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■徒花に水やり

 ■作・演出:土田英生,出演:田中美里,桑原裕子,千葉雅子,土田英生,岩松了 ■Streaming+・配信,2021.12.24-31(ザ・スズナリ,2021.12.15-19公演) ■有名演出家が4人も役者で登場するとは驚きです。 興味津々ですね。 劇中劇のように演出中演出など複雑な構造を取り入れてくる? いや、普通の、少しレトロな芝居でした。 ・・4人兄弟の末妹がフィアンセを連れてくる。 しかし彼は兄弟たちの父を死に追いやった元ヤクザだった。 4人はどうする? 次女が劇的な解決方法を編み出すのでは? そして足を洗った元ヤクザと末妹はめでたく結婚するのでは? こう予想しながら観ていたが・・。 けっこう笑えました。 でも家族の絆、兄弟の繋がりがどこか古臭い。 ヤクザを登場したからでしょう。 結末が兄弟でトランプとは、これもです。 ヤクザ風人生から逃げられない。 タイトルがしっくりきました。 男優二人は演技を楽しんでいましたね。 土田英生はどこからみてもチンピラの末裔でしょう。 そして岩松了がニヤケを抑えながら拳銃を振り回すところは地がでていました。 千葉雅子風が全体に感じらる作品です。 *千葉雅子X土田英生舞台制作事業VOL.2 *CoRich、 https://stage.corich.jp/stage/115368 *「ブログ検索」に入れる語句は、土田英生  ・・検索結果は5舞台。

■母 My Mother

■作・演出:鄭義信,企画・出演:みょんふぁ,演奏:イチャンソプ ■下北沢シアター711,2021.12.22-28 ■舞姫・崔承喜(チェ・スンヒ)の娘・安聖姫(アン・ソンヒ)が母を語る一人芝居である。 みょんふぁがカーテンコールでこの企画を十数年温めていたことを話していた。 鄭義信を説得してやっとこの作品ができたようだ。 この舞台で彼女は娘役を演じている。 私が崔承喜を知ったのは2000年に観た映画「伝説の舞姫・崔承喜、金梅子が追う民族のこころ」(藤原智子監督)だった。 ここから崔承喜は忘れられないダンサーの一人になった。 2005年には金梅子(キム・メジャ)の舞踊公演「沈静」で記憶を新たにした。 しかしその後はご無沙汰である。 今回、本多劇場のHPでこの公演を偶然知り急遽チケットを購入した。 崔承喜は今でも行方不明のままである。 舞台では亡命が失敗したことになっている。 娘は語る。 「母は踊りのことしか考えていなかった・・」。 日本・韓国・北朝鮮を渡り歩き激動の時代を生き抜いた母娘の姿が舞台に出現する。 みょんふぁの熱演に拍手。 イ・チャンソプのチャング演奏も一人芝居に深みを与えていた。 *CoRich、 https://stage.corich.jp/stage/114421 *「ブログ検索」に入れる語句は、鄭義信 ・・ 検索結果は3舞台 .

■境界

*下記の□2作品を観る。 ■東京芸術劇場・プレイハウス,2021.12.24-26 □Endless Opening ■演出:山田うん,衣装:飯嶋久美子,出演:Noism1 ■ダンサー9人の衣装それぞれがカラフルでフリルも付いている。 周囲に蝶が飛んでいるようにみえます。 振付におおらかさがあり気持ちが良い。 衣装が微妙な動きを隠してしまい逆に素朴さも感じられる。 軽さ有る春の祭典と言ってよい。 後半に入ると小さなベッドを押しながらダンサー達が登場する。 棺桶だと直感しました。 彼らの笑顔は消え苦味が出てくる。 その棺桶と戯れたあとフリルを脱ぎ捨てる。 これでダンスが成長したようにみえた。 死と再生の物語だと再び直感しました。 生→死→再生、この流れを軽く明るく描いたところに妙味がある。 ダンサーはもちろん、衣装・道具が互いに共鳴して巧くまとまっていました。 □Near Far Here ■演出:金森穣,衣装:堂本教子,出演:Noism0(金森穣,井関佐和子,山田勇気) ■山田うん振付とは真逆の世界です。 しかし振付家二人の境界は近い。 これは再生ではなく生と死の真剣な戯れとでも言うのでしょうか? 生↔死、その境界は鏡です。 バロック系音楽が響くなか、3人が絡み合う振付は複雑で重量感があり見応え十分ですね。 木枠で鏡を意識させる。 それはオルフェウスの冥界への入り口を思い出させてくれる。 鏡の延長とした映像も凝っている。 メランコリアに描かれたような立方体フレームを含め舞台の隅々まで魂が宿っている。 そしてオンブラ・マイ・フで幕が下りる・・。 西欧形而上学をダンスで表現したような舞台だった。 完成度が高く至福の時間を過ごせました。 カテンコールに年末大サービスの薔薇吹雪付きとは嬉しい。 *劇場、 https://www.geigeki.jp/performance/theater279/

