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■2023年舞台ベスト10

*当ブログに書かれた作品から選出. 並びは上演日順. 映像・映画は除く. ■ 赤い靴   演出:加藤野奈,劇団:唐組 ■ 人形の家   演出:宮城聰,劇団:SPAC ■ 少女仮面   演出:黒田瑞仁,劇団:ゲッコーパレード ■ 人魂を届け に   演出:前川知大,劇団:イキウメ ■ リゴレット   演出:エミリオ・サージ,指揮:マウリツィオ・ベニーニ,劇場:新国立劇場 ■ ジュリオ・チェーザレ   演出:佐藤美晴,指揮:鈴木優人,楽団::バッハ・コレギウム・ジャパン ■ 金夢島   演出:アリアーヌ・ムヌーシュキン,劇団:太陽劇団テアトル・デュ・ソレイユ ■ 尺には尺を   演出:鵜山仁,劇場:新国立劇場 ■ 午後の曳航   演出:宮本亜門,指揮:アレホ・ペレス,劇場:日生劇場 ■ 采女 、 翁 、 屋島   出演::観世清和,野村萬斎,観世喜正ほか,劇場:国立能楽堂 *上記「采女」「翁」「屋島」は能楽ベスト3として一つにまとめた. *昨年の舞台ベスト10は・・「 2022年舞台ベスト10 」. *今年の舞台映像ベスト10は・・「 2023年舞台映像ベスト10 」. *今年の美術展ベスト10は・・「 2023年美術展ベスト10 」.

■2023年舞台映像ベスト10

*舞台公演を映画・配信にした作品が対象。 当ブログのラベルで「映像」が該当。 並びは観賞日順。 ■ フェドーラ   演出:デイヴィッド・マクヴィカー,指揮:マルコ・アルミリアート,劇場:メトロポリタン歌劇場 ■ るつぼ   演出:リンゼイ・ターナ-:,劇団:ロイヤル・ナショナル・シアター ■ ミソロジーズ   演出:アンジュラン・プレルジョカージュ,劇場:パリ・シャトル座 ■ トランジツト   演出:テロ・サーリネン,舞団:テロ・サーリネン・カンパニー ■ チャンピオン   演出::ジェイムズ・ロビンソン,指揮:ヤニック・ネゼ=セガン,劇場:メトロポリタン歌劇場 ■ コンサート・フォー・ジョージ   監督:デヴィッド・リーランド,劇場:ロイヤル・アルバート・ホール ■ 舞台神聖祭典劇パルシファル   演出:ジェイ・シャイブ,指揮:パブロ・エラス・カサド,劇場:バイロイト祝祭劇場 ■ ベジャール・プログラム   振付:モーリス・ベジャール,劇場:パリオペラ座・バスチーユ ■ 桜の園   演出:ショーン・ホームズ,劇場:パルコ劇場 ■ デッドマン・ウォーキング   演出:イヴォ・ヴァン・ホーヴェ,指揮:ヤニック・ネゼ=セガン,劇場:メトロポリタン歌劇場 *昨年の舞台映像ベスト10は・・「 2022年舞台映像ベスト10 」. *今年の舞台ベスト10は・・「 2023年舞台ベスト10 」. *今年の美術展ベスト10は・・「 2023年美術展ベスト10 」.

■能楽堂十二月「善界」「通円」「屋島」

*国立能楽堂十二月企画公演の□3舞台を観る. □一調・善界(ぜかい)■出演:山﨑正道,大川典良 □狂言・和泉流・通円■出演:野村萬斎,高野和憲,石田幸雄ほか □能・観世流・屋島(弓流・奈須与市語)■出演:観世喜正,永島充,大日方寛ほか ■国立能楽堂,2023.12.23 ■一調の「善界」で脳ミソが生き返った。 次の「通円」で脳ミソが柔らかくなる。 そして「屋島」で脳ミソが爆発した。 今日は脳ミソが喜び続けた。 「・・長閑なる、春や心を誘ふらん」。 静で始まる「屋島」は錣引(しころびき)、奈須与市語(なすのよいちのかたり)、弓流(ゆみながし)の三つの動へ直進するベクトルが素晴らしい。 シテとワキ、地謡、囃子のすべてが共振しあっていた。 シテの声・動き・舞に文句無し。 面は「三光尉」から「白平太」へ。  ところで野村萬斎が「屋島」で与市を語ったが、「通円」と発声方法が違っていた。 シテ役で面を付けると耳に届くが、アイ役の直面では発音が丸まっていて聴き難い。 意識的にしていると思うが、聴き易くなるよう考えてほしい。 *劇場、 https://www.ntj.jac.go.jp/schedule/nou/2023/12136.html?lan=j

■マシュー・ボーンの「くるみ割り人形!」

■音楽:P・チャイコフスキー,演出:マシュー・ボーン,出演:コーデリア・ブレイスウェイ,ハリソン・ドウゼル,アシュリー・ショー他,音楽:ニュー・アドベンチャーズ管弦楽団,舞団:ニュー・アドベンチャーズ ■NHK・配信,2023.12.17-(サドラーズ・ウェルズ劇場,2022.1.21収録) ■音楽はチャイコフスキーだが物語は似て非なるものでした。 ・・主人公クララは孤児院から胡桃割人形と伴にお菓子の国へ、しかし人形はプリンセス・シュガーに取られてしまいクララは失恋、戻った彼女は再び人形と孤児院から脱出する・・。  孤児院の暗さ、氷の世界の爽快さ、そしてお菓子の国の暖かさと変化に富んだ展開は楽しい。 しかし物語も振付もマシュー・ボーンのいつもの鋭さが無い。 たぶん毒がないからでしょう。 振付も粗雑にみえる。 でも年末恒例の「くるみ割り人形」を観ると年の瀬を迎えた気分になります。 *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、マシュー・ボーン ・・ 検索結果は6舞台 . *映画com、 https://eiga.com/movie/98657/ *🐸の Twitterへ ・・

■すみつくす

■作・演出:中村大地,出演:佐藤駿,関彩葉,辻村優子ほか,劇団:屋根裏ハイツ ■こまばアゴラ劇場,2023.12.14-25 ■どこかの家庭風景をそのまま切り取って舞台に乗せているような錯覚に陥る。 役者の動きも会話も極めてリアルです。 食事場面は特に驚きです。 芝居とは思えない。 飲み食いが普段通りにおこなわれる。 料理の匂いも客席に漂ってきます。 「静かな演劇」とは違う。 もはや日常そのものです。 「静かな日常」と言ってよい。 そして一人の男が登場すると雰囲気が変わります。 その男の台詞は少し棒読みで、演技は略ジェスチャーだけで小道具は存在しなくなる。 しかも急に葬儀場面を演じ始め、それを取り仕切る。 周りの役者も彼に従う。 この後も男が登場して死者への弔いを繰り返す。 謎めいています。 でも日常には生と死が同居している。 この不気味さも何事もなかったかのように日常に吸い込まれてしまう。 彼岸と此岸の境界を描こうとした? いや、役者と非役者の境界を描きたかったのでしょう。 役者そのものの演技に衝撃を受けたからです。 演劇の原点である境界を複数の切り口から描いた作品にみえました。 *屋根裏ハイツ第8階演劇公演 *CoRich、 https://stage.corich.jp/stage/288977

■東京ローズ

■台本・作詞:メリー・ユーン,キャラ・ボルドウィン,作曲:ウィリアム・パトリック・ハリソン,音楽:深沢桂子,演出:藤田俊太郎,出演:飯野めぐみ,シルビア・グラブ,鈴木瑛美子,原田真絢,森加織,山本咲希 ■新国立劇場・小劇場,2023.12.7-24 ■なんと!ミュージカルでした。 女優6人で全ての役を熟す一人数役です。 主人公アイバも6人が順番に担当する。 面白い方法です。 違和感が無いのは科白を歌唱に変えた為でしょう。 こぢんまりとした舞台だが、物語の流れ、歌唱・演技・演奏どれもが巧くまとまっていました。 実はアイバが戦後に米国で裁判にかけられたことは知らなかった。 舞台は国家反逆罪に問われた裁判の過程で彼女の過去が演じ語られる。 劇中劇の一種です。 太平洋戦争がもろに被さるので政治色が濃い。 しかも戦争中の日本と戦前戦後のアメリカを生き抜いた日系二世のアイバの微妙な立ち位置が揺れ動いていく。 彼女は1949年の裁判で有罪になり禁固10年を言い渡された。 戦争中の二つの国を泳ぎ切った主人公が頼もしい。 「お前はお前であることを貫き通した!」。 終幕、父はアイバを国家を超えた一人の人間として褒め称える。 29年後の1977年に彼女は特赦によりアメリカ国籍を回復しています。 *「 ゼロ・アワー 」(やなぎみわ演出)を2013年に観ていた. 今日とはまったく違う切り口の舞台でした. *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、藤田俊太郎 ・・ 検索結果は2舞台 . *劇場、 https://www.nntt.jac.go.jp/play/tokyo-rose/

■トロイアの女 ■世界の果てからこんにちはⅠ

■演出:鈴木忠志,原作:エウリピデス,出演:藤本康宏,齊藤真紀,佐藤ジョンソンあき他,劇団:SCOT ■吉祥寺シアター,2023.12.15-23 ■「トロイアの女」は苦手です。 物語が見え難いのも一因でしょう。 黒澤明の時代劇に登場するような衣装を纏う役者の動きや言葉、その独特な様式美に目と耳が唸ります。 主人公の老婆は拳が入り過ぎて声が歪んでいたが、七輪を取り出してから言葉に生気が戻ってきた。 前半は劇画調に近づきすぎたようにみえる。 しかし日本の敗戦にも重なる終幕で悲劇が昇華できたと確信できる舞台でした。 映像「世界の果てからこんにちはⅠ」は初めて観る作品です。 SCOT作品群の各場面がコラージュされている。 そして戦中戦後に戻ったかのように天照大神、海ゆかば、楠木正成、国民健康が話題になり、軍歌?や進軍ラッパが聞こえ美空ひばりや島倉千代子が歌う。 記憶、歴史、物語にさらば! 閉塞した日本を憂慮する舞台でした。 鈴木忠志のアフタトークを聴く。 「今年はハンガリーやインドネシア演劇祭などで上演した」「(アウェーの)劇場は照明調整だけでも数日かかる」「海外はともかく国内は赤字になってしまう」「花火代も上がったが続けたい」「利賀では劇団30人でカボチャを作り草取をしてヤクザ映画を観ている」「もはやアナクロ劇団である」「すでに85歳だ。 でも来年は新作を持ってくる。 たぶんこれが最後」などなど。 一年の締めくくりとして年の瀬の吉祥寺公演は続けて欲しい。 *CoRich、 https://stage.corich.jp/stage/293995 *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、鈴木忠志 ・・ 検索結果は26舞台 .

■デッドマン・ウォーキング

■作曲:ジェイク・ヘギー,演出:イヴォ・ヴァン・ホーヴェ,指揮:ヤニック・ネゼ=セガン,出演:ジョイス・ディドナート,ライアン・マキニー,ラトニア・ムーア他 ■東劇,2023.12.8-14(METメトロポリタン歌劇,2023.10.21収録) ■死刑囚ジョセフと修道女ヘレンの交流を描いたMET初演のオペラ。 でも舞台はもはや演劇と言ってよい。 その歌詞があまりにもリアルなため歌唱が科白として耳に届き、「刻一刻と時を止めない」演奏はその科白に共鳴吸収されてしまったからよ。 先ずは被害者になる若者の殺害場面が強烈に映し出され観客の脳裏にこびり付いてしまうの。 加害者ジョセフは無罪を主張し謝罪の言葉もない。 彼のカウンセリングを引き受けたヘレンの苦悩が続いていく。 そこで彼女の同僚ローズが「言葉ではなく身体に繋がる共感が必要」と助言する。 ジョセフとヘレンはエルヴィス・プレスリーの過去の体験を共有し心を開いていくが、薬殺による死刑の日時が迫りつつある。 さいごのその時ジョセフは罪の赦しを請い、<愛の顔>ヘレンに見送られていく・・。 キリスト教の濃い作品だが、それを越えた感動があるわね。 米国の死刑制度もみえてくる。 手続きや死刑場面がとても具体的だったからよ。 無宗教が多い日本の場合にも思いが及ぶ。 オペラとしては異色の内容だった。 ヘレンがアンゴラ刑務所へ向かうドライブ映像のユニークさ、刑務所内の抽象化された過激な光景が印象的ね。 次回の「マルコムX」も期待できそう。 *METライブブューイング2023年作品 *MET、 https://www.shochiku.co.jp/met/program/5425/ *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、イヴォ・ヴァン・ホーヴェ ・・ 検索結果は9舞台 .

■胎内

■作:三好十郎,演出:伊藤全記,出演:山口真由,劇団:7度 ■こまばアゴラ劇場,2023.12.6-10 ■一人芝居らしい。 役者山口真由が観客に向かって演劇体操をやろうと言い出す。 客は体操をして始まるのを待ちます。 役者はなおも準備運動をしながら、場内は暗くなっていく。 ・・なんと憑依したのか!? 唸るような激しい男の声が響く。 明るくなると同じ役者と分かる。 腹の底から捩じりだしてくる声だ。 準備運動の必要が分かりました。 戦争が話題になり、ここで三好十郎の1949年作品と書いてあったのを思い出す。 若者の行き場のない生活を舞台に乗せている。 現在でも似た状況に置かれている者も多いはずです。 暗い狭い空間に閉じ込められていて、心と体の分断を恐れている。 (食うカネは欲しいが)パン助にはなりたくない。 自殺も嫌だ。 観ていてもシンドイですね。 三好十郎を料理するにはもう一手間を加える必要がありそうです。 役者は舞台上で化粧をして新たな服に何度か着替え、衣装を散らかしたり畳んだりする。 女一人芝居の定番が続くが面白くみることができました。 科白は数十分ごとに繰り返しているように聞こえた。 同じ科白群が三度(?)あったからです。 上演時間が短くなっても、これは二度迄が効くでしょう。 客席に井の頭線の電車音が聞こえてくる。 終幕に救急車のサイレンが耳に入ってきたが、これは演出か? 自殺をしてしまった? 終演後、劇場から出ると目の前に救急車が止まっていました! ・・! *CoRich、 https://stage.corich.jp/stage/288944 *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、伊藤全記 ・・ 検索結果は3舞台 .

■能楽堂十二月「苞山伏」「葛城」

*国立能楽堂十二月普及公演の□2舞台を観る. □狂言・和泉流・苞山伏(つとやまぶし)■出演:能村晶人,炭光太郎,小笠原由祠 □能・観世流・葛城(大和舞)■出演:井上裕久,福王和幸,村瀬堤ほか ■国立能楽堂,2023.12.9 ■プレトーク「岩橋説話と女神の舞」(山中玲子)を聴く。 本日の2作品は葛城山と関わりのある山伏が登場する。 葛城山とは現在の金剛山らしい。 古事記「一言主」から清少納言や和泉式部そして今昔物語まで興味深い話が続く。 五衰や三熱、加えて役小角(えんのおづぬ)の縛り、この三重苦に喘ぐ女神の運命や如何に! そして彼女は醜顔だがこれは人間基準より神基準でみるのが妥当、きょうのシテ面も「深井」から「増」へ繋げていた。 「苞山伏」は囃子付きで楽しい。 山伏をみていると古い漫画や映画のシーンを思い出してしまった。 苞(つと)は藁などで包んだもの。 ここでは弁当を指す。 「葛城」は深々とした雪世界を描いている。 それが後場になると一変する。 雪の岩戸から登場した、蔓紅葉を纏う後シテの艶やかな姿は予想を越えていた。 そこで大和舞を舞う。 舞台の面白さが十二分に出ている。 しかも緊張感を持って観ることができた。 *劇場、 https://www.ntj.jac.go.jp/schedule/nou/2023/12134.html?lan=j

■能楽堂十二月「鳴子遣子」「遊行柳」

*国立能楽堂十二月定例公演の□2舞台を観る. □狂言・鳴子遣子(なるこやるこ)■出演:善竹忠重,善竹忠亮,大藏教義 □能・喜多流・遊行柳(ゆぎょうやなぎ)■出演:塩津哲生,宝生常三,舘田善博ほか ■国立能楽堂,2023.12.6 ■今日の2作品は西行法師が絡んでいる。 雀を田圃から追い払う竹道具の名前は鳴子か?遣子か?を言い争う「鳴子遣子」。 ここに仲裁者が入り西行の和歌(偽作らしい)を詠んで判定を導く。 なかなか笑える。 柳の精が主人公の穏やかな作品「遊行柳」は後場が「柳尽くし」の修辞に溢れている。 ここでシテの動きが微妙に揺れてきた。 体調不良か? 「・・風にただよう足もとの、弱きもよしや老木の柳、気力のうして弱々と、・・」と謡うからには演出か? どちらか?よく分からないで観ていた。 シテ面は「三光尉」から「石王尉」に替わる。 ヒトなら90歳から120歳へと一気に老いた顔に変わる。 しかも作品に太鼓が入る。 シテは太鼓に導かれて舞を舞っているようにみえる。 聴き応えのある詞章に、相反する強いリズムと弱い舞いを融合させて面白い舞台にしていた。 *劇場、 https://www.ntj.jac.go.jp/schedule/nou/2023/12133.html?lan=j

■お艶の恋

■原作:谷崎潤一郎「お艶殺し」,演出:石神夏希,出演:阿部一徳,葉山陽代,たきいみき他,劇団:SPAC ■静岡芸術劇場,2023.12.2-10 ■プレトークで演出の石神夏希が次の二点を話す。 「当作品の映画・芝居化が過去にあったが原作の良さを消していた。 今回は忠実に舞台に乗せた・・」そして「江戸時代の人々の魂が船上で芝居をしながら熱帯雨林へ旅をする設定にした・・」。 素朴派アンリ・ルソーの絵に登場するような熱帯植物が舞台を囲み、中央に小舟が置いてあり、・・語り手が派手な鳥姿・鳴声を発しながら飛んでくる。 朗読劇か? ドラマ・リーディングか? いや、ほぼ普通の芝居に近い・・? ト書きは語り手が担当するが次第に役者も加わります。 原作を読んでいないので科白に集中する。 江戸下町の風景が現前してきます。 さすが谷崎潤一郎、しかし物語はまさかの連続殺人が展開されていく。 驚きです。 エログロナンセンスに近い。 ただしエロはお艶の恋人新助がズボン役のため薄められている。 真面目一途な新助がお艶の心変わりに振り回されていく惨めな姿が哀れです。 終幕に新助の役者が替わったのには混乱しました。 でも芹沢の名前を叫ぶお艶をみれば初代新助も退場するしかない。 殺人は5件(?)もあり異様だが、愛憎とカネの行き違いからくる殺しは日常の裏深さを出現させています。 原作に忠実な舞台は上出来でしたね。 緊張感を持って楽しめました。 熱帯雨林への魂の旅は目と耳が喜びました。 江戸と離れ過ぎているところが舞台の面白さでしょう。 *劇場、 https://spac.or.jp/au2023-sp2024/otsuyakoroshi

■シモン・ボッカネグラ

■作曲:G・ヴェルディ,指揮:大野和士,演出:ピエール・オーディ,美術:アニッシュ・カープア,出演:ロベルト・フロンターリ,イリーナ・ルング,リッカルド・ザネッラード,ルチアーノ・ガンチ他,管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団 ■新国立劇場・オペラパレス,2023.11.15-26 ■硬い印象を持ったのは初演のためかしら? 演出と美術は無機質な劇場をさらに冷やしていた。 ベスビオ火山を逆さに吊るしただけの、だだっ広い空間に立つ歌手には孤立感が漂う。 父娘の哀楽は霧散していく。 演奏は当劇場を熟知している指揮者で聴きごたえ十分よ。 祖父と父、そして夫になる3人に囲まれた紅一点のアメーリアを中心に歌手たちは熟練の歌唱力をみせてくれた。 でもドラマ性は感じられない。 たぶん歌唱をじっくり聴いてくれと言っているのね。 ある意味この劇場らしい演出だった。 初登場ルチアーノ・ガンチのテノールが場内に響いていたのが印象深い。 5人もの招聘歌手の共演はさすがに豪華だった。 でも皆が濃厚のため逆に躍動感に欠けてしまったかな? *NNTTオペラ2023シーズン作品 *劇場、 https://www.nntt.jac.go.jp/enjoy/record/detail/37_026674.html

■能楽堂十一月「執心鐘入」「三井寺」

*国立能楽堂十一月企画公演の□2舞台を観る. □組踊・執心鐘入■出演:宮城茂雄,佐辺良和,島袋光尋ほか □能・観世流・三井寺(二重座)■出演:観世銕之丞,安藤継之助,宝生欣哉ほか ■国立能楽堂,2023.11.25 ■この劇場での組踊は珍しい。「執心鐘入(しゅうしんかねいり)」は初めて観る。 琉球楽器の演奏が始まり紅型衣装(?)の役者が登場すると一機に琉球風景が出現した。 沖縄語(?)の歌詞歌唱から18世紀琉球人に出会った気分がおとずれる。 いやー、楽しい。 でも語句の理解は半分もいかない。 演奏が非連続なため静寂が時々訪れる。 それからみると能は賑やかに感じる。 「三井寺」は特にそうだ。 たぶん二人のアイが登場する為だろう。 各役割のテンポが小刻みで気持ち良い。 しかし和漢詩歌を地謡が紹介する後場が長すぎる。 母子再会を待ちくたびれてしまった。 小書「二重座(にじゅうずわり)」あり。 面は「深井(伝是閑作)」。 *劇場、 https://www.ntj.jac.go.jp/schedule/nou/2023/11175.html?lan=j

■午後の曳航

■原作:三島由紀夫,作曲:ハンス・ヴェルナー・ヘンツェ,台本:ハンス=ウルリッヒ・トライヒェル,演出:宮本亜門,指揮:アレホ・ペレス,出演:北原瑠美,新堂由暁,小森輝彦ほか,演奏:新日本フィルハーモニー交響楽団 ■日生劇場,2023.11.23-26 ■主人公ノボルの父権を望む一直線な行動が物語を分かり易くしていた。 三島由紀夫のエキスを飲まされた感じがするわね。 無彩色の美術と無調風な楽曲が同期して物語の緊張感をより高めていた。 ドイツ表現主義を思い出したように舞台に暗闇が立ち現れてきたわよ。 ダンサーは黒子にもなり、ノボルの分身としても動き回り結末を急がす。 ノボルが母フサコを覗き穴からみる近親相姦的行為、ノボルと船乗りツカザキの同性愛的戯れ、フサコとツカザキの過激なベットシーン、どれも抜群の演出ね。 そこにヘンツェの曲が取り囲み感情をより不安にそしてより高揚させてくれた。 とても完成度の高い舞台だった。 でも観後のカタルシスは無い。 ノボルの狂気への暴走とフサコの小市民的幸福の崩れる幕切れが脳裏に引っかかってしまったからよ。 *二期会創立70周年記念公演 *日生劇場開場60周年記念公演 *二期会、 http://www.nikikai.net/lineup/gogonoeiko2023/index.html *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、宮本亜門 ・・ 検索結果は4舞台 .

