2016年11月29日火曜日

■眠れる森の美女

■演出・再振付:熊川哲也,音楽:P・I・チャイコフスキ,指揮:井田勝大,出演:中村祥子,遅沢佑介,Kバレエカンパニ
■恵比寿ガーデンシネマ,2016.11.26-12.9(東京文化会館,2016.6.11収録)
■舞台にすんなり入っていける。 序幕は青と紫で統一されていて心が休まるからよ。 振付では手の繊細な動きが東洋的にみえる。 手は多くの意味を作り出し物語を呼び寄せるの。 
オーロラ姫が16歳になった一幕は全体が黄と緑に変わる。 沢山の精霊が登場するけど名前を聞いただけで物語を豊かに膨らませることができる。 音楽も寄り添っていて舞台に乱れがみえない。 
眠りに入った二幕は茶で統一。 衣装はバッスル・スタイル風で驚きね。 でも王子がカラボスをやっつけて姫を救い出す流れはちょっと急ぎ過ぎてリズムが狂ったわ。
三幕の結婚式は金色よ。 時間をたっぷり取っているからダンサーたちを十分に堪能できた。 姫中村祥子は力強い。 余裕の踊りね。 王子遅沢佑介も彼女の鋼鉄ボディをしっかり受け止めていた。 あと宝石の精井澤諒と青い鳥池本祥真も目に留まったわ。 ダイナミックだけど井澤は剛で池本は柔と言ったところかしら。 Kバレエカンパニーの舞台は独特な個性があって「うーん、ナルホド!」と感嘆の連続ね。
*カンパニーサイト、http://www.k-ballet.co.jp/news/view/1717

2016年11月28日月曜日

■社会の敵はだれだ、イプセン作「人民の敵」変奏曲

■台本・演出:毛利三彌,出演:池田勝,森岡正次郎,森源次郎,山口眞司,水野ゆふ,小林亜紀子
■あうるすぽっと,2016.11.26-27
■足尾銅山鉱毒事件で幕を開けたが前作品の要約らしい。 次には北陸海沿いの町で起きたヘルスセンター温泉汚染隠蔽事件に進む。 隠蔽するのは利権や町民の生活がかかっているからである。 センタで働ける、客が来れば町が潤う、しかも汚染で病人は出ていない・・。
そこに原発建設計画が持ち上がる。 再び町民は二手に分かれ賛否の行動を起こす。 賛成の理由は汚染水と同じである。 終幕、原発賛成のヘルスセンタ長森寅之助とその弟で原発反対の医者森藤吉が建設是非の集会で賛成と反対の演説をして幕が下りる。
兄弟、夫婦、父娘、父孫の関係が演じられるがセリフを含めとても現実的である。 社会と個人の両方を天秤にかけながら各自の行動を展開していくからだとおもう。 特に主人公森藤吉の妻はな子の会話はクールだった。 演出家は世間と舞台の違いが分かっている。 しかし舞台では現実を超えたリアルに近づこうとはしていない。 現実をそのままリアルにしたいらしい。 このため終幕の演説は劇的とは言えない。 だがいろいろ考えさせられる内容である。
やはり演出家も終幕の演説が気になっているらしい。 カーテンコールに登場し観客の意見を求めた。 地震と津波なら人は立ち直ることができるが原発事故は自然災害とは比較にならない深い傷跡を残すとの発言がある。 劇中でも放射性廃棄物を10万年間管理する話があった。 原子力を管理する時間は生活世界とは桁違いの量と質を必要とする。 その技術は今も無い。
にもかかわらずヘルスセンタ汚染隠蔽も原発建設も町民は同じところに行き着く。 天秤にかけるのは損得からの教訓からきている。 確率が低い災害に遭うのは運が悪い、そして発生したら何とかするしかないと。 しかし「選挙の一票と人格を持った一人は違う・・」と森藤吉は核心に迫る演説をする。 対立すればするほど政治は一人を一票に変質させすべてを数で処理する。
*第3回イプセン演劇祭参加作品
*劇場サイト、https://www.owlspot.jp/performance/161122.html

