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■シー・ラヴズ・ミー She Loves Me

■監督:デヴィッド・ホーン,作曲:ジェリー・ボック,演出:スコット・エリス,出演:ザカリー・リーバイ,ローラ・ベナンティ他 ■東劇,2020.12.25-2021.1.14(アメリカ,2016年) ■1930年代、ブタペストにある小さな香水店の日常を描く舞台です。 ・・街なかに小綺麗な店が建っている。 その店が展開していくと屋内の売場が現れ、さらに回転して裏部屋もみえる。 この凝った構造が場面切替を滑らかにさせミュージカルのリズムを壊さない。 登場する社長や社員たちの行動が驚くほど理に適っていますね。 従業員の採用や解雇、業務命令と評価、商品知識などに当時の小企業の姿がリアルに見えてきます。 レシートの長さで売り上げを予想する場面もある。 人間関係も同様です。 行動の理由と結果に納得できます。 出退社の挨拶など細かい所まで練られています。 それは仕事ばかりか日常にも言える。 スーツなどの衣装にも余裕がある。 店員同士であるジョージとアマリアは文通をしているが双方が文通相手だとは知らない。 出会いの古さから来る楽しさがあります。 出会い条件を評価する、たとえば「戦争と平和」「赤と黒」「魔の山」などの教養は少し押しつけがましいですが・・。  演技と歌唱、労働と恋愛など物語展開のすべてに目が行き届いていた。 小粒ながらブロードウェイの実力を見せつけられた作品でした。 *松竹ブロードウェイシネマ *映画com、 https://eiga.com/movie/90383/

■2020年ライブビューイング・ベスト10

 □ アクナーテン   演出:フェリム.マクダーモット,歌団:METメトロポリタン歌劇場 □ パリ・オペラ座ダンスの饗宴   舞団:パリ・オペラ座 □ スモール・アイランド   演出:ルーファス.ノリス,劇団:NTナショナル・シアター □ アグリッピーナ   演出:デイヴィッド.マクヴィカー,歌団:METメトロポリタン歌劇場 □ 夏の夜の夢   演出:ニコラス.ハイトナー,劇団:NTナショナル・シアター □ Lost Memory Theatre   演出:白井晃,劇場:KAAT神奈川芸術劇場 □ ダークマスターVR   演出:タニノクロウ,出演:庭劇団ペニノ □ 偽義経冥界歌   演出:いのうえひでのり,出演:劇団☆新感線 □ じゃじゃ馬ならし   演出:イヴォ.ヴァン.ホーヴェ,劇団:ITAインターナショナル.シアター.アムステルダム □ 赤鬼   演出:野田秀樹,劇団:NODA・MAP  *並びは上映日順。 当ブログに書かれたライブビューイング(舞台を撮影し配信又は映画上映)から選出。 *「 2019年ライブビューイング・ベスト10 」

■2020年舞台ベスト10

□ 鶴かもしれない2020   演出・出演:小沢道成 □ サイレンス   作曲・台本・指揮:アレクサンドラ・デスプラ □ 少女と悪魔と水車小屋   演出:宮城聰,劇団:SPAC □ 少女仮面   演出:杉原邦生,出演:若村麻由美ほか □ 亡霊たち、再び立ち現れるもの   演出:毛利三彌,劇団:CAPI □ 夏の夜の夢   演出:レア.ハウスマン,指揮:飯森範親 □ フィガロの結婚、庭師は見た!   演出:野田秀樹,指揮:井上道義 □ M   演出:モーリス・ベジャール,舞団:東京バレエ団  □ アルマゲドンの夢     演出:リディア・シュタイアー,指揮:大野和士 □ 外地の三姉妹   演出:多田淳之介,劇団:東京デスロック *並びは上演日順。 当ブログに書かれた作品から選出。 映画(映像)は除く。 *「 2019年舞台ベスト10 」

■外地の三人姉妹

■原作:アントン・チェーホフ,翻案・脚本:ソン・ギウン,演出:多田淳之介,翻訳:石川樹里,出演:伊藤沙保,李そじん,亀島一徳ほか,劇団:東京デスロック ■神奈川芸術劇場・大スタジオ,2020.12.12-20 ■舞台は1930年代朝鮮北部。 最初は慌てたけど「三人姉妹」にしっくり来る時代と場所に思える。 チェーホフに出会えた!と言える舞台は少ない。 でも今日の舞台はチェーホフに届いたという達成感があったわよ。 「東京へ帰りたい!」「生きなくちゃ!」。 言葉を越えて迫ってきた。 それは時代風景が荒々しく描かれていたこともある。 特に日本兵に存在感があった。 日韓合同作品の成果の一つかしら。 映像説明が過剰だったが90年前だから仕方ない(?)。 舞台中央には居間、奥に中庭、客席前には素焼き色をした陸軍鉄帽や歩兵銃、楽器やキーボードなど数十の置物が散らばっているの。 この均衡ある舞台美術は終幕が近づくにつれて片づけられる。 でも置物の効果はあったようにはみえない。 置物に目が行き届かなったからよ。 姉妹の長男福沢晃の登場場面にはびっくり。 彼はどうしようもないアウトサイダーね。 次女昌子と中佐磯部史郎との恋愛もなかなか激しい。 異化効果のようで物語を活き活きとさせていた。 朝鮮舞踊(?)で幕が下りるのも良し。 今日のような舞台に出会うとチェーホフを改めて好きになってしまうわね。 *日韓合同作品,KAATx東京デスロック作品 *劇場、 https://www.kaat.jp/d/ThreeSisters2020

■プライベート・ジョーク

■作・演出:野木萌葱,出演:井内勇希,植村宏司,小野ゆたか,加藤敦,西原誠吾 ■東京芸術劇場.シアターイースト,2020.12.4-13 ■舞台は近頃の美術系大学の学生寮らしい。 特別講義にノーベル賞受賞者が招かれている!?。 ・・場所は日本ではないようです。 検閲の話題で時代も今ではないことがわかってくる。 後半になり闘牛場へ行くことで場所はスペインで決まりです。 ドイツ人らしき物理学者はアインシュタインかな・・? そして有名画家はピカソ! では映画作家は?詩人は?そしてもう一人の若い画家は誰でしょう? 彼らの作品名が一つも登場しないので分からない。 「ゲルニカ」らしき話は後半に登場しますが。  深刻な時代のようですが、そうみえない。 どこか学生演劇のようなシンプルなリズムを持っている。 これが深刻さを抑えている。 時間の進みが不規則で可逆なところもある。 演出家が「思わずに」書いた作品だと言っていますね。 このリズムが「思わずに」書いた成果でしょう。 学生寮という場所で再会する再会群像劇です。 自ずと青春群像に変わっていく。 劇団主催者でもある詩人は最期に死刑になってしまう。 演出家は詩人と自身を重ねたのかもしれない。 「この作品を最後に劇団化へ踏み切る・・」。 詩人を引き継いだのですね。 登場人物の歴史上の名前は最期まで分からなかった。 そしてタイトルも謎のままです。 *パラドックス定数第46項 *劇場サイト、 https://www.geigeki.jp/performance/theater252/ *2020.12.14追記・・不明の3人が分かりました。 詩人はガルシア・ロルカ、映画作家はルイス・ブニュエル、画家はサルバドール・ダリのようです。

■シラノ・ド・ベルジュラック

■作:エドモンド・ロスタン,演出:ジェミー・ロイド,出演:ジェームズ・マカヴォイ ■TOHOシネマズ日本橋,2020.12.4-(プレイハウス・シアター,2019年収録) ■白枠で周囲を強調した舞台には椅子とマイクしか置いていない。 役者たちは普段着で登場したが時代は1640年。 ヒップホップ系のノリもあり、椅子取りゲームのような動きが面白い。 大きな鼻を持つべきシラノが素顔で登場するのは初めてでしょう。 彼を眺める時は肉体を離れて言葉に集中できます。 ロクサーヌの詩への入れ込みようは半端ない。 詩作ができないと肩身が狭い。 クリスチャンの存在感が消え失せてしまいましたね。 ここまで詩作優位を誇る作品でしたっけ? ロンドンとパリの違いを意識していたことから、パリへの対抗心のためシェイクスピアの国としての詩作を強調したのかもしれない(?)。 後半は照明も役者の動きも緩くなる。 ロクサーヌが戦場に来ること自体に無理がある、いつも観ながらこう思ってしまいます。 クリスチャンへの肩入れ理由をシラノは「俺は詩に取りつかれた狂人さ!」。 でも取り持ち役はやはり侘しい。 NTLナショナルシアターライブを気にしているとロンドンの演劇状況がわかります。 奇想天外なシェイクスピア作品はともかく、今回は特に美術や小道具、役者の動きなどに大胆な試みがあり、大鼻を含めた身体に対する差別への抵抗も強く感じられました。 *NTLナショナル・シアター・ライヴ作品 *映画com、 https://eiga.com/movie/93604/

■幸福論、現代能楽集Ⅹ「道成寺」「隅田川」より

■作:長田育恵(隅田川),瀬戸山美咲(道成寺),演出:瀬戸山美咲,出演:瀬奈じゅん,相葉裕樹,清水くるみ,明星真由美,高橋和也,鷲尾真知子 ■シアタートラム,2020.11.29-12.20 □道成寺 ■橘家の父・母・息子3人は職歴・学歴たぶん財産も申し分ない。 世間では成功者とみられそうだ。 彼らもそう確信している。 3人は無意識に高慢となり他人の幸せや生き方が分からないし許せない。 しかし所詮は種として似た肉体・精神を持つ者同士だ。 弱みは誰でも持っている。 その弱みを他者から言われたくない。 貶し蔑みした相手から反撃を食らい結局3人は退場する・・。    このような優越感の欠片を持つ人は数多いる。 人の振り見て我が振り直せ、と言われているような舞台である。 □隅田川 ■3人の女の生き様を縄に撚っていくようなストーリーである。 そこに母娘関係、堕胎、人工妊娠、介護老婆等々を煉り込んでいく。 男の身として弱い所を突いてくる内容だが背景に男女不平等がみえる。 先の「道成寺」は原作との関係がよく見えなかった。 この「隅田川」は母と子供(ここでは胎児)との再会が胸に滲みる。 しかし幸福とは何だろう? 2作品の切り口は違うがどちらも社会問題が詰まっている。 観ながら自身のことから世間のありようまで考えてしまった。 現実に引き戻される舞台に弱い。 このような作品は避けているのだが・・。 *劇場、 https://setagaya-pt.jp/performances/202011koufukuron.html

■村のドン・キホーテ

■演出:田中泯,松岡正剛,出演:田中泯,石原淋ほか,チェロ演奏:四家卯大ほか ■東京芸術劇場.プレイハウス,2020.12.4-6 ■松岡正剛とのコラボらしい?、これは観に行くしかない! ・・舞台は木柱の家が建ち張りぼて馬が歩き回り張りぼて飛行機が飛ぶ。 赤や白の布を上手に使って嫌味の無いスッキリした美術だ。 久しぶりにみる踊りは親しみ易くなっている。 静かに横たわる身体は乾いた存在感が出ていた。 その後の動きある振付はドン・キホーテを重ねるせいか緊張が薄れていく。 呼吸と動きが一致していて雑念を感じさせない。 ステップを踏む場面は気持ちがいい。 ダンサー石原淋に科白はあるが少ない。 言語演出松岡正剛とチラシにあったので台詞はもっと饒舌になるのかと思っていた。 気が抜けてしまった。 でも、これで良い。 演出家二人の写真が並べられていたが、似ている。 ヒゲもそっくりで兄弟のようだ。 「互いに三十歳をすぎたとき、意気投合した。 以来、ずっと・・」。 似るのも無理はない。 2年前、この劇場で観た「 ・・形の冒険 」以来である。 時間を解き放ったと書いたがそれは過去、今日の舞台は未来を解き放ったと言ってよい。 感動は少なかったが身体が軽くなった。 カーテンコールの挨拶では山梨や師匠(土方巽)を語る。 途中チェロ演奏が入ったが強すぎてダンスを越えてしまった。 タイミングは休憩前奏曲? そして、張りぼて馬がとてもよく出来ていた。 おたふく面も日常性を上手に消していた。 *劇場サイト、 https://www.geigeki.jp/performance/theater262/

■太平洋食堂

■作:嶽本あゆ美,演出:藤井ごう,出演:劇団メメントC,「太平洋食堂を上演する会」 ■座高円寺,2020,12.2-6 ■1911年の大逆事件で起訴された26人のひとり大石誠之助を主人公とした舞台です。 ここでは大星誠之助と名乗る。 最初に登場した若い牧師は語部でした(主人公だと勘違)。 物語りはバルチック艦隊撃破、ポーツマス条約締結のニュースを聞きながら戦争の時代の真っ只中へ落ちていきます・・。 大星はアメリカ帰りの医者ですが料理もできる。 それが彼のレストラン「太平洋食堂」です。 食堂に集まる人々が活き活きと描かれていますね。 当時の階級や差別を乗り越えた会食場面が見所でしょう。 そして<レシピ>という言葉が大星の口からよく発せられる。 ここに彼の思想の鍵があるのかもしれない。 幸徳秋水と平民社を全面で支持しているのですが、何を考えているのか分からなくなる場面が時々ある。 彼が医学と料理、アメリカ=自由主義と社会主義が混ざり合った人物だからでしょう。 作家獄本あゆ美の舞台はこれで2本目です。 最初に観た「 安全区、堀田善衛より 」もそうでしたが、彼女は僧侶を登場させ語らせるのが巧い。 この舞台でも浄土真宗僧侶高萩懸命が仏教型社会主義と言えるような行動を取り大星を補足します。 僧侶の実名は高木顕明ですか。 同時上演の「彼の僧の娘ー高代覚書」にも登場する(?)ようですがこちらは都合がつかない。 そして事件逮捕後の大審院場面で被告弁護士は「動機信念説」を批判するが大星は死刑、僧侶は獄中自殺で幕となってしまう。 主人公大星は一つの思想に固執するのではなく幾つもの選択肢を考え、悩んでいたようにみえました。 いくつものレシピをです。 *劇場サイト、 https://za-koenji.jp/detail/index.php?id=2371

■シェイクスピア「ソネット」

■演出:中村恩恵,首藤康之,出演:米沢唯,首藤康之 ■新国立劇場.中劇場,2020.11.28-29 ■舞台はとても暗い。 思っていたシェイクスピアとは違う雰囲気だ。 3場から構成されている。 「シェイクスピアの真・善・美を具現化したい・・」。 それは愛の姿を描いた作品らしい。 ソネット集(?)からの短い台詞が場の初めにある。 そこは首藤康之が喋る。 彼は剛体的筋肉質にみえる。 もう一人の米沢唯はさすが肉体を軽やかに消している。 二人はアンバランスだが良いのか悪いのか分からない。 意味ある複雑な動きが疲れさせる。 ダンスを観る喜びは少ない。 しかし2場後半から慣れてきた。 広い中劇場を巧く使っていた。 照明でエリアを区切り物語の連続性を容易にしている。 再々演*1だが演出家はこの作品に拘っているようにみえる。 しかしシェイクスピアでも私の知らない世界のようだ。 ちょうど1年前、この劇場でみた「 ベートーヴェン・ソナタ 」は年末の忙しさがでていた。 今年はコロナ禍のためかもしれない。 忙しさは見えない。 *1、「 シェイクスピア「ソネット」 」(2011年),「 シェイクスピア「ソネット」 」(2013年) *NNTTダンス2020シーズン作品 *劇場サイト、 https://www.nntt.jac.go.jp/dance/shakepeare-sonnets/ *「ブログ検索」に入れる語句は、 中村恩恵

■コーカサスの白墨の輪

■作:ベルトルト・ブレヒト,演出:レオニード・アニシモフ,劇団:東京ノーヴイ・レパートリーシアター ■梅若能楽学院会館,2020.11.28-29 ■舞台は淡々と進んでいきます。 とても淡泊だが能を真似ているので違和感が少ない。 でも模倣にバラツキがあるので奇妙な場面はあります。 強いて真似る必要は感じられないが、しかし面白さは出ている。 衣装も舞台に溶け込んでいました。 原作は読んでいません。 上演2時間半の長さから原作に忠実な舞台のようです。 戦争、特に亡命の苦難が細かい描写にも色濃くでている。 舞台は何度か観ているがここは再発見ですね。 ブレヒトを重ねてしまった。 もう一つ、裁判官の歌唱が楽しい。 裁判中に酒をグビクビやるのは頂けないが。 能が絡むと物語に流れる時空が乾いた色になる。 それは詩に近づくようです。 *劇団、 http://tokyo-novyi.muse.weblife.me/japanese/pg564.html

■アルマゲドンの夢

■原作:H・G・ウェルズ,台本:ハリー・ロス,作曲:藤倉大,指揮:大野和士,美術:バルバラ・エーネス,衣装:ウルズナ・クドルナ,出演:ピーター・タンジッツ,セス・カリコ,ジェシカ・アゾーディ他,演奏:東京フィルハーモニー交響楽団 ■新国立劇場.オペラパレス,2020.11.15-23 ■H・G・ウェルズは芸術系SF作家とは言えない。 オペラにするとどうなるのかしら? しかも夢の話に彼は弱いはず、この作品はそれらしいが。 タイトルも漫画のようで粗筋を読んでも珍紛漢紛だわ。 ・・なるほど、独特な雰囲気の舞台に仕上がっているわね。 無調のような演奏に不安が漂っている。 歌唱もその線に沿っている。 映像の多用もその雰囲気を支持している。 全体の不気味な統一感が何とも言えないわね。 主人公クーパーの夢の中の話らしい。 彼が「アルマゲドンの夢」を見るということなのね? でも夢と現実の境界は定かではない。 その中で妻ベラとの日常場面が素敵ね。 社会活動へ向かうウェルズらしい展開がより不協和音を奏でる。 それはサークルという政治組織の登場よ。 <ストームトルーパ>のような彼らの姿がオペラを忘れてしまう。 まさに「来るべき世界」の前触れを描いた作品になっていく・・。 でもウェルズSFをまとめ切ったのはオペラの総合力だとおもう。 なんとも言えない味わいが残った。  ジワッ、と後から効いてくる気がする。 *NNTTオペラ2020シーズン作品 *劇場サイト、 https://www.nntt.jac.go.jp/opera/armageddon/