■無駄な抵抗

■作・演出:前川知大,出演:池谷のぶえ,渡邊圭祐,安井順平ほか,劇団:イキウメ ■世田谷パブリックシアター,2023.11.11-26 ■ギリシア神話から続くあの話だと分かったのは幕が下りる直前、主人公メイが母からの手紙を読む場面でした。 この時は高揚・落胆・呆然・納得・・が脳内を駆け抜けました。 昔からよくある結末のため混乱したからです。 粗筋も読まず劇場に行ったのは正解でしたね。 父や伯父に怖がられるメイに超能力を期待してしまった。 彼女が伯父に犯された語りもジャニーズへ連想が行ってしまった。 ・・全て外れてしまった。 イキウメとリズムが違うメイ役の池谷のぶえを採用したのは「人魂を届けに」の篠井英介に次いで二度目です。 イキウメに漂う<SF力>と近親相姦という<現実力>の橋渡しを彼女は熟した(?) しかし前者が空中分解してしまった。 電車事故が脳裏から一目散に逃げてしまった。 後者の力はギリシア時代から流石に衰えていません。 いつもと違う現実的後味だけが残りました。 *劇場、 https://setagaya-pt.jp/stage/2140/ *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、前川知大 ・・ 検索結果は13舞台 .

■ねじまき鳥クロニクル

■原作:村上春樹,演出:インバル・ピント,脚本:アミール・クリガー,藤田貴大,音楽:大友良英,出演:成河,渡辺大知,門脇麦ほか ■東京芸術劇場・プレイハウス,2023.11.7-11.26 ■美術やダンス、数人一役の面白さに目が向かっていたが、旧日本軍人マミヤがモンゴルを語るところで脳みそが目覚めました。 後半にはナツメグが満州を語る場面もある。 しかし語りは支流を流れるだけで物語の本流がみえてこない。 主人公トオルの妻クミコが失踪した理由は? トオルの対局に居るらしいノボルとは何者? この二つの謎は解けぬままです。 通底に現代の特に女性の苦悩と解放が見え隠れしている。 しかし、それはダンスで拡散されてしまう。 ダンスは現代人が過多に浴びている情報のようなものか? あるいは不可逆的な時間を表現しているのかもしれない。 捉え難い舞台でした。 原作は読んでいません。 小説から舞台への過程が単純にみえない。 舞踊や歌唱、美術や演奏をまとめて総合芸術として変換しているからです。 「読んだら観ない、観たら読まない」をモットーにしているが、今回は原作を読んでみたい。 刺激ある舞台でした。 *劇場、 https://www.geigeki.jp/performance/theater345/ *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、インバル・ピント ・・ 検索結果は3舞台 .

■桜の園

■作:A・チェーホフ,台本:サイモン・スティーヴンス,翻訳:広田敦郎,演出:ショーン・ホームズ,出演:原田美枝子,八嶋智人,成河ほか ■NHK・配信,2023.11.5-(パルコ劇場,2023.8収録) ■役者たちの大げさな演技、服装、そしてダンス、すべてが祝祭的だが違和感なく現代に統一されている。 しかも原作から逸脱していない。 19世紀末ロシアと21世紀現代がピタリと貼りつく。 見事な舞台です。 この作品は何回も観ています。 過去の舞台を思い出しながら目の前の舞台を観てしまった。 それは劇中劇になって現れる。 むかしの「桜の園」の中で、今この「桜の園」を演じている。 チェーホフの舞台は積み重なっていきます。 まるで地層のように。 今日の舞台を観てまた層が豊かになりました。 チェーホフが飽きない理由です。 *PARCO劇場開場50周年記念シリーズ作品 *CoRich、 https://stage.corich.jp/stage/267066

■能楽堂十一月「竹生嶋詣」「実盛」

*国立能楽堂十一月普及公演の□2舞台を観る. □狂言・大蔵流・竹生嶋詣(ちくぶしままいり)■出演:茂山千之丞,茂山宗彦 □能・宝生流・実盛(さねもり)■出演:朝倉俊樹,殿田謙吉,則久英志ほか ■国立能楽堂,2023.11.11 ■「竹生嶋詣」に行ってきた「抜参り物」である。 でも旅話の楽しさは無い。 太郎冠者の駄洒落で笑わせる作品だ。 プレトーク「実盛の「執心」とは何か」(佐伯真一)を聴く。 実盛はなぜ亡霊となりこの世に戻ってきたのか? この一点に収束していく。 それは戦いで大将木曽義仲の首を取りたかったからである。 武士の執念と言える。 実盛の生涯から始まり、松尾芭蕉「おくの細道」、多太神社「実盛の兜」、呪術的行事「実盛送り」、柳田國男の豊作祈願「さなぶり」などを持ち出して話を面白くしていた。 遊行上人や里人の科白を聞いていると、実盛討死二百年後の加賀国篠原で亡霊が出現するその場に居る気分を持つことができる。 室町時代にワープできた。 緊張感あふれる舞台だった。 シテ面は「三光尉」だが笑いが微かに漂う。 ここは喜怒哀楽を消す面を付けていたら文句無しだったと思う。 しかし、実盛は僧の前で微笑んでいたのかもしれない。 *劇場、 https://www.ntj.jac.go.jp/schedule/nou/2023/11172.html?lan=j

■能楽堂十一月「岩橋」「雪」

*国立能楽堂十一月定例公演の□2舞台を観る. □狂言・和泉流・岩橋■出演:高野和憲,深田博治,飯田豪 □能・金剛流・雪(雪踏之拍子)■出演:豊嶋彌左衞門,野口能弘ほか ■国立能楽堂,2023.11.8 ■「岩橋」は、新婚ホヤホヤの妻が衣をかぶったまま何日も夫に顔をみせない。 困った夫は仲人に助言をもらう。 彼女は和歌が好きなので歌で迫ってみたらどうか? ・・夫が歌を詠んでも、しかし妻はイヤイヤするだけである。 妻も歌で返すのか?と観ていたが残念!それはなかった。 オチも平凡すぎた。 「雪」の精霊が僧の前に現れて舞を舞う一場物の舞台だ。 みどころは序の舞である。 でもボッテリした舞だ。 粉雪より牡丹雪にみえる。 シテ面は「小面」だが古元休作とあった。 これが牡丹雪と似合ってる。 白くてポッチャリしている。 親しみのある面だ。 神妙な僧との微妙なズレがまた楽しい。 *劇場、 https://www.ntj.jac.go.jp/schedule/nou/2023/11171.html?lan=j

■善き人

■作:C・P・テイラー,演出:ドミニク・クック,出演:デヴィット・テナント,エリオット・リーヴィ,シャロン・スモール他 ■TOHOシネマズ日本橋,2023.10.20-(ハロルド・ピンター劇場,2023年収録) ■登場人物は小説家のジョン、その妻ヘレン、そして親友モーリスの3人。 でも一人数役を熟す。 その替わり方が激しい。 妻を演技をしていると突然、祖母や女学生アンになったりする、整合性はとれているが。 同じようにジョンやモーリスはゲッペルス、アイヒマン、ヒトラーなどなどに替わる。 忙しいですね。  舞台道具はほとんど何も無い。 そして3人は台詞を喋り演技をするだけです。 効果音はスタッフが出しているらしい。 たとえばドアを開ける音など日常音のほとんどは舞台外から発します。 面白いですね。 ジョンは小説家らしくゲーテやトーマス・マンなどを話題にし、彼の蔵書「失われた時を求めて」を焚書とする場面もある。 音楽への興味は特に高くワーグナー、ベートーベンはもちろんジャズなどポピュラー系の話題も多い。 その楽曲が背景に流れる。 これが物語に効いています。 ジョンは安楽死の論文をヒトラーに気に入られナチスに入党する。 安楽死の議論が中心になるのか? でもそうならない。 彼の生活場面の描写が多い。 後半、親友でありユダヤ人モーリスとの切実な対話も中途半端になってしまった。 話題の詰め込み過ぎでしょう。 ・・いつのまにか彼は親衛隊SSの制服姿でアウシュビッツ駅のホームに立っている。 彼はおもむろに「ドン・キホーテ」を取り出す。 そこに囚人服姿のユダヤ人が演奏する「軍隊行進曲」が聴こえてくる・・。 一人数役のためテンポが速い。 ジョンの世界は家族と親友と恋人、文学に音楽、そしてナチスと扱う範囲が広い。 終幕は何とかまとめたが、ジョンの苦悩は速くて広くて上滑りしてしまった。 そして彼はいつのまにか<悪き人>になっていた。 その善悪の境はもはやどこにあるのか見えない。 今日の観客は若い女性が多い。 NTLの年齢層はいつもは高い。 スクリーンNOを間違えた? 確認のため入口に一度戻ってしまいました。 今回は特に地味で深刻なのに何故でしょうか? *NTLナショナルシアターライブ作品 *映画com、 https://eiga.com/movie/99200/ *「ブログ

■皇国のダンサー

■作・演出:佐藤信,出演:服部吉次,桐谷夏子,片岡哲也ほか,劇団黒テント ■ザスズナリ,2023.11.1-5 ■手ぶらで観に行ったので最初はチンプンカンプンでした。 近未来の話のようです。 でも途中から日本の古代史を思い出しながらストーリーを追うことになる。 なぜならフルコト(日本書紀・古事記?・風土記?)からの抜粋が字幕に表示されるからです。 しかも物語を「マトリックス」構造に仕立ててある。 無機質な近代的ビルの一室らしき場所で、役者は叙事詩的な台詞を喋り演技をしていく。 ロボット風と言ってよい。 古めかしいコンピュータ用語も出てくる。 これらが結構おもしろい。 ダンサーの一人、服部吉次は後期高齢者風だが動きも発声も存在感があります。 観客も高齢者が多い。 それは7割くらい? でも若い女性も目立つ。 観客も新陳代謝が必要ですね。 観後に演出家の挨拶文を読んでWEBを調べると舞台は「乙巳の変」(645年)を描いていたことが分かる。 久しぶりに当時の歴史を調べ直し今日の舞台を思い起こしました。 ダンサー=俳優とは何者か? そして天皇とは? メモリのように記憶も消されていく? プログラムのように歴史も書き換えられていくのか? ・・。 *劇団黒テント第79回公演 *CoRich、 https://stage.corich.jp/stage/268744 *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、佐藤信 ・・ 検索結果は6舞台 .

■尺には尺を

■作:W・シェイクスピア,翻訳:小田島雄志,演出:鵜山仁,出演:岡本健一,ソニン,木下浩之ほか ■新国立劇場・中劇場,2023.10.18-11.18 ■こんなにも面白い作品だったとは・・! 再発見です。 一度観ていますが昔のことで覚えていない。 今日の舞台はまとまっていました。 ヴィンセンシオ侯爵が指揮者の役割を果たしていたからでしょう。 物語にリズムがあった。 シェイクスピアの心地よさも出ていました。 現代に通ずる法律や権力者の行動も興味深い。 「こんな現代的な作品が400年前に?」とチラシにあったが同感です。 先日の「終わりよければすべてよし」と違い、今日は前面に出る主役級がバートラム(浦井健治)からアンジェロ(岡本健一)へ、ヘレナ(中嶋明子)からイザベラ(ソニン)へと変化する楽しさもあった。 「二作品は合わせ鏡」とあったが、この時期に完成度の高い2本を観ることができて幸せです。 *NNTTドラマ2023シーズン作品 *劇場、 https://www.nntt.jac.go.jp/play/shakespeare-dark-comedy/ *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、鵜山仁 ・・ 検索結果は14舞台 .

■伊豆の踊子

■作:川端康成,演出:多田淳之介,映像監修:本広克行,出演:山﨑晧司,河村若菜,春日井一平ほか,劇団:SPAC ■静岡芸術劇場,2023.10.7-11.19 ■伊豆へ旅しよう! でも名所などを舞台の上で訪れるのですが。 原作は読んだ? いや覚えていない。 粗筋はなんとなく知っています。 会場に入ると長いテラスのような簡易舞台が造られている。 この背後の白壁に名所旧跡などの映像が映し出される。 そこに旧制高校の主人公と途中出会った旅芸人たちが伊豆を泊まり歩いてゆくストーリーです。 下田の港に辿り着いて、主人公と踊り子の甘くて酸っぱい、それは青春の苦みも残しながら幕が下りる。 舞台の主人公は心情を強く表さない。 このため徐々に旅芸人に意識が向いていきます。 彼らの旅慣れているチームワークの良さや家族愛がほんわかと伝わってくる。 差別も受けるが世間の表裏を使い分けながら遣り過ごしていく。 しかも主人公を無条件に受け入れてくれる。 心を閉じていた主人公は旅芸人の異界の心に触れて再生したはずです。 でも踊り子にとってはどうだったか? 旅芸人の力を再び思い出させてくれる舞台でした。 この作品は「連鎖劇」であり「観光演劇」でもある、と芸術監督が言ってましたね。 名所旧跡を訪れるほかに、温泉宿に泊まり一座の芝居や歌やダンスを楽しむこともできた。 社員旅行を思い出してしまいました。 *SPAC2023シーズン作品 *静岡県伊豆文学祭記念事業作品 *CoRich、 https://stage.corich.jp/stage/280529 *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、多田淳之介 ・・ 検索結果は16舞台 .

■眠れる森の美女

■原振付:M・プティバ,音楽:P・I・チャイコフスキー,演出:熊川哲也,指揮:井田勝大,出演:日高世菜,山本雅他,小林美奈ほか,舞団:K-バレエ・トウキョウ,管弦楽:シアター・オーケストラ・トウキョウ ■東京文化会館・大ホール,2023.10.24-29 ■序曲が始まり、蛙猫熊羊の緞帳を見ているだけでドキドキしてくるわね。 そして幕が開いて、先ずは舞台美術に目が喜び、華やかな演奏が耳に響き、宮廷衣装に照明を纏ったダンサーのきりりとした動きに身体が驚く、男性ダンサーたちの長身にも。 思っていたより淡泊に仕上がっているの。 しかも無理無駄斑が無い。 新解釈と聞いていたが物語的感動は少ない。 でも満足度はマキシアムよ。 叙事詩的感動を演出は求めているようにみえる。 カンパニー25年の成果の一つだわ。 天皇の「名残惜しい」という感慨は同然。 舞台が醸し出す感動をそのまま受け止めたいわね。 *カンパニー設立25年記念シーズン作品 *CoRich、 https://stage.corich.jp/stage/277780 *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、熊川哲也 ・・ 検索結果は14舞台 .

■能楽堂十月「菊の花」「檜垣」

*国立能楽堂十月特別企画公演の□2舞台を観る. □狂言・和泉流・菊の花■出演:野村萬,野村万之丞 □能・金剛流・檜垣(ひがき)■出演:金剛永謹,宝生欣哉,野村万蔵ほか ■国立能楽堂,2023.10.26 ■「菊の花」は、太郎冠者がこっそり京見物へ行ってしまうが土産の旅話で主人に勘弁してもらう「抜参り物」である。 盗んできたのが緒太の金剛(草履)だったのは頂けない。 しかしなぜ上臈(じょうろう、貴婦人)は太郎冠者を誘ったのだろうか? 「檜垣」の上演時間は二時間を越えている。 詞章を読む限りそこまで長くないのだが、観ていて理由が分かった。 それはシテの前後登場場面が長いからだ。 序の舞も長い。 でも気にならないのが能の良さである。 今日は脇正面の前席で観たが橋掛かりの姿をじっくり観るにはこの席はよくない。 シテ面は檜垣姥から小町老女に変わる。 この変差も老女末路の姿、つまり老と霊にしっかり同期していて面白い。 笛と小鼓は物語に沿っていたが大鼓は力が入り過ぎていた。 もう少し抑えれば舞台の完成度はより高まる。 地謡は巧かった。 NHKの収録が入ったらしい。 出演者たちが裃を付けていたのはそのためかな? *劇場、 https://www.ntj.jac.go.jp/schedule/nou/2023/10167.html?lan=j

■終わりよければすべてよし

■作:W・シェイクスピア,翻訳:小田島雄志,演出:鵜山仁,出演:岡本健一,浦井健治,中嶋明子ほか ■新国立劇場・中劇場,2023.10.18-11.18 ■ただっぴろい中劇場が苦にならない。 周囲に雑草を植えただけなのに、です。 二つのベンチと大きな布がシーンを繋げていく。 なにも無い空間でも物語密度が保たれています。 そこに響く科白は静かさと伴にシェイクスピアが持つリズムを思い起こさせてくれる。 満ち足りるように物語に入っていけました、でも際どい処女の話で始まるのですが。 ヘレナの企みは支離滅裂にみえるが聡明叡智の極みです。 彼女の行動がタイトルを導いているのですね。 登場人物と俳優を分けて観る余裕がこの舞台にはある。 この余裕はどこからきているのか? フランス王が岡本健一とは、初めは分からなかった。 それだけ巧い。 ペーローレスがそんなに悪党なのか? 結局は悪党にさせられてしまった?ようにみえた。 ところでバートラムは異星人ですね。 浦井健治の発声や動きは他役者とは違う。 早口で忙しない。 シェイクスピア空間に裂け目を入れている。 演出でしょうか? カンパニーという言葉があったので実体を探したが見つからなかった。 当劇場のシェイクスピア歴史劇シリーズに携わったスタッフ・キャストをカンパニーと言っているらしい(?) 今回は歴史劇と違って身構えないでみることができました。 これが余裕の理由かもしれない。 *NNTTドラマ2023シーズン作品 *劇場、 https://www.nntt.jac.go.jp/play/shakespeare-dark-comedy/

■金夢島

■演出:アリアーヌ・ムヌーシュキン,出演:太陽劇団テアトル・デュ・ソレイユ ■東京芸術劇場・プレイハウス,2023.10.20-26 ■役者の多くは仮面をつけたような厚化粧で日本人を演じ始める。 昭和時代に戻ったような着物姿でぎこちなく動き回る。 人形のようにもみえる。 ここに異様な風景が出現します。 そして道具類はすべて手製で次から次へと持ち出してくる。 何が出るのか?ドキドキしますね。 粗筋があるようです。 死が近い老婆の夢の中で、・・日本の金夢島(佐渡島?)で演劇祭が始まろうとしている。 しかし祭りを支援する市長と島にカジノを建てようとする反市長派が対立してしまう・・。 老婆の夢で、島民に事件が起きつつ、祭りで芝居が演じられる。 この劇中劇中劇という複雑構造が何度も繰り返されるとは驚きです。 香港や中東・ブラジルなど世界中からやってきた劇団の芝居はハチャメチャだが意味深ですね。 全裸劇団も登場する。 特に政治的アジテーションは現実的です。 香港やウクライナ、イスラエルやハマスも話題に上げられ、後半は詩的な科白も加わっていく。 歌唱も入り感動的です。 祭りでは劇団ごとに舞台を作り替えていき、その間にカジノ騒動が割って入る。 まるで紙芝居のようです。 銭湯で湯に浸かったり、猿や鶴に変身し駱駝が歩きまわる。 自動車や船はもちろんヘリコプターまで飛び回る。 能舞台(風)もあり謡や日本舞踊などの異化効果は抜群です。 役者は30人くらいですか? 作品の隅々までに己の身体を出し切っているようにみえる。 彼らが動き回る舞台裏まで想像できます。 演劇の醍醐味を十二分に味わいました。 *東京芸術祭2023作品 *劇場、 http://www.geigeki.jp/performance/theater336/

■かぐや姫

■演出:金森穣,音楽:C・ドビュッシー,出演:足立真理亜,秋元康臣,木村和夫ほか,舞団:東京バレエ団 ■東京文化会館・大ホール,2023.10.20-22 ■世界初演ということで、いざ上野へ。 ・・舞台は簡素です。 衣装もです。 でも近未来的なスタイルでかっこいい。 コンテンポラリを取り入れた振付が冴えている。 特に群舞はミニマムな心地よさがある。 アジア的仏教的な手の動きは素晴らしい。 摺足も使用していて鋭い走りをする。 ダンサーたちの登場や退場、マントを脱ぐ動作、黒衣の存在、すべてが計算し尽されていますね。 主な役者には数人の群舞を付け身体拡張をしているのが面白い。 そして背には冷めた月が輝いている。 音楽はドビュッシーです。 ここに月の世界が出現します。 かぐや姫は、なぜやって来たのか、そして帰って行ったのか? 凡そは知っていたが物語は淡々としている。 たぶん原因はドビュッシーにあるのかもしれない。 音楽が物語と観客の間に入り間接的な接触になってしまった。 姫と道児との恋愛もあったが脇道です。 でもドビュシー以外は考えられません。 アフタートークを聞く。 出席は金森穣と司会者(名前は忘れた)。 ・・「日本から世界へ発信するためにかぐや姫を選んだ」「グランドバレエの再定義をしたい」「かぐや姫とは誰か?」。 誰でしょう? 「ノイズムではなく東京バレエ団のメソッドを優先した」「当初は紙芝居的だったが日本昔話から離れてより抽象化させた」。 これで物語が冷たくなったのかも? 「昔は月光の存在が大きかった」。 現代人にとっては羨ましい。 「これからも東京バレエ団で再演したい」。 などなど。 日本昔話の抽象化や月光の世界に馴染むことは必要ですね。 「かぐや姫はなぜやって来たのか、そして帰って行ったのか?」。 観客がそれぞれの答えを見つけ出せたらより面白くなります。 *舞団、 https://www.nbs.or.jp/stages/2023/kaguya/ *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、金森穣 ・・ 検索結果は34舞台 .

