投稿

7月, 2015の投稿を表示しています

■トロイラスとクレシダ

■作:W・シェイクスピア,演出:鵜山仁,出演:浦井健治,ソニン,岡本健一,渡辺徹ほか ■世田谷パブリックシアタ,2015.7.15-8.2 ■眠くなってきたが、クレシダが登場したら目がパッチリしました。 戦争は愛を急がせますね。 精神的にも肉体的にもです。 この為か愛の主人公はクレシダ、戦いはヘクターに集約していきます。 トロイラスは主人公になれない。 彼のスピードは受け身だからです。 能動的に急ぐ人が主人公になれる芝居です。 ドライですね。 「実に現代的」と言われる所以でしょう。 チラシに「「ヘンリー五世」と「ハムレット」の溝を埋めた作品」とありましたが、二人はハムレットとオフィリアの逆を演じているようにみえました。 カーテンコールで観客の拍手に力が入らなかったのは「ハムレット」が持っている男女間の保守的な姿が無かったからでしょう。 急がないで待つという保守性です。 観客も保守層が多かった? 「ヘンリー五世」は記憶が少ないので比較できません。 舞台はギリシャの野外劇場のようで戦いの場面を意識した造りになっています。 白赤の二枚の布で愛の場面も包み込むところは簡素ですが巧く出来ていました。 *劇場サイト、 https://setagaya-pt.jp/performances/20150615-511.html

■さよならウィキペディア

■作・演出:はせひろいち,出演:劇団ジャブジャブサーキット ■スズナリ,2015.7.24-26 ■ストーリーが変わっていて上手くまとめられません。 幽霊や宇宙人は謎として舞台に立現れるのではなく予定調和のごとく物語に組み込まれているようにみえます。 そして台詞の途切れるところで役者が遠くをみつめ静的な存在感を作り出します。 この二つが舞台に異化効果を出現させます。  でもこの調和はそのまま退屈を招きよせる。 占師の心霊術、刑事の上下関係、役所職員のアヤトリ、幽霊の登場理由、・・、面白いのですが段々と眠くなる。 終幕に近づくと奇抜な場面が多くなるのでよいのですが、この調和を揚棄したいところですね。 今回は題名をみてチケットを購入しました。 ウィキペディアは他の話題に埋もれてしまい影が薄かったですかね。 なぜ「さよなら」なのか? 元刑事の画家に贈る4つの言葉はこれを遠ざける方向に行こうとしているからでしょう。 開幕前に演出家の挨拶がありました。 演出家の顔や声は作品を身近に感じさせます。 でも作品のことより明後日の話の方がよい。 *チラシ、 http://stage.corich.jp/img_stage/l/stage51030_1.jpg?1437777639

■墓場、女子高生

■脚本・演出:福原充則,倉田淳,劇団:ベッド&メイキングス ■東京芸術劇場・シアターイースト,2015.7.17-26 ■初めての劇団です。 何が飛び出るかワクワクしながら池袋へ向かいました。 盛夏に相応しいお墓が舞台ですが、授業を抜け出し墓石に腰かけてビールを飲み卒塔婆を振り回しゲロを吐く女子高生では涼しさが感じられません。 クラスの一人が自殺をしたらしい。 現生に未練を持っている人がいるので彼女は成仏できず幽霊となって墓場に現れるようです。 その未練ある級友たちが彼女を生き返らせる。 しかし級友や先生は自殺の原因が自分たちにあると思いこんでいた。 これを知って女高生は再び自殺をしてしまうという話です(正確でないかも)。 自殺の理由は明かされません。 巫女の祈祷など女性特有の笑いが多くて新鮮でした。 そして歌唱も素晴らしい。 生と死や友情などを扱っていますが、これと歌唱をもっと直結させても面白いと思います。 科白が疎らになりシラケる場面が時々ありました。 綱渡りをしているような気分ですが、なんとか渡り切った観後感です。 上演時間をあと30分短縮できたら観客はより楽になれるでしょう。 役者では清水葉月の演技が印象に残りました。 それにしてもセーラー服は強いですね。 帰りはウキウキしながら池袋をあとにしました。 *劇場サイト、 http://www.geigeki.jp/performance/theater096/

