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■橋づくし ■天守物語

■演出:鴨下信一,出演:白石加代子 ■相模女子大グリーンホール,2014.9.27-28 ■白石加代子「百物語」の第98話三島由紀夫「橋づくし」と99話泉鏡花「天守物語」です。つまりファイナル公演ということです。見逃していたので今回はツアースケジュールから選びました。岩波ホールでの公演はなかったようですね。 白石は挨拶の中で戯曲は小説と比べて難しいと言っていましました。一人8役前後ですから彼女でさえ大変でしょう。この物語を知っている人でも前半は混乱したはずです。 そして百物語は20数年続けたとのことです。凄い!の一言ですね。終了は残念ですが潮時だと思います。以前と比較して声に締まりがなくなっています。一人で喋り続けるの大変なはずです。次回チラシではシス・カンパニーに出演しますね。ずば抜けた力量をこれからも期待しています。 *百物語リスト、 http://www.mtp-stage.co.jp/shikraisikayokonoheya/hyaku.html

■ダンス  ■ファーブル博士があなたを癒します  ■The Space in Back of You

■イメージフォーラム,2014.9.20- □ダンス ■監督:H・V・ダンツィヒ,振付:L・チャイルズ,音楽:P・グラス,美術:S・ルウィット ■この種のダンスは覚醒ある恍惚感に浸れるか眠くなるかのどちらかね。 だから寝不足で観てはいけないの。 振付は繰り返しの中に優しさがある。 花一杯の野原を駆巡っている感じだわ。 グラスの音楽を上手に修飾している。 さすがルシンダ・チャイルズ。  でも映像編集が原因なの? 少しぎくしゃくしている。 画面の質も良くない。 リズムにのれなかったのはこの理由かも。 楽しいけど、直に舞台を観ないとだめな作品ね。 □ファーブル博士があなたを癒します ■監督:P・クーリブル,出演:J・ファーブル ■ヤン・ファーブルが昆虫衣装をまとい、青く塗った舌をベロンしたり、肉のスーツを着て登場するの。 期待していた舞台系ではなくて美術系の濃い作品だから、ちょっと残念。 彼の日記などを原案にしたと書いてあったけど内容がよくわからない。 題名に「・・あなたを癒やします」とあるけど、彼自身を癒やしている作品にみえたわ。 *イメージフォーラム、 http://imageforumfestival.com/2014/archives/633 □The Space in Back of You ■監督:R・ルトコウスキ,音楽:D・バーン,出演:R・ウィルソン,花柳寿々紫 ■ロバート・ウィルソンが大阪にいる花柳寿々紫を訪ねに行くところから始まるの。 そして作品を共同作成していた頃の回想シーンへ・・。 日本舞踊を基本にした振付はウィルソンを魅了したはずよ。 彼女の舞台映像を見てもナルホド納得。 しかも花柳はとても精力的な人にみえる。 この仕事熱心さが彼との共同作業を長く続けられた理由かもしれない。 ウィルソンの作品の謎が一つ解けた感じだった。

■机の器の机

■振付・演出:平原慎太郎,出演:ORGANWORKS ■あうるすぽっと,2014.9.26-28 ■シェイクスピアフェスティバルの1本らしい。 一人が後ろ向きに座りシェイクスピア?の科白を喋っている。 しかしダンスの流れはこれとは無関係にみえる。  照明は逆光を多く使い無色系の舞台に深みを付加している。 題名にもある机が三つ置いてあるが数回しか使われない。 むしろ邪魔に感じられた。    舞台は男女の絡み合いがとても素晴らしい。 しかもどこか日本離れしている。 チラシをみると平原はスペイン研修に行っているようだ。 この影響が強く出ているのかもしれない。 彼のソロもあったが面白く観ることができた。 振付の特徴は目立たないが強靭と柔軟さを内包している。 興味が続くダンサーの一人に間違いない。 *館サイト、 https://www.owlspot.jp/old/performance/140926.html

