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■ベジャール・プログラム

*パリ・オペラ座バレエの以下□3作品を観る. □火の鳥■振付:モーリス・ベジャール,音楽:イーゴリ・ストラヴィンスキー,出演:マチュー・ガシオ,フロリモン・ロリュー他 □さすらう若者の歌■振付:M・ベジャール,音楽:グスタフ・マーラー,出演:オードリック・ベザール,フロラン・メラック他 □ボレロ■振付:M・ベジャール,音楽:モーリス・ラヴェル,出演:アマンディーヌ・アルビッソン他 ■NHK・配信,2023.9.17-(パリオペラ座・バスチーユ,2023.5.19・25収録) ■モーリス・ベジャールの60分3作品だが満足度100%です。 締めに「ボレロ」を持ってきたので後味は最高でした。 実は「火の鳥」の粗筋を初めて知りました。 パルチザン闘争を描いていたとは驚きです。 マシュー・ガシオは出足は生煮えでしたが演奏が強まるとエンジンはフル回転ですね。 「さすらう若者の歌」はマーラー自身の作詞らしいが男性デュオと詩の関係がよくわからない。 若者の表裏つまり一人二役? 一人は若者の親友? それとも同性愛? どれにしろ二人のソリストに文句はありません。 そして「ボレロ」のアマンディーヌ・アルビッソンは初めてみる。 宝塚歌劇団なら男役でしょう。 どっしりしていて貫禄十分でした。 ところでベジャールの誕生日は1月1日ですか? おめでたい! *NHK、 https://www.nhk.jp/p/premium/ts/MRQZZMYKMW/episode/te/7W1PQVJG2V/    

■アカイツキ

■作:別役実,演出:益田俊子,富永由美,出演:富永由美,別府康子,久保酎吉,劇団:旧眞空鑑 ■中野スタジオあくとれ,2023.9.21-9.24 ■このスタジオは60名は入れるようだ。 満席に近い。 いつもの下高井戸アトリエは暗くて20の客席しかなった。 明るいなかで沢山の観客を見るのは初めてだ。 多くは70歳代後半にみえる。 いつも行く能楽堂でさえもっと若い・・。 男性が少ないのは健康寿命を既に越えているからだろう。 野口体操の生徒が多いのか? 昔からの劇団ファンもいるのか? どこからこんなに婆がやってきたのか不思議だ。 異様な雰囲気と言ってよい。 登場する役者三人も80歳は越えているはずだ。 役者の実年齢がそのまま舞台年齢になっている。 カーテンコールで「1989年、別役実に書き下ろしてもらった作品をやっと上演できた」と演出家が言っていた。 この時期が来るまで待っていたかのようにも受け取れる。 役者たちは饂飩の入ったどんぶりを持って登場し、それを終幕まで食べ続けるという高度な演技をみせてくれる。 <食う>ことも惰性になり<生殖>の喜びも減衰していくなか、狩猟時代にみたであろうアカイツキが微かに記憶に甦る。 老人たちの達者な言葉が衰えた肉体と共鳴して彼らを道化に変身させる。 人間とはいかなるイキモノなのか!? 生身の言葉と肉体の醜さのなかにどこか安堵の気持ちを覚える。 演劇の真髄が滲み出ていた。 WEBを調べていたら土井通肇が今年初めに亡くなっていたことを知る。 享年85歳。 1960年代から演劇活動を担った人々が亡くなってきている。 とても寂しい。 ちなみに旧眞空鑑で私が選んだベスト3は「海ゆかば水漬く屍」(1983年)「いき座の芝居」(1986年)「この道はいつか来た道」(2014年)。 *旧眞空鑑第34回公演 *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、富永由美 ・・ 検索結果は4舞台 .

