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■ドッペルゲンガー

■作曲:F・P・シューベルト,演出:クラウス・グート,ピアノ演奏:ヘルムート・ドイッチュ,テノール歌唱:ヨナス・カウフマン ■NHK・配信(ニューヨーク・ウェイド・トンプソン・ドリル・ホール,2023.9.24-26収録) ■シューベルトの歌曲集「白鳥の歌」を演劇的な舞台作品に構成した公演である。 ここは馴染み深い「冬の旅」の続編として観ることにした。 全十四曲が歌われ、日本では「影法師」と訳される第13曲目「ドッペルゲンガー」が重要な位置を占める。 今回はピアノソナタ第21番(遺作)第2楽章が途中に挿入されている。 体育館のような広々とした空間に、規則正しく並んだ六十台のベッド。 その中央にピアノが置かれ、舞台を挟んで観客席が左右に広がる。 野戦病院と思わせる光景で、十数人の負傷兵がベットに横たわっている。 その中の一人が歌手ヨナス・カウフマンである。 数人の看護婦も忙しく歩き回っている。 先ずは第2曲「兵士の予感」から始まるが、野戦病院の負傷兵という設定はこの曲に驚くほどよく馴染む。 孤独な兵士が歌う姿はまさに演劇そのものだ。 その病院はそのまま戦場へと変貌し、ベットは銃弾を防ぐ盾となる。 爆撃機の影が横切り爆弾音が響き負傷兵たちは逃げ惑う。 第13曲「都会」では劇場の扉が開かれ、ニューヨークの喧騒が流れ込んでくる。 救急車のサイレンも聞こえる。 そこにカウフマンと瓜二つの人物が現れ第14曲「影法師」が歌われて幕が閉じる。 興味深い舞台だった。 負傷した兵士が歌うという設定により、十四曲のそれぞれが強い意味を帯びて心に迫ってくる。 これは演出の勝利と言ってよいだろう。 *NHK、 https://www.nhk-ondemand.jp/goods/G2025153961SA000/ *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、クラウス・グート ・・ 検索結果は2舞台 .

■サラダ音楽祭、メインコンサート

■指揮:大野和士,出演:砂田愛梨,松浦麗,寺田宗永,狩野賢一,合唱:新国立劇場合唱団,管弦楽:東京都交響楽団,振付:金森穣,舞団:Noism ■東京芸術劇場・コンサートホール,2025.9.15 ■バラエティに富んだ選曲で楽しめた。 前半はモーツァルトで固め、後半を舞踊系でまとめたプログラムは次の5曲・・、 歌劇「魔笛」序曲、「戴冠式ミサ」(モーツァルト)、「フラトレス」弦楽と打楽器のため(ペルト)、バレエ音楽「三角帽子」第2組曲(ファリャ)、「ボレロ」(ラヴェル)。 Noismが出演するというのでチケットを購入した。 昨年もボレロを踊ったらしい。 演奏している前で舞うには狭い舞台だ。 でもコンパクトな振付で締まりがあった。 「三角帽子」の1919年初演の演出はレオニード・マシーンだった。 今日は演奏のみだ。 「フラトレス」と違い当振付家の好みの曲ではないだろう。 (欲を言えば)即興的振付で観たかったが。 賑やかな曲のため演奏だけでも楽しめた。 また「戴冠式ミサ」ではソプラノ砂田愛梨の歌唱が耳に残った。 カーテンコールで盛り上がったが、やはりNoismの「ボレロ」が当たったようだ。 *劇場、 https://www.geigeki.jp/performance/concert303-c303-2/

■何時までも果てしなく続く冒険

■作・演出:額田大志,出演:矢野昌幸,佐山和泉,薬師寺典子ほか,劇団:ヌトミック ■吉祥寺シアター,2025.11.17-19 ■舞台にシンセサイザー、ギター、ドラムが並ぶ。 音楽劇に近い? ・・若者が事故でなくなってしまう。 友人や家族が亡くなった人との近傍を語る。 些細な日常の行動や会話を、です。 それは時間的に空間的に、近くにそして遠くへ行き来する。 楽譜を展開するかのように物語は繰り返す。 そこに亡霊も加わる・・。 絶え間ない演奏が役者に寄り添いながら物語に染み込んでいく。 語りはラップ調に近い。 これは発声ダンスと言ってよい。 舞台全体が一つの音楽作品のように立ち現れます。 演出家の舞台は初めて観たが音楽と演劇の新しい結合にもみえる。 相乗効果があったのか?よく分からない。 退屈な日常の連続の流れの為かもしれない。 でも日常から非日常を出現させることは可能です。 このタイプの舞台公演は少ないので今後も楽しみですね。 *CoRich、 https://stage.corich.jp/stage/352079 *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、額田大志 ・・ 検索結果は2舞台 .