■ピーター・ブルックの世界一受けたいお稽古

■監督:サイモン・ブルック,出演:P・ブルック ■イメージフォーラム,2014.9.20- ■ブルックの舞台はできるだけ観るようにしているの。 それは役者たちの解放された身体がリズミカルに積み重なっていく心地良さを持っているから。 一言でいうと芝居を観る喜びがあるからよ。 それはこの映画でも言っていた想像力・リアル・普通を演じる・脳の共有等々の成果なのかもしれない。 稽古は簡素な言葉だったけど具体的、でも基本の構造がよくみえない。 笈田ヨシのブルックへの質問は道化的すぎるし・・、90分の作品だからしょうがないかもね。 絨毯の上で稽古をしていたけどブルックは床に拘るの。 あの銀座セゾン劇場の土の色も鮮明に覚えているわ。 そして足の裏の感覚は役者にとって重要なのかしら? 張られたロープを渡る稽古でも足の裏のことを言ってたもんね。 きっと集中と想像力の焦点ね。  とりあえず稽古は演劇人にまかせて、早速「驚愕の谷」のチケットは手に入れたわ。 ウフフ・・。 *作品サイト、 http://www.peterbrook.jp/

■肉のうた

■演出:我妻恵美子,出演:大駱駝艦 ■壺中天,2014.9.13-21  ■我妻は赤いハイヒールを持ってしっかりと一度だけ踊りました。 コミカルな動きでしたが安定感抜群ですね。 存在感も十分です。 「牧神の午後」のような衣装はまさに「女ニジンスキー」でした。 女性ダンサーだけで踊り切るのは初めて観ました。 衣装や髪型に女性独特な雰囲気が出ています。 繊細さも随所にみえました。 ケモノを相手にする5人の子供は楽しかったし、アオザイとノンラーの踊りもなかなかでした。 でも終幕まで盛り上がりっぱなしで一本調子の感があります。 波を作れば感動が増すはずです。 頑張り過ぎて空回りしたような舞台でした。 音楽が少し単調過ぎたのも難です。 次回は冒険してみたらどうでしょうか。 そして「肉のうた」というのは単純な題名です。 もう少し考慮すれば作品の全体が光ります。 *劇団サイト、 http://www.dairakudakan.com/rakudakan/kochuten2015/niku_no_uta_2015.html

■[àut]アウト

■出演:グループ・アントルス ■シアタートラム,2014.9.18-20 ■緊張感ある夢を見ているようだ。 ハッと夢から醒める。 ・・。 しかし眠りからはさめない。 再び夢の中へ。 ノイズのような音楽と薄暗い照明に異様なアクセントが時々入る。 不安な光景の中で何をしているのだろう。 意味など考えられない。 いつのまにか夢から覚める。 ・・。 そしてまた夢の中へ。 身体は動かせないが無意識に動いてしまう。 どうすることもできない。 生き物のような鉱物が周囲で動き回っている! 疑問も出ない。 急に夢が冷める。 ・・。 観客席が明るくなってきた。 眠りからも覚めたようだ。 *作品サイト、 http://setagaya-pt.jp/theater_info/2014/09/aut.html

■水晶宮 ■ダフニスとクロエ

■水晶宮 ■音楽:G・ビゼ,振付:G・バランシン,衣装:C・ラクロア,出演:パリ・オペラ座 ■東宝日本橋,2014.9.12-18 ■衣装のラクロアがインタビュされていたけどすてきなチュチュだったわ。 この作品は色違いのチュチュ、赤→青→緑→黄→赤+青+緑+黄のダンサーが時間軸に沿って登場。 しかも舞台のダンサー達はいつも左右対称なの。 空間の対称性、時間の対称性が最後まで崩れない。 対称性の美学ね。 そして交響曲1番がピッタリと寄り添っていて解れる隙間が無いくらい。 バランシンの塊のような作品だったわ。 でもダンサー達がぎこちなかったのは残念ね。 ■ダフニスとクロエ ■音楽:M・ラヴェル,振付:B・ミルピエ,美術:D・ビュラン,出演:パリ・オペラ座 ■この秋にパリ・オペラ座バレエ監督に就任するミルピエはやはり勢いがある。 素晴らしい舞台だった。 振付の活きの良さは抜群。 初秋に初ガツオを食べた感じね。 物語性を排除するかどうか迷っていて最後は採用したのも当たり。 これも勢いだわ。 美術のビュランは賛否両論があったようだけど抽象性でなんとか逃げ切ったようね。 舞台美術は実際の劇場でみないとなんとも言えないけど、とりあえずいいんじゃない? 衣装もシンプルで白から色付きに移行していくのが素敵だった。 ともかくミルピエはこれからね、ウフフ・・。

