投稿

11月, 2020の投稿を表示しています

■シェイクスピア「ソネット」

■演出:中村恩恵,首藤康之,出演:米沢唯,首藤康之 ■新国立劇場.中劇場,2020.11.28-29 ■舞台はとても暗い。 思っていたシェイクスピアとは違う雰囲気だ。 3場から構成されている。 「シェイクスピアの真・善・美を具現化したい・・」。 それは愛の姿を描いた作品らしい。 ソネット集(?)からの短い台詞が場の初めにある。 そこは首藤康之が喋る。 彼は剛体的筋肉質にみえる。 もう一人の米沢唯はさすが肉体を軽やかに消している。 二人はアンバランスだが良いのか悪いのか分からない。 意味ある複雑な動きが疲れさせる。 ダンスを観る喜びは少ない。 しかし2場後半から慣れてきた。 広い中劇場を巧く使っていた。 照明でエリアを区切り物語の連続性を容易にしている。 再々演*1だが演出家はこの作品に拘っているようにみえる。 しかしシェイクスピアでも私の知らない世界のようだ。 ちょうど1年前、この劇場でみた「 ベートーヴェン・ソナタ 」は年末の忙しさがでていた。 今年はコロナ禍のためかもしれない。 忙しさは見えない。 *1、「 シェイクスピア「ソネット」 」(2011年),「 シェイクスピア「ソネット」 」(2013年) *NNTTダンス2020シーズン作品 *劇場サイト、 https://www.nntt.jac.go.jp/dance/shakepeare-sonnets/ *「ブログ検索」に入れる語句は、 中村恩恵

■コーカサスの白墨の輪

■作:ベルトルト・ブレヒト,演出:レオニード・アニシモフ,劇団:東京ノーヴイ・レパートリーシアター ■梅若能楽学院会館,2020.11.28-29 ■舞台は淡々と進んでいきます。 とても淡泊だが能を真似ているので違和感が少ない。 でも模倣にバラツキがあるので奇妙な場面はあります。 強いて真似る必要は感じられないが、しかし面白さは出ている。 衣装も舞台に溶け込んでいました。 原作は読んでいません。 上演2時間半の長さから原作に忠実な舞台のようです。 戦争、特に亡命の苦難が細かい描写にも色濃くでている。 舞台は何度か観ているがここは再発見ですね。 ブレヒトを重ねてしまった。 もう一つ、裁判官の歌唱が楽しい。 裁判中に酒をグビクビやるのは頂けないが。 能が絡むと物語に流れる時空が乾いた色になる。 それは詩に近づくようです。 *劇団、 http://tokyo-novyi.muse.weblife.me/japanese/pg564.html

■アルマゲドンの夢

■原作:H・G・ウェルズ,台本:ハリー・ロス,作曲:藤倉大,指揮:大野和士,美術:バルバラ・エーネス,衣装:ウルズナ・クドルナ,出演:ピーター・タンジッツ,セス・カリコ,ジェシカ・アゾーディ他,演奏:東京フィルハーモニー交響楽団 ■新国立劇場.オペラパレス,2020.11.15-23 ■H・G・ウェルズは芸術系SF作家とは言えない。 オペラにするとどうなるのかしら? しかも夢の話に彼は弱いはず、この作品はそれらしいが。 タイトルも漫画のようで粗筋を読んでも珍紛漢紛だわ。 ・・なるほど、独特な雰囲気の舞台に仕上がっているわね。 無調のような演奏に不安が漂っている。 歌唱もその線に沿っている。 映像の多用もその雰囲気を支持している。 全体の不気味な統一感が何とも言えないわね。 主人公クーパーの夢の中の話らしい。 彼が「アルマゲドンの夢」を見るということなのね? でも夢と現実の境界は定かではない。 その中で妻ベラとの日常場面が素敵ね。 社会活動へ向かうウェルズらしい展開がより不協和音を奏でる。 それはサークルという政治組織の登場よ。 <ストームトルーパ>のような彼らの姿がオペラを忘れてしまう。 まさに「来るべき世界」の前触れを描いた作品になっていく・・。 でもウェルズSFをまとめ切ったのはオペラの総合力だとおもう。 なんとも言えない味わいが残った。  ジワッ、と後から効いてくる気がする。 *NNTTオペラ2020シーズン作品 *劇場サイト、 https://www.nntt.jac.go.jp/opera/armageddon/