■能楽堂十一月「住吉」「空蝉」

*国立能楽堂十一月企画公演の□3舞台を観る. □箏組曲・空蝉■箏:萩岡松柯 □箏曲・住吉■箏:萩岡松韻,岸辺美千賀,三絃:鈴木厚一,笛:福原徹彦 □復曲能・空蝉■出演:大坪喜美雄,安田登,高野和憲ほか ■国立能楽堂,2024.11.23 ■箏組曲「空蝉(うつせみ)」は源氏物語「空蝉」「関屋」を基に六歌構成になっている。 物語に沿った歌詞で親しみ易い。 作曲は北島検校。 筝曲「住吉」は住吉大社への参詣を歌う。 作曲は山田検校。 筝の調べは空気が乾き引き締まる。 大陸風土を感じる。 そこに日本語の湿った発声が入り混じり独特な雰囲気が醸成されていく。 能楽の囃子も同じだろう。 復曲能「空蝉」は空蝉の霊を弔うシンプルな構成だ。 序の舞では久しぶりに恍惚感がやってきた。 シテの動きに雑音が無いからだ。 シテ面は「節木増」(満総作)。 鼻が少し大きく親しみを感じる。 でも源氏物語から想像する「空蝉」には似合わない。 *古典の日記念公演・特集源氏物語 *劇場、 https://www.ntj.jac.go.jp/schedule/nou/2024/11191/

■リビングルームのメタモルフォーシス

■作・演出:岡田利規,作曲:藤倉大,出演:青柳いづみ,朝倉千恵子,川崎麻里子ほか,演奏:アンサンブル・ノマド,劇団:チェルフィッチュ ■東京芸術劇場・シアターイースト,2024.9.20-29 ■・・演奏者が舞台前面で演奏して下手奥にリビングルームらしき家具を置き役者が演技をする・・。 干しておいた毛布が雨に濡れてしまったり、家主から立ち退きを通告されるところから始まる。 具体的な話が続くので科白に聞き耳を立ててしまいます。 しかし次第に科白に抽象語が増えはじめ家族も家具も解体していき遂に異次元空間が出現する。 気配から始まり世界の終末に行きつく分裂症的展開に衝撃を受けました。 面白い舞台でした。 声技はともかく役者の動きが少し硬いように感じられた。 音楽と同期させる為ですか? 逆に演奏は演技を気にし過ぎているようにみえる。 でも、この巧い努力が芝居と音楽の融合を成功させたと言ってよい。 音楽はもっと主張したいところだが舞台空間としてはちょうど良かったかもしれない。 チェルフィッチュらしい緊張感を楽しめました。 いつもは瞬時に特徴を把握できるのに今日の客はバラけていてそれができない。 男女比もほぼ同じで20代から70代まで均等に散らばっている。 珍しいことです。 これも企画の良さからくる結果の一つでしょう。 *東京芸術祭2024参加作品 *劇場、 https://www.geigeki.jp/performance/theater371/

