2012年9月30日日曜日

■月に光るガラスの破片  ■愛憎渦中

作・演出:伊立、出演:建木劇社
タイニイアリス、2012.9.26-10.3
幕が開いてすぐに舞台上の日本語訳の表示が消えてしまった。 故障? 中国語のセリフでは理解できない。 現代劇は珍しいので何を喋っているのか知りたい。 残念!
音楽はタンゴやピアノが主で、役者はバレエのような動きも取り入れている。 ビナ・バウシュにヒントを得ているらしいがそのように見えない。 でも中国風から脱したい気持ちがでている。
役者たちが「日中友好」と書いた紙を持ってのカーテンコールだったがあまり気を使わないでもらいたい。 それよりもっと芝居を面白くしてくれ。
愛憎渦中
作・演出:ラディー、出演:劇団ING進行形
作品の一部だけを上演したような舞台である。 ストーリーがよくわからない。 娼婦と女主人とのやりとりも激しいだけで中身が無い。 ところで中央に位置していたコロスは目の動きが歌舞伎的で面白い。 身体の動きもシャープであった。
二本立ての上演だったがどちらも芝居を観た気がしない。 前者は翻訳機の故障、後者は中途半端な物語だったから。

2012年9月28日金曜日

■幻想の箱舟

脚本:酒井一途,演出:岩渕幸弘,出演:ミームの心臓
荻窪小劇場,2012.9.26-10.3
箱舟に乗った主人公シャンスラードは、幸せではないが満足している乗客たちに出会う。 彼らはしかし何者かわからないが脅かされてもいる模様。 箱舟がどこへ向かっているか誰もが見えない状況で乗客たちの対立が激しくなっていく・・。
裏の意味を持っていない、とてもシンプルな科白です。 舞台はこれで役者たちをブレない姿にしています。 多くの議論にもかかわらず濃厚さが失われサッパリした芝居です。 音楽や照明はメリハリのある役者の喋り方と合っていました。
箱舟の中の不満や不安はそのまま現代の若者が置かれている状況です。 そして芝居が提出する答えもはっきりしていません。 箱舟が大地から離れていなかった終幕のオチも物語は始めに戻ってしまったことでわかります。
それでも箱舟に乗った意義はあります。 行きつ戻りつの議論をしながら前進するしかないのです。 そして脚本にサッパリ感を失わずにコクのある味付けができればまた一歩前進です。
*チラシ、http://stage.corich.jp/img_stage/l/stage_reverse28553_1.jpg?1348787868

2012年9月26日水曜日

■セヴィリャの理髪師

指揮:M・ベニーニ,演出:B・シャー,出演:J・デドナート,J・D・フローレス,P・マッティ
東劇,2012.8.25-9.28(MET,2007.3.24収録)
ロッシーニはいつも楽しさが一杯ね。 恋愛好色物語だけど開放感があるからよ。 ドアや木々、理髪店の装置移動はリズミカルだったし、アリアや重唱は歌手同士の親密さが加わり、しかもせり出し舞台で、一層の親近感をもたらしていた。
舞台の流れが崩れるようで崩れないのは演出の良さだわ。 「混沌をキープしろ!」とシャーが言ってたけど、キープの手段としてバルトロに着眼したのが面白い理由だったのね。
今回のMET アンコール上映での一番の収穫は演出家バートレット・シャーに出会えたことかも。 「オリー伯爵を観た時は脳味噌にビビッと来たわよ。 素晴らしい演出家ね。 だから「ホフマン物語」を見逃したのは悔いが残るわ。
*METライブビューイング2006シーズン作品

2012年9月25日火曜日

■浮標

作:三好十郎,演出:長塚圭史,出演:葛河思潮社
世田谷パブリックシアタ,2012.9.20-30
舞台は海岸のように砂が敷き詰められている。 その周りは板で囲って椅子が置いてある。 役者達が椅子に座り出番を待っているが、衣装を着替える時などは外している。 4時間だからリラックスして観てくれ、と長塚圭史が幕開きに言っていた。
しかしあまりにも真面目な姿勢で椅子に座っている役者達や、久我五郎の叫ぶような台詞でリラックスどころではない。 激しいセリフが一幕・二幕と続くが、しかし、どうも眠くなってしまう。
尾崎との借金議論や比企との医学議論、そして美緒との神の議論が五郎の苦悩に結びついていかない。 それは聖母のような美緒が五郎の生への執着を避けているからだ。 五郎の議論では「生」が充実しないことがわかっているから。
圧倒的な「死」を前にしている「生」は誰もが避けられない。 しかしこの運命に縛り付けられてそのまま舞台に乗せているだけの作品ある。 「生」の執着しかみえない。 五郎は叫ぶ以外に方法がない。 遣る瀬無い芝居になってしまった。
*チラシ、http://setagaya-pt.jp/theater_info/upload/file/bui_pm_pdf_dl_file.pdf

