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■カリギュラ

■作:アルベール・カミュ,演出:ディアナ・ドブレヴァ,劇団:ブルガリア・イヴァン・ヴァゾフ国立劇場 ■静岡芸術劇場,2022.4.29-30 ■イヴァン・ヴァゾフ劇場は初来日と聞きました。 ブルガリアと言えばヨーグルトですね。 そのブルガリアがロシアから天然ガスの供給を停止されたニュースはつい先日のことです。 プーチンの仕掛けたウクライナ紛争がローマ皇帝カリギュラの領土拡大政策と重なり舞台は現実味を帯びてくる。 薄暗いなか黒衣装で規律ある兵士たちの動きが舞台を硬くしている。 ヨーロッパ演劇の負の歴史の形ですか? ただ一人、裸体に近い皇帝に観客の視線が絞り込まれていく。 科白も詩的ある硬さを持つ。 字幕でも聴き応え十分です。 権力者の心情が迫ってくるが、それを様式美にまとめあげている。 プレトーク(大岡淳)で「・・自由を論じている」と話していたが、権力と自由の関係は見逃してしまった。 しかし満足しました。 それはギリシャ悲劇を観た後のカタルシスに似ています。 舞台装置の輸送が間に合わなかったそうですが、予告ビデオを見ると中央階段での演技がもっとあったようですね。 座席を並べた舞台前方も気にならない構造でした。 カーテンコールでブルガリア大使館員の挨拶がある。 でも悪天候で交通が止まるのが心配でアフタトーク(演出家x宮城聰)は聞かずに劇場をあとにしました。 *ふじのくに⇆せかい演劇祭2022 *劇場、 https://festival-shizuoka.jp/program/caligula/

■ナクソス島のアリアドネ

■作曲:R・シュトラウス,指揮:マリク・ヤノフスキ,演出:エライジャ・モシンスキー,出演:リーザ・ダーヴィットセン,ブレンダ・レイ,イザベル・レナード他 ■東劇,2022.4.22-28(メトロポリタン歌劇場,2022.3.12収録) ■冒頭にピーター・ゲルブMET総裁のウクライナ支援インタビューが入る。 そして物語は、・・パトロンから悲劇と喜劇を一つにまとめて上演してくれと開幕直前に言われ慌てふためく人々の一幕、そして二幕はそれを見事に成し遂げる・・。 一幕はモリエール「町人貴族」の延長らしい。 混沌とした舞台にみえる。 モーツァルトらしき作曲家役イザベル・レナードの歌と演技を十分に楽しめる内容だった。 次の二幕は前幕の劇中劇になっているの。 ここで悲劇と喜劇を同時に上演することになる。 ギリシャ悲劇アリアドネ役のリーゼ・ダーヴィドセンの歌唱に陶酔できたのは最高の収穫だわ。   そして 所々にアルレッキーノに囲まれたツェルビネッタ役ブレンダ・レイの歌が入り神話の世界にスパイスを効かす。 この悲喜劇にパトロンはきっと大満足ね。 *METライブビューイング2021作品 *MET、 https://www.shochiku.co.jp/met/program/3765/

■エドガール

■原作:アルフレッド・ド・ミュッセ(「杯と唇」),台本:フェルディナンド・フォンターナ,作曲:ジャコモ・プッチーニ,指揮:アンドレア・バッティストーニ,出演:樋口達哉,大山亜紀子,成田伊美ほか,演奏:東京フィルハーモニー交響楽団,二期会合唱団 ■Bunkamura・オーチャードホール,2022.4.23-24 ■セミ・ステージ形式オペラなの。 この形はオペラに一番似合うはずよ。 指揮者と奏者が舞台に登り歌手と<三位一体>になり観客身体へ迫ってくるから。 ピット演奏の音質との違いもよく分かる。 そして少ない演技で歌手は歌唱により専念できる。 背景の垂幕に印象派系の絵画を映し出し物語を修飾するのも巧い。 その背後に写る合唱団の位置も良い。 申し分のない舞台だった。 公演が一回のため歌手たちはとても張り切っていたわね。 物語は14世紀オランダの長閑な村の、男女四人のダブル三角関係かな? エドガールが愛人ティグラーナに宝石をちらつかせて嘘の証言をさせたのは酷い、彼女の本心がどうであれ。 そしてエドガールの棺をウクライナ国旗で覆った時は現実に戻されてしまった! これは異化効果もある。 映画音楽を聴いているようなパートもあり、重唱が深くなるほど混沌としてくる。 初めての作品で驚きがいっぱいね。 楽しかったわよ。 *二期会創立70周年記念公演 *東京二期会コンチェルタンテ・シリーズ *二期会、 http://www.nikikai.net/lineup/edgar2022/index.html

