■アドルフに告ぐ-日本篇、ドイツ篇-

■作:手塚治虫,演出:倉田淳*1,出演:劇団スタジオライフ
■紀伊國屋ホール,2015.7.11-8.2
■1973年、イスラエル軍兵士アドルフ・カミルとパレスチナに逃亡したナチス残党アドルフ・カウフマンが一戦を交える場面で突然、神戸に住んでいた頃の二人の子供時代に遡って幕が下りる・・。
原作は昔読んでいるが、20世紀を突き抜けるような戦争と人間の姿が描かれていて手塚治虫の作品の中ではベスト10に入る面白さだったと記憶している。
淡々とリズミカルに物語が進んでいく。 役者のミニマルな動きと科白が一つ一つ積み上げられ時代の核心に近づいていく。 この作品は作者が持っている壮大な歴史観の一端を取り込み、それを叙事詩として如何に高められるかが課題だろう。
日本篇・ドイツ篇・特別篇の三部構成のようだが、先日に日本篇を本日はドイツ篇を観た。 上演時間は共に130分で内容も6割は同じである。 しかし後者の方が出来が良い。 それはもう一人の主人公アドルフ・ヒトラーが登場したからである。 これにより「国家正義」がどの時代どの国においても欺瞞に満ちたものであることがより鮮明に表現できた。 今この作品に再会できて嬉しい。
*1、「トーマの心臓」(2014年)
*作品サイト、http://www.studio-life.com/stage/message-to-adolf2015/