2012年9月23日日曜日

■マクベス

■作曲:G・ヴェルディ,指揮:J・レヴァイン,演出:A・ノーブル,出演:M・グレギーナ,Z・ルチッチ
東劇,2012.8.25-9.28(MET,2008.1.12収録)
一幕は素晴らしかったわ。 魔女の「謎めいた予言」とマクベスの「不吉な予感」だけで物語が進んでいくの。 だから終幕迄にこの予言と予感を全て舞台で具現化しなければならない。
さすがノーブルかと観ていたけど、二幕はこの具現化が多過ぎて消化できず深みが出なかった。 マクベス夫婦の心の流れを捉え切れない。 これで二幕は自滅したのね。 軍隊と難民ばかりが目立ってしまったわ。
ノーブルが「権力者の登場と退場は中世でも現代でも同じだ」のような事をインタビューで言っていたけど設定を20世紀にしたのは正解。 マクベスの歌唱は伸びと張りがもう少し欲しかったわね。 だからマクベス夫人より観客の拍手が少なかったのよ。
*METライブビューイング2007作品

2012年9月22日土曜日

■ラ・ボエーム

指揮:N・ルイゾッティ,演出:F・ゼッフィレッリ,出演:A・ギオルギュ,A・アルテタ,R・ヴァルガス
東劇,2012.8.25-9.28(MET2008.4.5収録)
音質が少し悪いわね。 録音マイクが舞台から離れていた感じ・・。 オーケストラや観客の拍手は問題なかった。 マイクの方向を誤って設置したんじゃない? でもこの音質は実際の観客席から聞いている音に近い感じがする。
だからこの音で品質をあげれば最高だとおもうの。 最近の作品は舞台の上で聞いているようで遣り過ぎよね。 たとえば今シーズンの作品は音に広がりが無くて劇場にいる感覚がまるでないから困っちゃうの。
そしてゼッフィレッリの代表作と言われているけどもはや過去の栄光を引きずっているだけの演出ね。 面白みがまったく無い。 歌手が生きていない。 ムゼッタは良かったけど。 音質の悪さと演出の硬直さで楽しめなかったわ。

2012年9月18日火曜日

■記憶のドラマ依田洋一朗展


*話題になるのはNYの劇場。

2012年9月17日月曜日

■クライシス百万馬力

作・演出:米山和仁、出演:ホチキス
シアタートラム、2012.9.13-16
まるでギャグ漫画をみているようだ。 張りのある叫ぶようなセリフや動き。 表面だけをなぞるストーリー。 脳味噌ではなく目や耳や皮膚で観るような舞台である。 観終わった時はひと汗かいたような後味だった。 それ以外は何も残らない芝居だ。
劇団は15周年らしい。 だから豪華にしたかったようだ。 これでキャバクラやホストクラブの連中がワンサと来ていたのか? お祝いの雰囲気に釣られて帰りにプログラムを買ってしまった。

2012年9月16日日曜日

■2012年METライブビューイング・ベスト3


*今シーズンのすべてを観終わったのでベスト3を勝手に選んでみたわ。 並びは観劇日順。 選出範囲は2011・12シーズンのアンナ・ボレーナ、ドン・ジョヴァンニ、サティアグラハ、ファウスト、エンチャンテッド・アイランド魔法の島、神々の黄昏、エルナーニ、椿姫と上記ベスト3を含め計11作品が対象よ。

■サティアグラハ

■作曲:フィリップ.グラス,指揮:D.アンゾリーニ,演出:F.マクダーモット,J.クローチ,出演:R.クロフト
東劇,2012.8.25-9.28(MET,2011.11.19収録)
やっと観ることができて嬉しいわ。 去年の暮れは見逃してしまったからよ。 トタン板と新聞紙が20世紀初めの物と事を呼び寄せてコクのある色を出している。 儀式のようであり祈りのようでもある舞台はグラスの音楽が融合して陶酔感が訪れるの。
三幕は少し単調過ぎたわ。 彼の音楽では<退屈>が一番の敵よ。 そしてセロテープのような細かい小道具を使うには注意がいるわね。 観客の神経をそれに集中させてしまうの。 演説が長すぎたキング牧師はオバマ大統領にみえてしまった。
一幕と二幕はしっかりまとまっていた。 「浜辺のアインシュタイン」とは違った角度と広がりが増している。 これで彼のオペラ三部作の最後「アクナーテン」が観れたら最高だけど。 でもちょっと無理かな。
*METライブビューイング2011シーズン作品