■M

■振付:モーリス・ベジャール,音楽:黛敏郎ほか,出演:柄本弾,宮川新大,秋元康臣,池本祥真ほか,舞団:東京バレエ団,ピアノ演奏:菊池洋子 ■神奈川県民ホール,2020.11.21 ■演劇を感じさせるバレエで楽しかったわよ。 三島小説を思い出させてくれるから。 しかも音楽に能を使う場面が多い。 このためダンサーが空間を流れるように動けない。 鼓のリズムは踊り難い。 振付は逆にコンテンポラリー風に近づいていくのね。 弓道や鹿鳴館舞踏会、金閣寺などの小道具や小説中の人々とダンサーの立ち位置が絶妙なの。 場面各々が絵になっていて素晴らしい。 空間バレエと言っても良い。 舞台上手に黒板がありそこに「死」の文字をチョークで1画数づつ書いていく。 うーん、これは良くない! 文字は意味を引き寄せ舞台の流れを瞬断するから。 折角の美術の良さが薄くなってしまった。 書かなくても死の気配は表現されていたのに・・。 潮騒の浜を少年ミシマが祖母と歩く姿で始まりこれで終わる、三島由紀夫らしい流れだった。 少年は全幕に登場、そして作家の分身4名がその周囲で踊る・・。 ダンサーたちの出来栄えは満点だったわよ。 *三島由紀夫没後50周記念公演 *劇場サイト、 https://www.kanagawa-kenminhall.com/detail?id=36809 *「ブログ検索」に入れる語句は、 三島由紀夫

■un

■脚本・演出:一宮周平,出演:佐藤竜,辻本耕志,中前夏来ほか,劇団:PANCETTAパンチェッタ ■シアタートラム,2020.11.19-22 ■食事と排泄がなくなった未来を描いています。 でも食事も排泄もしたい! そういう人々が登場する。 でもこの行為には罰則がともなうらしい。 だから隠れてする・・。 登場人物の一人が焼いてきたナンを、周囲に憚りながら、皆が貪り食う。 「un」はunkoのウンですか? ナンにもかけているのかなぁ? ナンを見たときウンコ塗れの下着かと勘違いしました、ウハッ! 綺麗な話にならないのは分かりますが、それよりもストーリーが盛り上がらない。 パンを作ったが膨らまないという感じです。 途中のダンスにも乗れない。 それは・・ 長い台詞が中途半端な文語調だからでしょう。 哲学書の一部を抜粋してきたように聞こえる。 特に存在・価値・行為など硬い単語が耳に引っかかりました。 もう一つ、人物たちの縮こまってしまう台詞が多い。 罰則はわかりますが家族の縛りが気になりました。 「母さんが言っていたから・・」。 「両親がやってはいけないと言っていたから・・」。 舞台の流れが切れてしまう。 つまらない動機です。 縛りから解放されていた姉の直感的行動は冴えていましたが。 それよりも排泄や食事は舞台に馴染まない。 生身の身体が演ずるので気を抜くと日常に戻ってしまう。 この挑戦に迷いがあった(ようにみえる)。 以上が膨らまなかった3点です。 舞台美術と照明は逆にどっしりしていてストーリーとの折り合いに苦労しました。   *第6回世田谷区芸術アワード”飛翔”舞台芸術部門受賞記念公演 *シアタートラムネクスト・ジェネレーションvol.13 *劇場、 https://setagaya-pt.jp/performances/next13.html

(中止)■Knife

■演出:小野寺修二,出演:大庭裕介,梶原暁子,崎山莉奈ほか,舞団:カンパニーデラシネラ ■神奈川芸術劇場.大スタジオ,2020.11.21-29 ■「・・予定しておりました「Knife」は、劇場が定期的に行う新型コロナウイルス感染症のPCR検査の結果、出演者に陽性反応が確認され、公演開催の準備が整わないため、当該期間の全公演を中止とさせていただきます・・」。 こういうことが当分続くかもね。 チケ購入後の中止は累計29本目。 振替公演はスケジュールが合わない。 *劇場サイト、 https://www.kaat.jp/d/Knife *「ブログ検索」に入れる語句は、 小野寺修二

■マキム!

■演出・出演:伊藤キム,森下真樹,舞団:フィジカルシアターカンパニーGERO,森下スタンド ■東京芸術劇場.プレイハウス,2020.11.13-15 ■伊藤キムと森下真樹が「めぐりあう、ダンスの環」になって「カラダとコエとオンガクと」を奏でる舞台のようです。 1幕は演出家二人のデュオ。 科白に重きを置いているようにみえる。 短い言葉に擬声語擬態語を織り交ぜて二人は動き回る。 海外都市のことなどを即興のように喋っていく・・。 ダンサーが声を出すとダンスが疎かになってしまう。 意味ある言葉はダンスを遠ざける? 声を出した瞬間、意味や音は身体から離れてしまうからだと思います。 でも伊藤キムは言葉を己の身体に巧く絡めていました。 彼は「身体・声・言葉が自由に響き合うことを追求」しているようです。 その成果が出たのでしょうか? 2幕はGEROと森下スタンドの両舞団11名が登場です。 両者を観るのはたぶん初めてかな? 笑える科白は身体に留まり易いですね。 後半はダンスに専念していく。 勢いがあって気持ちがいい。 コロナ禍では映像が多いのですが生舞台でみるダンスは最高です。 *TACT FESTIVAL2020 EX タクト・フェスティバル スピンオフ公演 *劇場サイト、 https://www.geigeki.jp/performance/theater257/

■赤鬼

■作・演出:野田秀樹,出演:夏子,大山廉彬,河内大和,森田真和ほか ■東京芸術劇場.WEB配信,2020.11.13-30(東京芸術劇場.シアターイースト,2020.7.27収録) ■今、WEB配信する理由がよく分かる。 共同体の掟、その内と外そして境界、他者との交流など現代社会の動向に深く関わっている作品だから。 それは字幕を付けて世界に発信する・・。 床は白、役者衣装も白でシンプル、その動きは軽やか、科白は単刀直入で分かり易い。 カーテンコールの挨拶から観客席は四方にあるのが分かる。 客席は映像ではよく見えない。 閉じた共同体では重み有る言葉「やりたい!」「やっていない!」が多くて耳障りだった。 でも身体に絡みつかないから性は抽象に向かう、・・役者たちは言葉のダンサーのように。 物語構造は最初に終幕場面を持ってくるウロボロスにしているの。 鬼(=他者)を殺す行為が未来も続くことを暗示している。 作品は世界仕様で出来合いは略パーフェクトと言ってよい。 *劇場サイト、 https://www.geigeki.jp/performance/theater240/ *「ブログ検索」に入れる語句は、 野田秀樹

■じゃじゃ馬ならし  ■オープニング・ナイト

■東京芸術劇場.プレイハウス,2020.11.6-8(2009,2010年収録) □じゃじゃ馬ならし ■原作:W.シェイクスピア,演出:イヴォ.ヴァン.ホーヴェ,出演:ハンス.ケステング,ハリナ.ライジン他,劇団ITA(インターナショナル.シアター.アムステルダム) ■「ローマの悲劇」公演中止は残念でした。 代わりがこの映画ですか。 舞台記録映像ですがそうは見えない。 編集がけっこう入っているからです。 ・・ビール箱が運び込まれるところから始まる。 パトヴァ商人のじゃじゃ馬娘カタリーナにヴェローナの紳士ペトルーキオが求愛するストーリーだが、ハイネケンを飲みながらの役者たちの演技は乱痴気騒ぎそのものです。 カタリーナの八つ当たりはモテモテの妹ビアンカに嫉妬していたのでしょうか? 父を含めた家族から解放されたいが為のヒステリーにみえる。 ペトルーキオの前に立つと動きも言葉も少なくなってしまったからです。 彼女の行動は素直すぎる。 しかもペトルーキオとの間には愛というものが育っていかない。 彼女がロボットのようにみえてしまった。 ペトルーキオの命令調の台詞もカタリーナの心まで届いていない。 これはどうしたことか!  しかし舞台パワーは全開ですね。 二人の愛はどうでもよい? ところでペトルーキオが観客に喧嘩を売るような場面がある。 客にまぎれた役者でしたがちょっと驚きました。 小劇団ではよくあるのですが・・。 そして妹ビアンカは姉より曲者ですね。 求婚者も妹と似た者同士というのがこの舞台の面白い所でしょう。 妹の行動は当に地獄の祝祭です。 ともかく刺激的な内容だったので次上映の「オープニング・ナイト」も観ることにしました、主人公二人への不満も少し残った為です。 *劇場サイト、 https://www.geigeki.jp/performance/theater259/ □オープニング・ナイト ■原作:ジョン.カサヴェテス,演出:イヴォ.ヴァン.ホーヴェ,出演:エルジー.デ.ブラウ,ヤコブ.デルヴィグ他,劇団ITA ■初日を向かえる劇団の舞台裏を描いた作品です。 いやー、混乱しました。 舞台上に客席があり本物の観客が座っている。 そこで役者たちは稽古はもちろん劇中の本番も演ずる。 つまり目の前の演技が劇中劇中劇のどのレベルにいるのか

■紫気東来ービック・ナッシング  ■汝、愛せよ

■東京芸術劇場.映像配信,2020.11.6-8(東京芸術祭,2019年) □紫気東来-ビック・ナッシング ■作・演出・出演:戴陳連ダイ・チェンリエン ■自宅のパソコンで観る。 影絵芝居のようだ。 音声障害かな? PCを調べていたがそうではなかった。 そのうち作者自身がスクリーン前方で効果音を作る映像と共に音が聞こえてきた。 小道具をスクリーンに近づけ影絵の一部にしたりもする。 酉陽雑俎(ゆうようざっそ)という唐代昔話と作者の子供時代の思い出を重ね合わせた作品らしい。 全てが手作り手作業なので20世紀初頭の中国のようにみえる。 作者が舞台上で右往左往している様子を劇場で直にみないと面白くないだろう。 *東京芸術祭ワールドコンペティション2019最優秀作品賞受賞 *劇場サイト、 https://www.geigeki.jp/performance/theater255/ □汝,愛せよ ■作:パブロ・マンジ,演出:アンドレイーナ・オリバリ,パブロ・マンジ,出演:ガブリエル・カニャス,カルロス・ドソノ他,劇団ボノボ ■2本目だが同じくPCで観る。 ボノボはチリの劇団らしい。 チリとは珍しい。 舞台は会議室のようだ。 医師たちが議論をしているが白衣は着ていない。 科白に多く出てくる「アメニタス」が何か分からなかった。 ウサギも登場するので南アメリカのトリックスターかもしれないと勝手に想像してしまった。 しかし差別問題を扱っているのは確かだ。 解説をみてわかる。 「地球外生命体アメニタスが難民として地球にやってきた話だが、彼ら差別的な扱いをする医師も少なくない・・」。 差別意識の内面を描いていくストーリーはなかなか面白い。 しかしSFまで取り込むとは。 遠いチリが余計遠くなってしまった。 それにしても自宅で配信芝居を観るのは身が入らない。 *東京芸術祭ワールドコンペティション2019観客賞受賞 *劇場サイト、 https://www.geigeki.jp/performance/theater256/

■ダブルファンタジー、ジョン&ヨーコ

■感想は、「 ダブルファンタジー、ジョン&ヨーコ 」

■フィガロの結婚、庭師は見た!

■作曲:W.A.モーツァルト,指揮:井上道義,演出:野田秀樹,出演:ヴィタリ.ユシュマノフ,ドルニオク綾乃,小林沙羅,大山大輔ほか ■東京芸術劇場.コンサートホール,2020.10.30-11.1 ■これは楽しい! 2幕に入りリズムもシンクロしてきて終幕まで一気通貫だった。 歌唱は日本語から次第にイタリア語が多くなっていくけど時々日本語が混ざるの。 この流れは自然体のよう。 伯爵を中心にした騙し合いが此れ程まで男と女の核心に迫っていくとは驚きね。  会場はコンサートホールのためオーケストラピットが無い。 客席を利用したので指揮者と楽団の動きがよくわかる。 歌手と演奏のタイミングも肌で感じることができた。 途中、役者と指揮者の掛け合いが入ったが同じ位置づけがいいわね。 オペラにピットはいらない。 演奏者は観客からもよく見えるように考えて欲しい。 ところで、終幕に炬燵と土鍋がでてきたけど、これはちょっとやり過ぎじゃないかしら? 特にオペラは本筋から離れた小道具で失敗することが多い。 一瞬のあいだ日常に戻されてしまうからよ。 演出家もここまできて集中力が落ちてしまったのかしら? 突飛なことを考えないで素直に進めればよかったと思う。 これ以外は、カーテンコールでは野田秀樹も登場して盛り上がったし、パーフェクトだったわよ。 *東京芸術劇場30周年記念公演 *東京芸術劇場シアターオペラvol.14 *劇場サイト、 https://www.geigeki.jp/performance/concert212/

■エレファント・マン THE ELEPHANT MAN

■作:バーナード.ポメランス,翻訳:徐賀世子,演出:森新太郎,出演:小瀧望,近藤公園,花王おさむ他 ■世田谷パブリックシアター,2020.10.27-11.23 ■何が言いたいのかよく分からない舞台だった。 幾つかの科白を聞き逃してしまった為かな? 主人公ジョン・メリックが息を引き取った後、医師フレデリック・トレヴェスの悩む理由が伝わってこなかったこともある。 観後に演出家の解説を読んで少しは納得できたが・・。 主人公のケンダル夫人への性衝動が医師ドレヴェスの規律信仰に背むいたことは確かだが、自助共助に加え公助がはっきりとしてきた時代の医師の判断と受け取ってよさそうだ。 それは救貧法などイギリス福祉制度を含めた社会の転換期が舞台から感じ取れたからである。 「ロミオとジュリエット」の愛の問題、芸術とプラトン主義、トーマス・ハーディの紹介など二人の対話を聞くとメリックは結構な読書家だ。 天国を信じる時の態度や表情も彼を無垢から遠ざけている。 もはや時代は無垢を許さない。 らい病と比較する場面もあったがメリックの遺伝学的疾患は伝染病とは違い見世物小屋などの対象になるのだろう。 身体的差別を喜劇にする時代は現代と違い開放的にもみえる。 1880年代の舞台は日本なら明治時代に入ったばかりだ。 制度の破壊と構築が進む雰囲気は感じられたが方向性の無い舞台にみえた。 ツギハギだらけのこのブログは私の方向性の無さにあるのだが・・。 ところで主人公の顔に布袋をかける場面ではデヴィット・リンチの同名映画を思い出してしまった。 メリック役小瀧望は素顔で口元や手足を曲げて演技をしていたがとてもよかった。 エレファントマンを熟せる体格も持っていた。 観客に若い女性が多かったが彼の贔屓筋かな? *世田谷パブリックシアターx東京グローブ座 *劇場サイト、 https://setagaya-pt.jp/performances/201011theelephantman.html *「ブログ検索」に入れる語句は、 森新太郎

■偽義経冥界歌 にせよしつねめいかいにうたう

■作:中島かずき,演出:いのうえひでのり,出演:生田斗真,りょう,中山優馬ほか,劇団☆新感線 ■東劇,2020.10.24-(2020年制作) ■「 けむりの軍団 」はタイトルも内容もモヤモヤした出来だったが、今回はビビッと感じるものがあったので即観ることにした。 はたしてタイトルを裏切らない面白さだった。 義経そして偽義経が早々に死んでしまうという期待を裏切る驚きが前半にあり、後半には死者として甦りケジメをつけてから成仏するという驚きの死と再生の物語が置かれている。 「源義経黄金伝説」「中尊寺藤原4代ミイラ」は勿論のこと、秀衡の思想と行動は「ハムレット」の亡霊や悪鬼羅刹に変身していく「魔界転生」に通ずる。 大陸の王となる「義経成吉思汗伝説」、弁慶と伴にする僧「常陸坊海尊不死伝説」への想像も止まない。 舞台を飛び越える楽しさが溢れている。 歌が冥界の扉を開ける鍵になるのがとてもいい。 それにしても生き返った死者たちに勢いがあり過ぎる。 死と生の境界線から大きく離れると単なるゾンビ映画になってしまうからだ。 しかし舞台の躍動感でこれを跳ね除けるのが新感線の力だろう。 国衡の積極思考には枯れた雰囲気が入り混じり味が出ていた。 黄泉津方や北条政子の女の強さが骨格を支えていた。 そして遮那王牛若役早乙女友貴の殺陣はスピード感があり神経組織を喜ばせてくれた。 久しぶりに楽しめた。 *ゲキXシネ2020年作品 *ゲキXシネ、 http://www.geki-cine.jp/niseyoshitsune/

