■歌舞伎座八月「加賀見山再岩藤」  ■歌舞伎座九月「お江戸みやげ」「須磨の写絵」「近江源氏先陣館」「女伊達」

*八月花形歌舞伎から1作、九月大歌舞伎から4作の計5作品(下記の□)をWEB経由で観る。
■MIRAIL・配信,2021.9.27-10.17(歌舞伎座, 2021.8,9収録)
□加賀見山再岩藤,岩藤怪異篇 かがみやまごにちのいわふじ
■作:河竹黙阿弥,演出:市川猿之助ほか,出演:市川猿之助,坂東巳之助,市川男女蔵ほか
■八月花形歌舞伎(第一部)にあたる。 「三代猿之助四十八撰の内」とあるが今回は短縮版らしい。 その為か物語が非連続に流れていく。 しかし観ていて疲れない。 鳥居又助切腹の終幕は盛り上がった。 「市川猿之助六役早替り相勤め申し候」のため早替りの前後が特にクロースアップされている。 猿之助の演技はブレない。 ダンサーでいうと(直接比較はできないが)若い時のモーリス・ベジャールを感じさせる。
□お江戸みやげ
■作:川口松太郎,演出:大場正昭,出演:中村芝翫,中村勘九郎,中村七之助ほか
■芝翫がお辻で勘九郎がおゆう役だった。 「のんきなおゆう、しまり屋のお辻」と聞いていたので途中まで芝翫がおゆう役とみていた。 この配役にした理由は後半にわかる。 宮地芝居が美貌の役者坂東栄紫に惚れこむのがお辻だから。 それも酒の勢いが必須ときている。 背負い呉服お辻の「一生一度の大尽遊び」は何とも言えない江戸の土産になっている。
□須磨の写絵,行平名残の巻 すまのうつしえ
■出演:中村梅玉,中村児太郎,中村魁春
■在原行平と海女である姉妹の松風と村雨の別れの部分をほぼ舞踊で作られている。 行平は良い意味でボケを感じさせる存在感があった。 松風の細かい動きに違和感が少しあったがこれは演出なのか?
□近江源氏先陣館,盛綱陣屋 おうみげんじせんじんやかた
■出演:松本幸四郎,中村雀右衛門,中村錦之助ほか
■和田兵衛と盛綱、盛綱と微妙、微妙と小四郎の対話には緊張感が溢れている。 それは首実検の場面でクライマクスに達する。 役者の動きと表情が観る者の心に食い込んでくる。 切腹で忠義を尽くすという劇的な行為が迫ってくる。 この作品は何回か観ているがいつも舞台に釘付けになってしまう。
□女伊達 おんなだて
■出演:中村時蔵,中村萬太郎,中村種之助
■20分弱の舞踊劇だ。 「盛綱陣屋」の直ぐ後にみたのだが、その余韻をまとめてくれた。 これは第一部の2作品の組み合わせでも同じだった。 ディナーでのデザートの位置付けと言える。