■三文オペラ

■作:B・ブレヒト,演出:宮田慶子,出演:池内博之,ソニン,石井一孝,大塚千弘,あめくみちこ,島田歌穂,山路和弘 ■新国立劇場・プレイハウス,2014.9.10-28 ■舞台の高さが観客席と合っていたせいかとても観やすかったですね。 背景の階段の下に楽団を置くのはよく見かけますが、音響効果として申し分のない位置です。 その階段はあまり使わなかったのですが、シマリのない劇場空間を引き締めていました。 メッキー、ジョナサン、ブラウン男性陣は強さのある科白が人間関係を分かり易く繋げていました。 ジョナサンが進行役のため余計にそう見えたのでしょう。 メッキーは直截だけど舞台に張りをだしていてよかった。 ポリーとルーシーの女同士の喧嘩は楽しかったのですが、シーリア、ジェニーらを含めた女性陣の心の繋がりはよく見えませんでした。 女性たちが裏に隠れすぎてしまった。 この部分が弱かったので盛り上がりに欠けたのだと思います。  芝居も歌唱も抑制が効いていますね。 暴力場面などもソフトで歌唱も自然体で突出していません。 全体の調和を優先している感じがしました。 そしてこの優先は成功しています。 優等生が作った三文オペラです。 *NNTTドラマ2014シーズン作品 *劇場サイト、 http://www.nntt.jac.go.jp/play/diedreigroschenoper/

■マハーバーラタ-ナラ王の冒険-

■演出:宮城聰,劇団:SPAC ■神奈川芸術劇場・ホール,2014.9.12-13 ■舞台は円形でその中に客席があるの。 そして正面前は楽団席。 衣装は白で折り目がはっきりしているから紙のようにみえる。 仮面や動物たちの材料も多くは白紙。 たくさんの扇もね。 打楽器のリズムと二次元の白色ですべての動きがとても軽やかにみえる。 そして役者は演技だけで脇に居る太夫が喋る文楽形式を採るから物語を客観的に観ることになるの。 これとリズムある躍動感とが合わさって必然的に叙事詩を運んでくるのよ。 面白いメカニズムだわ。 幸せに暮らしていたダマヤンティ姫の王は悪魔に心を奪われ博打に走って総てを失ってしまう。 姫と王は離れ離れになるが苦しみの果てに再会でき幸せが戻る愛と感動のお話。 んーん、いいわね。 悪魔も賭博に誘った弟もすべてを許す。 芝居の故郷が一杯詰まった内容だった。 *劇場サイト、 http://www.kaat.jp/d/mb

■風の吹く夢

■作・演出:赤堀雅秋,劇団:THE SHAMPOOHAT ■スズナリ,2014.9.10-23 ■貧困生活の中で突然訪れる暴力的な言葉と身体、これに続く他者への凝視と一瞬時が止まったかのような間。 独特な緊張感ある舞台をいつもみせてくれます。 今回はしかしこの劇的場面が空回りしています。 食堂での詩人エマソンの語り、土木作業員宅での渋谷通り魔計画や子供の排便、スナックでのガイヤ理論、どれもボルテージがあがらなかった。 唯一緊張感があったのは五味宅の場面だけです。 これで流れが断片化されてしまい物語に力が入らない。 演出家の不調が原因ですか? シャンプーハットは何回か観ていますが赤堀雅秋の顔を知りませんでした。 今回土木作業員で出演していたとは驚きです。 そういえば前の舞台でも登場していたのを思い出しました。 演出家が登場するのは珍しくありませんが役者としても迫力満点ですね。 彼の演技をみているとどのような演出をしたいのかがわかります。 チラシに解散するかどうか書いてありました。 もしそうならとても残念です。 *第29回公演作品 *CoRichサイト、 https://stage.corich.jp/stage/58822