2016年11月25日金曜日

■景清

■原作:近松門左衛門,脚本:フジノサツコ,演出:森新太郎,出演:演劇集団円,橋爪功ほか
■吉祥寺シアタ,2016.11.17-27
■人形劇とは驚きです。 しかし等身大の人形はすぐに舞台に馴染みます。 顔がのっぺらぼうだからでしょう。 源頼朝の家臣たちは特に大きく作られている。 権力の移行が分かります。 人形遣いも人形から離れて主張する場面が多い。 柔軟な構造です。 ただし景清とその娘だけは人形を使いません。 景清を演ずる橋爪功は声調が柔らかい。 反してめっぽう力が強い。 悪七兵衛と言われるだけありますがこの差に面白さと違和感を覚えます。
小野姫の手紙がもとで嫉妬した阿古屋を死に追いやってしまう固さを景清は持っている。 自身の目を潰すのも同じでしょう。 この為か人間関係の思いから来る感動は少ない。 内容より自己の厳しさを表す形が優位にみえる舞台です。
景清の娘は不思議な存在です。 景清が阿古屋の腹を割いて取り出した子であることは物語の途中で分かります。 娘は武士=もののふに殺されたと言っています。 父を訪ねた時には既に死んでいるのでしょうか? 彼女は殺されるとき緑豊かな自然に囲まれた穏やかな風景でなかったことを悔やみます。 再びの別れ際に父も武士=もののふだったことを許したのでしょうか? 幾つかの疑問を持ちながら幕が下りてしまった。 舞台背景に大きく書かれている「南無・・」は武士という固い生き方をしている景清が本当は柔らかく生きたいと願っている言葉かもしれません。
*劇場サイト、http://www.musashino-culture.or.jp/k_theatre/eventinfo/2016/08/post-51.html

2016年11月22日火曜日

■ロミオとジュリエット

■作:W・シェイクスピア,演出:K・ブラナ,出演:L・ジェイムス,R・マッデン,D・ジャコブ
■TOHOシネマズ日本橋,2016.11.18-24(ガリック劇場2015年?収録)
■映画作品として編集しているから舞台の匂いは少ない。 例えばカラーではなくて白黒なの。 1960年前後のイタリア映画みたい。 でも現代調のリズムが入り混じって独特な舞台になっている。 前半は客席から笑い声が絶えなかった。 字幕からも分かる気がする。
そしてジュリエットと乳母や両親の対話に力が入っている。 この話の中身は現代女性の結婚にも通じるわね。 それとストーリーが丁寧に作られている。 なぜそのような事件が起きるかを事前に筋道をつけているからよ。 また予感を口にすることも多い。 この二つが若い人向けとして分かり易い内容にしているのね。 ケネス・ブラナのダイナミックな感じは出ていた。 そして前回の「冬物語」より計算されてまとまっている。 ブラナのシェイクスピアは初期作品のほうが相性が良いのかしら? 
*作品サイト、http://www.btlive.jp/romeoandjuliet

2016年11月20日日曜日

■ラ・ボエーム

■作曲:G・プッチーニ,指揮:P・アリヴァベーニ,演出:栗國淳,出演:A・フローリアン,G・テッラノーヴァ,F・カピタヌッチ,石橋栄実,森口賢二,松位浩
■新国立劇場・オペラパレス,2016.11.17-30
■この作品は息抜きができる。 歌唱と演奏に身を委ねていればいいの。 楽しい舞台だった。 ミミとロドルフォ、マルチェッロとムゼッタの歌手の組み合わせも良かったわ。 ロドルフォ役テッラノーヴァは声が透っていて素晴らしい。 あとムゼッタ役石橋栄実も存在感が出ていた。 時代が19世紀だと日本人歌手も違和感が無い。 これも結構重要だとおもう。 日本上演の多くは主役だけが外国人だからうまく溶け合わないのよ。
第二幕のパリの街はなかなかね。 街並みが動くからカルチェ・ラタンを歩いているようだった。 またカフェ・モミュスで歌手がテーブルに座って客席と対面する場面はとても楽しかった。 早いけど今年一年の疲れが取れた気分になれたわよ。
*NNTTオペラ2016シーズン作品
*劇場サイト、http://www.nntt.jac.go.jp/opera/performance/151224_007955.html

