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■満ちる

■作:竹内銃一郎、演出:松本修、出演:すまけい、MODE ■座・高円寺1、2012.3.22-31 ■ http://stage.corich.jp/img_stage/l/stage26661_1.jpg?1409213995 ■前景に枠が掛かっていて映画を見ている感じね。 舞台上の机や椅子が規則正しく並んでいる。 老監督と娘の軸の周りに細かい話を集め過ぎてテレビのホームドラマのようね。 これらの理由で舞台に躍動感が無いのよ。 3.11の影響も。 でも老監督は生き生きしていてとてもいいわ。 キサイと呼ばれていたけど鬼才はパゾリーニよ! 小津や溝口の伝記を読むと強い拘りがあったようだから、この老監督の気持ちもわかる気がする。 B級の拘りだけどね。 老監督が死んだあとから舞台の澱みが消えてきた。 これはチラシにもあったけど演出家は作家を気遣っていたのよ。 終幕には気にしなくなってきた、でも時すでに遅し。

■疫病流行記

■脚本:寺山修司,演出:高取英,出演:月蝕歌劇団 ■ザムザ阿佐谷,2012.3.21-26 ■ずいぶんスローなテンポね。 スローだから物語の隙間がよくみえる。 物語と歌の間にも。 しかしその隙間から寺山ワールドへ飛び出せない。 劇団が疲れているようにみえる。 遠くへ行く力が無い。 だから舞台で解説も多すぎる。 寺山の大事なメッセージをマイクを使って役者が演説のように喋るのもシラケルし。 この国がペストに罹っていることを知らないことは問題、でも福島原発の話は現実に引き戻されてしまった。 疫病は面白いテーマだからいくらでも時空を飛ぶことができるのに。 北の無い羅針盤は南へ向かっても結局は元に位置に戻ってしまう。 舞台も同じ。 こんなのいやよ。 もっと遠くへ行きたい! *CoRichサイト、 https://stage.corich.jp/stage/35280

■Idiotードストエフスキー白痴よりー

■演出:レオニード・アニシモフ,出演:東京ノーヴイ・レパートリーシアター ■東京ノーヴィ・レパートリーシアター,2012.2.3-5.27 ■列車内の青白い光の中の二人を凝視してしまった。 集中できる幕開けである。 そして赤い炎の暖炉に投げ込まれた札束をガーニャが拾えないで失神する場面も息を呑んだ。 観客席が2列で奥行きのない舞台は斑のある暗い光で深さを出している。 小説を知らないとムイシュキンがラゴージンやリザヴェータ、アグラーヤから何故に信頼を得られるのかが不可解なはずである。 しかもセリフをつっかえるムイシュキンを見てセリフも覚えていないのか!とみてしまうだろう。 本当にセリフを閊えたのか? 感動した小説の映画化・舞台化を観るのはとても注意が必要だ。 過去に読んだ小説を思い出し舞台と重ね合わせて一層の感慨に浸ることも可能である、がしかし多くは最悪である。 読んで感動したら観ない、観て感動したら読まないのが原則である。 一部科白の喋り方が面白い。 心の思いをセリフに出す時、急に舞台から降りてしまったような日常的な喋り方になる。 これで観客も舞台から遠ざかってしまい緊張を戻すのに苦労する。 コンパクトにまとまっていてリズムのあるいい芝居だった。 *劇団、 http://tokyo-novyi.muse.weblife.me/japanese/pg560.html

■高野聖

■演出:石川耕士・阪東玉三郎,出演:阪東玉三郎・中村獅童 ■109シネマズMM横浜,2012.3.17-31 ■映画手法が良い方向に動いてくれないようです。 舞台が細かい描写に弱いのはわかりますが、山道の行脚はハイキングのようでシラケますし、夜更けの動物は想像力を萎れさせます。 なぜ舞台上演をそのままにしなかったのでしょうか? そして女が僧を畜生にしなかった本当の理由が見えてきません。 難しいところですが玉三郎の微かな笑顔が、獅童の言葉が停止したような無関心さが原因かもしれません。 いい線までいってるのですが。 翌朝に男の説明で僧は女の正体を知るのですが、この重要な語りの場面に深みがありません。 ここが全体から剥離しているようにみえるからです。 この正体の雰囲気が物語全体に広がっていなかったためです。 女と動物の関係がペットのような感じですし。 玉三郎は「観終わった後に小説を読んだ時と同じ感想が現れればそれでよい」と言ってましたが、やはり小説とは違った感動を追わないと舞台の良さがでないのではないでしょうか。 これら問題点をどう解決したらよいか考えてしまうような芝居でした。 *シネマ歌舞伎第17弾作品 *作品サイト、 http://www.shochiku.co.jp/cinemakabuki/lineup/19/#sakuhin

