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6月, 2023の投稿を表示しています

■ダンス・アーカイヴinJAPAN2023

■新国立劇場・中劇場,2023.6.24,25 *以下の□4作品を観る. □土面■振付:芙二三枝子,責任:馬場ひかり,出演:高瀬譜希子,中川賢,江上万絢ほか ■中劇場でのダンスはそのまま床を利用することが多い。 でも今日はしっかりとした舞台が造られている。 太鼓から始まり法竹、鐘、祈祷など日本の音楽や声を背景に、数十人のダンサーが走り叫び群れ倒れ・・踊る。 新体操のような場面もある。 円形をみてベジャールを思い出した。 これは日本の春の祭典だ。 縄文模様の付いたタイツ衣装も似合う。 古代の祭りの場へワープできた。 スカッと終わらせればなお良かった。 □夏畑■振付:折田克子,責任:千柴孝子,出演:平山素子,島地保武 ■ダンサー二人は知っているが麦藁帽子が大きすぎて顔がみえない。 島地はときどき鍔(つば)をあげ顔を見せてくれる、でも平山は見せない。 褞袍(どてら)も着込んでいるが脱ぎ捨てる。 帽子が踊っているとしか言いようが無い。 □アキコ・カンダ「マーサへ」より三章「運命の道」■振付:アキコ・カンダ,責任:市川紅美,出演:折原美樹ほか ■これは楽しかった。 折原美樹は巧い。 調べると、「空間の詩学」(2001年)は覚えがない。 マーサ・グラームも思い出そうとしたが、そう、重みのある舞台だった? 1990年10月の新宿文化センター公演で、マーサが両腕を抱えてもらいながらカーテンコールに登場したのは鮮明に覚えている・・。 □「バルバラを踊る」よりソロ「黒いワシ」「我が喜びの復活」■振付:アキコ・カンダ,責任:市川紅美,出演:中村恩恵 ■これも気に入った。 中村恩恵と相性が良い作品にみえる。 クライマクスはもう少し派手にしたら盛り上がったと思う。 振付や衣装そして雰囲気はマーサ・グラーム的と言ってよい。 いまマーサの舞台が甦ってきた。 *NNTTダンス2022シーズン作品 *劇場、 https://www.nntt.jac.go.jp/dance/dancearchive/ *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、ダンス・アーカイヴ ・・ 検索結果は4舞台 .

■オセロー

■作:W・シェイクスピア,演出:クリント・ディアー,出演:ジャイルズ・テレラ,ロージー・マキューアン,ポール・ヒルトン他 ■TOHOシネマズ日本橋,2023.6.23-(リトルトン劇場,2023年収録) ■ナショナル・シアタのシェイクスピアは歯切れが良くて気持ちがいい。 いつもそうです。 今回はもう一つの驚きがある。 人種差別や女性差別があからさまに語られる。 現代的にアレンジしている?ようです。 でもキャシオのどんちゃん騒ぎ以降はいつものオセロに近づいていきます。 幕間に演出家たちのトークが入る。 「人種差別や女性増悪は社会構造として組み込まれている」「イアゴもその犠牲者」「デズデモーナとオセロがキスをする場面では見兼ねて席を立つ客がいたり、銃を乱射する者もいた」・・。 出席者は「オセロー」の激しさを語っていたが、終幕でオセロの質問にイアゴが無言で返すのも社会構造のため答えられないのでしょうか? 舞台は三方が階段に囲まれていて野外劇場にみえる。 暗いなか激しい照明で照らされると牢獄のようです、生舞台をみないと何とも言えないが。 イアゴが内心を語る場面が何度も入る。 階段に座っている彼の心の観客が自身イアゴに賛同を送ります。 オセロの内面表現は単純です。 このためイアゴはオセロ以上に目立ちます。 外国版シェイクスピアは差別をはっきり描き出しますね。 これも歯切れの良さの一つです。 日本版は差別に修飾物が纏わりつく。 どちらにしても「オセロー」の面白さは変わりません。 *NTLナショナル・シアター・ライブ2023年作品 *映画com、 https://eiga.com/movie/98397/