2012年9月15日土曜日

■ワタシんち、通過。のち、ダイジェスト。

作・演出:藤田貴大、出演:マームとジプシー
三鷹市芸術文化センター・星のホール、2012.9.7-17
家を解体する話です。 その家族や隣人が家にまつわる歴史や人間関係を語っていきます。 しかし独特な舞台が現前します。 セリフを声に出す時にカラダもそれに合わせています。 これは他劇団でも見かけますが大げさどころかダンスに近い感じです。
しかもセリフを段落単位でデータ処理、つまり並べ替え・併合や結合・判断そして反復などの演算操作、を施しているのです。
この二つを持って舞台は進行しますが、徐々にエントロピーが増大するかのように崩れていきます。 つまり言葉と身体の演算操作とエントロピーの増大で劇的感動を求めようとしているようです。 この時煙幕が張られるのもこれを意識しているからです。
しかしこの感動は少し弱いようにみえますね。 理由は科白を発する役者の身体が華奢な為です。 役者が雑に喚き動いているだけ。 だから祖母の話や妹が家を出る時の決心などの精神面が目立ってしまったのです。

2012年9月14日金曜日

■ドン・ジョヴァンニ

■作曲:W.A.モーツァルト,指揮:F.ルイージ,演出:M.グランテージ,出演:M.クヴィエチェン,M.レベッカ,B.フリットリ
東劇,2012.8.25-9.28
モーツアルトの世界がよく表れているわね。 曲が繊細だからオペラの面白さが独特なのよ。 叙唱が入っているから尚更そうかも。 でも盛り上がりに欠けてしまいダイナミックさも欲しいところね。 地獄へ落ちる場面は別だけど。
クヴィエチェンはモテそうで適役。 ジョヴァンニの裏側をもっと出してもいいけどオペラではこれ以上は難しいようね。 これだけの放蕩児なのに観終わったときの印象が静かなのはやっぱり彼もモーツアルトの手の上の悟空だったのよ。
*METライブビューイング2012年作品

2012年9月12日水曜日

■アンナ・ボレーナ

■作曲:G・ドニゼッティ,指揮:M・アルミリアート,演出:D・マクヴィカ,出演:A・ネトレプコ,E・グバノヴァ,I・アブドラザコフ
東劇,2012.8.25-9.28(MET2011.10.15収録)
真実は別としても誠実な歴史の舞台だった。 まるでシェイクスピアの役者が出てきそう。 ティラマーニはホルバインを参考にしたと言ってたけど衣装も素敵だったわ。
でもこの誠実さをネトレプコが壊してしまった。 アンナ役のネトレプコは歴史の匂いを感じさせないからよ。 彼女は別世界から16世紀英国に来たみたい。 体格もオペラ的というよりロシア的になってきたし。
ところでこの作品は政治的な話が一切でてこないところが凄い。 舞台だけをみているとヘンリー八世とアンは表面的な愛憎だけの関係なの。 だからドニゼッティの名声を確立した作品だと言われている理由がわからないわ。
19世紀初頭のヨーロッパは300年前のイギリスに興味があったのかしら? どの時代も愛と憎しみについてはわかるけど、この作品を観た当時の人の心の奥にはもう一つ別に感じるものがあったはずよ。
*METライブビューイング2011作品

2012年9月11日火曜日

■フリル

作・演出:広田淳一,出演:アマヤドリ
王子小劇場,2012.9.8-17
白紐の幕は暖簾のような使い方でした。 暖簾の周りだけを役者が動きまわります。 だから舞台がとても窮屈。 案内係が後ろの席が観易いと口うるさく言っていた理由がわかりました。 このため乱舞時代のダイナミックさはありません。
科白主体の劇です。 少しばかり深く突っ込んだ日常会話が続きます。 ストーリは断片的ですがなんとなく繋がっているようです。 チラシにストーリーらしきものが載っていましたが外れっぱなしです。
女性同士の対話より男性のほうが面白さがあります。 レス同士よりホモ同士の話が面白いのと同じです。 でも途中眠くなりました。 役者も動きは良く興味ある話でも100分も続けば飽きます。 もっと集中と選択をさせて70分にしたらどうでしょう?
「けっこう、毎日は戦争だ」「で?なにがいいたいの?」は言い訳です。 ここから次の姿を紡ぎだす必要があります。 質の良い言葉と身体を持っているのですから。 ところで何で劇団名を変えたのか理由を忘れてしまいました。

