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■ムジカエテルナ×サシャ・ヴァルツ、交響曲第7番

 ■作曲:L・V・ベートーベン,振付:サシャ・ヴァルツ,指揮:テオドール・クルレンツィス,管弦楽:ムジカエテルナ,舞団:サシャ・ヴァルツ&ゲスト ■NHK・配信,2021.10.24-(デルフォイ古代劇場,2021.6.5-6収録) ■交響曲第7番とダンスは初めてかな?、第9番はあるが・・。 サシャ・ヴァルツは「 松風 」を以前観ている。 楽団は劇場跡で演奏し、舞踊は神殿跡の前庭で踊る。 上空から劇場跡とその周辺を映すのだが素晴らしい眺めだ。 遠くの山々が輝いている。 朝焼けかと思っていたが演奏経過をみると夕暮れ時刻らしい。 ダンスは2章と4章に入る。 床が石畳や細かい砂利のため緩く巾のある振付になっている。 後半それが激しくなるが。 衣装は下が黒、上は肌色もしくは裸で廃墟に良く似合う。 ギリシャ映画をいろいろ思い出してしまった。 指揮者サシャ・ヴァルツも存在感がある。 第7番とギリシャもなかなかだ。 演奏とダンスが遺跡を介して結び付いている。  ムジカエテルナ、サシャ・ヴァルツ、ベートーベン、デルフォイ古代遺跡。 この4つの組み合わせがこんなにも面白いとは予想以上だった。 企画の上手さだろう。 *NHK、 https://www.nhk.jp/p/premium/ts/MRQZZMYKMW/episode/te/JZG18M1NKW/

■魔弾の射手

■作曲:ウェーバー,演出:カルルス・パドリッサ,指揮:クリストフ・エッシェンバッハ,出演:ベンヤミン・ブルンス,ジニーン・ド・ビック,アンナ・プロハスカ他,演奏:ベルリン・コンツェルトハウス管弦楽団 ■NHK・配信,2021.10.10-(ベルリン・コンツェルトハウス,2021.6.17-19収録) ■無観客収録のようね。 客席を取り外してカメラが自由に動き回る。 しかも叙唱というより芝居に近い科白が時々入るの。 この二つでドイツ語の響きが耳に残る演劇的な舞台に仕上がっている。 自由度が有る為か、音響技術を最大限に生かした歌唱も十二分に聴かせてくれた。 満足よ。  天井を被う布が森になり、サーカス団員のような悪魔たちが登場し、また照明の明暗で教会の中に居るようにもなる。 鹿の剥製が並ぶ、その遠くには指揮者が見える。 粗筋は知っているようで知らなかった。 三幕は魔弾を手にした猟師マックスが婚約者アガーテを撃ってしまい悲劇的な幕引きになる?、と思ったら違った! 隠者が登場し弾を外し悪魔の仕業を失敗させるの。 そして二人の結婚を許す・・。 隠者とは誰か? 彼の付添人は水の中で泳ぎまわりプラスチックゴミを収集している。 森なのに海を連想させる。 演出家は何を考えているのかしら? でも悲劇場面を深追いせず素直な舞台でサッパリ感があった。 楽しかったわよ。 *NHK、 https://www.nhk.jp/p/premium/ts/MRQZZMYKMW/episode/te/XZJ582WRM8/

■A JOURNEY、記憶の中の記憶へ

■演出・振付:金森穣,出演:小林十市,金森穣,井関佐和子ほか,舞団:Noism ■神奈川芸術劇場・ホール,2021.10.16-17 ■配られたチラシをみて小林十市がローザンヌのバレエ団に所属していたことを知る。 金森穣と井関佐和子は知っていたが・・、ローザンヌ・トリオとは楽しい。 舞台の三人がとても親密だったことでもそれが分かります。 そして小林がスーツ姿で登場したのはなにゆえ? 「いまは役者をしている」と言ってましたね。 それは過去を辿る旅姿なのでしょう。 鞄には彼(彼ら)のローザンヌ時代が一杯詰まっている? 第一部「追憶のギリシャ」はボレロです。 でも何故ギリシャなのか? 第二部「The 80’s Ghosts」では何故80年代なのか? これは帰宅してからチラシをみてわかった。 ベジャールの詩ですね。 でもギリシャは分かりません。 そして小林のスーツ姿を受けて金森は、今ここで「記憶の更新」をして「新たな旅」へ踏み出そう! このように言っている舞台にみえました。 *劇場、 https://www.kaat.jp/d/noism_juichi