■アドルフに告ぐ-日本篇、ドイツ篇-

■作:手塚治虫,演出:倉田淳*1,出演:劇団スタジオライフ ■紀伊國屋ホール,2015.7.11-8.2 ■1973年、イスラエル軍兵士アドルフ・カミルとパレスチナに逃亡したナチス残党アドルフ・カウフマンが一戦を交える場面で突然、神戸に住んでいた頃の二人の子供時代に遡って幕が下りる・・。 原作は昔読んでいるが、20世紀を突き抜けるような戦争と人間の姿が描かれていて手塚治虫の作品の中ではベスト10に入る面白さだったと記憶している。 淡々とリズミカルに物語が進んでいく。 役者のミニマルな動きと科白が一つ一つ積み上げられ時代の核心に近づいていく。 この作品は作者が持っている壮大な歴史観の一端を取り込み、それを叙事詩として如何に高められるかが課題だろう。 日本篇・ドイツ篇・特別篇の三部構成のようだが、先日に日本篇を本日はドイツ篇を観た。 上演時間は共に130分で内容も6割は同じである。 しかし後者の方が出来が良い。 それはもう一人の主人公アドルフ・ヒトラーが登場したからである。 これにより「国家正義」がどの時代どの国においても欺瞞に満ちたものであることがより鮮明に表現できた。 今この作品に再会できて嬉しい。 *1、 「トーマの心臓」(2014年) *作品サイト、 http://www.studio-life.com/stage/message-to-adolf2015/

■障子の国のティンカーベル

■作:野田秀樹,演出:M・マーニ,出演:毬谷友子,野口卓磨 ■東京芸術劇場・シアターウエスト,2015.7.12-19 ■とても楽しめたわ。 友子は自身の姿そのままで演技をするから一人で演じ語っていく作品が似合うのよ。 地をベースにしてそこから役者たちを飛び回るのね。 毬谷友子からティンクに、そしてティンクからピーターに次々と変身していくの。 子供心を持った人物達だから彼女の意気込みも感じられた。 随所に言葉の綾があるので脳味噌がウズウズするう。 しかも分身としての人形を使うから物語が和音のように深みが出てくる。 人形遣いも巧かったわよ。 永遠の子供たちと再会できた懐かしさと、人でなしの恋の儚さが舞台に漂っていて素晴らしかったわ。 *劇場サイト、 http://www.geigeki.jp/performance/theater090/

■女中たち

■作:J・ジュネ,演出:中屋敷法仁,出演:矢崎広,碓井将大,多岐川裕美 ■シアタートラム,2015.7.11-26 ■若い女性が9割以上とは・・。 これだけ観客が片寄ると芝居の面白さも偏ってしまいそうね。 客席は三方にあり舞台は枠だけの棚に囲まれているの。 棚の上半分は幕の代わりに天井へ上がる仕組みよ。 軽い硬さがあって物語を引き締めている。 この日は姉のソランジュ役が矢崎広、妹クレールが碓井将大。 田舎からでてきたばかりの女中たちでぎこちない動きが面白かった。 でも早口や声の高い場面ではソランジュの科白が少し濁ってしまう。 ゆっくり確実に喋ってもいいとおもうけど。 そして似た者同士の姉妹は裏側がまだ熟成していない。 演出家は覗き見を楽しんでもらいたいと言っていたけど少し青いわね。 女主人との落差があったのも一因。 雑音のような低演奏や照明の色が心理面を巧く表現していた。 どちらも姉妹を支援していてよかったわよ。 棚下に並んでいたライトは目障りだったけどね。 *劇場サイト、 https://setagaya-pt.jp/performances/20150708-2253.html