■モリコーネ、映画が恋した音楽家

■監督:ジュゼッペ・トルナトーレ,出演:エンニオ・モリコーネ,B・ベルトリッチ,C・イーストウッド,Q・タランティーノ他 ■配信,(イタリア,2021年作) ■面白いドキュメンタリー映画だった。 2時間強は長くない。 エンニオ自身のインタビューが8割を占めていた為もある。 本人の言葉は強い。 彼の思いが伝わってくる。 音楽院時代の1950年頃から2010年代前半迄を描いている。 映画監督のインタビューも多く入っている。 J・S・バッハ一辺倒からエンニオを受け入れたP・P・パゾリーニ監督、現場でエンニオの音楽を流しながら撮影したS・レオーネ監督等々のウラ話は映画好きにはたまらない。 映画音楽というジャンルを高めた彼の功績は大きい。 同時に映画を支配しようとする戦略も感じる、たとえ言葉にしなくても。 エンニオが受け持った映画は50本近く観ている。 衝撃(感動)を受けた3本は「アルジェの戦い」(G・ポンテコルヴォ)、「ソドムの市」(P・P・パゾリーニ)、「1900年」(B・ベルトリッチ)。 すべて観後に音楽担当を知った。 映画音楽は美術や照明と同じ位置づけと考えている、エンニオとは意見が違うが。 映画音楽とは何か? 彼は映画の大事なものを壊しもした(と思う)。 *映画com、 https://eiga.com/movie/96331/

■TIME

■音楽:坂本龍一,演出:高谷史郎,出演:田中泯,宮田まゆみ,石原淋 ■新国立劇場・中劇場,2024.3.28-4.14 ■中劇場は半年ぶりだが・・、何かが変わった!? 円形客席を180度まで拡張したようです。 吹っ切れた感じですね。 いままでは中途半端で落ち着かない劇場だった。 ただし今日の舞台は奥があるので両端の新客席は使用していない。 そして舞台に目を凝らすと最初はよく分からなかったが水が張ってある? ・・暗いなか、宮田まゆみが笙(しょう)を奏でながら舞台を横切っていく。 水や鐘の音が入り混じる。 田中泯が登場し・・蠢・き・回・る。 映像と朗読は彼本人を事前収録して舞台の演技と同期させていく。 田園や都市の風景も映し出す。 一つ目の話は死に際の女が彼に語り掛ける。 「死にます。 百年経ったら会いにきます」。 そして墓を掘り彼女を埋める。 二つ目の話では彼が旅の途中で夢を見る。 長い夢から覚めたが、「束の間の時だったのだ」。 再び彼は水の中で・・戯・れ・回・る。 百合の花が咲いた。 「百年経たのか」。 終幕、宮田まゆみが笙をふきながら再び水の上を横切っていく・・。 昨日観たジェフ・ミルズのブラック・ホールは空間を意識していたようだが今日の舞台は時間である。 音楽や映像そして二つの語りはとても練られていた。 田中泯も存在感があった。 統合された世界が出現していました。 物語が気になったので帰りにプログラムを購入する。 朗読された原作は「夢十夜」「邯鄲」「胡蝶の夢」。 ブログはここで終わりにしてプログラムの残りを読むことにします。 *パルコ劇場、 https://stage.parco.jp/program/time/ *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、高谷史郎 ・・ 検索結果は6舞台 .

■THE TRIP-Enter The Black Hole-

■演出:ジェフ・ミルズ,美術:C.O.L.O,衣装:落合宏理,振付:梅田宏明,出演:戸川純ほか ■ZEROTOKYO,2024.4.1 ■ジェフ・ミルズのブラックホールへ突入! 音楽・映像・照明そしてダンス、そして詩の朗読が交差する舞台がここに出現する。 ・・宇宙服姿のジェフ・ミルズの挨拶に始まり、彼の操作するドラムマシンから発するテクノポップ、背景にブラック・ホールらしき映像を映し出した舞台。 そこに4人のダンサーたちが踊りまくる。 途中、ボリューム感あるケープを纏う戸川純が詩のような短い科白を朗読し、再びダンス、朗読、ダンスと続く・・。 総合芸術としてまとめあげるのは大変ですね。 ダンス振付はリズム感ある音響に合わない、照明も音響に追随できない、宇宙観を伴う映像は凡庸。 即興が命ですがちょっと噛み合わなかった。 視覚と聴覚そして言語を身体へ凝縮・統合することができるか? *劇場、 COSMIC LAB presents JEFF MILLS『THE TRIP -Enter The Black Hole-』 supported by AUGER | ZEROTOKYO | Shinjuku Kabukicho

