■ル・シネマ,2013.12.14- ■ 父が牧師で聖歌隊に籍を置いた人が多いのね。 彼女たちはステージ中央に立つことを目的としているようだけど本心は見えなかったわ。 米国の舞台業界に翻弄されている姿が先立ってしまうからよ。 それと監督が業界を深追いしなかったから。 メインに立つ必要条件として自分で作詞作曲ができること。 十分条件として時代の流れに乗れること。 それにしてもドキュメンタリは裏切らないわね。 60年代からの四半世紀にバックコーラスの流れが一つ追加されてこの時代がより豊かになった感じだわ。 *映画com、 https://eiga.com/movie/79202/

■2013年舞台ベスト10

□ ルル   演出:シルヴィウ・プルカレーテ,劇団:ルーマニア国立ラドゥ・スタンカ劇場    □ あの記憶の記録   演出:日澤雄介,出演:劇団チョコレートケーキ □ 駆込ミ訴へ   演出:三浦基,劇団:地点 □ 材料カエサル   演出:杉浦千鶴子,劇団:ラドママプロデュース □ わが友ヒットラー   演出:倉迫康史,出演:ORT-D・D □ MY FAVORITE PHANTOM   演出:橋本清,音楽:涌井智仁,出演:ブルーノプロデュース □ 毛皮のマリー   演出:高野美由紀,出演:劇団☆A・P・B-Tokyo □ もう風も吹かない   演出:平田オリザ,劇団:青年団 □ ノーラ   出演:tgSTANティージースタン □ ピグマリオン   演出:宮田慶子,出演:石原さとみ,平丘大ほか *並びは上演日順。  選出範囲はこのブログに書かれた作品。 映像は除く。 * 「2012年舞台ベスト10」

■グッドバイ

■ 作:北村想,演出:寺十吾,出演:シス・カンパニ ■シアタートラム,2013.11.29-12.28 ■ 慌ただしい年末に一息つくことができました。 舞台美術は懐かしさのある漫画ですね。 ズバリ吹き出しも描かれているとは!? そして黄村先生の科白が60年代の風景を蘇らせます。 サルトルとボーヴォワール、学生運動と同棲・・。 先生が8人の愛人を持っているとは驚きです。 三舞理七の調べで愛人とは言えないことも然もありなん、でしょ。 先生の弱さはわからないこともないのですが、これでは太宰治や夏目漱石にも引っかかりません。 しかし先生のこのような弱さからのグッドバイは希望があります。 傾いた塀や電柱、おでんの屋台、そして茜の歌とギターは一瞬テント芝居を思い出させてくれました。 温燗を飲む場面は毎回ツバを飲み込んでしまいましたね。 ホットした後味でした。 *劇場サイト、 http://setagaya-pt.jp/theater_info/2013/11/post_347.html

■忠臣蔵

■ 作:平田オリザ,演出:宮城聰,出演:SPAC ■ 静岡芸術劇場,2013.12.14-23 ■ 今流行りの「武士の家計簿」「武士の献立」で見るような管理部門が舞台。 その浅野家で家の将来のことを面白可笑しく議論するの。 舞台では切腹という台詞を軽々しく喋っていたけどその心情がよく見えない。 就職や子供の塾通いの話と切腹や籠城の話が混在している所が面白いけどね。 先日、狂言切腹の「一命」を観たけど、もはや切腹を知らない武士が多いということかしら? 観ていて日本の死刑制度も考えてしまったの。 敵討ちが形を変えて存続しているみたい。 今でも日本人は敵討ちから逃げられないのね。 ところで一力茶屋の踊りは雑だったけど楽しかったわ。 気楽に観れたけどいつもの身体的感動は少ない芝居だった。 平田オリザと宮城聰の微妙な差異がリズムを壊してしまったのかもしれない。 *CoRich、 https://stage.corich.jp/stage/49355

