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■人形の家

■作:ヘンリック・イプセン,演出:佐川大輔,出演:THEATRE MOMENTS ■シアター風姿花伝,2010.10.27-31 ■観客にアメを配ったり、クイズをしたり、プレゼントを出したりして劇に入っていく面白い幕開きだ。 観客とのコミニュケーションをこのような形で提出する劇団は珍しい。 舞台を飾る切り絵も観客への親しみの為のようだ。 ノラとヘルメルは4人一役で演じたがこれも演出の都合ではなくて劇団内の平等主義から来ているようにおもえた。 小道具は沢山の贈物用袋と数個の旅行鞄だけ。 袋は贈物・手紙・紙幣・書類として変身し、その背後にある贈与・契約・委譲・約束を動かしていく。 これは「交換の芝居」だ。 最後にノラは交換としての離婚を決意する。 しかし離婚の経緯や感情の高まり、具体的理由は乏しいように見える。 結婚という契約を破棄するには余程の演出・演戯が必要だと再認識した芝居だ。 *劇団サイト、 http://previous.moments.jp/play15/

■新宿八犬伝-第五巻犬街の夜-

■作・演出:川村毅,出演:小林勝也ほか ■新宿FACE,2010.10.21-28 ■多用する照明カーテンの舞台で川村毅が戻ってきたことを、そして小林勝也のスローなセリフで20世紀物語に幕が閉じたことを確認しました。 この作品は犬猫を擬人化するので緊張感を持続させないと子供の芝居になってしまいます。 後半これに陥った箇所があり少しばかり白けました。 そしてミイラなど出す必要はありません。 滝沢馬琴を登場させたいのはわかりますが終幕への劇的感動が削がれます。 歌舞伎町ど真ん中での公演でしたので劇場の行き帰りも新宿八犬伝の世界に浸ることができました。 これこそが芝居の面白さでしょう。 ひさしぶりに川村毅のリズムを楽しみました。 *劇団サイト、 http://www.tfactory.jp/data/shinjuku_hakkenden.shtml

■SWAN

■作・演出・振付:長谷川寧,出演:富士山アネット ■シアタートラム,2010.10.21-24 ■白と赤の背景、赤い花飾り、チープな衣装やビニールバック。 中国内陸部の舞踊団が上海にでてきて人民劇場で公演をしている感じです。 薄汚いけれどとても面白い雰囲気です、しかし舞台で繰り広げられるダンスは何故か面白くありません。 セリフを外した振付では言葉のように正確に表現できないので粗雑さが大きく見えてしまうのではないでしょうか。 文字が一度だけ映写されましたがこれも何をしたいのか中途半端です。 言葉をどう処理するかの苦闘はこれからも続きますね。 それとダンサーの長髪の多さも面白さを減少させた一つです。 衣装のフードと絡め踊りの最中に髪がバサバサして顔も見えず酷かった。 渋谷センター街から女子高校生を連れてきてそのまま舞台に出した感じです。 社会的事件を扱っている為かもしれないがやはりダンサーの表情をみたい。 もっと中国風「白鳥の湖」も楽しめたはずです。 *劇場サイト、 https://setagaya-pt.jp/theater_info/2010/10/swan.html

■ヴァンデンブランデン通り32番地

■出演:ピーピング・トム ■世田谷パブリックシアタ,2010.10.23-25 ■「楢山節考」からヒントを得た作品らしいがそれが感じられない。 日本人スキー客が登場するが笑顔や手の振り方が日本的ではない。 このような動作は日本人から見るとズレている。 住人の異常な行動はフランス的なのか?スペイン的なのか? 男女間の激しい言葉の間に入るダンスでは身体に凝縮された言語がみえる。 母語の違う他者の考えていることは決定的なところが闇だ。 この違いが異様で面白かったとしか言いようがない。 *劇場サイト、 https://setagaya-pt.jp/theater_info/2010/10/32.html

■白痴

■原作:坂口安吾,脚本:ほさかよう,演出:北澤秀人,出演:726 ■下北沢OFFOFFシアター,2010.10.14-19 ■初めて行ったシアターだが下北沢に7つある劇場の一つで観客80人は入れるようだ。 役者は床から出入りしたり、ブランコで空間を活用したり、隅々まできっちり歩き3mX6mの舞台を狭く感じさせない動きをしている。 着物衣装や空襲音で戦時中の緊張した雰囲気も現れていた。 伊沢と白痴のオサヨは周囲の娼婦や傷痍軍人などと別世界にいることはわかるがしかし、みていても二人のコミュニケーションがどういうものか見えてこない。 微妙な表情で心の内を表わすのは観客からは見難い。 原作もオサヨの心情を予想して伊沢が替わりに述べる必要があったのだろう。 白痴を演ずるいくつかの困難な課題が未決のままだ。 このため二人の関係はロボットのような演戯になってしまった。 途中舞台の窓を開け駅前通りの喧騒を取り入れたが焼夷弾の落下音に聞こえて効果が出ていた。 *CoRichサイト、 https://stage.corich.jp/stage/21254

■グロリア

■作・演出:早船聡,出演:ハイリンド,サスペンデッズ合同公演 ■下北沢「劇」小劇場,2010.10.14-24 ■舞台は滑らかさがあり一人数役も苦になりませんでした。 祖母の戦時中生活回想録では風船爆弾で死傷したアメリカ人の生活も描かれています。 若い頃の祖母は女優でいるほうが物語に深みがでたのではないでしょうか? 孫と祖母は他者の想いで正反対にいる人ですから同一男優だと無意識的混乱が生じてしまう。 たぶん演出家が祖父に似てることからこの配役にしたのでしょう。 そして若い頃の祖母がキリスト教の友だちに嫌がらせをした理由をハッキリとセリフに出してもよかったのでは? 祖母がキリスト教病院に入院している事にも繋げられるし讃美歌も実感が伴って聞こえたのではないでしょうか? 戦争での多くの死者と祖母の死から生の貴さを思い出させてくれる芝居でした。 *CoRichサイト、 https://stage.corich.jp/troupe/5406