■2023年舞台映像ベスト10

*舞台公演を映画・配信にした作品が対象。 当ブログのラベルで「映像」が該当。 並びは観賞日順。 ■ フェドーラ   演出:デイヴィッド・マクヴィカー,指揮:マルコ・アルミリアート,劇場:メトロポリタン歌劇場 ■ るつぼ   演出:リンゼイ・ターナ-:,劇団:ロイヤル・ナショナル・シアター ■ ミソロジーズ   演出:アンジュラン・プレルジョカージュ,劇場:パリ・シャトル座 ■ トランジツト   演出:テロ・サーリネン,舞団:テロ・サーリネン・カンパニー ■ チャンピオン   演出::ジェイムズ・ロビンソン,指揮:ヤニック・ネゼ=セガン,劇場:メトロポリタン歌劇場 ■ コンサート・フォー・ジョージ   監督:デヴィッド・リーランド,劇場:ロイヤル・アルバート・ホール ■ 舞台神聖祭典劇パルシファル   演出:ジェイ・シャイブ,指揮:パブロ・エラス・カサド,劇場:バイロイト祝祭劇場 ■ ベジャール・プログラム   振付:モーリス・ベジャール,劇場:パリオペラ座・バスチーユ ■ 桜の園   演出:ショーン・ホームズ,劇場:パルコ劇場 ■ デッドマン・ウォーキング   演出:イヴォ・ヴァン・ホーヴェ,指揮:ヤニック・ネゼ=セガン,劇場:メトロポリタン歌劇場 *昨年の舞台映像ベスト10は・・「 2022年舞台映像ベスト10 」. *今年の舞台ベスト10は・・「 2023年舞台ベスト10 」. *今年の美術展ベスト10は・・「 2023年美術展ベスト10 」.

■コンサート・フォー・ジョージ

■監督:デヴィッド・リーランド,出演:エリック・クラプトン,ダニー・ハリスン,ポール・マッカートニー,リンゴ・スター他 ■川崎アートセンター,2023.9.9-(ロイヤル・アルバート・ホール,2002.11.29収録) ■エリック・クラプトンをまとめ役にした、ジョージ・ハリソンのトリビュートコンサートのドキュメンタリー映画です。 ジョージの朋友が勢揃いですね。 20曲前後の構成で舞台はとても和やかでした。 中央にクラプトンはもちろん、その横でジョージの息子ダニー・ハリソンが演奏する。 ダニーは父親にそっくりじゃないですか!? そして前半途中でリンゴ・スターが登場。 「ハニー・ドント」を歌うリンゴは懐かしい。 途中モンティ・パイソンとトム・ハンクスが笑わせます。 後半に入りポール・マッカートニーが登場。 数曲を歌うが、リンゴもポールも目立たないようにしている。 これで逆に深みと濃くが舞台に出ています。 ラヴィ・シァンカールは新曲?を発表し、「ホワイル・マイ・ギター・ジェントリー・ウィープス」でポールとクラプトンが締めます。 最高の舞台でした。 「この公演をジョージが喜ぶか否かはわからない」。 クラプトンは言っている。 しかしジョージがこの会場に居るのを感じました。 *映画com、 https://eiga.com/movie/99595/ *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、ジョージ・ハリスン ・・ 検索結果は3作品 .

■ある馬の物語

■原作:レフ・トルストイ,脚本・音楽:マルク・ロゾフスキー,詩:ユーリー・リャシェンツェフ,翻訳:堀江新二,音楽:国広和毅,演出:白井晃,出演:成河,別所哲也,小西遼生,音月桂ほか ■世田谷パブリックシアター,2023.6.21-7.9 ■「 戦火の馬 」は等身大パペットだったが、今日は・・? 役者がそのまま馬になる! ・・的確に表現されています。 嘶きも、尻尾の動かし方も巧い。 なぜか手塚治虫を思い出してしまった。 その作品名が思い出せない。 トルストイの名も久しぶりに耳にしました。 舞台は「人生は何をもって充足したと言えるのか?」を追求している。 この問いも懐かしい。 馬のホルストメールとセルプホフスコイ侯爵の生まれ出会いそして老年から死までが語られる。 終幕、二人(馬と人ですが)の人生の充足度を比較して幕が下りる。 侯爵の生き方は現代的です。 観察は鋭く資産は有るが愛人と過ごし家族を作らない。 しかし老年は惨めな姿になる。 このような生き方があったとは驚きです。 でもロシアの伝統かもしれない。 プーシキン「 エフゲニ・オネーギン 」やチェーホフではよく見かける。 またホルストメールが去勢されたときに「風景が一変した!」と語るが、これは男として想像できます。 それより<所有>について疑問を呈する場面です。 所有とは何か? 人生の充足は所有に比例するのか? これを馬に語らせるところが面白い。 舞台は工事現場の様相です。 周囲に足場が組まれ天井からは裸電球が吊り下げられている。 音楽劇のため奏者も役者の位置づけです。 演出家得意の形でしょう。 親密な構造です。 ホルストメールの死が幕開けに演じられるという円環技法が嬉しいオマケです。 帰りにプログラムを購入しました。 でも歌詞が載っていなかったのは残念。 役者の写真がデカ! *劇場、 https://setagaya-pt.jp/stage/1829/

