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■2012年舞台ベスト10

□ 星の結び目   演出:黒澤世莉,劇団:時間堂 □ 奴婢訓   演出:J・A・シーザー,劇団:演劇実験室◎万有引力 □ うれしい悲鳴   演出:広田淳一,劇団:ひょっとこ乱舞 □ 魚のいない水槽   演出:中村匡克,劇団:スポンジ □ 白雪姫   演出:小池博史,劇団:パパ・タラフマラ □ 自慢の息子   演出:松井周,劇団:サンプル □ へちま   演出:三谷智子,劇団:文月堂 □ ミッション   演出:小川絵梨子,劇団:イキウメ □ 燕のいる駅   演出:土田英生,劇団:MONO他 □ 蜜室   演出:遠田誠,出演:向雲太郎,まことクラブ □ アウト・オブ・コンテキスト   演出:アラン.プラテル,出演:LES BALLETS C DE LA B □ シンデレラからサド侯爵夫人へ   演出:鈴木忠志,劇団:SCOT *並びは上演日順。  選出範囲はこのブログに書かれた作品から。 映画(映像)は除く。  今年は2作品がオマケ。 * 「2011年舞台ベスト10 」

■チェインソング

■ 作・演出:三谷智子,出演:文月堂 ■ 下北沢・駅前劇場,2012.12.26-30 ■ 高校生活の話をしだすとキリがない。 大学受験、運動部と文化部、恋愛、番長や他高校の喧嘩、先生や校長教頭、そしてPTAの存在。 だからこの作品も2時間の長さになってしまった。 既に過去となってしまった高校生活を正義で塗り込め理想化している。 質の良い漫画である。 だから観ていて面白いし元気が出る。 年末用バーゲン作品である。 隣の劇場でスポンジの「埋める日」を上演していたので、これが終わったら観ようかとしたが既に始まってしまっていた。 今年は文月堂が締めとなった。 *劇団サイト、 https://fumitsukido11.wixsite.com/fumitsukidou/kouen9-c1ey3

■初雪の味・鎌倉編

■ 作・演出:吉田小夏,出演:青☆組(*1) ■ こまばアゴラ劇場,2012.12.28-13.1.6 ■ 時間の進み方が斑模様で不思議さの有る舞台でした。 兄弟たちが集まるのに静かな大晦日ですね。 テレビやトランプ・麻雀を出せないのが芝居の辛いところですか。 でも兄弟数や母と弟の関係をみると一世代古い時代にみえます。 長男恋人の年賀状を長女と母が弄ぶ場面があります。 このような母の態度が理解できません。 次男の恋人である看護婦が別人と結婚するのを聞いて彼は泣いてしまいます。 この場面で特に女性客からの笑い声で盛り上がりました。 なぜ笑うのか理解できません。 この芝居では新しく生きることがすべて葬られていくようにみえます。 死や思い出が強すぎて再生できないのです。 さいごに典子の弟が指で歩く姿をして前に進む意志を示します。 弱い幕引きです。 *1、 「キツネの嫁入」(2012年) *チラシ、 http://stage.corich.jp/img_stage/l/stage30796_1.jpg?1351177029

■ポリグラフ嘘発見器

■ 演出:吹越満,出演:森山開次,太田緑,吹越満 ■ 東京芸能術劇場·シアターイースト,2012.12.12-28 ■ まるで散文詩をみているような舞台ね。 句読点のある場面切替、しかも科白が棒読みだったからよ。 そして映像は古典的すぎるけどコクが有るので、淡白な科白や身体の動きにうまく混ざり合って独特な詩的舞台が表現できていた。 でも三人の役者はまるで素人のようだし要はリアルさがまったくないの。 ここが面白いところかもね。 物語の流れもよくわからなかった。 一種のパフォーマンス劇だわ。 しかもダムタイプ系とは逆張りのね。 ルーシとフランソワの身体は対照的だったけどでどちらも存在感があって素敵だった。 ところで観劇前に近くのマックで味を変えてからのコーヒを初めて飲んだの。 酸味が薄れてまろやかになった感じ。 飲みやすくなったわ。 外で飲むにはいいかもね。 *チラシ、 http://www.geigeki.jp/wp-content/uploads/2012/11/a2d3dc47dd2cc08d740003f1ce976bf4.pdf

■SOLO FOR 2  ■中国の不思議な役人

■ 振付:金森穣,出演:NOISM1 ■KAAT,2012.12.25-26 ■ NOISMの舞台は人形や黒子、歌謡曲などは思い出すが振付の記憶が薄い。 この舞台で初めて振付を観たという感じである。 日常性の一つ一つを拾い上げているような振付表現である。 どこかでみたような細かな動きをかき集めて、複雑で見えない日常を浮かび上がらせている。 だから豊かさは有るが非日常性から来る目眩のような感動は無い。 ヴァイオリンが重く聞こえる。 これは動きの速さが間の省略を発生させ音楽より軽くなってしまったからである。 もっと動きを深くできれば燻銀のような深日常性を表現できたとおもう。 ■ 中国の不思議な役人 ■ 振付:金森穣,出演:NOISM1&2 ■ 机やシャンデリア、背景美術そして照明、どれも無駄が無い。 しかしこの作品にはシンプル過ぎる。 物語を付加していつもの演劇的な舞台に戻っている。 この劇団はいろいろな分野を統合した総合力で勝負したほうが似合うかもしれない。 *劇場サイト、 http://www.kaat.jp/d/noism

■シンデレラからサド侯爵夫人へ

■ 演出:鈴木忠志,劇団:SCOT ■ 吉祥寺シアター,2012.12.8-24 ■ 劇中劇とは嬉しいわね。 「監督」が登場して芝居を作り上げていくのを芝居にしているの。 舞台を作ったり壊したり、音楽や照明担当そして客人まで登場するから賑やかになって楽しかったわ。 つまり集中力が必要なSCOTの芝居を、劇中劇が緩衝材として集中から分散へ働いて舞台が軽やかになったということね。 だから前半のシンデレラは重たさと軽さが見事に調和していたわ。 今までとは違って一皮むけた感じね。 後半のサド侯爵夫人では「監督」がでしゃばらなくなった。 だから客席も緊張の一色ね。 しかも2時間半は長過ぎる。 でも上手の衣装係の役者の微動がとてもよかった。 舞台が固まりすぎていたから。 音響担当や助手もこの自然な動作が背景にあればサドはもっと観易くなったはずよ。 *劇場サイト、 http://www.musashino-culture.or.jp/k_theatre/eventinfo/2012/10/scot.html

■ハーベスト

■作:リチャード.ビーン,翻訳:平川大作,小田島恒志,演出:森新太郎,出演:渡辺徹,佐藤アツヒロ他 ■ 世田谷パブリックシアター,2012.12.11-24 ■ この100年の家族史を描く芝居や映画を観る時にはある感慨が押し寄せてくる。 それは自身を含め両親や祖父母の生きた時代を振り返るからである。 この芝居もそれに該当する。 養豚業を経営する家族史は初めてだ。 興味を持って観てしまった。 しかし時代分割が多過ぎて皆が機械的に歳を取ってしまっただけにみえる。 現実の世界としての養豚業の話しを取り入れたため他のなにものかを捨ててしまったからだ。 結果、人間関係を熟成させることができなかった。 しかも終幕に強盗や宝籤の話で芝居の全体をぶち壊してしまった。 強盗の一人を撃ち殺しもう一人を養豚業の跡継ぎにする場面は別の芝居かと勘違いしたくらいストーリーに落差がある。 宝籤もそうだが現実が未消化のまま入り乱れていて戸惑う舞台だった。 *劇場サイト、 https://setagaya-pt.jp/theater_info/2012/12/post_295.html

■眠れる森の美女

■ 振付:M・プティバ,出演:アーラ・シゾーワ,舞団:キーロフバレエ ■ 東京都写真美術館,2012.12.8-2013.2.28 ■ チラシに「キーロフ・バレエの総力を結集した」とあったけど、そのとおりの内容ね。 シゾーワを筆頭にダンサーたちは若々しさがあって、しかも切れ味が良い。 舞台装置は下手なリアリズムで演出は夢の世界のようでちょっと古くさい感じがしたけど、50年前の作品だからしょうがない。 ダンスが上手いと観た後も心が踊っていて帰りの道がいつもと違ってみえる。 *美術館、 https://topmuseum.jp/contents/exhibition/movie-1821.html

