投稿

4月, 2021の投稿を表示しています

■ゴースト・ライト  ■グレート・ゴースト、偉大なる幽霊たち

□ゴースト・ライト ■演出:J・ノイマイヤー,音楽:F・シューベルト,演奏:タヴィッド・フレイ,出演:ハンブルク・バレエ団 ■NHK.WEB,2021.4.19(バーデン・バーデン祝祭劇場,2020.10.8-10収録) ■ゴースト・ライトとは公演が無いときに舞台を照らすためのライトを指す。 この作品も等身大の電気スタンドが一つ置かれている。 今は天井に蛍光灯を付けることが多い。 ・・舞台端ではピアノ奏者がシューベルトを弾き続ける。 ダンサーたちは分散しテクニックを披露しているような動きを見せる。 衣装もほぼバラバラだ。 数名がシンクロする場面はある。 開始30分くらい経つとデュオが多くなる。 感情のやりとりがみえてくる。 この演出家らしい愛情表現だ。 曲ごとに場面とダンサーが入替る。 でも後半になっても雰囲気は変わらない。 カラフルを抑えた統一感のある衣装が増えてくるが。 そのままゴースト・ライトは静かにフェードアウトする・・。 カーテンコールでは70人近いダンサーが挨拶をしたが出退回数も多かったのでもっと少なく感じた。 この舞台はノイマイヤー2020年9月の新作らしい。 舞台上のダンサーが分散していたのはコロナ禍の為だろう。 振付は起伏がなく平坦な流れで練習風景をそのまま洗練させたような舞台だった。 心身が落ち着き心地よい観後感が残った。 *ハンブルク・バレエ団、 https://www.hamburgballett.de/de/spielplan/stueck.php?AuffNr=501389 □グレート・ゴースト ■演出:ヨアン・ブルジョア,出演:津川友利江,エリーズ・ルグロ他 ■NHK.WEB,2021.4.26(パリ.パンテオン,2017.10.3収録) ■タイトルにゴーストが付いていたのでついでに観る。 ダンスかと思いきやパフォーマンスのような内容だ。 力学を駆使した道具たとえば、起き上りこぼし、回る円盤、トランポリンなどを利用してパフォーマーが演技をする舞台である。 散文詩のようなト書が入るが身体と古典物理学の宇宙観を論じているようだ。 ゴーストはパンテオンつまり霊廟の関係から来ているのかもしれない。 機械的な道具からくる古臭い感じがいい。 どこか長閑さもある。 *NHK、 https://www.nhk.j

(中止)■東京ゴッドファーザーズ

■原作:今敏,台本:土屋理敬,演出:藤田俊太郎,出演:松岡昌宏,マキタスポーツ,夏子ほか ■新国立劇場.小劇場,2021.5.6-30 ■「・・緊急事態宣言発出に伴う政府等の要請を受け、以下の公演を中止することとしました。 ・・5月2日(日)~11日(火) 演劇「東京ゴッドファーザーズ」(11日のシアタートークも中止といたします)」 前半のチケを購入したので宣言に当たってしまった。 昨年から続く購入後の中止はこれで31本目。 1年たっても何も変っていないわね。 *劇場、 https://www.nntt.jac.go.jp/play/tokyo-godfathers/

■逢いにいくの、雨だけど

■作・演出:横山拓也,出演:尾方宜久,異儀田夏葉ほか,演劇ユニットiaku ■三鷹市芸術文化センター・星のホール,2021.4.17-25 ■断片が少しずつ繋がっていきながら・・、やっとパーティ場面で全体がみえました。 人物相関が朧気ながら理解できたと言うことです。 子供時代のちょっとした悪戯で視力を失ってしまった話です。 その子供は歳をとると被害者と加害者になってしまうのだろうか? 大人になっても子供時代の責任を問う人がいる。 厳しいですね。 舞台でも意見が分かれる。 片目を失明した大沢潤は気にかけていない。 そして加害者(?)の金森君子は気にかける。 君子の心は分かります。 でも潤の内心は分かりません。 彼は大人として振舞った? いや彼はこの事件を凍結し子供のままにしたのです。 大人として論じるのを止めたのです。 舞台上の潤の些細な動作、声の調子からもそれが読み取れます。 子供時代は人生の宝物としてそっとしまっておく。 もちろん痛みも一緒にです。 しまっておく幸せを潤は知っているのです。 *第26回OMS戯曲賞佳作受賞作品 *CoRich、 https://stage.corich.jp/stage/111235