2016年11月19日土曜日

■DANCE to the Future 2016 Autumn ダンス・トゥ・ザ・フューチャー

■アドバイザ:中村恩恵,振付:貝川鐵夫,木下嘉人,宝満直也,福田紘也
■新国立劇場・小劇場,2016.11.18-20
■ダンスには狭く感じる舞台だ。 ダンサーが五人になると息が詰まる。 第三部の「即興」は6人も登場するので渋谷の繁華街道端でワイワイしているだけにみえた。 とりあえず客席前3列を舞台に組み込めばよい。 しかし舞台を広くするとバレエテクニックが増える予感もする。 振付家は冒険を避けバレエから離れられなくなる。 本日の上演は7作品。 この中でビビッと感じたのは以下の二つ(上演順)。
1.「ブリッツェン」(振付:木下嘉人)
ダンサーたちの動きが引き締まっていた。 3人のまとまりも良い。 音楽の選択も合っていた。 バレエを越えていたところがいい。 一番印象に残った。 
2.「福田紘也」(振付:福田紘也)
真面目な作品が多い中でこれは羽目を外していて楽しい。 机を使った手足の動きが面白い。 初めての振付で清水寺から飛び降りたのがよかった。 でもコーラを何度も飲むので見ていてハラハラした。 拍手が少なかったのは観客が保守的だからである。
そのほかの作品では、「ロマンス」(振付:貝川鐵夫)は音楽が平凡である。 振付と相性が良かったが冒険をしてもよい。 「Disconnect」(振付:宝満直也)は音楽とダンサーの動きが非同期でせわしなかった。 お互いの良さを相殺してしまった。 「即興」のピアノ、ヴァイオリン、オーボエ演奏は楽しませてくれた。
*NNTTダンス2016シーズン作品
*劇場サイト、http://www.nntt.jac.go.jp/dance/performance/151224_007947.html

2016年11月18日金曜日

■福島を上演する

■作・演出:松田正隆,マレビトの会
■にしすがも創造舎,2016.11.17-20
■開幕前の作家松田正隆の挨拶で、作品は20に分かれ四日間四公演で毎日5章ずつ上演するとの話がある。 つまり内容が毎日違うらしい。
旧体育館をそのまま使った舞台です。 照明も普通光で音楽も小道具も無く、役者は普段着で登場しパントマイムを取り入れて福島の今を表現していきます。 東日本大震災から既に5年が過ぎているので舞台の日常生活は見慣れた風景です。 でも時々傷跡が見える。 復興補償金や放射能測定器、風評被害が話題にされる。
「静かな演劇」を観ているようです。 それも相当静かです。 日常と舞台の境界線を歩いているような感覚がやってくる。 役者の棒読みのような科白と動き、それにパントマイムが独特なリズムを持っている。 このリズムが小さい傷跡をも感じさせる。 これが日常場面と一緒になり観る者の意識に積み重なっていく。 多分この積み重ねがドラマに変換され見え始めるのでしょう。 繋がっているようないないような5章を観終わると福島の生きる今が形として残るのです。 
作者も言っている。 「・・それらの集積を通じて対象とする都市に固有の時間/歴史を探り出そうとする」。 映画ではよくありますが、リズムある場面の集積がドラマを作る方法は舞台では珍しい。 会場で配っていた資料をみても作者は小津安二郎を意識していますね。 アーフタトークはみなかった。 そして四公演の一日しか予定が残念ながら取れません。
*F/Tフェスティバル・トーキョー2016参加作品
*F/Tサイト、http://www.festival-tokyo.jp/16/program/performing_fukushima/