■ジュリオ・チェーザレ

■作曲:G・F・ヘンデル,指揮:鈴木優人,演出:佐藤美晴,出演:ティム・ミード,森麻季,マリアンヌ・ベアーテ・キーラント他,管弦楽:バッハ・コレギウム・ジャパン ■神奈川県立音楽堂,2023.10.14 ■オペラはセミ・ステージ形式が矢張り最高! 演奏者や器楽が観客に見えると親近感が増すからよ。 古楽器を使うこの作品は特にね。 音源と器が目で結び付けられるのが楽しい。 歌唱も演奏も余裕がみえた。 たぶん全国公演最終日だから? しかも、こんなにも繊細な作品とは知らなかった。 これは再発見ね。 字幕も鍛えられている。 文字数は多いが脳にしっかり届いている。 自然描写や人間の悲しみ・苦しみが歌唱に乗せて伝わってくる。 指揮者と演奏者の親密さがこれを可能していたと思う。 大劇場では味わえない。 チェザーレの細やかな心情は歌手ティム・ミードにも負っているようにみえる。 衣装も立派。 クレオパトラは3・4回着替えたかしら? 歌手森麻季はヘアも似合っていて期待されるクレオパトラ像を演じ喝采を受けていた。 舞台には楽団を取り囲んだ道ができていて歌手の動きや演技も言うことなし。 サービス満点だったわよ。 *音楽堂室内オペラ・プロジェクト第6弾 *劇場、 https://www.kanagawa-ongakudo.com/d/cesare2023

■失われた歴史を探して

■作:金義卿,脚色・演出:金守珍,趙博,出演:趙博,大久保鷹,水嶋カンナ他,劇団:新宿梁山泊 ■スズナリ,2023.10.12-15 ■関東大震災朝鮮人虐殺事件を扱った舞台です。 東京下町で工場を営んでいる田中一家と朝鮮人従業員がこの事件に巻き込まれていく・・。  家族や従業員と事件の両方を描くには粗すぎる展開です。 息子俊行と従業員キムの娘スンギの恋愛も忙しい。 特に、軍国主義に染まっていた息子の心情を追うことができない。 つまり事件を説明し過ぎた。 それは既に100年が経ち公文書記録も多く残っているのに、松野官房長官が「記録が見当たらない」と発言したり、小池都知事は追悼文を中止するなど、政府・行政が誠実に向き合って来なかったからです。 この状況を崩すため、現代女子の歴史探訪を劇中劇にして「失われた歴史を探して」いくのを止めてはいけない! こう言っている舞台にみえる。 幕間での趙博の裏話に一息つけました。 *新宿梁山泊第75回公演 *CoRich、 https://stage.corich.jp/stage/277828 *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、金守珍 ・・ 検索結果は13舞台 .

■修道女アンジェリカ ■子どもと魔法

□修道女アンジェリカ■作曲:G・プッチーニ,指揮:沼尻竜典,演出:粟國淳,出演:キアーラ・イゾットン,齊藤純子,塩崎めぐみ他,管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団 □子どもと魔法■作曲:M・ラヴェル,指揮:沼尻竜典,演出:粟國淳,出演:クロエ・ブリオ,斎藤順子,田中大揮ほか,児童合唱:世田谷ジュニア合唱団 ■新国立劇場・オペラパレス,2023.10.1-9 ■「修道女アンジェリカ」は物語が生煮え、タイトルロールのキアーラ・イゾットンのソプラノは旨煮えだったけど。 修道院生活が凡庸なためアンジェリカや叔母の過去が省かれてしまった。 彼女の自殺未遂、そして子どもと再会しても急いで幕が下りる。 1時間をどこに配分するのか? 難しいわね。 「子どもと魔法」は絵本を展開したような楽しい舞台だった。 小道具・大道具の出来栄えに目がいってしまう。 ダンスも映える。 子どもが残酷な(ようにみえる)のは当たり前。 虫や花をいじめ、犬や猫をからかい、道具を壊す。 彼らが子どもを諭すのは分かるが最後は母に向かうしかない。 拍子抜けな物語だった。 前回のダブルビル「フィレンツェの悲劇」と「ジャンニ・スキッキ」の喜劇と悲劇は互いを引き立てていた。 今回は母子を結びつけようとしたのね。 前者が子供を後者は母を直接登場させなかったのは面白い。 でも母子へ向かっていくベクトルが細かった。 それは(母子の)周囲に気を使い過ぎたせいかも。 ところで今日は満席でホワイエも賑わいが戻ったし、新シーズンが無事に進んでいくのを祈りましょう。 *NNTTオペラ2023シーズン作品 *劇場、 https://www.nntt.jac.go.jp/enjoy/record/detail/37_026404.html *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、粟國淳 ・・ 検索結果は3舞台 .

■ハムレットマシーン2023

■作:ハイナー・ミュラー,演出:岡本章,出演:岡本章,櫻間金記,劇団:鍊肉工房 ■上野ストアハウス,2023.10.4-9 ■何も無い舞台だ、が客席近くにディスプレイが床に寝かせてある。 水が流れている映像?・・泡がゆっくり動いている。 暗いなか岡本章が蠢き科白を発する。 「・・ハッ、ハッ、ハムレットダッタ!」。 独特な発声が劇的さを呼び込む。 そして能面姿の櫻間金記がウェディングドレスに着替えてオフィーリアに・・。 弦で空間を切り裂く音、鼓の響き。 緊張感漂う舞台だ。 コラージュ作品だが台詞がビシビシと伝わってくる。 社会主義時代東欧の動乱も記憶に浮かぶ。 演出家の挨拶文に・・ 1.言葉を再構成し朗唱にして身体に語らせた。 2.美術で無の時間、音楽で即興を重視し舞台を異化し続けた。 3。夢幻能を取り込んで成仏できない死者の声・姿を出現させた。 などなど。 この3点は巧く融合できていたと思う。 しかも背景をシンプルにしたので効果が高められていた。 先日観た「 アカイツキ 」と客層は同じだが男女比が逆転している。 今日は男性が7割か? ・・。 久しぶりに上野駅を散策する。 夏休みに田舎へ帰っていた時代を思い出してしまった。 *劇場、 https://storehouse.ne.jp/line_up.html *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、岡本章 ・・ 検索結果は5舞台 .

■能楽堂十月「呂蓮」「呉服」

*国立能楽堂十月定例公演の□2舞台を観る. □狂言・和泉流・呂蓮■出演:佐藤友彦,鹿島俊裕,今枝郁雄 □能・宝生流・呉服(作物出)■出演:東川光夫,小倉健太郎,則久英志ほか ■国立能楽堂,2023.10.4 ■「呂蓮(ろれん)」は<この世>と<あの世>はどちらが大事か?を問う。 人はこれで悩む時がある。 出家を決意した夫だが、妻が登場した途端に悩み事を引っ込めてしまった。 凡人にとって<この世>は強すぎる。 機織りは5世紀頃に呉国から日本に伝わったらしい。 そのときに渡来した縫工女(きぬぬいめ)の呉服織(くれはどり)と漢服織(あやはどり)の二人を主人公にした作品が「呉服(くれは)」である。 この作品はデュオの効果が出ている。 二人が登場し橋掛かりで向き合ってじっとしている場面はなかなかの感動モノだ。 二人の立ち位置が想像できる。 そして中ノ舞も面白い、ちょっと固さはあったが。 面はシテが泣増(なきぞう)ツレが小面(こおもて)。 登場した時はどちらがシテか分からなかった。 物語が進むにつれて面の違いに納得、それは泣増には遠い故郷への複雑な思いが表れているから、かもしれない。 十月に入り謡も囃子も裃を外して登場、公演もダブルビルに戻ったので集中力を落とさず観ることができた。 *劇場、 https://www.ntj.jac.go.jp/schedule/nou/2023/10158.html?lan=j

■能楽堂九月「芭蕉」「文蔵」「望月」

*国立能楽堂九月公演の□3舞台を観る. □能・観世流・芭蕉■出演:観世恭秀,宝生常三,茂山七五三ほか □狂言・大蔵流・文蔵■出演:茂山千五郎,茂山茂 □能・宝生流・望月■出演:武田孝史,野月聡,福王茂十郎ほか ■国立能楽堂,2023.9.30 ■僧が法華経薬草喩品(やくそうゆぼん)を読誦し、「芭蕉」の精と共に草木成仏・女人成仏を論じ諸法実相へ導かれていく。 作者金春禅竹の思想が窺える。 これはSDGsやLGBTQなどの現代にも繋がりそうだ。 興味を持って観たが舞台はしかし応えてくれない。 シテの声が細く動きも鈍い。 これは演出なのか? 儚い芭蕉葉らしく描いたのか? おおらかな自然崇拝の世界へ浸かることができなかった。 期待を持ち過ぎたかな。 「文蔵」は1180年石橋山での源平合戦が語られる。 武将たちの衣服や装飾品から姿・形がありありとみえてくる。 当時の美術品を観賞しているようだ。 美術館とのコラボでも似合う。 「望月」は武士の敵討ちのためか歯切れが良い。 小方花若の鞨鼓(かっこ)、友房の獅子舞など芸尽くしが続く。 役者たちの途中の退場も巧い。 気持ちよい観後感だ。 *開場40周年記念公演 *劇場、 https://www.ntj.jac.go.jp/schedule/nou/2023/9-403.html?lan=j

■ベジャール・プログラム

*パリ・オペラ座バレエの以下□3作品を観る. □火の鳥■振付:モーリス・ベジャール,音楽:イーゴリ・ストラヴィンスキー,出演:マチュー・ガシオ,フロリモン・ロリュー他 □さすらう若者の歌■振付:M・ベジャール,音楽:グスタフ・マーラー,出演:オードリック・ベザール,フロラン・メラック他 □ボレロ■振付:M・ベジャール,音楽:モーリス・ラヴェル,出演:アマンディーヌ・アルビッソン他 ■NHK・配信,2023.9.17-(パリオペラ座・バスチーユ,2023.5.19・25収録) ■モーリス・ベジャールの60分3作品だが満足度100%です。 締めに「ボレロ」を持ってきたので後味は最高でした。 実は「火の鳥」の粗筋を初めて知りました。 パルチザン闘争を描いていたとは驚きです。 マシュー・ガシオは出足は生煮えでしたが演奏が強まるとエンジンはフル回転ですね。 「さすらう若者の歌」はマーラー自身の作詞らしいが男性デュオと詩の関係がよくわからない。 若者の表裏つまり一人二役? 一人は若者の親友? それとも同性愛? どれにしろ二人のソリストに文句はありません。 そして「ボレロ」のアマンディーヌ・アルビッソンは初めてみる。 宝塚歌劇団なら男役でしょう。 どっしりしていて貫禄十分でした。 ところでベジャールの誕生日は1月1日ですか? おめでたい! *NHK、 https://www.nhk.jp/p/premium/ts/MRQZZMYKMW/episode/te/7W1PQVJG2V/    

■アカイツキ

■作:別役実,演出:益田俊子,富永由美,出演:富永由美,別府康子,久保酎吉,劇団:旧眞空鑑 ■中野スタジオあくとれ,2023.9.21-9.24 ■このスタジオは60名は入れるようだ。 満席に近い。 いつもの下高井戸アトリエは暗くて20の客席しかなった。 明るいなかで沢山の観客を見るのは初めてだ。 多くは70歳代後半にみえる。 いつも行く能楽堂でさえもっと若い・・。 男性が少ないのは健康寿命を既に越えているからだろう。 野口体操の生徒が多いのか? 昔からの劇団ファンもいるのか? どこからこんなに婆がやってきたのか不思議だ。 異様な雰囲気と言ってよい。 登場する役者三人も80歳は越えているはずだ。 役者の実年齢がそのまま舞台年齢になっている。 カーテンコールで「1989年、別役実に書き下ろしてもらった作品をやっと上演できた」と演出家が言っていた。 この時期が来るまで待っていたかのようにも受け取れる。 役者たちは饂飩の入ったどんぶりを持って登場し、それを終幕まで食べ続けるという高度な演技をみせてくれる。 <食う>ことも惰性になり<生殖>の喜びも減衰していくなか、狩猟時代にみたであろうアカイツキが微かに記憶に甦る。 老人たちの達者な言葉が衰えた肉体と共鳴して彼らを道化に変身させる。 人間とはいかなるイキモノなのか!? 生身の言葉と肉体の醜さのなかにどこか安堵の気持ちを覚える。 演劇の真髄が滲み出ていた。 WEBを調べていたら土井通肇が今年初めに亡くなっていたことを知る。 享年85歳。 1960年代から演劇活動を担った人々が亡くなってきている。 とても寂しい。 ちなみに旧眞空鑑で私が選んだベスト3は「海ゆかば水漬く屍」(1983年)「いき座の芝居」(1986年)「この道はいつか来た道」(2014年)。 *旧眞空鑑第34回公演 *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、富永由美 ・・ 検索結果は4舞台 .

■舞台神聖祭典劇 パルシファル

■作曲:R・ワーグナー,演出:ジェイ・シャイブ,指揮:パブロ・エラス・カサド,出演:アンドレアス・シャーガー,エリーナ・ガランチャ,ゲオルク・ツェッペンフェルト他,演奏:バイロイト祝祭管弦楽団 ■NHK・配信,2023.9.10-(バイロイト祝祭劇場,2023.7.25収録) ■演出がMIT教授のジェイ・シャイブということで早速観ることにしたの。 しかも拡張現実を使用するらしい。 でも場内の観客を見ても3Dメガネを掛けているようには見えなかった。 観始めて5分も経てばそのことはどうでもよい。 すぐに壮大な物語にのめりこんでいく・・。 ・・でもいつもの調子に乗れない! この作品を自宅でみるのは初めての為かな? 全体より部分が強調されてしまう。 劇場とは逆ね。 例えば2幕、クンドリとパルシファルのやり取りをじっくり受け止めてしまった。 もう一つは字幕のせいかな? 文字数が微妙に多い。 キリスト教信仰があれば処理できるはず。 でもこれができない。 意味や背景を考えてしまう。 この二つで言語的世界に近づいてしまい、いつものワーグナー的感動に浸れなかった。 舞台美術や衣装で驚きはあったが作品に寄り添っていた。 疲れ果てた世界を背に薄汚れた衣服をまとう歌手たち。 無難な発声のパルシファルやグルネマンツと、安定したソプラノのクンドリが「共苦して知に至る」・・。 演奏中の指揮者は汗だくのTシャツを2度着替えたがカーテンコールでは正装で登場。 4時間を中年力で乗り越えた。 ワーグナーは総合力で勝負ね。 いろいろあったけど楽しかったわよ。 *バイロイト音楽祭2023作品 *NHK、 https://www.nhk.jp/p/premium/ts/MRQZZMYKMW/episode/te/615ZJKX428/

■コンサート・フォー・ジョージ

■監督:デヴィッド・リーランド,出演:エリック・クラプトン,ダニー・ハリスン,ポール・マッカートニー,リンゴ・スター他 ■川崎アートセンター,2023.9.9-(ロイヤル・アルバート・ホール,2002.11.29収録) ■エリック・クラプトンをまとめ役にした、ジョージ・ハリソンのトリビュートコンサートのドキュメンタリー映画です。 ジョージの朋友が勢揃いですね。 20曲前後の構成で舞台はとても和やかでした。 中央にクラプトンはもちろん、その横でジョージの息子ダニー・ハリソンが演奏する。 ダニーは父親にそっくりじゃないですか!? そして前半途中でリンゴ・スターが登場。 「ハニー・ドント」を歌うリンゴは懐かしい。 途中モンティ・パイソンとトム・ハンクスが笑わせます。 後半に入りポール・マッカートニーが登場。 数曲を歌うが、リンゴもポールも目立たないようにしている。 これで逆に深みと濃くが舞台に出ています。 ラヴィ・シァンカールは新曲?を発表し、「ホワイル・マイ・ギター・ジェントリー・ウィープス」でポールとクラプトンが締めます。 最高の舞台でした。 「この公演をジョージが喜ぶか否かはわからない」。 クラプトンは言っている。 しかしジョージがこの会場に居るのを感じました。 *映画com、 https://eiga.com/movie/99595/ *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、ジョージ・ハリスン ・・ 検索結果は3作品 .

■木ノ下歌舞伎・勧進帳

■監修:木ノ下裕一,演出:杉原邦生,出演:リー5世,坂口涼太郎,高山のえみ他 ■東京芸術劇場・シアターイースト,2023.9.1-24 ■舞台を中央に置き両端に客席の構造は親近感があり観易いですね。 黒衣装の役者が登場したときは義経側それとも富樫側? 両者の部下は弁慶を除き一人二役でどちらの側にも付く。 これは面白い。 役者の動きも、現代口語風の科白も、とても練れています。 完成度が高い。 そして山伏最後の勤行で弁慶が法を語る場面、義経を打擲したあとのラップ風歌踊の場面は盛り上がりました。 同時に<境界>を越えるには非日常的な力が必要なこともです。 しかし終幕の酒宴後の富樫の心の内がはっきりしない。 義経と知って見逃したのなら、その理由らしき表現が出来ていれば後味はもっと良かったはずです。 *劇場、 https://www.geigeki.jp/performance/theater331/ *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、杉原邦生 ・・ 検索結果は10舞台 .