■宇宙みそ汁  ■無秩序の小さな水のコメディー

■ 作:清中愛子,演出:坂手洋二,出演:燐光群 ■ 梅ヶ丘BOX,2012.12.5-9 ■ 詩のようなセリフを文単位で複数の役者が喋っていくリズムある舞台です。 しかも横浜子安あたりの安アパート住人たちの日常生活が語られていて十分なリアルさがあります。 生活の描写が見事です。 でも一つ転げ落ちれば困窮生活です。 そして沖縄出身の住人が帰ってしまった些細な出来事で終わります。 生活から生まれた詩だから幕が降りてもこの些細な出来事が続いていくのがみえるようです。 ■ 無秩序の小さな水のコメディ ■ 作・演出:坂手洋二,出演:燐光群 ■ 短編ですが鯨の話と利き水の話です。 どちらもコジンマリとまとまっています。 今回はみそ汁との二本立てでしたがチョット外れた梅ヶ丘らしい「梅ヶ丘BOX20周年記念」の作品でした。 二駅先の下北はずっと騒がしいですからね。 *劇団サイト、 http://rinkogun.com/2011-/entori/2012/12/28_Uchu_Miso_Shiru_2.html

■白鳥の湖  ■ヌレエフ・ I AM A DANCER

■白鳥の湖 ■ 振付:R・ヌレエフ, 出演:M・フォンテーン,R・ヌレエフ,ウィーン国立歌劇場バレエ団 ■ 東京都写真美術館,2012.12.8-2013.2.28 ■10月の ロイヤル・バレエ (2012年)は東方志向がとても強かった。 でもこの作品はまさにロシアね。 帝政ロシアの軍服やロシア平原の民族衣装は故郷の匂いがする。 だからヌレエフが空を見上げた時、「鶴は飛んでいく」を思い出してしまったの。 でもフォンテーンは彼女らしい踊りをしていなかった。 少し固さがあった。 それに釣られてヌレエフもそう。 残念ね。 でもカメラの動きは良かったわ。 顔や上半身のアップは休止の時だけだし、踊りの場面は人物全体舞台全体を撮っていたからよ。 ■ヌレエフ・I AM A DANCER ■ 監督:P・ジョルダン,出演:C・フラッチ,D・バーグスマ,M・フォンテーン,L・シーモア ■ ヌレエフの全体を簡明直裁にまとめいているの。 「ダンスは血の結晶である」。 ヌレエフの言葉よ。 彼は完全主義者なのよ。  鋼鉄の仕上がりは限界迄行く練習の賜物ね。 共演のプリマ4人は皆違った魅力があって素敵。 特に「椿姫」のフォンテーンとの共演は「白鳥の湖」とは比べ物にならないくらい素晴らしかったわ。 *館サイト、 http://topmuseum.jp/contents/exhibition/movie-1821.html

■明るい部屋

■ 演出:高谷史郎 ■ 新国立劇場・小劇場,2012.12.7-9 ■ 北欧調の椅子やフロアライトが床にそして天井には大きなスクリーンのある無機質が漂う舞台です。 そして雑音のような映像と音楽、映像は世界の雲の動きや植物の枯葉、飛ぶような光の筋や数字の羅列が表示される。 役者たちはアナウンサーの真似事や傾いた机と椅子で本との戯れ日常生活の写真の説明場面だけが具体的な動きです。 この役者の単純な動作を見ながら音楽と映像に浸っていると恍惚感に入ることができる。 しかしこの恍惚も達成感がありません。 照明も悪くはありません。 この「・・・ありません」という半ば否定が舞台の特徴です。 R・バルトの同名作品は写真が与える存在を論じていたと記憶していました。 たぶん舞台との繋がりは半ば「ありません」。 *NNTTダンス2012シーズン作品 *劇場、 http://www.nntt.jac.go.jp/dance/20000629_dance.html

■くるみ割り人形

■ 振付:P・ライト,出演:R・マルケス,S・マックレー ■ワーナーマイカル系,2012.12.14(ROH,2012.12収録) ■ 中継のため10分遅れの開始で30分遅れの終了。 毎年恒例のとても年季が入っている舞台ね。 ある衣装は30年も使い続けていると聞いて感心。 クリスマスツリーも当初は2メートルが今では十数メートルの高さになっているの。 舞台の流れはクリスマスプレゼントを一つ一つ開ける時のような驚きと楽しさがあるわ。 これを観ないと年が越せないと言うことね。 クララと王子は初々さがあり適役よ。 プリンシパルの踊りも最高のプレゼントね。 *英国ロイヤル・オペラ・ハウス2012シネマシーズン作品

■TOPDOG/UNDERDOG

■ 作:スーザン=ロリ・パークス,演出:小川絵梨子,出演:シス・カンパニー ■シアタートラム,2012.11.30-12.28 ■ 兄リンカーンが警備職を得た場面で、なぜ急にブースが兄を激しく妬み出したのか? そして母からもらった大事な金というだけで兄を殺してしまうのか? ブースの心が読めない。  リンカーンは暗殺されるから?  非連続の流れだ。  また彼は恋人グレースと本当に付き合っているのか? 疑問を持ってしまった。 彼がストッキングから金を取り出して高笑いしながら幕が下りるのも異様だ。 ブースの行動が読めない緊張感があったが劇の面白さとしては意見が分かれるのでは?  カードゲームの話、両親や恋人のセックスの話がリズミカルに撒き散らされていて興味が尽きない。 特に遊園地のリンカーン暗殺の仕事話は驚きだ。 これでブースの心の流れと一瞬でも同期ができたら、久しぶりにアメリカ演劇万歳!をしただろう。 *チラシ、 http://setagaya-pt.jp/theater_info/upload/file/sistopdogunderdogl_pm_pdf_dl_file.pdf

■草刈民代・最後のジゼル  ■アンナ・カレーニナ

□草刈民代・最後のジゼル ■ 監督:周防正行,出演:草刈民代、レーニングラード国立バレエ団 ■ 東京都写真美術館,2012.12.8-2013.2.28(神奈川県民ホール,2009.1.31収録) ■ 余裕を持って踊っているけど、重たい感じは否めない。 まさに記念映画ね。 題名からいくと大きな編集をしているようにみえるけどほぼ舞台そのままよ。 二人にとってあまり手を加えたくなかったのね。 *2012年作作品 □アンナ・カレーニナ ■ 振付:マリア・プリセツカヤ,出演:マリア・プリセツカヤ,ボリショイ・バレエ団 ■ 草刈民代が最後のジゼルを踊ったのは44歳。 ここでのプリセツカヤは46歳。 舞台ではなくスタジオで撮った作品だからプリセツカヤはとても激しく踊っている。 振付は鋭く速さがあるわ。 ソビエトで生き抜いてきた決心がみえるの。 衣装がカルダンだからソビエトの中にパリがあるみたい。 しかも背景のエルミタージュ宮殿や軍隊は19世紀以降のロシアが総出演しているような感じ。 モンタージュを含め映画手法を下手に取り入れているからまるでボルシチ鍋の中で踊っているようね。 *ソビエト1976年作品 *館サイト、 https://topmuseum.jp/contents/exhibition/movie-1821.html

■DANCE PLATFORM 2012

■ 演出・振付:キミホ・ハルバート, 出演:ユニット・キミホ ■ 新国立劇場・小劇場,2012.11.289-12.1 ■SKIN AND SKIN ■ 初めてキミホをみました。 顔体型は若いM・モンクのようです。 小柄からくる印象深い動きです。 振付も濃鼠(こねずみ)という感じですね。 少し固さがありましたが。 ■MANON よりLAST DUO ■ 酒井はなは素晴らしい。 生き生きとしたしなやかさがあります。 ですから死んでいくマノンにはみえませんでした。 ところで雪が降りすぎですね。 よくできた雪なのでみとれてしまいました。 これではダンスが霞んでしまいます。 それとシーン間の闇を多用する理由がわかりません。 この作品には合いますが流れが途切れてしまうのではないでしょうか? ■ 美女と野獣 ■ 女性ダンサーたちの赤系の少しずつ違う衣装が素敵でした。 ダンサーの顔に表れる感情表現が細かすぎる感じもします。 これがキミホの演出の特徴というか良さでしょうか? 平原慎太郎は動きがよかったですね。 *チラシ、 http://www.nntt.jac.go.jp/dance/pdf/20000628.pdf