■舞台神聖祭典劇 パルシファル

■作曲:R・ワーグナー,演出:ジェイ・シャイブ,指揮:パブロ・エラス・カサド,出演:アンドレアス・シャーガー,エリーナ・ガランチャ,ゲオルク・ツェッペンフェルト他,演奏:バイロイト祝祭管弦楽団 ■NHK・配信,2023.9.10-(バイロイト祝祭劇場,2023.7.25収録) ■演出がMIT教授のジェイ・シャイブということで早速観ることにしたの。 しかも拡張現実を使用するらしい。 でも場内の観客を見ても3Dメガネを掛けているようには見えなかった。 観始めて5分も経てばそのことはどうでもよい。 すぐに壮大な物語にのめりこんでいく・・。 ・・でもいつもの調子に乗れない! この作品を自宅でみるのは初めての為かな? 全体より部分が強調されてしまう。 劇場とは逆ね。 例えば2幕、クンドリとパルシファルのやり取りをじっくり受け止めてしまった。 もう一つは字幕のせいかな? 文字数が微妙に多い。 キリスト教信仰があれば処理できるはず。 でもこれができない。 意味や背景を考えてしまう。 この二つで言語的世界に近づいてしまい、いつものワーグナー的感動に浸れなかった。 舞台美術や衣装で驚きはあったが作品に寄り添っていた。 疲れ果てた世界を背に薄汚れた衣服をまとう歌手たち。 無難な発声のパルシファルやグルネマンツと、安定したソプラノのクンドリが「共苦して知に至る」・・。 演奏中の指揮者は汗だくのTシャツを2度着替えたがカーテンコールでは正装で登場。 4時間を中年力で乗り越えた。 ワーグナーは総合力で勝負ね。 いろいろあったけど楽しかったわよ。 *バイロイト音楽祭2023作品 *NHK、 https://www.nhk.jp/p/premium/ts/MRQZZMYKMW/episode/te/615ZJKX428/

■コンサート・フォー・ジョージ

■監督:デヴィッド・リーランド,出演:エリック・クラプトン,ダニー・ハリスン,ポール・マッカートニー,リンゴ・スター他 ■川崎アートセンター,2023.9.9-(ロイヤル・アルバート・ホール,2002.11.29収録) ■エリック・クラプトンをまとめ役にした、ジョージ・ハリソンのトリビュートコンサートのドキュメンタリー映画です。 ジョージの朋友が勢揃いですね。 20曲前後の構成で舞台はとても和やかでした。 中央にクラプトンはもちろん、その横でジョージの息子ダニー・ハリソンが演奏する。 ダニーは父親にそっくりじゃないですか!? そして前半途中でリンゴ・スターが登場。 「ハニー・ドント」を歌うリンゴは懐かしい。 途中モンティ・パイソンとトム・ハンクスが笑わせます。 後半に入りポール・マッカートニーが登場。 数曲を歌うが、リンゴもポールも目立たないようにしている。 これで逆に深みと濃くが舞台に出ています。 ラヴィ・シァンカールは新曲?を発表し、「ホワイル・マイ・ギター・ジェントリー・ウィープス」でポールとクラプトンが締めます。 最高の舞台でした。 「この公演をジョージが喜ぶか否かはわからない」。 クラプトンは言っている。 しかしジョージがこの会場に居るのを感じました。 *映画com、 https://eiga.com/movie/99595/ *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、ジョージ・ハリスン ・・ 検索結果は3作品 .

■木ノ下歌舞伎・勧進帳

■監修:木ノ下裕一,演出:杉原邦生,出演:リー5世,坂口涼太郎,高山のえみ他 ■東京芸術劇場・シアターイースト,2023.9.1-24 ■舞台を中央に置き両端に客席の構造は親近感があり観易いですね。 黒衣装の役者が登場したときは義経側それとも富樫側? 両者の部下は弁慶を除き一人二役でどちらの側にも付く。 これは面白い。 役者の動きも、現代口語風の科白も、とても練れています。 完成度が高い。 そして山伏最後の勤行で弁慶が法を語る場面、義経を打擲したあとのラップ風歌踊の場面は盛り上がりました。 同時に<境界>を越えるには非日常的な力が必要なこともです。 しかし終幕の酒宴後の富樫の心の内がはっきりしない。 義経と知って見逃したのなら、その理由らしき表現が出来ていれば後味はもっと良かったはずです。 *劇場、 https://www.geigeki.jp/performance/theater331/ *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、杉原邦生 ・・ 検索結果は10舞台 .