■リア王

■ 演出:鈴木忠志,劇団:SCOT ■ 吉祥寺シアター,2013.12.12-16 ■ 様式をより前面に出してきたようにみえる。 もはや現代能に近い。 このため物語力が弱くなっている。 病院という設定もそうだ。 チラシに陳腐化しているとあったが。 シェイクスピアも遠のいた。 フランス王国やドーヴァ海峡はもはや記号である。 これらに代わり親子・兄弟の家族関係が一層強調されていて、現代の老人問題・家族問題を意識させられる流れである。 グロスターとエドガー親子の会話は感動した。 しかし三姉妹、特にコーディーリアの台詞は少なすぎるのでは。 SCOT版「リア王」は何回か観ているが毎回の感動振幅が大きい。 それは3カ国語、2カ国語、1カ国語があり、SCOTでは長すぎる2時間という上演時間にもある。 緊張するので観客の精神状態も影響するのだろう。 *劇場サイト、 http://www.musashino-culture.or.jp/k_theatre/eventinfo/2013/09/scot-1.html

■くるみ割り人形

■ 振付・演出:P・ライト,出演:L・モレーラ,F・ボネッリ,G・エイヴィス ■イオンシネマ 系,2013.12.13(ROH収録) ■ 今年も観てしまったわね。 振付・演出が去年と同じP・ライト。 ドロッセルマイヤの G ・エイヴィスも同じだけど、クララ、ハンス・ペータ、金平糖は違ってた。 でも去年と比較すると全体の質が散けている感じね。 まとまりがなかった。 こんぺい糖のL・モレーラはミドル級だから重たさを感じてしまった。 でもさすがロイヤル・バレエね。 全ての場面が楽しかったわ。 *英国ロイヤル・オペラ・ハウス2013シネマシーズン作品

■トスカ

■ 指揮:R・フリッツア,演出:L・ボンディ,出演:P・ラセット,R・アラーニャ,G・ギャグニッザ ■ 新宿ピカデリ,2013.12.7-13(MET,2013.11.9収録) ■ 2009年版と演出家が同じだから今回も基本は変わらないということね。 スカルピアもそう。 舞台美術も同じ。 前回との比較は・・、 1.見栄えの無い舞台装置が少し良くなった。 今回も良いとは言えないけど。 2.拷問や殺人場面の血の量が減った。 前回クレームが出たんじゃないかしら。 3.テ・デウム場面はより最悪になった。 L・ボンディは何を考えているのかしら? 4.P・ラセットはオペラ的というより芝居的な顔をしている。 ・・関係ないか。 5.悪役スカルピアがよりネットリしてきた。 役に慣れてきたのかしら? ・・こんなところね。 ハラハラドキドキは何回観ても同じ。 さすがトスカね。 *METライブビューイング2013年度作品 *作品サイト、 http://www.shochiku.co.jp/met/program/s/2013-14/#program_03

■ノーラ

■ 演出:小野寺修二,出演:カンパニーデラシネラ ■ あうるすぽっと,2013.12.7-8 ■ 芝居の中のダンスは成功すればとても効果があるの。 この逆も然り。 台詞が多いこの舞台はダンスが言葉の意味に飲み込まれてしまった。 ダンスも芝居もどっちづかずという感じに陥ってしまった。 男のダンサーが5人。 ノーラは透明人間なの?、次に机、最後に5人の中の一人が担当するけど新鮮味が無い。 最初から一つで通したほうが物語の統一感ができたはずよ。 でもストーリーが原作に近いから身体も科白も省略するしか無い。 省略しても言葉が引っかかってダンスは彷徨うばかり。 この彷徨が即興にみえてしまった。 ひょっとして即興だったの? 細かいけど手紙の扱い方が面白かった。 椅子を組み立ててポストにしたり、壁に書いた字が後で手紙だったりして、ここはいつもの冴えが発揮できた。 そして川口隆夫は科白を身体で消化していた。 でも台詞の多いダンスは難問ね。 *第2 回現代イプセン演劇祭参加作品 *劇場サイト、 http://www.owlspot.jp/performance/131127.html