■ドン・キホーテ

■音楽:レオン.ミンクス,振付:マリウス.プティバ他,美術.衣装:ヴャチェスラフ.オークネフ,照明:梶孝三,指揮:冨田実里,演奏:東京フィルハーモニー交響楽団,出演:柴山紗帆,中家正博ほか ■新国立劇場.オペラパレス,2020.10.23-11.1 ■2020年シーズン開幕、しかも吉田都新監督初めての舞台。 でも前期引継ということで無難な選択かしら? この作品は物語の緊張感が無く華やかな踊りを楽しむようにできているからよ。 主人公の老騎士は硬直した舞踏スタイルでストーリーもそれに沿って温(ぬる)いし・・。 配役をみると今日のキトリとバジルはソリスト柴山紗帆と中家正博のようね。 主役では初めての名前かな? はたして、キビキビした新鮮な動きで堅実にこなしていた。 堂々とした演技はこれからだわ。 もっと体力を付けなきゃ。 プリンシパルが脇役で登場していたが三歩あるく姿でそれとわかる。 やっぱ貫禄が大事。 それにしても1幕から舞台はここぞとばかりのダンサーで一杯だわ。 総出演という感じがする。 カーテンコールで新監督が挨拶してもよい雰囲気だったけど・・。 *NNTTバレエ2020シーズン作品  *劇場サイト、 https://www.nntt.jac.go.jp/ballet/donquixote/

■真夏の夜の夢

■原作:W.シェイクスピア,潤色:野田秀樹,演出:シルヴィウ.プルカレーテ,出演:鈴木杏,北乃きい,加治将樹,矢崎広ほか ■東京芸術劇場.プレイハウス,2020.10.15-11.1 ■野田秀樹とプルカレーテが競い合って相殺されてしまったようね。 野田の科白がいつものように飛び跳ねないし、プルカレーテのメフィストが迷走している。 コロナ禍で映像場面を多くした為か集中力が滞る。 劇中劇にした結婚式の終幕も異化されなかった。 そぼろ、ときたまご二組の恋人たちは動きが軽かったけど・・。    近頃の「夏の夜の夢」は格段に進歩して面白い舞台が多かったのに残念だわ。 「スカーレット・プリンセス」が上演できなくて、いくらでも変身できるこの作品を急遽選択したような内容だった。 プルカレーテの次回作に期待しましょう。 *劇場サイト、 https://www.geigeki.jp/performance/theater245/

■月光露針路日本 つきあかりめざすふるさと

■原作:みなもと太郎,演出:三谷幸喜,出演:松本幸四郎,市川猿之助,片岡愛之助ほか ■新宿ピカデリー,2020.10.2-(歌舞伎座,2019.6収録) ■三谷幸喜演出の舞台は初めて観るの。 映画は「清須会議」くらいかな? 好みが違う演出家とみていたから。 でも新聞や雑誌に載る彼のエッセイやインタビューは欠かさず読んでいたわよ。 舞台はシラケが入り混じる雰囲気から始まった。 「日本に帰りたい」の声が初めから強過ぎるからだと思う。 でもアムチトカ島を脱出してからエンジンがかかってきたようね。 帰郷途中で死んでいく仲間も次々と現れるし・・。 博物学者ラックスマンが登場したときは三谷幸喜だと勘違いしちゃった。 顔かたちや眼鏡が似てるからよ、八嶋智人だと後で知ったけど。 そして遥かサンクトベテルブルまで行きエカテリーナ(市川猿之助)に謁見とは驚き!ここは一番の見せ場ね。 終幕近くの船頭光太夫(松本幸四郎)と庄蔵(市川猿之助)の別れは心に響いたわよ。 それにしても「これは歌舞伎でも映画でも漫画でもない」と演出家が言っているように、どのジャンルにも属さない、掴みどころのない舞台に感じられた。 漫画を原作にしていることもある。 それより歌舞伎自身が変化しているからよ。 歌舞伎ではない生舞台を観ないと演出家三谷幸喜の姿は見えない。 *原作は歴史ギャグ漫画「風雲児たち」 *シネマ歌舞伎第36弾 *シネマ歌舞伎、 https://www.shochiku.co.jp/cinemakabuki/lineup/44/

■ダークマスターVR

■原作:狩撫麻礼,演出:タニノクロウ,出演:FOペレイラ宏一朗,金子清文,日高ボブ美,庭劇団ペニノ ■東京芸術劇場.シアターイースト,2020.10.9-18 ■ゴーグルを付けて観る作品が多くなった。 (ゴーグルを付け映像内の主人公となった私が)下町の洋食屋に入る場面から始まる・・。 ・・(私は)食堂主人にコロッケ定食を注文したらしい。 主人は調理した料理をカウンターに置くと私は(内なる身体の手が伸びて)勝手に食べ始める。 突飛だが、彼は私に店を継いで欲しいと言い出す。 私は了解したらしい。 主人はレシピをそっと教えるため私の耳に小さな通信用スピーカを挿入する。 この方法をスタッフは議論したと思う。 私の声をどうするか?幾つかの案があるからだ。 以後、私は食堂主人からの声を心の声として聞くことになる。 つまり私の身体は食堂主人に乗っ取られたともいえる。 私は食堂店員として客に料理を造り続ける・・。 店は繁盛したらしく気が付くと目の前には札束が置いてある。 酔いにかまけて私はデリヘルを呼び女と束の間を楽しむ・・。 そこで映像が終わる。 いやー、楽しいが居心地の悪い夢を見ていたようだ。 特に食堂主人が顔を近づけてくる場面、デリヘル嬢が顔を近づけてくる場面は思わずのけ反ってしまった。 原作に忠実だけあって昭和時代の雰囲気が漂っていた。 (私が)調理している場面では料理の匂いまで感じてしまったほどだ。 ゲームではよくあるが、ヴァーチャル内の私の位置づけをどこに据えるかで多様に展開できる。 特に私の内なる声と外への声をどうするかが見せ所だろう。 *東京芸術祭2020芸劇オータムセレクション *庭劇団ペニノ創立20周年 *劇場サイト、 https://www.geigeki.jp/performance/theater249/

■プレゼント・ラフター Present Laughter

■作:ノエル・カワード,演出:マシュー・ウォーカス,出演:アンドリュー・スコット他 ■シネリーブル池袋,2020.10.9-(オールド・ヴィック劇場,2019収録) ■スター俳優ギャリーの私生活を描いた作品とある。 彼の自宅客間に元妻・秘書・家政婦そして仕事仲間や熱烈ファンが出入りし次々と騒ぎが起こっていくの。 「チェーホフの話は止めてくれ!」。 ギャリー役アンドリュー・スコットの精力的演技で筋力のある笑いが続く。 話題がシリアスで言語的解決を求めるので深みがでている。 諄い場面もあるくらい。 彼のゲイ仲間も登場するがこの線に沿っている。 ギャリーの孤独は仕事疲れからかしら? 私生活で舞台以上の演技をしているからよ。 このようなコメディは日本では作り辛い。 ともかくギャリーを助けたい! この雰囲気が舞台に広がっているわね。 そして元妻との和解で終わる。 キツイけどホッとする作品だわ。 ところでキティ・アーチャーの演技は笑っちゃった。 *NTLナショナル・シアター・ライヴ2020作品 *映画com、 https://eiga.com/movie/92342/

■リチャード二世

 ■作:W.シェイクスピア,訳:小田島雄志,演出:鵜山仁,出演:岡本健一,浦井健治,中嶋朋子ほか ■新国立劇場.中劇場,2020.10.2-25 ■古びた簀子の舞台は「 ヘンリー四世 」「 ヘンリー五世 」で木材を積み上げた痕跡にみえます。 役者の衣装、手に持つ旗にもそれが甦る。 時代が遡っていくにも係わらず荒涼になった未来の風景が現れる。 舞台で演じられた順序がそのまま物語の順序になるのがシリーズの持つ面白さでしょう。 タイトルロールの通り主役の為の科白と演技で一杯ですね。 リチャード役岡本健一もこれに答えてくれた。 声は響いていたしリズムも良い。 対するボリングブルックはこれに鋭く噛み合ってほしかった。 台詞の巧さで決まる作品ですが、リチャードの独白と他役者たち巷の会話がしっくり溶け合わなかった。 それでも科白に酔えた場面は多々ある。 シェイクスピアは振幅や波形が違っても波長を合わせると酔えるところがいいですね。  *NNTTドラマ2020シーズン作品 *劇場、 https://www.nntt.jac.go.jp/play/richard2/

■君の庭

■作:松原俊太郎,演出:三浦基,出演:安部聡子,石田大,小河原康二ほか,劇団:地点 ■KAAT神奈川芸術劇場.大スタジオ,2020.10.1-11 ■大きな雛壇に役者4人が座り一人が壇を押しながら舞台上をグルグル回る仕掛けになっている。 録音しておいた声を取り混ぜた台詞劇に近い。 その科白は訛りも有りいつものリズムも少なく聴き辛い。 天皇を論じていることは分かるが流れが追えない。 こういう舞台はカタルシスも訪れず疲れる。 「群像」が置かれていたがこの状態では読む気がでない。 しかし天皇を考えながら観たのは確かだ。 SEXや糞もする生身の体を持つ一人の人間としての天皇を恭しく持ち上げる社会が不思議だ。 天皇(制)は一つの宗教に違いない。 これを強要されたくはない。 憲法改正がよく話題になるが、国家から天皇(制)を分離すること、憲法から天皇(制)の文言を削除するのが先ずは取るべき順序である。 これで凝り固まっている日本人は裸の民主主義を初めて知ることになり天皇の苦喜も解放される。 *KAATx地点共同制作第10弾 *劇場サイト、 https://www.kaat.jp/d/chitenkiminoniwa

■馬留徳三郎の一日

■作:高山さなえ,演出:平田オリザ,出演:田村勝彦,羽場睦子,猪股俊明ほか ■座高円寺,2020.10.7-11 ■・・しかし誰が認知症か分からない。 新型コロナの無症状と同じだ。 若者は若年性認知症にされてしまう。 ボケと無症状ボケ(?)の漫才のような流れが続く。 途中、トリオ漫才も入るので観客から笑いが絶えない。 ボケが入ることで嘘と真の距離が激しく動く。 ここが面白い所だ。  騙し合いが長く続くので後半は判断停止状態になってしまった。 馬留夫婦が高校時代に戻り野球試合のデートを申し込んで幕が下りるが、混沌を絞り込むのが遅かったようにみえる。 ところでシーケンスを繋ぐ野球の実況中継はとても効いていた。 10年後の日本はこのような風景が日常化するのでは?と思うと楽しい不安を感じる。 ボケ観客も増えそうだ。 役者だと思い込み舞台に上がってしまう客もいるだろう。 *青年団プロデュース公演 *尼崎市第7回「近松賞」受賞作品 *F/T フェスティバル/トーキョー連携プログラム *日本劇作家協会プログラム *劇場サイト、 https://za-koenji.jp/detail/index.php?id=2363

■夏の夜の夢

■原作:  W.シェイクスピア,台本:ベンジャミン.ブリテン他,作曲:ベンジャミン.ブリテン,指揮:飯森範親,演出:レア.ハウスマン,美術:レイ.スミス他,出演:藤木大地, 平井香織,河野鉄平ほか ■新国立劇場.オペラパレス,2020.10.4-12 ■オベロンの一声でびっくり! なんとカウンターテナーなの。 これが妖しげな夜の世界を連れてくるから楽しい。 演奏が歌詞歌唱に寄り添いながら物語を進めていく。 原作原点に戻ったような舞台だわ。 シェイクスピア後期三部作に繋がる静かさを持っている。 この感覚は久しぶりね。 近頃の「夏の夜の夢」はどれもとても騒がしいから。 そして恋人二組の四重唱は盛り上がり劇中劇の素人芝居も本流から離れて異化が効いていた。 美術は高層建築残骸の横に古びた家具や椅子、剥製の虎や骸骨などが置いてある。 ユベール・ロベールの絵を思い起こさせるような古い時間が漂う。 まるで都市遺跡で演じているみたい。 近未来の話は飛躍かしら? 衣装の多くは夜の設定で目立たない。 オペラは8カ月ぶり、しかもこの作品のオペラは初めてなの。 呼吸リズムにマッチしたせいかジワッと心地よさが来てしまった。 そして日本語オペラに最適だと思った。 招聘キャストが入国出来ず日本人に代わったこともある。 原作が生きているので歌手の母語で歌っても映えるはず。 今回の舞台は思い切って日本語にしたら最高だったかもよ↑ *NNTTオペラ2020シーズン作品 *劇場サイト、 https://www.nntt.jac.go.jp/opera/a-midsummer-nights-dream/

■All My Sons

 ■作:アーサー・ミラー,翻訳.演出:詩森ろば,出演:神野三鈴,大谷亮介,田島亮,瀬戸さおり他,劇団:serial number ■シアタートラム,2020.10.1-10 ■劇場に活気が戻ってきて嬉しい。 しかし前後左右が空席のため満席だが100人位の客しか入っていない。 ・・ケラー家の自宅がみすぼらしく建っているが、2階の一部が火事跡のように削ぎ落ちている。 そして庭には道路のような滑走路のような灰色の道が延びている・・。 この作品をみるのは2度目である*1。 舞台が進むごとに記憶が追いかけてくる。 それにしても科白量が多い、特に後半は。 英語版だと聞き逃しや字幕の短さから科白量が減ってしまう。 この為か今回はケラー父母と息子クリスの性格がとても粘っこく感じてしまった。 戯曲は読んでいないが翻訳が修飾過多にもみえる。 いや、この舞台がアーサー・ミラーに近いのだろう。 でないと粘り気のある「セールスマンの死」に繋がっていかない。 それにしても家族3人それぞれの行動の納得感、特に充実感が終幕になって少し欠けたように感じる。 母の信じる深さ、父の行動の迷い、クリスの正義感などの科白が互いに微妙に馴染んでいかない。 これもミラーに近づいているのか? ところで近所の子供が登場したが父との遣り取りに思わず微笑んでしまった。 シェイクスピアの舞台は作者のことを考えず自由に観てしまうがミラーの観劇数はずっと少ない。 これで翻訳や演出や役者たちと作者の関係を考えてしまうのだろう。 *1、「 みんな我が子 」(演出ジェレミー・ヘレン,劇団:NTナショナル・シアター) *劇団サイト、 http://www.serialnumber.jp/allmysons.html *「ブログ検索」に入れる語句は、 詩森ろば

■銀河鉄道の夜2020

■原作:宮沢賢治,脚本:能祖將夫,音楽:中西俊博,美術:小竹信節,歌:さねよしいさ子,演出:白井晃,出演:木村達成,佐藤寛太,宮崎秋人ほか,演奏:新澤健一郎ほか ■KAAT神奈川芸術劇場.ホール,2020.9.20-10.4 ■歌を聴いたとたん小中学生用の舞台だと気が付きました。 子供に向かって歌っているかのような発声・振付の為です。 原作が童話だから当たり前ですが・・。 観客も二十歳頃の女性が8割を占めている。 大劇場でこの作品を観るのは初めてです。 子供たちの虐めがギスギスしていたのは舞台が広いからでしょう。 役者の動きが大きいので微妙なところが表現できない。 これが<幸い>に結びついていかない。 「まことのみんなの幸いのために」が急に出てきたようにみえてしまった。 でも後半の「蠍の火」あたりから盛り上がりましたね。 大きな振子と黒衣装の乗客が登場した場面では劇団「万有引力」を思い出してしまった。 もちろんオドロオドロしさは有りませんが。 小竹信節の舞台美術と聞いて納得です。 アメユキは淡々とした歌唱にしたほうが原作は活きたのではないでしょうか? そして役者たちも歌ってほしかった。 ところでジョバンニとカンパネルラは風貌も衣装も同じで混乱しました。 この作品は何度か舞台を観ています。 いつも過去を振り返り未来を思ってしまう。 生と死の境界線で演じられる作品は何故こんなにも心動かされるのでしょうか? *劇場サイト、 https://www.kaat.jp/d/gingatetsudo2020

■バッコスの信女ーホルスタインの雌

■作・演出:市原佐都子,音楽:額田大志,出演:川村美紀子,中川絢音,永山由里恵ほか ■神奈川芸術劇場.大スタジオ,2020.9.24-27 ■牛の生殖は人工授精のため雌と雄が一度も交じり合わない。 家畜業に携わっていた主人公の主婦の面白い経験談が続くのでついつい耳を傾けてしまう前半である。 牛から人のセックスへ脱線もする。 そこへ牛とヒトの仲介役ケンタウロスを登場させ、雌牛たちの合唱隊も加わり、性と生殖の格闘が展開される・・。 牛ばかりかヒトの性も生殖も管理されてしまっているのではないのか?と、考えさせられる場面が多い。 女の性と生殖は社会の掟に雁字搦めにされている、と暴き出すかのようにペニスのようなクリトリスを付けたケンタウロスが転げまわる。 主人公も専業主婦に納まり牡牛の射精で使う生殖器具のアイロンと同じになってしまった。 セックスは止められない。 ジワッジワッと、女の怨念のようなものが滲み出てくる舞台だ。 この雁字搦めを粉砕したい!と。 女の性を雌まで射程にいれての激しい舞台だったが、冷凍精液の雄は脇役をも転げ落ちてもっと惨めな未来が待っていそうだ。 性差を縮めることがリスクを下げる時代なのかもしれない。 *第64回岸田國士戯曲賞受賞 *劇場サイト、 https://www.kaat.jp/d/Q_theBacchae

