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■トリスタンとイゾルデ

■作曲:R・ワーグナー,指揮:大野和士,演出:デイヴィッド・マウヴィカー,出演:ゾルターン・ニャリ,ヴィルヘルム・シュヴィングハマー,リエネ・キンチャ他,管弦楽:東京都交響楽団 ■新国立劇場・オペラパレス,2024.3.14-29 ■薬や酒を前面に出すと舞台は大きく揺れる。 これを脇役にできるかどうかが要ね。 当作品の媚薬が効き過ぎるのはいつもの通り。 そして美術は抽象的で歌手の動きは少ない。 すべてワーグナー風だが有機的に熟成していかない。 演出家デイヴィッド・マクヴィカーのワーグナーは初めてよ。 彼はワーグナーが苦手なのかもしれない? 舞台は2010年シーズンの再演らしい。 これは見逃しているの。 指揮は再び大野和士で、休息を含め上演時間は5時間半。 演奏はぶれないし都響が気持ちよく聴かせてくれる。 そしてマルケ王は存在感があった。 トリスタンがちょっと疲れていたかな?、幕が進むほどきつくなるし・・。 今回はタイトルロールの二人が変更になってしまった。 トリスタンは2カ月前の交代のため慌ただしい。 これも媚薬を操れなかった理由かもね。 それでも作品の持つずっしり感は心に届いたわよ。 *NNTTオペラ2023シーズン作品 *劇場、 https://www.nntt.jac.go.jp/enjoy/record/detail/37_027412.html *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、デイヴィッド・マクヴィカー ・・ 検索結果は11舞台 .

■新ハムレット

■作:太宰治,演出:早坂彩,出演:太田宏,松井壮大,たむらみずほ他,劇団:トレモロ,青年団ほか ■こまばアゴラ劇場,2024.3.22-31 ■・・オフィリヤは王妃ガーツルードに「あなたを尊敬していた!そして母の匂いがするハムレットは嫌いだ!」と。 ハムレットは叔父クローヂヤスに「あなたは一生懸命に王の務めを果たしている!」と。 侍従長ポローニアスは留学する息子レヤチーズに「学友は年上一人と同学年一人だけでよい。試験の癖を教えてもらいノートを貸してもらえるから」と・・。 登場人物は思いもよらない言葉を発する。 真坂!な驚きが次々とやってきますね。 原作は読んでいません。 が、さすが太宰治、捻りが効いている。 ・・父殺しの劇中劇を観てクローヂヤスが笑いガーツルードが怒り狂う、そして何と!ポローニアスはクローヂヤスに殺される・・。 他者の心は知ることができない! 芝居はそう言っているようにみえる。 言葉は心を表さない、と。 そして不安になり、より激しい言葉で相手の心を読もうとする。 (「殿下何をお読みで?」「言葉、言葉、言葉!」)。 でもオフィリアは「愛が言葉以外にないとしたらつまらない」と言ってましたね。 「ハムレット」をグッと近くに引き寄せたあとにスカッと遠くへ投げ飛ばした舞台でした。 * CoRich、 https://stage.corich.jp/stage/298409 *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、早坂彩 ・・ 検索結果は2舞台 .

■クリーチャー CREATURE

■振付:アクラム・カーン,音楽:ヴィンチェンツォ・ラマーニャ,指揮:ギャヴィン・サザーランド,出演:ジャフリー・シリオ,高橋絵里奈,猿橋賢ほか,舞団:イングリッシュ・ナショナル・バレエ ■NHK・配信,2024.3.17(マライアン・センター・フォー・ダンス(ロンドン),2021.4.19-5.2収録) ■近未来SF物語をバレエ団も取り込み始めた!? 人類生存のための人体実験を北極圏で行っているらしい。 主人公クリーチャーは野蛮人というか奴隷のように描かれている。 脳と電磁波が同期し心身は乱れロボットのように踊りまくる。 厳しい管理下で人間が持っている原初の心と体を忘れずにいることができるだろうか?  振付家アクラム・カーンの舞台をじっくり見るのは初めてだが、手の動き顔の表情そして鋭い動きはカタックを感じさせます。 美術や雰囲気も混沌とした洞窟街を思い出させる。 途中ボレロが聴こえていましたね。 ダンスのため科白は無いが、観客が台詞を自由に付けられるストーリーです。 どうにでも解釈ができる。 人類の閉そく感が漂います。 *English National Ballet、 https://www.ballet.org.uk/production/creature/