■石のような水

■ 作:松田正隆,演出・美術:松本雄吉 ■ にしすがも創造舎,2013.12.5-8 ■ ストーカーは現代版イタコですかね。 舞台ではSF場面が日常場面とシックリ馴染んでいないようにみえました。 しかし科白に鋭さがあります。 この鋭さがSFと奇妙に繋がって不思議な混乱が 生じていく面白さも出ている。 ですから姉妹や夫婦・友人間の会話に興味が集中しました。 映画監督や建築家は特殊な職業のため舞台にメリハリを持ってきてくれる。 映画や建築の話も面白い。 しかし面白くなればなるほど逆に死者との対話が遠くなっていきます。 要はこの芝居は周辺がうるさすぎたのかもしれません。 A・タルコフスキの作品を参照したようですが、これはタルコフスキの直球に新たな変化球を加えた芝居です。 でも変化球が多すぎてしまい直球がよく見えない複雑な舞台でした。 *F/Tフェスティバル・トーキョー2013 参加作品 *F/Tサイト、 http://www.festival-tokyo.jp/13/program/13/water_like_stone/

■DANCE to the Future-Second Steps- ダンス・トゥ・ザ・フューチャー

■ 監修:デヴィッド・ビントレ ■ 新国立劇場・小劇場,2013.12.7-8 ■ 若い振付家たちの9作品を上演。 ベスト3は以下のとおり(上演順)。 音楽の選択がとても重要にみえた。 ソロはよほど上手くないと目立たない。 1. 「FOLIAフォリア」(振付:貝川鐵夫) 伸びやかさがあった。 音楽に縛られすぎている感もした。 黒長の衣装での動きはスペイン風景を現前させた。 2. 「CHEMICAL REACTION」(振付:小笠原一真) 衣装も照明も面白い。 音楽と一緒に走る志向性が現れていて素晴らしい 。 3. 「SIDE EFFECT」(振付:福田圭吾) 鼓動のようなリズムに乗って細かい動作の中に強さも有り歯切れの良い楽しさがあった 。 これ以外に「バロック孔雀の乖離後の憂鬱」(振付:アンダーシュ・ハンマル)は不思議な作品であった。 ある種の恍惚感を出したかったようだが中途半端な感じがした。 *劇場サイト、 http://www.nntt.jac.go.jp/dance/performance/131207_001623.html

■ノーラ

■ 原作:H・イプセン,演出:ラドゥ・アレクサンドル・ニカ,出演:ラドゥ・スタンカ劇場 ■ あうるすぽっと,2013.12.4-5 ■ 舞台は出入口が三つある極端に遠近のある白い部屋でできているの。 とても簡素ね。 公演は2回だからお金はかけられない。 場内に入ると「家族と仕事と・・どちらが大事?」と、インタビュー映像が流れているのには意表を突かれたわ。 答えの半数は仕事。 理由は「仕事が無ければ家族を養えない」。 残りの答えは家族と両方が半々。 インタビューの結果がそのまま舞台の結論ね。 つまり仕事上罠に嵌るのを避けることができたことで、ノラが家を出る必然性が弱くみえてしまった。 ノラの表現があやふやだったのも一因だけど、現代はトルヴァルの仕事が優先するのね。 春に観た「 ルル 」がとても面白かったので期待していたけど、ちょっと雑な感じがしたわ。 スタンカ劇場のギラギラした深みのある存在感が不発だった。 クログスタの環境問題の話も突飛すぎる。 そしてノラのダンスはどうしようもなく下手だったけどこれは演技かしら? 女の子のほうが上手かったわよ。 *第2回現代イプセン演劇祭参加作品 *劇場サイト、 http://www.owlspot.jp/performance/131127.html