■テンペスト

■ 指揮:T・アデス,演出:R・ルパージュ,出演:S・キーンリーサイド,A・ルーナ,I・レナード ■ 東劇,2012.12.8-14(MET,2012.11.10収録) ■ 舞台装置はとてもチープな感じ。 ルパージュが「指環」でお金を全部使ってしまったからよ。 父と娘、復讐や愛の関係がとても分かり易く仕上がっていた。 音楽と歌唱の関係も現代的だし、しかも魔法の不思議さが漂っていて素敵だったわ。 シェイクスピアから良い方向に解放されていたといえる。 スカラ座を劇中劇にしたのはルパージュらしいけどイマイチね。 このようなオペラは観客の好き嫌いが大きいはずよ。 カーテンコールの観客席の2割が空席だったのもわかる気がする。 でも去年の「エンチャンテッド・アイランド」よりずっと良かった。 アデスのパワーがあったからよ。 * METライブビューイング2012 年作品 *主催者サイト、 http://www.shochiku.co.jp/met/program/s/2012-13/#program_03

■ハヤサスラヒメ

■ 演出・出演:笠井叡,麿赤兒,出演:天使館,大駱駝艦 ■ 世田谷パブリックシアタ,2012.11.29-12.2 ■ 「これは事件である」とあったが、この事件にチケットを買うべきか否か! この迷いが当たった。  第九が鳴り響く中、舞台は年末バーゲンセールだ。 笠井の動、麿の静が空回りし過ぎている。 ベートーヴェンが強すぎて二人はどうしていいのかわからない。 もはや音楽に合わせるしかない。 二人に近づきたくないのか天使館コロスは後方にいて控えめだ。 4人の大駱駝艦ダンサーは元気があっていい。 ひと月も早く天使館でのクリスマスと大駱駝艦の大晦日を迎えてしまったような舞台だった。 *チラシ、 http://setagaya-pt.jp/theater_info/upload/file/hayasasurahime_pm_pdf_dl_file.pdf

■ファースト・ポジション

■ 監督:ベス・カーグマン ■Bunkamura・ルシネマ,2012.12.1- ■ ユース・アメリカ・グランプリYAGPに挑む9歳から19歳のダンサー6人のノンフィクション映画よ。 家族やコーチ、友達の登場も多くて、ダンサの生活全体が豊かに表現されているの。 面白いと同時にいろいろ考えさせられてしまう作品ね。 当たり前だけど、前提として豊富な資金力がないとキツイかも。 特に母親との関係が濃くてダンサーになる子供たちが大変なの。 これを昇華させながら練習をしているけどみんな健気ね。 最終選考では中国、韓国、日本の受賞が多く見受けられたけど、名門スクールの奨学金獲得は少なかったみたい。 観ていても奨学金獲得のほうが大事にみえたわ。 前者は今だけ、後者は5年10年先のことだし。 体格や見映え、人種差別もあるはずよ。 *劇場サイト、 http://www.bunkamura.co.jp/cinema/lineup/12_firstposition.html

■ロミオとジュリエット

■ 演出:オマール・ポラス,出演:SPAC,テアトロ・マランドロ ■ 静岡芸術劇場,2012.11.24-12.9 ■ チラシ寿司のような舞台だわ。 具はSCOTやSPACから借りた舞台造りや照明そして音楽、役者の動きね。 フランス語と日本語のセリフも上手く混ざっていた。 しかもパスタもだから不思議な味よ。 テンポが中途半端。 「間」を空白で埋めながら観たの。 コミック漫画を見ている感じね。 台詞は面白かった。 ニヤニヤしながら観ていたわ。 でも後半は涙ぐむわね、煙幕も多かったけど。 *劇場、 https://spac.or.jp/autumn2012/romeo_12

■オテロ

■作:W・シェイクスピア,作曲:G・ヴェルディ, 指揮:S・ビシュコフ,演出:E・モシンスキ,出演:J・ボータ,R・フレミング,F・シュトルックマン,M・ファビアーノ ■ 新宿ピカデリ,2012.11.17-23(MET2012.10.27収録) ■ 激しい心の動きだけで物語が進むから舞台は騒がしくなるはず。 しかしそう成らない。 とても抑えが効いていたわ。 これはフレミングの経験からくる自信とボータの仕事熱心な賜物よ。 「アヴェ・マリア」を聞いた時、シェイクスピアの世界からヴェルディの世界に移ったのを確信したの。 ヴェルディはシェイクスピアをどうしてもイタリアに連れてきたかったのよ。 ボータは調子がよかったみたい。 静かだけど声に伸びがあったわ。 それにしてもイアーゴは元気が良すぎる。 彼一人で燥いでいたから。 無難にまとめてある舞台だった。 *METライブビューイング2012作品 *作品サイト、 http://www.shochiku.co.jp/met/program/s/2012-13/#program_02

■ボンビックス モリ WITH ラッシュ

■ 出演:インバル・ピント&アヴシャロム・ポラック ダンス・カンパニ ■ 世田谷パブリックシアタ,2012.11.22-24 ■ フランスのダンス団だと思っていました。 舞台に仏らしさがありました。 それはピエロの登場や禿頭へのユーモアを感じたからです。 イスラエル? どうしてもアラブ世界を思い描いてしまいます。 でも舞台の色彩がバットシェバ舞踊団に似てますね。 一幕が「ラッシュ」で二幕が「ボンビックス モリ」のようです。 同じ流れの作品です。 人形らしく動く振付はよくみかけますが、この舞台は少し違います。 下手という意味ではなく、それは人が人形の動きをしているようにみえるからです。 女性ダンサーが他ダンサーに掴まって人形のように動く場面は感心しました。 二幕の4人の女性ダンサーが踊るところは最高でした。 ただし椅子や紐などの道具を前面にだしているのでダンス的感動は起こりません。 どこか懐かしさのあるパフォーマンスです。 *劇場、 http://setagaya-pt.jp/theater_info/2012/11/_with.html

■モリエール・恋こそ喜劇

■ 監督:ローラン・ティラール,出演:ロマン・デュリス,ラウラ・モランテ,ファブリス・ルキーニ他 ■ 仏では180万人を動員したらしい。 人生への軽快なリズムがあるからだろう。 この浮浮するリズムが喜劇の源なのだ。 これはシャブロルやレネなどの後期作品も持っている。 まさに仏映画の王道である。 モリエール二度目の投獄後の無名時代の話しらしい。 ある貴族の家に演劇教師として出向くが、ここでの出来事が後の作品に影響しているように描かれている。 悲劇か喜劇かを選択する場面もある。 しかしこの作品では芝居は香辛料の役目である。 演劇人モリエール抜でも楽しめるのが良い。 *映画com、 https://eiga.com/movie/55081/

■マノン

■ 振付:K・マクミラン,演出:M・メイソン,指揮:M・イェーツ,出演:T・ロホ,C・アコスタ,J・マルタン ■ワーナー・マイカル系,2012.11.14-15(ROH,2006年収録) ■ これだけゴタゴタしている流れをなんとかまとめているのが凄い! 登場しているダンサや役者一人ひとりが意味を持った動きをしているから混沌から逃れられたからよ。 そして二幕のリフトやフィッシュダイブの連続でマノンの娼婦性を強調できた。 これでテーマを戻せたしね。 ニューオーリンズは照明の強さでヨーロッパとの違いを表現できていたのも感心。 濃い雰囲気を漂わせることができた。 でもロホは純真過ぎるわ。 オペラ*1 と比較すると軽すぎる。 バレエはこのような作品は合わない。 というより合う役者がいないからよ。 ところでカメラは最低だったわ。 ダンサーを追いすぎるからよ。 もう少し引いてどっしり構えて欲しいわね。 映画ではなくバレエを観に来ているんだから。 カメラは大いに反省してちょうだい! *1、「 マノン」(MET,2012年) *英国ロイヤル・オペラ・ハウス2012シネマシーズン作品