■Lost Memory Theatre

■構成・演出:白井晃,原案・音楽:三宅純,テキスト:谷賢一,振付:森山開次,演奏:三宅純ほか,歌手:リサ・パピノー,勝沼恭子,出演:山本耕史,美波,森山開次,白井晃,江波杏子ほか ■(KAAT・ホール,2014.8収録) ■見逃してしまった一本だったの。 配信だけど今観ることができて嬉しい。 演出家白井晃、KAATでの初プロデュース公演よ。 彼得意の音楽・ダンス・演劇でまとめた力の入った作品にみえる。 ストーリーに<思い出>ではなく<記憶>を持ってくると舞台が重厚になるわね。 思い出だと感傷的になってしまう。 映像ではよく分からないけど、市松模様の白黒の床と金色のアーチ、明暗差の照明が年季の入ったダンスホールに舞台を変身させ、そこに村井純の演奏と歌、ロマンテック・チュチュを着た4人のコロスが踊り、断片化された記憶が生き返り物語として進行していく・・。 うーん、生舞台を観たかった。 記憶の中を彷徨う主人公(山本耕史)の衣装が場違いにみえたのは残念。 子供っぽさを無くすため暗いよれよれのスーツにしたほうが似合ったわよ。 そしてもう一人の主人公の女(美波)の笑いで現実に引き戻されてしまった。 昇華した笑いにした方が良いかもね。 *KAAT神奈川芸術劇場開館10周年記念企画 *劇場サイト、 https://www.kaat.jp/d/LMT_OL *劇場サイト(2014)、 https://www.kaat.jp/d/l_m_t

■Reframe THEATER EXPERIENCE with you

■ 監督:佐渡岳利,舞台演出・振付:MIKIKO,出演:西脇綾香,樫野有香,大本彩乃(Perfume) ■シネクイント,2020.9.4-18(渋谷公会堂,2019年収録) ■パフュームのメジャーデビュー15周年舞台映画です。 過去から現在までを振り返り未来を見つめるストーリーのようです。 しかし舞台背景を被う映像でパフューム3人はその中へ沈んでしまった。 その映像は幾何学模様が多くストーリーに馴染まない。 しかも3人のアップは一度も無く振付もはっきりしない。 映像と音楽だけが浮き上がってしまった。 やっと終幕3曲目から映像無しの舞台になり一息つけました。 照明は出演者を引き立てますが強い映像は脇へ追いやります。 これがモロにでてしまった、・・生舞台を観ていないので何とも言えないが。 カーテンコールで3人の挨拶がありました。 結成後20年も経っているのでもう少しマシな挨拶をしてもらいたいですね。 新しくなった渋谷公会堂は未だ行っていない。 なかなか良さそうなホールに見えました。 *映画com、 https://eiga.com/movie/93501/ *「ブログ検索」に入れる語句は、 MIKIKO

■夜会、リトルトーキョー

■作詞.作曲.演出.出演:中島みゆき,渡辺真知子ほか ■イオンシネマ,2020.7.23-(TBS赤坂ACTシアター,2019収録) ■編集で切り刻まれてしまった作品にみえる。 舞台は北海道のホテルから新橋の料亭そして再び北海道へと変遷していく。 でもストーリーがハチャメチャなの。 何人かの歌手が登場するけど、中島みゆきもその一人になってしまい目立たない。 メドレー風のためかジックリ聴かせてくれない。 科白や振付は子供番組と言ってよい。 夜会がこんなにも変わってしまったのは信じ難い。 作者の<若返り>それとも<老化>? どちらになってしまったの? イオンシネマも大音量で耳栓が必要ね。 先日購入した109シネマズ用を持っていたから助かったわ。 どちらも耳栓は手放せない。 *夜会VOL.20作品 *映画com、 https://eiga.com/movie/92665/ *「ブログ検索」に入れる語句は、 中島みゆき *追記・・ブログのレイアウトを変更したけどどうかしら? クリック数(=タップ数)が多くなってしまった。 画面が深くなってしまったということね。 Bloggerの出来合い部品を使ったから自由がきかないの。 これ以上の変更はもう無理。 匿名ブログだから広告は入れなかったわよ。

■殺意、ストリップショウ

■作:三好十郎,演出:栗山民也,出演:鈴木杏 ■シアタートラム,2020.7.11-26 ■ナイトクラブのダンサー緑川美沙が登場し過去を語りだす。 ・・上京した彼女は兄の勧めで社会学者山田先生の家に身を寄せ、そこで同居している先生の弟・徹男を知る。 ほどなく徹男は戦死してしまう。 戦後の混乱のなか美沙はダンサー兼娼婦として生活していくが、兄や徹男とは違う山田先生の表裏のある生き方をみて彼女自身の人生を見直していく・・。 というストーリーで中身の長い劇中劇になっている。 実は途中で、なぜ美沙が山田先生に殺意を抱いたのか肝心の場面を見逃してしまった。 気が付いたら彼女は先生を殺そうとしている。 先生は戦前がマルクス主義者、戦中は国粋主義者、そして戦後は再び共産主義者としての表の顔を持っている。 いつの時代にも若者達から熱烈な支持を得ているらしい。 そして裏では娼婦を追い求め淫らな行為を続けている。 美沙も徹男の戦死を知った日に先生から凌辱を受けている・・。 自宅に戻り、早速WEB文庫で殺意を持った箇所を探しました。 そこには先生の思想や人生観に従って死んでいった兄と徹男の惨めな死、先生の勝手な現在までの人生、この断絶からくる憎しみの発生が書いてあった。 納得しましたが、しかし戯曲は別物です。 つまり徹男の美沙への存在感が薄かったことで殺意を見逃してしまったようです。 それよりも劇場に戻って終幕のクライマクスに行きましょう。 美沙は先生と娼婦の逢引場面を盗み見しているが、そこで娼婦が痔を患っていたのを知る。 先生が娼婦を治療している真剣な姿を見て美沙は今までの考えを改めるのです。 娼婦に対して先生が取る対立する行動態度は一人の人間に同居するのは当たり前だということ悟るのです。 それは性器と肛門から国粋主義と共産主義にまで広がっていく。 美沙はストリップダンサーであり娼婦が持つであろう肉体的感覚から悟りを得たようにみえる。 これは舞台から受けた印象です。 美沙が持つ素直さもある。 そして彼女は他者から解放され<自由>になり幕が下ります。 独り舞台のためか観客との距離がとても近い。 コロナで客数が半分ですから余計にそれを感じます。 しかし満州事変や真珠湾攻撃など背景が何故か身体に迫ってこない。 役者鈴木杏の裏の無い喋り方のためか「歴史」になってしまった。 それでも作者と役者の

■けむりの軍団

■作:倉持裕,演出:いのうえひでのり,出演:古田新太,早乙女太一,清野菜名ほか,劇団☆新感線 ■新宿バルト9,2020.7.10-(2020年収録) ■時代は「本能寺の変以後、小田原攻め以前」。 大名間の抗争や人質を背景に野武士や僧兵たちが走り回る動乱の時代を描いている。 それにしてもワクワクしないストーリーだ。 平凡な事件と行動が続くからである。 どこかの国のどこかの話で歴史のエッセンスも取り込んでいない。 前半は欠伸が多かった。 後半に入り、事件の裏話や嘘と真の騙し合いが激しくなりリズムに乗ってくる。 しかし盛り上がりに欠ける。 終幕近くにはストーリーの一部を文章にして舞台を飛ばしてしまった。 内容が練れていないようだ。 前半のダラダラした流れは半分にして、もっとドキドキする事件にしてもらいたい。 *ゲキXシネ2020年作品 *作品、 http://www.geki-cine.jp/kemurinogundan/

■夏の夜の夢

■作:W.シェイクスピア,演出:ニコラス.ハイトナー,出演:オリヴァー.クリス,グェンドリン.クリスティー,デヴィット.ムースト他 ■シネリーブル池袋,2020.7.10-(ブリッジ.シアター,2019年収録) ■観客を入れた賑やかな舞台になっています。 役者たちのエアリアル・シルクで賑やかさが空間にも広がっていく。 そして四季風景や動植物の名前が続くリズミカルな科白が心地よい。 シェイクスピアを意識させてくれます。 ベッドを使った多義的な解釈が愉快です。 繰り出す劇中劇が時空を歪めていく。 眩暈を感じる舞台です。 「ピーター・ブルックへのオマージュ・・」と演出家が語っているだけのことはありますね。 職人芝居も次元戻しの異化を狙って面白い。 でも終幕の芝居はその効果が仇になったようです。 それまでの夢の世界を異化が壊してしまった。 終わりはサラッといきたい。 この作品は性別を強く意識します。 花汁の媚薬が性と愛を非連続にしているからです。 非連続性は現代社会のテーマの一つでしょう。 現代生物学にも繋がっていると言ったらシェイクスピアもビックリですか。 楽しい舞台でした。 *NTLナショナル・シアター・ライヴ2020作品 *映画com、 https://eiga.com/movie/92341/

■さまよえるオランダ人

■作曲:R.ワーグナー,指揮:ワレリー.ゲルギレフ,演出:フランソワ.ジラール,出演:エフゲニー.ニキティン,アニヤ.カンペ,藤村実穂子ほか ■東劇,2020.7.10-16(MET,2020.3.10収録) ■ワーグナーの若さと粗さがみえる舞台だった。 比してオランダ人もゼンダそして、演出家ジラールも各自のワーグナー像を持って臨んでいたようにみえる。 舞台はヴラマンクが描いたような暗い風景が続き、ゼンダ(?)のダンスから始まるの。 すべては象徴に描き具体はダーランドの船首だけ。 歌手同志の関係表現は深いとは言えず歌唱の繋ぎにしている。 背景に描かれた「目」はもはや宗教的意味しか持っていない。 何故コロナ禍でも西欧はマスクをしないのか? それは「相手と通じるのに日本人は目を、西欧人は口を重視することが多い」から*1。 この舞台を言い当てている説だわ。 ゼンダがオランダ人に会う場面、オランダ人がエリックの後にゼンダと論争する場面は目ではなく口が優先していた。 前者の沈黙は悪くはなかったけど。 ワーグナーの若さと粗さが出ていた原因かな? でも映画だと分かり難いことは確か。 生舞台なら身体を総動員させて感動にまで高められるはずよ。 愛(目)より貞節(口)を重視する宗教色の強い作品だった。 ・・救済できたのかしら? ゼンダの力強い、オランダ人の抑えた歌唱の何方も聴きごたえがあった。 ところでMET、特に109シネマズ用に耳栓を買ったの。 大音量に耐える為にね。 *1、WEB上で見つけた言葉よ。 誰が何処で言ったのか記録しなかった。 この質問はよく見受けられるが腑に落ちたので覚えていたの。 *METライブビューイング2019作品 *作品サイト、 https://www.shochiku.co.jp/met/program/2090/

■アグリッピーナ

■作曲:G.F.ヘンデル,演出:デイヴィッド.マクヴィカー,指揮:ハリー・ビケット,出演:ジョイス.ディドナート   ,ケイト.リンジー,イェスティンデイヴィーズ他 ■新宿ピカデリー,2020.7.3-9(MET,2020.2.29収録) ■今年も後半に入りやっとヘンデルに会えた。 「 ジェリオ・チューザレ 」「 シッラ 」が中止になってしまったからよ。 ヘンデルはいつも心をウキウキさせてくれる。 テーマは権力か愛か!? 皇妃アグリッピーナの陰謀が絶え間なく続くストーリーなの。 その悪巧みの裏には愛というより性がチラつくからとてもリアルにみえる。 このリアルが権力とは何かを語っている。 「(だから)権力を追求するのは難しい」。 演出家マクヴィカーの言葉よ。 その権力大好きなアグリッピーナと(純粋)愛を求める軍人オットーネの対決は皇帝クラウディオの計らいで丸く治まり幕が下りる。 オットーネがコントラルト(ここではカウンターテナー)なのは唯一純愛だからかな? カストラートのネローネをズボン役にしたのでオットーネが目立たなくなってしまった。 ソプラノのポッペアも同じかも。 しかもネローネの演技が派手だった、見ていて楽しかったけどね。  マクヴィカーは「 ジュリアス・シーザー 」を踏み台にして今回の作品を総合芸術として一層磨きをかけたと思う。 至福の4時間だった。 *METライブビューイング2019作品 *作品、 https://www.shochiku.co.jp/met/program/2089/

■ロミオとジュリエット

■演出・振付:マシュー.ボーン,舞台・衣装:レズ.ブラザーストン,照明:ポール.コンスタンブル,音楽:ポール.グルーサル,出演:パリス.フィッツパトリック,コーデリア.ブライスウェスト他 ■恵比寿ガーデンシネマ,2020.6.5-(サドラーズウェルズ劇場,2019年収録) ■舞台は病院の中庭にみえる。 チラシを読むと教育矯正施設とある。 ストーリーは知っているが追えない。 タイトル・ロールの二人を除き誰が誰だか区別がつかない。 プロコフィエフの音楽だけが原作を意識させてくれる。 そして終幕へ向かってコミカルからシリアスへと傾いていく。 この舞台は原作を忘れて近未来悲恋物語としてダンサーの動きを楽しめば良いのかもしれない。 しかし振付は雑にみえる。 たぶん演出だろう。 いや、ダンサーが雑だと分かる。 若さからくる粗さだ。 これが舞台に活気を呼び込んでいる。 ボーン流パラドックスともいえる。 *映画com、 https://eiga.com/movie/92454/

■ミルピエ/ロビンズ/バランシン

□クリア,ラウド,ブライト,フォワード ■振付:バンジャマン.ミルピエ,音楽:ニコ.マーリー,出演:レオノール.ボラック他 □作品19/ザ.ドリーマー ■振付:ジョージ.バランシン,音楽:チャイコフスキー,出演:ローラ.エケ他 □テーマとバリエーション ■振付:ジェローム.ロビンズ,音楽:セルゲイ.プロコフィエフ(ヴァイオリン協奏曲第1番),出演:アマンディーヌ.アルビッソン他 (以上3作品の□タイトル■スタフ&キャスト) ■東劇,2020.6.26-7.3(フランス,2015年収録) ■3作品の中では「クリア、ラウド、ブライト、フォワード」が圧巻です。 映画「 ミルピエ、パリ・オペラ座に挑んだ男 」で知ったのですが、やっと観ることができた。 無機質な色彩、明暗差有る照明の舞台背景です。 切れ目無く動き回るダンサーたちに目が釘付けになります。 小さく作った舞台の下手にダンサーが待機する長椅子が置いてある。 男性ダンサーの衣装は灰色、女性は銀色でしょうか? 緊張感が出ていますね。 「複雑な作品だから仕上げはギリギリになる」。 ミルピエの傑作と言ってよい。 他2作品がオペラ座らしい雰囲気に戻していました。 *パリ.オペラ座バレエ.シネマ2020作品 *映画com、 https://eiga.com/movie/92608/

■ポーギーとベス

■作曲:ジョージ.ガーシュウィン,演出:ジェイムズ.ロビンソン,指揮:デイヴィット.ロバートソン,出演:エリック.オーウェンズ,エンジェル.ブルー他 ■新宿ピカデリー,2020.6.26-7.2(MET,2020.2.1収録) ■ポーギー役エリック・オーウェンズは風邪らしい。 精彩を欠いている。 これではベスも逃げてしまう。 逆にベスの恋人クラウンが張り切っているから尚更だわ。 1920年代チャールストンのコミュニティ「キャット・フィシュ・ロウ」が舞台。 でも合唱団が出づっぱりなの。 これではメリハリが無くなってしまう。 演劇で言う<青春群像劇>をそのまま<黒人群像劇>に仕立てることができたのに劇的さを呼び寄せることができなかった。 やはりコロスの立ち位置は崩せない。 オペラと演劇の違いかもね。 でも振付の良さには吸い寄せられたわよ。 「サマータイム」は前半と後半に2度ほど歌われたけど最高。 南部のどんよりした蒸し暑さを持って来てくれる。 でも舞台はそれに答えていない。 温度も湿度も南部ではなく東部だわ。 まとめるとオーウェンズの精彩不足、合唱団のメリハリ不足、そして南部のネットリ不足。 感動不足の3点かな・・。 *METライブビューイング2019シーズン作品 *MET、 https://www.shochiku.co.jp/met/program/2088/

■スモール・アイランド

■作:アンドレア.レビ,演出:ルーファス.ノリス,出演:リア.ハーベイ,エイズリング.ロフタス他 ■シネリーブル池袋,2020.6.12-18(オリヴィエ劇場,2019年収録)     ■ジャマイカがスペインからイギリス領に替わったことをこの映画で知った。 「ウィンドラッシュ世代」という言葉も、そして作品が当世代を描いていることもだ。 1940年代、故郷ジャマイカからロンドンに旅経つ教師ホーテンス、リンカンシャーの英国片田舎から逃れたいクイニー、この二人が交差する人生を描き出す。 彼らの夫たちも大戦の影響をもろに受けながら混乱の戦後ロンドンを生きていく。 音楽担当がインタビューでレゲエだけではなく弦楽器まで広げて映画のように選曲したと話していた。 そう言われると、この作品の感動は演劇というより映画的に感じられる。 人生が持つ時間的リズムが通奏低音のように鳴り響いているからだ。  ホーテンスと夫ギルバードは人種差別に耐えながらも、クイニーが産んだジャマイカ人との子供を養子に引き取る終幕は差別を超えた感動が押し寄せてくる。 そして養子として育てられたホーテンスの子供時代から始まり再び養子を引き取るストーリーに人生の輪廻的感動が加わる。 現代英国に一石を投じる作品である。 *NTLナショナル・シアター・ライヴ作品 *映画com、 https://eiga.com/movie/92340/

