■能楽堂九月「枕滋童」「月見座頭」「船弁慶」

*国立能楽堂九月公演の□3舞台を観る.
□能・金剛流・枕滋童(前後之習)■出演:金剛龍謹,則久英志,野口能弘ほか
□狂言・大蔵流・月見座頭■出演:大藏彌右衛門,大藏彌太郎
□能・宝生流・船弁慶(後之出留之伝・語入・名所教)■出演:宝生和英,藪俊太郎,福王和幸ほか
■国立能楽堂,2023.9.9
■小書「前後之習」が入る「枕滋童」は初めて観る。 いつもは慈童を探す魏(200年頃)の時代から始まる。 小書きは周(前500年頃?)の時代まで遡り童子が追放される場面が加わる。 これで物語が深まった。 しかし「孤独を抱えた慈童の心情が隠されている」ようには見えない。 700年を心から楽しく暮らしてきたような姿だった。 霊水の力が強すぎたのかもしれない。 シテ面は「童子(どうじ)」。
「月見座頭」は衝撃的な舞台だ。 盲目への差別が人間というより生物生存に近いところから発生している。 生存するための優位性を保持するための行動に通じる。 盲目者も生存の強かさを持っている。 考えさせられる作品だ。
「船弁慶」は楽しかった。 小書サービスが盛りだくさんで現代のエンタメに繋がる舞台だった。 子方義経は異化効果を持つ。 静御前の舞も陶酔感が持てた。 知盛怨霊との対比が際立つ。 一人二役の面白さが出ていた。 船を漕ぐ船頭をみていると舞台が瀬戸の海に変わっていくのを感じた。 「風流能」と言われるこの作品を200%堪能した気分だ。 シテ面は「増女(ぞうおんな)」から「霊怪士(りょうのあやかし)」へ。
*開場40周年記念公演