2016年11月15日火曜日

■遠野物語、奇ッ怪其ノ参

■原作:柳田国男,演出:前川知大,出演:仲村トオル,瀬戸康史,山内圭哉,池谷のぶえ,安井順平,浜田信也,安藤輪子,石山蓮華,銀粉蝶
■世田谷パブリックシアタ,2016.10.31-11.20
■説話の一つ一つが劇中劇として演じられます。 語りと演技の計算され尽くした絡み合いが素晴らしい。 劇中劇に入ってから再び戻る時は夢から覚めたようです。 岩手の風景でしょうか? 雪の白、夏の青、流れる雲そして異形の者が現れる赤の、刻々と変化する背景の山の絵も迫力が有る。
しかし物語は分断されてしまう。 標準化を推し進める平地人イノウエと山人を見ることができるヤナギダの論争が背後で展開されるからです。 科学的説明は説得力があるし二人の議論は面白い。 しかし論争がそのまま観客の現実に結びつくので芝居の感動は分散されてしまう。
それでも論争を乗り越え遠野物語が持っている豊かな物語世界に感じ入ることができます。 山人・天狗・河童や死者の世界が身近にある日常はやはり生が充実しますね。 総合力を背景に舞台での語りの面白さを十分に味わいました。
「奇ツ怪,其ノ弐」(世田谷パブリックシアター,2011年)
*劇場サイト、https://setagaya-pt.jp/performances/20161031toono.html

2016年11月12日土曜日

■トリスタンとイゾルデ

■曲:R・ワーグナー,指揮:S・ラトル,演出:M・レトリンスキ,出演:N・ステンメ,S・スケルトン,R・ペーパ,E・グバノヴァ,E・ニキティン
■新宿ピカデリ,2016.11.12-18(MET,2016.10.8収録)
■この作品を観るといつも愛と死の妙薬を飲んでしまったような気分になってしまう。 ストーリーは分解され愛と死のことしか考えられない。 だから歌唱と音楽だけあればよい。 映像を再び持ち出したので面白さが半減したけど前回*1よりずっと良くなっていた。 余分な映像は見た途端その意味を考えてしまい舞台から一瞬離れてしまうの。 でも過去の出来事だけは映像に頼るしかないのかな?
トリスタン役スチュアート・スケルトンがイプセンの演劇のような演出だったとインタビュウで言っていたけど一幕はその通り。 でも他作品と違ってパッションの塊だけが迫ってくる。 幕が上がるほどワーグナーになっていくけど、いつもの宇宙的爽快さは無い。
男性歌手たちの風貌は全員バス的だったけど歌唱は抜群によかった。 テノールは滑るような感じだったのでもう少し噛み締めると厚みが出るわね。 日本語字幕は分かり難いところがあったけど良しとしましょ。
*1、「トリスタンとイゾルデ」(MET,2008年)
*METライブビューイング2016作品
*作品サイト、http://www.shochiku.co.jp/met/program/s/2016-17/#program_01

