2017年9月30日土曜日

■エフェメラル・エレメンツ

■演出:川村毅,出演:ティーファクトリー
■吉祥寺シアター,2017.9.22-10.3
■人工知能(AI)をよく耳にします。 それはビッグデータに機械学習や統計手法を駆使して結果を出していると聞いています。 この舞台ではロボットに感情が発生するその瞬間を描いている。 つまり人口知能の次の話らしい。 感情を司る意識の発現と言ったほうがよい。 結局は人工意識を作ることができるか?に行き着きます。
感情の元は青い光エフェメラル・・。 心は物質に還元してしまい少し興醒です。 でも話はエフェメラルから離れていく。 エフェメラルの人間性としての意味を探しにです。 意識は嫉妬や怒り悲しみ喜びに広げていく。 KZもロボットなのか?
量の投入で質に転化させようとしている芝居です。 でも物語にまとまりが無い。 母子問題も多く描かれるが熟れていない。 それでも全てを出し切った舞台ですね。 宝物からゴミまでが一緒くたになり濃密な舞台を作り出していました。
台詞の流れは流暢で場面転換も独特なリズムがあった。 乳母ロミーが歌う二度の場面には圧倒されました。 まさに第三エロチカと天井桟敷の融合された舞台が立ち現れていました。
*劇場サイト、http://www.musashino-culture.or.jp/k_theatre/eventinfo/2017/06/TF-EE.html
*「このブログを検索」キーワード、 川村毅

2017年9月26日火曜日

■HER VOICE、彼女の声

■原作:サミュエル・ベケット,演出:佐藤信,振付・出演:竹屋啓子,出演:伊川東吾
■WAKABACHO WHARF,2017.9,22-25
■竹屋啓子が台詞を喋るのかなと想像していたがやはり無かった。 この作品は何回か観ているので次々でてくる日用品と主人公ウィニの仕草で大凡の語りは思い出すことができる。
彼女の動きには率直な軽さがある。 演劇的はなく舞踊的コミカルを含んでいる。 ダンス舞台を観たことがあるが昔のことではっきり思い出せない。 歯を磨く髪を梳かす動作はもっとリアルにしたいが難しいところだ。 観客がこの作品にどれだけ馴染んでいるかで感じ方が違ってくる。 動作以上に顔の表情も大切になってくる。 竹屋啓子の素直な身体に重みが滲んでくるまで回を重ねていく作品のように思える。
音楽は2・3曲?だったがウィニーを助けていた。 それとストライプ衣装に黄色を加えれば彼女の特長がより映える。 ダブリンをはじめ欧州を巡業するらしい。 これは楽しい旅になるとおもう。 パリ上演はどちらに転んでもヒット間違い無い。
ところでこの劇場は初めて行った。 上演中に車やバイクの音、通りすがりの子供の話声が聞こえてくる。 今回は台詞が無いので逆に気にならなかったが作品によっては気にするだろう。 
*劇団サイト、https://www.kamome-za.com/

2017年9月24日日曜日

■誰もいない国

■作:ハロルド・ピンター,演出:ショーン・マサイアス,出演:イアン・マッケラン,パトリック・ステュワート
■TOHOシネマズ六本木ヒルズ,2017.9.22-28(2016年作品)
■ツマラナイようでオモシロイ。 のような感じの芝居かしら?  バーカウンタのある室内劇で登場人物は4人。 主人公は二人の老人で大学の友人らしい。 彼らの近況や心身状態、昔話に対話が弾む。 でも人物や背景がよくわからないまま進むから不可解な雰囲気が漂っている。 科白は難解な語彙が散りばめられていて舞台から抜け出してしまうことが度々あったわ。 二人は詩人でもあるらしい。 パブの評価やハムステッド・ヒースのこと、英語の優位性のこと、別荘や芝生の話からロンドンの生活が垣間見える。
しかもこれだけ飲む芝居も珍しい。 終わるまでにウィスキー・ウォッカ・シャンペンのボトルを5・6瓶は開けたかしら? 後半、昔の恋人の話をする場面が一番盛り上がったかな?
アフター・トークがあったのは嬉しい。 イアン・マッケランが二人は認知症にかかっていると言っていたけどどうかしら? でも納得できる場面が一杯ね。 そしてピンターが活躍していたイギリス地方巡業の話も出るから楽しい。
この作品にはピンターの俳優時代が詰まっている感じがする。 ひょっとしてウディ・アレンのコメディアン時代と似ていたんじゃない? そしてピンターの舞台はいつもどこか金属的な匂いがする。 話は飛ぶけどジョゼフ・ロージーの映画にはそれが無い。 これはロージーがピンターの金属色を消してしまったのよ。 ともかくピンター脂が乗り切っていた頃の一品だとおもう。
*NTLナショナル・シアター・ライヴ作品
*映画comサイト、https://eiga.com/movie/86632/
*追記。 ピーター・ホールが12日に亡くなったのね。 なんとピンターと生まれが同じ年なの。 ホール演出のシェイクスピア作品では英国調科白の言い回しと役者の独特な存在感に圧倒されたのを覚えている。 でも彼に続くナショナル・シアターの演出家は大きく変わってしまった。 以降のNTやRSCは世界の潮流に飲み込まれていったのね。