■チャンピオン

■作曲:テレンス・ブランチャード,演出:ジェイムズ・ロビンソン,指揮:ヤニック・ネゼ=セガン,出演:ライアン・スピード・グリーン,エリック・オーウェンズ,ラトニア・ムーア他 ■新宿ピカデリー,2023.6.16-22(メトロポリタン歌劇場,2023.4.29収録) ■ボクシングをどのようにオペラに乗せるのかしら? 興味津々ね。 主人公エミール・グリフィスは実在した人なの、でも知らなかった。 1938年ヴァージン諸島の生まれで母を頼ってニューヨークに移る。 そこでボクサーとして見いだされる。 彼はゲイでもあった。 カーニバル、ボクシング、ゲイバー、・・人が集まる場面は素晴らしい。 衣装などのカラフルな色彩、人物の配置や動き、ダンスの振付等々は濃縮度が高い。 ボクシング場面はスローを取り入れたストップ・モーションで描くの。 これは巧い。 歌唱との相性が良い。 プロボクサーの助言もあり違和感が無いわね。 主人公は老人、若者、子供の3歌手一役。 老人の追懐を劇中劇にしている。 この構造も巧い! 老人は認知症なの。 歌手エリック・オーウェンズはこの役を抑制して歌うから本物に近い。 2年前の「ポギーとペス」では体調不良で酷かったが今日の歌唱は老いの味がでていたわよ。 でも若者役ライアン・スピード・グリーンは特徴の無い声ね。 ボクサー体格へ調整したせいかな? そして指揮者はプッチーニを話題にしたが、もはやジャズ風オペラと言ってよい。 若者エミールは対戦相手ベニー・パレットを試合で死なせてしまう。 老人になってもその罪悪感は消えない。 終幕、老人エミールはパレットの息子に出会い罪から解放される・・。 でも彼の苦悩はそれだけでは無い。 「・・ベニーの件を世界は許してくれたが、ゲイということで世界は許してくれなかった」。 彼の言葉よ。 表裏ある贖罪を表裏ある人生で描いていた。 この素晴らしい新作ができたのはMET総合力の賜物だわ。 *METライブビューイング2022作品 *MET、 https://www.shochiku.co.jp/met/program/4679/ *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、ジェイムス・ロビンソン ・・ 検索結果は3舞台 .

■楽園

■作:山田佳奈,演出:眞鍋卓嗣,出演:豊原江理佳,土井志桜央梨,西尾まり他 ■新国立劇場・小劇場,2023.6.8-25 ■「日本のどこかの島」が舞台です。 閉じられた共同体を描こうとしているらしい。 でもそのような世界はどこにもない。 島の子どもたちは都会へ就職・就学をする。 そして訳あっての出戻り。 ときどき助っ人外国人も流れ着く。 ドブ板選挙や村内の噂話、伝統宗教の形骸化・・。 現代日本の生活から摘まみ食いをして、誇張させた舞台にみえました。 しかも噂話や小事件には垢(既視感)が纏わりついてる。 7人の女性が登場するが、二人は外来者です。 一人はカメラマン。 でも彼女の企業も島に似て窮屈な共同体らしい。 もう一人は巫女、神々の代理人です。 しかし「(神は)どこを目印にして降りてきていいかわからない」。 古い共同体の崩壊はショウガナイ? 巫女に呼ばれた神々は何事もなかったように神殿で踊る・・。 個々バラバラのままで如何に生きていくか?を問うている舞台にみえました。 他者と下手に引っ付くのは怖い、上手に引っ付くのも難しい時代です。 個を強くしていくことが当分続きそうですね。 *NNTTドラマ2022シーズン作品 *劇場、 https://www.nntt.jac.go.jp/play/blissful-land/ *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、眞鍋卓嗣 ・・ 検索結果は4舞台 .

■能楽堂六月「惣八」「半蔀」

 *国立能楽堂六月普及公演の□2舞台を観る. □狂言・大蔵流・惣八■出演:丸石やすし,綱谷正美,松本薫 □能・観世流・半蔀■出演:寺井榮,江崎欽次朗,茂山千之丞ほか ■国立能楽堂,2023.6.10 ■「惣八(そうはち)」は就職話である。 求職者の肩書(社会的評価)と本人の得意職種がズレることはよくある。 中世日本のジョブ型雇用制度下で、このズレを持つ雇人の仕事現場が面白く描かれる。 肩書料理人の読経を本物らしくすればもっと良くなる。 「半蔀(はじとみ)」のプレトーク(林望解説)を聴く。 「和漢朗詠集」からの引用が多い為わかり難い作品になっている。 漢詩はメリハリを付ける為だが、謡(発声)はカナが基本なので時代が経つほど誤った漢字が適用されて意味が遠くなってしまった。 それは「この花広林に・・」「草花呂葉として・・」等々に見える。 また「源氏物語」夕顔の冒頭印刷も配布された。 漢詩文と同様に源氏物語からの(イメージに繋がる)引用が多い作品である。 舞台はゆっくりした時間で進む。 謡も囃子もスローテンポだ。 しかし前場はあっというまに終わってしまった。 後場は序之舞が占める。 「源氏物語」を思い浮かべながら観る作品だろう。 プログラムに「雲林院の僧が見た夢」(山中玲子著)が載っている。 ワキ僧が光源氏に重なるように描かれている場面が数か所ある。 しかし「作品全体がワキ僧の夢であり、その夢の中で彼が「源氏物語」を追体験している・・」。 面白い解釈である。 今日は林望と山中玲子に良い意味で掻き回されてしまった。 *劇場、 https://www.ntj.jac.go.jp/schedule/nou/2023/6151.html?lan=j