■怪人フー・マンチュー、不死と不死身のレクイエム

■原作:サックス.ローマー,台本:寺山修司,演出:J.A.シーザー,劇団:演劇実験室◎万有引力 ■(六行会ホール,1999.7.30-8.8収録) ■WEBで探しました。 記録映像のようです。 音声も映像も酷いですが雰囲気は伝わってきます。 20世紀初頭の上海と聞いただけで胸が躍ります。 「1895年孫文日本亡命、1896年リュミエール映画上映、1898年義和団事件、1900年孫文蜂起失敗、1904年日露戦争・・」。 背景に映し出された映画は「フー・マンチュー博士」(1929年)でしょうか? 紙芝居的活劇的歌劇的演劇ですが、万有引力の舞台は劇場で観ないと様にならない。 4ヶ月以上もコロナ無沙汰の劇場ですが、そろそろですかね。 *演劇実験室◎万有引力第25回公演 *CoRich 、 https://stage.corich.jp/stage/36965

(中止)■実験舞踊「春の祭典」「FratresⅢ」

■振付:金森穣,音楽:I.ストラヴィンスキー,A.ペルト,出演:Noism0,Noism1,Noism2 ■東京芸術劇場.プレイハウス,2020.6.19-20 ■「・・東京公演は、中止いたします。・・来年2021年夏にあらためて開催いたします」。 ウーン、やっぱりだめだったわね。 来年まで待つことにしましょ。 中止は累計28本。 *劇場サイト, https://www.geigeki.jp/performance/theater243/ *「このブログを検索」に入れる語句は、 金森穣

(中止)■竹取物語

■作曲・指揮:沼尻竜典,演出:栗山昌良,装置:鈴木俊朗,照明:原中治美,衣裳:岸井克己,音響:小野隆浩,出演:森麻季,的場正剛,森季子ほか ■新国立劇場.中劇場,2020.7.11-12 ■「地域招聘オペラ公演 びわ湖ホール「竹取物語」は公演中止となりました」。 手元にあった最後のチケットも中止になってしまった。 ついにスッカラカンよ。 中止合計は27本。 *地域招聘オペラ公演びわ湖ホール *劇場サイト、 https://www.nntt.jac.go.jp/opera/princess_kaguya/ *追記・・調べたらNOISMのチケットを購入していた。 開演は6月20日に東京芸術劇場で。 中止の知らせは今もない。 本拠地が新潟だから大丈夫かな・・。

(中止)■不思議の国のアリス  ■ふしぎの国のアリス  ■ニュルンベルクのマイスタージンガー

□不思議の国のアリス ■振付:クリストファー.ウィールドン,音楽:ジョビータルボット,美術.衣装:ボブ.クロウビー,照明:ナターシャ.カッツ,出演:米沢唯,渡邊峻郁ほか ■新国立劇場.オペラパレス,2020.6.5-14 *NNTTバレエ2019シーズン作品 *劇場サイト、 https://www.nntt.jac.go.jp/ballet/alice/ □ふしぎの国のアリス ■演出:小野寺修二,音響:池田野歩,黒野尚,照明:吉本有輝子,美術:石黒猛,衣装:今村あずさ,出演:カンパニー.デラシネラ ■新国立劇場.小劇場.2020.6.20-28 *NNTTダンシ2019シーズン作品 *劇場サイト、 https://www.nntt.jac.go.jp/dance/derashinera_alice/ *「このブログを検索」に入れる語句は、 小野寺修二 □ニュルンベルクのマイスタージンガー ■作曲:リヒャルト.ワーグナー,指揮:大野和士,演出:イェンス=ダニエル.ヘルツォーク,出演:トーマス.ヨハネス.マイヤー,ビャーニ.トール.クリスティンソン他 ■新国立劇場.オペラパレス,2020.6.21-30 *NNTTオペラ2019シーズン作品 *劇場サイト、 https://www.nntt.jac.go.jp/opera/diemeistersingervonnurnberg/ ■「・・政府の緊急事態宣言が延長され、公演準備を進めることが困難となったため」、新国立劇場6月公演は全滅よ。 バレエとダンスのアリスを比較したかったのに・・。 そして今年の目玉だったワーグナーが観れないとは! これで中止は26本になってしまった。

(中止)■HIROSHIMA、太田川七つの流れ

■演出:ロベール.ルパージュ ■Bunkamura.シアターコクーン,2020.7.10-12 ■「カナダより公演を招聘することが困難であると判断し、・・」。 これは観たかった。 7時間の一大叙事詩だったのに・・。 7月公演が中止になったのは初めてよ。 *劇場サイト、 https://www.bunkamura.co.jp/cocoon/lineup/20_hiroshima/ *「このブログを検索」に入れる語句は、 ルパージュ

(中止)■パラダイス  ■外の道

□パラダイス ■作・演出:赤堀雅秋,出演:丸山隆平,村上虹郎,八嶋智人ほか ■シアターコクーン,2020.5.31-6.29 ■「・・発令された緊急事態宣言と東京都からの緊急事態措置要請を受け、公演準備のための十分な時間が確保できないため、5月31日(日)から6月29日(月)までの東京公演 全日程を中止・・」。 *劇場サイト、 https://www.bunkamura.co.jp/cocoon/lineup/20_paradise.html □外の道 ■作・演出:前川知大,出演:浜田信也,安井順平,盛隆二ほか,劇団:イキウメ ■東京芸術劇場.シアターイースト,2020.5.28-6.21 ■「「見立てと時間軸の編集」という演劇の醍醐味を使って、「ある」ものを「ない」という形で提示。 そして、「あるはずのない」ものをゴロッと目の前でみせていくのがイキウメ流・・」。 ゴロッとしたかったけど残念ね。 6月予定も既に半分が中止に追い込まれてしまった。 中止累計は22本。 *劇場サイト、 https://www.geigeki.jp/performance/theater238/

(中止)■4  ■未練の幽霊と怪物

□4 ■作・演出:川村毅,出演:今井朋彦,加藤虎ノ介,川口覚,池岡亮介,小林隆 ■ シアタートラム,2020.5.29-6.7 ■6月公演も中止が目立ってきたわね。 「・・、本プロダクションは来年2021年8月、都内別劇場にて延期上演いたします。 詳しくはティーファクトリーホームページをご確認ください」。 ・・延期だと早くて1年以上も後になってしまう。  *劇場サイト、 https://setagaya-pt.jp/performances/tfactory20200506.html □未練の幽霊と怪物 ■作・演出:岡田利規,演奏:内橋和久,出演:森山未來,片桐はいり,栗原類,石橋静河,太田信吾,七尾旅人(謡手) ■神奈川芸術劇場.大スタジオ,2020.6.3-24 ■「新型コロナウィルス感染拡大の影響により、神奈川及び豊橋、新潟、兵庫での全公演を中止し、改めて上演の機会を調整する事となりました」。 6月の中止は3本目、そして累計では20本目よ。 *劇場サイト、 https://www.kaat.jp/d/miren

(中止)■ARC薄明・薄暮

■演出:天児牛大,美術:中西夏之「着陸と着水」より,音楽:加古隆ほか,舞団:山海塾 ■世田谷パブリックシアター,2020.5.13-17 ■劇場サイトには中止と表示されているが提携公演のためメールが遅れているようね。 これで5月の予定は全滅。 チケ購入後の中止合計本数は18本。 *劇場、 https://setagaya-pt.jp/performances/sankaijuku202005.html

(中止)■ガールズ&ボーイズ

■作:デニス.ケリー,翻訳:小田島創志,演出:蓬莱竜太,出演:長澤まさみ ■新国立劇場.小劇場,2020.5.12-31 ■本日17時に届いたメールには・・、「新国立劇場では・・、政府の緊急事態宣言が出され・・、やむなく中止することと致しました」。 中止はこれで17本目。 5月分チケットは世田谷パブリックシアターの1本が残っているだけ、でも、これも危ないわね。 6月分チケットは9本を購入して1本が既に中止になっている。 状況次第では6月も壊滅的になりそう。 *NNTTドラマ2019シーズン作品 *劇場サイト、 https://www.nntt.jac.go.jp/play/girls_and_boys/ *「このブログを検索」に入れる語句は、 蓬莱竜太

(中止)■反応工程  ■ピサロ  ■アーリントン  ■スカーレット・プリンセス

□反応工程 ■作:宮本研,演出:千葉哲也,出演:天野はな,有福正志,神農直隆ほか ■新国立劇場.THE PIT,2020.4.9-26 ■「・・緊急事態宣言が出ることを踏まえて、5月10日(日)まで中止期間を延長することといたしました」。 4月14日以降も中止になってしまった・・。 *NNTTドラマ2019シーズン作品 *「 反応工程 」(米山実演出,2018年) *劇場サイト、 https://www.nntt.jac.go.jp/play/reactionprocess/ *「このブログを検索」に入れる語句は、 千葉哲也 □ピサロ ■作:ピーター.シェーファー,翻訳:伊丹十三,演出:ウィル.タケット,出演:渡辺謙,宮沢永魚,栗原英雄ほか ■パルコ劇場,2020.3.13-4.20 ■「政府の緊急事態宣言発令を受けまして、4月2日(火)-30日(木)の追加公演を含め4月15日(水)以降の全公演を中止・・」。 後半の開催に期待していたけどだめだった。 新しい劇場は当分お預けね。 *こけら落し公演 *劇場、 https://stage.parco.jp/program/pizarro/9632/ *「このブログを検索」に入れる語句は、 ピーター・シェーファー □アーリントン ■作:エンダ.ウォルシュ,翻訳:小宮山智津子,演出:白井晃,出演:南沢奈央,平埜生成,入手杏奈 ■神奈川芸術劇場.大スタジオ,2020.4.11-5.3 ■「政府の「緊急事態宣言」の発令に基づき、4/25(土)に開幕を予定しておりました「アーリントン」は全公演中止とさせていただきます」。 4月は全滅だわ。 *劇場、 https://www.kaat.jp/d/arlington □スカーレット.プリンセス ■原作:鶴屋南北「桜姫東文章」,演出:シルヴィウ.プルカレーテ,出演:ホフェリア.ポピ,ユスティニアン.トゥルク ■東京芸術劇場.プレイハウス,2020.5.3-5 ■うーん、これは観たかった。 残念ね。 今日だけで4本、チケ購入後の中止は累計16本。

■人の光を、解き放つ 振付家MIKIKO

■出演:MIKIKO ■(NHK,2019.2.4放送) ■「プロフェショナル仕事の流儀」で「 バレエダンサー岩田守弘 」に続き「振付家MIKIKO」を観ました。 Perfumeの2018年全国ツアーを映した番組です。 MIKIKOの振付は歯切れが良く「当て書き」があるので有名J-POPには最適です。 彼女の振付を生舞台で観たことがない。 いつも映像それも断片です。 それでも脳味噌がピクピク喜ぶので無視できません。 彼女の振付の裏には日本舞踊がみえる。 手の動きや歌詞との連携、身体への意味づけなどリズムは違うがそれを感じます。 リオ・オリンピック閉会式はまだ記憶に残っている。 東京オリンピック開会式も担当するようですが、当番組をみて照明や映像も駆使でき総合芸術家として大成していることに納得しました。 開会式が(延期になっても)楽しみですね。 *NHKサイト、 https://www.nhk.or.jp/professional/2019/0204/index.html

(中止)■じゃじゃ馬ならし

■作:ウィリアム.シェイクスピア,演出:ジャスティン.オーディバート,翻訳:小田島雄志,出演:アマンダ.ハリス,ジョセフ.アークレイ,ジェームズ.クーニー他 ■東京芸術劇場.プレイハウス,2020.6.12-14 ■6月公演も中止とは! イギリスも大変ね。 久しぶりのRSC英国ロイヤル・シェイクスピア・カンパニー公演だから早々にチケットを購入したのに・・。 中止は12本目。 *劇場サイト、 https://www.geigeki.jp/performance/20200612p/

(中止)■コーカサスの白墨の輪  ■馬留徳三郎の一日

□コーカサスの白墨の輪 ■作:ベルトルト.ブレヒト,演出:レオニード.アニシモフ,劇団:東京ノーヴィ.レパートリーシアター ■梅若能学院会館,2020.5.24 *劇団、 http://tokyo-novyi.muse.weblife.me/japanese/pg564.html □馬留徳三郎の一日 ■作:高山さなえ,演出:平田オリザ,出演:田村勝彦,羽場睦子,猪股俊明ほか ■座高円寺,2020.4.4-12 ■午後一番のメールで、「新型コロナウイルス感染拡大防止に関わる杉並区の方針に基づき、座・高円寺は4月12日(日)まで休館を継続することとなりました。期間中に開催される青年団プロデュース『馬留徳三郎の一日』公演は中止とさせていただきます・・」。 11本目の中止。 4月前半は全滅に近い。 *青年団プロデュース公演 *尼崎市第7回「近松賞」受賞作品 *劇場、 https://za-koenji.jp/detail/index.php?id=2285

(中止)■DANCE to the Future 2020  ■ジュリオ・チェーザレ

□DANCE to the Future 2020 ■振付:渡邊峻郁,木下嘉人,福田紘也,木下嘉人,貝川鐵夫,髙橋一輝,福田圭吾,アドヴァイザー:遠藤康行 ■新国立劇場.THE PIT,2020.3.27-29 *劇場サイト、 https://www.nntt.jac.go.jp/dance/dtf/ □ジェリオ.チェーザレ ■作曲:G.F.ヘンデル,指揮:リナルド.アレッサンドリーニ,演出.衣装:ロラン.ベリー,出演:アイタージ ュ.シュカリザーダ,駒川敏章,加納悦子ほか ■新国立劇場.オペラパレス,2020.4.7-12 *劇場サイト、 https://www.nntt.jac.go.jp/opera/giuliocesare/ ■新国立劇場公演中止はチケ購入分で初めて、しかも4月度が対象になったのは痛い。 上記2本を含めて中止は合計9本になってしまった。

■パリ・オペラ座ダンスの饗宴

□デフィレ■出演:アマンディーヌ.アルビッソン,エミリー.コゼット,オーレリ.デュポン他 □エチュード■振付:ハラルド.ランダー,音楽:カール.チェルニー他,出演:ドロテ.ジルベール他 □くるみ割り人形■振付:ルドルフ.ヌレエフ,音楽:チャイコフスキー,出演:ミリアム.ウルド=ブラム他 (以上の3作品□を上映) ■東劇,2020.3.20-(オペラ.バスティーユ,2014.10収録) ■「デフィレ」はパリ・オペラ座バレエ団員と当生徒の250余名が舞台の奥から前へ行進するだけの内容なの。 パレードに近いわね。 プルミエ(ル)は簡単な挨拶ができる。 フィナーレの全員でのポーズは圧巻。 一度は観ておきたい作品よ。 「エチュード」は練習の基本から応用、組み合わせを複雑に、そして超絶技巧へ淡々と進めていく流れなの。 組体操のような場面もある。 飽きが来るのは単調だから? そして音楽が硬すぎる。 「くるみ割り人形」はファンタスティックな舞台になっている。 この作品は演出や振付に多くの版があるから毎回楽しめる。 これはヌレエフ版らしい。 でも編集で途中が切られている。 忙しない感じがした理由かな? 「くるみ割り人形」は組み合わせが悪い。 別の作品に替えれば前の2作品がより映えると思う。 *パリ.オペラ座バレエ.シネマ2020作品 *映画comサイト、 https://eiga.com/movie/92606/

■英国ロイヤルバレエ、茜と亮一プリンシパルの輝き

■出演:高田茜,平野亮一,ケヴィン.オヘハ,レスリー.コレア,吉田都,リポーター:遼河はるひ ■(NHK,2018.3.10放送) ■バレエ教室に通っている子供たちが観たくなる内容です。 ロイヤル・バレエの紹介映像と言ってよい。 プリンシパル高田茜、平野亮一にインタビューをするのは遼河はるひ、吉田都が付添として参加します。 そして「くるみ割り人形」のパ・ド・ドゥを二人が練習し本番をむかえるというストーリーです。  ロイヤル・バレエの親密なドラマチック・バレエは最高です。 特に「くるみ割り人形」は他舞団を圧倒している。 クリスマスツリーがニョキニョキ高くなる始まりの場面ではいつもドキドキしますね。 ここは省いていましたが。 季節外れのクリスマス気分に浸れました。 *NHKサイト、 https://www6.nhk.or.jp/nhkpr/post/original.html?i=13620 *「このブログを検索」に入れる語句は、 高田茜 平野亮一

■シェルカウイ 踊りで世界を救う、41日の闘い

■監督:清水真紀子,出演:シディ.ラルビ.シェルカウイ,ディミトリ.ジュルド,ファビアン.トーメ,ジョニー.ロイド,パトリック.ウィリアムズ,パク.ウージュ,吉井盛悟ほか,ナレーション:森山未來 ■(日本,2016年) ■アントワープ出身シェルカウイが演出した「FRACTOS Ⅴ」の作成過程をドキュメンタリーにしている。 毛色の違うダンサー5人と演奏家3人が登場する。 シェルカウイ自身もダンサーの一人として踊る。 「情報が人を操作する世界」を描く。 情報が蔓延する世界は真実や事実から遠く離れてしまった。 言語学者チョムスキーが出処らしい。 シリア難民やベルギー連続テロなどを舞台に乗せて混乱していく様子をストーリーにしているようだ。 西洋と東洋の融合も考えている。 フラメンコ舞踊ファビアンと和太鼓吉井の練習風景が長々と続く。 フラメンコと太鼓の組み合わせは面白いが、二人の動きがどうしても合わない。 結局は大人の都合(?)で折り合いが着く。 シェルカウイは言う。 「・・過去を壊すこと手放すこと、そうすれば新たな生命が生まれる」。 「アートは既存システムを壊すためにある」。 スローモション風の振付だった「PULTO」を思い出してしまった。 この振付がシェルカウイのものだと分かる。 今回もダンサーたちがゆっくりと動き重なり探り合っていく親密な振付になっている。 本番舞台は数分しか映らなかったので何とも言えないが。 独特な身体動作に現代テーマを絡ませる彼の作品は当分目が離せない。 *SPICE、 https://spice.eplus.jp/articles/52773