■レヒニッツ-皆殺しの天使-

■ 作:エルフリーデ・イェリネク,演出:ヨッシ・ヴィーラ,出演:ミュンヘン・カンマーシュピーレ ■ 東京芸術劇場・プレイハウス,2012.11.9-10 ■ L・ブニュエルの「皆殺しの天使」にレヒニッツ村事件が関わっていたとは知りませんでした。 ブニュエルは勿論知っていたのですよね? ところで今年のF/T がやっと見えてきました。 作品の多くに社会の裏側を剥がしていくような力があります。 舞台の5人は意味深なほほ笑みを絶やさず、同じく意味深なセリフを喋りまくります。 同時に下着になったり毛皮コートを着たり、パイやチキン、ケーキを食べたりします。 5人は事件の報告者ですが、物理学の波動か粒子か?の曖昧さを持った観測者のようです。 原作は読んでいませんが人間の歴史が語られた時の曖昧さが上手く表現されている舞台です。 科白の背後を十分に想像できる豊かさを持っていました。 *F/Tフェスティバル・トーキョー2012作品 *劇場サイト、 http://www.geigeki.jp/performance/theater012/theater012_1/

■るつぼ

■ 作:アーサー・ミラ-,演出:宮田慶子,出演:池内博之,鈴木香 ■ 新国立劇場・小劇場,2012.10.29-11.18 ■ 現代人は悪魔や魔女がいないとわかっている。 それを前提としているから勧善懲悪劇のようにみてしまう。 しかし似た状況は現代でもよくあることだ。 結局は悪魔の呪文から逃れられないから骨身に沁みる。 赤狩りが形を変えこれからも続いていくことをアーサー・ミラーは言っている。 ジョンが告解をせず死刑台に登るところが凄い。 これでなければ芝居にならないが。 そして再び将来、死を賭けてこのような状況に陥るのが人間というものだ。 これをハッキリ示している芝居だから恐ろしさが迫る。 *チラシ 、 http://www.nntt.jac.go.jp/play/pdf/20000618.pdf

■愛の妙薬

■作曲:G・ドニゼッティ, 指揮:M・ベニーニ,演出:B・シャー,出演:A・ネトレプコ,M・ボレンザーニ,M・クヴィエチェン,A・マエストリ ■ 新宿ピカデリ,2012.11.3-9(MET,2012.10.13収録) ■ 演出家シャーがドタバタな喜劇を避けたいと言っていたけど、その通りの舞台で深みのあるラブコメディにできていた。 但し二幕初めの結婚式場面を除いてだけど。 食事のある場面は難しいわね。 あとはリズムのある流れでとても楽しかったわ。 ネトレプコについて HP はコケティッシュとあるけどちょっと違う。 でも喜劇は合うとおもう。 舞台背景はターナーの風景画のようだから落ち着いて物語に集中できた。 「絵画的二次元と現実的な三次元の物語はマッチする」。 これもシャーの言葉ね。 軽喜劇を12年の一番目に持ってくるのはMETらしい。 しかも常連ばかり、特にシャーは4度目 になるし、これなら初回で点数が必ず入るということ。 気軽に観れるから今年も期待したいわ。 *METライブビューイング2012作品 *作品サイト、 http://www.shochiku.co.jp/met/program/s/2012-13/#program_01

■1月8日君はどこにいたのか?

■ 作・演出:アミール・レザ・コヘスタニ ■ 東京芸術劇場・シアターイースト、2012.11.2-4 ■ http://www.festival-tokyo.jp/program/12/january8th/ ■ 携帯電話を使う場面が非常に多いですね。 イランはニュースでしか知らないので観ていても余計遠く感じます。 顔面対話は数カ所しかありません。 日本の芝居でしたら観る気がしないでしょう。 終了後にコヘスタニのトークに出席しました。 これでどういう芝居かがわかりました。 暴力がテーマだということ、1月8日は女性の自由の日、・・などがです。 最後にイランでの上演に拘る理由を話してくれました。 それは芝居に対して<馬鹿馬鹿しい検閲>と<見えない検閲>があります。 英国や日本では<見えない検閲>が見えません。 イランならそれがわかるからです。 <馬鹿馬鹿しい検閲>は法律に記載されていることや世間での表面的な掟などです。 <見えない検閲>は世間の裏側にあるものです。 他者特に母語を話せない人からは見えないものです。 <見えない検閲>の英国や日本の状況も面白かったですね。

■アンドロイド版三人姉妹

■原作:A・チェーホフ, 演出:平田オリザ,テクニカルアドバイザ:石黒浩,出演:青年団 ■ 吉祥寺シアタ,2012.10.20-11.14 ■ 不気味の谷は越えられない。 声に指向性が無い。 ノイマン型CPUでは限界がある。 画期的な技術が出ない限り進められないようだ。 二年前の「 さようなら 」か ら状況は変化していない。 オリザはロボットに直接目を向けなくなったようにみえる。 そしてアンドロイドの限界値を芝居に組み込む方法を考えだした。 アンドロイドは嘘はつかない、素直に口に出す、・・とか。 これを利用して物語をオモシロくさせている。 しかしこれはロボット演劇の亜流である。 チラシを読むと寂しさの本質のありかについて書かれていた。 感情を越えてやってくる寂しさはロボットにも可能だ。 当分この線でいくしかない。 残念だが今日の舞台ではこの線も成功していなかったが。 理由は登場人物が多過ぎてアンドロイドが埋もれてしまい寂しさに辿り着けなかったから。 スピルバーグの「AI」に登場する愛情型少年ロボットのデイビッド、「ブレードランナー」のレプリカントのリーダであるバッティに、舞台で出会えるのは遥か先である。 *劇場サイト、 http://www.musashino-culture.or.jp/k_theatre/eventinfo/2012/07/post-7.html

■たった一人の中庭

■ 演出:ジャン・ミシェル・ブリュイエール、出演:LFKS ■ にしすがも創造舎、2012.10.27-11.4 ■ http://www.festival-tokyo.jp/program/12/lepreaud_unseul/ ■ 旧中学校校舎の10の教室と体育館でパフォーマンスや作品が展示されている。 これを見て回るのだが演劇というより美術展に近い。 モンスター衣装?でのダンス、化学実験のような再現、赤軍派の写真が貼ってある政治オフィス、キャンプの模型・・。 体育館には野戦病院内?の様子が作られている。 室内中庭?には病院のベッドが・・。 ここはキャンプなのか? 配られた解説書をみてやっとわかる。  パレスチナキャンプは聞いたことがあるが、これはフランス移民政策から発生したキャンプのようだ。 移民での一番の問題は宗教だと言っている。 移民政策の失敗の原因はこれか? 作品はこれに答えていない。 世界中のキャンプを視野に入れているからだ。 今年の F/ T はとても政治的である。

■ストリート・ダンス-TOP OF UK-

■ 監督:マックス.ギア,ダニア.パスキーニ,振付:ウィル.タケット,ケンリック.サンディ ■(イギリス,2010年) ■ ストリートダンスにバレエを取り込むテーマは魅力的ね。 でもダンスの楽しさが発揮されていない。 その理由は、 1.バレエダンサーを引き抜くストーリーは面白い。 しかし肉付けが上手くない。 中身の薄いインド製ダンス映画と同じね。 2.バレエを組み込んだ振付は良いとはいえないわ。 作成過程も省いているし・・。 特に台や布の利用はストリートに合わない。 3.カメラの切り替えが早すぎててダンスをゆっくり見ることができない。 何を観客に一番みせたいのかわからないわ。 HPをみると来春に続編が来るようね。 でも同じような内容ならダメよ。 *映画comサイト、 https://eiga.com/movie/57333/

■女司祭-危機三部作・第三部

■ 作・演出:アールパート・シリング,出演:クレタクール ■ 東京芸術劇場・シアターイースト,2012.10.27-30 ■ ブタペスト育ちの女優が演劇教師となりルーマニアの田舎町に家族と共に赴任する話です。 彼女が日常生活での問題点を議論にあげて生徒にぶつけていきます。 生徒の生活体験談や現地の映像も取り入れながら進行します。 時々舞台状況や子供の存在意義についての質問を観客に向けます。 観客はそれに参加しなければなりません。 緊張感があります。 そして子供たちが貧困・差別・宗教に対峙する姿が現れてきます。 舞台の中高校生はとても不思議な感じがしますね。 彼らの現実生活と舞台演技が入り混じるためです。 国を越えての教師移動やキリスト教の影響力は島国で無神論の日本では想像し難いところです。 ヨーロッ パのディープな課題が現れている舞台です。 *主催者サイト、 http://www.festival-tokyo.jp/program/12/thepriestess/