■ベスト・オブ・エネ三ーズ

■監督:ジェレミー・ヘレン,原作:ジェームズ・グレアム,出演:デヴィド・ヘアウッド,ザカリー・クイント他 ■TOHOシネマズ日本橋,2023.9.8-(ロンドン,2023年収録) ■1968年は日本でのエンタープライズ寄港反対運動で始まり、ソンミ村虐殺事件でベトナム戦争泥沼化、キング牧師暗殺、「いちご白書」のコロンビア大学紛争、パリはカルチェラタンで学生市街戦、ケネディ司法長官暗殺、再び日本では東大安田講堂占拠学生排除、全学連新宿駅占拠、米国に戻り共和党ニクソンが大統領当選で年の幕が閉じる。 この騒乱の1968年を背景に舞台では保守派ウィリアム・バックリーとリベラル派ゴア・ビダルのテレビ討論が繰り広げられる。 演出家は「メタファーとしてボクシングを想定している」と言っている。 場所も流れも正しくボクシングですね。 調べると特にゴア・ビダルは今からみても曲者です。 舞台上のゴアは2023年の現代に合わせての誇張し過ぎにみえる。 対するバックリーは保守の姿が見え難い。 政治対談としての緊迫感は少ない。 この作品は実話から作られ、そのドキュメンタリー映画もあるらしい。 その映画を見てみたいですね。 50年前の話だが舞台より過去そのものが生き生きと今も残っているはずです。 でもこの舞台から、当時発生した政治分断が成長し現在に繋がっていたことが分かりました。 *NTLナショナル・シアター・ライブ作品 *映画com、 https://eiga.com/movie/99199/ *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、ジェレミー・ヘレン ・・ 検索結果は2舞台 .

■能楽堂九月「枕滋童」「月見座頭」「船弁慶」

*国立能楽堂九月公演の□3舞台を観る. □能・金剛流・枕滋童(前後之習)■出演:金剛龍謹,則久英志,野口能弘ほか □狂言・大蔵流・月見座頭■出演:大藏彌右衛門,大藏彌太郎 □能・宝生流・船弁慶(後之出留之伝・語入・名所教)■出演:宝生和英,藪俊太郎,福王和幸ほか ■国立能楽堂,2023.9.9 ■小書「前後之習」が入る「枕滋童」は初めて観る。 いつもは慈童を探す魏(200年頃)の時代から始まる。 小書きは周(前500年頃?)の時代まで遡り童子が追放される場面が加わる。 これで物語が深まった。 しかし「孤独を抱えた慈童の心情が隠されている」ようには見えない。 700年を心から楽しく暮らしてきたような姿だった。 霊水の力が強すぎたのかもしれない。 シテ面は「童子(どうじ)」。 「月見座頭」は衝撃的な舞台だ。 盲目への差別が人間というより生物生存に近いところから発生している。 生存するための優位性を保持するための行動に通じる。 盲目者も生存の強かさを持っている。 考えさせられる作品だ。 「船弁慶」は楽しかった。 小書サービスが盛りだくさんで現代のエンタメに繋がる舞台だった。 子方義経は異化効果を持つ。 静御前の舞も陶酔感が持てた。 知盛怨霊との対比が際立つ。 一人二役の面白さが出ていた。 船を漕ぐ船頭をみていると舞台が瀬戸の海に変わっていくのを感じた。 「風流能」と言われるこの作品を200%堪能した気分だ。 シテ面は「増女(ぞうおんな)」から「霊怪士(りょうのあやかし)」へ。 *開場40周年記念公演 *劇場、 https://www.ntj.jac.go.jp/schedule/nou/2023/9-40.html?lan=j

■能楽堂九月「翁」「清経」「栗焼」「山姥」

*国立能楽堂九月公演の□4舞台を観る. □観世流・翁■出演:観世清和,野村萬斎,観世三郎太ほか □能・観世流・清経(恋之音取)■出演:大槻文藏,大槻裕一,福王茂十郎ほか □狂言・和泉流・栗焼■出演:野村万作,野村太一郎 □能・金春流・山姥(波濤ノ舞)■出演:金春安明,金春憲和,飯冨雅介ほか ■国立能楽堂,2023.9.6 ■今日の客の年齢はいつもより15歳若い。 その老若男女の比もばらけている。 40周年記念公演で出演者もピカイチのためか? 「翁」は素晴らしかった。 力強く切れ味の良い千歳ノ舞、揉ノ段、鈴ノ段は特に気に入る。 面は「白色尉(はくしきじょう)」と「黒色尉」。 作家名が記されていた。 有名な面らしい。 「清経」は笛方の秘事と言われている小書「恋之音取」が入った。 シテの出が吹奏にあわせ10分もかかる。 この作品は<夫婦の哀話>と<世の無常>を表現していると言われているが、小書により前者に傾いてしまった。 後者に傾く演出の方が好きなのだが。 シテ面は「中将」ツレが「小面」。 「栗焼」の太郎冠者は無駄のない淡泊な芸で舞台が濁らない。 「翁」を含めて今日は世襲の力も感じる。 「山姥」に入ると(私に)疲れが出てしまった。 世阿弥に出会った時のいつもの高揚感がやってこない。 心身がオーバーフローしてしまった。 情報過多の時代、続けて観るのは狂言を挟んで3作品が限界だろう。 *開場40周年記念公演 *劇場、 https://www.ntj.jac.go.jp/schedule/nou/2023/9401.html?lan=j

■TOTEM、真空と高み

■演出:天児牛大,美術:中西夏之,音楽:加古隆,吉川洋一郎,出演:蝉丸,竹内晶,市原昭二ほか,山海塾 ■世田谷パブリックシアター,2023.8.30-9.3 ■体を捻くり転がっても肉体の匂いが無い。 腕をあげトーテムを指し示す姿はまさに宇宙人です。 中西夏之の作品がトーテム?として中央に置いてある。 意味深ですね。 音楽が重厚でダンサーの動きは抑えられている。 このため同じような振付が続き面白さに欠けます。 たぶん、演出家は中西夏之に縛られてしまったのでは? 章間は音楽が数秒止まるがここは繋げたいですね、高揚感が途切れない為です。 終幕、一人のダンサーが舞台中央から外れて周囲をゆっくり踊り動いていた。 ここは舞踏だ!と感じました。 久しぶりの山海塾です。 顔見知りのダンサーが二人しかいなかった。 あとの6人は新人ダンサーですか?白塗りだとよくわからないが。 近頃は舞踏を観る機会が少なくなっています。 若いダンサーが沢山登場すると元気を貰えます。 *劇場、 https://setagaya-pt.jp/stage/4809/ *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、天児牛大 ・・ 検索結果は6舞台 .

■影のない女

■作曲:R・シュトラウス,演出:リディア・シュタイアー,指揮:キリル・ペトレンコ,出演:クレイ・ヒリー,エルザ・ファン・デン・ヘーヴァー,ミヒャエラ・シュスター他,演奏:ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 ■NHK・配信,2023.8.20-(バーデン・バーデン祝祭劇場,2023.4.5・9収録) ■この作品は2022年2月に二期会で公演中止になっている。 クラウドファンディングも支援したので2024年公演は期待したいわね。 ・・天上界の皇后には影がない。 そこで彼女は人間界に降りて染物屋の女房の影を貰い受けようとする話なの。 影が無いと子供が産めない、かつ夫である皇帝が石になってしまうから。 でも染物屋夫婦の人間愛をみて影を貰うのを結局は諦めてしまう・・。 孤児院?の少女の夢が舞台に出現しているらしい。 赤ん坊(人形)がたくさん登場するのは出産や養子などを抽象表現しているのかしら?  影とは人間が持つ愛や性や生(出産)の闇の部分かもしれない。 それを最後は神が認める。 200分の大作で内容も複雑だわ。 観るのは初めてだが「ばらの騎士」の延長線上の楽曲かな? 派手に動き回る少女の演技で気が散ってしまったのが残念、シュトラウスのなんとも言えない気分が壊れてしまった。 でも染物屋の夫婦場面はどれも楽しかったわよ。 *バーデン・バーデン復活祭音楽祭2023作品 *NHK、 https://www.nhk.jp/p/premium/ts/MRQZZMYKMW/episode/te/XW66JXZPZ8/ *追記・・「池袋西武デパート売却」を昨日のニュースで知る。 高校迄は渋谷、大学は新宿、そして社会へ出て池袋へ。 それはセゾン文化に出会ってしまったからよ。 西武(セゾン)美術館・アールヴィヴァン・スタジオ200・パルコ劇場・パルコスペース・銀座セゾン劇場・・、どれも記憶に残る美術館や劇場だわ。 セゾンは1990年代から下り坂、2000年に入り7&iが西武を買収。 7&iは日本の消費者は所得差が小さいのでコンビニも百貨店も同じだと考えた(?)。 この延長に今回の売却があったのね。 今やデパート(経営者)は文化生成に必要な反骨精神を持つことさえ無い。

■能楽堂八月「八尾」「楊貴妃」

*国立能楽堂八月企画公演の□2舞台を観る. □狂言・大蔵流・八尾■出演:大藏基誠,善竹隆平ほか □能・宝生流・楊貴妃■出演:金井雄資,大日方寛,善竹隆司ほか ■国立能楽堂,2023.8.26 ■「蝋燭の灯りによる、魂魄のゆくえ」が企画フレーズである。 狂言「八尾(やお)」は蝋燭にお似合いだ。 舞台は六道の辻。 閻魔大王はやってきた男を地獄へ落そうとする。 しかし彼が持っていた地蔵菩薩からの手紙で大王の態度が一変する・・。 早速調べたら閻魔大王は地蔵菩薩の化身と(一説には)ある!? 舞台では二人は幼友達らしい。 これは複雑な関係だ。 仏教救済システムは不思議なところがある。 「楊貴妃」は玄宗皇帝に仕える方士が楊貴妃の魂魄を探しにいく話である。 楊貴妃の居る常世の国とは何か? 仏教からは離れている。 科白には道教思想が感じられる。 このため独特な雰囲気がある。 蝋燭に似合う作品か迷うところだ。 舞台を明るくしても面白いだろう。 金春禅竹ファンタジー物語と言ってよい。 小書は「玉簾(たますだれ)」、シテ面は節木増(ふしきぞう)。  *劇場、 https://www.ntj.jac.go.jp/schedule/nou/2023/8136.html?lan=j *追記・・近頃は正面席を選んでいる。 しかし右壁からの空調機の風の流れがもろに当たる。 観劇中に流れを感じるのはよくない。 調整できるか劇場に聞いてみよう。

■ランボー詩集、「地獄の季節」から「イリュミナシオン」へ

■振付:勅使川原三郎,出演:佐東利穂子,アレクサンドル・リアブコ,ハビエル・アラ・サウコ,勅使川原三郎 ■東京芸術劇場,2023.8.11-13 ■「詩をダンスにすることではない・・」。 振付家が詩から受けた衝動を舞台化した作品のようです。 いつもの二人に、新たに二人が加わる。 その二人は佐東利穂子と同じ位置づけのようです。 つまり主旋律の勅使河原三郎と副旋律が3人の構造ですか? 舞台中央に本を立ててページが捲れている大きなオブジェが置かれている。 ダンサーがページとページの間に隠れたり現れたり動き回る。 パフォーマンス寄りの高い作品ですね。 音楽は多くの断片から成り凝っています。 オラトリオ系(?)が多いのは振付家のランボー解釈でしょうか? 照明も暗さを基調にしながらも同様に凝っている。 そして勅使川原に感情の沁みだした振付がときどき見受けられます。 床を足でたたく、横になり藻搔く、・・、詩から受けた影響がみえる(?)。 いつもはまとめている佐東の髪を乱したのも同等でしょうか? 精神面が強調されている舞台です。 でも観る側がランボーを意識し過ぎるのも良くない。 いろいろ考えながらみてしまうからです。 気軽に楽しめる舞台ではなかった。 *劇場、 https://www.geigeki.jp/performance/theater339/ *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、勅使川原三郎 ・・ 検索結果は12舞台 .

■WEー入口と世界の出口

■演出:小池博史,出演:松島誠,今井尋也,福島梓ほか,美術:山上渡,音楽:下町兄弟,衣装:浜井弘治,映像:白尾一博 ■EARTH+GALLERY,2023.8.1-11 ■舞台は幅6mX奥14mの立方体で壁には落書(科白など)が描かれている。 客席は50名前後、その後方には数人が座れるのバーらしき一角がある。 4人の役者は歌ありダンスありで科白を喋り動き回る。 また天井から吊るされたカメラと映写機を持って互いに映し映される。 演奏担当が下手に座っているが小道具なども操作します。 台詞・歌唱・ダンス・映像・演奏の夫々は支離滅裂に見え聴こえるが、全体は調和しています。 とても練られている舞台ですね。 色調も無彩色系でまとまっている。 街の模型が片隅に置いてあり、それを映像化するとウクライナの戦場の街を俯瞰しているようにみえる。 後半は能楽の小鼓を持ち出し、謡や声明、オノマトペまで飛び出す。 このため組織を問題にしているようなストーリーは意味不明です。 しかし演出家が<組織>に気を使っていることも感じられる。 でも、これらを乗り越えて一つの完成された芸術作品をみているようです。 舞台感動がイマイチなのは役者身体が映像に負けてしまっているからでしょう。 生身と映像の役者のどちらを見るか? それは映像の役者を追ってしまう。 そのとき大事なものが発散してしまうように思える。 アフタートーク(小池博史・松島誠)を聴く。 「・・映像を前面に出した作品である」。 装置の動かし方や、特に鏡を巧く使っていました。 「・・音楽が貧弱にならないようにした」。 ジャンク音楽だが役者や映像にピタリと寄り添っていましたね。 舞台をまとめていた要でしょう。 役者たちも熱演です。 当プロジェクトがどのように進むのかこれからが楽しみです。 *小池博史ブリッジプロジェクトOdyssey作品 *主催者、 WE‐入口と世界の出口

■魔笛

■作曲:W・A・モーツァルト,指揮:ナタリー・シュトゥッツマン,演出:サイモン・マクバーニー,出演:エリン・モーリー,ローレンス・ブラウンリー,トーマス・オーリマンス他 ■東劇,2023.7.14-27(METメトロポリタン歌劇場,2023.6.3収録) ■演出家サイモン・マクバーニーは2008年の「春琴」を最後にみていない。 2010年以降の彼は映画俳優とオペラ演出に力を入れていたようね。 でも演出は年を追うごとにエントロピーが高くなっていた。 この舞台はその極致にみえる。 生の映像・音響を使用してライブ感覚に重きを置き、擬音・撮影・影絵はもちろん、ピットからはみ出す演奏、通路を渡り歩く歌手・・。 「走り回ったりして動きが大変!」とインタビューで歌手たちは口を揃える。 先日の「ドンジョバンニ」から担当の指揮者シュトゥッツマンは「・・この作品はジョヴァンニと違いより未来的である」。 そこに演出家は「モーツァルトの信念、それは行動や思考を変えること」を舞台に乗せようとした。 「死の暗闇でも明るく進もう!」と。 一つ一つの場面はとても計算されている。 場面の繋ぎは紙芝居をみているようなリズムがある。 それは軽やかな散文詩の歌芝居だわ。 フランス革命のなか、不安と喧騒の1791年の劇場を作り出した! 高エントロピーを巧く操作した指揮者と演出家の目論見は当たりかな? 「魔笛」ほど演出に差がでる作品は珍しい。 でも、W・ケントリッジの落ち着いた演出も捨てたもんじゃない。 *METライブブューイング2022作品 *劇場、 https://www.shochiku.co.jp/met/program/4681/

■領域

*下記の□2作品が上演された. ■めぐろパーシモンホール・大ホール,2023.7.14-16 □Silentium ■演出:金森穣,衣装:宮前義之,音楽:アルヴォ・ペルト,出演:金森穣,井関佐和子 ■「二人だけで踊り続けたことはない」。 Noismの舞台では初めてらしい。 蝋燭台が下手に置いてあり、所々に落ちてくる砂の中で金森穣と井関佐和子は踊り続ける。 三宅一生を少しばかり修飾した金色の衣装がハレを感じさせます。 二人が向き合う、というより二人が同じ方向へ進んでいく過程を描いたようにみえます。 至福の時を持てました。 □Floating Field ■演出・振付:二見一幸,衣装:堂本教子,音楽:ドメニコ・スカルラッティ,7Chato,出演:浅海佑加,井本星那,三好綾音ほか,舞団:Noism1 ■「境界」(2021年)は山田うんがNoismへ振付けた。 今回の「領域」は二見一幸です。 山田と二見は金森とは真逆な舞台をつくる。 前者二人は世俗で後者は超俗と言ってよい。 前者の世俗は個人と組織(社会)にまた分かれる。  つまり二見は世俗で組織な舞台です。 具体的には会社のようなものを想起させる。 衣装は例えばスーツになり、振付は組織での人間関係が見え隠れする。 途中ピアノ場面があったが気に入りました。 音楽と振付の一致が私好みです。 ピアノ以外は忙しい。 二見の舞台はこの10年間ご無沙汰していました。 彼をホールでチラッと見たがエネルギッシュな姿には変わりがありません。 *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、二見一幸 ・・ 検索結果は3舞台 . *劇場、 https://www.persimmon.or.jp/series/2023022215145552045.html

■少女都市からの呼び声

■作:唐十郎,演出:金守珍,出演:安田章大,咲姫みゆ,三宅弘城ほか ■ミラノ座,2023.7.9-8.6 ■ガラスに直結する映像と照明を多用しながらも蜷川幸雄を思い起こす群像場面がある。 近未来と近過去を行ったり来たりする展開に眩暈がします。 この夢と現実の大げさな往復が新劇場へ接近していく方法なのですね。 「なんてジメジメした陽気だろう」の幕間劇も外していない。 肥後克広と六平直政が演じる二人老人は楽しい。 終幕の病院待合室でもう一度演じてもよかった。 田口兄妹の安田章大と咲姫みゆは歌唱も巧く主人公にお似合いです。 フランケ博士と看護師の三宅弘城と桑原裕子も力強い演技で広い舞台を引き締めていた。 桑原さん!昨年の「 ロビー・ヒーロー 」面白かったですよ。 そして連隊長がフランケ博士を呼ばないで歌いだすのは余計なお世話です。 先週で花園神社テント公演が終了し、今週から当劇場で、この秋には下北沢で当作品を3連続上演するようです。 ところで今日の終幕はビー玉を転がしましたね。 これを見て思い出しました。 1993年11月スズナリ公演でビー玉を転がしたことをです。 今日はその数100倍でした。 演出家金守珍の意気込みが伝わってきます。 *THEATER MILANO-Zaオープニングシリーズ作品 *COCOON PRODUCTION2023作品 *劇場、 https://milano-za.jp/events/article?id=15

■アダムとイヴ、私の犯罪学

■作:寺山修司,演出:J・A・シーザー,高田恵篤,出演:伊野尾理枝,小林佳太,木下端穂ほか,劇団:演劇実験室◎万有引力 ■ザスズナリ,2023.6.30-7.9 ■初めて聞く作品だが、中身は調べないで劇場にいきました。 トルコ風呂「エデンの園」の2階に間借りする家族4人の物語らしい。 立地や名前の付け方は唐十郎的です。 でも唐とは真逆の方向へ、いつもの寺山世界へ真っ直ぐに落ちていく。 その舞台は幾何学的無機質な造りになっていて床を剥がすとそこは天国・・!? 母親は禁断の果実の林檎をいつも食べている。 旧約聖書を意識して頭巾を被った聖職者も時々登場する。 それにしても話が進まない。 気の利いた台詞が数ヶ所あったが今は思い出せない。 聖書世界と4人の家族の結び付きが見えない為です。 後半、母と子の葛藤が見えてくる。 息子は家出をしたい! ロビンソン・クルーソーになりたい。 母を精神病院に入院させようとする場面が佳境でしょう。 前半は作者の迷い(のようなもの)が感じられた。 印象に残ったのは、家族4人各々の存在感が出ていたことでしょう。 特に母と二人の息子は科白に淀みがなく声も良く動作にも切れがあった。 若すぎる母は色気もあり舞台を華やかにしていた。 息子の一人は若松武史を意識しているのでしょうか? 近頃の万有引力は舞台の隅々まで熟れている。 良い意味でも悪い意味でも安心して観ていられます。 *寺山修司没後40年記念公演第2弾 *CoRich、 https://stage.corich.jp/stage/260731 *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、高田恵篤 ・・ 検索結果は8舞台 .

