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■ニューイヤー・バレエ

■NHK.WEB配信,2021.1.24-(新国立劇場オペラパレス,2020.1.11-12収録) (以下の□4作品を上映) □セレナーデ ■音楽:P・I・チャイコフスキー,振付:G・バランシン,出演:寺田亜沙子,柴山紗帆ほか ■見逃した今年の再放送かな? よくみたら去年の公演のようね。 「DGV」は観ていないので良しとしましょう。 ・・青系の美術にロマンティックチュチュで冬の寒さが舞台に感じられる。 でも春を予感させる音楽がニューイヤーに合うわね。 後半、物語が入り込む。 シニヨンを解いても作品のアクセントのようなもので気にならない。 清々しい作品だった。 端に持ってきた理由が分かる。 □ライモンダよりパ・ド・ドゥ ■音楽:アレクサンドル・グラズノフ,振付:M・プティバ,改訂振付:牧阿佐見阿佐見,出演:小野絢子,福岡雄大 ■重厚な舞台だった。 それはダンサーの貫禄から来る。 至福の6分間だったわよ。 □海賊よりパ・ド・ドゥ ■音楽:リッカルド・ドリーゴ,振付:M・プティバ,出演:木村優里,速水渉悟 ■若さと躍動感があり前舞台と対をなしている。 考えられた配列だわ。 □DGVⒸ ■音楽:マイケル・マイナン,振付:クリストファー・ウィールドン,美術・衣装:ジャン=マルク・ピュイサン,照明:ジェニファー・ティプトン,出演:本島美和,中家正博,木下嘉人,池田理沙子ほか ■ミニマム音楽が心地よい。 数組のデュオを基本として舞台を展開させていく。 足の動きが少ないのはミニマムの特徴かしら。 このため器械体操を想像してしまう場面がある。 反して上半身の動きを多くしダンサーたちの関係性を強調している振付は成功している。 観後に解説を読んだがフランス高速鉄道TGVや列車の旅はイメージできなかった。 でも足よりも手や関係重視の感想は列車に近いと思わない? *NNTTバレエ2019シーズン作品 *劇場サイト、 https://www.nntt.jac.go.jp/ballet/20newyearballet/

■少女都市からの呼び声

■作:唐十郎,演出:久保井研,唐十郎,出演:稲荷卓央,藤井由紀,福本雄樹ほか,劇団唐組 ■下北沢駅前劇場,2021.1.20-24 ■久しぶりの唐組だ。 しかも劇場公演は珍しい。 ・・シモキタの賑わいは7割程度かな? 70席に減らした場内はほぼ埋まっている・・。 さすが言葉の強さが耳に滲みる。 肉体も活き活きしていた。 昭和を今に甦らせてくれる。 「ガラスよりも透明な観念の結晶を目撃せよ!」。 血肉を昇華した雪子に結晶を見た気分だ。 生の舞台をみるとやはり元気がでる。 映像では観念が結晶にならず浮遊しているだけ。 結晶させるには役者の生の身体が必要なのだろう。 *唐組第66回公演 *CoRich、 https://stage.corich.jp/stage/110561

■東京原子核クラブ

■作・演出:マキノノゾミ,出演:水田航生,霧矢大夢ほか ■WEB配信,2021.1.17-23(本多劇場,2021.1.17収録) ■「読売文学賞戯曲・シナリオ賞を受賞したマキノノゾミの代表作」とあったので動画配信で観ることにする。 1932年、下宿屋「平和館」が舞台です。 住人の多くは理化学研究所の核物理学研究員たち、それに劇作家や酒場のピアノ弾きや偽学生も居る。 ・・原子爆弾製造を目指す研究者たちの青春群像劇らしい。 それにしてもノッペラボウな内容ですね。 物理学の話も人名を口にする程度です。 製造可否の議論も無い。 許嫁を戦場で亡くした大家の娘桐子が日本も製造を進めていたことを知り「これでは投下した米国を憎めない・・」「広島と長崎に示しがつかない・・」と悲しむが、主人公の物理学者友田は「・・物理法則の研究は止められない」と言うくらいです。 しかも元下宿住人の戦場からの遺書に「・・戦争に勝つため早く爆弾を作ってくれ!」と書いてあり、それを物理学者が読んで幕が下りてしまう。 核兵器禁止条約が今月22日に発効されたが、不参加日本は舞台の物理学者たちと時代は違っても同類でしょう。 *CoRich、 https://stage.corich.jp/stage/110067 *「ブログ検索」に入れる語句は、 マキノノゾミ

