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■天国への登り方

■作・演出:広田淳一,出演:一川幸恵,沼田星麻,榊菜津美ほか,劇団:アマヤドリ ■シアタートラム,2023.3.23-26 ■深刻な舞台でした。 安楽死をテーマにしていたからです。 姉はALS症?妹は精神症? 二人は心身が参ってしまった? そこで彼女らは安楽死特区へ向かう・・。 家族と友人は慌てます。 安楽死の権利は成り立つのか? 自己決定しても過程には他者が入り込んでしまう。 殺人罪も浮上する? 医師たちが安楽死について議論するところが一つの山場です。 観客もそれに巻き込まれます。 姉妹が安楽死を選んだ理由を詳細に語らないのがミソでしょう。 この特区には狐が人間と暮らしているらしい。 狐たちは安楽死を支援しているようだが、しかし近代から作り上げてきた死についての社会制度をいちど棚に上げる存在者にもみえる。 狐をみて柔軟に考え直そうという気持ちが芽生えます。 終幕のダンスも固まった身体が解れました。 昨年亡くなった我らが映画監督J=L・ゴダールは安楽死を選んだらしい。 「・・彼は日常生活に支障を来す疾患を複数患っており、居住しているスイスで「判断能力があり利己的な動機を持たない人」に対して合法化されている「自殺幇助」(安楽死)を選択。 医師から処方された薬物を使用し亡くなったと伝えられている」(WiKiより)。 これを読んでも多くの問題があることは確かです。 *CoRich、 https://stage.corich.jp/stage/221195 *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、広田淳一 ・・ 検索結果は7舞台 .

■能楽堂三月「草紙洗小町」

*国立能楽堂三月企画公演は下記□2舞台を上演. □狂言・和泉流・連歌盗人■出演:野村万蔵,野村万之丞,野村万禄 □能・金剛流・草紙洗小町■出演:金春安明,金春重芳,則久英志ほか ■国立能楽堂,2023.3.25 ■今日は「うたと能楽」特集だが、遅刻をしてしまい狂言「連歌盗人(れんがぬすびと)」は見逃してしまった。 「草紙洗小町(そうしあらいこまち)」は小野小町や紀貫之の豪華顔ぶれが揃う。 ワキの大判黒主と子方の帝、ツレの朝臣や宮女を含めて9人の役者が舞台に並ぶと壮観だ。 小町と黒主の問答もリズムがあり聴き応えがあった。 プログラムに掲載の「草紙洗小町と歌合」(浅田徹)は楽しく読んだ。 小町と貫之は生きた時代が若干違うので出会いがなかったことは分かる。 小町が活躍した時期は短冊も歌合も未だ無かったようだ。 他に柿本人麻呂の歌や肖像画、あり得ない清涼殿での開催、万葉集の分類方法、・・等々おもしろい話で一杯だ。 そして盗作事件がテーマの為か、いつもとは違う対話的な感触を残した舞台だった。 *劇場、 https://www.ntj.jac.go.jp/schedule/nou/2022/3173.html?lan=j

■少女仮面

■作:唐十郎,演出:天野天街,出演:江戸伝内,結城一糸,丸山厚人ほか,劇団:一糸座 ■赤坂レッドシアター,2023.3.17-21 ■ゲッコウパレードに続き一糸座も観てきました。 一糸座は糸操り人形、つまりマリオネット劇です。 舞台は複雑な構造をしている。 腹話術師の人形はマリオネットではなくパペット、そして喫茶「肉体」の店員や水飲み男、それに甘粕大尉は、最後にパペットも、俳優が演じる。 しかもマリオネットの人形遣いは黒衣装だが途中に顔をさらす「出遣い」もする。 この複雑舞台を巧くまとめていました。 でも小さいマリオネットを凝視せざるを得ない。 俳優との身長・動作・表情の差に無意識が戸惑います。 観客はこの差を消し去る転換作業が必要になる。 その先に「・・唐っ風吹き荒ぶ、その唐っぽの、傀儡の王国に」観客も迷い込めます。 そして「・・特権的な唐だを張って、喉を唐して、ち唐の限り、唐元気を振り絞り」あのヒースを満州平原を彷徨い歩くことができました。 「」は演出家挨拶文から。 年季の入った役者が多かったですね。 これを含め凝り過ぎた舞台にみえました。 観客は20代以上だが男女・年代がバラけている。 珍しい。 当劇団贔屓筋の特長でしょうか?  *CoRich、 https://stage.corich.jp/stage/233241