■ベスト・オブ・エネ三ーズ

■監督:ジェレミー・ヘレン,原作:ジェームズ・グレアム,出演:デヴィド・ヘアウッド,ザカリー・クイント他 ■TOHOシネマズ日本橋,2023.9.8-(ロンドン,2023年収録) ■1968年は日本でのエンタープライズ寄港反対運動で始まり、ソンミ村虐殺事件でベトナム戦争泥沼化、キング牧師暗殺、「いちご白書」のコロンビア大学紛争、パリはカルチェラタンで学生市街戦、ケネディ司法長官暗殺、再び日本では東大安田講堂占拠学生排除、全学連新宿駅占拠、米国に戻り共和党ニクソンが大統領当選で年の幕が閉じる。 この騒乱の1968年を背景に舞台では保守派ウィリアム・バックリーとリベラル派ゴア・ビダルのテレビ討論が繰り広げられる。 演出家は「メタファーとしてボクシングを想定している」と言っている。 場所も流れも正しくボクシングですね。 調べると特にゴア・ビダルは今からみても曲者です。 舞台上のゴアは2023年の現代に合わせての誇張し過ぎにみえる。 対するバックリーは保守の姿が見え難い。 政治対談としての緊迫感は少ない。 この作品は実話から作られ、そのドキュメンタリー映画もあるらしい。 その映画を見てみたいですね。 50年前の話だが舞台より過去そのものが生き生きと今も残っているはずです。 でもこの舞台から、当時発生した政治分断が成長し現在に繋がっていたことが分かりました。 *NTLナショナル・シアター・ライブ作品 *映画com、 https://eiga.com/movie/99199/ *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、ジェレミー・ヘレン ・・ 検索結果は2舞台 .

■能楽堂九月「枕滋童」「月見座頭」「船弁慶」

*国立能楽堂九月公演の□3舞台を観る. □能・金剛流・枕滋童(前後之習)■出演:金剛龍謹,則久英志,野口能弘ほか □狂言・大蔵流・月見座頭■出演:大藏彌右衛門,大藏彌太郎 □能・宝生流・船弁慶(後之出留之伝・語入・名所教)■出演:宝生和英,藪俊太郎,福王和幸ほか ■国立能楽堂,2023.9.9 ■小書「前後之習」が入る「枕滋童」は初めて観る。 いつもは慈童を探す魏(200年頃)の時代から始まる。 小書きは周(前500年頃?)の時代まで遡り童子が追放される場面が加わる。 これで物語が深まった。 しかし「孤独を抱えた慈童の心情が隠されている」ようには見えない。 700年を心から楽しく暮らしてきたような姿だった。 霊水の力が強すぎたのかもしれない。 シテ面は「童子(どうじ)」。 「月見座頭」は衝撃的な舞台だ。 盲目への差別が人間というより生物生存に近いところから発生している。 生存するための優位性を保持するための行動に通じる。 盲目者も生存の強かさを持っている。 考えさせられる作品だ。 「船弁慶」は楽しかった。 小書サービスが盛りだくさんで現代のエンタメに繋がる舞台だった。 子方義経は異化効果を持つ。 静御前の舞も陶酔感が持てた。 知盛怨霊との対比が際立つ。 一人二役の面白さが出ていた。 船を漕ぐ船頭をみていると舞台が瀬戸の海に変わっていくのを感じた。 「風流能」と言われるこの作品を200%堪能した気分だ。 シテ面は「増女(ぞうおんな)」から「霊怪士(りょうのあやかし)」へ。 *開場40周年記念公演 *劇場、 https://www.ntj.jac.go.jp/schedule/nou/2023/9-40.html?lan=j

■能楽堂九月「翁」「清経」「栗焼」「山姥」

*国立能楽堂九月公演の□4舞台を観る. □観世流・翁■出演:観世清和,野村萬斎,観世三郎太ほか □能・観世流・清経(恋之音取)■出演:大槻文藏,大槻裕一,福王茂十郎ほか □狂言・和泉流・栗焼■出演:野村万作,野村太一郎 □能・金春流・山姥(波濤ノ舞)■出演:金春安明,金春憲和,飯冨雅介ほか ■国立能楽堂,2023.9.6 ■今日の客の年齢はいつもより15歳若い。 その老若男女の比もばらけている。 40周年記念公演で出演者もピカイチのためか? 「翁」は素晴らしかった。 力強く切れ味の良い千歳ノ舞、揉ノ段、鈴ノ段は特に気に入る。 面は「白色尉(はくしきじょう)」と「黒色尉」。 作家名が記されていた。 有名な面らしい。 「清経」は笛方の秘事と言われている小書「恋之音取」が入った。 シテの出が吹奏にあわせ10分もかかる。 この作品は<夫婦の哀話>と<世の無常>を表現していると言われているが、小書により前者に傾いてしまった。 後者に傾く演出の方が好きなのだが。 シテ面は「中将」ツレが「小面」。 「栗焼」の太郎冠者は無駄のない淡泊な芸で舞台が濁らない。 「翁」を含めて今日は世襲の力も感じる。 「山姥」に入ると(私に)疲れが出てしまった。 世阿弥に出会った時のいつもの高揚感がやってこない。 心身がオーバーフローしてしまった。 情報過多の時代、続けて観るのは狂言を挟んで3作品が限界だろう。 *開場40周年記念公演 *劇場、 https://www.ntj.jac.go.jp/schedule/nou/2023/9401.html?lan=j