■スワン・レイクス

*下記□3作品を観る。 □スワン・ケイク,■振付・音楽:ホフェッシュ・シェクター出演:ゴーティエ・ダンス □7人のダンサーのための無題,■振付:カエターノ・ソト,音楽:ピーター・グレックソン,出演:ゴーティエ・ダンス □シャラ・ヌール,■振付:マルコ・ゲッケ,音楽:ビョーク他,出演:ゴーティエ・ダンス ■NHK・配信,2022.4.17(シアターハウス・シュツットガルト,2021.6.27-28収録) ■「白鳥の湖」の特集らしい。 他にマシュー・ボーン、モンテカルロ・バレエも上映していたが今回はゴーティエ・ダンスに絞る。 タイトルが複数形なのは3作品あるから。 この中で気に入ったのは「スワン・ケイク」。 エリック・ゴーティエが話していた「ゼリーの中で踊る」のような振付がオリジナルにはない明るさを引き寄せていた。 気取らない衣装がいい。 徐々に激しくなっていきチャイコフスキーが聴こえてくる終幕に<白鳥の湖>だったことに気付かされる。 面白くみることができた。 「7人のダンサーのための無題」は背景の黒と衣装の黒が混ざり合い見難かった。 映像では尚更である。 しかも床に接地する頻度が多い振付で洞窟の黒鳥物語といえる。 「シャラ・ヌール」は鋭利で忙しないパントマイム風な振付が最後まで続く。 ビョークらの漏れるような唸るような声がダンサーに絡まり付き動きを豊かにしている。 しかし規格ばった振付だけでは飽きてしまう。 マシュー・ボーンと違って今回の3作品は解釈がより自由になっている。 「スワン・レイクス」を隠せば白鳥に結びつけることはできないだろう。 *NHK、 https://www.nhk.jp/p/premium/ts/MRQZZMYKMW/episode/te/WYPGZNNZ34/

■アンチポデス

■作:アニー・ベイカー,翻訳:小田島創志,演出:小川絵梨子,出演:白井晃,高田聖子,斉藤直樹ほか ■新国立劇場・小劇場,2022.4.3-24 ■会議形式で物語を創作していく舞台のようです。 一人づつ自身の過去を語り他メンバーがそれを膨らませていく、のではなく書記が記録していくだけです。 メンバーからの圧力が語らせる。 それでも会社の会議を思い出してしまった。 会議へのトラウマは会社員なら何かしら持っているはず。 リーダーに指名されたら私ならどのようにまとめるのか? 同調や無視が室を覆う・・。 劇場で仕事モードになってしまった!  メンバーの話しはシモネタ経験談から始まるがどれも冴えない。 ダラダラ会議の典型にみえる。 物語の分類などが読み上げられるのも興醒めです。 しかしある種のリズムは感じられる。 サンディのリーダーとしての捌き方が巧い。 変わった観後感を持ちました。 ツマラナイけれどオモシロイ。 「ゴドーを待ちながら」と同じ構造かもしれない。 そういえば「 フリック 」もゴドーが感じられた。 ・・物語を待ちながら。 でも物語なんかどうでもよい! こんな雰囲気が漂っていました。 *NNTTドラマ2021シーズン作品 *劇場、 https://www.nntt.jac.go.jp/enjoy/record/detail/37_023072.html

■ばらの騎士

■作曲:R・シュトラウス,指揮:サッシャ・ゲッツェル,演出:ジョナサン・ミラー,出演:アンネッテ・ダッシュ,妻屋秀和,小林由佳,与那城敬ほか,演奏:東京フィルハーモニー交響楽団 ■新国立劇場オペラパレス,2022.4.3-12 ■ミラー演出でこの作品を観るのは3回目かな。 プログラム掲載の演出家ノートを今回初めて読んだの。 「・・(登場人物たちが)時代の大変動を薄々感じている。 しかし先のことはわからない・・」。 1911年初演で18世紀の世界を描いたこの作品を、当舞台は1912年に設定し直した演出にしているのね。 初演時1911年の3年後には第一次世界大戦が勃発している。 時代の変化に気づいている元帥夫人。 それは彼女自身の身体の衰えから、愛する人の離散の予感から、貴族社会の崩壊からみえてくる。 彼女が持つ倦怠感、退廃感はやんわり伝わってきたわよ。 一幕はこの雰囲気が感じられる。 でも二幕、三幕はコミカルが強すぎて混乱してしまった。 歌唱中はともかく、日本人歌手たちの動作表情が細かすぎるからだと思う。 おおらかさが不足している。 オクタヴィアンは逆に直立不動になってしまった。 過去の舞台では気にならなかったけど・・。 オックス男爵、オクタヴィアンの出演者変更も影響しているとおもう。 初演と同じように現代も先のことは分からないと言うことね。 *NNTTオペラ2021シーズン作品 *劇場、 https://www.nntt.jac.go.jp/enjoy/record/detail/37_023046.html *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、ばらの騎士  ・・検索結果は4舞台.

