■花と爆弾、恋と革命の伝説

■作:大森匂子,演出:西山水木,出演:牧野未幸,岩原正典,成田浬,岩野未知,井出麻渡,葵乃まみ,劇団:匂組
■下北沢OFFOFFシアター,2019.10.23-27
■大逆事件の一つ「幸徳事件」を題材にした作品なの。 主人公は桃色歯茎が覗く笑顔の素敵な菅野すが。 彼女の人生後半から描き始め、そこに荒畑寒村と幸徳秋水を登場させ三つ巴の物語が展開していく。 男性関係から彼女の恋愛・結婚・家庭の考え方が少しずつ見えてくる。 和歌山から京都そして東京へ淡々と場所と時間を下っていくのでリズミカルな舞台に仕上がっていたわね。
花束に爆弾を仕込んだ彼女の天皇暗殺は、秋水の雑誌発禁の罰金額の多さから計画したようにみえる。 しかし社会主義運動を通して彼女の根底にあった婦人解放運動の進化がそれを遂行させたはず。 男性から差別されている女性を<虐げられた者>と位置づけて彼女はこう叫ぶ。 「・・主義者の男達を天皇もろとも爆破する!」と。 女性差別の主因の幾つかは天皇制に繋がっているからよ。 菅野すがの行動は現代でも色あせていない。
そしてもう一つの大逆事件である「朴烈事件」の「烈々と燃え散りしあの花かんざしよ」(新宿梁山泊,2019年)も同じように主人公の金子文子が頼もしいわね。 即位式に合わせて天皇を考える舞台が幾つも上演されるとは演劇界も捨てたものではない。 「治天の君」(チョコレートケーキ,2016年)も再演しているし。 ところで話を戻すけど選曲が舞台進行とマッチしていなかったわよ。 
*劇団匂組第6回公演
*CoRichサイト、https://stage.corich.jp/stage/100824