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■ポーの一族

■原作:萩尾望都,演出:小池修一郎,作曲:太田健,出演:明日海りお,千葉雄大ほか ■TOHOシネマズ日本橋,2021.2.28(御園座ライブ中継) ■エドガー役、明日海かおりが申し分ない。 男でも女でもなく喜怒哀楽を抑えた演技からポー一族の血が匂う。 その血が体内に入った時の感覚が伝わってくる。 身震いするわね。 血の交換は特別だと思う、それは愛する相手が必要だから、しかも種を越えた交換だから。 作品に引き付けられる理由がここにある。 そしてそのまま現代を映し出しているから。 一族の時空の旅は難民のよう、旅を止めれば異端や人種の差別が待っている・・。 50年経っても作品が輝いている。  舞台はとても練れていた。 千秋楽のカーテンコールでは演出家小池修一郎、作者萩尾望都両人が登場。 演出家は喋り過ぎ、作者はダンマリだったけど楽しかったわよ。 *梅田芸術劇場、 https://www.umegei.com/poenoichizoku/

■Das Zimmer  ■残影の庭

■彩の国さいたま芸術劇場・小ホール,2021.2.25-28 □Das Zimmer ■演出:森優貴,音楽:S・ラマニノフ,F・ショパン,衣装:鷲尾華子,出演:Noism1 ■Noismをこの小ホールで観るのは初めてかもしれない。 10人近いダンサーが登場したが、舞台が狭い。 ダンサーも意識しているせいか窮屈感が漂う。 暗いので尚更である。 ・・タイトルの部屋のイメージが見えてくる。 男女間の物語の断片を描きながら進んでいく。 そこにフェードアウト、インを使ってその断片つまりシーンを積み重ねていきシーケンスを作り出していく。 しかし堆積されたシーケンスが物語として結んでいかない。 一つ一つの特徴が見えなかった為である。 コロナ禍の小ホールでは文学舞踊劇は足踏みするしかない。 *「ブログ検索」に入れる語句は、 森優貴 □残影の庭 ■演出:金森穣,音楽:武満徹(秋庭歌一具ヨリ),衣装:堂本教子,出演:Noism0 ■雅楽演奏団体伶学舎との創作作品らしい、今回は録音を使っているが。 曲は武満徹の「秋庭歌一具」。 ダンサー井関佐和子、山田勇気、金森穣の強靭な動きと雅楽の融合は独特な舞台を作り出す。 強さのある雅楽と言ってよい。 曲とダンスの親和性が見事である。 天井から降りてくる衣装、持ち運びする枯れ木、他者の影、壁の灯火・・、凝った衣装・美術も面白い。 これに良質な<弱さ>が加われば劇的舞踊の新領域に行けるかもしれない。 *劇場サイト、 https://www.saf.or.jp/arthall/stages/detail/89432/

■アナスタシア

■脚本:テレンス・マクナリー,演出:稲葉太地,出演:真風涼帆,星風まどか,芹香斗亜,寿つかさ他 ■東宝シネマズ日本橋,2021.2.21(東京宝塚劇場,2021.2.21WEB中継) ■<アーニャがアナスタシア皇女だ!>は99%断定できる。 でも残り1%が素晴らしい解放感を持って来てくれる。 ここが作品の一番ね。 <アーニャは皇女でなかった!>という1%の迷いから来る「私は誰?」という根源的な問いは観る者にしっかり残る。 しかも皇太后を捨てディミトリのもとへ・・、歴史を戻さず未来を目指したアーニャの行動は革命を越えていた。 でもカメラワークが動き過ぎたので物語力が弱くなってしまった。 歌唱が思ったより多かったこともあるわね。 ここはショット数を半減すれば物語が強くなったはず。 生舞台で観たらずっと良かったかもね。 千秋楽のカーテンコールは来季公演や人事異動から劇団のことが分かり、挨拶から団員の素顔がみえる。 楽しかったわよ。  *宝塚歌劇宙組公演 *宝塚劇場、 https://kageki.hankyu.co.jp/revue/2020/anastasia/index.html

■タンホイザー

■台本・作曲:リヒャルト・ワーグナー,演出:キース・ウォーナー,指揮:セバスチィアン・ヴァイグレ,出演:芹澤佳通,竹多倫子,清水勇磨,池田香織,長谷川顯ほか,演奏:読売日本交響楽団,合唱:二期会合唱団 ■東京文化会館・大ホール,2021.2.17-21 ■舞台は室内劇のようで緊張感が凝縮していた。 1幕はヴェーヌスベルク快楽の間、2幕の歌合戦はダンスホール、3幕は寂れてしまった未来のホール・・。 それは美輪明宏が登場しそうな妖艶な部屋、続いて人民服に身を固めた中国共産党大会のような激論の会場、終幕はエリザベートが導き昇天するハインリッヒ・・。  うーん、時空を飛び回る眩暈! しかしタンホイザーとエリーザベトの躍動する動と静、ヘルマンとヴェーヌスの均衡、ヴォルフラムの抑制、これら歌唱像が一つに集約され宗教の荒波を乗り切ったという確信がやってくる。 字幕も詩的とは言えないがまとまっていた。 「ローマ語り」では高揚したわよ。 半年ぶりのワーグナーだったけど、やっぱ最高ね。 *2021都民芸術フェスティバル参加公演 *二期会2020シーズン作品 *二期会、 http://www.nikikai.net/lineup/tannhauser2021/index.html

