■能楽堂七月「水掛聟」「砧」

*国立能楽堂七月定例公演の□2舞台を観る.
□狂言・大蔵流・水掛聟■出演:山本則孝,山本東次郎,山本凛太郎
□能・観世流・砧(梓之出)■出演:観世銕之丞,観世淳夫,福王茂十郎ほか
■国立能楽堂,2023.7.5
■「水掛聟(みずかけむこ)」は舅(しゅうと)と聟(むこ)の喧嘩話である。 ここに嫁が入ってきて三角関係が出来上がる。 狂言はこの話に事欠かない。 
「砧(きぬた)」は世阿弥の自信作と聞いている。 ・・夫が所用で都から帰らない、妻は待ちわびているが。 そのうち妻は恋慕の病で亡くなってしまう・・。
夫は律義だが妻をどう思っているのか一言も語らない。 妻は夫に裏切られたと思っている。 意味深な夫婦にみえる。 幽霊になった妻が夫に迫るが夫は手を合わせるだけだ。 そして梓弓を鳴らし法華経を唱え妻の亡霊を成仏させる。 面はシテが深井から痩女へ、ツレは小面。
ワキとツレ、ツレとシテの対話は具体的である。 しかし地謡の占有率が高い。 しかも役者たちは、歩きは多いが動きは少ない。 より存在が際立つ。 これらが重ね合わされて地謡の抽象と対話の具体が融合し独特な言葉世界が出現する。 後場には太鼓も入った囃子がこの世界に加わる。 観世銕之丞の周りに福王茂十郎、山本東次郎を配して万全を期した。 世阿弥の自信は総合力の賜物からくる。
夫は都に行ってロボットになってしまった。 だがしっかり義務を果たす。 義務は愛である。 作品はその重厚さが溢れている。 世阿弥はロボット愛を追求した。 これは未来の物語である。