■流れる  ■光環(コロナ)

*劇団あはひレパートリー2作品(下記□)を観る。 ■東京芸術劇場・シアターイースト,2022.4.3-10 □流れる ■作・演出:大塚健太郎,出演:上村聡,中村亮太,鶴田理沙ほか,劇団あはひ ■幕が開いて・・、チェルフィッチュを思い浮かべたが直ぐに離れていった。 ゆっくりした動作の中で「静かな漫才」を聞いているような感じだ。 「おくの細道」「隅田川」を骨格にしているらしい。 能楽ファンとして嬉しい。 身体的に気持ちのよい舞台だが「隅田川」の母と子を意識してしまった。 (鉄腕)アトムが登場するが気にならない。  近ごろは小劇場でもマイクを使うことが多くなり耳障りだ。 でも当舞台はマイクの効果がでていた。 それは透き通った声の響きが「隅田川」と共振していたからだろう。 特にアトムの無感情の声に涙を誘われた。 能を観た後と同じような感慨を持った。 「井筒」には戸惑ってしまった。 むしろ外したほうが舞台に凝縮力が増す。 引用の匙加減は難しい。 当舞台をみて「光環」を観るか否かにしていたが観ることにした。 九龍ジョーと大塚健太郎のアフタトークを聞く・・。 「・・いろいろな断片から記憶が揺り動かされイメージが広がる。 ボーと思いを過ぎらさせてくれる時は良い舞台だ(九龍)」(私も同感)「・・能は引用の宝庫だ(九龍)」「・・軽さが大事だが、過程の血豆を忘れるな(九龍)」「・・デリダを意識している(大塚)」「・・日本の漫画は世界のマイノリティに支持されているのを日本は忘れている(九龍)」「大塚英志の鉄腕アトム論を参考にした(大塚)」「・・手塚治虫は戦争体験が根底にある(大塚?)」などなど・・。 □光環(コロナ) ■作・演出:大塚健太郎,出演:古瀬リナオ,安光隆太郎,渋谷采郁ほか,劇団あはひ ■ポーの名前からは予想できない舞台だった。 科白も衣装も美術も全てが詩的である。 選ばれなかった全ての可能性を問う時、この世に生きているのは奇跡である。 宇宙138億光年を射程にいれた壮大な舞台にみえる。 太陽コロナを写す照明や水の利用には驚きがあった。 人物配置も良い。 音響も合格だ。 「流れる」では音が割れていた箇所があった。 このような舞台は弛れることが多いが、そうならない。 面白い舞台だった。 岡田利規と大塚健太郎のアフタトークを聞く・・。 「「三月の5日間」を意識した(大塚)」「舞台や人

■能楽堂四月「通円」「八島」

*国立能楽堂四月定例公演の下記□2作品を観る。 ■国立能楽堂,2022.4.6 □狂言・大蔵流・通円■出演:山本東次郎,山本則孝,若松隆ほか ■茶屋亭主の通円が多くの客に茶を提供して過労死した話である。 「舞狂言」のため能形式に従っている。 もちろん囃子や地謡を伴っている。 しかしシテの動作が大げさだ。 コミカルにも感じられる。 能として見てしまう為だろう。 いつもとは違った面白さはあるが(能に)近づくほど興醒めしそうだ。 □能・喜多流・八島■出演:長島茂,佐々木多門,大日方寛ほか ■小書に弓流と那須が添えられている。 前場はとてもゆっくりしたテンポで進んでいく。 屋島浦の長閑な風景が気持ち良い。 続く「  錣引 しころびき 」などの威風ある戦語りに巧く繋がっていく。 中入で那須与一「扇の的」を仕方話で語り上げるのだが迫力満点である。 そして後場では義経の霊が登場し小書の「弓流」が特に強調される。 しかし後場が盛り上がらない。 「錣引」も「弓流」も「那須」の威勢の良さに隠れてしまったからである。 「那須」は科白量が多く力強い演技だ。 屋島風景とシテの戦闘描写の絶妙な絡み合いが壊れてしまった。 小書のサービス過剰と言ってよい。 *劇場、 https://www.ntj.jac.go.jp/schedule/nou/2022/4108.html?lan=j

■S高原から

■作・演出:平田オリザ,出演:島田曜蔵,大竹直,村田牧子ほか,劇団:青年団 ■こまばアゴラ劇場,2022.4.1-24 ■「静かな演劇」の初期に戻った雰囲気があります。 つまり身体がより自然に、とくに役者の手の動きが自然体に戻っていた。 静けさが科白の間ではなく身体の間に発生する。 舞台に雑音が感じられるのはこの為です。 科白の影響が抑えられている。 患者の恋人の友達が婚約を報告する場面がクライマクスでしたね。 患者が後ろ姿を押し通すことで盛り上げていました。 作者の挨拶文に「風立ちぬ」と「魔の山」を意識したと書いてある。 舞台には結核とは違う気分が漂っていました。 でもエイズは結核の替わりにはならない?、話が逸れますが。 同年初演(1991年)の「 エンジェルス・イン・アメリカ 」が過ってしまう人もいるでしょう。 それはともかく、この静寂感は最近の舞台とは違った面白さを持っていた。 新鮮でした。 *青年団第92回公演 *劇場、 http://www.komaba-agora.com/play/12610 *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、平田オリザ  ・・検索結果は34舞台.