■ロックン・ロール・サーカス  ■チャーリー・イズ・マイ・ダーリン

*ザ・ローリング・ストーンズ主演の□2作品を観る。 □ロックン・ロール・サーカス ■監督:マイケル・リンゼイ=ホッグ,出演:ザ・ローリング・ストーンズ,ジョン・レノン,ザ・フー,エリック・クラプトン,オノ・ヨーコ他 ■Bunkamura・ルシネマ,2022.8.5-(イギリス,1968.12収録) ■サーカス小屋でのライブイベントらしい。 途中、空中ブランコが数分映し出される。 でもサーカスとの融合はみえない。 観客にカラフルな同じマントを着させたのも頂けない。 背景は最低だ。 前半はザ・フーやジョン・レノン、オノ・ヨーコが登場する。 レノンやヨーコは癖のある歌唱を披露する。 ヨーコはパフォーマンス系丸出しだ。 後半はストーンズが登場し数曲歌う。 「ジャンピン・ジャック・フラッシュ」「悪魔を憐れむ歌」の2本が最高だ。 最期にミックを囲んで「地の塩」を歌う。 労働者階級を意識した終幕にみえる。 □チャーリー・イズ・マイ・ダーリン ■監督:ピーター・ホワイトヘッド,出演:ザ・ローリング・ストーンズ ■Bunkamura・ルシネマ,2022.8.5-(イギリス,1965作成) ■1965年アイルランド・ツアーを撮ったドキュメンタリー作品である。 当時のストーンズメンバーそれぞれが新鮮だ。 色あせていない。 この時期は絶頂期だったこともある。 アイルランドの風景や人々との交流をふんだんに取り込んで作品としても上出来である。 *ザ・ローリング・ストーンズ結成60年記念&チャーリー・ワッツ追悼公開作品 *映画com、 https://eiga.com/movie/96784/

■ザ・ビートルズGetBack、ルーフトップ・コンサート

■監督:ピーター・ジャクソン,出演:ジョン・レノン,ポール・マッカートニー,ジョージ・ハリスン,リンゴ・スター他 ■TOHOシネマズ日比谷,2022.2.25-(アメリカ,2022年作) ■「ザ・ビートルズGetBack」(約6時間)の中からロンドンのアップル社サビル・ロウ本社屋上での「ルーフトップ・コンサート」を抜き出して1時間に再編集した作品と聞いている。 1956年からのビートルズの歩みをざっとお浚いし、1969年1月30日に行われた40分の屋上コンサートを映し出す。 8曲前後を歌ったかな? 「ゲット・バック」、「ドント・レット・ミー・ダウン」「アイヴ・ガッタ・フィーリング」「ワン・アフター・909」「ディグ・ア・ポニー」・・。 途中に2度3度と同じ曲を歌っている。 このコンサート録音からアルバム「レット・イット・ビー」を作成したようだ。 それにしても酷い映像編集だ。 騒音のため警察が止めに入る場面を何回も映し出す。 ここは一度で十分だろう。 周辺群衆へのインタビューもつまらない質問が多い。 コンサートの雰囲気が萎んでしまった。 警察に解散させられた後、当ビル地下スタジオに場所を移し残曲を録音するのだがこれも中途半端だ、クレジットタイトルも入り強く言えないが。 編集方針を変えてもう一本作ったらどうだろうか?  *映画com、 https://eiga.com/movie/96546/