■ハンサード Hansard

■作:サイモン・ウッズ,演出:サイモン・ゴッドウィン,出演:リンゼイ・ダンカン,アレックス・ジェニングス ■TOHOシネマズ日本橋,2021.1.15-(リトルトン劇場,2019収録) ■保守党政治家ロビンが週末に帰る自宅ダイニングが舞台上に造られている。 そこに酒浸りの妻ダイアナが締まりのない姿で彼を出迎える・・。 プレトークで解説者が舞台設定である英国1988年の政治キーワードを幾つか掲げている。 それはサッチャー首相下での、地方自治法28条成立、英仏海峡トンネル着工、パブ営業時間延長、教育改革法成立の4点。 どれもこの舞台で話題になる。 ところで「ハンサード」はイギリス及び英連邦諸国における議会討論の筆記録を指す。 タイトルに沿うように夫婦喧嘩に近いような議論で政治と世間そしてプライベートな話が終幕まで続いていく。 しかし根がホームドラマのためか英国民の生活が垣間見えて面白い。 中産階級の立ち位置、労働党に近い妻ダイアナの考え、義父母の態度や言葉の思い出、庭が狐の被害に遇ったことや夫ロビンが作る食前酒?、夫の前妻のことなど二人の動きと科白には目を凝らし聞き耳を立ててしまう。 そして政治の話になるとサッチャー首相や保守党労働党の評価、英国と米国の違い、トンネル着工と島国の強調・・、公立と私立高校の話、居住地区と階級関係、エイズ流行等々が台詞の中へ次々と投下されていく。 しかし妻ダイアナの行動が前半から引っかかる。 彼女が昔のビデオや日記など持ち出して夫に何かを思い出させようとしていることだ。 それは夫が所属する保守党が近頃成立させた地方自治法28条に繋がっていく。 28条は同性愛を規制する法律らしい(?)。 そして、二人には息子がいたらしい。 ・・ここで謎が解ける。 同性愛者だった息子を二人はどう思っていたのか? 彼女の告白がなされ二人は涙するが・・。 結末が短くて上滑りしてしまった終幕だ。 母と息子の信頼関係は納得できたが父の涙が子の弔いにはみえなかった。 我が子を前にした保守派の父は複雑だったろう。 英国の観客なら積み重なっていく数々の話題や事件が一つに収束して二人の涙につながっていったのだろうか? *NTLナショナル・シアター・ライヴ作品 *映画com、 https://eiga.com/movie/93605/

■くるみ割り人形

■振付:ウエイン・イーグリング,音楽:P・I・チャイコフスキー,美術:川口直次,衣装:前田文子,照明:沢田祐二,指揮:冨田美香,出演:小野絢子,福岡雄大ほか,演奏:東京フィルハーモニー交響楽団 ■新国立劇場.WEB配信,2021.1.15-(新国立劇場・オペラパレス,2020.12収録) ■11日配信の「ニューイヤー・バレエ」は見逃してしまったの。 アーカイブがないとだめ。 この「くるみ割り人形」は余裕ね。 街の風景、スケートをしている市民、そして室内に入り・・クリスマスツリーに続く。 舞台が広く感じる。 この劇場の特徴だけどアングルの為もあるかも。 衣装は垢抜けているし、美術は一部を除いて平面(=浮世絵)を感じさせる。 でもネズミの登場でびっくり。 毛皮も肉も剥ぎ取った骸骨なの。 ・・! 振付は大人びた雰囲気を漂わせる。 主役二人も貫禄があるし・・。 子供へ収束していかないから物語が分散してしまった。 花のワルツなどは社交ダンスをみているようだわ。 <大人の振付>で作品が持つファンタジーが薄まってしまったようね。 ダンサーたちはそつが無いし新国立劇場らしい内容だった。 *NNTTバレエ2020シーズン作品 *劇場サイト、 https://www.nntt.jac.go.jp/ballet/nutcracker-stream/index.html

