■アルトゥロ・ウイの興隆

■作:ベルトルト・ブレヒト,演出:白井晃,出演:草彅剛,松尾諭,渡部豪太ほか,音楽:オーサカ=モノレール
■神奈川芸術劇場・ホール,2021.11.14-12.3
■2005年のハイナー・ミュラーと2020年の白井晃の両舞台は見逃している。 今回やっと観ることができた。 それは2018年の白井晃X草彅剛「バリーターク」が面白かったこともある。 今日は観客の9割が若い女性で驚く、硬い作品だが。 役者の贔屓筋かな?
音楽劇とは知らなかったが期待以上だった。 ナチスをシカゴのギャング団に置き換えた作品である。 団のボスであるルイが支配者にのし上がっていく過程を描く。 ルイ役草彅剛は青白い化粧と鋭い目つき、金玉を握りベロ出す姿はヒトラーの亡霊のようだ。 ダンスがもう少し上手ければ言うことなし。 ファンクのジェイムズ・ブラウンの楽曲を背景に赤系衣装で統一した楽団、ダンサー、役者が激しく歌い踊りまくる舞台だ。 加えて観客をも挑発してくる。 いつのまにかヒトラーの大好きな、あの熱狂が場内に充満してくる。 いつの時代になっても1930年代党大会の熱気は時空を越えてじわっとやって来る。
ところでギャングとナチスの関係を字幕で解説するのは興ざめする。 でも字幕がなければ関係がぼやけそうで悩ましい。 ルイの教師役として小林勝也が再び登場したが作者がブレヒトだったことをあらためて思い出させてくれた。