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■鷹の井戸

■作:W・B・イェイツ,演出:梅若六郎,出演:梅若玄祥,森山開示,ヤンヤン・タン ■国立能楽堂,2010.6.26 ■梅若玄祥はさすがに存在感が有る。 森山開次の踊りもしなやかなまとまり方をしていた。 出演者は能舞台の本性から逃れることはできない。 骨と皮だけで目がギョロリンのヤンヤンタンは雌鷹が似合う。 しかし彼女の視線が定まらなかったのは能舞台の不慣れからだろう。 目の回りの化粧を控え目にしたらもっと安定した舞台に見えたはずだ。 素直な欲望の物語だから舞と謡をバネにして自由に想像の世界を飛び回ることができる作品である。 コラボの面白さが十二分に出ていた。

■夢の痂

■作:井上ひさし,演出:栗山民也,角野卓造,小林隆,福本伸一ほか ■新国立劇場・小劇場,2010.6.3-20 ■井上ひさし得意の、しかも日本人なら避ける「天皇ごっこ」の劇中劇だ。 それも観客が劇構造を意識していながらハマってしまう質の良さがある。  井上ひさしはあらゆるタイプの観客を無視しないで楽しませてくれる。 舞台も家の中の暗さと外の白い照明が日本の懐かしい夏を思い出させてくれる。 言葉の優位が過ぎる場面がある。 例えば文法の話は何回も出てクドイし、劇中劇を主語入替に強引きに対応さようとする。 しかし音楽が緩衝材になりそれを和らげてくれる。 最後まで戦争責任というテーマはブレていない、見応えのある三部作であった。 *NNTTドラマ2009シーズン作品 *劇場サイト、 http://www.nntt.jac.go.jp/play/20000213_play.html

■めぐるめく

■演出:桑原裕子,劇団:KAKUTAほか ■シアタートラム,2010.5.21-30 ■これも初めてみる劇団で楽しみにしていた。 会場に入ると表現主義映画にでてくるような変形がかった階段・ベンチ・壁・窓が青白く塗られていて期待が高まる。  俳優がよく歩くので心地良いリズムが舞台に出ている。 ただしストーリーがありきたりの家族劇を抜け出ていないので、もちろん起伏はあったが、これではテーマの質をより深めていかないと壁にぶつかるのではないか?  KAKUTAの意味がよくわからないが角ばっていたので男性的な芝居だと思いきや、演出も女性のようだ。 最初から家族劇を狙っていたことも後でパンフレットを見てわかった。 しかし家族劇の好きな人には当たり障りのない良い芝居かもしれない。 *劇場サイト、 https://setagaya-pt.jp/theater_info/2010/05/post_184.html

■アンダーグラウンド

■演出:タニノクロウ,出演:マメ山田,五十嵐操,上田遥,劇団:庭劇団ペニノ ■シアタートラム,2010.6.6-13 ■初めてみる劇団で楽しみにしていた。 「手術」は患者にとって異次元の世界だが医者からみればありきたりの日常世界だし健康者には無関心世界だ。 料理のしかたによっては面白い芝居ができると思う。 しかし時間が過ぎてもただ「手術」の演戯をしてるだけだ。 台詞もきわめて少なく会話の面白さも無い。 音楽も芝居と無関係に聞こえる。 だんだん失望が濃くなってくる。 グロテスクはかまわないが高校の文化祭のレベルで見世物小屋でおこなうような内容だ。 舞台を見ながら席に座っているのが嫌になってきてしまった。 帰りの世田谷線の車内でパンフレットを読んだら「手術というテーマの発想の勝利でいい意味で期待を裏切ってくれる」と阿部篤志が書いていたがしかし、悪い意味でと訂正したほうがよいだろう。 *劇場、 https://setagaya-pt.jp/theater_info/2010/06/post_188.html