投稿

10月, 2019の投稿を表示しています

■42ndストリート  ■四十二番街

□42ndストリート ■演出.脚本:マーク.ブランブル,脚本:マイケル.スチュアート,作詞.作曲:ハリー.ウォーレン,アル.ダビン,出演:クレア.ハルス,ボニー.ラングフォード,トム.リスター他 ■東劇,2019.10.18-(イギリス,2018年作品) ■ライブビューイング(舞台をそのまま撮影して映画公開)作品? 迷ってしまいました。 それだけ凝っている。 ミュージカルを作成していく現場を描きながら後半は本番とその裏舞台を舞台上で演じていくからです。 もちろんピットには楽団が演奏していて客席には観客が声援を送る。 原作「四十二番街」はここまで迷わせない。 それより原作との一番の違いは主人公ペギーと怪我の為に役を譲ったドロシーの年齢差が大きいことです。 この差を人生経験として取り込むことでストーリーを豊かにしていた。 しかし踊子と歌手の違いが明白な二人は競争相手に見えない。 スリリングな展開は無理ですね。 「バークレイ・ショット」は言うことなし。 *松竹ブロードウェイシネマ作品 *映画comサイト、 https://eiga.com/movie/91523/ □四十二番街 ■監督:ロイド.ベーコン,脚本:ライアン.ジェームス他,原作:ブラッドフォード.ロープス,出演:ワーナー.バクスター,ビーブ.ダニエルズ,ルビー.キラー他 ■(アメリカ,1933年作品) ■ある種のリアリズムを感じました。 作成してからの80年間がそれを熟成させたのかもしれない。 例えば主人公ペギーがタップダンスの練習をする場面で彼女ルビー・キラーの人生がチラッとみえる。 他の役者もちょっとした仕草や動きに彼らの生活や世間がみえる。 このようなリアリズムです。 それとストーリーに倦怠感がある。 本日観た「42ndストリート」はリアリズムも倦怠感も最早見ることができない。 現代ショービジネスに徹していました。 *映画comサイト、 https://eiga.com/movie/50436/

■VORTEX 渦動

■振付:テロ.サーリネン,音楽:Be-bing,出演:韓国国立舞踊団,Be-being ■神奈川芸術劇場.ホール,2019.10.25-27 ■影絵から始まる不思議な舞台だ。 影絵は半透明カーテンやスモッグを使用して影を立体的に空間へ写し出す。 この劇場で上演した「 フィーバー・ルーム 」と手法が近い。 これから自然や神を意識した作品に思えた。 そこに古典器楽や大陸系のおおらかな動きを見ていると東アジアの光景が近づいてくる。 そしてパンソリのような歌唱が混ざると当に韓国伝統芸能が出現する。 しかし途中にデュオが夫婦喧嘩(?)をしている場面があり戸惑ってしまった。 歌詞に日本語字幕が付けば凡その流れが分かったのだが・・。 扇子を広げたような衣装で踊る姿はエリマキトカゲだ。 振付が最後まで大味で飽きが来たがフィナーレは圧巻だった。 韓国の神話や歴史を詰め込んだ舞台にみえる。 ここにフィンランドの振付家テロ・サーリネンが現代を挿入して複雑にしてしまったようだ。 もちろん複雑な流れは面白く観ることができた。 *劇場、 https://www.kaat.jp/d/vortex

■梁塵の歌

■演出:北村明子,ドラマトゥルク:マヤンランバム.マンガンサナ,音楽:横山裕章,出演:柴一平,清家悠圭,川合ロン,西山友貴,加賀田フェレナ,岡村樹,ルルク.アリ ■シアタートラム,2019.10.25-27 ■「梁塵秘抄」を先ずは思い出してしまうタイトルかな? 遊びをせんと生まれけむ・・。 ダンスもこれでありたい。 舞台はよりシンプルになっている。 時々座る立方体の箱しか置いていない。 それは対話にダンサー達を集中させようとしているから。 動作と発声が互いに絡み合って一瞬の関係性を積み上げながら生活身体を出現させていく。 ダンサー達はスローモーションで入退場を繰り返し身体の記憶を固めていく。 地を踏む足の力強さが特に強調されていたわね。 マンガンサナの伝統音楽ペナ(?)もダンサーの波長と一致していて無理がない。 3回ほど登場して歌う場面も計算されていた。 数十枚もの写真が早回しで写し出されたのも悪くはない。 でも映像は強いから舞台が中断されてしまった。 むしろ最初に写すのはどうかしら? 東南アジアの若者を描いた青春群像舞踊にもみえる。 ダンスを観る喜びが湧き出てくる舞台だった。 *劇場、 h ttps://setagaya-pt.jp/performances/ryoujinnouta201910.html