■N/KOSMOS

■原作:ヴィトルド・ゴンブローヴィッチ,演出:小池博史,演奏:ヴァツワフ・ジンペル,出演:松島誠,今井尋也,荒木亜矢子ほか ■東京芸術劇場・シアターイースト,2024.3.21-24 ■・・聴こえてくる太鼓のリズムと熱気ある行進。 社会主義崩壊前夜の東欧狂乱を描いているのでしょうか? 交じり合う映像や小道具が分裂症的世界を招き、舞台は乱痴気騒ぎが充満していく。 ときどき小鼓の響きが空間を引き締め、そして何よりもサクスフォンの生演奏が<リアル>に吠えてくる・・。 ポーランドの役者にスラブ系の荒々しさが漂います。 カトリック(?)司祭の<宗教と性欲>の葛藤が他住人に乗り移っていくような、あるいはその逆のストーリーです。 (いつもと)変わったリズムと面白さがある。 それは<聖と俗>の具体を取り込んだからでしょう。 これが宙吊状態を生み、新たな芸術世界=調和として提出したようにみえる。 世界連携の成果と言えます。 *小池博史ブリッジプロジェクトOdyssey作品 *ポーランド・グロトフスキ研究所共催 *2024都民芸術フェスティバル参加作品 *劇場、 https://www.geigeki.jp/performance/20240321te/ *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、小池博史 ・・ 検索結果は11舞台 .

■能楽堂三月「花争」「鸚鵡小町」

*国立能楽堂三月特別企画公演の□2舞台を観る. □狂言・大蔵流・花争■出演:山本東次郎,山本則重 □能・観世流・鸚鵡小町(杖三段之舞)■出演:観世清和,宝生常三ほか ■国立能楽堂,2024.3.20 ■「花争(はなあらそい)」は、「はな?、さくら?」どちらが正解? ・・どちらでもよい。 それは証歌でもわかる。 でも「はな>さくら」の不等式が成立する。 「鸚鵡小町(おうむこまち)」は特別公演のため囃子・地謡は肩衣を付けての登場。 緊張感溢れる舞台だった。 シテ小野小町は雑音を出さない。 小書「杖三段之舞(つえさんだんのまい)」は解説を読んでいたので分かった。 舞の途中で休息も入る。 面は「姥(うば)」だったが嬉しそうに舞っていた。 小町は昔を思い出したのだ。 狂言・能ともに出演者の演技には200%満足。 *劇場、 https://www.ntj.jac.go.jp/schedule/nou/2023/3186.html?lan=j

■田園に死す

■原作:寺山修司,脚色・構成・演出:天野天街,音楽:J・A・シーザー,芸術監督:流山児祥,出演:大内厚雄,寺十吾,小川輝晃ほか ■スズナリ,2024.3.14-24 ■幕が開いて直ぐに<壊れ時計>が演じられたが調子が狂ってしまった。 反復は演出家得意の技法だがここまで繰り返されると諄いとしか言いようがない。 しかし徐々に天街の世界に入っていくことができました。 それは乾いた規則性のある舞台です。 主人公の分身たちの出会いが舞台に堆積していく。 さらに劇中劇が追い打ちをかける。 科白は絡み合い昇華され、ここに懐かしい寺山修司の世界が出現する。 この熟成に2時間半が必要だった。 久しぶりの寺山ワールドを堪能しました。 *寺山修司没後40年記念認定事業 *第44回紀伊國屋演劇賞団体賞受賞作品 *CoRich、 https://stage.corich.jp/stage/303259 *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、天野天街 ・・ 検索結果は11舞台 .