■万国博覧会

■ 振付:ラシッド・ウランダン,音楽:ジャン=バティスト・ジュリアン ■シアタートラム,2012.10.26-27 ■ チラシも読まないで観たがまったくつまらない舞台であった。 アフタートークを聞いてやっと概要がわかった。 万国博覧会は植民地時代に現地からかっぱらってきた物品を展示することである。 映像の彼の顔の色はフランス国旗であり吐き出す対象だ 。 彼がアルジェリアからの移民と知った時は「アルジェの戦い」や「ジャッカルの日」を思い出してしまった。 しかしダンスにこのような歴史背景を取り込むのは至難の業だ。 事前情報がなければ何を表現しているのかわからない。 このような舞台は苦手だ。 *チラシ、 http://setagaya-pt.jp/theater_info/upload/file/expositionuniverselle_pm_pdf_dl_file.pdf

■クレイジーホース・パリ

■ 監督:フレデリック・ワイズマン ■アルテリオ 映像館,2012.10.27-11.16 ■ 「 万国博覧会 」へ行く途中に寄り道する。 「クレージーホース」はパリのナイトクラブのこと。 そこでの演目は芸術的ヌードショウである。 ヌード舞台の練習風景の記録であるが、オッパイやお尻がこれでもかと出てきて最高である。 しかし映画そのものの感動は無い。 ワイズマンの無欲さというか無能さがでている。 フィリップ・ドゥクフレが舞台の演出家として登場するがダラダラしていてどうしょうもない。 日本だったら即クビだろう。 観ていてウキウキさせてくれたのはダンサーだけで、監督も映画の中の演出家も本業での期待に答えてくれなかった。 *映画com、 https://eiga.com/movie/57280/

■白鳥の湖

■ 指揮:B・グルジン,演出:A・ダニエル, 出演:Z・ヤノウスキ-,N・キッシュ ■ワーナ・マイカル 東京,2012.10.24(ROH収録) ■ 中継映像のためか画面が少し不安定だったけど中盤以降良くなったわ。 動きの激しい場面は微妙に振動するのは残念ね。 スラブ系の匂いが漂っているけどベクトルはより東方に向いていてこれはユーラシア大陸的作品ね。 衣装や装置は深みとコクのある色彩で素晴らしわ。 1幕と3幕の城内の様子、そして2幕と4幕の湖、すべてがパーフェクトよ。 もちコール・ドもね。 さすがシェイクスピアの国の踊りね。 楽しかったわよ。 でもオデットが登場した時は驚いたわ。 マシュー・ボーンの白鳥が現れた! ヤノウスキは長身で肩幅が広く筋肉質で男性のようだもの。 観ていて不思議な気分ね。 キッシュが素直な人のようだからなんとかまとめたのよ、きっと。 *英国ロイヤル・オペラ・ハウス2012ネマシーズン作品

■演劇1、演劇2

■ 監督:想田和弘,出演:平田オリザ,青年団 ■シアターイメージフォーラム,2012.10.20-11.25 ■ 1.ダメな役者を吊るしあげる時、演技・人格・生い立ち・家族の素性にまで遡る某演出家もいるようですが、オリザの「ダメだし」は静かな厳しさが感じられます。 小津安二郎の駄目出しを真似ているわけではなく、両者の方法論が結果として一致したのです 。 2.入団面接で演出希望者が口ごもっている場面がありました。 希望が叶えられても役者の投票で可否が決まるのですね。 つまり俳優からの支持が得られなければ演出家も続けられないということです。 河原乞食集団の厳しさが表れています。 3.オズ映画の感動は喜怒哀楽から来るのではなく映画芸術そのものからきます。 オリザ演劇と近いですね。 原節子の写真が壁に貼ってありました。 小津の写真じゃサマにならない。 だから代わりに原節子を貼ります。 これは皆がしていることです。 4.劇団員がR・ブレッソンの議論をする場面があります。 ブレッソンもオズと同じ方向です。 演技時に役者の脳味噌がカラッポになるほど、ある種の感動が訪れるものです。 ロボット演劇に進むのは必然でしょう。 その先に劇的感動が必ず有るからです。 5.アゴラ劇場の乱雑した事務室や事務処理を初めてみました。 興味ある場面ですね。 高校授業風景やフランス公演もです。 「新国立劇場はなにもしていない!」と彼は言い切っています。 オリザは文化活動にも実績があるから言えるセリフです。 *作品サイト、 http://engeki12.com/

■旅程

■ 三鷹市芸術文化センター・星のホール、2012.10.19-28 ■ http://stage.corich.jp/img_stage/l/stage30935_1.jpg?1350774964 ■ 場面が細かく分かれ並行してストーリーを進めていくのは近頃の小劇団の流行りのようだ。 詩のような状況説明のセリフが時々混じっていている。 建築資材会社の社員とその家族が登場するため仕事話が多い。 正社員と非社員、親の投資失敗や娘の不純行動など結構リアルな話が詰め込まれている。 観ていても緊張感が走る。 しかし商品不正の話にのめり込み過ぎてしまい、観終わった時はこの話しか覚えていない。 役者も上手いがこのため影が薄い。 テレビや映画に対抗しようとしている。 だからテレビドラマと同じく、観客を緊張感だけ持った傍観者にしてしまうような芝居であった。

■曼荼羅の宇宙

■ 演出・振付:森山開次,音楽:高木正勝 ■ 新国立劇場・小劇場,2012.10.17-21 ■ 忍者がダンスをしているようだわ。 でも、もっと根源的な面白さがあった。 日本的というかモンスーン的農耕的振付が詰まっていて遠い日本を思い浮かべることができたからよ。 題名「書」を身体表現するとこのような振付になるのかしら? 波・雨・狼・馬・鳥・虫の音を背景にダンサー同士のコミュニケーションも同じ懐かしさが表れていたわ。 第一部終幕近く曼荼羅が投影されたけど舞台の流れには結びつかなかった。 そして柳本の指の先端に切れがなかった。 次の第二部「虚空」は森山のソロ。 5メートル四方の小さな舞台に力を凝縮して、平安時代の空の大日如来と鎌倉時代の力強い仁王像を同時に踊っているよう。 ピアノがリズムを持ってきた中盤の踊りは素晴らしいの一言。 森山と5人のダンサーそしてピアノの高木。 この7人で曼荼羅の世界を描こうとしたけどできなかった。 というより曼荼羅の絶対的世界から飛び出してしまうしなやかさがあったわ。 曼荼羅のその先へ行こうよ!と言っていたのね。 *劇場サイト、 http://www.nntt.jac.go.jp/dance/pdf/20000627.pdf

■傘月

■ 脚本・演出:下西啓正、出演:乞局 ■ 新宿・SPACE雑遊、2012.10.10-17 ■ http://stage.corich.jp/img_stage/l/stage30230_1.jpg?1350214505 ■ 日常生活を少しばかりこじ開けるような議論がセリフに沢山入っていて面白いですね。 しかも災害場面で苛立っているのか棘のある対話が続きます。 このような台詞を書きたいので背景に災害を持ってきたのでしょうか? 12場面の作りになっていて物語が非連続に並行して進んでいきます。 構成は面白く役者たちも力が入っています。 干魃や瓦礫処理、大洪水など自然災害を背景として物語は一つにまとまっていくかにみえます。 被災地住民とボランティアとの人間関係が印象に残りました。 でもストーリーがまとまりきれなかった中途半端な感は免れません。 多分チラシにも書いてあった手書台詞の醍醐味なのでしょう。 他人との付合いの少ない現代人は舞台の科白に興味が出ます。 しかし日常会話に小暴力を取り入れた口論の多いセリフは観ていて疲れ飽きます。 観客集中度が維持できるくらいの上演時間に縮めれば観後の良さが高まるのではないでしょうか。

■霊戯

■ 作:郭宝崑,演出:佐藤信・榮念會,出演:笛田宇一郎他 ■ 座高円寺,2012.10.11-14 ■ 戦争で命を失いその魂を語り合う鎮魂歌です。 伝統演劇の「能」や中国の「昆劇」?を取り入れています。 場所は戦場・墓地・刑場・・、苦しみのあるセリフは詩のように漂っていきます。 中国俳優は動きを、日本俳優は存在を重視しているようですね。 笛田宇一郎の存在感は十分ですが、能楽師の清水寛ニ、西村高夫はそれ以上です。 このような身体重視の舞台ですと能狂言の俳優が優位になるのでしょう。 そして見慣れない動作でも中国俳優が熟れているのがわかります。 場内で配られたプログラムを帰りの車内で読みました。 作者はシンガポール日本人墓地でこれを着想したそうです。 このような芝居は観客の想像力も試されます。 一部は劇と一緒に走れましたが、二部は科白も少なく眠くてどうしようもなかったですね。 *劇場、 http://za-koenji.jp/detail/index.php?id=725