2016年11月11日金曜日

■戦火の馬

■作:M・モーパーゴ,脚本:N・スタフォード,演出:M・エリオット,T・モリス,出演:S・D・ヤング
■東宝シネマズ六本木,2016.11.11-16(NT2014年?収録)
■馬のダイナミックな演技に驚きました。 繊細さも持ち合わせている。 等身大パペットの中に二人の人形遣いが入り棒遣いも加えると3人から5人で操作している。 馬以外にもいろいろな人形や大道具が登場し楽しい舞台になっている。 照明や映像も迫力満点です。
前半のイングランド農場にはアヒルやナイチンゲール?が飛び回る長閑な風景が広がり、後半のフランスの戦場では大砲や戦車が激しく動き回り光景が一変する驚きがあります。
特に戦場が具体的に描かれている。 イギリスやフランス、ドイツの各兵隊や農民が入り交ざるので複数言語の面白さが出ている。 また第一次世界大戦は機関銃・戦車・毒ガスが登場したので今まで活躍していた騎兵隊は使い物にならない。 このため次々と軍馬が死んでいく。 作者は大戦で1千万頭の軍馬が死んだと予想している。 英国からは百万頭が戦地へ渡り数万頭しか戻れなかった。
このような中で馬のジョーイが主人公の農家息子アルバートと共に苦難を乗り越えて戦場から帰るという話です。 ジョーイとアルバートの強い絆は素晴らしい。
原作では馬の一人称だが舞台では周囲の人々の語りで進められると作者がインタビューで話していたが、この作品の舞台化は多くの困難があったらしい。 役者がお面や尾を付けてそのまま馬を演じようとした案もあったようですね。 この芝居に感動したスピルバーグが後に映画化したというのも頷けます。
*NTLナショナル・シアター・ライヴ作品
*映画comサイト、https://eiga.com/movie/82984/

2016年11月8日火曜日

■冬物語

■作:W・シェイクスピア,演出:R・アシュホード,K・ブラナ,出演:K・ブラナ,J・デンチ
■東宝シネマズ日本橋,2016.11.4-10(ガリック劇場2015年収録)
■シアタ・ライブがまた一つ増えたのね。 ケネス・ブラナを調べたら「ヘンリ五世」(1989年)、「愛と死の間で」(1991年)、「から騒ぎ」(1993年)、「マイティーソー」(2011年)を過去に観ていた。 またRTCを設立して1990年東京グローブ座で上演している。 
ガリック劇場はとても素敵な感じがする。 舞台や客席がこじんまりしていてくつろげそうだわ。 でもブラナには似合わない。 リオンティーズの妻を疑う流れや、農民の歌と踊り、運命の再会など全てにわたり抑揚が効き過ぎているからよ。 台詞の楽しさは伝わったけど、どこか映画的にみえる。 この作品はもっとシットリ感があったほうがいいと思う。 これがブラナのシェイクスピアかもね。 次の「ロメオとジュリエット」もどう出るか楽しみだわ。
「冬物語」(ROH2014年)
*作品サイト、http://www.btlive.jp/winterstale

2016年11月6日日曜日

■治天ノ君

■脚本:古川健,演出:日澤雄介,出演:劇団チョコレートケーキ
■シアタートラム,2016.10.27-11.6
■主人公大正天皇嘉仁が明治と昭和の皇室を繋げながら、その先にある平成をも射程に入れて天皇とは何かを考えさせてくれる舞台である。 総理大臣大隈重信は言う。 「天皇とは神棚である」。 しかし人間天皇を目指そうとした嘉仁は現人神である父睦仁と祖父を目指す息子裕仁の板挟みに遭う。 これを達成できたのは、彼の持病や大隈が言う「第一次世界大戦の火事場泥棒」も背景にあったが、一番は側近を遠ざけての皇后節子との結婚生活だった。 世界大戦終結後の大正時代は爛熟する文化の匂いもする。 それは東宮輔導有栖川宮威仁や宮内大臣牧野伸顕が言う「日清日露戦争で臣民は疲れ切ってしまった」反動から来ている。 これも嘉仁の行動を後押ししたのだろう。
今、大正時代と周囲の政治動向が少しずつ近づいている。 脚本家も生前退位の話をしているが、先日「明治の日」制定の動きがあることをニュースで知った。 はたして昭和天皇即位のなか群衆の熱狂と万歳、君が代演奏で幕が閉じる・・。
*劇場サイト、https://setagaya-pt.jp/performances/201610chiten.html