■assimilating、梅田宏明

■振付・出演:梅田宏明,製作:S20,プロデューサー:田野入涼子,テクニカルディレクション:岩田拓朗 ■横浜赤レンガ倉庫1号館3Fホール,2024.3.16-17 ■先ずは展示室で「Haptic Installation」(2010)「choreograph1-water」(2023)を観る。 前者は聴覚、後者は視覚に向き合う美術作品で彼の舞台を連想させる。 次に、プレトーク「梅田宏明の活動報告」(スタッフ2名が出席)を聴く。 「Movers Platform」「姿勢教室」「振付家ワークショップ」など彼の多彩な活動歴を知る。 赤レンガ倉庫が彼の本拠地だったことが分かります。 そして「assimilating」を観る。 抽象映像と音響を背景に、足を地面にしっかり付けて上半身は切れ味が鋭く動きの少ない振付でまとめている。 身体は現代舞踏を意識させます。 視覚と聴覚を含めた舞踏ダンスと言ってよい。 途中、宗教とは違うが瞑想状態に入ることができる。 液体のような映像が身体に揺らぎを感じさせる。 明(動)→暗(静)→明(動)の流れか? 以前にみた矢のように走る光とは違う感覚が持てますね。 最後にアフタトークがある(作者、館長、司会の3名が出席)。 「この作品は2023年に作成した」「少しずつ手を加えている」「即興も入る」。 ダンス以外の映像や音響などの芸術活動に若い人への参画を勧めていた。 コンテンポラリダンスを引っ張る彼の態度が頼もしい。 倉庫前の広場で「赤レンガわんさんぽ」が開催されていました。 ドッグイベントらしい。 途中、犬を連れた人が多いのも気になっていたのだが。 「ドッグマッサージ」「ドッグフード」等々の屋台が数十件も連ねている。 犬好きにはたまらないですね。 *劇場、 https://www.yokohama-akarenga.jp/event/detail/1013 *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、梅田宏明 ・・ 検索結果は2舞台 .

■諜報員

■作・演出:野木萌葱,出演:植村宏司,西原誠吾,井内勇希ほか,劇団:パラドックス定数 ■東京芸術劇場・シアターイースト,2024.3.7-17 ■ゾルゲ事件を事前に調べておけばよかった。 幕が開いてからそう思った。 それはともかく、久しぶりのパラドックス定数を楽しむことができました。 舞台の構造や照明、役者の動きや立ち位置などが計算され尽くしていますね。 逮捕された3人の生き方が前面にでている。 「国を守りたい」「命を守りたい」「自由を守りたい」・・。 そして作品が強調しているのは警察組織内の評価です。 警察と特高の違いも論じている。 警察では正義と欲の差は法の順守の中で処理される(?)。 逮捕者が解放されたのはこの為でしょう。 特高ではそうはいかない。 演出家の挨拶文に「劇的にしない」「大事件にしない」とあった。 観終わった後、これに納得しました。 当事者にとって事件の全体像はみえない。 観客にとっても歴史の断片が微かに浮かんで直ぐに沈んでいったような舞台でした。 ほどよい緊張感もあった。 でも日常の事件のように数日経てばボヤケていってしまうかもしれない。 *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、野木萌葱 ・・ 検索結果は10舞台 . *パラドックス定数第49項 *劇場、 https://www.geigeki.jp/performance/theater357/

■カルメン

■作曲:G・ビゼー,指揮:ダニエレ・ルスティオーニ,演出:キャリー・クラックネル,出演:アイグル・アクメトチナ,ピュートル・ペチャワ,エンジェル・ブルー他 ■新宿ピカデリー,2024.3.8-14(メトロポリタン歌劇場,2024.1.27収録) ■アイグル・アクメトチナがカルメンを現代に甦らせた! アンナ・ネトレプコを若くしたような姿、適度にネットリ感のある声がセクシーで自由奔放な女を歌い演じる。 ・・舞台はアメリカの今、兵器工場の女工達とそれを取り巻く軍隊や群衆はどこか異様な光景にみえる。 そこで昔ながらの男を演ずるドン・ホセ・・。 「ロマン系ドン・ホセとラテン系カルメンの立ち位置は音楽的にも交じり合わない」(指揮者インタビュー)。 現代アメリカの演出効果は発揮されないまま楽曲の力に引っ張られてしまった。 場面間の繋がりも弱い。 これで人物感情が途切れていたわよ。 作品としての「カルメン」は演出を無視できる強さがある。 アイグル・アクメトチナの歌手としての「カルメン」がこれに加勢していたから尚更ね。 *METライブビューイング2023シーズン作品 *MET、 https://www.shochiku.co.jp/met/program/5489/