■口笛を吹けば嵐

■脚本:清末浩平,演出:川口典成,出演:ピーチャム・カンパニ ■神楽坂・シアターイワト,2010.10.14-20 ■チラシの「今こそアドベンチャー!都市のドラマツルギーに地殻変動を呼び起こす!」をみて劇場へ腰を上げました。 親分の夢を子分が、演劇を目指す若者を社長が、先回りをして壊していくストーリです。 閉塞感がベースにあります。 親分子分関係、汚れた警官、人材派遣業、飲み屋やパーティのセリフや雰囲気はとても面白いのですが古臭い映画の一コマのようです。 閉塞感を絶ち切り最後は演劇巡業で世界へ旅たちますがインパクトがまったくありません。 既に世界中に第二の大佛がいますから。 観劇後の一言としては生身の俳優で一昔前のテレビドラマを見たようでした。 で地殻変動を呼び起こしたか? 「人間」の全体像追及のあまりにリアリティが薄れてしまいミイラ取りがミイラになったようです。 ところで上演中、舞台正面を開け外の道路・歩道をみせる場面では、そうだ芝居に来ているんだ!と実感しました。 *チラシ、 http://stage.corich.jp/img_stage/l/stage17065_1.jpg?1463103511

■砂と兵隊

■作・演出:平田オリザ,出演:青年団 ■こまばアゴラ劇場,2010.9.16-10.6 ■「冒険王」達がついにホテルから飛び出たらしい。 しかしオリザのあの会話のリアリティがいつものように長続きしていない。 砂漠に沁みこんでいくようだ。 それは軍隊が持っている力のせい? 新婚旅行中の旦那が射殺されてからピリッとしてくる。 終幕、兵隊のエンドレスのセリフが不条理に駄目押しして効果的だ。 結局、冒険王は「冒険王」のままだ。 フランス語の上演があるようだが観たいものだ。 しかし仏語がわからない。 日本語訳の字幕を見るから同じことか・・。 つまり仏語の上演はフランス人に生まれ育っていなければ観てもつまらないということかな。 *劇場サイト、 http://www.komaba-agora.com/line_up/2010/09/seinendan/

■やわらかいヒビ

■脚本・演出:北川大輔、出演:劇団カムヰエッセン ■三鷹市芸術文化センター、2010.10.01-10.11 ■幕が開いた導入部は現実から芝居へ入っていく快さが十分に出ていた。 物語の肉の部分をSFで補い、骨は日常生活の会話で進める弱小劇団がよくやる手法を取っている。 アカデミアという科学組織への入会や脱会の話しである。 会員になると死が無いらしい。 主人公は脱会した妻を病院のベッドで殺してしまう。 しかし殺すという行為・理由がいまいち迫ってこない。 それは肉と骨が噛み合っていないからだとおもう。 そして母と子、先生と先生、研究者と研究者の対立場面はそれなりにリアルだが昼のテレビドラマを見ているようだ。 場面切替が多いから余計にそうだ。 芝居でなくてもよいのではいかとおもってしまった。 

■「第三エロチカの時代」解散記念展

■感想は、 http://ngswty.blogspot.jp/2010/10/blog-post_2.html

■JTAN FESTIVAL 2010

■出演:ワタクシー,OM-2,劇団ING進行形 ■神楽坂DIE PRATZE,2010.9.27-10.3 ■開催期間中は毎日違う劇団が出演します。 9月30日を観ました。 ダンスと思いきやジャンルにとらわれないパフォーマンスでした。 ワタクシー「タイトル未定」?はビデオに映る俳優と舞台の俳優が会話をする作品です。 目新しい方法ではないため印象不足は否めません。 OM-2「パフォーマンスNO.4」はスクリーンに映画ローレンスオリヴィエのハムレットを上映しながら俳優が胃カメラで自分の体を覘いたあと他役者がドラム演奏などをする作品ですが、オリヴィエのハムレットがどれだけ素晴らしいかを再認識しただけでした。 劇団ING進行形「かもめ-断章-」はチェーホフを下敷きにした会話ダンスというようなものです。 ニーナのブラック志向的な会話や表現、コロスの面白い使い方、そして小刻みな踊りで黒色を基調とした舞台を劇的にまとめています。 劇団ING進行形を知ったことは今日の収穫です。 *CoRichサイト、 http://stage.corich.jp/stage/22696

■ジーンズ

■作・演出:佐野木雄太、出演:劇団銀石 ■ザムザ阿佐谷、2010.09.29-10.03 ■主人公は進化論者ダーウィン、そして妻の体内にいる胎児が夢見る物語?です。 胎児は人類の進化の全てを体現してから生まれてきますが、その数十億年の流れから深海魚や恐竜・哺乳類・鳥類などの話題を取り出し恋愛を絡めながら未来へ生命が続いていく異類婚姻譚としてまとめています。 生物学や人類学を現代人に合うように変形し取り込んで修飾豊かな芝居を作っています。 言葉の力が俳優の身体を生き生きさせています。 面白い芝居でした。 小劇団の中では見応えがあります。 ザムザ阿佐谷は木の柱や土?の壁で作られていて古い寺の土間で芝居を演じているかのような錯覚に陥ります。