■K・ファウスト

■ 作・演出:串田和美,音楽:COBA,サーカス:ジュロ ■ 世田谷パブリックシアター,2012.10.6-14 ■ 「ブランコで目眩がするようなら大人になった証拠」、・・どこかに書いてあった。 空中ブランコはみるだけでも目眩で一杯になるの。 それは子供時代の素敵な記憶の蘇りよ。 これはファウストとブランコの劇的な出会いの作品だとおもう。 でもファウストは若返ったけど出会えない。 サーカスが物語に溶け込んでいかなかったから。 音楽隊が入る難しい群衆の動きも検討の余地有りかも。 串田独特の楽しさと寂しさのある芝居ね。 小日向文世のカスペルは味があったし、ファウストの苦悩を笹野高史自身がそのまま受けとめていたのも面白かった。 C・ グノーのオペラ とA・ソクーロフの映画、そして今回で「ファウスト」は今年で3回目。 ソクーロフの「ファウスト」は彼のベスト3に入るくらい素晴らしい出来だったわ。 *劇場、 https://setagaya-pt.jp/theater_info/2012/10/k.html

■星屑のぴかル森

■ 出演:川本裕子,東雲舞踏 ■ 上野ストアハウス,2012.10.9 ■ 幕開前に花をつけた帽子を冠っての登場はとてもよかった。 影絵に続いて身体の一部が他者に置き換わったような激しい動きの舞台。 そして心地良い床や水や波の影と共に。 続いて頭巾とフリルの付いた白衣装の単調な踊りで幕が降りる。 序破急の逆を行く流れである。 しかしこの面白い構成を生かせなかった。 水辺まで緊張感があったが、最後の白衣装の場面は凡庸さが漂ってしまった。 この終幕で力を抜かずに創作していれば観客の拍手は倍になった。 ロビーに津波で倒れた気仙沼の木々で作られたオブジェが飾られていた。 今回の舞台と共鳴しているのを感じた。

■OUT OF CONTEXT-FOR PINA

■ 演出:アラン・プラテル、出演:LES BALLETS C DE LA B ■ 青山円形劇場、2012.10.3-5 ■ http://datto.jp/artist-alain-platel ■ ダンサー一人ひとりを見分けることができる舞台だわ。 自己紹介場面は無かったけど、亡きピナ・バウシュに捧げた作品と言われる由縁ね。 でも舞台は肉体そのものが溢れている。 ほんとうの肉体は綺麗とはいえない。 それは心の闇が肉体にへばりついているからよ。 ピナは「悲しみも、喜びもすべて解き放つ」けれど、プラテルは「その肉体にすべて閉じ込める」ようね。 観終わった時の解放感は精神ではなく肉体の解放。 ピナとは違う、暗く重たさのある解放感ね。

■籠釣瓶花街酔醒 かごつるべさとのえいざめ

■ 出演:中村勘三郎,阪東玉三郎,片岡仁左衛門 ■ 東劇,2012.9.29-(歌舞伎座,2010.2収録) ■ 素晴らしい構成とリズミカルな展開ですね。 四つの対話場面が物語のエンジンです。 権八と立花屋長兵衛の借金問答、権八と栄之丞の身請話、次郎左衛門と八ツ橋の別れ話、次郎左衛門と八ツ橋の再会。 この四場面には第三者が居てツッコミを入れ対話を面白くしています。 大詰め迄目が離せませんでした。 しかし終幕、八ツ橋を斬り殺す次郎左衛門の心の内がまったくわかりません。 既に次郎左衛門は八ツ橋を許していたのでは? この作品は8幕とのこと、そしてなぜ題名に妖刀の名が入っているのでしょうか? 省いた場面を覗かないと次郎左衛門の心情はわからないのでしょうか? それにしても片岡仁左衛門は格好いいですね。 そして花魁道中はパレードでは正に傑作でしょう。 *シネマ歌舞伎第18弾作品 *作品サイト、 http://www.shochiku.co.jp/cinemakabuki/lineup/20/

■夜叉ヶ池

■ 演出:宮城聰,出演:SPAC ■静岡芸術劇場,2012.9.29-10.6 ■ 人間と妖怪がジュワーと融け合うのが鏡花の面白いところ。 でもこの作品は両者の出会う場面が無い。 しかも物語のキーパーソン百合の印象が舞台で薄過ぎた。 彼女の子守唄が白雪姫の剣ヶ峰を諦めさせ、萩原を急遽家に引き返させたのに・・。 百合の声は透き通っているけど科白に広がりと深みがなかった。 また彼女の背景となった舞台上の住居が想像力の無い古さを持っていたため余計に彼女を目立たなくしてしまった。 舞台美術も感心しないわ。 物語の展開場面はいいけど打楽器は百合に合わない。 むしろ弦楽器ね。 夜叉ヶ池の妖怪たちのドンチャン騒ぎ、村人と萩原の喧嘩騒ぎ、これと同じ<強さ>の百合でないと物語は面白くならないとおもうけど、どうかしら? *CoRichサイト、 https://stage.corich.jp/stage/39820

■月に光るガラスの破片  ■愛憎渦中

*下記の□2作品を観る. ■タイニイアリス,2012.9.26-10.3 □月に光るガラスの破片 ■ 作・演出:伊立,出演:建木劇社 ■ 幕が開いてすぐに舞台上の日本語訳の表示が消えてしまった。 故障? 中国語のセリフでは理解できない。 現代劇は珍しいので何を喋っているのか知りたい。 残念! 音楽はタンゴやピアノが主で、役者はバレエのような動きも取り入れている。 ビナ・バウシュにヒントを得ているらしいがそのように見えない。 でも中国風から脱したい気持ちがでている。 役者たちが「日中友好」と書いた紙を持ってのカーテンコールだったがあまり気を使わないでもらいたい。 それよりもっと芝居を面白くしてくれ。 *劇場、 http://www.tinyalice.net/ □ 愛憎渦中 ■ 作・演出:ラディー,出演:劇団ING進行形 ■ 作品の一部だけを上演したような舞台である。 ストーリーがよくわからない。 娼婦と女主人とのやりとりも激しいだけで中身が無い。 ところで中央に位置していたコロスは目の動きが歌舞伎的で面白い。 身体の動きもシャープであった。 二本立ての上演だったがどちらも芝居を観た気がしない。 前者は翻訳機の故障、後者は中途半端な物語だったから。 *CoRich、 https://stage.corich.jp/stage/38263

■幻想の箱舟

■ 脚本:酒井一途,演出:岩渕幸弘,出演:ミームの心臓 ■ 荻窪小劇場,2012.9.26-10.3 ■ 箱舟に乗った主人公シャンスラードは、幸せではないが満足している乗客たちに出会う。 彼らはしかし何者かわからないが脅かされてもいる模様。 箱舟がどこへ向かっているか誰もが見えない状況で乗客たちの対立が激しくなっていく・・。 裏の意味を持っていない、とてもシンプルな科白です。 舞台はこれで役者たちをブレない姿にしています。 多くの議論にもかかわらず濃厚さが失われサッパリした芝居です。 音楽や照明はメリハリのある役者の喋り方と合っていました。 箱舟の中の不満や不安はそのまま現代の若者が置かれている状況です。 そして芝居が提出する答えもはっきりしていません。 箱舟が大地から離れていなかった終幕のオチも物語は始めに戻ってしまったことでわかります。 それでも箱舟に乗った意義はあります。 行きつ戻りつの議論をしながら前進するしかないのです。 そして脚本にサッパリ感を失わずにコクのある味付けができればまた一歩前進です。 *チラシ、 http://stage.corich.jp/img_stage/l/stage_reverse28553_1.jpg?1348787868