■パリのアメリカ人

■作詞・作曲:ジョージ・ガーシュウィン,アイラ・ガーシュウィン,演出・振付:クリストファー・ウィールドン,出演:ロバート・フェアチャイルド,リャーン・コープ,ハイドゥン・オークリー他 ■東劇,2021.10.15-(ドミニオン劇場,2018年収録) ■舞台の完成度はピカ一ですね。 さすがミュージカルの古典といえる。 歌唱やダンスはもちろん、音楽・美術・照明・衣装・映像・大道具のどれをとっても申し分ない。 ダンス6割、歌唱2割、科白2割でダンスに比重を移している舞台です。 戦争の傷痕が生々しい。 でも新しい時代の解放感がみえる。 そして三人の男性が一人の女性を愛してしまう四角関係は珍しい、・・ピアニストのアダムが付け足しにみえますが。 ダンサーのリズはアンリと婚約したのに画家ジェリーのもとへ行ってしまう。 愛が社会常識を打ち破る物語ですが終幕がサッパリし過ぎにみえます。 でも、これ以上重くしたら現実に戻されてしまう。 最高の時間を過ごせました。 *松竹ブロードウェイシネマ *映画com、 https://eiga.com/movie/95465/

■能楽堂十月「仏原」「蝉丸」

*国立能楽堂10月の定例公演と普及公演の下記□4作品を観る。 ■国立能楽堂,2021.10-9 □蟹山伏 かにやまぶし ■出演:山本則俊,若松隆,山本凛太郎ほか(大蔵流) ■「二眼天を向き、一甲地に着かず、大足二足小足八足、右行左行して遊ぶ者の精だ・・」。 野村萬斎が子供番組でチョキチョキしているが生舞台を観るのは初めてだ。 □仏原 ほとけのはら ■出演:片山九郎右衛門,副王知登,山本泰太郎ほか(観世流) ■舞台の時間は進みが遅い。 それも無機質に近づいていくようなあっさり感が漂う。 観客は「平家物語」「祇王」を舞台に積み重ねながら時間を有機質に変えながらみていくのだが、それもいつしか霧のように消えていく。  □清水 ■出演:野村萬,野村万之丞(和泉流) ■「いで食らおう、アア、アア。ヤイヤイ、ヤイそこなやつ」。 □蝉丸 ■出演:武田宗和,山階彌右衛門,殿田謙吉ほか(観世流) ■揚幕がおもむろにあがり、橋掛りを歩いていく蝉丸とその一行の姿は劇的と言ってよい。 端折傘を持った二人の従者が蝉丸にぴたりと寄り添い、3歩下がって清貫がついていく。 身震いしてしまった。 良質の舞踏をみているようだ。 濃緑色の衣装もいい。 この場面だけで全てに満足してしまった。 プレトークがあった。 松岡心平の「蝉丸」を意識した「貴種流離の王女と王子」が題目。 松岡は問う、姉弟がなぜ一緒に暮らしていかないのか? 今昔物語や延喜帝、甲楽談儀のことを話し、次に梅原猛の価値の反逆者を論じ、山口昌男の王権論を支持し、日本神話のヒルコが逆髪にスサノオが蝉丸に生まれ変わった話で終わる。 先の問いの答えとして、流されることが宿命である貴種流離譚だから。 二人は流され続けなければならない・・。 *チラシ表、 https://www.ntj.jac.go.jp/assets/images/02_koen/noh/2021/R0310_omo.jpg *チラシ裏、 https://www.ntj.jac.go.jp/assets/images/02_koen/noh/2021/R0310_ura.jpg

■The Life and Times

■振付:ジョアン・クレヴィエ,舞団:スコティッシュ・ダンス・シアター ■vimeo・配信,2021.10.15-25(ダンディー・レップ・シアター,2021.6収録) ■「東京芸術祭」2本目の配信です。 それも配信用に作成された映像作品らしい*1。 この舞団の舞台は初めて見る。 基本の振付は数種類あるようです。 足裏を床から離さないで身体を等速度に動かす形が特に目立った。 しかし多くはパフォーマンス系に近い動きです。 板に車を付けた台車を活用し、それを引っ張ったり乗ったりして画面の左から右へ人の流れを作る。 ガイドに「テンプス・フギト(時は流れる)」とあったが、その<流れ>を意識しているようです。 撮影は70分でワンショットらしい。 しかもカメラも舞台に上がってダンサーの間をぬって撮影している。 これも<流れ>でしょうか? ところで、男女一組のコントのようなパフォーマンスを所々に挿入している。 パンを食べたり大工や料理をするが、最期に小麦粉で粉塗れになってしまう。 二人の演技は日常を思い出させます。 バロック系音楽はダンスに合っていたが、しかし「時が流れてる」ようには見えない。 日常場面とダンスが分離していた為でしょう。 ダンスも繋がらず積み重なっていかない。 むしろ「空間が流れる」に近い舞台でした。 ところで「時は流れる」を聞くと人生の儚さを考えてしまう。 この先入観が作品の見方を狭くしてしまったようです。  (以下よりインタビュー映像の感想) 付録のインタビュー映像(40分)を見る。 出席は振付家、ダンサー、撮影担当の3人、司会は長嶋確。 振付家ジョアンはコミュニティダンスを重視しているらしい。 これを聞いてダンサーたちの距離感や関係性に納得。 観客はカメラ視点を強制させられるので時間より空間を意識してしまったことにも納得。 バロックは絵画的と訳していたが強引すぎるかもしれない。 撮影はとても巧かった。 カメラマンに拍手! *東京芸術祭2021参加作品 *東京芸術祭、 https://tokyo-festival.jp/2021/program/lifeandtimes/ *1、生舞台をそのまま映像に収めた場合はブログのラベルを「映像」に、それ以外は「映画」にしています。 今回は「映像」にしました。

