■アカイツキ

■作:別役実,演出:益田俊子,富永由美,出演:富永由美,別府康子,久保酎吉,劇団:旧眞空鑑
■中野スタジオあくとれ,2023.9.21-9.24
■このスタジオは60名は入れるようだ。 満席に近い。 いつもの下高井戸アトリエは暗くて20の客席しかなった。 明るいなかで沢山の観客を見るのは初めてだ。 多くは70歳代後半にみえる。 いつも行く能楽堂でさえもっと若い・・。 男性が少ないのは健康寿命を既に越えているからだろう。 野口体操の生徒が多いのか? 昔からの劇団ファンもいるのか? どこからこんなに婆がやってきたのか不思議だ。 異様な雰囲気と言ってよい。
登場する役者三人も80歳は越えているはずだ。 役者の実年齢がそのまま舞台年齢になっている。 カーテンコールで「1989年、別役実に書き下ろしてもらった作品をやっと上演できた」と演出家が言っていた。 この時期が来るまで待っていたかのようにも受け取れる。
役者たちは饂飩の入ったどんぶりを持って登場し、それを終幕まで食べ続けるという高度な演技をみせてくれる。 <食う>ことも惰性になり<生殖>の喜びも減衰していくなか、狩猟時代にみたであろうアカイツキが微かに記憶に甦る。 老人たちの達者な言葉が衰えた肉体と共鳴して彼らを道化に変身させる。 人間とはいかなるイキモノなのか!? 生身の言葉と肉体の醜さのなかにどこか安堵の気持ちを覚える。 演劇の真髄が滲み出ていた。
WEBを調べていたら土井通肇が今年初めに亡くなっていたことを知る。 享年85歳。 1960年代から演劇活動を担った人々が亡くなってきている。 とても寂しい。 ちなみに旧眞空鑑で私が選んだベスト3は「海ゆかば水漬く屍」(1983年)「いき座の芝居」(1986年)「この道はいつか来た道」(2014年)。
*旧眞空鑑第34回公演
*「ブログ検索🔍」に入れる語句は、富永由美 ・・検索結果は4舞台.