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■万国博覧会

■ 振付:ラシッド・ウランダン,音楽:ジャン=バティスト・ジュリアン ■シアタートラム,2012.10.26-27 ■ チラシも読まないで観たがまったくつまらない舞台であった。 アフタートークを聞いてやっと概要がわかった。 万国博覧会は植民地時代に現地からかっぱらってきた物品を展示することである。 映像の彼の顔の色はフランス国旗であり吐き出す対象だ 。 彼がアルジェリアからの移民と知った時は「アルジェの戦い」や「ジャッカルの日」を思い出してしまった。 しかしダンスにこのような歴史背景を取り込むのは至難の業だ。 事前情報がなければ何を表現しているのかわからない。 このような舞台は苦手だ。 *チラシ、 http://setagaya-pt.jp/theater_info/upload/file/expositionuniverselle_pm_pdf_dl_file.pdf

■クレイジーホース・パリ

■ 監督:フレデリック・ワイズマン ■アルテリオ 映像館,2012.10.27-11.16 ■ 「 万国博覧会 」へ行く途中に寄り道する。 「クレージーホース」はパリのナイトクラブのこと。 そこでの演目は芸術的ヌードショウである。 ヌード舞台の練習風景の記録であるが、オッパイやお尻がこれでもかと出てきて最高である。 しかし映画そのものの感動は無い。 ワイズマンの無欲さというか無能さがでている。 フィリップ・ドゥクフレが舞台の演出家として登場するがダラダラしていてどうしょうもない。 日本だったら即クビだろう。 観ていてウキウキさせてくれたのはダンサーだけで、監督も映画の中の演出家も本業での期待に答えてくれなかった。 *映画com、 https://eiga.com/movie/57280/

■白鳥の湖

■ 指揮:B・グルジン,演出:A・ダニエル, 出演:Z・ヤノウスキ-,N・キッシュ ■ワーナ・マイカル 東京,2012.10.24(ROH収録) ■ 中継映像のためか画面が少し不安定だったけど中盤以降良くなったわ。 動きの激しい場面は微妙に振動するのは残念ね。 スラブ系の匂いが漂っているけどベクトルはより東方に向いていてこれはユーラシア大陸的作品ね。 衣装や装置は深みとコクのある色彩で素晴らしわ。 1幕と3幕の城内の様子、そして2幕と4幕の湖、すべてがパーフェクトよ。 もちコール・ドもね。 さすがシェイクスピアの国の踊りね。 楽しかったわよ。 でもオデットが登場した時は驚いたわ。 マシュー・ボーンの白鳥が現れた! ヤノウスキは長身で肩幅が広く筋肉質で男性のようだもの。 観ていて不思議な気分ね。 キッシュが素直な人のようだからなんとかまとめたのよ、きっと。 *英国ロイヤル・オペラ・ハウス2012ネマシーズン作品

■演劇1、演劇2

■ 監督:想田和弘,出演:平田オリザ,青年団 ■シアターイメージフォーラム,2012.10.20-11.25 ■ 1.ダメな役者を吊るしあげる時、演技・人格・生い立ち・家族の素性にまで遡る某演出家もいるようですが、オリザの「ダメだし」は静かな厳しさが感じられます。 小津安二郎の駄目出しを真似ているわけではなく、両者の方法論が結果として一致したのです 。 2.入団面接で演出希望者が口ごもっている場面がありました。 希望が叶えられても役者の投票で可否が決まるのですね。 つまり俳優からの支持が得られなければ演出家も続けられないということです。 河原乞食集団の厳しさが表れています。 3.オズ映画の感動は喜怒哀楽から来るのではなく映画芸術そのものからきます。 オリザ演劇と近いですね。 原節子の写真が壁に貼ってありました。 小津の写真じゃサマにならない。 だから代わりに原節子を貼ります。 これは皆がしていることです。 4.劇団員がR・ブレッソンの議論をする場面があります。 ブレッソンもオズと同じ方向です。 演技時に役者の脳味噌がカラッポになるほど、ある種の感動が訪れるものです。 ロボット演劇に進むのは必然でしょう。 その先に劇的感動が必ず有るからです。 5.アゴラ劇場の乱雑した事務室や事務処理を初めてみました。 興味ある場面ですね。 高校授業風景やフランス公演もです。 「新国立劇場はなにもしていない!」と彼は言い切っています。 オリザは文化活動にも実績があるから言えるセリフです。 *作品サイト、 http://engeki12.com/