■2021年ライブビューイング・ベスト10

■ シー・ラヴズ・ミー  演出:スコット・エリス,提供:松竹ブロードウェイシネマ ■ シラノ・ド・ベルジュラック  演出:デビィット・ルボー,提供:松竹ブロードウェイシネマ ■ ポーの一族  演出:小池修一郎,劇団:宝塚歌劇団ほか ■ 赤い靴  演出:マシュー・ボーン,劇場:サドラーズ・ウェルズ劇場 ■ カルミナ・ブラーナ  演出:熊川哲也,舞団:K・バレエカンパニー ■ タンホイザー  演出:トビアス・クラッツアー,劇場:バイロイト祝祭劇場 ■ アメリカン・ユートピア  演出:デビット・バーン,劇場:ハドソン劇場 ■ ル・パルク  演出:A・プレルジョカージュ,劇場:オペラ座・ガルニエ宮 ■ ヴァネッサ  演出:キース・ウォーナー,劇場:クライドボーン・ハウス ■ パリのアメリカ人  演出:クリストファー・ウィールドン,提供:松竹ブロードウェイシネマ *並びは上映日順。 当ブログに書かれたライブビューイング作品から選出。 *ライブビューイングとは舞台公演を撮影した映像を作品としたもの。 当ブログではラベルが「映像」に該当。 *「 2020年ライブビューイング・ベスト10 」

■アルトゥロ・ウイの興隆

■作:ベルトルト・ブレヒト,演出:白井晃,出演:草彅剛,松尾諭,渡部豪太ほか,音楽:オーサカ=モノレール ■神奈川芸術劇場・ホール,2021.11.14-12.3 ■2005年のハイナー・ミュラーと2020年の白井晃の両舞台は見逃している。 今回やっと観ることができた。 それは2018年の白井晃X草彅剛「 バリーターク 」が面白かったこともある。 今日は観客の9割が若い女性で驚く、硬い作品だが。 役者の贔屓筋かな? 音楽劇とは知らなかったが期待以上だった。 ナチスをシカゴのギャング団に置き換えた作品である。 団のボスであるルイが支配者にのし上がっていく過程を描く。 ルイ役草彅剛は青白い化粧と鋭い目つき、金玉を握りベロ出す姿はヒトラーの亡霊のようだ。 ダンスがもう少し上手ければ言うことなし。  ファンクのジェイムズ・ブラウンの楽曲を背景に赤系衣装で統一した楽団、ダンサー、役者が激しく歌い踊りまくる舞台だ。  加えて観客をも挑発してくる。 いつのまにかヒトラーの大好きな、あの熱狂が場内に充満してくる。 いつの時代になっても1930年代党大会の熱気は時空を越えてじわっとやって来る。 ところでギャングとナチスの関係を字幕で解説するのは興ざめする。 でも字幕がなければ関係がぼやけそうで悩ましい。 ルイの教師役として小林勝也が再び登場したが作者がブレヒトだったことをあらためて思い出させてくれた。 *劇場、 https://www.kaat.jp/d/arturoui2021