■花と爆弾、恋と革命の伝説

■作:大森匂子,演出:西山水木,出演:牧野未幸,岩原正典,成田浬,岩野未知,井出麻渡,葵乃まみ,劇団:匂組 ■下北沢OFFOFFシアター,2019.10.23-27 ■大逆事件の一つ「幸徳事件」を題材にした作品なの。 主人公は桃色歯茎が覗く笑顔の素敵な菅野すが。 彼女の人生後半から描き始め、そこに荒畑寒村と幸徳秋水を登場させ三つ巴の物語が展開していく。 男性関係から彼女の恋愛・結婚・家庭の考え方が少しずつ見えてくる。 和歌山から京都そして東京へ淡々と場所と時間を下っていくのでリズミカルな舞台に仕上がっていたわね。 花束に爆弾を仕込んだ彼女の天皇暗殺は、秋水の雑誌発禁の罰金額の多さから計画したようにみえる。 しかし社会主義運動を通して彼女の根底にあった婦人解放運動の進化がそれを遂行させたはず。 男性から差別されている女性を<虐げられた者>と位置づけて彼女はこう叫ぶ。 「・・主義者の男達を天皇もろとも爆破する!」と。 女性差別の主因の幾つかは天皇制に繋がっているからよ。 菅野すがの行動は現代でも色あせていない。 そしてもう一つの大逆事件である「朴烈事件」の「 烈々と燃え散りしあの花かんざしよ 」(新宿梁山泊,2019年)も同じように主人公の金子文子が頼もしいわね。 即位式に合わせて天皇を考える舞台が幾つも上演されるとは演劇界も捨てたものではない。 「 治天の君 」(チョコレートケーキ,2016年)も再演しているし。 ところで話を戻すけど選曲が舞台進行とマッチしていなかったわよ。  *劇団匂組第6回公演 *CoRichサイト、 https://stage.corich.jp/stage/100824

■男たちの中で In the Company of Men

■作:エドワード.ボンド,翻訳:堀切克洋,演出.台本:佐藤信,出演:植本純米,下総源太朗,千葉哲也,松田慎也,真那胡啓二,龍昇 ■座高円寺,2019.10.18-27 ■客席は20歳台後半から30代女性が7割を占め男性は殆ど60歳以上にみえる。 社会派女流演出家の舞台ならこの比率が多いのだが・・、贔屓筋かな? 前半は登場人物の紹介だが時間が経つのも忘れるほど緊張ある対話が続いていく。 先ずは銃器製造会社社長で堅実なオールドフィールドとその養子レナード、そのレナードは続けて会社破産した遊興好きのウィリー、農産物加工経営者で策略家ハモンドと会い経営話題を劇場内に響かせる。 そこにオールドフィールドの秘書ドッズ、使用人で原子力潜水艦乗組員だったバートレイが薬味を効かせる。 レナードがドッズとハモンドの罠に掛かり父の経営を危うくしてしまうのが見せ場だ! 後半になって父はそれを知る・・。 休憩後は徐々にリズムが崩れだした。 レナードが何を考えているのか分からなくなってきたからである。 彼のような<坊ちゃん役員>は同族経営でも大企業では淘汰されるが中小企業では生き残れる。 難しくしている一つに彼が養子だということだ。 よく話題になる母のことを彼自身にどう付け加えたらよいのか悩んでしまった。 配布資料に「・・彼はハムレットだ」とあったが略当たりと言えよう。 そしてオールドフィールドを銃で殺そうとするのも、終幕の自殺も感動のない驚きである。 それは彼が「(資本主義とは)違う真実を啓示し・・、他の男たちにそれを語らせ、・・キリスト教の聖人のごとく行動する」からである。 しかし周囲の男たちの語りも愚痴にしか聞こえない。 それは酒である。 (ハロルド・ピンターと違うのは)登場人物が酒に溺れてしまうことである。 作家が創作時に登場人物を酔わせてしまうと舞台上の役者の言葉も酔った意味を含んでしまう。 飲んでも酔わないピンターは強い。 科白の中で「新自由主義」が聞こえたが、レナードは80年代サッチャー新自由主義を詩人になって否定したかったのだろうか? 「ボンドからの手紙」が資料に載っていたがジョンソン時代に手古摺っているようにみえる。 再び酒に溺れるか詩人になるしかないのか? *座高円寺<新>レパートリー作品 *劇場、 https://www.za-koe