■旅程

■ 三鷹市芸術文化センター・星のホール、2012.10.19-28 ■ http://stage.corich.jp/img_stage/l/stage30935_1.jpg?1350774964 ■ 場面が細かく分かれ並行してストーリーを進めていくのは近頃の小劇団の流行りのようだ。 詩のような状況説明のセリフが時々混じっていている。 建築資材会社の社員とその家族が登場するため仕事話が多い。 正社員と非社員、親の投資失敗や娘の不純行動など結構リアルな話が詰め込まれている。 観ていても緊張感が走る。 しかし商品不正の話にのめり込み過ぎてしまい、観終わった時はこの話しか覚えていない。 役者も上手いがこのため影が薄い。 テレビや映画に対抗しようとしている。 だからテレビドラマと同じく、観客を緊張感だけ持った傍観者にしてしまうような芝居であった。

■曼荼羅の宇宙

■ 演出・振付:森山開次,音楽:高木正勝 ■ 新国立劇場・小劇場,2012.10.17-21 ■ 忍者がダンスをしているようだわ。 でも、もっと根源的な面白さがあった。 日本的というかモンスーン的農耕的振付が詰まっていて遠い日本を思い浮かべることができたからよ。 題名「書」を身体表現するとこのような振付になるのかしら? 波・雨・狼・馬・鳥・虫の音を背景にダンサー同士のコミュニケーションも同じ懐かしさが表れていたわ。 第一部終幕近く曼荼羅が投影されたけど舞台の流れには結びつかなかった。 そして柳本の指の先端に切れがなかった。 次の第二部「虚空」は森山のソロ。 5メートル四方の小さな舞台に力を凝縮して、平安時代の空の大日如来と鎌倉時代の力強い仁王像を同時に踊っているよう。 ピアノがリズムを持ってきた中盤の踊りは素晴らしいの一言。 森山と5人のダンサーそしてピアノの高木。 この7人で曼荼羅の世界を描こうとしたけどできなかった。 というより曼荼羅の絶対的世界から飛び出してしまうしなやかさがあったわ。 曼荼羅のその先へ行こうよ!と言っていたのね。 *劇場サイト、 http://www.nntt.jac.go.jp/dance/pdf/20000627.pdf

■傘月

■ 脚本・演出:下西啓正、出演:乞局 ■ 新宿・SPACE雑遊、2012.10.10-17 ■ http://stage.corich.jp/img_stage/l/stage30230_1.jpg?1350214505 ■ 日常生活を少しばかりこじ開けるような議論がセリフに沢山入っていて面白いですね。 しかも災害場面で苛立っているのか棘のある対話が続きます。 このような台詞を書きたいので背景に災害を持ってきたのでしょうか? 12場面の作りになっていて物語が非連続に並行して進んでいきます。 構成は面白く役者たちも力が入っています。 干魃や瓦礫処理、大洪水など自然災害を背景として物語は一つにまとまっていくかにみえます。 被災地住民とボランティアとの人間関係が印象に残りました。 でもストーリーがまとまりきれなかった中途半端な感は免れません。 多分チラシにも書いてあった手書台詞の醍醐味なのでしょう。 他人との付合いの少ない現代人は舞台の科白に興味が出ます。 しかし日常会話に小暴力を取り入れた口論の多いセリフは観ていて疲れ飽きます。 観客集中度が維持できるくらいの上演時間に縮めれば観後の良さが高まるのではないでしょうか。

■霊戯

■ 作:郭宝崑,演出:佐藤信・榮念會,出演:笛田宇一郎他 ■ 座高円寺,2012.10.11-14 ■ 戦争で命を失いその魂を語り合う鎮魂歌です。 伝統演劇の「能」や中国の「昆劇」?を取り入れています。 場所は戦場・墓地・刑場・・、苦しみのあるセリフは詩のように漂っていきます。 中国俳優は動きを、日本俳優は存在を重視しているようですね。 笛田宇一郎の存在感は十分ですが、能楽師の清水寛ニ、西村高夫はそれ以上です。 このような身体重視の舞台ですと能狂言の俳優が優位になるのでしょう。 そして見慣れない動作でも中国俳優が熟れているのがわかります。 場内で配られたプログラムを帰りの車内で読みました。 作者はシンガポール日本人墓地でこれを着想したそうです。 このような芝居は観客の想像力も試されます。 一部は劇と一緒に走れましたが、二部は科白も少なく眠くてどうしようもなかったですね。 *劇場、 http://za-koenji.jp/detail/index.php?id=725

