■どん底

■作:マクシム.ゴーリキー,翻訳:安達紀子,演出:五戸真理枝,出演:立川三貴,廣田高志,高橋紀恵ほか
■新国立劇場.小劇場,2019.10.3-20
■芝居を上演しようとする演者たちが高架下に集まってくるところから始まります。 劇中劇に仕立てている。 役者も周囲で芝居を見物します。
長屋談義のような対話が続いていきます。 しかし話の中身は濃い。 例えば「シンジツとは?」「シンジルとは?」などの議論を重ねていく。 科白に集中できたのはルカという巡礼者が対話をまとめていたからでしょう。
酒・博打・不倫の三拍子も揃っている。 物語はこの三拍子で進んでいきます。 男女の諍いで後半には殺人も起きる。 ルカが巡礼に出かけたあとはサーチンが科白を引っ張っていく。 でも前半にあった対話のリズムが無くなり次第に説教的になってしまいましたね。 その中でサーチン の言葉「より良き者の為に生きる」が耳に残りました。 良き者が見え難くなった現代は生きるのが辛く感じます。
会社の近くに「どん底」という名の飲み屋がありました。 仕事の結果が出ない時は「どん底へ行くか!?」が合言葉だった。 終幕、劇中劇の内と外が混ざり合っていき高架下で役者達の飲み会が開かれたのを見て「どん底」を思い出してしまった。 でも、和気藹々で飲むのを見ていてもインパクトが薄い。 劇中劇の外の効果が薄く異化が出なかった為と考えられます。
*NNTTドラマ2019シーズン作品
*劇場サイト、https://www.nntt.jac.go.jp/play/the_lower_depths/