■能楽堂七月「魚説経」「阿漕」

*国立能楽堂七月普及公演の□2舞台を観る. □狂言・大蔵流・魚説経■出演:善竹十郎,大藏吉次郎 □能・金剛流・阿漕■出演:今井清隆,宝生常三,茂山千三郎ほか ■国立能楽堂,2023.7.8 ■先ずはプレトーク「原罪としての殺生」(宮本圭造解説)を聴く。 仏教の不殺生と不所有から2作品を解説する。 仏教の教えが芸能に残った理由は人々の罪を能・狂言が背負った為である。 しかも舞台に乗せることで聖なる領域に入り易くなる。 仏教と芸能のウィンウィン関係である。 「魚説経(うおせっきょう)」は60もの魚名が登場する。 仏教パロディの極致と言ってよい。 「阿漕(あこぎ)」はシテの科白が多いので最後まで緊張が続いた。 前場でシテが嵐の海に沈んでいくようす、後場では網を仕掛けてから橋掛り三の松まで魚を追い求める姿は、まさに「・・罪の所業を再現し、懺悔してこそ霊魂は浄化する」(村上湛)とおりである。 シテはこれからも地獄で苦しむようだが、久しぶりのスカッとした舞台だった。 ジメッとした7月を吹き飛ばした。 シテ面は三光尉から痩男へ。 *劇場、 https://www.ntj.jac.go.jp/schedule/nou/2023/7154.html?lan=j *追記・・盲導犬を連れた客を見る。 私と同列の端二席(犬用も)に座ったが、(犬好きの私だが)今日は犬に挨拶するのはやめておいた。

■能楽堂七月「水掛聟」「砧」

*国立能楽堂七月定例公演の□2舞台を観る. □狂言・大蔵流・水掛聟■出演:山本則孝,山本東次郎,山本凛太郎 □能・観世流・砧(梓之出)■出演:観世銕之丞,観世淳夫,福王茂十郎ほか ■国立能楽堂,2023.7.5 ■「水掛聟(みずかけむこ)」は舅(しゅうと)と聟(むこ)の喧嘩話である。 ここに嫁が入ってきて三角関係が出来上がる。 狂言はこの話に事欠かない。  「砧(きぬた)」は世阿弥の自信作と聞いている。 ・・夫が所用で都から帰らない、妻は待ちわびているが。 そのうち妻は恋慕の病で亡くなってしまう・・。 夫は律義だが妻をどう思っているのか一言も語らない。 妻は夫に裏切られたと思っている。 意味深な夫婦にみえる。 幽霊になった妻が夫に迫るが夫は手を合わせるだけだ。 そして梓弓を鳴らし法華経を唱え妻の亡霊を成仏させる。 面はシテが深井から痩女へ、ツレは小面。 ワキとツレ、ツレとシテの対話は具体的である。 しかし地謡の占有率が高い。 しかも役者たちは、歩きは多いが動きは少ない。 より存在が際立つ。 これらが重ね合わされて地謡の抽象と対話の具体が融合し独特な言葉世界が出現する。 後場には太鼓も入った囃子がこの世界に加わる。 観世銕之丞の周りに福王茂十郎、山本東次郎を配して万全を期した。 世阿弥の自信は総合力の賜物からくる。 夫は都に行ってロボットになってしまった。 だがしっかり義務を果たす。 義務は愛である。 作品はその重厚さが溢れている。 世阿弥はロボット愛を追求した。 これは未来の物語である。 *劇場、 https://www.ntj.jac.go.jp/schedule/nou/2023/7153.html?lan=j

■ある馬の物語

■原作:レフ・トルストイ,脚本・音楽:マルク・ロゾフスキー,詩:ユーリー・リャシェンツェフ,翻訳:堀江新二,音楽:国広和毅,演出:白井晃,出演:成河,別所哲也,小西遼生,音月桂ほか ■世田谷パブリックシアター,2023.6.21-7.9 ■「 戦火の馬 」は等身大パペットだったが、今日は・・? 役者がそのまま馬になる! ・・的確に表現されています。 嘶きも、尻尾の動かし方も巧い。 なぜか手塚治虫を思い出してしまった。 その作品名が思い出せない。 トルストイの名も久しぶりに耳にしました。 舞台は「人生は何をもって充足したと言えるのか?」を追求している。 この問いも懐かしい。 馬のホルストメールとセルプホフスコイ侯爵の生まれ出会いそして老年から死までが語られる。 終幕、二人(馬と人ですが)の人生の充足度を比較して幕が下りる。 侯爵の生き方は現代的です。 観察は鋭く資産は有るが愛人と過ごし家族を作らない。 しかし老年は惨めな姿になる。 このような生き方があったとは驚きです。 でもロシアの伝統かもしれない。 プーシキン「 エフゲニ・オネーギン 」やチェーホフではよく見かける。 またホルストメールが去勢されたときに「風景が一変した!」と語るが、これは男として想像できます。 それより<所有>について疑問を呈する場面です。 所有とは何か? 人生の充足は所有に比例するのか? これを馬に語らせるところが面白い。 舞台は工事現場の様相です。 周囲に足場が組まれ天井からは裸電球が吊り下げられている。 音楽劇のため奏者も役者の位置づけです。 演出家得意の形でしょう。 親密な構造です。 ホルストメールの死が幕開けに演じられるという円環技法が嬉しいオマケです。 帰りにプログラムを購入しました。 でも歌詞が載っていなかったのは残念。 役者の写真がデカ! *劇場、 https://setagaya-pt.jp/stage/1829/ *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、白井晃 ・・ 検索結果は18舞台 . *追記・・「危機の構造」(小室直樹著)をちょうど読んでいるところでした。 50年前の本です。 所有関係を個人から企業・国家まで広げると日本人の<所有概念>は徹底して国際音痴だと書いてある。 例えば、膨大な財政赤字を多くの日本人が許していること等々・・。 財政赤字は私有財産権に対する侵犯

■ドン・ジョヴァンニ

■作曲:W・A・モーツァルト,演出:イヴォ・ヴァン・ホーヴェ,指揮:ナタリー・シュトゥッツマン,出演:ペーター・マッテイ,アダム・プラヘトカ,フェデリカ・ロンバルディ他 ■東劇,2023.6.30-7.6(METメトロポリタン歌劇場,2023.5.20収録) ■演出家と指揮者の名前で観ることにしたの。 演出家はこのブログでもお馴染み、でも指揮者は初めてかしら? 「建物はエッシャーを意識した」。 美術担当が言っている。 それにキリコも入っているかな? 階段とテラスだけの住めない宅、始まりから終わりまで真夜中、薄暗い広場、そこで物語が展開していく・・。 広場をうろつく黒いスーツ・ネクタイ姿の性犯罪者ドン・ジョヴァンニ。 生活の匂いがしない街角から登場する歌手たち。 ここにフリッツ・ラング的犯罪都市の異様な光景が出現するの。 ジョヴァンニ役ペーター・マッティはそれでも甘すぎる。 こうなったらサイコキラーに徹してちょうだい。 演奏と歌唱はドン・ピシャリのモーツァルトよ。 指揮者も気に入ったし、久しぶりのモーツァルトに満足だわ。 でも目(犯罪都市)と耳(モーツァルト)の分断が甚だしい。 そこが新鮮に感じられるけどネ。 身体がジワッと分断されていく不条理な感覚を楽しむ舞台だった、ジョバンニが地獄に落ちた後になんとか取り戻したが・・。 次回の「魔笛」もサイモン・マクバーニー演出だからハチャメチャを覚悟しておかないと。 *METライブブューイング2022作品 *MET、 https://www.shochiku.co.jp/met/program/4680/ *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、イヴォ・ヴァン・ホーヴェ・・ 検索結果は8舞台 .

■ダンス・アーカイヴinJAPAN2023

■新国立劇場・中劇場,2023.6.24,25 *以下の□4作品を観る. □土面■振付:芙二三枝子,責任:馬場ひかり,出演:高瀬譜希子,中川賢,江上万絢ほか ■中劇場でのダンスはそのまま床を利用することが多い。 でも今日はしっかりとした舞台が造られている。 太鼓から始まり法竹、鐘、祈祷など日本の音楽や声を背景に、数十人のダンサーが走り叫び群れ倒れ・・踊る。 新体操のような場面もある。 円形をみてベジャールを思い出した。 これは日本の春の祭典だ。 縄文模様の付いたタイツ衣装も似合う。 古代の祭りの場へワープできた。 スカッと終わらせればなお良かった。 □夏畑■振付:折田克子,責任:千柴孝子,出演:平山素子,島地保武 ■ダンサー二人は知っているが麦藁帽子が大きすぎて顔がみえない。 島地はときどき鍔(つば)をあげ顔を見せてくれる、でも平山は見せない。 褞袍(どてら)も着込んでいるが脱ぎ捨てる。 帽子が踊っているとしか言いようが無い。 □アキコ・カンダ「マーサへ」より三章「運命の道」■振付:アキコ・カンダ,責任:市川紅美,出演:折原美樹ほか ■これは楽しかった。 折原美樹は巧い。 調べると、「空間の詩学」(2001年)は覚えがない。 マーサ・グラームも思い出そうとしたが、そう、重みのある舞台だった? 1990年10月の新宿文化センター公演で、マーサが両腕を抱えてもらいながらカーテンコールに登場したのは鮮明に覚えている・・。 □「バルバラを踊る」よりソロ「黒いワシ」「我が喜びの復活」■振付:アキコ・カンダ,責任:市川紅美,出演:中村恩恵 ■これも気に入った。 中村恩恵と相性が良い作品にみえる。 クライマクスはもう少し派手にしたら盛り上がったと思う。 振付や衣装そして雰囲気はマーサ・グラーム的と言ってよい。 いまマーサの舞台が甦ってきた。 *NNTTダンス2022シーズン作品 *劇場、 https://www.nntt.jac.go.jp/dance/dancearchive/ *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、ダンス・アーカイヴ ・・ 検索結果は4舞台 .

■オセロー

■作:W・シェイクスピア,演出:クリント・ディアー,出演:ジャイルズ・テレラ,ロージー・マキューアン,ポール・ヒルトン他 ■TOHOシネマズ日本橋,2023.6.23-(リトルトン劇場,2023年収録) ■ナショナル・シアタのシェイクスピアは歯切れが良くて気持ちがいい。 いつもそうです。 今回はもう一つの驚きがある。 人種差別や女性差別があからさまに語られる。 現代的にアレンジしている?ようです。 でもキャシオのどんちゃん騒ぎ以降はいつものオセロに近づいていきます。 幕間に演出家たちのトークが入る。 「人種差別や女性増悪は社会構造として組み込まれている」「イアゴもその犠牲者」「デズデモーナとオセロがキスをする場面では見兼ねて席を立つ客がいたり、銃を乱射する者もいた」・・。 出席者は「オセロー」の激しさを語っていたが、終幕でオセロの質問にイアゴが無言で返すのも社会構造のため答えられないのでしょうか? 舞台は三方が階段に囲まれていて野外劇場にみえる。 暗いなか激しい照明で照らされると牢獄のようです、生舞台をみないと何とも言えないが。 イアゴが内心を語る場面が何度も入る。 階段に座っている彼の心の観客が自身イアゴに賛同を送ります。 オセロの内面表現は単純です。 このためイアゴはオセロ以上に目立ちます。 外国版シェイクスピアは差別をはっきり描き出しますね。 これも歯切れの良さの一つです。 日本版は差別に修飾物が纏わりつく。 どちらにしても「オセロー」の面白さは変わりません。 *NTLナショナル・シアター・ライブ2023年作品 *映画com、 https://eiga.com/movie/98397/

■チャンピオン

■作曲:テレンス・ブランチャード,演出:ジェイムズ・ロビンソン,指揮:ヤニック・ネゼ=セガン,出演:ライアン・スピード・グリーン,エリック・オーウェンズ,ラトニア・ムーア他 ■新宿ピカデリー,2023.6.16-22(メトロポリタン歌劇場,2023.4.29収録) ■ボクシングをどのようにオペラに乗せるのかしら? 興味津々ね。 主人公エミール・グリフィスは実在した人なの、でも知らなかった。 1938年ヴァージン諸島の生まれで母を頼ってニューヨークに移る。 そこでボクサーとして見いだされる。 彼はゲイでもあった。 カーニバル、ボクシング、ゲイバー、・・人が集まる場面は素晴らしい。 衣装などのカラフルな色彩、人物の配置や動き、ダンスの振付等々は濃縮度が高い。 ボクシング場面はスローを取り入れたストップ・モーションで描くの。 これは巧い。 歌唱との相性が良い。 プロボクサーの助言もあり違和感が無いわね。 主人公は老人、若者、子供の3歌手一役。 老人の追懐を劇中劇にしている。 この構造も巧い! 老人は認知症なの。 歌手エリック・オーウェンズはこの役を抑制して歌うから本物に近い。 2年前の「ポギーとペス」では体調不良で酷かったが今日の歌唱は老いの味がでていたわよ。 でも若者役ライアン・スピード・グリーンは特徴の無い声ね。 ボクサー体格へ調整したせいかな? そして指揮者はプッチーニを話題にしたが、もはやジャズ風オペラと言ってよい。 若者エミールは対戦相手ベニー・パレットを試合で死なせてしまう。 老人になってもその罪悪感は消えない。 終幕、老人エミールはパレットの息子に出会い罪から解放される・・。 でも彼の苦悩はそれだけでは無い。 「・・ベニーの件を世界は許してくれたが、ゲイということで世界は許してくれなかった」。 彼の言葉よ。 表裏ある贖罪を表裏ある人生で描いていた。 この素晴らしい新作ができたのはMET総合力の賜物だわ。 *METライブビューイング2022作品 *MET、 https://www.shochiku.co.jp/met/program/4679/ *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、ジェイムス・ロビンソン ・・ 検索結果は3舞台 .

■楽園

■作:山田佳奈,演出:眞鍋卓嗣,出演:豊原江理佳,土井志桜央梨,西尾まり他 ■新国立劇場・小劇場,2023.6.8-25 ■「日本のどこかの島」が舞台です。 閉じられた共同体を描こうとしているらしい。 でもそのような世界はどこにもない。 島の子どもたちは都会へ就職・就学をする。 そして訳あっての出戻り。 ときどき助っ人外国人も流れ着く。 ドブ板選挙や村内の噂話、伝統宗教の形骸化・・。 現代日本の生活から摘まみ食いをして、誇張させた舞台にみえました。 しかも噂話や小事件には垢(既視感)が纏わりついてる。 7人の女性が登場するが、二人は外来者です。 一人はカメラマン。 でも彼女の企業も島に似て窮屈な共同体らしい。 もう一人は巫女、神々の代理人です。 しかし「(神は)どこを目印にして降りてきていいかわからない」。 古い共同体の崩壊はショウガナイ? 巫女に呼ばれた神々は何事もなかったように神殿で踊る・・。 個々バラバラのままで如何に生きていくか?を問うている舞台にみえました。 他者と下手に引っ付くのは怖い、上手に引っ付くのも難しい時代です。 個を強くしていくことが当分続きそうですね。 *NNTTドラマ2022シーズン作品 *劇場、 https://www.nntt.jac.go.jp/play/blissful-land/ *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、眞鍋卓嗣 ・・ 検索結果は4舞台 .

■能楽堂六月「惣八」「半蔀」

 *国立能楽堂六月普及公演の□2舞台を観る. □狂言・大蔵流・惣八■出演:丸石やすし,綱谷正美,松本薫 □能・観世流・半蔀■出演:寺井榮,江崎欽次朗,茂山千之丞ほか ■国立能楽堂,2023.6.10 ■「惣八(そうはち)」は就職話である。 求職者の肩書(社会的評価)と本人の得意職種がズレることはよくある。 中世日本のジョブ型雇用制度下で、このズレを持つ雇人の仕事現場が面白く描かれる。 肩書料理人の読経を本物らしくすればもっと良くなる。 「半蔀(はじとみ)」のプレトーク(林望解説)を聴く。 「和漢朗詠集」からの引用が多い為わかり難い作品になっている。 漢詩はメリハリを付ける為だが、謡(発声)はカナが基本なので時代が経つほど誤った漢字が適用されて意味が遠くなってしまった。 それは「この花広林に・・」「草花呂葉として・・」等々に見える。 また「源氏物語」夕顔の冒頭印刷も配布された。 漢詩文と同様に源氏物語からの(イメージに繋がる)引用が多い作品である。 舞台はゆっくりした時間で進む。 謡も囃子もスローテンポだ。 しかし前場はあっというまに終わってしまった。 後場は序之舞が占める。 「源氏物語」を思い浮かべながら観る作品だろう。 プログラムに「雲林院の僧が見た夢」(山中玲子著)が載っている。 ワキ僧が光源氏に重なるように描かれている場面が数か所ある。 しかし「作品全体がワキ僧の夢であり、その夢の中で彼が「源氏物語」を追体験している・・」。 面白い解釈である。 今日は林望と山中玲子に良い意味で掻き回されてしまった。 *劇場、 https://www.ntj.jac.go.jp/schedule/nou/2023/6151.html?lan=j

■能楽堂六月「縄綯」「国栖」

*国立能楽堂六月定例公演の□2舞台を観る. □狂言・大蔵流・縄綯■出演:大藏吉次郎,大藏教義,大藏彌太郎 □能・観世流・国栖(白頭・天地之声)■出演:武田尚浩,武田祥照,武田崇史ほか ■国立能楽堂,2023.6.7 ■「縄綯(なわない)」は昨年3月に観ている。 其時の感想には「バートルビーズ」のことを書いた。 今回は素直に面白かった。 畳み掛けていく悪口も苦にならない。 演者の年齢と演技が時代を遡り、悪口を生きたまま化石化させた為である。 「国栖(くず)」は緩急あるダイナミックな舞台だった。 これは詞章を読むだけでは分からない。 浄御原天皇が子方で舞台は和む。 ワキ三人の上歌も力強い。 鮎之段では鮎の塩焼きの旨さ、また落語「しわい屋」も思い出させる。 天皇が布張りの舟に隠れて追ってから逃れるリアルな場面もある。 天女の舞のあと、バッと飛び出してくる蔵王権現の躍動ある謡と動きに驚く。 シテ面は「三光尉」から「不動」へ、ツレは「姥」から「小面」へ。 いゃー、楽しかった。 *劇場、 https://www.ntj.jac.go.jp/schedule/nou/2023/6150.html?lan=j

■田園に死す

■作:寺山修司,演出:高野美由紀,出演:劇団☆A・P・B-Tokyo,三味線:工藤武蔵 ■あうるすぽっと,2023.6.1-4 ■母と息子の粘っこい愛憎はもはや奇態と言ってよい。 それは自身の過去をも少なからず振り返させられる。 母と子の永遠のテーマですね。 恐山、サーカス、家出・・、多くの事件が淡々と積み重なっていく。 この堆積していく物語の絡み合いから感動が滲み出てくる。 観客は堆積を待たなければいけない。 途中、「私」が登場する異化効果が面白い。 舞台が中断してしまったのか!? 観客の多くが本当に驚いていましたね。 そして三味線の独奏が素晴らしかった。 ト書きの短歌は雑音が入り聴き落としがでてしまった。 また発声が聞き難い役者もいました。 風音や東北弁などと重なるからでしょうか? 万華鏡のような音と色、これに染まっていく物語。 寺山世界を堪能しました。 *寺山修司没後40年記念作品  *CoRich、 https://stage.corich.jp/stage/26114 *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、高野美由紀 ・・ 検索結果は5舞台 .

■糸井版・摂州合邦辻

■演出:糸井幸之介,出演:内田慈,土屋神葉,谷山知宏ほか,劇団:木ノ下歌舞伎 ■神奈川芸術劇場・大ホール,2023.5.26-6.4 ■初めて観る作品です。 会場で配られた資料が役に立ちました。 キーワードと称する<癩病><天王寺><日想観>が<俊徳丸>と彼の<空間>と<時間>に対応している。 開幕前にざっと目を通したので、この3ワードで動いていくのが分かりました。 舞台は大阪の匂いが強い。 江戸時代の口語と大阪弁が入り混じっているように聴こえる。 しかも玉手御前役内田慈がアンミカにそっくりな場面が! 大阪は未知の楽しさで一杯ですね。 歌唱「人の声」で幕が開き「街の墓」で閉じる。 どれも楽しい歌詞が続く全6曲です。 しかし歌詞が物語を演じているので芝居と競合した感がある。 どちらも主役にしたので相乗効果と相殺効果が共に出てしまった? 途中、俊徳丸と玉手御前の子供時代に戻る場面が入ったことや、歌唱「バウワウソング」「パパっ子」の心情歌で二人の人生が深くなった。 しかし義理母と血の繋がりのない息子との恋慕は難しい関係ですね。 しかも片思いで盛り上がらない。 歌舞伎作品を現代版に移すときは解説的になってしまうことがよくある。 この困難を巧く避けていました。 *CoRich、 https://stage.corich.jp/stage/260567 *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、糸井幸之介 ・・ 検索結果は2舞台 .

■リゴレット

■原作:V・ユーゴ,作曲:G・ヴェルディ,指揮:マウリツィオ・ベニーニ,演出:エミリオ・サージ,出演:ロベルト・フロンターリ,ハスミック・トロシャン,イヴァン・アヨン・リヴァス他,演奏:東京フィルハーモニー交響楽団 ■新国立劇場・オペラパレス,2023.5.18-6.3 ■マントヴァ侯爵の「愛こそ心の太陽」、続いて娘ジルダ「慕わしい人の名は」から一直線に舞台へ引き込まれていくの。 父の老練な歌唱と演技、娘のガラスが割れそうな繊細な歌声が父娘の悲哀を連れてくる。 そこに侯爵の若さ溢れる「女心の歌」が場内に響くときの複雑な高揚感がなんとも言えないわね。 侯爵はチリ、娘はアルメニア出身だが、イタリアの<爽快と憂鬱>を表現できたのは侯爵と父の対の良さかな。 いつもの指揮者ベニーニの存在も大きい。「リゴレット」でこんなにも感動したのは初めてよ。 もうヴェルディから逃げられない! *NNTTオペラ2022シーズン作品 *劇場、 https://www.nntt.jac.go.jp/enjoy/record/detail/37_025760.html *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、エミリオ・サージ ・・ 検索結果は2舞台 .