■TOTEM、真空と高み

■演出:天児牛大,美術:中西夏之,音楽:加古隆,吉川洋一郎,出演:蝉丸,竹内晶,市原昭二ほか,山海塾 ■世田谷パブリックシアター,2023.8.30-9.3 ■体を捻くり転がっても肉体の匂いが無い。 腕をあげトーテムを指し示す姿はまさに宇宙人です。 中西夏之の作品がトーテム?として中央に置いてある。 意味深ですね。 音楽が重厚でダンサーの動きは抑えられている。 このため同じような振付が続き面白さに欠けます。 たぶん、演出家は中西夏之に縛られてしまったのでは? 章間は音楽が数秒止まるがここは繋げたいですね、高揚感が途切れない為です。 終幕、一人のダンサーが舞台中央から外れて周囲をゆっくり踊り動いていた。 ここは舞踏だ!と感じました。 久しぶりの山海塾です。 顔見知りのダンサーが二人しかいなかった。 あとの6人は新人ダンサーですか?白塗りだとよくわからないが。 近頃は舞踏を観る機会が少なくなっています。 若いダンサーが沢山登場すると元気を貰えます。 *劇場、 https://setagaya-pt.jp/stage/4809/ *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、天児牛大 ・・ 検索結果は6舞台 .

■影のない女

■作曲:R・シュトラウス,演出:リディア・シュタイアー,指揮:キリル・ペトレンコ,出演:クレイ・ヒリー,エルザ・ファン・デン・ヘーヴァー,ミヒャエラ・シュスター他,演奏:ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 ■NHK・配信,2023.8.20-(バーデン・バーデン祝祭劇場,2023.4.5・9収録) ■この作品は2022年2月に二期会で公演中止になっている。 クラウドファンディングも支援したので2024年公演は期待したいわね。 ・・天上界の皇后には影がない。 そこで彼女は人間界に降りて染物屋の女房の影を貰い受けようとする話なの。 影が無いと子供が産めない、かつ夫である皇帝が石になってしまうから。 でも染物屋夫婦の人間愛をみて影を貰うのを結局は諦めてしまう・・。 孤児院?の少女の夢が舞台に出現しているらしい。 赤ん坊(人形)がたくさん登場するのは出産や養子などを抽象表現しているのかしら?  影とは人間が持つ愛や性や生(出産)の闇の部分かもしれない。 それを最後は神が認める。 200分の大作で内容も複雑だわ。 観るのは初めてだが「ばらの騎士」の延長線上の楽曲かな? 派手に動き回る少女の演技で気が散ってしまったのが残念、シュトラウスのなんとも言えない気分が壊れてしまった。 でも染物屋の夫婦場面はどれも楽しかったわよ。 *バーデン・バーデン復活祭音楽祭2023作品 *NHK、 https://www.nhk.jp/p/premium/ts/MRQZZMYKMW/episode/te/XW66JXZPZ8/ *追記・・「池袋西武デパート売却」を昨日のニュースで知る。 高校迄は渋谷、大学は新宿、そして社会へ出て池袋へ。 それはセゾン文化に出会ってしまったからよ。 西武(セゾン)美術館・アールヴィヴァン・スタジオ200・パルコ劇場・パルコスペース・銀座セゾン劇場・・、どれも記憶に残る美術館や劇場だわ。 セゾンは1990年代から下り坂、2000年に入り7&iが西武を買収。 7&iは日本の消費者は所得差が小さいのでコンビニも百貨店も同じだと考えた(?)。 この延長に今回の売却があったのね。 今やデパート(経営者)は文化生成に必要な反骨精神を持つことさえ無い。