■2021年舞台ベスト10

■ 少女都市からの叫び声  演出:久保井研・唐十郎,劇団:唐組 ■ 眠れない夜なんてない  演出:平田オリザ,劇団:青年団 ■ セルセ  演出:中村蓉,主催:東京二期会 ■ 夜への長い旅  演出:フィリップ・ブリーン,主催:Bunkamura ■ 未練の幽霊と怪物ー挫波・敦賀ー  演出:岡田利規,主催:神奈川芸術劇場 ■ ウィルを待ちながら  演出:河合祥一郎,制作:kawai Project ■ ヤコブの井戸  演出:清水寛二,主催:銕仙会 ■ 桜の園  演出:ダニエル・ジャンヌトー,劇団:SPAC ■ 検察官  演出:レオニード・アニシモフ,主催:東京ノーヴイ・アート ■ あーぶくたった、にいたった  演出:西沢栄治,主催:新国立劇場 *並びは上演日順。 当ブログに書かれた作品から選出。 映画・映像は除く。 *「 2020年舞台ベスト10 」

■2021年ライブビューイング・ベスト10

■ シー・ラヴズ・ミー  演出:スコット・エリス,提供:松竹ブロードウェイシネマ ■ シラノ・ド・ベルジュラック  演出:デビィット・ルボー,提供:松竹ブロードウェイシネマ ■ ポーの一族  演出:小池修一郎,劇団:宝塚歌劇団ほか ■ 赤い靴  演出:マシュー・ボーン,劇場:サドラーズ・ウェルズ劇場 ■ カルミナ・ブラーナ  演出:熊川哲也,舞団:K・バレエカンパニー ■ タンホイザー  演出:トビアス・クラッツアー,劇場:バイロイト祝祭劇場 ■ アメリカン・ユートピア  演出:デビット・バーン,劇場:ハドソン劇場 ■ ル・パルク  演出:A・プレルジョカージュ,劇場:オペラ座・ガルニエ宮 ■ ヴァネッサ  演出:キース・ウォーナー,劇場:クライドボーン・ハウス ■ パリのアメリカ人  演出:クリストファー・ウィールドン,提供:松竹ブロードウェイシネマ *並びは上映日順。 当ブログに書かれたライブビューイング作品から選出。 *ライブビューイングとは舞台公演を撮影した映像を作品としたもの。 当ブログではラベルが「映像」に該当。 *「 2020年ライブビューイング・ベスト10 」

■泥人魚

■作:唐十郎,演出:金守珍,出演:宮沢りえ,磯村勇斗,愛希れいか他 ■Bnkamura・シアターコクーン,2021.12.6-29 ■唐十郎作品は台詞に集中しリズムに入り込まないと弾き返されてしまうの。 この作品は入り易いと思う。 でも役者の身体と共鳴しない。 蛍一が中央で動かず科白を喋り続けることが多いから。 それは周囲の大袈裟ないつもの動きとも調和しない。 ブリキ店の床を舞台中舞台にして狭くはしたが、それでも劇場が広過ぎたせいもある。 ブリキ店周囲の美術も目障りだわ。 「風の又三郎」とは違ったアプローチが裏目に出たかな? でもこの広さは初めと終わりの海には効果があった。 それと月影小夜子とヘルパー腰田の声が快く聴こえてきたこともね。 それでも後半は一気に面白くなった。 やすみの熱演が佳境を迎えたからよ。 貯水池の水槽に何人も潜るのはいかにも唐十郎らしさがでている。 でも劇場とのマッチングが悪い。 役者の動きが再び小さくなってしまった。 「下谷万年町」の大きな池とは違い、むしろ水槽が得意の転移21を思い出してしまったわよ。 つまり今日の作品は下北沢の小劇場が似合うということね。 そして科白は唐十郎のいきなり接近してくる言葉で一杯だった。 諫早湾干拓堤防から浦上天主堂、天草四郎、人間魚雷までも、そして義眼から桜貝の鱗へと・・。 「唐十郎の集大成!」とチラシに書いてあったが戯曲としては納得。 やすみ役の宮沢りえは李麗仙の乾いた大陸系の空気を引き継いでいるわね。 *劇場、 https://www.bunkamura.co.jp/cocoon/lineup/21_doroningyo/