■パール食堂のマリア

■作・演出:吉田小夏,出演:青☆組*1
■吉祥寺シアタ,2016.11.1-7
■「治天ノ君」観劇後、バスで下北沢に出て井の頭線で吉祥寺に向かう。 劇団化5周年記念作品ということで観ることにしたのだが、どうしても舞台に入ることができない。 先ほどの劇チョコが頭から離れないからである。 今日は作品の組み合わせが悪かった。
清潔感溢れる街が組み立てられている。 コンクリートのトンネルと木の壁の組み合わせ、中央に2組のテーブルがあるパール食堂、周囲には緑の外灯や紫の家のドアなど色と形の統一感が目につく美術だ。 よく考えられているが素人が一生懸命作った舞台にみえる。
チラシには1970年代の横浜とあるが1950年後半の科白と年代不詳の舞台。 この時代や場所の差異は何から来ているのだろう? 
街娼もうろつき人間猫も登場する。 バール食堂の家族の物語である。 バーや食堂の労働者、中学校教員や生徒家族の日常を描いていく。 そしてマリアとは誰=何なのか? 美術と同じで役者たちの動きと台詞もとてもよく考えられている。 形式美を追求しているような感じを受ける。 全体がひとつの詩ではないだろうか? 観客席からは幾つかの場面で共感の頷きが聞こえる。 不思議な感じを受けたが残念ながらリズムに乗れない。 続けてしかも異質な芝居を観るのは心身に良くない。
*1、「初雪の味・鎌倉編」(2012年)

2016年11月5日土曜日

■翻案・犬の静脈に嫉妬することから

■振付:小林嵯峨*1,出演:榎木ふく,犬吠埼ヂル,小松亨,相良ゆみ,入江平,横滑ナナ
■d-倉庫,2016.11.4-6
■客の平均年齢は高いですが若い女性も多いのは小林嵯峨だからでしょう。 それに答えてか彼女は色打掛と角隠しで登場します。 舞台中央に薄汚い階段が延び、下手の錆びついた洗面台から水が垂れている。 嫁入り衣装での踊りは異様です。 衣装を脱いで白の長襦袢の後ろ姿には血が滲み出ている・・。 後半、薄い肌着だけで女の性を表現する独舞は圧倒されます。 あと一歩で鬼婆ですね。
ダンサー6人が登場しますが日常の目をしています。 途中、犬の首をぶら下げた乞食仙人が登場し彼女を慰めますが喜劇的です。 土方巽のチラシ文章の激しさとは違う感じがします。 翻案とあるように小林嵯峨の思いが表現されているのでしょう。 女というものを前面に出している作品に見えました。
*1、「kRUMI-2」(d-倉庫,2010年)
*秋工会サイトhttp://akiko-tokyo-doso.main.jp/kikoh/aki_kikoh_20160831.html

2016年11月4日金曜日

■ワンピース

■作:尾田栄一郎,脚本:横内謙介,演出:市川猿之助,出演:市川猿之助,市川右近,坂東巳之助ほか
■新宿ピカデリ,2016.10.22-(新橋演舞場2015.11収録)
■ダイジェスト版を見ているような作品です。 初めての人には分かり難い。 そのためかト書きや解説、自己紹介が多い。 カットの影響も有るのでしょう。 登場人物の超人的技も役者身体に結び付かない。 映像などで補うしかありません。 美術や衣装そしてアクロバットのような舞台を楽しむ作品です。
自由や革命から仲間との友情に比重を移していきます。 場面ごとに家族としての仲間の団結を強調します。 ストーリーが分断されている為この強調だけが積み重なっていく。 言葉だけが独り歩きをしている。
ルフィの市川猿之助は目を細め開いた口から歯を見せ始終表情を変えない笑顔を徹底していきます。 この顔こそが仲間や友情という独り歩きの言葉をかみ砕いて再び舞台に取り込みなんとか生き返らせようとしているのではないでしょうか? この笑顔が強く残る舞台でした。
*シネマ歌舞伎第25弾作品
*作品サイト、http://www.shochiku.co.jp/cinemakabuki/onepiece/