■ビルのゲーツ

■作・演出:上田誠,劇団:ヨーロッパ企画 ■本多劇場,2014.8.29-9.7 ■情報化社会ではいつも過剰に向かう。 セキュリティは特にそうだ。 この過剰を反復に置き換え面白い舞台に仕上げている。 仕事で顧客のビルに伺い入退室カードを翳して入室する場面から始まる。 しかし階ごとにセキュリティゲートがあるため最後はゲートを開けることが目的になってしまう話である。 ゲートでは他者と協力して問題を解決しなければならない。 目の前の判断はくるくる変わり、なにもかも繰り返しながら時を消費していく。 まさに人生の縮図である。 ゲート通過でクイズ問題が多くあったため途中飽きてしまった。 猛犬や猛獣や針山などアクションを伴う通過を写真編集にしたのはもったいない。 費用と時間の問題だろう。 クイズを減らし平均化すればずっと良くなる。 しかし最後のゲートを開けてビルの屋上に辿り着いた時の達成感は単純爽快でとてもよかった。 何十回もゲートを通過するだけで上演時間が2時間以上もあったが、この長さが最後の場面に効いていた。 目的も結果も不要な反復の勝利である。 *劇団サイト、 http://www.europe-kikaku.com/projects/e33/

■じゃのめ

■作:秋之桜子,演出:松本祐子,出演:西瓜糖 ■下北沢駅前劇場,2014.8.29-9.5 ■飛び移れる程の狭い路地に挟まれた二階の二部屋が舞台です。 上手は会議室、下手は娼婦栄子の部屋。 二階から道路を見下ろす演技が活きています。 面白い舞台構造ですね。 チラシには関東大震災と治安維持法の大正時代を背景に「痴人の愛」を参考にしたようなことが書いてあります。 東日本大震災も重ねているようです。 全体に男尊女卑が色濃く表現されていました。 これを下地にして人間関係に迫るのは大変ですね。 結局、肝心な事はオブラートに包んでいるようにみえました。 西条との政治スキャンダラスも寄り道です。 雅枝が同志になる為、南高に対して何も言わないのも腑に落ちません。 愛のみえないセックスを<聞いている>のも気が散ります。 でも栄子と雅枝がテニスでダブルスを組もうと話をする場面は記憶に残りました。 些細な件ですが彼女らの深いところがチラッと見えた気がしました。 他の決定的場面の多くは物語を成長させることができない。 また高井と雅枝二人の科白内容や演技の硬さも芝居が煮詰まらない原因にみえます。 しかし面白くまとめてしまうのは演出家に力があるからでしょう。 *劇団サイト、 http://livedoor.blogimg.jp/suikatou-2018/imgs/d/e/de26f0fd.jpg

■CLOUD/CROWD クラウド/クラウド

■出演:ジャポン・ダンス・プロジェクト・メンバ,新国立劇場バレエ団 ■新国立劇場・プレイハウス,2014.8.30-31 ■途中の休息では後半がどうなることか心配になってしまった。 前半の初めと終わりは良かったが、明暗ある照明や古びた音楽はチグハグでダンサーの動きも何をしたいのかが不明にみえた。 後半はプロジェクトメンバー5人の顔がみえる舞台になる。 笑いもあり観客席にもホットした気配が戻る。 音楽も5曲くらいあったがバラケていてとてもいい。 なんと最初が「LET MY BABY RIDE」。 この前みたL・カラックスの「ホーリー・モーターズ」*1を思い出してしまった。 奥深さのある音楽が先行し消化できていないが5人の動きは素晴らしい。 振付の見所が一箇所あったがとても良かった。 プロジェクトとゲストのダンサー同士が混ざり合っていない舞台にみえた。 上演が2回だからもっとくだけた工夫があってもよい。 *1、「ホーリー・モーターズ」 http://www.holymotors.jp/ *NNTTダンス2014シーズン作品 *劇場サイト、 http://www.nntt.jac.go.jp/dance/performance/140830_003724.html