■M

■振付:モーリス・ベジャール,音楽:黛敏郎ほか,出演:柄本弾,宮川新大,秋元康臣,池本祥真ほか,舞団:東京バレエ団,ピアノ演奏:菊池洋子 ■神奈川県民ホール,2020.11.21 ■演劇を感じさせるバレエで楽しかったわよ。 三島小説を思い出させてくれるから。 しかも音楽に能を使う場面が多い。 このためダンサーが空間を流れるように動けない。 鼓のリズムは踊り難い。 振付は逆にコンテンポラリー風に近づいていくのね。 弓道や鹿鳴館舞踏会、金閣寺などの小道具や小説中の人々とダンサーの立ち位置が絶妙なの。 場面各々が絵になっていて素晴らしい。 空間バレエと言っても良い。 舞台上手に黒板がありそこに「死」の文字をチョークで1画数づつ書いていく。 うーん、これは良くない! 文字は意味を引き寄せ舞台の流れを瞬断するから。 折角の美術の良さが薄くなってしまった。 書かなくても死の気配は表現されていたのに・・。 潮騒の浜を少年ミシマが祖母と歩く姿で始まりこれで終わる、三島由紀夫らしい流れだった。 少年は全幕に登場、そして作家の分身4名がその周囲で踊る・・。 ダンサーたちの出来栄えは満点だったわよ。 *三島由紀夫没後50周記念公演 *劇場サイト、 https://www.kanagawa-kenminhall.com/detail?id=36809 *「ブログ検索」に入れる語句は、 三島由紀夫

■un

■脚本・演出:一宮周平,出演:佐藤竜,辻本耕志,中前夏来ほか,劇団:PANCETTAパンチェッタ ■シアタートラム,2020.11.19-22 ■食事と排泄がなくなった未来を描いています。 でも食事も排泄もしたい! そういう人々が登場する。 でもこの行為には罰則がともなうらしい。 だから隠れてする・・。 登場人物の一人が焼いてきたナンを、周囲に憚りながら、皆が貪り食う。 「un」はunkoのウンですか? ナンにもかけているのかなぁ? ナンを見たときウンコ塗れの下着かと勘違いしました、ウハッ! 綺麗な話にならないのは分かりますが、それよりもストーリーが盛り上がらない。 パンを作ったが膨らまないという感じです。 途中のダンスにも乗れない。 それは・・ 長い台詞が中途半端な文語調だからでしょう。 哲学書の一部を抜粋してきたように聞こえる。 特に存在・価値・行為など硬い単語が耳に引っかかりました。 もう一つ、人物たちの縮こまってしまう台詞が多い。 罰則はわかりますが家族の縛りが気になりました。 「母さんが言っていたから・・」。 「両親がやってはいけないと言っていたから・・」。 舞台の流れが切れてしまう。 つまらない動機です。 縛りから解放されていた姉の直感的行動は冴えていましたが。 それよりも排泄や食事は舞台に馴染まない。 生身の身体が演ずるので気を抜くと日常に戻ってしまう。 この挑戦に迷いがあった(ようにみえる)。 以上が膨らまなかった3点です。 舞台美術と照明は逆にどっしりしていてストーリーとの折り合いに苦労しました。   *第6回世田谷区芸術アワード”飛翔”舞台芸術部門受賞記念公演 *シアタートラムネクスト・ジェネレーションvol.13 *劇場、 https://setagaya-pt.jp/performances/next13.html

(中止)■Knife

■演出:小野寺修二,出演:大庭裕介,梶原暁子,崎山莉奈ほか,舞団:カンパニーデラシネラ ■神奈川芸術劇場.大スタジオ,2020.11.21-29 ■「・・予定しておりました「Knife」は、劇場が定期的に行う新型コロナウイルス感染症のPCR検査の結果、出演者に陽性反応が確認され、公演開催の準備が整わないため、当該期間の全公演を中止とさせていただきます・・」。 こういうことが当分続くかもね。 チケ購入後の中止は累計29本目。 振替公演はスケジュールが合わない。 *劇場サイト、 https://www.kaat.jp/d/Knife *「ブログ検索」に入れる語句は、 小野寺修二

■マキム!