■フェーム

■監督:ケビン・タンチャローエン ■ http://www.mgm.com/ ■アラン・パーカーが怒っているようですね。 リメイクの件は聞いていなかったと。 それ以上にリメイク版は酷い内容です。 コクがありません。 学校の宣伝です。 広告を見ているようです。 残念です。

■エルナーニ

■指揮:M・アルミリアート,演出:P・L・サマリターニ,出演:A・ミード ■東劇,2012.3.17-23(MET,2012.2.25収録) ■エルナーニの登場はいつも突飛ね。 だから4幕すべてが起承が無くて転結だけのストーリーにみえるの。 4人の歌唱力は素晴らしいわ。 でも国王カルロとシルヴァの存在感が出過ぎてエルナーニが目立たない。 気弱な性格のせいかも。 エルヴィーラも声を除いてウドの大木のようだし、終幕二人が自死するのも理解できない。 これらが感動の少ない理由ね。 でも30歳ヴェルディの才能、特に老人の描き方など、はたいしたものだと感じる作品だわ。 一人の女に男三人が張りあって、しかも一人は国王だし、初演当時にヒットするのはわかる気がする。 当時の生活の中で観れば最高の娯楽作品ね。 *METライブビューイング2011作品 *作品サイト、 http://www.shochiku.co.jp/met/program/s/2011-12/#program_09

■耳のトンネル

■作・演出・音楽:糸井幸之介,出演:FUKAIPRODUCE羽衣 ■こまばアゴラ劇場,2012.3.19-19 ■オッパイオッパイと役者が叫んでいるのをみてNHKの子供番組かと思った。 人生のコンセプトアルバムを作成するらしい。 12人もの役者の歌と踊り(というか歌の振付)で小さな劇場ははち切れそうだ。 そしてとても楽しい舞台だ。 母との関係・異性への関心・ラジオドラマの宿題・海外旅行・初体験など人生の前半はリアルに描かれている。 物語は断片的だが歌や踊りと同期がとれていて心地よい。 しかし結婚後の後半は舞台の調和が崩れる。 夫婦生活や子供の誕生などに現実感がなくなってくる。 これを補うためか歌が多くなる。 終幕の旅行、そして山での遭難と死は別物語を取って付けたようなストーリである。 海外旅行へ行っても友達ができたかできないかの話をする。 初体験をしていること、オッパイよりお尻のほうがいいと言えること。 経験をとても重要視している台詞だ。 経験がなければ人生のコンセプトアルバムは作れないらしい。 なんとこれが現実舞台のリアルさに影響しているのだ! 後半がツマラナイのは経験の病にかかっているからだ。 それは自由より経験が大事だと思っているから。 芝居にツマラナさが有るとすればこの保守性にある。 *CoRich、 https://stage.corich.jp/stage/33399

■オルフェゴッコ

■作・演出:小池竹見,出演:双数姉妹 ■吉祥寺シアター,2012.3.15-20 ■竪琴ではなくて大相撲歴代優勝力士名をどれだけ暗記できたかで死んだ妻を取り戻すなんて凄い! いつの時代でも生と死の境界は人間にとって興味ある場所。 境界の半死者は意識が「立ち現れる」練習をして最後は主体と客体が分離できなくなり真の死者になっていく。 ある種の哲学的議論のようだけど? でも現代ではこれもゴッコになってしまうということね。 ところで秘書が社長を突き落とす理由がよくわからない。 彼女はマイナスなの? 量は多くないけど色々な言葉が漂っているだけの舞台に見えた。 観客が言葉をこねくり回して方向性を与えないと感動に辿りつけない芝居ね。 しばらく休むとチラシにあったけど英気を養ってまた登場して欲しいわ。 *劇場サイト、 http://www.musashino-culture.or.jp/k_theatre/eventinfo/2012/01/post.html

■春と修羅

■演出:岡本章,出演:鍊肉工房 ■赤坂レッドシアタ,2012.3.7-11 ■幕が開き真っ暗な舞台に微かな役者の姿を感じながらオノマトペを発するのを聞いていると言葉が生み出てくる瞬間に出会っているような感覚がおそってきます。 ・・しかし直ぐに七人のリズムある科白と動きには飛躍がありすぎる。   最後まで薄暗かったこともある。 途中ウツラウツラしてしまったようです。 だからこれ以上感想が書けない。 「まさに万物全てが消失した廃墟に不思議に浮遊する」感じで劇場を後にしました。 *劇団、 http://renniku.com/list/