■失踪者

■ 原作:F・カフカ,構成・演出:松本修,音楽:斎藤ネコ,振付:井手茂太,出演:MODE ■ 座高円寺,2013.12.1-18 ■ 就職活動中の人が観たら身につまされてしまうストーリーである。 特に移民は桁外れの就活だ。 閉じた円環の作品から抜け出てアメリカに渡り就活をするなどカフカにとっては大事件である。 だからM・ブロートの題名「アメリカ」の方が好きだ。 2001年公演の「アメリカ」が素晴らしかったので再び劇場に足を運んでしまった。 芝居とダンスのコラボが最高だったのを記憶している。 しかし同じ芝居は最初に観たのが一番になることが多い。 残念ながら今回もそうだ。 これが「舞台の法則」である。 この「失踪者」版は重心を芝居に移しているようにみえた。 終幕のヒトラー?の演説はカフカにあわない。 そしてアウシュビッツ?行きの列車に乗る幕引きはやりきれない暗さがある。 アメリカへ行ったのに再び東欧へ・・。 カフカ三部作は芝居・ダンス・音楽の三拍子が見事に揃った稀に見る舞台である。 この三作品でMODEにも注目するようになった。 今回は「審判」「城」も大きく改訂したのかな? これも観に行こうかな? ・・でも「舞台の法則」がチラツイテ行けそうもない。 *劇場サイト、 http://za-koenji.jp/detail/index.php?id=939

■光のない(プロローグ?)

■ 作:エルフリーデ・イェリネク,演出:宮沢章夫 ■ 東京芸術劇場・シアターウエスト,2013.11.30-12.8 ■ シアターイースト上演の作品 (*1)と同名のためチケット購入時に混乱しました。 同名の美術系と違ってより演劇でしたね。 盛り上げた土一面の舞台。 出演は女性が5名で台詞は詩を読んでいるようです。 しかし流れも内容もよく理解できません。 終演後、演出家と松井周のポストトークがあったので出席しました。 やっぱり演出家もわからないようです。 別の同名作品 は文字でこれは発声の違いらしい。 うーんワカリヤスイ! それと太田省吾やテキストと身体の関係の話が続きました。 なぜ太田省吾かというとこの舞台に安藤朋子も出演していたからです。 そう言えばチラシに出てました。 土の色や小道具、瓶や箱の存在感は太田省吾的でした。 照明も似てますね。 しかし役者の身体が違いました。 転形劇場には有る身体の間がイェリネクの詩に無いからでしょう。 テキストと身体の関係は古くて古いことだと話題にしていましたが、ともあれ今年のイェリネクはよくわかりませんでした。 *1、 2013年小沢剛演出「光のない」 *劇場サイト、 http://www.geigeki.jp/performance/theater043/theater043_5/

■ピグマリオン

■ 作:G・B・ショウ,演出:宮田慶子,出演:石原さとみ,平丘大 ■ 新国立劇場・中劇場,2013.11.13-12.1 ■ A・アスキス監督映画の記憶が薄かったので心配だったが予想以上の面白い舞台だった。 しかし日本人が階級社会の言葉を翻訳して観る面白さは、イギリス人が英語の科白で観る面白さとは違うものである。 イライザの喋り方には東北弁?が少し混じっていた。 地方訛りなどを取り入れるしかない? 結局はイギリス人がこの芝居を観て感じる心の動きを想像できない。 もし日本語の脚本を書くなら井上ひさしかな?と考えながら観ていたが・・。 それでもこの芝居の面白さは、ヒギンズやイライザの好演、階級の壁を難なく飛び越えてしまう父、言語学からみた男女の限界を問う母など、他者への鋭い観察や行動である。 終幕の二人の対話場面は引き締まっていたし、ヒギンズの存在感はピカイチ! 白い部屋の舞台美術は漫画キッチュだが人物像が綺麗に映えて物語にメリハリを付けていたのも中々であった。 *劇場サイト、 http://www.atre.jp/13pygmalion/

■春興鏡獅子

■ 出演:中村勘三郎,片岡千之助,中村玉太郎 ■ 東劇,2013.11.30-14.1.10(歌舞伎座,2009.1収録) ■ 弥生は舞の面白さが詰まっていますね。 心が和みますが同時に舞台の緊張も感じます。 それゆえ胡蝶の精には微笑むしかありません。 「 連獅子 」の時のような舞台感動がありませんでした。 胡蝶の精で現実の面白さに戻されてしまったからです。 幼すぎたのだとおもいます。 子供の演出は難しいですね。 *シネマ歌舞伎第20弾作品 *主催者サイト、 http://www.shochiku.co.jp/cinemakabuki/lineup/23/