2017年9月23日土曜日

■FALLING GOOD SUN

■振付:大橋可也,ドラマトゥルク:長島確,音楽:涌井智仁,映像:吉開菜央,出演:大橋可也&ダンサーズ
■豊洲シビックセンターホール,2017.9.21-22
■この劇場は上手と正面がガラス壁で出来ていて外の景色が望める構造になっています。 17時の開演からは少し暗いが太陽光だけで舞台を照らしています。 11人のダンサーは寝転がり動きがほとんど無いので芋虫のようです。 お尻を観客に向けているので人体のシルエットがふっくら美しく感じられる。
ダンサーを忘れて珍しい外の景色に目が向かってしまいますね。 豊洲公園を行きかう人々、晴海大橋のクルマの動き、その先にあるレインボーブリッジを走る車もライトの動きで分かります。 遠くには浜松町あたりのビル群の窓明かりが夕日が沈むとともに多くなっていく。 夕焼けも少しばかり空を赤く染めています。 何故17時開演なのかそしてチラシに日没時刻も記載されていたのか? 理由がここで分かりました。
ところで劇場の上手側に新しい建築工事が入っている。 これができると今の素晴らしい風景が遮られてしまいますね。
周囲が暗くなってから照明や映像で舞台を賑やかにしていきます。 寝転がっていたダンサーたちは立ち上がりゆっくりした動作で踊るというより動き回っています。 それにしてもダンサー達の存在感が薄い。 やはり外の風景が影響しているのでしょうか? 東京湾沿いの夜景をみていると「土地の記憶を吸う吸血鬼」には見えません。 このような劇場では他人事のように舞台をみてしまう。 演出家も苦労しているようでしたが19時半開演の第二部「BAD MOON RISING」を観なかったのでなんとも言えない。 個性ある劇場での観客は集中力と散漫力を上手にコントロールする必要があります。
*劇団サイト、http://dancehardcore.com/topics_theworld_2017.html

2017年9月18日月曜日

■DOUBLE TOMORROW

■演出:ファビアン・プリオヴィル,演出補:瀬山亜津咲,ドラマトゥルク:長島確,出演:演劇集団円
■吉祥寺シアター,2017.9.8-17
■「何をしようというのか?」。 観終わってチラシ文を思い返しました。 舞台には白くて二つに割れる大きな丸机と15個の椅子が置いてある。 登場した15人は舞台で群れたり離れたり机の上下周囲を動き回ります。 断片的な科白と視線、小道具を使い役者同士に関係性を作っていく。
どこまでも表層をなぞっていくだけです。 すべてが深まっていきません。 ダンスのような身体動作はちょっと鈍ってますね。 未完の稽古を見ているようです。 「何をしようというのか?」。
今これを書きながら「ドラマトゥルク/長島確」を読んで驚きました。 役者たちの演技が演出家の意図と違う(ようにみえた)、熟練より素人役者のほうが面白いはず(と感じた)、等々をここに書こうとしていたからです。
調味料の入っていない料理かもしれない。 制作過程を聞いて調味料などは求めない作品のようです。 でもそれに代わるものがみつからなかったようにもみえました。
*劇場サイト、http://www.musashino-culture.or.jp/k_theatre/eventinfo/2017/06/double-tomorrow.html