■シャルリー、茶色の朝

■作:フランク・パヴロフ,作曲:ブルーノ・ジネール,演出:クリスチャン・レッツ,出演:アデール・カルリエ,アンサンブルK ■神奈川県音楽堂,2021.10.30-31 ■プログラムは・・、 第1部アンサンブルKによる室内楽コンサート 第2部フランク・パヴロフ作「茶色の朝」にもとづくポケット・オペラ 第3部作曲家ブルーノ・ジネールを囲むクロストーク 先ずはクルト・ヴァイルに始まりパウル・デッサウ「ゲルニカ」で終わる第一部はそのまま第2部へ繋がっていくの。 「茶色い朝」では犬も猫も服も全てが茶色に染まっていく・・。 「1984年」や「アンネの日記」を思い浮かべながら観てしまった。 内容がシンプルなため第1部の<前奏曲>が効いているわね。 近未来の話だけど20世紀の狂乱の時代が入り混じり舞台に深みがでたわよ。 第3部はアフタートーク。 やなぎみわの名前が載っていたので楽しみにしていたが今日は高橋哲哉だった。 ブルーノ・ジネールはオンライン参加。 以下よりトーク内容。 質問(高橋)・・「ゲルニカ」を発見した経緯は? 答(ジネール)・・作品の消滅を避けるため採用した。 我が家族がスペインから亡命してきた過去もある。 問・・「セーヌ哀歌」「ユーカリ」を選択した理由は? 答・・フランスの反ユダヤ主義はドイツより酷かったから。 クルトは2年後米国へ逃げた。 問・・近衛秀麿を知っているか? リサーチをお願いしたい。 答・・知らない。 調べてみる。 問・・本では登場人物は男性だが? 答・・異化効果を出すため女性にした。 しかし重要なことではない。 問・・作者パヴロフの評価は? 答・・好奇心を持った人だ。 翻訳本がカラフルだったのを誉めていた。 問・・フランスはソフトな極右が伸びているが? 答・・ヴィシー政権やアルジェリア戦争をみて分かる通り昔から一定数はいる。 フランスは二面性がある。 問・・日本でも学術会議任命や愛知トリエンナーレで問題が起きている。 ソフトな極右は注意してくれ。 答・・芸術は最期の砦になる。 以上のような内容だったかしら? 欧州極右が増えた一つに難民問題があると思う。 解決できないと混乱が続くはずよ。 そして極右はいつの時代でもフレンドリーに近づいてくる。 よーく見極めないとね。 ところでこの劇場は舞台両脇に時計が掛けてあるの。 目障りだわ。 次回までに...

■ムジカエテルナ×サシャ・ヴァルツ、交響曲第7番

 ■作曲:L・V・ベートーベン,振付:サシャ・ヴァルツ,指揮:テオドール・クルレンツィス,管弦楽:ムジカエテルナ,舞団:サシャ・ヴァルツ&ゲスト ■NHK・配信,2021.10.24-(デルフォイ古代劇場,2021.6.5-6収録) ■交響曲第7番とダンスは初めてかな?、第9番はあるが・・。 サシャ・ヴァルツは「 松風 」を以前観ている。 楽団は劇場跡で演奏し、舞踊は神殿跡の前庭で踊る。 上空から劇場跡とその周辺を映すのだが素晴らしい眺めだ。 遠くの山々が輝いている。 朝焼けかと思っていたが演奏経過をみると夕暮れ時刻らしい。 ダンスは2章と4章に入る。 床が石畳や細かい砂利のため緩く巾のある振付になっている。 後半それが激しくなるが。 衣装は下が黒、上は肌色もしくは裸で廃墟に良く似合う。 ギリシャ映画をいろいろ思い出してしまった。 指揮者サシャ・ヴァルツも存在感がある。 第7番とギリシャもなかなかだ。 演奏とダンスが遺跡を介して結び付いている。  ムジカエテルナ、サシャ・ヴァルツ、ベートーベン、デルフォイ古代遺跡。 この4つの組み合わせがこんなにも面白いとは予想以上だった。 企画の上手さだろう。 *NHK、 https://www.nhk.jp/p/premium/ts/MRQZZMYKMW/episode/te/JZG18M1NKW/

■アメリカン・ユートピア

■監督:スパイク・リー,出演:デヴィツド・バーン,ジャクリーン・アセヴェド他 ■吉祥寺オデオン,2021.7.30-(ブロードウェイ・ハドソン劇場?,2020年収録・編集) ■デビッド・バーンと聞いて映画館へ急ぎました。 「ストップ・メイキング・センス」以来でしょう。 簾で囲まれたシンプルな舞台は出入りが自由でなんでもできる。 その中で裸足の演奏者が縦横に動き踊り回る。 バーン自身も喋り歌いまくる。 脳の話から始まり、選挙投票や人種問題など話題も活動的です。 プロテストソングも入り全21曲です。 そこに響き渡るリズムは中南米系が入っていますか? 最高です。 日本では珍しい、社会性を含んだ人生を俯瞰するような歌詞ですね。 しかも人称が単数形ではない。 私たちとあなたたち、彼らと彼女ら、多くが複数形です。 その複数形の人々を一つに繋げようとする。 舞台から降りて演奏しながら観客席を回るエンディングは素晴らしい。 最高でした。 *映画com、 https://eiga.com/movie/94691/