■演出・出演:伊藤キム,森下真樹,舞団:フィジカルシアターカンパニーGERO,森下スタンド ■東京芸術劇場.プレイハウス,2020.11.13-15 ■伊藤キムと森下真樹が「めぐりあう、ダンスの環」になって「カラダとコエとオンガクと」を奏でる舞台のようです。 1幕は演出家二人のデュオ。 科白に重きを置いているようにみえる。 短い言葉に擬声語擬態語を織り交ぜて二人は動き回る。 海外都市のことなどを即興のように喋っていく・・。 ダンサーが声を出すとダンスが疎かになってしまう。 意味ある言葉はダンスを遠ざける? 声を出した瞬間、意味や音は身体から離れてしまうからだと思います。 でも伊藤キムは言葉を己の身体に巧く絡めていました。 彼は「身体・声・言葉が自由に響き合うことを追求」しているようです。 その成果が出たのでしょうか? 2幕はGEROと森下スタンドの両舞団11名が登場です。 両者を観るのはたぶん初めてかな? 笑える科白は身体に留まり易いですね。 後半はダンスに専念していく。 勢いがあって気持ちがいい。 コロナ禍では映像が多いのですが生舞台でみるダンスは最高です。 *TACT FESTIVAL2020 EX タクト・フェスティバル スピンオフ公演 *劇場サイト、 https://www.geigeki.jp/performance/theater257/

■赤鬼

■作・演出:野田秀樹,出演:夏子,大山廉彬,河内大和,森田真和ほか ■東京芸術劇場.WEB配信,2020.11.13-30(東京芸術劇場.シアターイースト,2020.7.27収録) ■今、WEB配信する理由がよく分かる。 共同体の掟、その内と外そして境界、他者との交流など現代社会の動向に深く関わっている作品だから。 それは字幕を付けて世界に発信する・・。 床は白、役者衣装も白でシンプル、その動きは軽やか、科白は単刀直入で分かり易い。 カーテンコールの挨拶から観客席は四方にあるのが分かる。 客席は映像ではよく見えない。 閉じた共同体では重み有る言葉「やりたい!」「やっていない!」が多くて耳障りだった。 でも身体に絡みつかないから性は抽象に向かう、・・役者たちは言葉のダンサーのように。 物語構造は最初に終幕場面を持ってくるウロボロスにしているの。 鬼(=他者)を殺す行為が未来も続くことを暗示している。 作品は世界仕様で出来合いは略パーフェクトと言ってよい。 *劇場サイト、 https://www.geigeki.jp/performance/theater240/ *「ブログ検索」に入れる語句は、 野田秀樹

■じゃじゃ馬ならし  ■オープニング・ナイト

■東京芸術劇場.プレイハウス,2020.11.6-8(2009,2010年収録) □じゃじゃ馬ならし ■原作:W.シェイクスピア,演出:イヴォ.ヴァン.ホーヴェ,出演:ハンス.ケステング,ハリナ.ライジン他,劇団ITA(インターナショナル.シアター.アムステルダム) ■「ローマの悲劇」公演中止は残念でした。 代わりがこの映画ですか。 舞台記録映像ですがそうは見えない。 編集がけっこう入っているからです。 ・・ビール箱が運び込まれるところから始まります。 パトヴァ商人のじゃじゃ馬娘カタリーナにヴェローナの紳士ペトルーキオが求愛するストーリーだが、ハイネケンを飲みながらの役者たちの演技は乱痴気騒ぎそのものです。 カタリーナの八つ当たりはモテモテの妹ビアンカに嫉妬していたのでしょうか? 父を含めた家族から解放されたいが為のヒステリーにみえる。 ペトルーキオの前に立つと動きも言葉も少なくなってしまったからです。 彼女の行動は素直すぎる。 しかもペトルーキオとの間には愛というものが育っていかない。 彼女がロボットのようにみえてしまった。 ペトルーキオの命令調の台詞もカタリーナの心まで届いていない。 これはどうしたことか!  しかし舞台パワーは全開ですね。 二人の愛はどうでもよい? ところでペトルーキオが観客に喧嘩を売るような場面がある。 客にまぎれた役者でしたがちょっと驚きました。 小劇団ではよくあるのですが・・。 そして妹ビアンカは姉より曲者ですね。 求婚者も妹と似た者同士というのがこの舞台の面白い所でしょう。 妹の行動は当に地獄の祝祭です。 ともかく刺激的な内容だったので次上映の「オープニング・ナイト」も観ることにしました、主人公二人への不満も少し残った為です。 *劇場サイト、 https://www.geigeki.jp/performance/theater259/ □オープニング・ナイト ■原作:ジョン.カサヴェテス,演出:イヴォ.ヴァン.ホーヴェ,出演:エルジー.デ.ブラウ,ヤコブ.デルヴィグ他,劇団ITA ■初日を向かえる劇団の舞台裏を描いた作品です。 いやー、混乱しました。 舞台上に客席があり本物の観客が座っている。 そこで役者たちは稽古はもちろん劇中の本番も演ずる。 つまり目の前の演技が劇中劇中劇のどのレベルにいる