■ヴァネッサ Vanessa

■作曲:サミュエル・ハーバー,演出:キース・ウォーナー,指揮:ヤクブ・フルシャ,出演:エマ・ベル,ヴィルジニー・ヴェレーズ,エドガラス・モントヴィダス他,演奏:ロンドン・フィル・ハーモニー管弦楽団,グラインドボーン合唱団 ■NHK・配信,2021.10.11(グラインドボーン音楽祭歌劇場,2018.8.14収録) ■スタッフの目が隅々まで行き届いている美術・照明にみえる。 大きなガラス壁を挟み舞台を前後に分け二つの場面を同時進行させていくの。 壁は映写幕にもなる。 シンプルだけどとても繊細ね。 ソファーをみるとボロボロなの。 それが年季の入った模様にみえる。 時代も場所も分からない。 観後に調べたら1905年の北国のカントリーハウスとある。 でも演奏を聴いて連想するのはアメリカの映画音楽だわ。 舞台からは作者の故郷ペンシルベニアを思い浮かべてしまった。 ヴァネッサの時は20年間止まっている。 愛するアナトールの息子が訪問しても昔のアナトールで押し通す。 彼女はアナトールが好きになった姪エリカとの関係を壊し彼と結婚してしまう・・。 ヴァネッサの愛は直截に進む。 それはエリカにも言えるわね。 二人は誤ってしまうが人生は短い。 すべてが終わって、エリカはヴァネッサがしていたように鏡を布で覆ってしまう・・。 老いた者たちに安らぎを! 女性の生き方について考えさせられる舞台だった。 *NHK、 https://www.nhk.jp/p/premium/ts/MRQZZMYKMW/episode/te/XZJ582WRM8/

■アリアーヌ・ムヌーシュキン、太陽劇団の冒険  ■Me,My Mouth and I

□アリアーヌ・ムヌーシュキン,太陽劇団の冒険 ■監督:カトリーヌ・ヴィルプー,出演:アリアーヌ・ムヌーシュキン他 ■東京芸術劇場・プレイハウス,2021.10.6-10(フランス,2009年作) ■「金夢島」の公演は中止になってしまった。 残念です。 代替に映像4作品が上映された。 この中で「堤防の上の鼓手」は2001年9月に新国立劇場で上演、これを記念して演劇博物館で企画展「太陽劇団とオリエント」を開催したのを覚えています。 もう一度(映像だが)見たかったがスケジュールは満杯でした。 今回はドキュメンタ-「太陽劇団の冒険」のみを選択しました。 しかし劇団もムヌーシュキンもよく知らない。 この映画は団員が撮った記録映像を彼女が観ながらコメントする内容になっている。 劇中劇と同じ映画中映画の構造です。 彼女はアジアや映画にも接近し、演劇で世界を変えようとしている。 劇団員の平等で自主的な行動も深みが有る。 特異な劇団にみえます。 再びの来日を期待したいですね。 *東京芸術祭2021参加作品 *劇場、 https://www.geigeki.jp/performance/theater281/ □Me,My Mouth and I ■監督:ソフィー・ロビンソン,出演:ジェス・トム他 ■vimeo・配信,2021.10.1-11(2018年作) ■東京芸術祭に絡めたドキュメンタリー映画をもう1本みる。 これは配信です。 出演のジェス・トムはチック症のひとつトゥレット症候群を持っている。 彼女がサミュエル・ベケットの不条理劇「わたしじゃない」を上演するまでの経緯を撮った映画です。 舞台を創るためにベケット専門家、同症を持人々、脳性マヒの演劇人、視力障害の議員、ヒップホップアーティストなどと会い上演内容を詰めていく。 そして本番をむかえる。 チック症は演劇との相性が良い。 それは制御できない身体としての言葉が舞台を激しく変容させるからです。 チック症を演技する映画作品は時々みますが、演技しない演劇は初めてです。 意識に従わない身体を取り込んだ舞台は興味が尽きません。 *東京芸術祭2021参加作品 *東京芸術祭、 https://tokyo-festival.jp/2021/program/me/