■ジャニス・ジョプリン  ■ジャニス、リトル・ガール・ブルー

□ジャニス・ジョプリン ■監督:デビィット・ホーン,演出:ランディ・ジョンソン,出演:メアリー・ブリジット・デイビス他 ■東劇,2021.7.2-(アメリカ,2018年収録) ■心の底から唸り叫ぶジャニスの声がテキサス荒野に響き渡るようだわ。 「私は、白人女ブルース・・」。 彼女が自身の立ち位置を話していたけど、日本で言えば北方演歌かしら? テキサスは東北へ、綿花畑は寒村風景へ、汗ばむニューオーリンズは吹雪く港町へ、目指すシスコは東京かもね。 コンサートをここまで再現した舞台は珍しい。 バンド構成や衣装・・、それよりジャニス役メアリー・ブリジット・デイビスの熱演が素晴らしい。 でも実際のジャニスのコンサートは映像でも観たことが無い。 彼女が影響を受けたベッシー・スミス、エタ・ジェイムス、アレサ・フランクリンも登場して彩を添える。 胸に響く舞台だったわよ。 *松竹ブロードウェイシネマ作品 *松竹ブロードウェイシネマ、 https://broadwaycinema.jp/_ct/17460199 □ジャニス,リトル・ガール・ブルー ■監督:エイミー・バーグ,出演:サム・アンドリュー,ピーター・アルビン,デイブ・ゲッツ他 ■(アメリカ,2015年作) ■上記「ジャニス・ジョプリン」の後に観たのは正解ね。 先だと舞台を本物のジャニスと比較してしまったからよ。 このドキュメンタリーをみて舞台でのアドリブの多くがジャニス本人の言葉だと知ったの。 彼女の家族、両親や妹弟のこと、シスコでのビッグ・ブラザー参加、モンタレーフェスティバル、コズミック・バンド結成、ウッドストック、高校同窓会での無視・・。 死の前は薬を断ち切っていたようだけど、だめだったようね。 この2本でジャニスがずっと身近になった。 *映画com、 https://eiga.com/movie/84828/

■未練の幽霊と怪物、「挫波」「敦賀」

■演出:岡田利規,音楽・演奏:内橋和久ほか,歌手:七尾旅人,出演:森山未來,片桐はいり,栗原類ほか ■神奈川芸術劇場・大スタジオ,2021.6.5-26 ■能の形を取り入れた音楽劇と聞いて期待して劇場へ向かう。 休憩を途中に挟んで「挫波ザハ」と「敦賀つるが」の2作品を上演。 囃子方は3人、見慣れない楽器で聴き慣れない幽玄的な演奏が面白い。 歌手七尾旅人が一人で地謡を受け持つ。 「挫波」はまとまっていたように思う。 科白をゆっくり喋りながら独特な手足の動きをするワキがなんともいえない。 演出家の得意とする振付だ。 囃子の流れに乗った地謡の声も舞台に溶け込んでいく。 アイで登場した片桐はいりの早口の喋りがまた楽しい。 囃子、舞、謡の三拍子が揃った独特な雰囲気が恍惚感へ導いてくれた。 能に似た感動を得ることができた。 ザハ・ハディドは成仏できただろうか? 「敦賀」はワキとシテの役者が替わっただけで前作と同じような構成だ。 文殊菩薩と高速増殖炉を繋げようと試みているらしい。 しかし亡霊がヒトでないため空洞に居るような体感がおそってきた。 亡霊とは何者か? 不思議な舞台だ。 舞が長くて全体の調和が崩れたようにみえる。 横浜駅へ向かう帰りには作品のいろいろなことを考えてしまった。 刺激的な舞台だった。 ところでアイの科白が多過ぎて諄く感じた。 少し省くと面白さに深みがでる。 それとギクシャクした動きの多い舞に見えた。 弛緩と緊張の間の動きが速すぎるのかもしれない。 久しぶりに楽しめた舞台だった。 *第72回読売文学賞受賞作品 *劇場、 https://www.kaat.jp/d/miren2021