■ロミオとジュリエット

■作:W・シェイクスピア,演出:デヴィッド・ルヴォー,出演:オーランド・ブルーム,コンドラ・ラシャド他 ■松竹ブロードウェイシネマ.WEB,2021.3.26-(ブロードウェイ,2013.9.16収録) ■昨年夏に映画館で上映した作品だがWEBで配信中と知る。 演出がルヴォーなので観ることにした。 今年1月の「 シラノ・ド・ベルジュラック 」が面白かった為である。 WEB配信が多いのはコロナ禍のお陰かな? やはり、ルヴォーは期待に答えてくれた。 一言でいうとムラ・ムダ・ムリが感じられないから。 しかも分かり易い。 科白量が多いのにもかかわらず熟れている。 なぜロミオとジュリエットが死に向かっていくのか論理的にも納得できる。 当作品の入門用に持って来いにみえる。 プロが作った舞台である。 ロミオがバイクに乗って登場するのも若者が多い観客好みになっている。 仮死状態のジュリエットのベッドが宙吊りになって場面をまたぐのもスムーズな進行だ。 エイドリアン・ノーブル風なところもある。 コスパの良い舞台にもなっていた。 ブログを書きながら、「ブロードウェイ・システム」の存在を考えてしまった。 前回のシラノと今回のロミオは共通しているところがある。 それは明快かつ明解な舞台だったから。 ブロードウェイ作品はこれら表現がシステムとして確立しているのでは? *松竹ブロードウェイシネマ、 https://broadwaycinema.jp/_ct/17440064

■鈴木忠志の一日  ■鈴木忠志、創造の軌跡  ■SCOT「ニッポンジン」

■出演:鈴木忠志,テオドロス・テルゾプロス,エレン・ローレン,ロバート・ウィルソン,劇団SCOT ■YouTube,2021.2- ■コロナ禍の為か映像配信が多くなった。 WEBサイトに今年掲載された劇団SCOT関連のドキュメンタリー映像3本を観る。 ショベルカーや除雪車に乘って雪かきをしている鈴木忠志の姿を映す。 コロナ禍下での挨拶。 ひんやりする空気に薄青い空の色、雪に反射する眩しい光がいいわね。 次に鈴木メソッドの練習風景、あいだに6作品の断片映像が挟まれているの。 インタビューは3人、・・ロバート・ウィルソンは若い!? 「ニッポンジン」を含め映像を見ていると様式美学の鋭さがより伝わってくる。 動作と科白、つまり身体と声が映像は時間軸に沿って共鳴が起こるようにみえる。 でも劇場で観るとそうはならない。 たぶん様式への共鳴が空間に出現するから。 ここが映画と舞台の感動の違いだとおもう。 映画はリズムが大事ね、ドキュメンタリーだからまぁどうでもいいけど。 *YouTube、 https://www.youtube.com/watch?v=PTDA9_6EY9M

■斬られの仙太

■作:三好十郎,演出:演出:上村聡史,出演:伊達暁,瀬口寛之,小泉将臣ほか ■新国立劇場.小劇場,2021.4.6-25 ■天狗党と言えば漫画?で知ったのが最初かもしれない。 時代劇は台詞を当時の言葉に近づけるか否かで印象が変わってくる。 今回は幕が開いて10分間は役者が何を喋っているのか聞き取れなかった。 方言が入れば尚更です。 しかし慣れるのも早い。 言葉とは不思議ですね。 それとチャンバラ(剣術)場面が多いのも楽しい、舞台では舞踊に近いが。 主人公仙太は百姓から博徒に流れ、次に天狗党に参加し切込み隊長となりタイトルの如く斬って斬られながら時代を走っていく。 仙太は百姓寄りの正義は持つが水戸浪士加多の尊王攘夷から距離を置いているようにみえる。 その中で仙太のカネの扱い方が面白い。 お妙に持ち金20両すべてを恵む場面、罪悪がみえない賭場荒らしをする、周囲の同士からカネを集め女に渡すのは並外れた行動にみえる。 女に惚れていたのは分かるが、仙太にとってカネは天狗のような妖怪魔物だと承知していたのでは!? それは贈与に似たものかもしれない。 しかし天狗党は違った。 天狗党が天狗ではないことを仙太は見抜いていたのでしょう。 終幕、彼は<天狗探し>を止め百姓に戻っていく・・。 <天狗>の二つの意味、鼻高々の出来星か、妖怪魔物か、を加多と仙太の行動から寄り道をしながら観ました。 歴史を取るか、仙太の人生(天狗探し)を取るか、両者が上手く練れていたと思います。 *NNTT演劇2020シーズン作品 *劇場、 https://www.nntt.jac.go.jp/play/kirarenosenta/ *「ブログ検索」に入れる語句は、上村聡史 *追記・・周りの席で米沢唯の記事を読んでいる客が多いのに気が付く。 彼女がダンサーということは知っていたし舞台も観ている。 なぜ彼女が演劇に? 気になったので帰りにプログラムを買った。 なんと彼女の父が有名演出家だったとは驚きです。