■チェネレントラ Cenerentola

■作曲:ジョアキーノ・ロッシーニ,指揮:城谷正博,演出:粟國淳,出演:ルネ・バルベラ,上江隼人,脇園彩ほか ■新国立劇場・オペラパレス,2021.10.1-13 ■舞台は映画制作の現場に仕立てているの。 そこはチネチッタかもしれない。 撮影用クレーンに乘る黒帽赤マフラー姿の監督は当にF・フェリーニだわ。 でもイタリアのネットリ感が無い。 劇場の乾いた雰囲気がそれを拒むから、そして華麗な美術・衣装からハリウッドを感じさせるから。 アンジェリーナ役脇園彩は自信がみえる。 タイトロールの名に恥じない歌いっぷりね。 王子ラミーロ役ルネ・バルベラはオペラ・ブッファの楽しさを持って来てくれる。 白塗り化粧と変わった髪型の合唱団も隅に置けない。 全体像は劇場得意の総合力で押し切った感じかしら。 相撲で言えば白鵬の強さね。 物語りは劇中劇を取っているようだけど<外の劇>と<内の劇>との関係がイマイチだった。 再び<外の劇>に戻らなければいけないのにそのまま<内の劇>で幕が下りてしまった(?)から。 まっ、それはどうでもいいの。 ロッシーニを久しぶりにエンジョイしたわよ。 シーズン開幕公演かつ新制作でも1階席を見回すと観客は6割の入りかな。 コロナの影響が続いていることがわかる。 ところで休憩中に客の一人が転倒してしまったの。 この劇場は転倒が多い。 理由は場内が広くホワイエから客席まで距離があり、しかも特有な階段仕様だから。 東京文化会館と比較しても客席を歩くときは倍の緊張感が必要よ。    *NNTT2021/2022シーズン作品 *劇場、 https://www.nntt.jac.go.jp/enjoy/record/detail/37_021257.html

■歌舞伎座八月「加賀見山再岩藤」  ■歌舞伎座九月「お江戸みやげ」「須磨の写絵」「近江源氏先陣館」「女伊達」

*八月花形歌舞伎から1作、九月大歌舞伎から4作の計5作品(下記の□)をWEB経由で観る。 ■MIRAIL・配信,2021.9.27-10.17(歌舞伎座, 2021.8,9収録) □加賀見山再岩藤,岩藤怪異篇 かがみやまごにちのいわふじ ■作:河竹黙阿弥,演出:市川猿之助ほか,出演:市川猿之助,坂東巳之助,市川男女蔵ほか ■八月花形歌舞伎(第一部)にあたる。 「三代猿之助四十八撰の内」とあるが今回は短縮版らしい。 その為か物語が非連続に流れていく。 しかし観ていて疲れない。 鳥居又助切腹の終幕は盛り上がった。 「市川猿之助六役早替り相勤め申し候」のため早替りの前後が特にクロースアップされている。 猿之助の演技はブレない。 ダンサーでいうと(直接比較はできないが)若い時のモーリス・ベジャールを感じさせる。 *歌舞伎座、 https://www.kabuki-bito.jp/theaters/kabukiza/play/722 □お江戸みやげ ■作:川口松太郎,演出:大場正昭,出演:中村芝翫,中村勘九郎,中村七之助ほか ■芝翫がお辻で勘九郎がおゆう役だった。 「のんきなおゆう、しまり屋のお辻」と聞いていたので途中まで芝翫がおゆう役とみていた。 この配役にした理由は後半にわかる。 宮地芝居が美貌の役者坂東栄紫に惚れこむのがお辻だから。 それも酒の勢いが必須ときている。 背負い呉服お辻の「一生一度の大尽遊び」は何とも言えない江戸の土産になっている。 □須磨の写絵,行平名残の巻 すまのうつしえ ■出演:中村梅玉,中村児太郎,中村魁春 ■在原行平と海女である姉妹の松風と村雨の別れの部分をほぼ舞踊で作られている。 行平は良い意味でボケを感じさせる存在感があった。 松風の細かい動きに違和感が少しあったがこれは演出なのか? □近江源氏先陣館,盛綱陣屋 おうみげんじせんじんやかた ■出演:松本幸四郎,中村雀右衛門,中村錦之助ほか ■和田兵衛と盛綱、盛綱と微妙、微妙と小四郎の対話には緊張感が溢れている。 それは首実検の場面でクライマクスに達する。 役者の動きと表情が観る者の心に食い込んでくる。 切腹で忠義を尽くすという劇的な行為が迫ってくる。 この作品は何回か観ているがいつも舞台に釘付けになってしまう。 □女伊達 おんなだて ■出演:中村時蔵,中村萬太郎,中村種之助 ■20分弱の舞踊劇だ