(中止)■砕かれた四月

■原作:イスマエル・カダレ,翻訳:平岡敦,台本・演出:山口茜,福永武史,劇団:サファリ・P ■森下スタジオ,2021.1.28-31 ■「新型コロナウィルス感染症拡大に伴う緊急事態宣言が発令されたことにより、現状を鑑みた結果、東京公演を中止・・」。 今年も厳しい年になりそうね。 昨年から続くチケ購入後の中止累計は30本目。 *サファリ・P第7回公演作品 *劇団、 https://stamp-llc.com/stage/shigatsu_prototype/index.html

■くるみ割り人形とねずみの王様

■台本:E.T.F.ホフマン,作曲:P.チャイコフスキー,振付:クリスティアン.シェプック,指揮:ポール.コネリー,演奏:フィルハーモニア.チューリヒ,出演:ドミニク.スラフコフスキー,ミシェル.ウィレムス,ウィリアム.ムーア他,舞団:チューリヒ.バレエ団 ■NHK.WEB(チューリヒ歌劇場,2018.4収録) ■チャイコフスキーを観ないと年が越せない。 でも去年は無理だった。 やっと正月休みに観ることができたわよ。 とは言っても映像だけどね。 この作品の発売は知っていたが今になってしまったの。 ・・いつもの「くるみ割り人形」とは違う。 出足30分はストーリーが足されているようね? 解説には原作に忠実とある。 パーティの人々は喜怒哀楽が直截でバレエよりパントマイムに近い場面が多い。 でも少女が夢に入るところからいつもの流れになるの。 舞台は黒で照明は高級クラブのよう、衣装は黒鳥のようなチュチュも登場してゴージャスな雰囲気が漂う。 このような舞台は日本では真似ができない。 でも物語性が弱い。 このため相反する充実感と寂寥感を併せ持つこの作品の良さが遠のいてしまった。 年の瀬に観なかったから? ヨーロッパの質量が感じられる舞台だった。 これで年が明けたわね。 *NHKサイト、 https://www.nhk-ondemand.jp/goods/G2020111213SA000/

■シラノ・ド・ベルジュラック

■演出:デヴィッド・ルヴォー,出演:ケビン・クライン,ジェニファー・ガーナー,ダニエル・サンジャタ他 ■東劇,2020.12.25-2021.1.14(アメリカ,2007年作) ■ブロードウェイと書いてあったのでミュージカルと思いきやストレートプレイだった。 この科白が歌劇で聴けるとは!、と期待していたのだが・・。 それでも一幕の即興の詩を作りながら決闘をする場面から素直に舞台に入っていけた。 面白く観ることができた。 今までみた舞台では戦場と修道院の終わり二幕が納得できていなかった。 それが今回すべて納めることができたので嬉しい。 戦場へ向かうロクサーヌの理由やクリスチャンの死、シラノの立ち位置などすべてが自然の流れのように受け止めることができたからだ。 次幕、修道院でのシラノの死も同様である。 つまらない事故死のため現実に戻されそうだったが、科白の量の多さと質の良さ、間の繋ぎの強さで物語に留まれた。 役者の力もある。 この終わり2幕で心打たれたのは初めてだと思う。 やっとシラノに会えた気分だ。 ガスコン魂と詩的科白が巧く嚙み合った喜劇のリズムが少しずつ愛と死に昇華していく流れにはまってしまった。 ところでブロードウェイの(映像内の劇場にいる)観客はよく笑う。 *松竹ブロードウェイシネマ *映画com、 https://eiga.com/movie/92236/