■ワーニャ伯父さん

■作:A・チェーホフ,演出:レオニード・アニシモフ,出演:藤田泰介,柴田真孝,西川真生ほか,インターナショナル・スタニスラフスキー・アカデミー7期生 ■WEB配信(東京ノーヴイ・レパートリーシアター,2021.2収録) ■息詰まる密室劇ですね。 カメラの動きがほぼ固定で背景が黒ですから尚更でしょう。 役者の喋り方が独特です。 状況説明はいつもの家族団欒での会話のようで飲食場面も気にならない。 しかし物語を動かす科白は棒読みを感じる。 そして独白場面は緊張感がでていた。 この三つの喋り方が混ざり合うと劇の境界線が揺れ動くのです。 劇団が持つ劇的さは無いがとても面白く観ることができました。 医師アーストロフのソフィアへの心の動き、エレーナのワーニャとアーストロフへの愛の動きが単線なのは脇道だからでしょうか? チェーホフの舞台は観る都度、時の流れに消えていった出会いと別れを思い出させてくれます。 *東京インターナショナル・スタニスラフスキー・アカデミー7期生公演 *第31回下北沢演劇祭参加作品 *下北沢演劇祭、 https://engekisai.com/31_tokyonovyi/?_fsi=nKXZbE3z

■ハムレット

■作:W・シェイクスピア,翻訳:小田島雄志,演出:宮城聰,出演:武石守正,春日井一平,貴島豪,たきいみき他,劇団:SPAC ■静岡芸術劇場,2021.2.6-7 ■俳優がマスク姿で登場したのには驚きました。 もちろんハムレットもガチでマスク!? コロナ禍の生舞台でのマスクは初めてです。 役者同士の感染防止策として理解できるが、やはり芝居の面白さは半減しますね。 しかも舞台には半透明の垂れ幕が掛かっている。 人物の微妙な表情が見えない。 向き合う場面では離れすぎて立ち位置が不安定にみえる。 途中、王殺しの劇中劇を観ながら・・、今回は全てを仮面劇で通したら<マスク無し>になるのでは? 又は得意手法のスピーカーとムーバーに分離すればムーバーは<マスク無し>で演技できるのでは? こうなったら健康管理を徹底して(映像は舞台とは別物だが)無観客WEB配信でいくしかない? ・・・などなど代替案を考えてしまった。 帰りの新幹線ではいつもやって来るはずの観後の心地よい酔いに浸れませんでした。 *SPAC秋→春のシーズン2020-2021作品 *劇場サイト、 https://spac.or.jp/au2020-sp2021/hamlet_2020

■眠れない夜なんてない

■作・演出:平田オリザ,出演:猪股俊明,羽場睦子,山内健司ほか,劇団:青年団 ■吉祥寺シアター,2021.1.15-2.1 ■幕が開いて・・、科白のリズムが外れているように感じた。 役者が喋り難いようにみえる。 間の取り方も。 練れてないのかな? 今日は楽日だが・・。 前半の終わり、杉原と中岡の両夫妻がソファーで趣味や各地の評価をした場面からリズムが整い面白くなってきた。 1988年、マレーシアに定年移住をした夫婦たちの施設が舞台である。 戦前派が多いが訪ねてくる子供たちは戦後派つまり団塊の世代だ。 観ながら、あと数年でこの舞台が一回転する昭和100年問題を考えてしまった。 昭和63年は行先があったが昭和100年はそれが見つからない。 この差はグローバル下の均一化もあるが日本が貧しくなっているからだと思う。 舞台はいつのまにか戦争の話になる。 当時のマレーシアは大戦の跡が残っていたのだろう。 そこから銀輪部隊、加藤隼戦闘隊、マレーの虎、そしてハリマオ・・。 夫婦たちは実際のハリマオ、子供たちはテレビの怪傑ハリマオとシンクロするのが面白い。 終幕、病気で余命短い親が「日本に帰りたくない」と言う。 子供たちはその真意がわからない。 そして昭和の終わりがみえてくる・・。 兄を戦争で失った戦中派三橋の口を借りて、国家に裏切られた戦前派の最後の抵抗が語られる・・。 「天皇より早く死ねるか!」 *青年団第84回公演 *劇場サイト、 http://www.musashino-culture.or.jp/k_theatre/eventinfo/2020/11/seinendan84.html *2021.2.15追記・・まねきねこの「演劇◎定点カメラ」でアフタートーク感想を読んでいたら「東京ノート」の「東京物語」と同じく「晩春」をモチーフにしていると知って驚く・・。