2017年9月10日日曜日

■VOYAGERボイジャー

■演出:花房伸行,音楽:金子ノブアキ,出演:enraエンラ
■世田谷パブリックシアター,2017.9.8-10
■パフォーミング・アーツ・カンパニーとはどんな舞台を見せてくれるのだろうか? 観客が宇宙船に乗り込んで月・木星そして宇宙へ飛び立つ想定らしい。 手前ピットには演奏家数人が入り舞台は7mX10mくらいのスクリーンを貼り映像を映し出す。
ダンサーたちは背景映像とコラボをとりながら踊る、というより動き回る感じだ。 バレエの振付やストリートダンスそして曲芸まで飛び出す。 映像はセンサー経由でリアルタイムに同期しているようには見えない。 それでもダンサーたちは映像に従属した動きをする。 前半は硬さがみられたが後半は身体が滑らかになったようだ。
しかし宇宙旅行はいつのまにか解体してしまった。 それらしき映像はあったが宇宙の深淵な時間・空間が表現されていない。 またドラマーの金子ノブアキを含め演奏は熱演だったが宇宙とドラムは合わないのでは? ダンサーたちも舞台状況とは切り離されていて踊りに無意味さを感じた。 アトラクション性の強い映像の優位性がその原因だとおもう。 真面目な現代風見世物小屋を覗いてきた観後感が残った。
*劇団サイト、http://enra-voyager.com/

2017年9月9日土曜日

■パッション・フラメンコ

■監督:ラファ・モレス,ペペ・アンドレウ,出演:サラ・バラス,ティム・リース
■Bunkamura・ルシネマ,2017.8.19-(2016年作品)
■サラ・バラス「ボセス フラメンコ組曲」の初演と世界ツアー公演をまとめたドキュメンタリーである。 映像とは別に彼女のインタビューでの語りをオーバラップさせていく構造になっている。 舞台場面もあるがむしろ彼女の生き方や日常生活が浮かび上がってくる作品のようだ。 
世界ツアーはパリ、メキシコ、ニューヨークそして東京と雰囲気の違う都市を回る。 それぞれの観客や知人の多彩さが出ていて面白い。 彼女の踊りは力強い。 「舞台では振付もステップも・・全てを忘れてただ解放感だけが残る」と言っている。 観客もその通りになれる。
沢山のことを詰め込んでいる作品なので時間が前後しているようだ。 このため公演の作曲や振付の問題など経緯がよく分からない。 2015年の来日公演は残念ながら観ていない。 でもフラメンコファンなら多くの場面から記憶を引っ張りだせるだろう。 最後にはサラ・バラスの全体像がみえてくる。
*映画comサイト、http://eiga.com/movie/86876/
*「このブログを検索」キーワード、 フラメンコ

2017年9月6日水曜日

■真夏の夜の夢  ■シンフォニック・ヴァリエーションズ  ■マルグリットとアルマン

■TOHOシネマズ六本木ヒルズ,2017.9.1-7(ROH,2017.6.7収録)
■真夏の夜の夢
■原作:W・シェイクスピア,振付:F・アシュトン,作曲:F・メンデルスゾーン,出演:高田茜,S・マックレー
■振付家フレデリック・アシュトン特集で3作品を上映。 身体全体で物語を紡ぎ出しす振付が素晴らしい。 腕や手首の一見ぎこちない動きが豊かさを伴って現れてくるの。 妖精たちも雑に感じるけど生き物として微妙にまとまっている。 ティターニア役高田茜も異界住人の雰囲気を持っていた。 シェイクスピアの国だけあって物語には強いわね。 ところで流れを中断して上半身だけをカットして映すのはダメ。 カメラマンの意見が入り過ぎてしまう。
■シンフォニック・ヴァリエーションズ
■振付:F・アシュトン,作曲:C・フランク,出演:M・ヌニュス,V・ムンタギロフ
■硬さのある作品でアシュトンの若さが感じられる。 表面の動きがよくみえるからダンサーたちも大変ね。
■マルグリットとアルマン
■振付:F・アシュトン,作曲:F・リスト,出演:Z・ヤノウスキー,R・ボッレ
■ゼナイダ・ヤノウスキーの引退記念公演。 彼女の全てが込められている舞台だわ。 長身美貌の彼女は高級娼婦としても言うことなし。 「古典よりコンテンポラリが好き」。 インタビュで彼女が言っていたけど「白鳥の湖」をみても分かる気がする。 身体から出てくるリズムがそれを求めているのね。 今回の特集でアシュトンとロイヤル・バレエが創り出す物語的厚さを再認識。
*英国ロイヤル・オペラ・ハウス2016シネマシーズン作品
*作品サイト、http://tohotowa.co.jp/roh/movie/the_dream.html
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2017年9月4日月曜日