■能楽堂六月「縄綯」「国栖」

*国立能楽堂六月定例公演の□2舞台を観る. □狂言・大蔵流・縄綯■出演:大藏吉次郎,大藏教義,大藏彌太郎 □能・観世流・国栖(白頭・天地之声)■出演:武田尚浩,武田祥照,武田崇史ほか ■国立能楽堂,2023.6.7 ■「縄綯(なわない)」は昨年3月に観ている。 其時の感想には「バートルビーズ」のことを書いた。 今回は素直に面白かった。 畳み掛けていく悪口も苦にならない。 演者の年齢と演技が時代を遡り、悪口を生きたまま化石化させた為である。 「国栖(くず)」は緩急あるダイナミックな舞台だった。 これは詞章を読むだけでは分からない。 浄御原天皇が子方で舞台は和む。 ワキ三人の上歌も力強い。 鮎之段では鮎の塩焼きの旨さ、また落語「しわい屋」も思い出させる。 天皇が布張りの舟に隠れて追ってから逃れるリアルな場面もある。 天女の舞のあと、バッと飛び出してくる蔵王権現の躍動ある謡と動きに驚く。 シテ面は「三光尉」から「不動」へ、ツレは「姥」から「小面」へ。 いゃー、楽しかった。 *劇場、 https://www.ntj.jac.go.jp/schedule/nou/2023/6150.html?lan=j

■田園に死す

■作:寺山修司,演出:高野美由紀,出演:劇団☆A・P・B-Tokyo,三味線:工藤武蔵 ■あうるすぽっと,2023.6.1-4 ■母と息子の粘っこい愛憎はもはや奇態と言ってよい。 それは自身の過去をも少なからず振り返させられる。 母と子の永遠のテーマですね。 恐山、サーカス、家出・・、多くの事件が淡々と積み重なっていく。 この堆積していく物語の絡み合いから感動が滲み出てくる。 観客は堆積を待たなければいけない。 途中、「私」が登場する異化効果が面白い。 舞台が中断してしまったのか!? 観客の多くが本当に驚いていましたね。 そして三味線の独奏が素晴らしかった。 ト書きの短歌は雑音が入り聴き落としがでてしまった。 また発声が聞き難い役者もいました。 風音や東北弁などと重なるからでしょうか? 万華鏡のような音と色、これに染まっていく物語。 寺山世界を堪能しました。 *寺山修司没後40年記念作品  *CoRich、 https://stage.corich.jp/stage/26114 *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、高野美由紀 ・・ 検索結果は5舞台 .

■糸井版・摂州合邦辻

■演出:糸井幸之介,出演:内田慈,土屋神葉,谷山知宏ほか,劇団:木ノ下歌舞伎 ■神奈川芸術劇場・大ホール,2023.5.26-6.4 ■初めて観る作品です。 会場で配られた資料が役に立ちました。 キーワードと称する<癩病><天王寺><日想観>が<俊徳丸>と彼の<空間>と<時間>に対応している。 開幕前にざっと目を通したので、この3ワードで動いていくのが分かりました。 舞台は大阪の匂いが強い。 江戸時代の口語と大阪弁が入り混じっているように聴こえる。 しかも玉手御前役内田慈がアンミカにそっくりな場面が! 大阪は未知の楽しさで一杯ですね。 歌唱「人の声」で幕が開き「街の墓」で閉じる。 どれも楽しい歌詞が続く全6曲です。 しかし歌詞が物語を演じているので芝居と競合した感がある。 どちらも主役にしたので相乗効果と相殺効果が共に出てしまった? 途中、俊徳丸と玉手御前の子供時代に戻る場面が入ったことや、歌唱「バウワウソング」「パパっ子」の心情歌で二人の人生が深くなった。 しかし義理母と血の繋がりのない息子との恋慕は難しい関係ですね。 しかも片思いで盛り上がらない。 歌舞伎作品を現代版に移すときは解説的になってしまうことがよくある。 この困難を巧く避けていました。 *CoRich、 https://stage.corich.jp/stage/260567 *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、糸井幸之介 ・・ 検索結果は2舞台 .

■リゴレット

■原作:V・ユーゴ,作曲:G・ヴェルディ,指揮:マウリツィオ・ベニーニ,演出:エミリオ・サージ,出演:ロベルト・フロンターリ,ハスミック・トロシャン,イヴァン・アヨン・リヴァス他,演奏:東京フィルハーモニー交響楽団 ■新国立劇場・オペラパレス,2023.5.18-6.3 ■マントヴァ侯爵の「愛こそ心の太陽」、続いて娘ジルダ「慕わしい人の名は」から一直線に舞台へ引き込まれていくの。 父の老練な歌唱と演技、娘のガラスが割れそうな繊細な歌声が父娘の悲哀を連れてくる。 そこに侯爵の若さ溢れる「女心の歌」が場内に響くときの複雑な高揚感がなんとも言えないわね。 侯爵はチリ、娘はアルメニア出身だが、イタリアの<爽快と憂鬱>を表現できたのは侯爵と父の対の良さかな。 いつもの指揮者ベニーニの存在も大きい。「リゴレット」でこんなにも感動したのは初めてよ。 もうヴェルディから逃げられない! *NNTTオペラ2022シーズン作品 *劇場、 https://www.nntt.jac.go.jp/enjoy/record/detail/37_025760.html *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、エミリオ・サージ ・・ 検索結果は2舞台 .