■リヴァイザー/検察官

■作:ニコライ・ゴーゴリ(検察官より),脚本:ジョナソン・ヤング,演出:クリスタル・パイト,舞団:キッドピボット ■神奈川県民ホール,2023.5.27-28 ■ゴーゴリの「検察官」は芝居で観たことがある。 今回はダンスのため科白が付くとは予想していなかった。 しかも登場人物が多い。 はたしてダンサーは台詞を喋りながら踊っている。 しかし、どうも口パクらしい。 逆に口パク技術の精巧さに驚きました! 口だけではなく字幕も凝視してしまった。 組織は「機構」、相手を「対象」と訳している! 「内包」・「統合」・「修正」・・などの硬い語句が続く。 原作は読んでいないので何とも言えないが、ロシア帝国の官僚主義から来ているのかな? しかもト書は数学的記述に近く、それもダンサーの動きを表現している! 三度目の「!」です。 肝心のダンスは素晴らしい。 感情を大げさに表現しているが切れが良い。 鋭い動きです。 8人のダンサーも連携が巧い。 マイムを取り入れた「カンパニーデラシネラ」をより硬く激しくしたような舞台でした。 直前にダンサーの交代が伝えられて開幕が15分遅れたが混乱はみえなかった。 「!」(驚き)の多い舞台だったので帰りにプログラムを購入しました。 まだ読んでいないが「!」の謎が解けるはずです。 *劇場、 https://www.kanagawa-kenminhall.com/d/KIDDPIVOT2023 *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、クリスタル・パイト ・・ 検索結果は4舞台 .

■トランジット

■振付:テロ・サーリネン,音楽:セバスチャン・ファーゲルルンド,トゥオマス・ノルヴィオ,舞団:テロ・サーリネン・カンパニー ■NHK・配信,2023.5.21-(ヘルシンキ・メリカーペリホール,2022.8.19-21収録) ■「・・破滅を目前にした人間に希望はあるのか」。 物騒な解説が書いてある。 解説がなくても舞台はそのように見える振付です。 十数名のダンサーは這いつくばり蠢く。 舞踏風な動きもある。 スポットライトで強調もする。 継ぎ接ぎのある白衣装はアジア的です。 音楽も振動を強調している。 ダンサーたちの動きは力強い。 近未来的で加速度的です。 苦しみや恐れの表情は薄い。 複雑な振付ではない。 感情を抽象化したところはあるが踊り易いと思う。 後半、黒の背景から白になると、緩やかな動きに変調する。 歩く姿もスローモーションです。 そしてゆっくりと終幕に近づく。 人間は救われたのか? 物語がダンサーたちを通り抜けていくような舞台でした。 身体で物語を紡ぐのが舞台芸術ですがこの作品は少し違う。 風のように抜けていくサッパリ感がある。 サーリネンはよく知らないが、なかなかの振付家とみました。 *NHK、 https://www.nhk.jp/p/premium/ts/MRQZZMYKMW/episode/te/X89PVRGJN4/ *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、サーリネン ・・ 検索結果は2舞台 .

■人魂を届けに

■作・演出:前川知大,出演:浜田信也,安井順平,盛隆二,篠井英介ほか,劇団:イキウメ ■シアタートラム,2023.5.16-6.11 ■箇条書にしてみました・・・ ・森に迷う者たちが自身の過去を語るときに劇中劇となる。 幾つもの劇中劇が集まって出来た作品です。 その劇と劇の境界に技巧が発揮されていた。 面白い構造です。 ・浜田信也、安井順平の静的で力強い演技は佳境の域に入りつつある。 イキウメは独特なリズムを持っていますね。 呼吸や間(マ)の取り方を含め全てが劇的へと繋がっている。 ・森に住む母は美術作家森村泰昌が演じているのか!? 勘違いしてしまった。 篠井英介だったのですね。 その篠井英介はイキウメとは真逆の演技で舞台を深めていました。 ・イキウメの舞台ではいつも奇跡を考えさせられます。 この世は全てが奇跡で成り立っている。 だから逆に見えない。 急にみえることがあるのでビックリする。 ・<公安>と<鶏鍋>の場面では必ず観客の笑いが聞こえた。 でも前者で笑う理由が分からない。 <公安>とは何か? 分かっていて笑ったのでしょうか? ・権力者が恐れている一つが多様性です。 森に迷う者達もそのように描かれている。 (日本での)難民やLGBTも権力側からみれば同じでしょう。 でも人類は多様性を受け入れることで生き延びてきた。 これからもです。 ・シアタートラムのE席は足先が前に出せる。 このため足が楽です。 F席以降は板が貼ってあり足先を前に出せない。 なぜ塞いでいるのでしょうか? 狭い劇場を少しでも広くして欲しい。 *劇場、 https://setagaya-pt.jp/stage/2046/ *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、前川知大 ・・ 検索結果は13舞台 .

■リビングルーム

■振付:インバル・ピント,出演:モラン・ミュラー,イタマール・セルッシ ■世田谷パブリックシアター,2023.5.19-21 ■・・木々の描かれた室内で踊りだす一人の女。 そこでは不思議な現象がおこる。 彼女の身体が自動的に動いてしまう、操り人形のように。 椅子もひとりでに動き出す。 コミカルな振付が続いていく。 壁の電灯やケトルも動き回る。 古い流行曲らしき音楽に日常音や雑音も入る。 ぼんやりと照らしだされる青系(夢のなかにいる)や赤系(胸騒ぎがする)の照明。 ・・タンスの中から男が部屋へ侵入してくる。 そして二人は付かず離れず踊りあう。 笑いたくなるような振付もある。 コントダンスと言ってよい。 そろそろと男はタンスの中へ戻っていく。 女も壁の割れ目に入り込み見えなくなる・・。  このような流れの舞台でした。 彼女の夢の中にいるのか? 彼女の心の中を覗いているのか? 20世紀をひきずっている振付だが、変わった作品でした。 終幕の映像が余分でした。 これが無ければ、夢心地の感覚を持って終われたでしょう。 アフタートークは都合で聞かなかった。 平山素子とピントは振付への思いが違うから話が盛り上がるはずです。 *劇場、 https://setagaya-pt.jp/stage/1800/

■ポントの王ミトリダーテ

■作曲:W・A・モーツァルト,演出:宮城聰,指揮:マルク・ミンコフスキ,出演:ペネ・パティ,アナ・マリア・ラービン,アンジェラ・ブラウアー他,演奏:レ・ミュジシャン・デュ・ルーブル ■NHK・配信,2023.5.14-(ベルリン国立劇場,2022.12.9-11収録) ■宮城聰演出とあったので観ることにしたの。 作品を調べると・・、イタリア旅行中の14歳モーツァルトが作曲したオペラ・セリアらしい。 時代は紀元前2世紀、ローマと戦う黒海に面したポントス国が舞台。 王である父と二人の息子が一人の女性を求める物語ね。 モーツァルト初期の作品だがイタリア様式の成果は素直に出ている。 でも物語の濃さに助けられたかな? さすがJ・ラシーヌが原作だけある。 舞台は4 段の雛壇が造られているシンプルな構造。 その背景に琳派風の金箔を用いた絵画を繰り出していく。 戦国時代の兜や刀を付けた歌手の衣装も金ピカよ。 黄金の国ジパングを意識したのね。 演出も強気に出ている。 それは中国や東南アジアへ繋がっているから。 でも雛壇が低いので歌手が身をかがめて出入りするから観ていて窮屈なの。 狭苦しいのも日本風だが、4段から3段にすれば歌手の動きに余裕ができたと思う。  モーツァルト+ラシーヌ+アジア文化。 この違いのある3点を結びつけるのに演出家はP・クローデルを意識したんじゃないかしら? 面白い舞台だったわ。 *NHK、 https://www.nhk-ondemand.jp/goods/G2023128047SA000/

■舞台・エヴァンゲリオン ビョンド

■演出:シディ・ラルビ・シェルカウイ,上演台本:ノゾエ征爾,出演:窪田正孝,石橋静河,板垣瑞生ほか ■ミラノ座,2023.5.6-28 ■初めての劇場です。 メタリックな竹模様が逆に無機質を感じさせる。 ロッカー(クローク)が無いのは残念、トイレも狭い。 エレベータは止まらない。 高層劇場のため余裕がないのは致し方ない? 会場内はチープですが機能的です。 椅子もそれに従う、でも長時間座っていると疲れる。 エヴァンゲリオンは苦手な漫画です。 いつも数分みただけで遠ざけてしまう。 舞台なら最後まで観ることができる? 劇場見学のついでにチケットを購入しました。 使徒が何者か?やっと分かりました。 それは古代ギリシャから続いている地水火風、つまり自然の化身だったのですね。 地球を荒廃させている人類は人間精神と科学技術を結合したエヴァというロボットで使徒と戦う・・。 結合された操縦士の子供たちは幾つもの二元論的矛盾に悩むという話です。  舞台は凝っています。 床を傾かせて映像を映す。 三次元的映像にして迫力を増している。 エヴァはパペット型で人形遣いが動かし、俳優である操縦士は横で演技をする。 使徒もパペットです。 特に人形遣いが目立つ。 彼らはダンスで舞台を盛り上げ、場面転換を繋ぎ、大道具を動かす。 これは楽しい。 しかし俳優の声は平均化した音響で盛り上がらない。 マイクに依存し過ぎている。 科白も8割は説明調です。 ChatGPTが演じているみたいでした。 観客は20代女性が7割を占めていたが贔屓筋ですか? 他に高齢者が1割、・・。 それと煙草を吸う場面があったが理解に苦しみます。 *CoRich、 https://stage.corich.jp/stage/250631 *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、シェルカウイ ・・ 検索結果は5舞台 .

■能楽堂五月「貰聟」「班女」

*国立能楽堂五月普及公演の□2舞台を観る. □狂言・和泉流・貰聟■出演:井上松次郎,佐藤友彦,今枝郁雄 □能・観世流・班女■出演:浅井文義,宝生常三,大日方寛ほか ■国立能楽堂,2023.5.13 ■「貰聟(もらいむこ)」は「夫婦喧嘩は犬も喰わない」、つまり夫婦の喧嘩を他人が仲裁したり心配するのは愚かなことだと言っている。 夫と妻その舅の3人が登場する。 けっこうリアルな演技で引き込まれる。 「室町時代ホームコメディ」らしい。 「班女(はんじょ)」のプレトーク「狂うことと舞うこと」(横山太郎)を聞く。 いかに遊女に舞をさせるか? 狂から舞へは一直線にはいかない。 当時の遊女の立ち位置から説き、世阿弥の苦心の跡を考えていく内容だった。 久しぶりに正面席で観る、いつもは脇正面だが。 正面席は謡がバックコーラスのように聴こえるのが良い。 逆に囃子は脇席のほうが立体的に聴こえる。 笛はどの席でも同じだ。 また正面席はシテの前後の動きが単調にみえて平面的になる。 つまり脇正面席は謡もワキもシテと同じ濃さに感じられる。 どちらが良い席なのか?一概には決められない。 *劇場、 https://www.ntj.jac.go.jp/schedule/nou/2023/5143.html?lan=j

■ミソロジーズ

■振付:A・プレルジョカージュ,音楽:トーマ・バンガルデル,指揮: ロマン・デュマ,出演:バレエ・プレルジョカージュ,ボルドー国立歌劇場バレエ団,演奏:パリ室 内管弦楽団 ■NHK・配信,2023.4.23-(パリ・シャトル座,2022.10.26-27収録) ■プレルジョカージュ振付の「ミソロジーズ」を観る。 古代神話を背景に23場面から構成されているの。 その半分の場面には神々や人物のタイトルが付けられている。 それは・・タレストリス、アマゾネス、アレクサンドロス、ダナエ、ゼウス、ゴルゴン、ミノタウルス、アレス、アフロディナ、ナイアス、イカロス。 その間に入る場面名は・・はじめの動き、組み合い、双子1、13日間の夜、出産、復活、楽園、パ・ド・ドゥ、渦、双子2、弔いの舞踏、戦争。 神々の行動に直結していて、合わせると23場面。 振付は古代神話の祭祀と神々の行動を連想させる。 古代スポーツも含まれる。 衣装も神話風ドレスで薄く、白・赤・緑でどれも素晴らしい。 仮面を付けることもある。  名前の場面は叙事詩、その行動は抒情詩のような動きかな? 場面を数えるほど詩的リズムが合ってくるから気持ちが良い。 次に何が登場するか楽しめる舞台だった。 終幕の「戦争」は第二次世界大戦時の数十枚の写真をフラッシュバックに使っていた。 舞台は現代に続いていると言うことね。 ウクライナの影響も強い。 アルバニア系のフランス的雰囲気を強く押し出す振付家にみえる。 *NHK、 https://www.nhk.jp/p/premium/ts/MRQZZMYKMW/episode/te/R3KN619JGG/ *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、プレルジョカージュ ・・ 検索結果は4舞台 .

■能楽堂四月「鷺」「夢浮橋」

*国立能楽堂四月企画公演の□2作品を観る. □復曲狂言・鷺■出演:山本凛太郎,山本東次郎,笛:一噌隆之 □新作能・夢浮橋■作:瀬戸内寂聴,演出:梅若六郎,山本東次郎,出演:片山九郎右衛門,味方玄,観世喜正ほか ■国立能楽堂,2023.4.27 ■「鷺(さぎ)」は、空海が雨乞いのために神泉苑を造ると善女龍王がおりてきて雨を降らせる話、神泉苑に落ちてしまった醍醐天皇の冠を鷺が取ってくる話、この二つを太郎冠者と主が語る。 後半は太郎冠者が鷺舞を舞う。 首を振り足を蹴りながら田んぼの泥鰌を探し回る。 語りが長いので舞を入れることにより舞台が和む。 鷺流の復曲狂言らしい。 「夢浮橋」は瀬戸内寂聴が宇治十帖の最終巻を舞台化した作品である。 いつもの舞台とは違う。 謡も所作も現代を感じさせる。 すべてにメリハリがある。 詞章を読んでも激しさが伝わってくるが舞台はそれ以上であった。 阿闍梨が恵心僧都の墓所へ向かう場面では杖を持ちながらも驚くほどヨロケてしまい、浮舟の艶めかしい身体に触れたところではシテ柱に抱き付いてしまう。 また、光源氏の息子薫と皇子匂宮の二人を愛してしまった浮舟のカケリでは扇を客席まで投げつけてしまう。 心の表現がより刺激的、より現実的だ。 面は阿闍梨が邯鄲男、浮舟は増、匂宮は若男。 瀬戸内寂聴の初演時(2000年3月)の文章がプログラムに載っている。 「私は七十七歳になっても、好奇心は一向に衰えを見せず、・・」。 当時の彼女がそのまま生き返ったような舞台だった。 *劇場、 https://www.ntj.jac.go.jp/schedule/nou/2023/4177.html?lan=j

■ローエングリン

■作曲:R・ワーグナー,指揮:ヤニック・ネゼ=セガン,演出:フランソワ・ジラール,出演:ピュートル・ベチャワ,タマラ・ウィルソン,クリスティーン・ガーキー他 ■東劇,2023.4.21-27(METメトロポリタンン歌劇場,2023.3.18収録) ■薄暗い洞窟のなか、丸く空いた天井から月や星々がみえる。 映像では無機質な暗さに感じる、でも生舞台ならリアルな空気に包まれそう。 いつもの髪型でワイシャツ姿のP・ベチャワは異邦人の出現としては合格だけど騎士にはみえない。 近くの会社員が昼食の為に事務所から出てきたみたい。 声と演技の成熟度は彼にとって今が一番かな? 5時間の長さでも安定感があった。 それは演奏にも言えるわね。 指揮者ネゼ=セガンは幕ごとに衣装を替える余裕がある。 130人もの合唱団は衣装裏地の色彩だけで動きある舞台を演出していた。 ヴェルディとワーグナーを区別しないエルザ役タマラは淡泊すぎて魔女オルトルート役ガーギーの陰に隠れてしまったのが残念だわ。 でも観後に振り返るとこれも有りかも。 「・・疑念が心に芽生える」。 騎士とエルザの約束はそのまま物語と契約の狭間に揺れる現代社会の一面をも見せてくれる。 METでは1883年初演から数えて624回目のローエングリンらしい。 指揮者・演出家などスタッフにその余裕と責任が感じられる舞台だった。 楽しかったわよ。 *METライブビューイング2022作品 *映画com、 https://eiga.com/movie/97762/

■シン・ゴジラ ■シン・ウルトラマン ■シン・仮面ライダー

□シン・ゴジラ■監督:庵野秀明,出演:長谷川博己,竹野内豊,石原さとみ他 □シン・ウルトラマン■監督:樋口真嗣,出演:斎藤工,長澤まさみ,有岡大貴ほか □シン・仮面ライダー■監督:庵野秀明,出演:池松壮亮,波辺美波,柄本佑ほか ■「シン・仮面ライダー、ヒーローアクション挑戦の舞台裏」をテレビで観る。 監督庵野秀明の役者への演技指導をみて興味が沸いたので映画館へ行くことにした。 監督の相手になる柄本佑、森山未來は舞台でも関心を持ってみていたこともある。 <シン>とは何か? これも気になったのでゴジラとウルトラマンを事前に観ることにした。 「シン・エヴァンゲリオン」はアニメのため外した。 ゴジラそしてウルトラマンも動く原発だ。 まさに原発事故での日本政府の対応を漫画にして描いている。 しかも暴れるから自衛隊そして米軍がそれに加わる。 「怪獣は日本だけにしか出現しない!」。 広島・長崎・福島そして東京へ・・。 時代を越えた政治メッセージだ。 仮面ライダーを観る。 昆虫サイボーグの楽しさがある。 作者と監督のコラボが実っている。 そして他者への不信、家族の絆、世界への愛などがストーリーの原動力になっている。 しかし終幕のアクションシーンはいただけない。 熟考過ぎて無意味な取っ組み合いに気化してしまった。 等身大の役者の科白・動作は怪獣やアニメヒーローとは違い監督の苦労がみえる。 ところで<シン>とはなにか? テレビ放送時代の頃の愛や絆は単純実直に処理していたように覚えている。 しかし今は愛も政治も文科省推薦のような描き方になっている。 <シン>は心と読ませたいようだ。 久しぶりにこの種の映画を続けて観たので疲れてしまった。 *映画com、 https://eiga.com/movie/81507/ *映画com、 https://eiga.com/movie/91634/ *映画com、 https://eiga.com/movie/94843/

■るつぼ

■作:アーサー・ミラー,演出:リンゼイ・ターナ-,出演:エリン・ドハティ,ブレンダン・カウエル,ニック・フレッチャー他 ■シネリーブル池袋,2023.4.14-(NTナショナル・シアター,2023年) ■悪魔と交わったか否か? 舞台は1692年のマサチューセッツ州。 悪魔の存在を受け入れている人々をみて観客は安全な場所で批判的に観ることができます。 1953年初演時は「・・マッカーシズムに対するアレゴリーとして受け取られた」(wiki)とある。 悪魔は時代とともに替わっていく。 宗教と国家が結びつく恐怖を描いている作品と言ってよい。 「・・この世は善と悪が入り乱れている。 白か黒をはっきりさせる!」。 ダンフォース判事の強い言葉です。 善か悪か?正義か不義か? 宗教が国家に近づく、あるいは国家が宗教に近づく。 現代日本でもよくある。 話題の世界統一教会など幾つもの宗教系団体は<悪魔>を追い払い<正義>を立てるため国家と結び付きたい。 「るつぼ」は今でも将来にも起こり得る。 観応えのある理由です。 舞台上の役者の配置・動きは申し分ない。 特に幕開け、教会ミサでの讃美歌(?)風景は劇的でした。 照明・音楽は作品の通奏低音のように効いていたが、雨の演出は映像でみると効果が薄れてしまったのが残念です。 *NTLナショナル・シアター・ライブ作品 *映画com、 https://eiga.com/movie/98396/

■平和の日

■作曲:R・シュトラウス,指揮:準・メルクル,演出:小林輝彦,渡邊仁美,大塚章ほか,演奏・合唱:東京フィルハーモニー交響楽団,二期会合唱団 ■Bunkamura・オーチャードホール,2023.4.8-9 ■ナチスとの関係はいつもは深入りしないが、この作品は避けることができないようね。 しかも解釈の都合がいくらでも付くから、あらゆる政治的状況に合わすことが可能なの。 1930年後半のドイツはもちろん、今のウクライナでもロシアでも上演できそう。 粗筋はシンプルで上演時間も長くはない。 セミ・ステージ形式にはもってこい。 しかも2000席の大劇場で一回公演のためか、旧教徒司令官とその妻マリアを含めて歌唱に力が籠もる。 新教徒を迎い入れた大団円では平和讃歌の絶唱で終わる。 ワーグナー的手法も感じられるが、むしろベートーヴェンに近いかな。 「ばら騎士」「カプリッチョ」とは真逆の世界でプロバガンダ的と言わざるをえない。 時代が招き寄せてしまった作品と言ってもよいわね。 *東京二期会コンチェルタンテ・シリーズVol.5 *二期会、 http://www.nikikai.net/lineup/friedenstag2023/index.html