(中止)■影のない女

■作曲:R・シュトラウス,演出:ペーター・コンヴィチュニー,指揮:アレホ・ペレス,出演:菅野敦,渡邊仁美,橋爪ゆか他,演奏:新日本フィルハーモニー交響楽団 ■東京文化会館・大ホール,2022.2.9-13 ■「新型コロナウィルス・オミクロン株の世界的な感染状況が悪化の一途をたどっている中・・、 2月の上演は実現不可能であるとの結論に達しました・・」。 二期会初の取り組みだったのに残念だわ。 コロナ下でのチケ購入後の中止は2020年2月以降から累計で35本になってしまった。 *二期会、 http://www.nikikai.net/lineup/die_frau_ohne_schatten2022/index.html

■世界の果からこんにちはⅡ  ■演劇で<世界>を変える、鈴木忠志論

□世界の果からこんにちはⅡ ■演出:鈴木忠志,出演:竹森陽一,内藤千恵子,塩原充知ほか,劇団:SCOT ■吉祥寺シアター,2021.12.18-24 ■演歌は進んで聴くことはないが聞こえると耳をそば立てる。 ラーメンはあまり食べないが大好きだ。 チャンバラ映画は近頃観ないが好きな方だ。 新幹線に乗った時は車窓から富士山を探してしまう。 ヤクザ映画はまず観ないが嫌いではない。 すべてに消極的な私だがこれに沿って日本人を意識したこともほとんど無い。 ぬるま湯に浸かってきたからだろう。 舞台は日本人とは何かを議論していく。 解説的場面が多いのでいつもの劇的感動はやってこない。 昭和時代から日本と生きてきた演出家が未来へ向けてメッセージを送っているような内容だった。 アフタトーク「ショベルカーとギリシャ・その後」(東浩紀x鈴木忠志)は都合で聞かなかった。 *CoRich、 https://stage.corich.jp/stage/115695 □演劇で<世界>を変える,鈴木忠志論 ■著者:菅孝行,出版社:航思社 ■2021.9.15発行 ■吉祥寺公演のチケット取得のついでにこの本も購入する。 8章で構成され、著者の企ては2019年を総括した1章に集約されている。 一言で表すと「鈴木忠志の演出と舞台は世界水準」である。 その指標を次のようにまとめている・・ 1.作品の持続的地域的な招聘実績 2.俳優訓練メソッドの世界的確立 3.他国でのレパートリー・シアター定期公演演目化 4.業績評価の国際的認知と機関顕彰実績 2章からは1960年代から時系列に沿って2018年までの劇団の歩みと作品の解説、批評や注釈で埋められている。 いつものことだが演劇関連の本は読み難い。 理由は対象作品の多くは舞台をみていないことに尽きる。 渡辺保著「 演出家鈴木忠志、その思想と作品 」では14作品が掲載されていたが今回は周辺作品にまで広げている。 注釈が多いので記録書として活用できる。 私が舞台を観る理由は、己の身体を通して世界の見方を変えられるからである。 しかし<世界を変える>舞台でないとそれが出来ない。 *出版社、 http://www.koshisha.co.jp/pub/archives/788