■イマジネーション・レコード

■振付:矢内原美邦,出演:Nibrollニブロール
■神奈川芸術劇場・大スタジオ,2017.8.29-9.3
■力強い足音で暗闇の中から現れて足跡が暗闇に消えていく。 激しく歩く姿が目に焼き付きました。 舞台の前半は暗さがあります。 衣装のせいもあるでしょう。 暗い水玉模様を何回か着替えながら明るいストライプに移っていく。
風景のこと、狼少年が来るぞ、出来事の時間経過について科白が語られます。 動きに合わせて激しく喋るので鬱積した時代の生きずらさが感られる。 デジタル時間表記やオオカミ少年は情報化社会を生きていく辛さが表れています。 風景を記録することも強迫的にみえる。 追い詰められていますね。 その活況場面で映像を面白く表現すればするほどダンスは薄くなってしまう。 映像も曲者です。 そして記憶と時間の関係も一筋縄ではいかない。 「生きられる時間」を取り戻すにはどうしたらよいのか? 舞台を観ながら考えてしまいました。
ダンサーたちは若さが溢れ出ていた。 振付や科白から飛び出そうとする力がみえました。 演出家の意図を良い意味で純粋にしていました。
*劇場サイト、http://www.kaat.jp/d/nibroll
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2017年9月2日土曜日

■ロメオとジュリエット

■原作:W・シェイクスピア,作曲:C・F・グノー,指揮:G・ノセダ,演出:B・シャー,出演:D・ダムラウ,V・グリゴーロ
■東劇,2017.9.2-3(MET,2017.1.21収録)
■この作品をオペラで観るのは初めてかも。 1幕出会い、2幕バルコニ、3幕結婚と決闘、4幕仮死、5幕墓所の全5幕。 幕単位で一気に物語時間を飛ばすから振幅の大きなリズムが感じられる。 台詞が少ないから芝居とは違う作品にみえるの。 演出家シャーは凝縮といっていたけど省略も多い。
ロメオ役グリゴーロの声は錆びていて相手に纏わりつく感じだわ。 でもジュリエット役ダムラウの歌唱はロメオを通り抜けてしまう。 最初は絡み合わなかったけど後半は慣れて来たわよ。
5幕の墓所は驚きね。 芝居ではロメオとジュリエットはすれ違いだと記憶していたけど、オペラではロメオが毒を飲んだ直後にジュリエットが目覚めて歓喜のデュエットが続くの。 ロメオの毒が回り始めそれを知ったジュリエットは短剣で自身の胸を刺す。 その時ロメオも刺すのを手伝ってしまう・・!?
舞台はヴェローナの街角だけど単色の暗さが重みを出していた。 同じ構成で全幕通すのもなかなかやるわね。 でも合唱団の衣装がとても豪華なの。 衣装担当がフェデリコ・フェリーニのファンなのよ。 しかも「カサノバ」を意識したらしい。 この妖しい衣装はロメジュリの恋愛には似合わない。
ロイヤル・バレエ団*1でこの作品を観た時はとても感動したことを覚えている。 でもオペラはシェイクスピアからも遠くなってしまった。 METだから? ロイヤル・オペラならどうかしら?
*1、「ロミオとジュリエット」(ロイヤル・バレエ,2013年)
*METライブビューイング2016作品
*作品サイト、http://www.shochiku.co.jp/met/program/1617/#program_05
*2017.9.3追記。 中村雄二郎の訃報を新聞で知ったの。 舞台を話題にした著書が多いからよく手にしたわ。 鈴木忠志との共著「劇的言語」は舞台本ではベスト作品の一つ。 好きな作品は随筆「考える愉しみ」。