■少女仮面

■作:唐十郎,演出:黒田瑞仁,主宰:崎田ゆかり,出演:永濱祐子,林純平,小川哲也ほか,劇団:ゲッコーパレード ■下北沢・OFFOFFシアター,2023.3.16-19 ■隣の駅前劇場より狭いO FFだが、今日の舞台はアリーナ型上演のようです。 「(役者)一人ひとりの欲望が舞台上で飛び出してくれば・・」(主宰挨拶)。 型に似合った挨拶どおりの、ビックリするくらい飛び出てきた舞台でした。   ゲッコーパレード? 変わった名前として記憶にぶら下がっていたが、劇団を観るのは今回が初めてです。 「・・人の集まりこそがパレードのように活動や表現を形成していく」。 春日野八千代と少女はもとより、腹話術師と人形、水飲み男、ボーイ、・・、それぞれが夫々の瞬発力で輝いていました。 多くの役者が一度に登場しても存在感ある静止状態で狭い空間が縮まらない。 「作者との世代の隔たりは無視できず・・」(演出ノート)、唐系の劇団と違い戯曲を素直に展開していたように感じます。 作品に初めて接した人は何もない空間のため戸惑ったかもしれない。 この劇団は「一軒家という「演劇の上演を行う場所でない」場所で活動している・・」(演出ノート)。 普通に生活しているような住居なのか? 役者と観客が混ざり合ってしまう? 一軒家でいちど観てみたいですね。 作品が持つ俳優と観客(ファン)、そして劇場の俳優と観客、ほとばしる肉体、その昇華・・。 久しぶりの「少女仮面」でしたが、今日の舞台もカタルシスがやってきました。 *CoRich、 https://stage.corich.jp/stage/231426

■Echoes of Calling -rainbow after-

■構成・演出・振付:北村明子,音楽:横山裕章,映像:兼古昭彦,出演:ミンテ・ウォーデ,岡村樹,香取直登ほか,歌・作曲:アフロル・バフシ,ダイアン・キャノン ■東京芸術劇場,シアターイースト,2023.3.10-12 ■加速度ある動きと止め、等速度な体の捻り・・、パフォーマンスも随所に取り入れる。 武術的舞踊と言ってよいでしょう。 広くもない舞台で、鍛えられた7人のダンサーが時間差で登場し踊り退場する。 これを繰り返す。 ときどき北村明子も踊ります。 密度の濃いダンスでした。 しかも二人の歌手が交互に舞台に上り歌う。 ウズベキスタンの吟遊詩人とアイルランドの伝統歌手らしい。 両国の関連性はみえないが<ユーラシア>という言葉で繋がる。 大陸の端(アイルランド)と端(日本)、その中央に位置しているウズベキスタン・・。 広大な風景が想像できます(?) しかし背景の岩場はユーラシアを感じさせない。 映像も凝っていて良質ですが意味を強制させられる。 ここは照明だけのすっきりした舞台にしたら想像力が広がったはずです。 歌詞字幕は欲しかった。 *劇場、 https://www.geigeki.jp/performance/20230310te/ *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、北村明子 ・・ 検索結果は5舞台 .

■能楽堂三月「磁石」「野守」

*国立能楽堂三月普及公演の□2作品を観る. □狂言・大蔵流・磁石■出演:綱谷正美,茂山茂,丸石やすし □能・金剛流・野守■出演:廣田幸稔,高井松男,松本薫ほか ■国立能楽度,2023.3.11 ■「磁石」は旅人がすっぱ(詐欺師)と騙し合う話。 旅人が磁石の精と偽り物理現象を直截に表現しカネや刀を吸い取るところが楽しい。 「野守」のプレトーク「水鏡と鬼神の鏡」(梅内美華子解説)を聴く。 世阿弥一座は興福寺に庇護を受けていた時期があり、その寺の唯識学の鏡の影響が世阿弥にある(?) 飛火とは狼煙であり当時は春日野地区の状況を京へ知らせていた。 作品に含まれる歌の解説、世阿弥の砕動・力動風鬼の話も入る。 ホールに奈良の観光案内と物産が出店していた。 寺周辺の屋台を覗いている気分だ。 春日野の春景色の謳歌で舞台は始まり、鬼神の舞働の後半が見どころである。 前後を通してシテは仕事師として淡々と謡い踊っていた。 観ていて心地よかった。 面は「三光尉(さんこうじょう)」と「小癋見(こべしみ)」。 今日は千駄ケ谷で春日野の春を満喫した。 *劇場、 https://www.ntj.jac.go.jp/schedule/nou/2022/3182.html?lan=j