■牧野良三、舞台美術における伝達と表現

■感想は、「 牧野良三、舞台美術における伝達と表現 」      *話題になる語句は「オペラコンチェルタンテ」。

■あーぶくたった、にいたった

■作:別役実,演出:西沢栄治,出演:山本大輔,浅野令子,木下藤次郎,稲川実代子,龍昇 ■新国立劇場・小劇場,2021.12.7-19 ■舞台には電信柱が立っている。 そこに古びた国旗が垂れ下がっている。 下手の床は砂模様がみえ上手にポストが砂に埋もれている。 シュールな風景です。 これぞ別役特注美術です。 上演時間100分の10場で1場10分、でも全体のストーリーは繋がっていきます。 男1と女1の婚礼場面から始まり、・・子供が成長し、・・仕事が嫌になり、・・殺人事件に巻き込まれ、・・死期を向かえるという夫婦物語になっている。 最初の数場は夫婦が漫才をする数コマ漫画をみているようです。 科白の至るところに昭和のしがらみが感じられる。 楽しい対話ですが神経症的でどこか不気味です。 しかし、夫婦は時代の先取りをしている。 現代人の孤独を背負って生きているからです。 二人の悩む生活場面がジーンと胸にくる。 後半になって諄い部分もあったが、削ぎ落した役者の喋りや動きが活きていました。 数年前だが「 ハイキング 」(中野茂樹演出)をみて別役実に興味が湧きました。 あらゆる事柄の密度を上げると面白くなるという確信が持てたからです。 今回の美術や照明、小道具もそれに沿っている。 そして一番は「こつこつプロジェクト」の成果が出ていることでしょう。 <こつこつ>は別役作品と相性抜群かと思います。 *NNTTドラマ2021シーズン作品 *劇場、 https://www.nntt.jac.go.jp/play/bubbling_and_boiling/ *「ブログ検索」に入れる語句は、 西沢栄治  ・・検索結果は2舞台。

■蝶々夫人

■作曲:ジャコモ・プッチーニ,指揮:下野竜也,演出:栗山民也,出演:中村恵理,村上公太,アンドレア・ボルギーニ他,演奏:東京フィルハーモニー交響楽団 ■新国立劇場・オペラパレス,2021.12.5-12 ■2017年からみているが演出家や舞台美術は今回も変わりがない。 ピンカートンが日本人歌手になったところが新しい。 でも違和感はあったわね。 蝶々夫人が日本人の場合はピンカートン役は日本人以外が似合うはず。 米国との法律や宗教そして文化や生活までを比較している作品だから。 「悲劇に至る背景までを感じてほしい・・」。 中村恵理のインタビューの通りの内容になっていた。 近代日本からやってきたような衣装や小道具類、親戚や隣人、母と子そして科白などなど。 その細かいところすべて、特に男と女の関係が観客に突き刺さる。 今でも近代日本を引きずっているのがわかる。 現代にも通じるから悲劇が体感される。 涙なしでは観ていられない。 歌唱は、この劇場の特長を生かして、澄み切った空間を伝わり心の底まで届いていた。 特に蝶々夫人は言うことなし。 米国旗は物語が煮詰まってきたら降ろしたほうが良い。 これはいつもの提案よ。 そして階段を降りる場面は転びやしないかとハラハラする。 なんとかできないかしら? *NNTTオペラ2021シーズン作品 *劇場、 https://www.nntt.jac.go.jp/enjoy/record/detail/37_021780.html *追記・・ピンカートン役は当初ルチアーノ・ガンチだったのね。 今ニュースをみて知った。

■帝国月光写真館

■作:高取英,音楽:J・A・シーザー,演出:流山児祥,出演:塩野谷正幸,伊藤弘子,里美和彦ほか,劇団:流山児★事務所 ■スズナリ,2021.12.8-12 ■物語りの修飾が厚くて嬉しい混乱が続きますね。 最後にじわっとみえてくるのが1940年代という時代の雰囲気です。 具体的な当時の映像や事件が多く出てくるからでしょう。 「三原山自殺事件、新興宗教弾圧、日本軍の動向、月光写真や幻視複製機などなどが虚実入り混じり・・」。 わくわくどきどきですね。 「新作音楽劇」と書いてあったが歌唱は多くない。 怪人二十面相との繋がりは知りませんが、むしろ少年冒険活劇と言ってよい。 テーマはボケましたが1940年は現代と繋がりたいらしい。 なにもかも詰め込んだ凝縮の強さが現れていました。 舞台をみながら先日の「地球空洞説」を思い出してしまった。 期待していたがツマラナカッタからです。 途中の休憩で劇場を後にしてしまった。 理由は多々あるが、やはり劇場が合わなかった(?) IMAホールという多目的劇場です。 ガラーンとした無機質感漂う空間での寺山修司作品&高野美由紀演出は似合わない。 役者が登場し舞台中央に行くのに10歩はかかる。 小劇場系の役者が10歩も歩けますか? 5歩が限度です。 劇団と劇場は切り離せません。 高野美由紀も流山児祥も凝縮力ある舞台が命です。 歩数の少なさもその力を高める一つの手です。 今日のスズナリを観てそう感じました。 *高取英メモリアル2021作品 *CoRich(帝国月光写真館)、 https://stage.corich.jp/stage/115637 *CoRich(地球空洞説)、 https://stage.corich.jp/stage/114930 *「ブログ検索」に入れる語句は、 流山児祥  ・・検索結果は5舞台。