■悔しさを、情熱に バレエダンサー岩田守弘

■出演:岩田守弘,茂木健一郎,住吉美紀,語り:橋本さとし ■(NHK,2008.12.9放送) ■「プロフェッショナル仕事の流儀」第104回番組です。 先日観た「 バレエの王子 」の続編のような内容でした。 どちらも日系ダンサーが主人公だからです。 ボリショイ・バレエ団ソリスト岩田守弘も低身長で主役になれない。 しかも肉体の衰えと闘う38歳。 最初の舞台が熊の縫いぐるみを被った役だと知った彼のショックが伝わってきました。 それでも彼は舞台を熟す。 「人より三倍のレッスンを課す」でも「役が回ってこない」苦しみが続く・・。 「一つの役に10人のライバルがいる」。 ボリショイの厳しさですね。 次に ショスタコーヴィチ「明るい小川」の脇役で踊る練習風景と本番映像が紹介されます。 訪れたチャンスに彼は手を抜かない。 茂木健一郎がインタビューをしますが話が弾まない。 岩田はサラリーマンの古き良き精神を持っているよ うに見える。 組織に対して真面目で順応です。 キャラクター・ダンサーとして生きていく道をいつも探している。 茂木健一郎はそれを感じ取ったのかもしれない。 ダンサーである父親からの教えでしょうか?  岩田の行動の背景には硬直したソビエト、そして舞団にも原因が有る。 「明るい小川」に出演できたのもペレストロイカのお陰だと彼は言っている。 岩田の履歴を調べると、退団後は国立ブリヤート・オペラ劇場芸術監督に就任し、ウクライナ独立派のバレエフェスティバルに参加してウクライナのブラックリストに載ってしまった(WIKIより)。 管理(経営)者としての行動でしょう。 彼は優秀なダンサー以上に組織で生きていく人として当番組に登場するだけの中身を持っています。 *NHKサイト、 https://www.nhk.or.jp/professional/2008/1209/index.html

(中止)■マザー MOEDER

■演出:ガブリエル.カリーソ,ドラマトゥルク:フランク.シャルティエ,出演: ユルディケ.デ.ブール,シャルロット.クラメンス他,舞団:ピーピング.トム ■世田谷パブリックシアター,2020.3.19-21 ■ 「ピーピング・トム『マザー』につきまして、新型コロナウイルス感染症の拡散防止のため、やむなく中止・・」。 ニャオーン! ついに来てしまった、あれだけ開催を頑張っていたのに・・。 7本目の中止よ。 *劇場サイト、 https://setagaya-pt.jp/performances/moeder202003.html *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、ピーピング ・・ 検索結果は4舞台 .

■フリーバッグ FLEABAG

■作:フィービー.ウォーラー=ブリッジ,演出:ヴィッキー.ジョーンズ,出演:フィービー.ウォーラー=ブリッジ ■シネリーブル池袋,2020.3.13-19(ウィンダムズ劇場,2019年収録) ■これは芝居というより、どうみても漫談だろう。 作者自身が舞台に一人立つ。 実際には高椅子に座り続けるのだが一人十役はこなす。 いや、役より物真似に近い。 主人公は当にフリーバッグの意味に近い性格だ。 世界に対して、そして性に対して必要以上に奔放にみえる。 それにしても劇場(映像内)の観客はよく笑う。 よくみえないが女性の声が多い。 今日の映画館も若い女性が多い。 館内の笑い声も女性たちだ。 セックスを含め日常の出来事を直截に表現しているから取っ付き易いのだろう。 多くの話はカラッと乾いているから誇張に聴こえる。 でも主人公の姉が登場する場面はとてもリアルに語られていた。 作者には実在の姉妹がいるのかもしれない。 モルモットの話も同じだ。 子供の頃に小さな動物を飼っていたのだろう。 この二つは他と比較してネットリしていた。  調べると海外テレビドラマシリーズでヒットしていることを知った。 女性たちが笑っていたのも納得した。 ファンなのだろう。 テレビは分からないが今日の舞台は漫談的演劇と名付よう。 やはり演劇を引きずっていたからだ。 *NTLナショナル・シアター・ライヴ作品 *映画comサイト、 https://eiga.com/movie/92339/ *追記 3月初旬、・・別役実の訃報記事に目が行く。 彼の舞台を思い出そうと脳味噌がウロウロしている間に目の動きはマックス・フォン・シドーの訃報で止まった。 彼の出演した作品がパラパラと脳裏に飛び出してきた。 ベルイマンの記憶は前頭連合野にシッカリ保管されているようだ。 「戯曲より舞台が優先」から演出家と比べて劇作家は残らないのだろう。

(中止)■桜姫東文章

■演出:安田雅弘,出演:山本芳郎,倉品淳子,川村岳ほか,劇団:山の手事情社 ■東京芸術劇場.シアターウエスト,2020.3.14-17 ■6本目の公演中止で東京芸術劇場は全滅よ。 「 スカーレット・プリンセス 」の5月まで当劇場の観劇予定は無くなってしまった。 ところでスカプリの原作は「桜姫東文章」なの。 山の手事情社の舞台は観ておきたかった。 *劇団山の手事情社創立35周年記念公演 *劇場サイト、 https://www.geigeki.jp/performance/20200314tw/

■縛られたプロメテウス Prometheus Bound

■構成・演出:小泉明郎,出演:武藤将胤 ■港区立台場区民センター,2020.3.3-7 ■観客は何もない室に通され、そこでゴーグルを付ける。 室内を動き回ることができる。 まもなくゴーグルに映像が映し出され科白が聞こえてくる。 モノリス立方体が現れたり光の矢が飛ぶモノクロ映像だ。 品質は良いとは言えない。 それより科白が気にかかる。 その言葉は身体が壊れ死が近づいているように聞こえる。 映像と溶け合って夢の出来事に感じられる。 迫りくる死の予行演習をしているようだ。 ・・。 ゴーグルを外し次室に案内される。 椅子とディスプレイが並べてある。 次の観客が窓越しに見える。 前室と同期しながらディスプレイに役者が映し出される。 なんと声の役者は車椅子に座った難病ALS患者(後になって知る)だった。 次の観客を視界に入れながら、映像の役者を見つめ、その科白に再び集中する。 日常の愛も語るが、壊れゆく肉体をサイボーグに変えることを徐に話し出す。 そこに思いがけない<希望>が見えてくる。 ・・。 前半は(観客が)夢の端で死を思い浮かべ、夢から覚めた後半は(役者が)愛を確認し未来に希望を託す(、それを観客が観る)構造になっている。 予想もしなかった内容に衝撃を受ける。 これは演劇なのか? 演劇的興奮は確かにやってきたからである。 崩れゆく肉体と死、他者とサイボーグ、愛と希望、すべてが己の(未来の?)身体と強く繋がっていたからである。 *シアターコモンズ'20参加作品 *主催者サイト、 https://theatercommons.tokyo/program/meiro_koizumi/

(中止)■三つ折りの夜  ■Dance Speaks

□三つ折りの夜 ■演出・出演:勅使川原三郎,演奏:庄司沙矢香,出演:佐東利穂子 ■東京芸術劇場.プレイハウス,2020.3.6-8 ■公演は延期。 スケジュール未定だから中止と同じかな。 マラルメの詩、沙矢香のヴァイオリン、そしてダンス、新次元の舞台を観たかった。 コロナウィルスが理由で)の中止は4本目。 *劇場サイト、 https://www.geigeki.jp/performance/theater229/ □Dance Speaks ■舞団:スターダンサーズ・バレエ団 ■東京芸術劇場.プレイハウス,2020.3.13-15 ■「緑のテーブル」(台本&振付:クルト・ヨース)、「ウェスタン・シンフォニー」(振付:ジョージ・バランシン)の二本立て。 残念ね。 5本目の中止よ。 *劇場サイト、 https://www.geigeki.jp/performance/20200313p/

■ヴォツェック

■作曲:A.ベルク,演出:ウィリアム.ケントリッジ,指揮:ヤニック.ネゼ=セガン,出演:ペーター.マッティ,エルザ.ヴァン.デン.ヒーヴァー他 ■109シネマズ二子玉川,2020.2.28-3.5(MET,2020.1.11収録) ■この映画館は音響が大き過ぎて耳を塞ぎたくなる。 実際、指で塞いで観ていたの。 手が疲れてしまったわよ。 METライブビューイングは大音響の館が多い。 配給元の指示で音量変更ができないらしい。 この理由で新演出以外は観なくなってしまった。 日比谷でROHロイヤルオペラハウスのライブビューイングを観た時はとても良い音響だった。 METはロック・ライブと勘違いしているんじゃないかしら? この作品はスタッフの違いからキーワードがいつも動きまわる。 今回は「匂い」かな。 「酒の匂い・・」「血の匂い・・」「死の匂い・・」「・・の匂い・・」。 前回の舞台は「貧困」だった。 でも、どちらも苦しい言葉だわ。 子供が人形だと印象も違ってくる。 それと舞台がゴチャゴチャしていてまるで瓦礫の山のようにみえる。 その上から映像や照明を当てるから識別できない。 第一次世界大戦の混乱が肌で感じられるけどね。 でも映像を映像に撮るのは最悪よ。 画質は悪くなるし、カメラマンがその映像部分だけを撮るから全体の繋がりも断絶してしまう。 ライブビューイングにし難い舞台だった。 大音量もあって疲れてしまった。 次回からMETを観る時は耳栓が必要かもね。 もうオペラとは言えない。 *METライブビューイング2019シーズン作品 *作品サイト、 https://www.shochiku.co.jp/met/program/2087/ *「このブログを検索」に入れる語句は、 ケントリッジ

(中止)■カノン

■作:野田秀樹,演出:野上絹代,出演:中島広稀,さとうほなみ,名児耶ゆり他 ■東京芸術劇場.シアターイースト,2020.3.2-15 ■「・・新型コロナウイルスの感染症拡大のリスクを低減する観点から、やむなく公演を中止・・」。 メールが届いたわよ。 チケ購入後の中止は3本になってしまった。 *劇場サイト、 https://www.geigeki.jp/performance/theater227/ *「このブログを検索」に入れる語句は、 野上絹代

■星の王子さま

■作:サン=テグジュペリ,演出:レオニード.アニシモフ,テキスト:アリエ.ヴァレ,ムーブメント:山本光洋ほか,劇団:東京ノーヴイ.レパトリーシアター ■東京ノーヴイ.レパートリーシアター劇場,2020.2.28-3.1 ■詩的な舞台です。 中世日本や古代中国の衣装を着て、暗い中をゆっくりと歩く役者にスポットを当て、発声は抑えて淡々と喋り、さり気なく形を見せる動きは様式の美学を感じさせます。 太夫らしき身なりの語り手が、下手に座って物語を進めていく。 王子だけ白マスクを被っての登場です。 合わせた白衣装がフランス映画で見るパントマイム芸人を思い出させてくれる。 上手に座っている音楽隊の着物も白系のようです。 「たいせつなことはね、目に見えないんだよ・・」。 科白の意味を全体の印象感覚から捕えようとしている。 原作を読んでジワッと感動していれば、その記憶が舞台印象と補足し合って深みが増すはずです。 先日の「 宣告 」とは逆ですね。 「読んでから観ろ、・・」が似合う舞台です。 *第30回下北沢演劇祭参加作品 *CoRich 、 https://stage.corich.jp/stage/102747

(中止)■ねじまき鳥クロニクル

■原作:村上春樹,演出・振付・美術:インバル・ピント,脚本・演出:アミール.クリガー,演出:藤田貴大,音楽:大友良英,出演:成河,渡辺大知,門脇麦,大貫勇輔ほか ■東京芸術劇場.プレイハウス,2020.2.11-3.1 ■うーん、公演中止になっちゃったわね。 これで二本目よ。 *劇場、 https://www.geigeki.jp/performance/20200211p/

(中止)■シッラ Silla

■作曲:G.F.ヘンデル,台本:ジュアコモ.ロッシ,演出:彌勒忠史,美術:tamako☆,衣装:友好まり子,指揮:ファビオ.ビオンディ,出演:ソニア.プリナ,ヒラリー.サマーズ,スンヘ.イム他,管弦楽:エウローパ.ガランテ ■神奈川県立音楽堂,2020.2.29-3.1 ■日本初演で楽しみにしていたが中止になってしまった。 チケット購入後に私事都合や主催都合で観られなくなったのは今年になって初めてよ。 出演者がインフルエンザに罹患しての中止は有るが感染防止理由は初めてね。 今のところこの一本だけ、でも長引くとやばい。 *音楽堂開館65周年記念作品 *劇場サイト、 https://www.kanagawa-ongakudo.com/detail?id=36013

■亡霊たち、再び立ち現れるもの

■原作:ヘンリック.イプセン,翻訳・演出:毛利三彌,出演:久保庭尚子,西山聖了,中山一朗,高山春夫,藤井由紀,劇団:CAPI ■こまばアゴラ劇場,2020.2.20-3.1 ■幽霊だとヒュードロドロになってしまう。 亡霊のほうが合いそうだ。 舞台を観ていたらストーリーも追うように思い出してきた。 奇妙な感覚だ。 気にかかったことをまとめると・・。 ・母ヘレーネの息子オスヴァルへの愛がこんなにも盲目的だったのか!? ここに彼女の亡霊の源泉があるのかもしれない。 ・オスヴァルを簡単に捨てるレギーネの竹を割ったような性格に戸惑ってしまった。 二人は外の世界へ行こうとしていた同志だ。 外れたオスヴァルはもはや不要になったのか!? ・オスヴァルが終幕に母ヘレーネと駆け引きをするのは芝居が過ぎる。 母と子の対話で腑に落ちない場面が幾つかあった。 ・孤児院の火災原因は大工エングストランの煙草ではないのか?  エングストランの態度と科白の裏側はそう言っていた。 牧師のマンデルスの態度も平凡すぎる。 ・・などなど。 隙のない舞台だ。 科白の空間(構造)と時間は淀んでいない。 役者もしっかりしている。 <大人>の演劇と言ってよい。 感動もそれに従った。 内に込めたオトナの感動が湧き起こってきた。 それより亡霊が今も立ち現れているのを思い出させてくれたことだろう。 しかもそれが生物学や医学に深くかかわっているのが面白い。 *CoRichサイト、 https://stage.corich.jp/stage/105255 *「このブログを検索」に入れる語句は、 毛利三彌

■CORPO SURREAL コーポ・シューレアル

■演出:ジェスパー.ベダーソン,音楽:マルコフ,カジワラトシオ,人形師:スベンド.クルステンセン,振付&ダンス:東野祥子,歌手:イザベラ.レイフドッティア,美術:ジョアン.コルクジャー ■スパイラルホール,2020.2.23-24 ■ダンサー東野祥子、人形師クリステンセン、歌手レイフドッテイアの3人が登場するコラボ作品。 人形はマリオネットではなくパペット、それも等身大で精巧に作られているの。 ダンスと人形は衣装や動きに暗さがある。 でも歌手が現れた途端すべてが変わった! 歌手の衣装・歌詞・歌唱そして身体の全てがダンスと人形を吹き飛ばしてしまったの。 何と言ったらいいかしら・・。 うーん、フリークスとは違うがデヴィッド・リンチの世界からやってきた感じね。 でも爽やかさがあるから、もう、歌を聴いただけで最高な気分よ。 ダンサーと人形は歌手の黒子になってしまった。 ところで人形は精巧に作られていると面白さが抜けてしまうのでは? 人形に新しい魂を舞台上で吹き込みたい。 今回は既に入っている魂をそのまま人形遣いが操るだけなの。 感動の質が違ってくるわね。 *劇場サイト、 https://www.spiral.co.jp/topics/spiral-hall/corpo-surreal *「このブログを検索」に入れる語句は、 東野祥子

■宣告

■作:加賀乙彦,演出:菅沢晃,出演:後藤博文,青木克美ほか,劇団:東京ノーヴイ.レパートリーシアター ■東京ノーヴイ.レパートリーシアター劇場,2020.2.20-23 ■薄暗い刑務所内が舞台です。 役者達は声を抑えて話し合う為か素人のようにみえる。 死刑宣告を受けた主人公楠本の執行直前の日々を描いていきます。 いつ来るか分からないから、死を忘れて私たちは生きていけるのでしょう。 分かってしまえば毎日覚悟し続けなければならない。 舞台では宣告を受けて6年も経ってしまった。 この年数を聞いて身体がこわばります。 「死ぬのが怖いか?」。 医師は楠本に尋ねる。 宗教性を感じさせる質問です。 楠本は入信していて死刑前日も神父を招く。 チラシ文章「本当の恐怖は処刑される自分はそれ以外に生き方が無い事なんだ・・」も、献体の話も同じです。 生と死の断絶が大きいほど宗教を緩衝にして物語を進めることになる。 この作品は読んだことがある。 数十年前のことなので内容はともかく衝撃を受けたことを覚えています。 主人公が母の姿を追う終幕の場面はいまでも忘れない(うろ覚えですが)。  観ようか観まいか迷いました。 当劇団はいつも驚きの舞台を見せてくれる。 期待したのですが「読んだら観るな、観たら読むな」でしたね。 悪くはなかったが、宗教をも超えた原作が強すぎる。 *第30回下北沢演劇祭参加作品 *演劇祭 、 https://engekisai.com/archive30/