■能楽堂三月「左近三郎」「采女」

*国立能楽堂定例公演の□2作品を観る. □狂言・大蔵流・左近三郎(さこのさむろう)■出演:山本則重,山本則秀 □能・観世流・采女-美奈保之伝-(うねめ-みなほのでん-)■出演:観世清和,森常好,山本東次郎ほか ■国立能楽堂,2023.3.8 ■「采女」前場は満足度200%だ。 前シテが橋掛かりを歩く、そして舞台に立つ姿、面と衣装の絶妙な均衡、テンポも良し声も通っている。 その緊張感がワキへ、そして囃子・地謡に伝わっていく。 劇的と言ってよい。 久しぶりに痺れてしまった。 観世清和の舞台は見逃せない。 なぜ小書「美奈保之伝」を採用したのか? 観ていて分かった。 小書きで余分な場面を省略し集中力を上げる為だ。 後場に入ると緊張は続くが序の舞が長い。 これについていけない。 緊張疲労が出てしまった。 夢遊病のごとく舞を眺めていたが、観世流の総力が現れていたと思う。 面は前シテが「まさかり」、後場は「小夜姫(さよひめ)」にかわる。 観世元章がこの小書を創案したようだが、やはり世阿弥の世界が充満している。 緊張の中に弛緩が漂う面白い舞台だった。 *劇場、 https://www.ntj.jac.go.jp/schedule/nou/2022/3174.html?lan=j *追記・・NHKのイリ・キリアン特集で「詩編交響曲」「ベラ・フィギュラ」を観たが、以降の「小さな死」「間奏曲」「6つの踊り」は配信期限切れで見逃してしまった。 「ベラ・フィギュラ」は記憶に残る良い作品だった。 もっと早くに観始めればよかった。

■フェドーラ

■作曲:U・ジョルダーノ,指揮:マルコ・アルミリアート,演出:デイヴィッド・マクヴィカー,出演:ソニア・ヨンチェヴァ,ビュートル・ベチャワ他 ■新宿ピカデリー,2023.3.3-9(メトロポリタン歌劇場,2023.1.14収録) ■J・ラシーヌ作と間違えてしまった。 もちろん初めての作品。 粗筋を先に読まなかったのは正解だった。 ストーリーの出来が良かったからよ。 スタッフも「アガサ・クリスティなみのドラマ・・」と言っている。 しかもヴェリズモ・オペラのリアルさが舞台の質を上げていたわね。 タイトル・ロールはソニア・ヨンチェヴァ。 MET総裁P・ゲルブも「彼女しかいない・・!」と絶賛なの。 ロシア皇女としての貫禄、感情の強弱操作、高低差のある歌唱の深み、すべてに納得だわ。 テノール役はピュートル・ベチャワ。 彼も重味が有って似合いの二人だった。 舞台はサンクトペテルブルクからパリへ、そしてスイスアルプスへ・・。 美術や衣装、もちろん楽曲も変化していく楽しさがある。 その時空はM・プルースト「失われた時を求めて」を参考にしたと演出家D・マクヴィカーは語っている。 彼のMETでの演出数はF・ゼフィレッリを越えたようね。 さすがマクヴィカー。 彼の演出は驚きのなかでも安心して観ていられる。 この舞台にも満点をあげたい。 *METライブビューイング2022作品 *MET、 https://www.shochiku.co.jp/met/program/4673/

■人形の家

■作:H・イプセン,訳:毛利三彌, 演出:宮城聰,出演:たきいみき,bable,加藤幸夫ほか,劇団SPAC ■静岡芸術劇場,2023.2.11-3.12 ■静かさのある幕開けで始まる。 いつもの演奏が無いから? ヘルメルの狂気を孕んだ喜劇的演技と音無しが混ざり合い不思議な緊張が出現します。 この劇場で観たG・ラヴォータンの「小市民の結婚」を思い出してしまいました。 そこにノーラの精神的呆け気味でネアカ的演技が少しだけ加わり、男女代表のような夫婦が出現します。 舞台は1935年(昭和10年)の日本に置き換えている。 演出家も言っています。 当時もそして現代も、作品に一番近い国は日本である。 現政府の女性人権や少子化対策も結果的に「人形の家」を目指している。 それは政治に儒教や天皇制を遠巻きに絡ませようとしているからです。 政治家が統一教会・家庭連合と縁が切れないのもこれに繋がる。 美術や衣装、音響や照明は芸が細かい。 ドアの開け閉めの音は<閉ざされた家>を意識させます。 暗い居間と動かない役者はノーラの見えない世界でしょう。 佳境に入ると床は揺れ動き剝がれ出し、卓袱台は天井に跳ねる。 でもノーラの終幕での決意に驚きはない、19世紀末はセンセーショナルだったようですが。 この作品は何度か観ていますが、今回のようにシュール的リアリズムに基礎を置いた舞台は少ない。 面白く観ることができて、久しぶりに作品の本質にも近づけました。 *SPAC2022秋春シーズン作品 *劇場、 https://spac.or.jp/au2022-sp2023/dollhouse_2022

■合田佐和子展、帰る途もつもりもない

■感想は、「 合田佐和子展、帰る途もつもりもない 」 *話題となる語句は、「劇団状況劇場」「唐十郎」「鐵假面」「ベンガルの虎」「女シラノ」・・、「演劇実験室天井桟敷」「寺山修司」「中国の不思議な役人」「奴婢訓」「さらば箱舟」・・。