■地上の天使たち When Angels Fall

■演出:ラファエル.ボワテル,照明:トリスタン.ボドワン,音楽:アルチュール.ビゾン,衣装:リルー.エラン,出演:カンパニー.ルーブリエ ■世田谷パブリックシアター,2019.10.18-20 ■黒っぽい舞台が印象に残りました。 全てが無彩色です。 Zライトを大きくしたような照明器具を動かしながらスポットで役者を照らし出す。 スモッグも使う。 マネキンの仕草、パントマイム、新体操らしき動き、オノマトペ、老婆も登場しシャンソンも聞こえてくる。 そして吊り下げられた棒や梯子に乗り空中を飛び回る。 サーカス小屋に居るようです。 20世紀前半から時を越えてやって来たのではないのか? 海外の劇団や舞踊団にはこのような驚きを持つ舞台によく出会います。 今回もです。 前面に現れるのは旧式機械や古道具ばかりで役者たちの身体動作も粗く人懐っこい。 客席から静かな笑いと子供たちの声だけが響く。 静かな笑いは小屋ではなく劇場だからでしょう。 「地上の天使たち」は意味深ですね。 舞台からの気配でその存在を感じました。 天使が何者なのかは知りませんが、この種のテーマは映画や舞台ではよく見かけますから。  *世田谷アートタウン2019関連企画作品 *劇場サイト、 https://setagaya-pt.jp/performances/20190710angels.html

■BLIND

■演出:ナンシー.ブラック,出演:デイューダ.パイハヴァ ■東京芸術劇場.シアターイースト,2019.10.17-20 ■うーん、都合で行けない。 今月はキャンセルが多い。 幻妖なるパペットたちと闇の迷宮で踊りたかったわ。 *東京芸術祭2019参加作品 *劇場サイト、 https://www.geigeki.jp/performance/theater222/

■Q A Night At The Kabuki

■作・演出:野田秀樹,音楽:QUEEN,出演:松たか子,上川隆也,広瀬すず,志尊淳ほか ■東京芸術劇場.プレイハウス,2019.10.8-12.11 ■周囲の白壁が2メートルしかない。 壁上から天井までの黒一色が引き締まった舞台にしている。 観客の目の動きも上下が要らず左右だけでよい。 動きの激しい舞台に巧く計算されている。 衣装は華やかな原色が多いが軽やかさもある。 「ロミオとジュリエット」のそれからを描いている。 それにしてもあらゆる出来事が複雑にみえる。 過去を演じたロミオとジュリエットと未来を演じるロミオとジュリエットが現在に出会い混ざり合い話を紡いでいく。 いくつもの円環構造になっているらしい。 やがてあらゆる細部に既視感が訪れるからだ。 これこそ当作品の妙味に思える。 モンタギュー家とキャピレット家を平家と源氏に移しているのも楽しい。 演出家得意の言葉はいつものように元気に跳ね回っている。 クイーンの音楽をとことん生かして舞台の流れに同期させている*1。 これが歌劇を観た後のような心地よさを残している。 まさにオペラ座の、そして歌舞伎座の夜だ。 舞台芸術の達成感が現れていた。 *1、「 ボヘミアン・ラプソディ 」(2018年) *NODA・MAP第23回公演 *劇場サイト、 https://www.geigeki.jp/performance/theater218/