■夜鳴きうぐいす  ■イオランタ

■演出・美術・衣装:ヤニス・コッコス,指揮:高関健,演奏:東京フィルハーモニー交響楽団 ■新国立劇場・オペラパレス,2021.4.4-8 □「夜鳴きうぐいす」,原作:ハンス・アンデルセン,台本・作曲:イーゴリ・ストラヴィンスキー,出演:三宅理恵,針生美智子,伊藤達人ほか ■・・山水画のような風景の中を舟を走らせる漁師と鶯の訪れの1幕は緊張感を引きずるがどこか長閑。 2幕はその真逆で都市風景の皇帝宮殿が現れる。 ハリボテ感が楽しい。 でもロボット鶯を操縦している仮面ライダーには驚き! 目が釘付けになり元に戻るのが大変よ。 3幕の空に漂う大凧のような死神に再び驚き! これも同じ。 漁師の声が山水に響き静けさを取り戻し幕が下りる・・。 山水と都市、漫画(仮面ライダー)と宗教(死神)の対比が尋常ではない。 しかしストラヴィンスキーのパロディはこの対比をものともしない。 さすが新音楽ね。 漁師や鶯は聴きごたえがあったがやはりこの二人は風景かな? 物語を進めるのは皇帝ただ一人、しかも歌唱の量も質も与えられない。 この作品の上演を見ないのは主役のいない構造にある。 逆に想像力でいくらでも面白くできる作品かもしれない。  □「イオランタ」,原作:ヘンリク・ヘルツ,作曲:ピョートル・チャイコフスキー,出演:妻屋秀和,井上大聞,内山信吾ほか ■盲目とは?肉体と精神の統合とは?等々いろいろ考えさせられる舞台だった。 字幕が充実していたこともあるわね。 2015年METで観た時は強い宗教性を感じた記憶がある。 それは淡々と時間が進む強さと言ってよい。 今回はその強さは無い。 時間が乱れる感情重視にみえる。 たとえば父と娘の愛情が歌唱に表れていた。 二人の声は心に響いたわよ。 終幕の歓喜の高揚もね。 美術は「夜鳴き鶯」と違い平凡だった。 やはりチャイコフスキーだと博打ができない? *NNTTオペラ2020シーズン作品 *劇場、 https://www.nntt.jac.go.jp/opera/iolanta/ *2021.4.8追記・・劇場 の「 小さなお客様向けのあらすじ」をみて、はたして仮面ライダーや大凧死神の登場した理由が分かった。 作品が童話だったこともあらためて思い出したわよ。 小さな客は何人か見たけどスタッフもここまで気を配るとは大変ね。

■シラノ・ド・ベルジュラック

■作:エドモン・ロスタン,演出:ドゥニ・ポダリデス,出演:ミシェル・ビュイエルモーズ,フランソワーズ・ジラール他 ■Bunkamura.ルシネマ,2021.4.2-8(リシュリュー劇場,2017.7.4収録) ■活気ある弾けるような舞台裏を映す出足場面が素晴らしい。 さすがコメディ・フランセーズか? 馬蹄形の劇場もなかなかのものだ。 しかし舞台は、今年初めに観た ブロードウェイ版 のような易しさが無い。 隙間から楽しさが伝わってくるのだが・・、フランス語が母語でないと面白さが味わえないのかもしれない。 科白が多いと字幕問題はいつものことだし、ローカルな知識も必要だ。 再びシラノが遠くなってしまった。 演出家や役者のインタビューが途中に入る。 この舞台では調理場を含め豊かな美術が目に留まったが、小道具係の物持ちの良い手作りの世界が紹介されていたので納得。 コロナ禍でライブビューイングが流行っているがフランスはオペラ座の上映しかない。 今回のように演劇系も一つ欲しいところだ。 *コメディ・フランセーズinシネマ *映画com、 https://eiga.com/movie/94700/

■更地の隣人

■作・演出:平松れい子,企画:近藤強,出演:折笠富美子,近藤強,根本江理ほか ■アトリエ春風舎,2021.3.31-4.4 ■アマチュア無線はSNSの元祖かもしれない。 しかも媒体が声のため舞台に馴染む。 また電話ではワイヤレスマイクを多用している。 このように、相手の見えない対話が続くと異化効果が現れますね。 役者たちの抽象性ある動きも効果を高めて面白い。 幕が開き、土砂災害で妻を失った夫と、夫を失った妻の交流が始まる。 二人は不明の相手を探している。 男は土砂をかき分け妻を探し、女は無線を介して夫に連絡しようとする・・。 途中で謎が溶けてくる。 不明の妻は子供を見殺しにして精神を病んでいたらしい。 災害現場から彼女の遺品がみつかり、冷たく当たっていた妻への反省が男に募ってくる。 また不明の夫が突然登場し、災害直前に妻へ離婚を申し込んでいたことが語られる。 無線機を介しての妻の言動は離婚を受け入れられなかった為ですか。 終幕、男と女は残骸の供養をして過去のしがらみを捨て新しく生きようと踏み出す・・。 二組夫婦の対称性を重視し過ぎて物語に無理が出たようにみえます。 妻への反省、夫からの離婚がどこか突飛な感じがしました。 詰め込み過ぎて、男と女の心の流れが途切れてしまった。 良く出来ている形を崩すのも悩ましい。 作者は内容より形式の優位性を求めているようです。 久しぶりのアトリエです。 内壁が新しくなり照明も取り替えたようです。 建物や出入口はそのままだが別の劇場に居るようでした。 *青年団若手自主企画vol.85近藤企画 *CoRich、 https://stage.corich.jp/stage/110915