■福島を上演する

■作・演出:松田正隆,マレビトの会
■にしすがも創造舎,2016.11.17-20
■開幕前の作家松田正隆の挨拶で、作品は20に分かれ四日間四公演で毎日5章ずつ上演するとの話がある。 つまり内容が毎日違うらしい。
旧体育館をそのまま使った舞台です。 照明も普通光で音楽も小道具も無く、役者は普段着で登場しパントマイムを取り入れて福島の今を表現していきます。 東日本大震災から既に5年が過ぎているので舞台の日常生活は見慣れた風景です。 でも時々傷跡が見える。 復興補償金や放射能測定器、風評被害が話題にされる。
「静かな演劇」を観ているようです。 それも相当静かです。 日常と舞台の境界線を歩いているような感覚がやってくる。 役者の棒読みのような科白と動き、それにパントマイムが独特なリズムを持っている。 このリズムが小さい傷跡をも感じさせる。 これが日常場面と一緒になり観る者の意識に積み重なっていく。 多分この積み重ねがドラマに変換され見え始めるのでしょう。 繋がっているようないないような5章を観終わると福島の生きる今が形として残るのです。 
作者も言っている。 「・・それらの集積を通じて対象とする都市に固有の時間/歴史を探り出そうとする」。 映画ではよくありますが、リズムある場面の集積がドラマを作る方法は舞台では珍しい。 会場で配っていた資料をみても作者は小津安二郎を意識していますね。 アーフタトークはみなかった。 そして四公演の一日しか予定が残念ながら取れません。
*F/Tフェスティバル・トーキョー2016参加作品
*F/Tサイト、http://www.festival-tokyo.jp/16/program/performing_fukushima/