■能楽堂四月「引括」「雲林院」

*国立能楽堂四月普及公演の□2舞台を観る. □狂言・和泉流・引括■出演:松田高義,野口隆行 □能・宝生流・雲林院■出演:金森秀祥,野口能弘,奥津健太郎ほか ■国立能楽堂,2023.4.8 ■「引括(ひっくくり)」は離縁を目論んでいる夫が妻に、暇を出すから好きなものを持っていけ、と言うと妻が取った行動は・・! 「雲林院」のプレトーク「伊勢物語のまぼろし、能と注釈と」(田中貴子)を聴く。 ・・源氏物語や伊勢物語は後代の人にとっては時が経ち過ぎて読み難い。 このため多くの注釈書が出回った。 当作品も源氏物語や伊勢物語の注釈が多く見え隠れしている。 以下の3点に沿いながら能と注釈の関係を語る。 1.世阿弥自筆本と比べる 2.雲林院について 3.芦屋の公光(きんみつ)とは ・・。 注釈の影響力に驚く。 舞台では和歌問答、アイの語り、序の舞と続くがどれもが長い。 そのため眠くなりそうになるが、・・しかしそうならない。 この微妙な半覚醒の状態がとてもいい。 公光の夢の続きを観客が引き継いでいるかのような舞台だった。 面は「小尉」と「中将」。 桜雲の廃寺で舞う黃装束の業平に会うのは久しぶりだがどこか憂いがあった。 ところで4月に入って外国観光客が急に増えてきたようだ。 *劇場、 https://www.ntj.jac.go.jp/schedule/nou/2023/4175.html?lan=j

■能楽堂四月「鈍太郎」「藤戸」

*国立能楽堂四月定例公演の□2舞台を観る. □狂言・和泉流・鈍太郎-萬乃古式-■出演:野村万蔵,小笠原由祠,河野佑紀 □能・金春流・藤戸■出演:櫻間金記,福王茂十郎,野村万之丞ほか ■国立能楽堂,2023.4.5 ■「鈍太郎」は妻と妾を持っている。 彼はどうしても妾に目がいってしまう。 そこで平等に接しない案を出したのだが、結局は二人に捨てられてしまう。 萬乃古式(よろずのこしき)を取り入れたので、現代の男女平等の問題にも繋がっている。 「藤戸」は平氏との戦いで手柄を立てた佐々木盛綱がワキ、漁師の我が子を盛綱に殺された老母、そして亡霊の息子がシテとして登場する。 前場は母の悲嘆の姿が迫ってくる。 後場は息子が登場し盛綱を呪うが成仏を遂げる。   シテが一人二役のため母と息子は出会うことがない。 どちらも相手が盛綱のため舞台感動が弱くなった。 息子が母を連れに来たとも受け取れるが読み過ぎか? シテの声が聴き辛かった。 面は痩女(やせおんな)と二十余(はたちあまり)。 *劇場、 https://www.ntj.jac.go.jp/schedule/nou/2023/4173.html?lan=j

■天国への登り方

■作・演出:広田淳一,出演:一川幸恵,沼田星麻,榊菜津美ほか,劇団:アマヤドリ ■シアタートラム,2023.3.23-26 ■深刻な舞台でした。 安楽死をテーマにしていたからです。 姉はALS症?妹は精神症? 二人は心身が参ってしまった? そこで彼女らは安楽死特区へ向かう・・。 家族と友人は慌てます。 安楽死の権利は成り立つのか? 自己決定しても過程には他者が入り込んでしまう。 殺人罪も浮上する? 医師たちが安楽死について議論するところが一つの山場です。 観客もそれに巻き込まれます。 姉妹が安楽死を選んだ理由を詳細に語らないのがミソでしょう。 この特区には狐が人間と暮らしているらしい。 狐たちは安楽死を支援しているようだが、しかし近代から作り上げてきた死についての社会制度をいちど棚に上げる存在者にもみえる。 狐をみて柔軟に考え直そうという気持ちが芽生えます。 終幕のダンスも固まった身体が解れました。 昨年亡くなった我らが映画監督J=L・ゴダールは安楽死を選んだらしい。 「・・彼は日常生活に支障を来す疾患を複数患っており、居住しているスイスで「判断能力があり利己的な動機を持たない人」に対して合法化されている「自殺幇助」(安楽死)を選択。 医師から処方された薬物を使用し亡くなったと伝えられている」(WiKiより)。 これを読んでも多くの問題があることは確かです。 *CoRich、 https://stage.corich.jp/stage/221195 *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、広田淳一 ・・ 検索結果は7舞台 .

■能楽堂三月「草紙洗小町」

*国立能楽堂三月企画公演は下記□2舞台を上演. □狂言・和泉流・連歌盗人■出演:野村万蔵,野村万之丞,野村万禄 □能・金剛流・草紙洗小町■出演:金春安明,金春重芳,則久英志ほか ■国立能楽堂,2023.3.25 ■今日は「うたと能楽」特集だが、遅刻をしてしまい狂言「連歌盗人(れんがぬすびと)」は見逃してしまった。 「草紙洗小町(そうしあらいこまち)」は小野小町や紀貫之の豪華顔ぶれが揃う。 ワキの大判黒主と子方の帝、ツレの朝臣や宮女を含めて9人の役者が舞台に並ぶと壮観だ。 小町と黒主の問答もリズムがあり聴き応えがあった。 プログラムに掲載の「草紙洗小町と歌合」(浅田徹)は楽しく読んだ。 小町と貫之は生きた時代が若干違うので出会いがなかったことは分かる。 小町が活躍した時期は短冊も歌合も未だ無かったようだ。 他に柿本人麻呂の歌や肖像画、あり得ない清涼殿での開催、万葉集の分類方法、・・等々おもしろい話で一杯だ。 そして盗作事件がテーマの為か、いつもとは違う対話的な感触を残した舞台だった。 *劇場、 https://www.ntj.jac.go.jp/schedule/nou/2022/3173.html?lan=j

■少女仮面

■作:唐十郎,演出:天野天街,出演:江戸伝内,結城一糸,丸山厚人ほか,劇団:一糸座 ■赤坂レッドシアター,2023.3.17-21 ■ゲッコウパレードに続き一糸座も観てきました。 一糸座は糸操り人形、つまりマリオネット劇です。 舞台は複雑な構造をしている。 腹話術師の人形はマリオネットではなくパペット、そして喫茶「肉体」の店員や水飲み男、それに甘粕大尉は、最後にパペットも、俳優が演じる。 しかもマリオネットの人形遣いは黒衣装だが途中に顔をさらす「出遣い」もする。 この複雑舞台を巧くまとめていました。 でも小さいマリオネットを凝視せざるを得ない。 俳優との身長・動作・表情の差に無意識が戸惑います。 観客はこの差を消し去る転換作業が必要になる。 その先に「・・唐っ風吹き荒ぶ、その唐っぽの、傀儡の王国に」観客も迷い込めます。 そして「・・特権的な唐だを張って、喉を唐して、ち唐の限り、唐元気を振り絞り」あのヒースを満州平原を彷徨い歩くことができました。 「」は演出家挨拶文から。 年季の入った役者が多かったですね。 これを含め凝り過ぎた舞台にみえました。 観客は20代以上だが男女・年代がバラけている。 珍しい。 当劇団贔屓筋の特長でしょうか?  *CoRich、 https://stage.corich.jp/stage/233241

■少女仮面

■作:唐十郎,演出:黒田瑞仁,主宰:崎田ゆかり,出演:永濱祐子,林純平,小川哲也ほか,劇団:ゲッコーパレード ■下北沢・OFFOFFシアター,2023.3.16-19 ■隣の駅前劇場より狭いO FFだが、今日の舞台はアリーナ型上演のようです。 「(役者)一人ひとりの欲望が舞台上で飛び出してくれば・・」(主宰挨拶)。 型に似合った挨拶どおりの、ビックリするくらい飛び出てきた舞台でした。   ゲッコーパレード? 変わった名前として記憶にぶら下がっていたが、劇団を観るのは今回が初めてです。 「・・人の集まりこそがパレードのように活動や表現を形成していく」。 春日野八千代と少女はもとより、腹話術師と人形、水飲み男、ボーイ、・・、それぞれが夫々の瞬発力で輝いていました。 多くの役者が一度に登場しても存在感ある静止状態で狭い空間が縮まらない。 「作者との世代の隔たりは無視できず・・」(演出ノート)、唐系の劇団と違い戯曲を素直に展開していたように感じます。 作品に初めて接した人は何もない空間のため戸惑ったかもしれない。 この劇団は「一軒家という「演劇の上演を行う場所でない」場所で活動している・・」(演出ノート)。 普通に生活しているような住居なのか? 役者と観客が混ざり合ってしまう? 一軒家でいちど観てみたいですね。 作品が持つ俳優と観客(ファン)、そして劇場の俳優と観客、ほとばしる肉体、その昇華・・。 久しぶりの「少女仮面」でしたが、今日の舞台もカタルシスがやってきました。 *CoRich、 https://stage.corich.jp/stage/231426

■Echoes of Calling -rainbow after-

■構成・演出・振付:北村明子,音楽:横山裕章,映像:兼古昭彦,出演:ミンテ・ウォーデ,岡村樹,香取直登ほか,歌・作曲:アフロル・バフシ,ダイアン・キャノン ■東京芸術劇場,シアターイースト,2023.3.10-12 ■加速度ある動きと止め、等速度な体の捻り・・、パフォーマンスも随所に取り入れる。 武術的舞踊と言ってよいでしょう。 広くもない舞台で、鍛えられた7人のダンサーが時間差で登場し踊り退場する。 これを繰り返す。 ときどき北村明子も踊ります。 密度の濃いダンスでした。 しかも二人の歌手が交互に舞台に上り歌う。 ウズベキスタンの吟遊詩人とアイルランドの伝統歌手らしい。 両国の関連性はみえないが<ユーラシア>という言葉で繋がる。 大陸の端(アイルランド)と端(日本)、その中央に位置しているウズベキスタン・・。 広大な風景が想像できます(?) しかし背景の岩場はユーラシアを感じさせない。 映像も凝っていて良質ですが意味を強制させられる。 ここは照明だけのすっきりした舞台にしたら想像力が広がったはずです。 歌詞字幕は欲しかった。 *劇場、 https://www.geigeki.jp/performance/20230310te/ *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、北村明子 ・・ 検索結果は5舞台 .

■能楽堂三月「磁石」「野守」

*国立能楽堂三月普及公演の□2作品を観る. □狂言・大蔵流・磁石■出演:綱谷正美,茂山茂,丸石やすし □能・金剛流・野守■出演:廣田幸稔,高井松男,松本薫ほか ■国立能楽度,2023.3.11 ■「磁石」は旅人がすっぱ(詐欺師)と騙し合う話。 旅人が磁石の精と偽り物理現象を直截に表現しカネや刀を吸い取るところが楽しい。 「野守」のプレトーク「水鏡と鬼神の鏡」(梅内美華子解説)を聴く。 世阿弥一座は興福寺に庇護を受けていた時期があり、その寺の唯識学の鏡の影響が世阿弥にある(?) 飛火とは狼煙であり当時は春日野地区の状況を京へ知らせていた。 作品に含まれる歌の解説、世阿弥の砕動・力動風鬼の話も入る。 ホールに奈良の観光案内と物産が出店していた。 寺周辺の屋台を覗いている気分だ。 春日野の春景色の謳歌で舞台は始まり、鬼神の舞働の後半が見どころである。 前後を通してシテは仕事師として淡々と謡い踊っていた。 観ていて心地よかった。 面は「三光尉(さんこうじょう)」と「小癋見(こべしみ)」。 今日は千駄ケ谷で春日野の春を満喫した。 *劇場、 https://www.ntj.jac.go.jp/schedule/nou/2022/3182.html?lan=j

■能楽堂三月「左近三郎」「采女」

*国立能楽堂定例公演の□2作品を観る. □狂言・大蔵流・左近三郎(さこのさむろう)■出演:山本則重,山本則秀 □能・観世流・采女-美奈保之伝-(うねめ-みなほのでん-)■出演:観世清和,森常好,山本東次郎ほか ■国立能楽堂,2023.3.8 ■「采女」前場は満足度200%だ。 前シテが橋掛かりを歩く、そして舞台に立つ姿、面と衣装の絶妙な均衡、テンポも良し声も通っている。 その緊張感がワキへ、そして囃子・地謡に伝わっていく。 劇的と言ってよい。 久しぶりに痺れてしまった。 観世清和の舞台は見逃せない。 なぜ小書「美奈保之伝」を採用したのか? 観ていて分かった。 小書きで余分な場面を省略し集中力を上げる為だ。 後場に入ると緊張は続くが序の舞が長い。 これについていけない。 緊張疲労が出てしまった。 夢遊病のごとく舞を眺めていたが、観世流の総力が現れていたと思う。 面は前シテが「まさかり」、後場は「小夜姫(さよひめ)」にかわる。 観世元章がこの小書を創案したようだが、やはり世阿弥の世界が充満している。 緊張の中に弛緩が漂う面白い舞台だった。 *劇場、 https://www.ntj.jac.go.jp/schedule/nou/2022/3174.html?lan=j *追記・・NHKのイリ・キリアン特集で「詩編交響曲」「ベラ・フィギュラ」を観たが、以降の「小さな死」「間奏曲」「6つの踊り」は配信期限切れで見逃してしまった。 「ベラ・フィギュラ」は記憶に残る良い作品だった。 もっと早くに観始めればよかった。

■フェドーラ

■作曲:U・ジョルダーノ,指揮:マルコ・アルミリアート,演出:デイヴィッド・マクヴィカー,出演:ソニア・ヨンチェヴァ,ビュートル・ベチャワ他 ■新宿ピカデリー,2023.3.3-9(メトロポリタン歌劇場,2023.1.14収録) ■J・ラシーヌ作と間違えてしまった。 もちろん初めての作品。 粗筋を先に読まなかったのは正解だった。 ストーリーの出来が良かったからよ。 スタッフも「アガサ・クリスティなみのドラマ・・」と言っている。 しかもヴェリズモ・オペラのリアルさが舞台の質を上げていたわね。 タイトル・ロールはソニア・ヨンチェヴァ。 MET総裁P・ゲルブも「彼女しかいない・・!」と絶賛なの。 ロシア皇女としての貫禄、感情の強弱操作、高低差のある歌唱の深み、すべてに納得だわ。 テノール役はピュートル・ベチャワ。 彼も重味が有って似合いの二人だった。 舞台はサンクトペテルブルクからパリへ、そしてスイスアルプスへ・・。 美術や衣装、もちろん楽曲も変化していく楽しさがある。 その時空はM・プルースト「失われた時を求めて」を参考にしたと演出家D・マクヴィカーは語っている。 彼のMETでの演出数はF・ゼフィレッリを越えたようね。 さすがマクヴィカー。 彼の演出は驚きのなかでも安心して観ていられる。 この舞台にも満点をあげたい。 *METライブビューイング2022作品 *MET、 https://www.shochiku.co.jp/met/program/4673/

■人形の家

■作:H・イプセン,訳:毛利三彌, 演出:宮城聰,出演:たきいみき,bable,加藤幸夫ほか,劇団SPAC ■静岡芸術劇場,2023.2.11-3.12 ■静かさのある幕開けで始まる。 いつもの演奏が無いから? ヘルメルの狂気を孕んだ喜劇的演技と音無しが混ざり合い不思議な緊張が出現します。 この劇場で観たG・ラヴォータンの「小市民の結婚」を思い出してしまいました。 そこにノーラの精神的呆け気味でネアカ的演技が少しだけ加わり、男女代表のような夫婦が出現します。 舞台は1935年(昭和10年)の日本に置き換えている。 演出家も言っています。 当時もそして現代も、作品に一番近い国は日本である。 現政府の女性人権や少子化対策も結果的に「人形の家」を目指している。 それは政治に儒教や天皇制を遠巻きに絡ませようとしているからです。 政治家が統一教会・家庭連合と縁が切れないのもこれに繋がる。 美術や衣装、音響や照明は芸が細かい。 ドアの開け閉めの音は<閉ざされた家>を意識させます。 暗い居間と動かない役者はノーラの見えない世界でしょう。 佳境に入ると床は揺れ動き剝がれ出し、卓袱台は天井に跳ねる。 でもノーラの終幕での決意に驚きはない、19世紀末はセンセーショナルだったようですが。 この作品は何度か観ていますが、今回のようにシュール的リアリズムに基礎を置いた舞台は少ない。 面白く観ることができて、久しぶりに作品の本質にも近づけました。 *SPAC2022秋春シーズン作品 *劇場、 https://spac.or.jp/au2022-sp2023/dollhouse_2022

■合田佐和子展、帰る途もつもりもない

■感想は、「 合田佐和子展、帰る途もつもりもない 」 *話題となる語句は、「劇団状況劇場」「唐十郎」「鐵假面」「ベンガルの虎」「女シラノ」・・、「演劇実験室天井桟敷」「寺山修司」「中国の不思議な役人」「奴婢訓」「さらば箱舟」・・。

■さすらい人 Der Wanderer

■演出・振付:金森穣,音楽:F・シューベルト,衣装:堂本教子,木工美術:近藤正樹,出演:井関佐和子,山田勇気,井本星那ほか,舞団:Noism0他 ■世田谷パブリックシアター,2023.2.24-26 ■「 冬の旅 」(クリスティアン・シュプック振付)の記憶が残っていた。 シューベルトにまた会いたい。 今回も冬旅の延長にあるのは予想できる。 ということで三軒茶屋に向かった。 枯れ木と赤バラ?の対比が面白い。 幾作品から選んだ21曲で構成されているらしい。 10人ほどのダンサーが初曲と終曲に登場、途中曲にソロやデュオを散りばめている。 ダンサー一人ひとりに振り分けているようだ。 シューベルトの震え以上に若さが前面に出ている。 流れに統一感はあるが物語としては追えない。 歌詞訳が無いので深みに入ることが出来なかった。 演出ノートを読むと歌詞は意識的に除いているようだ。 「聞こえない言葉を聞き取る・・」。 ダンスにとって音楽とは歌唱(言葉)とは何か? 私のような怠慢な観客にとって厳しい言葉が並ぶ。 日本語訳の歌唱ならどうだろう? ドイツ詩は崩れるが字幕より似合うとおもうが。 NHK を覗いたら、なんと「冬の旅」を再上映している。 「さすらい人」の上演に合わせたのかな? *劇場、 https://setagaya-pt.jp/performances/202302derwanderer.html

■トゥーランドット

■作曲:G・プッチーニ,指揮:ディエゴ・マテウス,演出:ダニエル・クレーマー,出演:土屋優子,城宏憲,谷原めぐみ他,演奏・合唱:新日本フィルハーモニー交響楽団,二期会合唱団ほか ■東京文化会館・大ホール,2023.2.23-26 ■ザワつく!舞台、だった。 猥雑さが感じられる衣装や動き、チームラボによるレーザ照明、CGアニメ、天井から降りてくる歌手、そこに魔界都市北京が出現するの。 ・・トゥーランドット姫の不条理な謎掛けと処刑、それを乗り越えて王子カラフの<愛>が突き進む・・。  照明や映像を派手に出されると歌唱や演奏への集中が疎かになるわね。 歌手の声そして身体をじっくり感じたい。 照明・映像を含む道具類は瞬時に無化するのが一番だと思う。 今回は張り付き過ぎたかな? でも姫の歌唱はザワつく舞台にも打ち勝っていた。 姫を繋ぎ止めようと頑張る王子、安定感あるティムールやピンポンパンの声は舞台のザワつきを宥めていた。 それでもエンタメ優位の舞台ね。  楽しかったわよ。 *2023都民芸術フェスティバル参加公演 *二期会創立70周年記念公演 *ジュネーブ大劇場共同制作 *二期会、 http://www.nikikai.net/lineup/turandot2023/index.html