■瑠璃の舞台ー杉本博司オペラ座への挑戦ー  ■舞踏劇「鷹の井戸」

□瑠璃の舞台-杉本博司オペラ座への挑戦- ■出演:杉本博司,観世銕之丞,語り:高橋美鈴 ■NHK,2020.2.15 ■美術家杉本博司演出のパリ・オペラ座公演「鷹の井戸」の制作映像番組。 杉本は言う、「死生観をもう一度問いたい」「始原に戻りたい」と・・。 彼の作品(写真)には無機から有機が発生するその時の気配が感じられる。 始原の気配を強く意識してしまう。 ここに見応えがある。 さて、舞台の出来はどうだろう? 早速観ることにする(下記に感想)。 *NHKサイト、 https://www.nhk.or.jp/docudocu/program/20/2259677/index.html □舞踏劇「鷹の井戸」 ■原作:W.B.イエイッ,構成.演出:杉本博司,振付:アレッシオ.シルベストリン,作曲:池田亮司,衣装:リック.オウエンス,出演:観世銕之,リュドミラ.パリエロ,ユーゴ.マルジャン,アレッシオ.カルボーネ,舞団:オペラ座バレエ団 ■NHK,2020.2.20(パリオペラ座,2019.9.22収録) ■演出家が気にしていた瑠璃色の良し悪しはテレビではよくわからない。 生の舞台を観たいものだ。 老人の銀、若者の金そして井戸を守る鷹の赤、衣装の色と形が面白い。 離散した音玉が時々聴こえる電子音楽も作品に合っている。 長いヒゲは邪魔にならないかな? 腕や手を意識した振付でバレエから離れる。 コンテンポラリー系に近い。 飛天を描いた前半の群舞は照明の都合で見え難かったが後半はまあまあだ、が手首の動きは雑にみえ、指の動きは大劇場では意味をなさない。 若者と鷹のパ・ド・ドゥは申し分なし。 なんと終幕に能のシテが登場する。 老人の生まれ変わりらしい。 カーテンコールの拍手は弱かった。 観客が戸惑っている様子だ。 オペラ座のバレエ舞台に能を乗せたのは演出家のパワーだと思う。 天晴杉本博司! *パリ・オペラ座350周年公演 *NHKサイト、 https://www2.nhk.or.jp/hensei/program/p.cgi?area=001&date=2020-02-19&ch=31&eid=04822 *「このブログを検索」に入れる語句は、 杉本博司

■アクナーテン

■作:フィリップ.グラス,演出:フェリム.マクダーモット,指揮:カレン.カメンセック,出演:アンソニー.ロス.コスタンゾ,ジャナイ.ブリッジゥ,ディーセラ.ラルスドッティル他 ■新宿ピカデリー,2020.2.21-27(MET,2019.11.23収録) ■ジャグリングを舞台に乗せるとは面白い。 大道芸人がボールやクラブを空中投受させ動きを繰り返す曲芸のことね。 フィリップ・グラスのミニマルとは相性が良いはず(?)。 彼の舞台に似合うのはスローモーション又は演奏にシンクロすること、つまりジャグリングは後者に該当するから。 もちろん作品はこの相反する両方の動きを取り込んでいるの。 そしてもう一つ、グラスの舞台では睡眠と覚醒がやってくることに注意が必要。 今回も2幕後半でウトウトしてしまった。 ヴァイオリン抜きヴィオラは独特の音色感がある。 この流れに乗ることができて他のパートは覚醒し続けたわよ。 ミニマル・オペラに感動するとはこの純粋へと突き進む覚醒の流れに乗れるかどうかだと思う。 話をジャグリングに戻すけど、ボールやクラブを眼で追うのが邪魔になる場面があった。 眼で追うことが誤りかもしれない。 視覚と聴覚を統合化しようとする脳味噌の苦労がみえるから。 それでも第3幕は何とも言えない心地よさを感じることができたわよ。 やはりスローな動きでなきゃだめかも。  ところでA・R・コスタンゾが脱毛したら声(カウンターテナー)が良くなった話には笑っちゃった。 そして、やっとオペラ三部作すべてを観ることができて嬉しい。 一番は「浜辺のアインシュタイン」かな。 *METライブビューイング2019シーズン作品 *METサイト、 https://www.shochiku.co.jp/met/program/2086/ *「このブログを検索」に入れる語句は、 フィリップ・グラス、 マクダーモット

■まほろばの景2020

■作.演出:柳沼昭徳,音楽:中川裕貴,出演:阪本麻紀,澤雅展,あべゆう,小菅紘史,小濱昭博,劇団:烏丸ストロークロック ■東京芸術劇場.シアターイースト,2020.2.16-23 ■初めての劇団ですが、役者たちが白足袋を履いているのに先ず目が行ってしまいました。 ・・主人公の青年は福祉関係の仕事をしている。 彼の担当している若者が行方不明になってしまった。 若者を探しに山へ入るが、そこでは彼の思い出?、いや過去なのか未来なのか区別のつかない場面が次々と現れてきます。 それは東北地方の故郷で神楽を踊ったこと、東日本大震災で家族が被災したこと、熊本地震ボランティアへ行ったこと、行方不明の若者の家族を訪ねたこと、友人と将来の仕事を話し合ったこと等々をです。 そして山で出会う人々は皆「懺悔懺悔六根清浄」と掛け念仏をしながら登っていく。 若者も唱和し登る・・。 このようなストーリーだったはずです。 民間伝承や山岳修行を思い出させてくれる為か身体に響くものがある。 すんだ餅や過去帳、山伏の話も懐かしさがある。 神楽を舞う場面もいいですね。 仕事上での、災害での、他者への対応で迷ってしまった若者が山へ登り六根清浄を目指す理由はジワッと分かる気がしました。 罪罰がはっきりしない場合が人生では多々ある。 意識や無意識にそれがジワッと残っていく。 これを祓おうとする意思が舞台に表れていた。 役者たちの動きや発声に安定感がみえたからです。 再創作公演の為でしょうか? 凝縮力がある。 白足袋を履いている成果もでている。 でも物語として曖昧な感想が残ってしまったのはしょうがない。 *劇場サイト、 https://www.geigeki.jp/performance/theater233/

■リーマン・トリロジー

■作:ステファノ.マッシーニ,演出:サム.メンデス,出演:サイモン.ラッセル.ビール,アダム.ゴドリー,ベン.マイルズ ■シネ.リーブル池袋,2020.2.14-20(ピカデリー劇場,2019収録) ■19世紀中頃、ドイツからアメリカへ移住したリーマン兄弟の3代に渡る銀行・証券会社の経営を描いた舞台。 ヘンリー、エマニュエル、マイヤー3兄弟が活躍する1幕、息子フィリップの2幕、そして孫にあたるロバートの3幕で構成されている。 NYの街並みが移り変わっていく背景の前でガラス箱に入った3人の俳優が150年の会社経営を語るの。 もちろん一人数役よ。 ガラス室とピアノの生演奏が効果を出していたわね。 1幕が面白い。 19世紀後半のアメリカ金ピカ時代、つまり急進する資本主義が描かれ、その時代と経営の間に3兄弟の人生観や世界観がみえるからよ。 例えば彼らの求婚場面は楽しい。 でも後半に行くほど詰まらなくなっていく。 息子や孫は性格しか分からない。 演出家は「詩的な科白をリズムに乗せて・・」と話してしたけど上演3時間は長い。 後半は時間を縮めた(急いだ)為か科白は解説の羅列にしか聞こえなかった。 それでも企業物語としては巧くできていたわよ。 (舞台にはない)日露戦争の資金提供にリーマンが関係していたことも(調べて)知ることができた。 映画館にはいつも以上に観客が入っていた。 学生が多いのかしら? 経済系の講義で話題になったのかもね。 *NTLナショナル・シアター・ライヴ作品 *作品サイト、 https://www.ntlive.jp/lehman *「このブログを検索」に入れる語句は、 サム・メンデス

■野兎たち

■作:ブラッド.バーチ,翻訳:常田景子,演出:マーク.ローゼンブラット,西川信廣,出演:スーザン.もも子.ヒングリー,小田豊,七瀬なつみ,サイモン.ダーウェン,アイシャ.ベニソン,田中宏樹,永川友里 ■新国立劇場.小劇場,2020.2.8-16 ■中村家の娘サキコが結婚のため夫になるダンと彼の母リンダを連れて英国から一時帰国する。 しかしサキコの兄が行方不明になっていた・・。 「タイタニック」や「ダイ・ハード」、ゾンビ映画が機内で話題になったがスタッフに映画好きがいるようだ。 この流れからゾンビは「バイオハザード」に違いない。 両親は行方不明の兄を世間から隠そうとしている。 事件を知られたくない。 父の昔は実業家で兄には厳しかったらしい。 母も娘の結婚式については口うるさい。 両親に戦後日本の保守的な人生観がみえる。 しかも郷土史、古城、仏壇、鮨、和菓子、神社、盆栽などが舞台に上るから尚更だ。 両親の時代錯誤が気になる。 兄の失踪理由は家族、特に父との確執に疲れてしまったのだろう。 両親から精神的に捨てられた娘をみれば分かる。 彼女はピンピン元気だ。 兄の仕事の失敗は失踪の原因とは言えない。 チラシをみると「荒涼たる曠野で孤独を生きる野兎たち・・」とあるが孤独云々というより昔からの家族問題が主題のようだ。 日英共同制作と聞いている。 日本側スタッフはチラシの状況を作りたかったが英国側に押し切られたのかもしれない。 結果として明治時代の私小説気分が漂ってしまった。 現代の孤独がテーマならこのような両親は登場し辛いし風景も似合わない。 登場人物で唯一現代人を意識させたのはダンの母リンダだ。 彼女は一人悠々の生活をしていたがダンのチョッカイで舞台に引きづり出されてしまった。 彼女の結婚観を含め現代世界への対応は的確だ。 「タイタニック」を何度も観ているのも頷ける。 主人公ローズが親の決めた結婚から逃れる話だから。 そして終幕、両親と娘それに兄嫁が鍋を囲む風景で幕が下りるのはどういうことなのだろう? 両親は兄の代わりに娘を縛り付けて家族を演じ続けていくのだろうか? ところで字幕が役者の近くに写し出されていたが見難かった。 役者から離した方が良い。 ついでに、動き回る細長いボックス映像も雑音のようにしか見えなかった。 舞台集中の妨げになった

■リヤ王

■作:W.シェイクスピア,訳:坪内逍遥,演出:中込遊里,演奏:五十部裕明ほか,出演:葵,清水いつ鹿,宮川麻里子ほか,劇団:鮭スペアレ ■銕仙会能楽研修所,2020.2.11 ■料理でいえば旨味が無い舞台です。 能を意識し過ぎたのかもしれない。 能作法も取り入れているが中途半端です。 ト書などを謡にするのは面白いが、例えば摺足や腰の上げ下げなど身体動作はぎこちない。 その動作が観客(私)身体に響かない。 役者身体が変わらないと能の相乗効果が表れないのかもしれません。 坪内逍遥のシェイクスピアは珍しい。 謡が面白かったのはこの為かもしれない。 この劇団は初めてですが戯曲に力を入れているようにみえました。 役者たちの動作や立ち振る舞いが坪内逍遥と能を上手く繋げることができなかった。 身体と科白の関係を試行錯誤している舞台にみえました。 *TPAMフリンジ参加作品 *TPAMサイト、 https://www.tpam.or.jp/program/2020/?program=king-lear

■その河をこえて、五月

■作:平田オリザ,金明和,演出:李炳焄,平田オリザ,出演:三田和代,小須田康人,佐藤誓,白星姫,李南熙,徐鉉喆ほか ■新国立劇場.情報センター,2020.2.9(新国立劇場.小劇場,2002.6収録) ■「2002年春、ソウル漢江の河原。 韓国語学校教師金文浩は、・・生徒たちと自分の家族を連れて花見に出かける・・」(チラシより)。 生徒たちの年齢・職業はいろいろだがソウルで生活している在韓日本人が多い。 河原の土手に満開になった大きな桜の木がみえる。 舞台は終幕まで花見が続き、役者の出入りで場面を転換してく方法は青年団定番の流れと同じである。 生徒の達者とは言えない韓国語が話を面白くさせる。 ベトナム戦争で家族が戦死したことや徴兵制度への対応は韓国を知る上では必須だが、親の介護や子供の学校の話はどの国も同じ問題を抱えているのが分かる。 そして話の至る所で堆積された20世紀日韓史がパッと顔を出す。 教師の弟夫婦がカナダへ移住しようとしているのだが母親には言っていない。 花見の席上で母に打ち明けるところが物語の山場である。 家族が移民をすることで国家とは?民族とは?を真剣に考えせざるをえない。 この点は練られていると思う。  今から20年前の芝居だが、一口で言えば素直な舞台だ。 具体的な話題は広げすぎて表面的にも感じられる。 日韓共同も走りで、それに花見だからしょうがない。 この20年間で情報量が増えたこと、より深みのある日韓共催舞台を観て来た為もある。 唯一存在感ある人物は教師の母親(名前は忘れた)だ。 彼女の一挙一動に写実という意味ではない現実感があった。 保守的な彼女は次男夫婦のカナダ行を最後に許すのだが、それは国家や民族を越えて在る世界へ、生きる為そして生活の為の移民に納得したのかもしれない。 「浜辺の歌」を皆で歌い花見は終わる・・。 *2002年日韓国民交流年記念事業作品 *NNTTドラマ2001シーズン作品 *劇場サイト、 https://www.nntt.jac.go.jp/enjoy/record/detail/37_004523.html

■少女仮面

■作:唐十郎,演出・美術:杉原邦生,出演:若村麻由美,木崎ゆりあ,大西多摩恵ほか ■シアタートラム,2020.1.24-2.9 ■観客層がばらけているのは演出家杉原邦生の賜物かな? 彼は時代劇も結構取り上げているからよ。 会場に入ると未完成な舞台が目に入る。 散らかっている道具類をかたずけながらの幕開きが面白いわね。 そこに壁が下りてきて喫茶「肉体」の店内になる・・。 舞台は春日野八千代の雪組時代と1960年代の匂いを強く繋げている。 それは満州とヒースの厳しい荒野にも広がり、離れ離れの時間と空間が一つになり立ち現れてくる。 作品のエキスを忠実に掴み表現されていたからだと思う。 そして唐十郎の濃くの有る科白が高揚するときには、あのメリー・ホプキンの歌が聴こえてくるの。 「思い出すは、あの日のこと・・」。 この芝居の総てが歌声に乗ってやって来る。 ところで腹話術師の見世物は能で言えば中入り狂言ね。 人形と肉体の不思議な関係が作品全体に滲みていく。 そして寒い国からの来訪者甘粕大尉がAMAKASUと大きく書いてある白マントで登場したのはさすが美術系演出家ね、いつもは軍服なのに。 昨年末の「 少女都市からの呼び声 」を遡り<少女>の故郷に遂に辿り着いた。 *劇場、 https://setagaya-pt.jp/performances/shoujokamen20200102.html

■メアリ・スチュアート

■作:フリードリヒ.シラー,台本:スティーブン.スペンダー,翻訳:安西徹雄,演出:森新太郎,出演:長谷川京子,シルビア.グラブ,三浦涼介,吉田栄作,鷲尾真知子,山崎一,藤木孝ほか ■世田谷パブリックシアター,2020.1.27-2.16 ■映画を観てから劇場に行こうか? 迷いましたが観なかったのは正解です。 一瞬先がどうなるかドキドキの連続でした。 ハンナとメアリの暗い過去の話を、次にモーティマのイタリア旅行回想を聞いてぐぐっと舞台に引き込まれていきました。 カトリックを強く意識する幕開きですね。 キリスト教宗派の違いが構造をしっかりと支えている。  そしてエリザベス女王の白化粧が冴えていました。 仮面にもみえる。 メアリの化粧や衣装と対比が際立っている。 外見は違うが二人とも業が深い、かつ我も強い。 両者の確執がこの芝居の見所ですが宿命も感じられます。 その女王を取り巻く3人の家来、レスター伯、法務方バーリー、事務方タルボットの性格や行動の違いも彼女らに劣らない。 契約・義務・権利の言葉の裏側に疑心や保身そして愛憎を塗りこんで物語が進められる。 誰もが敵か味方かを見定めたい。 メアリが神父メルヴィルに告解をする場面がクライマクスでしょう。 告解で身近に迫った死をメアリと観客の双方が受け入れ演劇のカタルシスを貰えるからです。 しかし3人の家来が女王から逃げていくのを呆然としたエリザベスをみながら、この舞台はメアリ以上の存在感がでていたことも確認しました。 歴史劇だけあって科白に硬さがみえるのはしょうがない。 台詞量が多いこともある。 告解も言葉の優位からくる感動が大きい。 その中で言葉を越えていたのがモーティマでしょう。 彼の身体は活きていました。 *劇場サイト、 https://setagaya-pt.jp/performances/marystuart20200102.html *2020.2.8追記・・ ■二人の女王,メアリーとエリザベス ■原作:ジョン.ガイ,監督:ジョージー.ルーク,出演:シアーシャ.ローナン,マーゴット.ロビー ■(イギリス,2018年作品) ■芝居観後に観てしまいました、映画を、原作者は違いますが。 メアリとその周辺つまり、スコットランド帰還からジェームス6世誕生そしてスコット