2012年9月8日土曜日

■カルメン

指揮:Y・セガン,演出:R・エア,振付:C・ウィールドン,出演:E・ガランチャ,R・アラーニャ
東劇,2012.8.25-9.28
二幕の闘牛士の登場でやっと調子が戻った。 それまでは導入部の日常の風景が上手く描けなかったからよ。 舞台前面が兵隊の詰所のため後方の街が見えない。 群衆の動きも悪い。 しかもタバコ工場は地下?にあるなんて考えられない。
その後は持ち直した感じ。 ガランチャのカルメンは良かったわ。 黒い瞳じゃなかったけど。 股の傷や舌を見せたりなかなかやるじゃない。 ウィールドンの振付もね。 演出家エアはヤル気がでなかったのかな? インタヴューでも挨拶が無かったし。
ドン・ホセのアラーニャはちょっと性格が良すぎたわ。 しかも老母やミカエラという現実そのものを舞台に登場させているから、彼をカルメンに無理やり近づけたら少しばかりシラケてしまうよね。 感動がイマイチの原因かも。
でもこの原因でどの曲もスペインの寂しさが感じられていつ聞いても素敵なのよ。
*METライブビューイング2009作品

2012年9月5日水曜日

■ランメルモールのルチア

■作曲:G・ドニゼッティ,指揮:M・アルミリアート,演出:M・ジマーマン,出演:A・ネトレプコ,P・ペチャワ,M・クヴィエチェン
東劇,2012.8.25-9.28(MET,2009.2.7収録)
ドニゼッティはとても急いでいるようね。 幕が上がり5分後にはルチアとエドガルドの関係をすべて知ってしまうエンリーコ、次幕でも結婚誓約書を書いた途端エドガルドが登場するのも駆け足ね。 ドニゼッティは早く目的地へ行きたい!
そしてその目的地でストーリーのすべてを展開するの。 エドガルドに「生きながら墓に入る」と言わせているのも早く着きすぎてしまったのよ。 でもこれも一つの物語展開方法として有りね。
エドガルド役はR・ヴィリャソンからペチャワに急遽変更になったようだけど残念。 ネトレプコとペチャワは「マノンの記憶が強すぎるのよ。 「狂乱の場」はネトレプコでは神経が太過ぎる。 ミスキャストだけどこれがオペラの面白いところかも。
*METライブビューイング2008年度作品

2012年9月4日火曜日

■オリー伯爵

■作曲:G・ロッシーニ,指揮:M・ベニーニ,演出:B・シャー,出演:J・D・フローレス,D・ダムラウ,J・ディドナート
東劇,2012.8.25-9.28(MET,2011.4.9収録)
一幕は喜劇が冴えていたわ。 リズムが良くてとスピードが有ったからよ。 でも二幕はスピードが落ちてしまった。 歌詞の反復が長かったためね。 でも久しぶりの面白い舞台だった。
衣装のデザインや色も最高ね。 これが登場人物達の笑顔を一層輝かせていた。 二幕は桃色同系色ばかりのエロチックさと尼僧の黒白を対比させ気が利いていたわよ。
それとMETではあまり登場しない歌手たちだからとても新鮮味があった。 ダムラウの貴族婦人はとても素敵ね。 夫々のアリアは物語の進行にピタリと合っていてリズムを崩さなかった。 全体はヘンデルを現代化したような感じを持ったわ。
舞台上に舞台を作って演出家?が登場するような劇中劇はオペラでは珍しいわね。 シャーがインタビューでモリエールを参考にしたと言ってたけど舞台が生き生きしていたのは演出が上手かった証拠ね。
*METライブビューイング2010年度作品

2012年9月3日月曜日

■ウイークポイントシャッフル

■演出:大歳倫弘,出演:ヨーロッパ企画
■下北沢・駅前劇場,2012.9.1-3
■このような芝居を「コント」というのでしょうか? 漫才をベースにして舞台に馴染ませたようなセリフです。 しかも重たく感じる意味も軽くさせてしまう関西系の乗りがあります。
母は亡くなり父が失踪し、・・残された4姉妹の話です。 なんと正体不明の「ザット」が彼女らを家から出さないようにしています。 そこへピザ配達人や保険調査員、失踪した父も4姉妹の家に現れます。 最後は宇宙人?が登場し幕となります。
ピザ配達人が4姉妹を騙しているのでは? 通信販売を論じたいのか? 父の娘達への愛情を表現したいのでは? ストーリーは有るのですが何が言いたいのかよくわかりません。 ウフウフ笑っていただけで終わってしまいました。 やはりコントですね。
*CORICHサイト、http://stage.corich.jp/stage/38450