■K・ファウスト

■ 作・演出:串田和美,音楽:COBA,サーカス:ジュロ ■ 世田谷パブリックシアター,2012.10.6-14 ■ 「ブランコで目眩がするようなら大人になった証拠」、・・どこかに書いてあった。 空中ブランコはみるだけでも目眩で一杯になるの。 それは子供時代の素敵な記憶の蘇りよ。 これはファウストとブランコの劇的な出会いの作品だとおもう。 でもファウストは若返ったけど出会えない。 サーカスが物語に溶け込んでいかなかったから。 音楽隊が入る難しい群衆の動きも検討の余地有りかも。 串田独特の楽しさと寂しさのある芝居ね。 小日向文世のカスペルは味があったし、ファウストの苦悩を笹野高史自身がそのまま受けとめていたのも面白かった。 C・ グノーのオペラ とA・ソクーロフの映画、そして今回で「ファウスト」は今年で3回目。 ソクーロフの「ファウスト」は彼のベスト3に入るくらい素晴らしい出来だったわ。 *劇場、 https://setagaya-pt.jp/theater_info/2012/10/k.html

■星屑のぴかル森

■ 出演:川本裕子,東雲舞踏 ■ 上野ストアハウス,2012.10.9 ■ 幕開前に花をつけた帽子を冠っての登場はとてもよかった。 影絵に続いて身体の一部が他者に置き換わったような激しい動きの舞台。 そして心地良い床や水や波の影と共に。 続いて頭巾とフリルの付いた白衣装の単調な踊りで幕が降りる。 序破急の逆を行く流れである。 しかしこの面白い構成を生かせなかった。 水辺まで緊張感があったが、最後の白衣装の場面は凡庸さが漂ってしまった。 この終幕で力を抜かずに創作していれば観客の拍手は倍になった。 ロビーに津波で倒れた気仙沼の木々で作られたオブジェが飾られていた。 今回の舞台と共鳴しているのを感じた。

■OUT OF CONTEXT-FOR PINA

■ 演出:アラン・プラテル、出演:LES BALLETS C DE LA B ■ 青山円形劇場、2012.10.3-5 ■ http://datto.jp/artist-alain-platel ■ ダンサー一人ひとりを見分けることができる舞台だわ。 自己紹介場面は無かったけど、亡きピナ・バウシュに捧げた作品と言われる由縁ね。 でも舞台は肉体そのものが溢れている。 ほんとうの肉体は綺麗とはいえない。 それは心の闇が肉体にへばりついているからよ。 ピナは「悲しみも、喜びもすべて解き放つ」けれど、プラテルは「その肉体にすべて閉じ込める」ようね。 観終わった時の解放感は精神ではなく肉体の解放。 ピナとは違う、暗く重たさのある解放感ね。

■籠釣瓶花街酔醒 かごつるべさとのえいざめ

■ 出演:中村勘三郎,阪東玉三郎,片岡仁左衛門 ■ 東劇,2012.9.29-(歌舞伎座,2010.2収録) ■ 素晴らしい構成とリズミカルな展開ですね。 四つの対話場面が物語のエンジンです。 権八と立花屋長兵衛の借金問答、権八と栄之丞の身請話、次郎左衛門と八ツ橋の別れ話、次郎左衛門と八ツ橋の再会。 この四場面には第三者が居てツッコミを入れ対話を面白くしています。 大詰め迄目が離せませんでした。 しかし終幕、八ツ橋を斬り殺す次郎左衛門の心の内がまったくわかりません。 既に次郎左衛門は八ツ橋を許していたのでは? この作品は8幕とのこと、そしてなぜ題名に妖刀の名が入っているのでしょうか? 省いた場面を覗かないと次郎左衛門の心情はわからないのでしょうか? それにしても片岡仁左衛門は格好いいですね。 そして花魁道中はパレードでは正に傑作でしょう。 *シネマ歌舞伎第18弾作品 *作品サイト、 http://www.shochiku.co.jp/cinemakabuki/lineup/20/

■夜叉ヶ池

■ 演出:宮城聰,出演:SPAC ■静岡芸術劇場,2012.9.29-10.6 ■ 人間と妖怪がジュワーと融け合うのが鏡花の面白いところ。 でもこの作品は両者の出会う場面が無い。 しかも物語のキーパーソン百合の印象が舞台で薄過ぎた。 彼女の子守唄が白雪姫の剣ヶ峰を諦めさせ、萩原を急遽家に引き返させたのに・・。 百合の声は透き通っているけど科白に広がりと深みがなかった。 また彼女の背景となった舞台上の住居が想像力の無い古さを持っていたため余計に彼女を目立たなくしてしまった。 舞台美術も感心しないわ。 物語の展開場面はいいけど打楽器は百合に合わない。 むしろ弦楽器ね。 夜叉ヶ池の妖怪たちのドンチャン騒ぎ、村人と萩原の喧嘩騒ぎ、これと同じ<強さ>の百合でないと物語は面白くならないとおもうけど、どうかしら? *CoRichサイト、 https://stage.corich.jp/stage/39820