■紫気東来ービック・ナッシング  ■汝、愛せよ

■東京芸術劇場.映像配信,2020.11.6-8(東京芸術祭,2019年) □紫気東来-ビック・ナッシング ■作・演出・出演:戴陳連ダイ・チェンリエン ■自宅のパソコンで観る。 影絵芝居のようだ。 音声障害かな? PCを調べていたがそうではなかった。 そのうち作者自身がスクリーン前方で効果音を作る映像と共に音が聞こえてきた。 小道具をスクリーンに近づけ影絵の一部にしたりもする。 酉陽雑俎(ゆうようざっそ)という唐代昔話と作者の子供時代の思い出を重ね合わせた作品らしい。 全てが手作り手作業なので20世紀初頭の中国のようにみえる。 作者が舞台上で右往左往している様子を劇場で直にみないと面白くないだろう。 *東京芸術祭ワールドコンペティション2019最優秀作品賞受賞 *劇場サイト、 https://www.geigeki.jp/performance/theater255/ □汝,愛せよ ■作:パブロ・マンジ,演出:アンドレイーナ・オリバリ,パブロ・マンジ,出演:ガブリエル・カニャス,カルロス・ドソノ他,劇団ボノボ ■2本目だが同じくPCで観る。 ボノボはチリの劇団らしい。 チリとは珍しい。 舞台は会議室のようだ。 医師たちが議論をしているが白衣は着ていない。 科白に多く出てくる「アメニタス」が何か分からなかった。 ウサギも登場するので南アメリカのトリックスターかもしれないと勝手に想像してしまった。 しかし差別問題を扱っているのは確かだ。 解説をみてわかる。 「地球外生命体アメニタスが難民として地球にやってきた話だが、彼ら差別的な扱いをする医師も少なくない・・」。 差別意識の内面を描いていくストーリーはなかなか面白い。 しかしSFまで取り込むとは。 遠いチリが余計遠くなってしまった。 それにしても自宅で配信芝居を観るのは身が入らない。 *東京芸術祭ワールドコンペティション2019観客賞受賞 *劇場サイト、 https://www.geigeki.jp/performance/theater256/

■ダブルファンタジー、ジョン&ヨーコ

■感想は、「 ダブルファンタジー、ジョン&ヨーコ 」

■フィガロの結婚、庭師は見た!

■作曲:W.A.モーツァルト,指揮:井上道義,演出:野田秀樹,出演:ヴィタリ.ユシュマノフ,ドルニオク綾乃,小林沙羅,大山大輔ほか ■東京芸術劇場.コンサートホール,2020.10.30-11.1 ■これは楽しい! 2幕に入りリズムもシンクロしてきて終幕まで一気通貫だった。 歌唱は日本語から次第にイタリア語が多くなっていくけど時々日本語が混ざるの。 この流れは自然体のよう。 伯爵を中心にした騙し合いが此れ程まで男と女の核心に迫っていくとは驚きね。  会場はコンサートホールのためオーケストラピットが無い。 客席を利用したので指揮者と楽団の動きがよくわかる。 歌手と演奏のタイミングも肌で感じることができた。 途中、役者と指揮者の掛け合いが入ったが同じ位置づけがいいわね。 オペラにピットはいらない。 演奏者は観客からもよく見えるように考えて欲しい。 ところで、終幕に炬燵と土鍋がでてきたけど、これはちょっとやり過ぎじゃないかしら? 特にオペラは本筋から離れた小道具で失敗することが多い。 一瞬のあいだ日常に戻されてしまうからよ。 演出家もここまできて集中力が落ちてしまったのかしら? 突飛なことを考えないで素直に進めればよかったと思う。 これ以外は、カーテンコールでは野田秀樹も登場して盛り上がったし、パーフェクトだったわよ。 *東京芸術劇場30周年記念公演 *東京芸術劇場シアターオペラvol.14 *劇場サイト、 https://www.geigeki.jp/performance/concert212/