■セヴィリャの理髪師

■作曲:G・A・ロッシーニ, 指揮:M・ベニーニ,演出:B・シャー,出演:J・デドナート,J・D・フローレス,P・マッティ ■ 東劇,2012.8.25-9.28(MET,2007.3.24収録) ■ ロッシーニはいつも楽しさが一杯ね。 恋愛好色物語だけど開放感があるからよ。 ドアや木々、理髪店の装置移動はリズミカルだったし、アリアや重唱は歌手同士の親密さが加わり、しかもせり出し舞台で、一層の親近感をもたらしていた。 舞台の流れが崩れるようで崩れないのは演出の良さだわ。 「混沌をキープしろ!」とシャーが言ってたけど、キープの手段としてバルトロに着眼したのが面白い理由だったのね。 今回のMET アンコール上映での一番の収穫は演出家バートレット・シャーに出会えたことかも。 「 オリー伯爵 」 を観た時は脳味噌にビビッと来たわよ。 素晴らしい演出家ね。 だから「ホフマン物語」を見逃したのは悔いが残るわ。 *METライブビューイング2006シーズン作品 *作品サイト、 http://www.shochiku.co.jp/met/program/s/2006-07/#program_05

■浮標

■ 作:三好十郎,演出:長塚圭史,出演:葛河思潮社 ■ 世田谷パブリックシアタ,2012.9.20-30 ■ 舞台は海岸のように砂が敷き詰められている。 その周りは板で囲って椅子が置いてある。 役者達が椅子に座り出番を待っているが、衣装を着替える時などは外している。 4時間だからリラックスして観てくれ、と長塚圭史が幕開きに言っていた。 しかしあまりにも真面目な姿勢で椅子に座っている役者達や、久我五郎の叫ぶような台詞でリラックスどころではない。 激しいセリフが一幕・二幕と続くが、しかし、どうも眠くなってしまう。 尾崎との借金議論や比企との医学議論、そして美緒との神の議論が五郎の苦悩に結びついていかない。 それは聖母のような美緒が五郎の生への執着を避けているからだ。 五郎の議論では「生」が充実しないことがわかっているから。 圧倒的な「死」を前にしている「生」は誰もが避けられない。 しかしこの運命に縛り付けられてそのまま舞台に乗せているだけの作品ある。 「生」の執着しかみえない。 五郎は叫ぶ以外に方法がない。 遣る瀬無い芝居になってしまった。 *チラシ、 http://setagaya-pt.jp/theater_info/upload/file/bui_pm_pdf_dl_file.pdf

■マクベス

■作曲:G・ヴェルディ, 指揮:J・レヴァイン,演出:A・ノーブル,出演:M・グレギーナ,Z・ルチッチ ■ 東劇,2012.8.25-9.28(MET,2008.1.12収録) ■ 一幕は素晴らしかったわ。 魔女の「謎めいた予言」とマクベスの「不吉な予感」だけで物語が進んでいくの。 だから終幕迄にこの予言と予感を全て舞台で具現化しなければならない。 さすがノーブルかと観ていたけど、二幕はこの具現化が多過ぎて消化できず深みが出なかった。 マクベス夫婦の心の流れを捉え切れない。 これで二幕は自滅したのね。 軍隊と難民ばかりが目立ってしまったわ。 ノーブルが「権力者の登場と退場は中世でも現代でも同じだ」のような事をインタビューで言っていたけど設定を20世紀にしたのは正解。 マクベスの歌唱は伸びと張りがもう少し欲しかったわね。 だからマクベス夫人より観客の拍手が少なかったのよ。 *METライブビューイング2007作品 *主催者サイト、 http://www.shochiku.co.jp/met/program/s/2007-08/#program_03

■ラ・ボエーム

■ 指揮:N・ルイゾッティ,演出:F・ゼッフィレッリ,出演:A・ギオルギュ,A・アルテタ,R・ヴァルガス ■ 東劇,2012.8.25-9.28(MET2008.4.5収録) ■ 音質が少し悪いわね。 録音マイクが舞台から離れていた感じ・・。 オーケストラや観客の拍手は問題なかった。 マイクの方向を誤って設置したんじゃない? でもこの音質は実際の観客席から聞いている音に近い感じがする。 だからこの音で品質をあげれば最高だとおもうの。 最近の作品は舞台の上で聞いているようで遣り過ぎよね。 たとえば今シーズンの作品は音に広がりが無くて劇場にいる感覚がまるでないから困っちゃうの。 そしてゼッフィレッリの代表作と言われているけどもはや過去の栄光を引きずっているだけの演出ね。 面白みがまったく無い。 歌手が生きていない。 ムゼッタは良かったけど。 音質の悪さと演出の硬直さで楽しめなかったわ。 *作品サイト、 http://www.shochiku.co.jp/met/program/0708/

■記憶のドラマ依田洋一朗展

■感想は、 「 記憶のドラマ依田洋一朗展 」 *話題になるのはNYの劇場。

■クライシス百万馬力

■ 作・演出:米山和仁、出演:ホチキス ■ シアタートラム、2012.9.13-16 ■ http://setagaya-pt.jp/theater_info/upload/file/hotchkiss_pm_pdf_dl_file.pdf ■ まるでギャグ漫画をみているようだ。 張りのある叫ぶようなセリフや動き。 表面だけをなぞるストーリー。 脳味噌ではなく目や耳や皮膚で観るような舞台である。 観終わった時はひと汗かいたような後味だった。 それ以外は何も残らない芝居だ。 劇団は15周年らしい。 だから豪華にしたかったようだ。 これでキャバクラやホストクラブの連中がワンサと来ていたのか? お祝いの雰囲気に釣られて帰りにプログラムを買ってしまった。

■2012年METライブビューイング・ベスト3

・ ロデリンダ ・ ジークフリート ・ マノン *今シーズンのすべてを観終わったのでベスト3を勝手に選んでみたわ。 並びは観劇日順。  選出範囲は2011・12シーズンのアンナ・ボレーナ、ドン・ジョヴァンニ、サティアグラハ、ファウスト、エンチャンテッド・アイランド魔法の島、神々の黄昏、エルナーニ、椿姫と 上記ベスト3を含め計11作品が対象よ。

■サティアグラハ

■作曲:フィリップ.グラス, 指揮:D.アンゾリーニ, 演出:P.マクダーモット,J.クローチ, 出演:R.クロフト ■ 東劇,2012.8.25-9.28(MET,2011.11.19収録) ■ やっと観ることができて嬉しいわ。 去年の暮れは見逃してしまったからよ。 トタン板と新聞紙が20世紀初めの物と事を呼び寄せて南アフリカとインドを繋げている。 儀式のようであり祈りのようでもある舞台はグラスの音楽が融合して陶酔感が訪れるの。 三幕は少し単調過ぎたわ。 彼の音楽では<退屈>が一番の敵よ。 そしてセロテープのような細かい小道具を使うには注意がいるわね。 観客の神経をそれに集中させてしまうの。 演説が長すぎたキング牧師はオバマ大統領にみえてしまった。 一幕と二幕はしっかりまとまっていた。 「浜辺のアインシュタイン」とは違った角度と広がりが増している。 これで彼のオペラ三部作の最後「アクナーテン」が観れたら最高だけど。 でもちょっと無理かな。 *METライブビューイング2011シーズン作品 *作品サイト、 https://www.shochiku.co.jp/met/program/s/2011-12/#program_04

■ワタシんち、通過。のち、ダイジェスト。

■ 作・演出:藤田貴大、出演:マームとジプシー ■ 三鷹市芸術文化センター・星のホール、2012.9.7-17 ■ http://stage.corich.jp/img_stage/l/stage_reverse30028_1.jpg?1347578405 ■ 家を解体する話です。 その家族や隣人が家にまつわる歴史や人間関係を語っていきます。 しかし独特な舞台が現前します。 セリフを声に出す時にカラダもそれに合わせています。 これは他劇団でも見かけますが大げさどころかダンスに近い感じです。 しかもセリフを段落単位でデータ処理、つまり並べ替え・併合や結合・判断そして反復などの演算操作、を施しているのです。 この二つを持って舞台は進行しますが、徐々にエントロピーが増大するかのように崩れていきます。 つまり言葉と身体の演算操作とエントロピーの増大で劇的感動を求めようとしているようです。 この時煙幕が張られるのもこれを意識しているからです。 しかしこの感動は少し弱いようにみえますね。 理由は科白を発する役者の身体が華奢な為です。 役者が雑に喚き動いているだけ。 だから祖母の話や妹が家を出る時の決心などの精神面が目立ってしまったのです。