■寿歌

■作:北村想,演出:宮城聰,出演:奥野晃士,たきいみき,春日井一平,劇団:SPAC ■静岡芸術劇場,2019.10.12-26 ■舞台はゴミ処理工場に見える! そこへ旅芸人ゲサクとキョウコがリヤカーを引いて登場。 空にはリチウム弾道ミサイルがコンピュータ誤作動で未だ飛び交う。 核戦争後の物語はSFでは恰好の材料ね。 舞台でも時々出会う。 廃墟の中、二人は漫才をしながら冗談を言いながら歌い踊りながら旅を続ける。 途中ヤスオに出会い3人で歩き出す・・。 3人の科白の掛け合いがとてもいい。 エッジが効いているの。 発声だけではなく身体の動きも。 リアルなため廃墟が余計目に沁みる。 涙が出て来ちゃった。 これは日本版「ゴドーを待ちながら」だと思う。 カミと出会えたのは核戦争で世界が御破算になったから。 カミも人間並みになってしまったと言うことね。 何度も観ている作品だけど、いつもリヤカーしか舞台には置いてないの。 何もない空間が多い。 今回のように大がかりな美術は初めてよ。 中高生鑑賞事業のための生徒へのサービスかな? SF映画の一コマに近づいている。 でもどちらでもよい。 終末世界の3人がとても懐かしく輝いていたからよ。 *SPAC秋のシーズン2019作品 *劇場サイト、 https://spac.or.jp/au2019-sp2020/ode_to_joy_2019

■どん底

■作:マクシム.ゴーリキー,翻訳:安達紀子,演出:五戸真理枝,出演:立川三貴,廣田高志,高橋紀恵ほか ■新国立劇場.小劇場,2019.10.3-20 ■芝居を上演しようとする演者たちが高架下に集まってくるところから始まります。 劇中劇に仕立てている。 役者も周囲で芝居を見物します。 長屋談義のような対話が続いていきます。 しかし話の中身は濃い。 例えば「シンジツとは?」「シンジルとは?」などの議論を重ねていく。 科白に集中できたのはルカという巡礼者が対話をまとめていたからでしょう。 酒・博打・不倫の三拍子も揃っている。 物語はこの三拍子で進んでいきます。 男女の諍いで後半には殺人も起きる。 ルカが巡礼に出かけたあとはサーチンが科白を引っ張っていく。 でも前半にあった対話のリズムが無くなり次第に説教的になってしまいましたね。 その中でサーチン の言葉「より良き者の為に生きる」が耳に残りました。 良き者が見え難くなった現代は生きるのが辛く感じます。 会社の近くに「どん底」という名の飲み屋がありました。 仕事の結果が出ない時は「どん底へ行くか!?」が合言葉だった。 終幕、劇中劇の内と外が混ざり合っていき高架下で役者達の飲み会が開かれたのを見て「どん底」を思い出してしまった。 でも、和気藹々で飲むのを見ていてもインパクトが薄い。 劇中劇の外の効果が薄く異化が出なかった為と考えられます。 *NNTTドラマ2019シーズン作品 *劇場サイト、 https://www.nntt.jac.go.jp/play/the_lower_depths/

■エウゲニ・オネーギン

■作曲:P.I.チャイコフスキー,指揮:アンドリー.ユルケヴィチ,演出:ドミトリー.ベルトマン,出演:エフゲニア.ムラーヴェワ,ワシリー.ラデューク,パーヴェル.コルガーティン他 ■新国立劇場.オペラパレス,2019.10.1-12 ■明日の公演は中止よ。 久しぶりの高等遊民オネーギンに会いたかったわ。 2019年シーズンの一番バッターしかも楽日だったから残念ね。 台風19号の規模では避けられない。 観客席が1800も有るしオペラは関係者が多いから中止の決断は大変ね。 *NNTTオペラ2019シーズン作品 *劇場サイト、 https://www.nntt.jac.go.jp/opera/eugeneonegin/

