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1月, 2011の投稿を表示しています

■わが町

■作:ソーントン・ワイルダー,演出:宮田慶子 ■新国立劇場・中劇場,2011.1.13-29 ■牛蒡はアメリカでも食べるのでしょうか? 小さな町にこんなにも宗派の違った教会があるとは驚きです。 舞台は数組の机と椅子しかありません。 あとはパントマイムで補います。 エミリーの動きは心と一体化していてとても軽やかで素晴らしかったです。緩やかに進んでいくので20世紀初頭の古き良きアメリカを想像できます。 しかし舞台監督の状況説明だけで前半は終わってしまいます。 盛り上がりはエミリーとジョージの結婚式くらいです。 不満が残りました。 休息時間に気を取り直して期待しますがなんと後半は、いきなり死後の世界です。 驚きの展開です。 難産で死んだエミリーを含め死者達が登場します。 葬式シーンは広い舞台をとても有効に使っていて見栄えがありました。 「神」という言葉が出てこないので日本人でもとっつき易い場面が続きます。 ここでエミリーは生きることの素晴らしさを再発見しますが、最後に死は忘れ去られていくものだと悟ります。 人と時間をたっぷり使って広い舞台で作り上げているのでしょうか、アメリカらしさが出ていました。 観客もゆとりを持って観ることが必須のように感じました。 国立劇場らしい芝居でした。 *劇場サイト、 http://www.nntt.jac.go.jp/play/wagamachi/

■投げられやすい石

■作・演出:岩井秀人,出演:ハイバイ ■こまばアゴラ劇場,2011.1.19-2.20 ■言葉が少なく長続きしない、末尾が未完成のようなセリフが多い。 このためクライマックスで途切れの無いカラオケを歌うことでここに全てが集中して来る。 そしてカラオケ場面で突然のように幕が閉じてしまう。 これは劇的とも言える。 この劇的の発生は事前の対話にリアルさがあったからだと思う。 そしてこのリアルさが出演者への気持ちを思う感情を芽生えさせる。 なぜ変わった石の投げ方をするのか?なぜカラオケが好きなのか?わかるような気がする。 このように一つ一つわかっていく気持ちを探し求めることができる芝居である。 リアル感度の低い部分もあった。 それは佐藤が病気つまり肉体の崩れで一気に崖っぷちに立たされてしまうところである。 現代ではよくある事実であるがそれがリアルにはならないのが芝居である。 でもこれは些細なことだが。 *劇場、 http://www.komaba-agora.com/line_up/2011/01/hi-bye/

■僕を愛ちて、燃える湿原と音楽

■作:丸尾丸一郎、演出:菜月チョビ、出演:劇団鹿殺し ■本多劇場、2011.1.15-23 ■ http://shika564.com/bokuai/ ■僕を愛ちての式です。  (釧路名物芸能丹頂鶴舞+北海歌舞伎妖狐伝+湿原ロックフェスティバル)/3+札幌テレビホームドラマ+高校ブラスバンド北海道地区決勝大会=僕を愛ちて 129 :わたしはダリ?名無しさん?:2011

■白石加代子「百物語」第二十八夜

■演出:鴨下信一,出演:白石加代子 ■岩波ホール,2010.12.25-12.26 ■池波正太郎「剣客商売天魔」、幸田露伴「幻談」の二題。 物語に引き込まれると舞台上の白石加代子を見ているけれど見ていない状態になります。 そして物語風景が脳の中で現前します。 ここが演劇と朗読の違いです。 演劇は舞台の物語風景と脳で想像した像の二つが舞台上で重なり合います。 像の焦点が舞台か脳かの違いです。 「幻談」で釣舟の浮かんだ海を青い照明で効果を出す場面がありましたが、いきなり脳内風景の焦点が舞台に移り困惑しました。 ところでこの二題、「天魔」のほうがリズムがあり読み手も生き生きしていました。 「幻談」は活字を追うほうが合うのではないでしょうか? 白金、麻布、湯島、本所、そして磯の香り・・・。 どちらも江戸時代の風景が心地良くみえる物語でした。 *CORICHサイト、 http://stage.corich.jp/stage/24432

■メタファンタジア[眠りの森の・・・]

■演出:長堀博士,出演:楽園王 ■新宿タイニイアリス,2011.1.13-16 ■チラシの「鑑賞の手引き」を読まないで観たからストーリが混線してしまった。 小泉君の恋人葵ちゃんの仮死体を冷凍睡眠室に保存して葵ちゃんの過去の夢を語る芝居だとみていた。 しかし小泉君が冷凍睡眠室に入れられて未来の夢を見ていたということが終幕で明かされ、この二つが演じられていたということを知った。 多くの女性出演者のセリフや行動がとてもナイーブで中学・高校時代を思いだしてしまった。 教室での授業迄はとても面白かったがその後の家庭での出来事がつまらない。 この原因は対話モードから会話モードに入ってしまったからだと思う。 これで白けてしまった。 後半は再び盛り返したが2時間半の上演は長過ぎる。 途中の会話モードを取捨選択して2時間に短縮すればハリのある芝居に変わったずだ。 財前教授の「死んだら意味など無い!」という台詞は人間が背負う覚悟のようなものだ。 しかし生きている者にとってはそうはいかない。 この兼ね合いをどうするかだが、夢はこの触媒になれるのか? *劇団サイト、 http://www.rakuenoh.tokyo/profile.html

■ウル、森に眠る記憶

■演出:水野大輔、出演:トランジスタONE ■せんがわ劇場、2011.1.12-16 ■ http://www.sengawa-gekijo.jp/_event/05031/image1L.jpg ■考古学者が南の島を調査中に、巫女でまとまっている古代住民の過去の気配を感じとる物語・・。 素直さがあるお芝居よ。 そして「信じる」というセリフがとても多いの。 この言葉は日常を豊かにする力を持っているわ。 でも舞台での呪術や考古学の対立や議論の結論は、この言葉と付随する演出で超越への判断を停止をしてしまうの。 古代祖先を含めた人間関係の満足は得られるけれど劇の深みには行けない。 全体としては質の良い高校生演劇を観たようだわ。

■大きな豚はあとから来る

■演出:工藤千夏、出演:渡辺源四郎商店工藤支店 ■こまばアゴラ劇場、2011.1.2-3 ■ http://www.nabegen.com/ ■朝、玄関で妻が会社へ行く夫に「いってらっしゃい」と言う場面が何回も登場します。 女性が精神的安定を得るための目指す光景だと言いたいようです。 これを得たい気持ちと「外交官」の社会的権威が結びついて女性主人公は容易に騙されていきます。・・偽外交官に「中東の王様の妃にしてあげる」と騙されてしまう結婚詐欺の話しでした。 観ていても「リアル」さには少し欠けてましたが、騙されていく楽しさがある芝居でした。 そして別女性を登場させ強引に終幕に持っていく流れも違和感はありませんでした。 「警察官」「銀行員」「弁護士」でコロッと騙されてしまうオレオレ詐欺。 どこも芝居で一杯ですね。