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■ばらの騎士

■作曲:R・シュトラウス,指揮:E・ワールト,演出:N・メリル,出演:R・フレミング,S・グラハム,C・シェーファ ■東劇,2012.8.25-9.28(MET,2010年収録) ■政治色のない喜劇的な舞台で身分や結婚制度を重視していてとても保守的にみえた。 しかも内なる破壊者オックス男爵を登場させてこの保守をより強固にしている。 ズボン役はグラハム、そして元帥夫人がフレミング。 でも両者の性格も顔付きもそして歳も似ているから面白みがない。 思い切ってオクタヴィアンを若手にしたら楽しい舞台になったはずよ。 少女漫画と宝塚のルーツともいえる作品だけど不発だった。 盛り上がらなくても最後の三重唱で終わり良ければ全て良しになってしまうのがシュトラウスの魔術ね。 *METライブビューイング2009年度作品 *作品サイト、 http://www.shochiku.co.jp/met/program/s/2009-10/#program_05

■トスカ

■作曲:G・プッチーニ,指揮:J・コラネリ,演出:L・ボンディ,出演:K・マッティラ,M・アルバレス,G・ギャグニッザ ■東劇,2012.8.25-9.28(MET,2009年収録) ■プッチーニは厚ぼったいけど切れがあり独特の軽さを持っている。 これがいいのね。 ストーリーは面白い作品だけど今回はそれが発揮できていなかったようね。 理由は歌手が下手な感情移入をし過ぎたからよ。 スカルピアは上手かったけど。 ニューヨークでは演出家に対して大ブーイングがあったと聞いているけど分かる気がする。 歌手への演技指導以外に、舞台装置の空間把握が大雑把なこと、拷問道具や血の表現、殺人場面の写実主義はいいけど冗長度が有り過ぎたのね。 1幕のテ・デウム場面はまあまあだった。 でもこの劇的な場面をスカルピアが壊してる。 彼を少しずつ後ろに下がる演出にして欲しい。 *METライブビューイング2009年度作品 *MET、 http://www.shochiku.co.jp/met/program/s/2009-10/#program_01

■異邦人

■作:A・カミュ,演出:南雲史成,出演:演劇集団風 ■レパートリーシアターKAZE,2012.8.23-27 ■舞台の白砂で異邦人の世界へひとっ飛びです。 本を読んだ時はトランペットもいいかな?とずっと思っていましたがギターの生演奏もいいですね。 しかし幕が上がり、・・どうも何か変です。 セリフが棒読みのように聞こえます。 詩を読んでいるようでもあります。 それはト書きのようです。 朗読劇のようにみえます。 やっとこれに慣れてきて芝居に入ることができました。 この作品は映画や舞台で観ていますが、どうもシックリいったことがありません。 今回これだけしっくりしたのは初めてです。 たぶん半朗読劇にしたからではないでしょうか? 本を読んだ時の感動が強いとそれから抜け出せないのです。 朗読劇は本に近いので安心したのかもしれません。 ところでムルソーは背筋を伸ばして科白を喋るとイメージがよくなるでしょう。 *劇団サイト、 http://www.kaze-net.org/repertory_2012#title7

■ドン・カルロ

■作曲:G・ヴェルディ,指揮:Y・セガン,演出:ニコラス.ハイトナー,出演:R・アラーニャ,M・ポブラスカヤ,F・フルラネット ■東劇,2012.8.25-9.28(MET,2010.12.11収録) ■大味だけど出来事が一杯詰まった作品ね。 ヴェルディはこの一杯の量を質に転化する方法を知っていたのよ。 最初から質で勝負するワーグナーとは違ったオペラ的感動がするの。 そして言葉の対話ではなくて重唱でね。 エリザベッタがもう少し強く出ればもっと厚みがでたはず、観終わった時のドン・カルロの存在は薄かった、ロドリーゴは動作が乱暴で雑だった、結局はフィリッポ二世が一番目立ってしまった。 でも一人ひとりが皆主人公だから舞台に重層感がでていたわ。 このようなオペラ的感動を得たのは初めての経験だわ。 演劇的的感動や映画的感動とは違う何かよ。 あと30本オペラを観ればこれが何かわかるかも。 *METライブビューイング2010作品 *作品サイト、 http://www.shochiku.co.jp/met/program/s/2010-11/#program_04