■少女と悪魔と水車小屋

■原作:グリム兄弟,作:オリヴィエ.ピィ,演出:宮城聰,出演:鈴木真理子,武石守正,大内米治,貴島豪,大道無門優也,永井健二,若宮洋市,劇団:SPAC ■静岡芸術劇場,2020.1.18-2.2 ■舞台はシンプルな構成で白一色の紙(?)でできている。 白衣装の役者の動きや科白もこの趣向に沿っています。 それは人形のような動きと喋り方をする。 単純化しているのに物語の要は外していません。 英語字幕はもっと約している。 考え抜かれた詩的世界が表れていますね。 少女が悪魔に両手を斬られてしまう。 貧乏から抜け出すのに父が悪魔と契約を結んだ為です。 娘は放浪の末、王様と出会い彼の子供を産む。 しかし悪魔は娘(王妃)と王の間に入り再び混乱させてしまう。 王妃は森へ逃げ子供と静かな生活を送ることになる。 戦場から戻った王は事の始終を知り王妃を探しに出ます。 そして二人は目出度く再会し愛を確認する。 このようなストーリーです。 悪魔は黒尽くめの衣装で登場する。 その悪魔に娘が両手を斬られる残酷さがこの作品の一つの見所ですね。 「本当は恐ろしいグリム童話」は本当だった。 しかし舞台では娘の両手が森の生活で新しく生えてくる! 「奇跡だ!」、王は叫ぶ。 妃は「・・でも、春になると森じゅうで新しい芽が生えるのです」。 王は喜び答える、「(そうだ、この世界のすべてが)奇跡だったのだ。 そのことに驚き続けよう」と。 此の世に生まれてきたのは奇跡といってよい。 この宇宙に生まれる確率は殆ど0だったにもかかわらずです。 生きているだけで素晴らしい。 王様のように奇跡に驚き続けます。 *原作はグリム童話「手なしむすめ」 *SPAC2019シーズン作品 *劇場サイト、 https://spac.or.jp/au2019-sp2020/grimm_2019

■サイレンス

■原作:川端康成,作曲.台本.指揮:アレクサンドル.デスプラ,美術.照明:エリック.ソワイエ,衣装:ピエルパオロ.ピッチョーリ,台本.演出.ソルレイ,出演:ジュディット.ファー,ロマン.ボクレー,ロラン.ストケール,演奏:アンサンブル.ルシリン ■神奈川県立音楽堂,2020.1.25 ■白い床に箱が数個置いてある極めてシンプルな舞台、その後ろに10人ほどの楽団員が一列に座っている。 川端康成の短編「無言」が原作よ。 作家大宮明房の娘富子がソプラノ、大宮の弟子三田がバリトン、語りの男が加わり3人で演じられていく。 静かに進行するストーリーはサスペンス性が感じられる。 音楽や歌唱がそれを印象的に強める。 原作を五感に響かせたような舞台に、忘れていた川端康成が形を変えて戻ってきたようだわ。 オペラ的演劇といえるわね。 背景の映像ではトンネルを通過する場面は良かった。 でも人間を映し出すのは強すぎて舞台の雰囲気を壊してしまった。 科白(ここでは歌唱)で十分に分かる。 それと「母の読める」場面を語りの男が台詞で押し通したのはしょうがないのかな? できれば歌唱で聴きたかった。 舞台が面白かったのでアフタトークを聞くことにする。 出席はデスプラ、ソルレイ、司会、通訳。 (括弧内は私の感想)。 デスプラ:昔は柔道や合気道、茶道をやっていた。(スゲッ!) 楽団衣装は雅楽を取り入れた。 (ほぅ!) 川端は映画も作っている、例えば「狂つた一頁」。 (この作品名が出るとはさすがデスプラ!) 武満徹がドビッシーを取り入れたように今回の作曲も意識してそうした。 (やっぱ、ドビッシーね) ロダン作品の「手」を見つめている川端の姿を覚えている。 (大宮の指の動き・・) ソルレイ:三田は三島由紀夫ではないのか? (そう思った!?) ベッドは観客から背を向けさせた。 (これは良かった、しかも頭髪だけが) 司会:言葉は意味を持っているが一つ一つの音の集合である。 (ソシュールなど言語学との関連をトークで触れなかったのは残念!) (司会者は川端康成の熱烈ファンに見えたが途中で鎌倉文学館館長だと知る) 鎌倉にはトンネルも火葬場もある。 (鎌倉が溢れ出ていて、スゴッ!) 以上。 アーフタトークも楽しかったわよ。 *音楽堂開館65周年記念作品 *川端康成生誕120周年記

■バレエの王子になる! 世界最高峰、ロシア・バレエ学校の青春

■制作:NHK,語り:原田美枝子 ■NHK,2019.9.7 ■昨年に録画したのを観たのですが納得のドキュメンタリー番組でした。 ワガノア・バレエ・アカデミー男子生徒の数名にフォーカスをあて、練習風景や寮生活を映しながら国家試験、就職試験、卒業公演に迫っていく。 校長は元ボリショイバレエ団ソリスト、ニコライ・ツィスカリーゼ。 「気品あるオーラと堂々とした表現で観客には光輝く泡しかみせてはいけない」。 校長の言葉ですがその通りですね。 すべての舞台芸術に言える。 劇場に光輝く泡を観に行くのです。 ダンサーの国家試験があるとは流石ロシアです。 プロを育成するシステムが出来ている。 12の試験プログラムを熟さなければならない。 そして就職試験へ・・、幾つかのバレエ団のオーディションを受けます。 学校の成績は略関係ない。 生徒の一人は国立モスクワ音楽劇場を落ちてしまった。 即戦力も求められます。 校長は言う、「パリオペラ座、ボリショイ、マリンスキーの3つだけ! これ以外のバレエ団への就職は裏街道の人生だ!」。 厳しい。 多くの生徒はマリンスキーを目指します。 卒業公演はマリンスキー劇場で4日間かけて行う。 成績上位のダンサーが主役を務めるのはどこも同じですね。 そして目出度く卒業です。 学校生徒は10歳から18歳の全400名弱。 卒業までに半分以上は脱落するそうです。 この2月末に東京で「世界名門バレエ学校の饗宴」が開催されます。 ニコライ・ツィスカリーゼ校長も来日してクラスを公開するらしい。 楽しみですね。 *NHKサイト、 https://www4.nhk.or.jp/P6071/

■シネマトダンスー3つの小品  ■Farben

■彩の国さいたま芸術劇場.大ホール,2020.1.17-19 □シネマトダンス-3つの小品 ■演出:金森穣,衣装:堂本教子,映像:遠藤龍,出演:Noism1,井関佐和子,山田勇気,金森穣 ■小品の3つは「クロノスカイロス1」「夏の名残のバラ」「FratresⅡ」。 どれも舞台にカメラを載せてリアルタイムで背景に映写する方法を取る。 「クロノスカイロス」はアスリートたち?が走り回り立ち止まり踊る、スピード感のある舞台だ。 タイトルからみて時間と時刻を表現しているらしい。 音楽がバッハだったがダンスに合っていない。 無機質な音楽を使っても面白いとおもうが。 リアルタイムでダンサーの走り回る姿をデジタル時計と共に背景に映し出していた。 「夏の名残のバラ」はカメラマン山田勇気がダンサー井関佐和子について回りデュオとして踊る場面もある。 踊る時はカメラを床に置く。 カメラ動作が密着していて新鮮だった。 この作品は井関が地下の化粧室にいる場面から映し始める。 「中国人の不思議な役人」「マッチ売りの話」のポスターや古びた胴体だけのマネキンも写し出され寺山修司の世界に入り込んだような映像に感激してしまった。 タイトルの歌詞もなかなか良い。 「Fratres」は金森穣のソロだが背景にもう一人のダンサーの影が写り同じ動作をする。 激しい動きもあるが僧が修行をしているようだ。 影が彼の分身にもみえて哲学的宗教的な雰囲気が感じられる。 「映像の力を借りるのではなく、映像の力と拮抗すること」(金森譲)。 観ている時は舞台の流れに身を任せるが彼の映像はとても凝っているのが分かる。 後者2作品は映像と舞台はまさに拮抗をしていて切り離せない。 □Farben ■演出:森優貴,衣装:堂本教子,出演:Noisum1,井関佐和子 ■森優貴は「 NHKバレエの饗宴2017 」に登場している。 暗さのある舞台、動きのある振付になっている。 12名のダンサーは群になり体を捻じれさせ苦しみ悶えているようにみえる。 彼の舞台は文学舞踊劇と言われているがナルホド面白い名称だ。 衣装はモノトーンで上白下黒、小道具の机も黒、そこに花瓶の花束や鉢植えの木葉などを置く。 しかし花や木をみると戸惑ってしまう。 ダンスが瞬断され意味を追ってしまうからだ。 鞄から旅も意識する。 ストーリーも感じられるが身体

■コンチェルト  ■エニグマ・ヴァリエーション  ■ライモンダ第3幕

■TOHOシネマズ日本橋,2020.1.17-23(コヴェント.ガーデン,2019.11.5収録) □コンチェルト ■振付:ケネス.マクミラン,音楽:ドミトリー.ショスタコーヴィッチ,ピアノ:ケイト.シップウェイ,出演:アナ=ローズ.オサリヴァン他 ■ソビエトを感じさせるショスタコーヴィッチの音楽にストーリーのないマクミランの振付が何故かロシア小説の風景や軍隊などを思い出させてくれる。 抽象バレエだがどこかモダン・バレエを感じる。 20世紀中頃の振付の混沌が表れているようね。 隠れたドラマチックのためミニマルの陶酔感はやってこない。 □エニグマ・ヴァリエーション ■振付:フレデリック.アシュトン,音楽:エドワード.エルガー,出演:クリストファー.サウンダース他 ■作曲家エルガーが仕事の吉報を待つという変わったストーリーで、ビクトリア朝後期の彼の家族と友人たちが当時の生活衣装で登場するの。 激しい動きより静かな振付の方が当時の日常生活を持ってきてくれる。 イギリス人なら古き時代を思い出しながら観たはずよ。 □ライモンダ第3章 ■振付:ルドルフ.ヌレエフ,音楽:アレクサンドル.グラズノフ,指揮:パーヴェル.ソロキン,出演:ナタリア.オシポワ,ワディム.ムンタギロフ他 ■ハンガリー民族舞踊とロシア・バレエが混在している面白い舞台だわ。 中途半端にみえたのは、いきなり第3幕のライモンダ・パ・ドゥ・トゥに入っていく流れだから? 振付に丸みを感じたのは民族衣装が原因かな? これがダンサーの動きを均一にさせた。 ナタリア・オシポワもどこにいるのか分からないような舞台だった。 細かいことは兎も角、違いが目立つ3作品を一度に観ることができて楽しかったわよ。 *ROHロイヤルオペラハウス シネマシーズン2019 *映画comサイト、 https://eiga.com/movie/91700/

■雉はじめて鳴く

■作:横山拓也,演出:眞鍋卓嗣,出演:若井なおみ,深堀啓太朗,保亜美ほか ■俳優座,2020.1.10-19 ■高等学校を舞台にした小説や芝居は面白い。 誰もが通過してきた場所だから思い出しながら観てしまった。 登場人物の性格や繋がりを上手く表現した科白の面白さで引き込まれてしまう。 思わずゥフッゥフッと笑いが漏れてしまう箇所も多くある。 女性教師マユと男子生徒ケンの関係を謎にしている舞台だ。 それは師弟関係、恋人関係、カウンセラー&クライアント関係等々あるが・・。 ケンは悩んでいるらしい。 それが家族崩壊だと分かってくる。  それにしても高校教師は大変な仕事だと今更ながら思ってしまった。 学校組織の外に問題の要因がある場合に教師はどのように行動し解決していくのか? その前に<問題は個人で抱えるな!>はどの組織でも言える。 教師マユは男子生徒との関係をどの時点で個人から切り離し組織へ渡せばよかったのか? 舞台を観ながら考えてしまった。 スクールカウンセラーも答えられない。 しかもこの作品は結末が<芝居的>だ。 教師マユは「自分が責任をとる!」と叫ぶ。 たとえ部下が一人で問題を抱えてしまっても管理者が責任を取るのが組織の存立理由でもある。 校長はそう動こうとしているようで少し安心した。 会社組織のことも考えながら観てしまった。 サッカー部マネジャーが教師へ問う最後の言動は立派、そして教師マユは行動に問題もあるが直向きな人間愛がケンに伝わったのがこの芝居のオチだろう。 それは母性愛の様なものかもしれない。 ということでプログラムを買うことにした。 この芝居もそうだが、ドロドロした人間関係が広がっている生徒の後ろへ片足どころか両足を教師は突っ込むしかない。 「教員の皆様、日々ご苦労様です」と作家も書いている。 タイトルの「雉はじめて鳴く」はケンの母への反抗を指していると見たが、教師との関係が新しい段階に入った意味もあるようだ。 終幕の車椅子の女とそれを引く男が誰だったのかは書いてなかった。 *劇団俳優座第340回公演 *CoRich、 https://stage.corich.jp/stage/104053

■鶴かもしれない2020

■作・演出・美術・出演:小沢道成,音楽:岡田太郎,舞台監督:竹井祐樹,照明:南香織,衣装:藤谷香子,ヘアメイク:笹川ともか ■下北沢駅前劇場,2020.1.9-13 ■タイトル末尾の年号は再演の印らしい。 近頃よく見かけますね。 演出家も検討を重ねてきたのでしょう。 良くまとまっている舞台でした。 一人舞台の女主人公である相手はラジカセ?から喋り続ける男です。 途中で役が入替り男が演じ女がラジカセになり、話が佳境に入ると一人二役にもなる。 しかもラジカセの声も二役でト書を兼ねている。 そのト書も二つに分かれ状況説明と物語「鶴の恩返し」を朗読していく。 これらが綿密に組み立てられていてスキがありません。 「鶴の恩返し」を聞きながら、現代の男女の出会いと生活を重ね合わせていくストーリーです。 二人の生活風景は貧しい。 (男が)安易にカネを求める惰性。 (女が)肉体を削ってカネを得る限界。 この惰性と限界が結び合って起こる現代の悲劇を描いている。 でも女は男にそこまで恩返しをしなければいけないのか? <恩返し>の相手を広げることが現代では必要なのでしょう、・・女はそうしたが初めの一歩で別の道を選択しましたね。 途中、衣装を散らかしダンスに近い激しい動きや照明が舞台を豊かにしていました。 ところでラジカセから聞こえる男の喋り方が無垢なのは演出でしょうか? <恩返し>つまり約束や愛がボヤケてしまった一因にみえます。 *TPAMフリンジ参加作品 *CoRichサイト、 https://stage.corich.jp/stage/104143

■廓文章 吉田屋

■出演:片岡仁左衛門,坂東玉三郎,坂東巳之助,大谷桂三,澤村由次郎,片岡秀太郎,片岡我當 ■東劇,2020.1.3-(歌舞伎座,2009.4収録) ■伊左衛門の振付や発声が微妙で複雑さを持っている。 上方歌舞伎独特の動きや台詞の為でしょうか? 太夫の語りが多いのでそれはマイムのようにみえる。 科白も分からない箇所が結構ありました。 でも観ればみるほど味が出てくる作品のようです。 片岡仁左衛門のインタビューが入っていました。 上方歌舞伎の維持活動、東京公演での難しさ等々の話から作品周辺の状況も分かります。 文字の入った紫衣装が映えていた伊左衛門でしたが、後で調べたら「夕霧からの恋文を繋ぎ合わせた紙衣」だったとは複雑な驚きです。 彼の貧しさ如何わしさ切なさが見えるようで見えない。 複雑な驚きは未だ沢山ありそうですね。 太鼓持豊作が二人の仲に入り舞台を活性化させていたのも面白い。 次回は違う役者で観てみたいですね。 *シネマ歌舞伎第35弾 *シネマ歌舞伎サイト、 https://www.shochiku.co.jp/cinemakabuki/lineup/43/ *「このブログを検索」に入れる語句は、 片岡仁左衛門、 坂東玉三郎

■2019年ライブビューイング・ベスト10

□ ワルキューレ   演出:キース.ウォーナー,歌団:ROHロイヤルオペラハウス □ マーニー   演出:マイケル.メイヤー,歌団:METメトロポリタン歌劇場 □ アドリアーナ・ルクヴルール   演出:デイヴィッド.マクヴィカー,歌団:METメトロポリタン歌劇場 □ リア王   演出:ジョナサン.マンビー,劇団:NTナショナルシアター □ 英国万歳   演出:ジョナサン.マンビー,劇団:NTナショナルシアター □ ピーター・グライムズ   演出:ウィリー.デッカー,歌団:NNTT新国立劇場 □ タウリスのイフィゲニア   演出:スチィーヴン.ワズワース,歌団:METメトロポリタン歌劇場 □ みんな我が子   演出:ジェレミー.ヘレン,劇団:NTナショナルシアター □ イヴの総て   演出:イヴォ.ヴァン.ホーヴェ,劇団:NTナショナルシアター □ くるみ割り人形   演出:熊川哲也,舞団:K-BALLET COMPANY *並びは上演日順。 当ブログに書かれたライブビューイング(舞台を撮影して映画で上映)から選出。 ライブ以外の録画も含む。 *選出した劇団等に偏りがあるのは全ビューイング鑑賞数が少ない為。 2019年はBOL(ボリショイバレエ),シネマ歌舞伎,ゲキXシネ,宝塚,上記のK-BALLET,MET,NT,ROHなど約10プログラムが対象。