■最貧前線、「宮崎駿の雑想ノート」より

■原作:宮崎駿,脚本:井上桂,演出:一色隆司,出演:内野聖陽,風間俊介,溝端淳平,ベンガル他 ■世田谷パブリックシアター,2019.10.5-13 ■チラシをみて迷ったが原作を読んでいないのでチケットを購入することにした。 粗筋にも事前に目を通す。 徴用船と聞いてクリストファー・ノーラン監督「ダンケルク」を即思い出した。 空中戦で戦闘機が空と海の間を墜落していくのをみてイカロスの失墜とはこういう感じなのかと納得した映画だ。 ブリューゲルなどの絵画では見えなかったイカロス身体の体感がこれで分かった。 一瞬の静寂を作ることで浮遊感覚が生まれるのだろう。 静寂が空間の深さを認識させてくれる。 宇宙空間もこの監督は得意だし・・。 ぅぅ、また話が逸れてしまった。 本題に戻すが、途中休息までは風景描写が続く。 後半に期待した。 舞台上の船は二つに分離・結合して動く。 揺れないのが欠点だが揺構造にすると費用が掛かるから止めたのだろう。 映像も多用して雰囲気を近づけている。 原作?の漫画も写し出される。 米軍を監視するため漁師の徴用船に日本海軍兵士が乗り込んで太平洋を南下していくが・・。 漁師は「帰りたい、生き延びたい!」 兵士は「敵を追跡したい、死ぬ覚悟だ!」 艦長の海軍魂は筋金入りだ(?)。 それでも次第に両者は信頼を築いていく。 船頭が敵戦闘機を撃墜し砲術長が負傷した後に、艦長は急に帰港すると言い出す。 船頭が言っている「命を育て、繋げる」ことに艦長は目覚めたのだ。 ここが山場なのだがあっさりし過ぎる。 原作が漫画のため戯曲が練れていないのかもしれない。 船が大きいから動かすだけで時間を取られてしまう。 船上では役者の動きが制限されるのでリズムに乗れない。 余白が目立つ流れになってしまった。 しかし兵士たちの国粋主義的な言葉や態度が少なかったので気持ちの良い反戦舞台に仕上がっていた。 *CoRichサイト、 https://stage.corich.jp/stage/101448

■みんな我が子 All My Sons

■作:アーサー.ミラー,演出:ジェレミー.ヘレン,出演:サリー.フィールド,ビル.プルマン他 ■TOHOシネマズ日本橋,2019.10.4-10(オールド.ヴィック劇場,2019.5.4収録) ■科白を聞き逃すまいと画面に釘付けになってしまった。 粗筋を知らないので猶更だ。 (米国からみた)太平洋戦争が物語に蠢いている。 戦争が残した傷跡が家族を締め付けていく。 先日「七つの会議」(監督福澤克雄、主演野村萬斎)を観たのだが、ネジ不良の隠蔽がもとで社員が右往左往する話だ。 野村萬斎がサラリーマンには有り得ない支離滅裂な行動で解決していく面白い映画だった。 ・・ぅぅ、話が逸れそうだ。 主人公ジョー・ケラーは戦闘機に使うシリンダー不良を隠蔽していたのだ。 裁判は勝訴したらしい。 「(戦争中の行為を言うのなら))国民の半分は刑務所に入らなければならない」。 父親ジョーは家族の前でこう言わざるを得ない。 彼の科白には「正義」や「愛国」を取り払った米国資本主義の原点がある。 戦争はビジネスである。 それは息子クリスにも窺える。 しかしピューリタンの清潔さである隣人への<愛>を武器に父と対決する。 (父の不正は)戦死した人に対して申し訳ないと彼は言う。 父の会社で成り立ってきたクリスの生活はまさに戦後米国中産階級の表裏となっている。 この舞台は父子二人が骨格を作り二人の女性が肉付けしている。 女性とはもう一人の息子ラリーが戦場から戻ってくるのを今も待ち続けている母ケイトと、ラリーの元恋人でクリスと結婚しようとしている娘アンだ。 二人はとても賢い。 自分自身が何者であるのかを知っている。 しかし父子が壊れていくのを母とアンは助けることができない。 それは母の家族への硬直した愛の為だ。 アンはケイトに向かって叫ぶ。 「(あなたから)ラリーは死んだとクリスに言って!」。 でもラリーからの手紙は突飛すぎる。 しかも兄弟の似ている罪悪感に驚く。 終幕の悲劇を乗り越えてクリスとアンが結婚できれば再び未来に希望がもてる作品にみえた。 家族劇で興奮したのは久しぶりだ。 家族を構成している物心両面が時代の核心と繋がっていたからだろう。 それは現代ともつながっている。 母役サリー・フィールドの演技に圧倒された。 *NTLナショナル・シアター・ライヴ作品 *映画com

■なにもおきない

■作・演出:坂手洋二,劇団:燐光群 ■梅ヶ丘BOX,2019.10.2-23 ■劇場に向かおうとした矢先に公演中止のメールが入ったの。 出演者の体調不良らしい。 生の舞台だから止むを得ない。 観客側の体調不良や都合付かずを入れるとキャンセルは結構な数になる。 今回は「なにもおきない」でおきてしまったのね。 *CoRichサイト、 https://stage.corich.jp/stage/103221