■能楽堂二月「吹取」「鵜飼」

*国立能楽堂企画公演の□2舞台を観る. □狂言・大蔵流・吹取■出演:善竹大二郎,善竹十郎,大藏教義ほか □能・観世流・鵜飼■出演:観世銕之丞,森常好,舘田善博ほか ■国立能楽堂,2023.2.23 ■「吹取」は先日観た「釣針」と同じ妻乞話である。 醜女はいつの時代にも損をする。 本日は蝋燭の灯りによる公演だ。 「鵜飼」は篝火として似合うだろう。 <鵜ノ段>は思った以上に力強い動作が続く。 波に乗る心地よさ、鵜を操る面白さ、その漁仕事が想像できる。 観後に手元の川合玉堂「鵜飼」をじっくり見入ってしまった。 面は前シテが三光尉(さんこうじょう)、後シテは小癋見(こべしみ)。 後者は世阿弥が選んだそうだが物語に馴染まない。 日蓮宗の雰囲気は漂っていた。 舞台が暗いので役者の表情が始終ボヤケていた。 心情場面に入ると想像力が一挙に減衰する。 蝋燭能に慣れていないのかもしれない。 現代が明る過ぎるのだ。 *劇場、 https://www.ntj.jac.go.jp/schedule/nou/2022/2466.html?lan=j

■能楽堂二月「釣針」「枕慈童」

*普及公演の□2作品を観る. □狂言・和泉流・釣針■出演:三宅右矩,三宅右近,高澤裕介ほか □能・喜多流・枕慈童■出演:出雲康雅,野口能弘,野口琢弘ほか ■国立能楽堂,2023.2.18 ■「釣針」は主人と太郎冠者が妻を娶るため夷様に祈誓する話である。 参籠で妻を釣れという霊夢を受ける。 彼らは釣り竿を探してきて「釣ろよ釣ろよ」と歌い出す。 なんと!何人も釣れたので妻や腰元にしようとするが、・・笑。  プレトーク「画家は何を描くのか、画題と能画」(小林健二解説)を聴く。 「項羽」(安田靫彦)、「鵜飼」(川合玉堂)、「菊慈童」(梶田反古)の3点を話題にする。 「歴史・神話などを扱った絵画は能と相性が良い。 物語の一場面を描く共通した性格をもつから・・」。  前者2人は知っていたが、梶田反古は初めてである。 復古大和絵を有職故実に精通していたらしい。 プログラムに「梶田反古と能」(富田章著)が掲載されているが分かり易くまとまっている。  「枕慈童」は<楽>というリズミカルで足拍子を多用した華やかな舞が見所である。 能面は「童子」。 「菊慈童」とも言うが、彼は霊水である菊水を飲んで700年を生きている。 いつもの晩酌で「ふなぐち菊水一番しぼり」を飲んでいることを思い出した。 同じ菊水だから私も700年はいけるだろう。 *劇場、 https://www.ntj.jac.go.jp/schedule/nou/2022/2463.html?lan=j

■能楽堂二月「子盗人」「項羽」

*国立能楽堂二月定例公演の□2舞台を観る. □狂言・大蔵流・子盗人■出演:大藏彌右衛門,大藏彌太郎,大藏教義 □能・観世流・項羽■出演:浅見重好,坂井音晴,福王知登ほか ■国立能楽堂,2023.2.15 ■「項羽」は五番目物(切能)に分類すると手引に書いてあった。 詞章を読んでいる時はそう感じられない。 劉邦との戦い場面は圧倒される。 高楼から身投げした虞氏を探す項羽の姿、「あはれ苦しき瞋恚(しんに)の焔・・」。 激しい舞働、そして四面楚歌のなか運が尽き土中の塵となっていく・・。 面は項羽が筋怪士、后の虞氏は小面。 前シテの老人は朝倉尉。 観終わったあと切能に納得した。 あの世とこの世の関係が繋がらない。 作品が現在完了形ではなく過去形でできていたからである。 *劇場、 https://www.ntj.jac.go.jp/schedule/nou/2022/2462.html?lan=j

■草迷宮

■原作:泉鏡花,台本:寺山修司:演出・音楽・美術:J・A・ジーザー,構成・演出:高田恵篤,演奏:川嶋信子,本間貴士,多治見智ジーザス,劇団:演劇実験室◎万有引力 ■座高円寺,2023.2.3-12 ■「手毬唄由来の実験幻想オペラ劇」とある。 舞台周囲には琵琶と語り、箏と三味線、ヴァイオリン、パーカッションが占めてる。 演奏を前面に出していますね。 歌唱も多いが音楽劇と言ってよい。 そのぶん演劇的連携は弱いが場面展開の楽しさがある。 紙芝居的舞台と言ってよい。 衣装や美術に目が喜びます。 安定感もあり劇団の総合力が感じられます。 *演劇実験室◎万有引力第74回本公演 *CoRich、 https://stage.corich.jp/stage/227696

■かもめ

■作:A・チェーホフ,脚本:アーニャ・リース,演出:ジェイミー・ロイド,出演:エミリア・クラーク,トム・リース・ハリーズ,ダニエル・モンクス他 ■TOHOシネマズ日本橋,2023.2.10-(ハロルド・ピンター劇場,2022収録) ■満席・・! 東京はここでしか上映していないからでしょう。 舞台には椅子に座っている裸足の役者が10人。 彼らは椅子を動かして場面を作っていく。 演技の無い者は無言で座っています。 時は現代。 椅子に座っていて動きが少ないため静かな緊張感が漂います。 でも科白は一言多いように聞こえる。 その一言は心情のもう一歩を曝け出す。 これが物語を分かり易くしています。 解説に聞こえてしまうときもある。 作品の謎が言語化されてちょっと寂しい。 それでも<チェーホフ>は心に届きました。 ところで科白の一端から彼らの居場所、つまり湖畔や取り巻く社会がハッキリ見えてくるのが面白かった。  同演出家の「 シラノ・ド・ベルジュラック 」を思い出してしまった。 今回もですが、彼の舞台構成は気に入っています。 途中20分の休息が入ったが後半は30分くらいで終わってしまった(?)。 リズムに乗れないまま中途半端な終わり方を強いられた。 休息抜きで一気通貫しないと作品の面白さは半減です。 *NTLナショナル・シアター・ライブ2023シーズン作品 *映画com、 https://eiga.com/movie/98395/

■わが町

■原作:ソーントン・ワイルダー,構成・演出・翻訳:柴幸男,出演:東京演劇道場 ■東京芸術劇場・シアターイースト,2023.1.25-2.8 ■わが町の住人である人形が床に並べられている。 町らしき模型も置いてある。 それらを役者が手に取り物語が進行していく・・。 パペット人形劇と言えます。 1901年の一幕は町や住民の紹介に当てられ、二幕は2023年の東京を背景にジョージとエミリの結婚、1913年に戻る三幕はエミリの死に始まり墓場の住民たちの会話で終わる。 時間は所々で揺れ動きます。 この作品を初めて観た時の驚きは忘れられない。 日々の生活の素晴らしさとその延長としての死が語られる。 此岸と彼岸の境界が描かれるので「日常」の核心に迫れるからです。 白衣装の役者は20人前後ですか? ただしサイモン・スチムソンは紺衣装です。 彼らは群舞のように動きながら人形遣いとして逐次入れ替わっていく。 合唱のような群読もある。 ままごと風です。 役者は皆同じようにみえる、ディティールは考えられているが。 演出家は道場生を公平に扱っていますね。 人間一般としての日常を描こうとしたのでしょうか? そのぶん感動が分散されてしまった。 *東京演劇道場第二回公演 *CoRich、 https://stage.corich.jp/stage/219644 *「ブログ検索🔍」に入れる語句は,柴幸男 ・・ 検索結果は4舞台 .

■桜姫東文章

■作:鶴屋南北,監修・補綴:木ノ下裕一,脚本・演出:岡田利規,出演:成河,石橋静河,武谷公雄ほか,劇団:チェルフィッチュ,木ノ下歌舞伎 ■あうるすぽっと,2023.2.2-12 ■「独自の解釈はできるだけ加えない・・」「ドラマ性を徹底的に疑い・・」。 脚本・演出と監修・補綴、両担当の挨拶文にもあるように舞台は淡々と進む。 チェルフィッチュ風な動作と発声はあったが今回は不発だ。 清玄かつ権助役の成河もこの型を取り入れていたが切れ味が悪い。 舞台はドライに進んだが粗雑さも感じられた。 作品の量に対応できなかった? 観ていて草臥れてしまった理由だ。 しかし表層が剥き出しにされ江戸時代のエログロが舞台に出現していた。 当時の庶民からみれば見慣れた生活の一部だろう。 ここが挨拶文の成果かもしれない。 萎びた掛け声、枯れた音楽もそれに沿っていて面白い。 役者たちの濁りのない声が気持ち良かった。 「 未練の幽霊と怪物 」を観てチェルフィッチュは凝縮や抽象の強い能楽が似合うと思っていた。 歌舞伎のような拡散と具体は苦手にみえる。 ところで「桜姫東文章」は流行りの作品なのか? シネマ歌舞伎「 桜姫東文章 」、「 スカーレット・プリンセス 」と続きこの1年で3本目だ。 *CoRich、 https://stage.corich.jp/stage/202187 *「ブログ検索🔍」に入れる語句は,岡田利規 ・・ 検索結果は11舞台 . *2月9日朝日夕刊に村上湛の批評が載る.「・・虚無的な芝居ごっこである」と締めくくっている. *2月10日日経夕刊に内田洋一の批評が載る.「神話を剥ぎ取る反南北の南北劇だ」と締めくくる.成程!

■めぐりあう時間たち

■作曲:ケヴィン・プッツ,指揮:ヤニック・ネゼ=セガン,演出:フェリム・マクダーモット,出演:ルネ・フレミング,ケリー・オハラ,ジョイス・ディドナート他 ■東劇,2023.2.3-9(METメトロポリタン歌劇場,2022.12.10収録) ■ヴァージニア・ウルフ「ダロウェイ夫人」をネストしている劇中劇かな? 原作も「ダロウェイ夫人」も読んでいない。 原作映画も「ダロウェイ夫人」の映画も観ていない。 でも沢山の情報は今も飛び交っているわね。 1923年のヴァージニア・ウルフ、1951年の主婦ローラ、2001年の編集者クラリッサの三人の、ある一日を描いた舞台なの。 三人の憂鬱な意識の流れを如何に表現するのか? 美術・照明や合唱・ダンスを総動員してこれを達成している。 もちろん「歌手の歌い方と演技は気にした・・」と作曲家(演出家?)は話している。 しかも舞台は原作と違い3人の同時進行ができる。 特に歌唱はスーパーポジションが可能だからよ。 やはりクラリッサ役フレミングが一番目立ったかな? 20世紀末の雰囲気が漂っていた。 ローラ役オハラの50年代ディズニー風も適役だった。 でもウルフと20年代は繋がらない。 ウルフその人に焦点を絞り過ぎたから。 ディドナートも質素な衣装を嫌厭していたわね。 時代を乗り越えて3人の生き方が一つの形となって立ち現れる。 ここがクライマクスのはず。 演奏は心模様を強調していたが、歌唱はソプラノ系が占めたので変化の楽しさは少ない。 3人を主役にする難しさが出ていた、それでも巧く熟していたと思う。 METの総合力の強さと新作への意欲に拍手! *METライブビューイング2022シーズン作品 *映画com、 https://eiga.com/movie/97760/ *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、マクダーモット ・・ 検索結果は4舞台 .

■赤い靴

■作:唐十郎,演出:加藤野奈,出演:福原由加美里,大鶴美仁音,重村大介ほか,劇団唐組 ■下北沢・駅前劇場,2023.2.1-5 ■全速力で飛んでくる科白に撥ねられてしまう。 その言葉に喰らい付いていくと次第にシンクロされて体に溶け込んでいく。 言葉は理解ではなく体で感じ取ることになる。 唐十郎の舞台はいつもこうです。 しかも、この作品は脇道が多い。 四方から次々とやってくる科白をいつも以上に素早くカラダで受け止める。 若手俳優に粗さは有るが複雑なポリフォニーを観ているような舞台です。 久しぶりに言葉と身体が融合していく恍惚感に浸ることができました。 *唐組若手公演第70回公演 *2023都民芸術フェスティバル参加作品 *第33回下北沢演劇祭参加作品 *CoRich、 https://stage.corich.jp/stage/227960 *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、唐十郎 ・・ 検索結果は9舞台 .

■タンホイザー

■作曲:R・ワーグナー,指揮:アレホ・ペレス,演出:ハンス=ペーター・レーマン,美術・衣装:オラフ・ツォンベック,出演:妻屋秀和,ステファン・グールド,ザビーナ・ツヴィラク,エグレ・シドラウスカイテ他 ■新国立劇場・オペラパレス,2023.1.28-2.11 ■硝子それとも金属?のような柱が何本も奈落から立ち上がってくる・・。 ヴェーヌスベルクのバレエも新国ならではの出来栄えね。 この劇場は機械的な冷たさがある。 舞台美術もこれに合わせている。 今回も2019年公演とほぼ同じかしら? 保守的な演出が続くがこれも新国らしい。 タンホイザー役ステファン・グールドを含め新国初登場のエリザベート、ヴェーヌスも安定していて物語を邪魔しない。 そして場面転換がとても巧くてリズムが崩れなかった。 時空を駆け巡る4時間はあっという間に過ぎてしまったわ。 ワーグナーは何度観ても飽きない。 キリスト教を超えようとする愛の姿を追求しているからよ。 休憩後に席へ戻る時に迷い子になる、他人席に座ってしまう、このような観客が目につく。 それだけ高齢化が進んでいるということね。 先日「歌舞伎がらがら問題」の記事を読んだがオペラは満席に近い。 能楽もほぼ満席と聞いている。 なぜ歌舞伎は空席が目立つのか? 一つはオペラや能楽が持つ歌唱・謡が歌舞伎には無いこと、二つ目は生死の描き方の違いかもしれない。 歌舞伎では社会的な人間関係に係る死でしかもエンターテインメントに近い。 オペラは原罪としての生と死、能楽は此岸彼岸の迷いを扱いどちらも個人としての切実で芸術的な生死を描く。 劇場へ足を運ぶ高齢者の死への興味は歌舞伎の世界では描かれていないと思うけど、どうかしら?  *NNTTオペラ2023シーズン作品 *劇場、 https://www.nntt.jac.go.jp/opera/tannhauser/

■それぞれのふたり、萩原朔美と榎本了壱

 ■感想は、「 それぞれのふたり、萩原朔美と榎本了壱 」 *話題となる語句は、「天井桟敷」「高丘親王航海記」「笠井叡」「寺山修司」。

■能楽堂一月「皸」「船橋」

*国立能楽堂一月普及公演の次の□2舞台を観る. □狂言・大蔵流・皸(あかがり)■出演:善竹十郎,善竹大二郎 □能・喜多流・船橋■出演:塩津哲生,佐々木多門,福王和幸ほか ■国立能楽堂,2023.1.14 ■皸は今はアカギレと読む。 皸の太郎冠者が川を渡ることになったが水は見たくもない。 川には橋が架かっていないらしい。 次の「船橋」も水と橋の話だ。 プレトーク「力動風鬼から砕動風鬼へ、世阿弥による「船橋」改作の意図」(大谷節子解説)を聞く。 猿楽談義、万葉集の男歌と女歌、役優婆塞(えんのうばそく)と山伏などを話題にする。 でも男がなぜ成仏できないのか腑に落ちない。 それにしても良い舞台だった。 詞章に意味的な深みは有るが、崩れないユッタリとしたリズムが心地よい。 シテ・ワキ・地謡の連携に淀みがない。 さすが世阿弥!と言って良いのか? しかし鬼であるが人でもある砕動風鬼は両者を同時に表現しなければいけない。 鬼が弱いように思えた。 「古びた松が風に靡いているように・・」と語った世阿弥がこれを観たら何と言うだろうか? 後シテの面は「筋怪士(すじあやかし)」。 *劇場、 https://www.ntj.jac.go.jp/schedule/nou/2022/11009.html?lan=j *追記・・日経1月24日夕刊に「船橋」の批評が載る. 評論家村上湛だが内容に頷いてしまった.

■レオポルトシュタット

■作:トム・ストッパード,演出:パトリック・マーバー,出演:エイダン・マクアードル,フェイ・キャステロー,セバスチャン・アルメスト他 ■シネリーブル池袋,2023.1.6-(ロンドン・ウェストエンド,2022収録) ■小川絵梨子演出「 レオポルトシュタット 」と比較したい。 ということで池袋へ出向いたの。 でも殆ど同じ舞台にみえてしまった。 演出家パトリック・マーバがインタビュで答えていたように「時代を旅する群像劇・・」だから。 群像劇は主人公が弱い、しかもこの作品は時代が強すぎる。 主人公は変えられるが時代は変えられない。 同じになる理由よ。 違う箇所は宗教と政治の語彙がより迫っていたところかしら? ユダヤとカトリック、各政党やその主義主張がヨーロッパでは継続している。 それが役者の言葉に現れていたのかもね。 *NTLナショナル・シアター・ライブ2023シーズン作品 *映画com、 https://eiga.com/movie/96681/

■ペットボトル迷宮 ■ビニール傘小町

*K-BALLET・Opto第2弾「プラスチック」の以下□2作品を観る. ■KAAT神奈川芸術劇場・ホール,2023.1.8-9 □ペットボトル迷宮 ■企画:高野泰寿,振付:アレッシオ・シルヴェストリン,出演:ジュリアン・マッケイ,飯島望未,日高世菜ほか  ■環境汚染としてのプラスチックをバレエに取り入れた作品らしい。 「果敢な挑戦の実現を誇りに思う・・」。 熊川哲也の挨拶だ。 舞台にはペットボトルで作られた立壁が数台動き回っている。 その間をぬってダンサーたちは動き回る。 途中から腕や足、背中や頭にもペットボトルを付けて踊る。 直截的でダンサーは意識してしまうだろう。 しかもバレエ形式から逃げられない。 初めと終わりにバッハを使ったが、その時のダンサーはとても良かった。 特に終幕は伸びやかな振付が曲と同期していた。 カーテンコールでポップ調に急変したがダンサーたちは戸惑っているようにみえた。 ペットボトルを身体に付けるのは成功したとは思えない。 挑戦は継続だ。    □ビニール傘小町 ■原案:三島由紀夫「卒塔婆小町」,太田省吾「小町風伝」,企画:高野泰寿,振付:渡辺レイ,出演:白石あゆ美,石橋奨也,山本雅也ほか ■プラスチックを間接的な傘や衣装に変換しているので違和感がない。 ドラマチック・バレエと言える。 楽しく観ることができた。 題名や衣装、美術や照明から三島由紀夫や太田省吾より、唐十郎や劇団第七病棟を思い出してしまった。 深草少尉と群舞の動きが良い、それに音響が鋭かった。 「卒塔婆小町」は扱いやすい。 今日の舞台をもっと練り込めば面白くなるはずだ。 *K-BALLET Opto第2弾作品 *劇場、 https://www.kaat.jp/d/plastic

■能楽堂一月「竹生島」「昆布柿」

 *国立能楽堂一月定例公演の□2作品を観る。 □能・宝生流・竹生島■出演:東川光夫,東川尚史,舘田善博ほか □狂言・和泉流・昆布柿■出演:野村万禄,吉住講,小笠原由祠 ■国立能楽堂,2023.1.7 ■ホールに鏡餅がどおんと置いてある。 ひびが入っているが、割るのは大変だろう。 舞台上に注連縄がずらっと張ってある。 囃子も地謡も今日は肩衣を付けている。 しかし客席の着物姿が普段より少ない。 今日は満席と表示されていた。 いつもの客層とは違うのかもしれない。 醍醐天皇の臣下が「竹生島」、今の琵琶湖に参詣する話である。 そこに弁才天が姿を現し優美な天女ノ舞を、次に龍神が出現し力強い舞働を舞う。 「昆布柿」は淡路と丹波の百姓が年貢を納めに上京する話でリズミカルな作品である。 どちらも新春にふさわしい。 *劇場、 https://www.ntj.jac.go.jp/schedule/nou/2022/11008.html?lan=j

■習作・チェーホフのかもめ

■原作:A・チェーホフ,構成・演出:三村聡,出演:寺内亜矢子,奥田龍平,村山恵美,三村聡,劇団:バングラ ■観劇三昧・配信(スタジオ空洞,2021.2収録) ■習作とあるように練習過程を描いたような作品です。 登場人物はニイナ、コスチャ、アルカジナ、トリゴリンの4人、トリゴリン役三村聡は他の人物やト書きの語り、演出としての目も担当する。 いろいろ省いているがシッカリしています。 役者たちに勢いがあるからでしょう。 「言葉!言葉!言葉!」「書かなくちゃ!」。 科白が叫んでいる。 みな急いでいるようにみえる。 トリミング効果がでている、しかも増幅の言葉はモノトーンです。 「スキだ、フラレた、イッショに、・・」。 チェーホフの増減にはいろいろある、 たとえば視線を意識させる、ダンスを取り入れる等々。 「かもめ」は変化に強い。 習作から言葉の意味を深く想像させたりトリミング後の増幅など新しいチェーホフの見方が提示されていた。 とても面白く観ることができました。 *バングラ、 https://bhangra.amebaownd.com/posts/13063810