■最貧前線、「宮崎駿の雑想ノート」より

■原作:宮崎駿,脚本:井上桂,演出:一色隆司,出演:内野聖陽,風間俊介,溝端淳平,ベンガル他
■世田谷パブリックシアター,2019.10.5-13
■チラシをみて迷ったが原作を読んでいないのでチケットを購入することにした。 粗筋にも事前に目を通す。
徴用船と聞いてクリストファー・ノーラン監督「ダンケルク」を即思い出した。 空中戦で戦闘機が空と海の間を墜落していくのをみてイカロスの失墜とはこういう感じなのかと納得した映画だ。 ブリューゲルなどの絵画では見えなかったイカロス身体の体感がこれで分かった。 一瞬の静寂を作ることで浮遊感覚が生まれるのだろう。 静寂が空間の深さを認識させてくれる。 宇宙空間もこの監督は得意だし・・。 ぅぅ、また話が逸れてしまった。
本題に戻すが、途中休息までは風景描写が続く。 後半に期待した。 舞台上の船は二つに分離・結合して動く。 揺れないのが欠点だが揺構造にすると費用が掛かるから止めたのだろう。 映像も多用して雰囲気を近づけている。 原作?の漫画も写し出される。
米軍を監視するため漁師の徴用船に日本海軍兵士が乗り込んで太平洋を南下していくが・・。 漁師は「帰りたい、生き延びたい!」 兵士は「敵を追跡したい、死ぬ覚悟だ!」 艦長の海軍魂は筋金入りだ(?)。 それでも次第に両者は信頼を築いていく。
船頭が敵戦闘機を撃墜し砲術長が負傷した後に、艦長は急に帰港すると言い出す。 船頭が言っている「命を育て、繋げる」ことに艦長は目覚めたのだ。 ここが山場なのだがあっさりし過ぎる。 原作が漫画のため戯曲が練れていないのかもしれない。
船が大きいから動かすだけで時間を取られてしまう。 船上では役者の動きが制限されるのでリズムに乗れない。 余白が目立つ流れになってしまった。 しかし兵士たちの国粋主義的な言葉や態度が少なかったので気持ちの良い反戦舞台に仕上がっていた。
*CoRichサイト、https://stage.corich.jp/stage/101448