■能楽堂三月「鐘の音」「胡蝶」

*国立能楽堂三月普及公演の□2舞台を観る. □狂言・和泉流・鐘の音■出演:野村万禄,能村晶人 □能・観世流・胡蝶■出演:武田宗和,福王和幸,村瀬堤ほか ■国立能楽堂,2024.3.9 ■「金の値」を聞いてきてくれ! 主人はこう伝えたが、「鐘の音」を聴いてきてくれ!と太郎冠者が聞き違える話である。 「コガネのネ」と言ってくれ!と文句をつけていたが後の祭り。 太郎冠者が鎌倉の寿福寺・円覚寺・極楽寺・建長寺の鐘の擬音を演じる。 また終幕の般若心経を引用した小歌も楽しい。 「胡蝶」のプレトーク(三浦裕子)を聴く。 この作品は荘周「胡蝶の夢」・舞楽「胡蝶」・「源氏物語」を参考にしている。 舞楽では「迦陵頻(かりょうびん)」との番舞(つがいまい)になっている。 「源氏物語」は番舞を踏襲したが当能は「胡蝶」だけを採用した。 舞台では<太鼓入り中ノ舞>で演じられたが、シテの冠の蝶がピョンピョンと跳ねまわっている。 舞楽では童舞らしい。 童が演者ならピョンピョンは似合うとおもうが・・。 動きが緩い舞ではしっくりこない、逆に固定した方が観ていても集中できる。 *劇場、 https://www.ntj.jac.go.jp/schedule/nou/2023/3180.html?lan=j

■能楽堂三月「鬼ヶ宿」「志賀」

*国立能楽堂三月定例公演の□2舞台を観る. □狂言・大蔵流・鬼ケ宿■出演:茂山逸平,茂山千五郎 □能・宝生流・志賀■出演:佐野由於,今井基,御厨誠吾ほか ■国立能楽堂,2024.3.6 ■「鬼ヶ宿」作者は江戸幕府大老の井伊直弼である。 彼は「部屋住み」時代に国学・能楽・茶の湯そして武術に没頭していたらしい。 作品は1860年(安政7年)2月に初演されたがその数日後に桜田門外で作者は暗殺されている。 能「黒塚」のパロディであることが作品名からも分かる。 「志賀」の主人公は六歌仙の一人、大伴黒主(志賀明神)。 このため「古今和歌集」はもちろん和歌の世界が散りばめられている。 それにしても最初から囃子、特に笛と大鼓がけしかけてくる。 何故こんなにも急がせるのか? 後場に入り、志賀明神の神楽の舞を見て分かった。 舞のテンポがとても速い。 この速さを囃子は予言しているかのように前場から飛ばしたのである。 この舞は楽しかった。 神妙さを感じさせない。 庶民好みだ。 懐かしさもある。 シテ面が「小尉」から「邯鄲男」に換わったが、賑やかな囃子に邯鄲男のとぼけるような舞が面白い。 シテ方と囃子方の呼吸がズレた場面もあったが、脇能の面白さは十二分に伝わってきた。   *劇場、 https://www.ntj.jac.go.jp/schedule/nou/2023/3179.html?lan=j

■Ate9ダンスカンパニー

*下記□2作品を観る. ■演出・振付:ダニエル・アガミ,出演:マノン・アンドラル,アドリアン・デレフィン,ビョルン・バッカー他 ■世田谷パブリックシアター,2024.3.1-3 □EXHIBIT B ■音楽:オミッド・ワリザデ ■バットシェバ舞踊団は硬さがある。 これを換骨奪胎して柔らかさに変換する派生グループが多い。 このグループ、作品もそれです。  7人のダンサーがスナックを食べ玩具を操作しながら幕が開く。 振付はコミカルの連続で日常生活からの引用が多い。 インド系映画を思い出させる音楽です。 面白い楽曲が6章くらいで構成されている。 途中、ダンサーの歌唱も入るが言葉がわからない。 字幕が欲しいですね。 デュオも数組入る。 椅子などの道具類も利用していく。 音楽がダンサーを生き生きとさせていた。 どのようなダンスカンパニーか見えてきました。 □calling glenn ■音楽・演奏:グレン・コッチェ ■パーカッションを主体とした生演奏です。 ドラマーが素晴らしい。 胸に響いてきます。 前作と違い、雑音を取り除き硬さが前面に出ている。 切れ味がいいですね。 途中、鉄琴演奏で数組のデュオを踊らせて柔らかさを挟み込んでいる。 終幕はマイクらしき道具類を取り出してコミカルに戻るが力強さは維持します。 音楽とのコラボに力を入れているのが分かりました。 初めてのグループだが楽しく観ることができた。 挨拶文にパレスチナ問題が書かれていたがやはり気にしているのでしょう。 これにめげず全力で舞台を作って欲しい。 ダニエル・アガミ、グレン・コッチェ、白井晃のアフタートークがあったが都合で見ることができなかった。 これは残念。 *劇場、 https://setagaya-pt.jp/stage/2147/