■眠れる森の美女

■音楽:P・I・チャイコフスキ,演出:マシュー・ボーン,出演:H・ヴァッサロ,D・ノース,C・マーニ,A・マスケル ■恵比寿ガーデンシネマ,2015.7.4- ■「白鳥」のように男性ダンサーじゃなかったの。 正直ほっとしたわ。 美術・衣装・化粧は素晴らしく見惚れてしまった。 ダンサーの背中の翼もドラキュラの登場も面白い。 でもストーリーが練れていないようね。 細部を凝ってしまい意味やパントマイムが浮遊してしまった。 似たような動作の繰り返しが多くて間延びしている。 振付はまあまあだったわ。 有名作品だからもっと凝縮してもいいとおもう。 エンターテインメント作品としては最高よ。 それよりカメラの動きがダメね。 舞台全体の静止時間は短じかいし主役ダンサーを追いすぎている。 カメラが感動を逃してしまった。 これを言うなら舞台を観ればよいだけのこと。 でもブリストルヒッポドローム劇場はちょっと遠すぎる。 ところで「くるみ割り人形」も観てみたいけど上映は終わってしまったのかしら? *映画com、 https://eiga.com/movie/82164/

■躍る旅人-能楽師・津村禮次郎の肖像-

■監督:三宅流,出演:津村禮次郎 ■新宿・KSシネマ,2015.6.27- ■津村禮次郎の舞台はダンサーとの共演は観ていますが能はありません。 能世界では主流から外れているのも一因でしょう。 「・・まずは行動してその結果何が出てきたか?を評価すればよい」という指針を持っている人とみました。 アーティストとしては効率的です。 でも肉体も精神も強くなければできない方法ですね。 印象に残ったのは平原慎太郎と小野寺修二の場面です。 少ししか映されていませんが津村と対話をしながら作り込んでいくのが面白かった。 それと佛現寺の場面です。 ここで転機となった彼自身の履歴が話されます。 彼の思想の一端を見ることができます。 最後にバリ舞踊とのコラボが登場しますが不可能を可能にしていますね。 囃子方の不安をよそに作品を練り上げていく姿は強い。 鋼鉄の精神を持っています。 津村禮次郎は「ターミネーター」のシュワルツェネッガーに似ているとおもいます。 *作品サイト、 http://www.odorutabibito.com/

■三人吉三

■作:河竹黙阿弥,演出:串田和美,出演:中村勘九郎,中村七之助,尾上松也 ■新宿ピカデリ,2015.6.27-(シアターコクーン2014.6収録) ■編集やカットで舞台とは別作品のようだ。 とは言っても舞台は観ていない。 チケットが即完売して取れなかったからである。 それでも歌舞伎役者の科白と存在の様式美は十分堪能できた。 美術を見てもスタッフのやる気の跡がうかがえる。 編集で切り過ぎているので、ある程度の粗筋を知っていたほうがよい。 物語を引っ張っていく燃料の百両がとても生きていた。 このカネが江戸を越え現代に迫ってくるので舞台がリアルにみえてくる。 干支の戌はさしずめ燃料オイルだろう。 おとせと十三郎の首を抱え三人が見得を切るところで幕を下ろすのが作品としてすっきりするとおもうが、客席にまで積もったサービス満点の大雪の中での刺し違えはやり過ぎだろう。 *シネマ歌舞伎第22弾作品 *作品サイト、 http://www.shochiku.co.jp/cinemakabuki/lineup/29/