■トゥーランドット

■指揮:A・ネルソンス,演出:F・ゼフィレッリ,出演:M・グレギーナ,M・ポプラスカヤ,M・ジョルダーニ ■東劇,2012.8.25-9.28(MET収録) ■トゥーランドットの宣言「・・彼の名前は’愛’」はこの作品のすべてを物語っているわね。 愛という言葉がいつも先行している。 この言葉から精神的な一つの世界を構築しようとしている作品だわ。 ゼフィレッリもわかっているから舞台は絢爛豪華にしているの。 少しでも物質世界に近づくためにね。 道化のピンポンパンの登場もよ。 リューのポプラフスカヤは適役だった。 あのゆっくりとした叙情的なアリアは素晴らしいわ。 トゥーランドットのグレギーナは真面目過ぎる感じね。 やはり終幕はもっとくだけてもいいとおもうの。 でないと観客のカタルシスが高まらないわ。 *METライブビューイング2009作品 *作品サイト、 h ttp://www.shochiku.co.jp/met/program/s/2009-10/#program_03

■共犯的戯レゴト

■出演:工藤丈輝 ■新宿・URGA,2012.8.23 ■ナント!観客席がうしろほど低くなっているから上半身しかみえない。 しかも舞台はベースとサクソフォンが占めているので踊りは1平米しかない。 これだけ狭いと工藤のいつものキツイ眼だけが目立つ。 初めはサキソの音に縛られてうまく踊れない。 半袖のカバーオールを脱いでやっと筋肉が解れてきたようだ。 しかし白の下着はいただけない。 日常性を持ち込み過ぎている。 上は1枚で十分。 この下着も脱ぎ裸になってやっとサキソから解放された。 この狭さでは指先や顔の表情、眼の動きなどに新しさを取り入れないと面白みがない。 実験的な動きをどんどん取り込んでほしいものだ。

■空舟  ■一見後領置

■日暮里・D倉庫,2012.8.19 □空舟 ■出演:舞踏舎天鶏 ■激しい音楽を背景に、洗濯バサミハンガーを頭からかぶって痙攣踊りをする鳥居えびす。 次に鈴の音や流れるような音楽の中、白塗に彼岸花を頭に飾って白灰色のドレスで静かに踊る田中陸奥子。 再び黒パンツ裸のえびす、アホ丸出しの演技。 ひとつひとつのシーンはとてもいい。 しかし二人の関係がまったく見えない。 この関係性が表現できれば一層面白くなる。 □一見後領置 ■出演:アダチマミと無所属ペルリ ■9人のダンサーは白シャツに紺のパンツやスカートの衣装でとても地味である。 ロック系のリズムで身体の一部をスローに動かしていたが、次には壁に登ったり倒れこんだり、そして最後は盆踊りを基本にしたような踊りだ。 音楽も振付も数十年前の古さが漂っている。 しかし彼女らはこの古さを意識しているようにもみえるが・・。 上手いダンサーが数人いたが、衣装の地味もあって高校生のダンスをみているようだった。 今日の二つの舞台もダンサーはよく崩れ倒れてはいたが今年のテーマ「崩れる身体」との関係はよくわからい。 このテーマでは抽象すぎるのではないか? *ダンスがみたい!14崩れる身体 *劇場サイト、 http://www.d-1986.com/d14

■芭蕉通夜舟

■作:井上ひさし,演出:鵜山仁,出演:阪東三津五郎 ■紀伊国屋サザンシアター,2012.8.17-9.2 ■4人の黒子が登場しますが阪東三津五郎の一人芝居です。 背景が次々に変わるので消化不良を起こしそうですが、セリフも軽いし、駄洒落も多いので舞台についていくことができます。 連句会や便秘など芭蕉の描き方には井上ひさしならではの面白さがあります。 しかしいつものコクがありません。 やはり一人芝居のため言葉の複雑さや深みが発揮できないのでしょうか。 チラシに「芭蕉はひとりで生き、ひとりで死んでゆくのを究めた」とあります。 これと芭蕉の旅を含めた行動との結びつきが舞台では弱くみえます。 井上ひさし生誕フェスティバルの中での息抜きの作品とみました。 夏休みですね。 *劇場、 https://www.kinokuniya.co.jp/c/label/20120516110000.html

■ワルキューレ

■作曲:R・ワーグナー,指揮:J・レヴァイン,演出:R・ルパージュ,出演:B・ターフェル,J・カウフマン,D・ヴォイド ■東劇,2012.8.11.-17(MET2011.5.14収録) ■ヴォータンが饒舌過ぎるわね。 これは登場人物の多くに当てはまるの。 過去を抱え込んだので説明が増えてしまったのよ。 幕が開いてジークムントとジークリンデ、フンディングのセリフのやり取りも長過ぎる。 下手な芝居をみているようだわ。 でもフリッカは存在感があった。 しかもエルダとジーク兄妹の母が登場しなかったことでやりたい放題ね。 ヴォータンが「神より自由な者がお前を助けるだろう」とブリュンヒルデに言う科白から神々の苦悩が一番表れている作品かも。 でも「 ラインの黄金 」のような劇的さがみえない。 先にも言ったように肝心の場面で説明の台詞が多く入り過ぎたから。 そして終幕ターフェルの歌唱力に疲れが出てしまったことも。 カウフマン、ヴォイドは声はいいけど演技が緩いし・・。 4夜を通してみると長編小説を読み終えた時と同じ感動かしら。 19時間の上演も長かった。 人間の喜びや苦悩がどこから来るのか、歌唱と音楽を通してゆっくりとした流れのなかで表現されていたからだとおもう。 *METライブビューイング2010 *作品サイト、 https://www.shochiku.co.jp/met/program/s/2010-11/#program_12