■検察官

■作:ニコライ・ゴーゴリ,演出:レオニード・アニシモフ,劇団:東京ノーヴイ・アート ■梅若能楽学院会館,2021.12.4-5 ■チラシには笑劇と書いてある。 登場者の髪型や鬚をみてもそれが分かります。 地方の領主や小役人が都会から来た放蕩息子を監査人と間違えてしまう「間違いの笑劇」でした。 まるで日常から抜け出してきたような喋り方ですね。 役者たちが科白を喋っている感じがしない。 <静かな演劇>とは違う静けさがある。 この劇団の特長です。 しかも今回は関西弁(?)ときている。 そして舞台は漫才を次々と繋げていくような流れになっている。 例えば市長と病院長、市長と判事、市長と郵便局長、市長と妻、妻と娘等々、漫才大会ですね。 変わった舞台でした。 静かな笑いがあった。 この劇団からはいつも驚きをもらいます。 *CoRich、 https://stage.corich.jp/stage/11584

■アルトゥロ・ウイの興隆

■作:ベルトルト・ブレヒト,演出:白井晃,出演:草彅剛,松尾諭,渡部豪太ほか,音楽:オーサカ=モノレール ■神奈川芸術劇場・ホール,2021.11.14-12.3 ■2005年のハイナー・ミュラーと2020年の白井晃の両舞台は見逃している。 今回やっと観ることができた。 それは2018年の白井晃X草彅剛「 バリーターク 」が面白かったこともある。 今日は観客の9割が若い女性で驚く、硬い作品だが。 役者の贔屓筋かな? 音楽劇とは知らなかったが期待以上だった。 ナチスをシカゴのギャング団に置き換えた作品である。 団のボスであるルイが支配者にのし上がっていく過程を描く。 ルイ役草彅剛は青白い化粧と鋭い目つき、金玉を握りベロ出す姿はヒトラーの亡霊のようだ。 ダンスがもう少し上手ければ言うことなし。  ファンクのジェイムズ・ブラウンの楽曲を背景に赤系衣装で統一した楽団、ダンサー、役者が激しく歌い踊りまくる舞台だ。  加えて観客をも挑発してくる。 いつのまにかヒトラーの大好きな、あの熱狂が場内に充満してくる。 いつの時代になっても1930年代党大会の熱気は時空を越えてじわっとやって来る。 ところでギャングとナチスの関係を字幕で解説するのは興ざめする。 でも字幕がなければ関係がぼやけそうで悩ましい。 ルイの教師役として小林勝也が再び登場したが作者がブレヒトだったことをあらためて思い出させてくれた。 *劇場、 https://www.kaat.jp/d/arturoui2021

■鷗外の怪談

■作・演出:永井愛,出演:松尾貴史,瀬戸さおり,味方亮介ほか,劇団:二兎社 ■東京芸術劇場・シアターウエスト,2021.11.12-12.5 ■幸徳秋水は舞台でよく見かける。 昨年末の「 太平洋食堂 」は大石誠之助、そして今年7月の「 一九一一年 」は大逆事件の判事が主人公でした。 今回は、この事件に森鷗外が関わっていたこと、しかも当弁護士が登場し、さらには女中が大石誠之助と同郷だったことなど驚きの場面が続く。 トリロジーが形作られたと言ってよいでしょう。 そして鷗外は体制側の人間として不当逮捕不当裁判に苦しんでいく・・。  この舞台は政治と共に鷗外の家族そして文壇の話が盛り込まれていて目に暇ができない。 二人目の妻しげとのすれ違い、嫁姑の喧嘩、永井荷風の自然主義批判、早稲田文学と三田文学の対決、また当時の芝居の話も楽しい。 親友の賀古鶴所、文芸スバル担当かつ弁護士の平出修を含め、架空の女中を入れて7人で鷗外の内と外を剥がしていきます。 でも「鷗外はどういう人だかわからない」と言われていた。 彼が何でも屋だったのも一因でしょう。 *二兎社公演45 *劇場、 https://www.geigeki.jp/performance/theater285/ *「ブログ検索」に入れる語句は、 永井愛