■ウィリアム・テル

■音楽:G・ロッシーニ,指揮:A・パッパーノ,演出:D・ミキエレット,出演:G・フィンリ,J・オズボーン,M・ビストレム ■新宿バルト9,2015.7.6(ROH収録) ■流れるような演奏は心地よかった。 ロッシーニとパッパーノの相乗効果ね。 主要歌手もこの流れに乗っていたわ。 オズボーンの高音もまあまあネ。 でも合唱場面が多いから歌手の印象が薄い感じもする。 歌詞はフランス語だけどそう聞こえなかった。 仏蘭西の匂いのしない作品だからかな? オペラは言語で印象が違ってくる。 母語だと質も変わるもんね。 衣装から20世紀初頭に移し替えていることがわかる。 しかもオーストリア兵士は銃を持っているから前大戦を意識しちゃうわね。 でも林檎を射抜く肝心な場面は14世紀に戻って弓矢が登場するの。 近頃、英国発のシェイクスピア作品も時代を現代に移し軍隊の登場する作品が多くなったみたい。 舞台に最新の銃を持った沢山の兵士が登場するのは好い感じはしない。 英国舞台人は何を考えているのかしら? 床は土が盛られていてそこに机と椅子、後半は大木が横たわっているの。 でもスイスの自然は感じられなかった。 やはりスイスとオーストリアの政治的緊迫感が優先のようね。 横たわる大木も、終幕に子供が植える苗木も国家の象徴ね。 *英国ロイヤル・オペラ・ハウス2014シネマシーズン作品 *主催者サイト 、 http://tohotowa.co.jp/roh/

■スカイライト

■作:D・ヘア,演出:S・D・ダルドリ,出演:C・H・マリガン,B・ナイ ■六本木東宝,2015.7.3-8 ■窓の外を見ると隣のマンションが壁のように立ちはだかっている。 索漠としたキラの部屋が舞台である。 登場人物は3人。 父トムとその娘キラ、息子エドワードだと思ってみていたがどうも筋が通らない。 トムの妻アリスを含め4人の関係は少し後になって知るのだが・・。 客席(画面の)から絶え間なく笑い声が聞こえる。 笑いの源泉は何んとなしに分かるが観客の感度が良すぎるのか大げさなのか判断がつかない。 英国現代劇は観る機会が少ないので、たとえばキラがパスタを料理する調理器具の使い方や具材の加工手順など些細なところに目が行ってしまう。 また彼女が教師をしている高校?の状況にも聞き耳を立ててしまう。 でもトムの会社の話はリアルに聞こえなかった。 トムは仕事で成功した裕福層だが、キラは進んで貧困街のアパートに住んでいる。 この二人の人生観・社会観の差、過去の交際を材料として話が進む。 後半、舞台に引き込まれる対話場面が多々ある。 二人の思い込みやすれ違いが面白い。 しかし英国の階級?や政治経済を絡める要素が多い為か、家族関係や貧困問題の突っ込みも舞台感動まで集約して行かない。 ともかく現代モノはいろいろ比較できて面白い。 舞台のキラとトムは上手い役者だとおもうが独特な癖がある。 英国の観客にも同じことがいえる。 歴史モノだとこれは感じない。 日常感の違いから来るものかもしれない。 生の舞台ではないので表面をなぞるように見てしまったがいつものシェイクスピアとは違った面白さはあった。 *NTLナショナル・シアター・ライヴ作品 *作品サイト、 http://ntlive.nationaltheatre.org.uk/productions/ntlout6-skylight

■BLOOD-C、The LAST MAIND

■原作:Production I. G・CLAMP,演出:奥秀太郎,出演:宮原華音,南圭介,滝川英治ほか ■世田谷パブリックシアタ,2015.7.2-5 ■実はこの作品は読んでいません。 ストーリーも知らないまま劇場にいきました。 観客は若い女性と所々に中年男性という面白い構成です。 トラムを含め当劇場は今迄とは違った観客構成の作品が多くなりましたね。 役者たちは存在感があり漫画から飛び出てきた単純さ明快さがあります。 チャンバラが多過ぎるのが難ですが全体のスピードとテンションを上げる為には必要なのでしょう。 映像も古典的でしたがダイナミックでよかったですね。 ヘリコプターが飛んできてそれに乗って行くのも面白い。 物語ですが要約したような内容です。 でも場面各々の裏には沢山の過去がへばり付いているのを感じる。 雑誌やアニメで作品に接していた人なら面白いはずです。 漫画史を俯瞰しているようなストーリーで懐かしさもあります。 小夜が記憶を求め進むのとシンクロできる快感がありました。 舞台の楽しさはありますがしかしダイジェスト版をみている感は否めません。 *チラシ、 http://www.negadesignworks.com/blood_c/index.html