■うれしい悲鳴

■作・演出:広田淳一,出演:ひょっとこ乱舞 ■吉祥寺シアター,2012.3.3-11 ■舞台には階段が三つ延びています。 全員で踊るには狭いのですが、これが制限となりセリフとダンスが空間的に緊密になり集中ある芝居が現前します。 20名強の役者が飛び回りますが整然としています。 照明もこの整然さを助長する切れ味です。 「感度」に着目してるようですがまったく気がつきませんでした。 量は少ないのですが活きのよいセリフはどれも感度十分です。 テロでエレベータに閉じ込められた新郎の身体感覚、緑帽新婦の友達訪問感情(最後は暴走!)は語りと対話の面白さです。 感度の話ではありませんが小劇場が苦手としている政治や職業観を取り込んでいるのも新鮮です。 移植用臓器での天皇と母親の違いも家族からみれば同じです。 組織とルールの関係も目的達成の為に他人の死を手段とするところが誤っています。 盛りだくさんの内容が腐敗分解せずにまとまっていくのも「全員で動く」結果にみえました。 ビールでいうと辛口で切れ味がよいアサヒスーパードライの芝居でした。 *劇団、 http://amayadori.co.jp/past-stage/2012-03

■サド公爵夫人

■演出:野村萬斎,出演:蒼井優 ■世田谷パブリックシアター、2012.3.6-20 ■一幕から二幕の間が6年、三幕では7年の歳月が流れる。 言葉だけで表現しなければならないこの歳月が、迫ってこない。 それはルネが歳を取らないためである。 ルネの歳は言葉の表面を滑っていくだけである。 終幕サドが訪ねてきた場面で時間が一気に進んだ、しかしサドだけの時間が。 力を持っているセリフを役者達が制御できないので身体を飛び出してしまい時間が舞台に淀んでしまっているからだ。 白石は日本の母さんだ。 だから違う世界にいる。 パリやヴェネツィアの母さんになって欲しかった。 白石と麻実が漫才のボケとツッコミにみえたのはこれが原因である。 若い4役者たちは身体の存在感が希薄だった。 セリフと身体の関係性をもっと突っ込む必要がある。 演出家の得意なところだし。 円形床と壁はセリフに集中できた。 セリフとの照明の明暗同期も面白い。 音響は馬の蹄以外にもメリハリがあってもいいのでは? *劇場サイト、 https://setagaya-pt.jp/theater_info/2012/03/post_268.html

■神々の黄昏

■作曲:R・ワーグナー,指揮:F・ルイージ,演出:R・ルパージュ,出演:D・ヴォイド,J・H・モリス ■東劇,2012.3.3-9(MET2012.2.11収録) ■カメラの位置が大きく変わったのね。 「 ジークフリート 」では背景の柱の束は刑務所の壁のようで酷かった。 舞台床を斜め上下から撮ることによって立体感がでてきたわ。 そして柱の束に写す映像に明るさがでたのも良くなった理由よ。 上演時間が5時間以上もある理由は一幕での回顧が長過ぎるから、ストーリーを思い出すのにはいいけど。 これで物語の流れがゆっくりになったのは確かね。 長時間でも疲れなかった。 一幕の終わりから終幕までは物語を引っ張っていく面白さもあったわ。 ヴォイドもモリスも安定感がでてきた。 高音域が少ないからよ。 ルイージがドイツ的な音を消すようにしていると言っていたけど、これは演出全体にいえることだわ。 火と水の世界の中でもジークフリートとブリュンヒルデが人間の大きさで死んでいったから愛される作品になれたと思う。 *METライブビューイング2011作品 *作品サイト、 https://www.shochiku.co.jp/met/program/s/2011-12/#program_08

■天守物語

■演出:成井市郎・坂東玉三郎,出演:坂東玉三郎,市川海老蔵 ■109シネマズMM横浜,2012.1.21-2.10(歌舞伎座,2009.7収録) ■とてもピュアな舞台です。 役者たちの背後に泉鏡花が隠れているようです。 玉三郎を初めてジックリみましたが、鼻の先が少し丸まっているのがいいですね。 これで女形が生きるのだと知りました。 図書之助の海老蔵は抑えて抑えていて最高です。 声が劇場空間を伝わって来るようで言葉の一つ一つが脳に響きます。 わらべうたのとおりゃんせもとても効いています。 このスレにもMETの感想が載っていますが、歌舞伎シネマを観るとMETの音響の悪さに気がつきます。 役者の声で劇場の大きさが分かるようでなければ良い音とは言えません。 METはオペラですからもっと技術をつぎ込んで欲しいですね。 数カ所編集しているようでしたが省かないで幕が開くところから上映して欲しい。 残念ながら舞台を映画に撮ったものは劇的感動はやってきません。 むしろ映画的感動というものかもしれません。 でもこの感動が有るのでしたら下手な芝居より楽しいです。 *シネマ歌舞伎第15弾作品 *作品サイト、 http://www.shochiku.co.jp/cinemakabuki/lineup/17/#sakuhin

■ピーター・ブルックとシェイクスピア  ■つかこうへいの70年代展  ■日活向島と新派映画の時代展

■感想は、 http://ngswty.blogspot.jp/2012/03/blog-post_2.html