■ドン・ジョヴァンニ

■作曲:W.A.モーツァルト, 指揮:F.ルイージ, 演出:M.グランテージ, 出演:M.クヴィエチェン,M.レベッカ,B.フリットリ ■ 東劇,2012.8.25-9.28 ■ モーツアルトの世界がよく表れているわね。 曲が繊細だからオペラの面白さが独特なのよ。 叙唱が入っているから尚更そうかも。 でも盛り上がりに欠けてしまいダイナミックさも欲しいところね。 地獄へ落ちる場面は別だけど。 クヴィエチェンはモテそうで適役。 ジョヴァンニの裏側をもっと出してもいいけどオペラではこれ以上は難しいようね。 これだけの放蕩児なのに観終わったときの印象が静かなのはやっぱり彼もモーツアルトの手の上の悟空だったのよ。 *METライブビューイング2012年作品 *主催者サイト、 https://www.shochiku.co.jp/met/program/s/2011-12/#program_02

■アンナ・ボレーナ

■作曲:G・ドニゼッティ, 指揮:M・アルミリアート, 演出:デイヴィッド・マクヴィカー , 出演:A・ネトレプコ, E・グバノヴァ,I・アブドラザコフ ■ 東劇,2012.8.25-9.28(MET2011.10.15収録) ■ 真実は別としても誠実な歴史の舞台だった。 まるでシェイクスピアの役者が出てきそう。 ティラマーニはホルバインを参考にしたと言ってたけど衣装も素敵だったわ。 でもこの誠実さをネトレプコが壊してしまった。 アンナ役のネトレプコは歴史の匂いを感じさせないからよ。 彼女は別世界から16世紀英国に来たみたい。 体格もオペラ的というよりロシア的になってきたし。 ところでこの作品は政治的な話が一切でてこないところが凄い。 舞台だけをみているとヘンリー八世とアンは表面的な愛憎だけの関係なの。 だからドニゼッティの名声を確立した作品だと言われている理由がわからないわ。 19世紀初頭のヨーロッパは300年前のイギリスに興味があったのかしら? どの時代も愛と憎しみについてはわかるけど、この作品を観た当時の人の心の奥にはもう一つ別に感じるものがあったはずよ。 *METライブビューイング2011作品 *作品、 http://www.shochiku.co.jp/met/program/s/2011-12/#program_01

■フリル

■ 作・演出:広田淳一,出演:アマヤドリ ■ 王子小劇場,2012.9.8-17 ■ 白紐の幕は暖簾のような使い方でした。 暖簾の周りだけを役者が動きまわります。 だから舞台がとても窮屈。 案内係が後ろの席が観易いと口うるさく言っていた理由がわかりました。 このため乱舞時代のダイナミックさはありません。 科白主体の劇です。 少しばかり深く突っ込んだ日常会話が続きます。 ストーリは断片的ですがなんとなく繋がっているようです。 チラシにストーリーらしきものが載っていましたが外れっぱなしです。 女性同士の対話より男性のほうが面白さがあります。 レス同士よりホモ同士の話が面白いのと同じです。 でも途中眠くなりました。 役者も動きは良く興味ある話でも100分も続けば飽きます。 もっと集中と選択をさせて70分にしたらどうでしょう? 「けっこう、毎日は戦争だ」「で?なにがいいたいの?」は言い訳です。 ここから次の姿を紡ぎだす必要があります。 質の良い言葉と身体を持っているのですから。 ところで何で劇団名を変えたのか理由を忘れてしまいました。 *劇団、 http://amayadori.co.jp/past-stage/2012-09

■カルメン

■ 指揮:Y・セガン,演出:R・エア,振付:C・ウィールドン,出演:E・ガランチャ,R・アラーニャ ■ 東劇,2012.8.25-9.28 ■ 二幕の闘牛士の登場でやっと調子が戻った。 それまでは導入部の日常の風景が上手く描けなかったからよ。 舞台前面が兵隊の詰所のため後方の街が見えない。 群衆の動きも悪い。 しかもタバコ工場は地下?にあるなんて考えられない。 その後は持ち直した感じ。 ガランチャのカルメンは良かったわ。 黒い瞳じゃなかったけど。 股の傷や舌を見せたりなかなかやるじゃない。 ウィールドンの振付もね。 演出家エアはヤル気がでなかったのかな? インタヴューでも挨拶が無かったし。 ドン・ホセのアラーニャはちょっと性格が良すぎたわ。 しかも老母やミカエラという現実そのものを舞台に登場させているから、彼をカルメンに無理やり近づけたら少しばかりシラケてしまうよね。 感動がイマイチの原因かも。 でもこの原因でどの曲もスペインの寂しさが感じられていつ聞いても素敵なのよ。 *METライブビューイング2009作品 *チラシ、 http://www.shochiku.co.jp/met/news/2006-2012_Encore.pdf

■ランメルモールのルチア

■作曲:G・ドニゼッティ, 指揮:M・アルミリアート,演出:メアリー・ジマーマン,出演:A・ネトレプコ,P・ペチャワ,M・クヴィエチェン ■ 東劇,2012.8.25-9.28(MET,2009.2.7収録) ■ ドニゼッティはとても急いでいるようね。 幕が上がり5分後にはルチアとエドガルドの関係をすべて知ってしまうエンリーコ、次幕でも結婚誓約書を書いた途端エドガルドが登場するのも駆け足ね。 ドニゼッティは早く目的地へ行きたい! その目的地でストーリーのすべてを展開させるの。 エドガルドに「生きながら墓に入る」と言わせてしまうのも早く着きすぎてしまったからよ。 これも一つの物語展開方法として有りね。 エドガルド役はR・ヴィリャソンからペチャワに急遽変更になったようだけど残念。 ネトレプコとペチャワは「 マノン 」 の記憶が強すぎるのよ。 「狂乱の場」はネトレプコでは神経が太過ぎる。 ミスキャストだけどこれがオペラの面白いところかも。 *METライブビューイング2008年度作品 *MET、 http://www.shochiku.co.jp/met/program/s/2010-11/#program_08

■オリー伯爵

■作曲:G・ロッシーニ, 指揮:M・ベニーニ,演出:B・シャー,出演:J・D・フローレス,D・ダムラウ,J・ディドナート ■ 東劇,2012.8.25-9.28(MET,2011.4.9収録) ■ 一幕は喜劇が冴えていたわ。 リズムが良くてとスピードが有ったからよ。 でも二幕はスピードが落ちてしまった。 歌詞の反復が長かったためね。 でも久しぶりの面白い舞台だった。 衣装のデザインや色も最高ね。 これが登場人物達の笑顔を一層輝かせていた。 二幕は桃色同系色ばかりのエロチックさと尼僧の黒白を対比させ気が利いていたわよ。 それとMETではあまり登場しない歌手たちだからとても新鮮味があった。 ダムラウの貴族婦人はとても素敵ね。 夫々のアリアは物語の進行にピタリと合っていてリズムを崩さなかった。 全体はヘンデルを現代化したような感じを持ったわ。 舞台上に舞台を作って演出家?が登場するような劇中劇はオペラでは珍しいわね。 シャーがインタビューでモリエールを参考にしたと言ってたけど舞台が生き生きしていたのは演出が上手かった証拠ね。 *METライブビューイング2010年度作品 *作品サイト、 http://www.shochiku.co.jp/met/program/s/2010-11/#program_09

■ウイークポイントシャッフル

■演出:大歳倫弘,出演:ヨーロッパ企画 ■下北沢・駅前劇場,2012.9.1-3 ■このような芝居を「コント」というのでしょうか? 漫才をベースにして舞台に馴染ませたようなセリフです。 しかも重たく感じる意味も軽くさせてしまう関西系の乗りがあります。 母は亡くなり父が失踪し、・・残された4姉妹の話です。 なんと正体不明の「ザット」が彼女らを家から出さないようにしています。 そこへピザ配達人や保険調査員、失踪した父も4姉妹の家に現れます。 最後は宇宙人?が登場し幕となります。 ピザ配達人が4姉妹を騙しているのでは? 通信販売を論じたいのか? 父の娘達への愛情を表現したいのでは? ストーリーは有るのですが何が言いたいのかよくわかりません。 ウフウフ笑っていただけで終わってしまいました。 やはりコントですね。 *CORICHサイト、 http://stage.corich.jp/stage/38450