■ラインの黄金

■作曲:R・ワーグナー,指揮:J・レヴァイン,演出:R・ルパージュ,出演:B・ターフェル,S・ブライズ ■東劇,2012.8.11-17(MET2010.10.9収録) ■まだ「ワルキューレ」は観てないけど、ワーグナーはこの序夜を一番推敲して仕上げたのではないかしら? セリフが少なくてテンポがゆっくりしている。 だから言葉の意味を噛み締めながら観ることができるの。 より物語に深く入り込める。 ここまで登場人物たちの心と体を演じるなんて芝居以上だわ。 言葉少ないヴォータンが何を考えているのか? アルベリヒやフリッカそしてローゲの表情一つ一つにも釘付けになってしまった。 巨人兄弟はちょっと下手だったけどね。 「ジークフリート」はこの「ラインの黄金」を発展させたけど雑音が多すぎた。 「 神々の黄昏 」は前作の反復で冗長すぎた。 「ワルキューレ」は予想がつかないわ。 でもワーグナーは当初は第一夜迄を計画していたから期待できそうね。 *METライブビューイング2010 *作品サイト、 https://www.shochiku.co.jp/met/program/s/2010-11/#program_01

■蜜室

■振付:遠田誠、出演:向雲太郎、まことクラヴ ■シアタートラム、2012.8.8-11 ■ http://setagaya-pt.jp/theater_info/upload/file/makoto9love_pm_pdf_dl_file.pdf ■久しぶりに面白い舞台に出会った。 振付はハッキリしていて力強い。 セリフや歌が異化作用として効いている。 子供の三輪車で舞台を動き回っている客演の舞踏家も様になっている。 一つ一つはごちゃ混ぜだがベクトルが合っている。 舞台には「差し押さえ」のテープがベタベタ貼られている。 劇場の差し押さえをしたいそうだ。 「劇場の存在意義はどこにあるのか?」  久しぶりに嬉しいセリフを聞いた。 公演時間も一時間で緊張感が緩まない。 後味が複雑で考えさせられる舞台だった。

■カム・フライ・アウェイ

■振付:トワイラ・サープ ■オーチャードホール、2012.7.24-8.12 ■ http://stage.corich.jp/img_stage/l/stage27467_1.png?1408670598 ■上手にバーのカウンタやテーブル、下手にもテーブルそして階段、後方に楽団。 ダンサーは14人。 舞台が狭いから前半はエンジンがかからないようね。 そしてシナトラの歌だけだと振付まで同じようになってしまい飽きてきてしまうわ。 でもダンサーがひと汗かいた18曲あたりから、キャバレースタイルが生きてきてノッてきたの。 男性は暑くてどんどん脱いでしまい盛り上がった舞台になってきたからよ。 そして歌抜きの「テイクファイブ」でサープの振り付けも動きがより自由になった。 最後は星空の下での「マイウェイ」。 女性は三回目の衣装替えのドレス姿で終幕をむかえキッチリと全体をまとめていた。 中粒なミュージカルだけど一夜を楽しめたという充実感があってさすがブロードウェイね。

■クリンドルクラックス!

■作:フィリップ・リドリー、演出:陰山恭行 ■世田谷パブリックシアター、2012.7.28-8.5 ■ http://stage.corich.jp/img_stage/l/stage28376_1.jpg?1343815097 ■11歳の主人公ラスキンとトカゲ大通りの人たちとの懐かしさのある生活が描かれています。 少し不思議な感じのする舞台です。 それはラスキンの意識ある行動では17,8歳ですが無意識の行動は11歳だからです。 この差が混ざり合って舞台に現れるので不思議さがあるのです。 ラスキンの両親も隣人もまるで蜥蜴のようです。 蜥蜴は神経質なわりにはデレッと日向ぼっこをしたり絡まり合ったりします。 トカゲ大通りがどういう場所かよくわかります。 そして物語は突飛なところがありますが格別に面白いというわけでもありません。 原作は児童文学のようですがもし子供だったらこの舞台をどう感じるのか? これがよく分からないのが残念です。 それだけ歳を取ってしまったようです。