2014年5月31日土曜日

■捨て身

出演:宮下省死
キドアイラックアートホール、2014.5.30-31
宮下省死の舞踏は科白が入る。 肉体のエンジンに言葉のターボを持った車のようだから、ここぞという場面は強い。 宇宙は膨張するか収縮するか? この繰り返しを輪廻転生に繋げていく。 そして首に賭けたお守袋を取り出し自身の履歴を語る・・。
この世に<再び>生まれたことは例え夢でも奇跡である。 この喜びを両親や子供時代の記憶にして文字や人形で表現していく。 上演チラシの作り方、物忘れ、力道山、夢の話・・、断片を喋りそして竹笛を吹きながら幕が下りる。
舞踏家の多くは深淵な感じがする。 しかし彼の身体は近くにみえる。 ある種の自由を観客に与えてくれるからだろう。 今回の作品は後半がサラッとしすぎている。 だから最後にもう一言欲しかった。 初めが宇宙論だから終わりの話は脳科学論しかない。

2014年5月28日水曜日

■カヴァレリア・ルスティカーナ  ■道化師

作曲:P・マスカーニ,指揮:R・パルンボ,演出:G・デフロ,出演:L・ガルシア,谷口睦美,W・フロッカーロ
作曲:R・レオンカヴァッロ,指揮:Rパルンボ,演出:G・デフロ,出演:G・ポルタ,R・スターニン,V・ヴィテッリ
新国立劇場・オペラハウス,2014.5.14-30
二作を続けて観ると感動が薄れてしまう。 似たもの同士だから。 しかも舞台背景が同じローマ?遺跡のため、あとで思い出しても混乱するからよ。 作品の位置付や上演時間でこのペアになっているのなら少し保守的ね。
「道化師」のストーリーはよく考えられている。 ヴェリズモに合っている。 しかも劇場遺跡での劇中劇は面白い! 舞台上の芝居と現実の境界も消えて複雑な構造だわ。 でも面白さが漏れてしまっている。 何故かしら?
歌詞に日常生活の言葉が多いから<日常の間>というのが発生するの。 これが演劇を呼び寄せてしまい、オペラ的感動を遠ざけてしまうから。 演劇的ストーリーをオペラ的に移行できなかったからよ。
むしろ母の力が強く表現されている「カヴァレリア・ルスティカーナ」のほうが色濃いキリスト教を背景にイタリア的オペラ的感動があったのは確かね。 ところで旅回りの一座を眺めているとイタリア映画をいろいろ思い出しちゃった。 哀愁漂う舞台美術だった。
日本の歌手が外国歌手に混ざるとイタリア語の癖がないからとてもきれいに聞こえる。 特に谷口睦美、吉田浩之の歌唱が記憶に残ったわ。
NNTTオペラ2013シーズン作品

2014年5月26日月曜日

■コジ・ファン・トゥッテ

作曲:W・A・モーツァルト,指揮:J・レヴァイン,演出:L・ケーニッヒ,出演:Sフィリップス,I・レナード,D・ドゥ・ニース
東劇,2014.5.24-30(MET,2014.4.26収録)
重唱の流れにリズムがあり物語が澱まない。 しかもアリアを引き立たせている。 舞台美術も簡素にしてこの流れを壊していない。 ワーグナーはこの作品を酷評したらしいけど、多分嫉妬ね。
フィオルディリージとドラベッラの性格の違いをそのまま歌手自身が持っていて面白いわね。 作品の感想を聞かれて前者は「一生後悔するだろう」、後者は「独身で生きる不安があるからしょうがない」と言っていたけど、舞台と現実が混ざり合っている。
時代の違う作品だと誰もが言っていたけどそうは見えなかったわ。 古さが感じられない。 しかも舞台芸術の目的の一つ「新しい何かに生まれ変わる幸せ」を持っている作品だから。 さすがモーツアルト、恐るべし!
*METライブビューイング2013作品

2014年5月24日土曜日

■幻想音楽劇「リア王ー月と影の遠近法ー」

作:W・シェイクスピア,演出・音楽:J・A・シーザ,美術:小竹信節,構成・演出:高田恵篤,出演:演劇実験室◎万有引力
座高円寺,2014.5.16-25
リアと末娘コーディリア、グロスターと息子エドガー、この二組の父と子の話が出揃った後半から面白くなりました。 シェイクスピアの「リア王」と言うより「父子物語」ですね。 そしてリアがとても元気じゃないですか!
音楽劇とあったのですが謎のオペラ歌手が歌い役者たちは歌いません。 ここの劇団員たちの歌唱は見たことがありません。 芝居の中の歌は状況に合えば少しくらい下手でも関係ないでしょう。 どんどん歌ってほしいですね。
またゴネリルが舞踏家工藤丈輝とは驚きでした。 他の役者とは違った存在感を持っていました。 目が喋りすぎていましたが。 ところで万有引力のシェイクスピアは「リア王」しか観たことがありません。 次は「夏の夜の夢」をどうですか?
*演劇実験室◎万有引力第59回本公演

2014年5月20日火曜日

■バレエに生きる-パリ・オペラ座のふたり-

監督:マレーネ・イヨネスコ,出演:P・ラコット,G・テスマ(2011年制作)
マルコ・スパダをみてピエール・ラコットをもっと知りたくなっちゃった。 文化村の上映を見逃していたので早速DVDを取り寄せたの。 ラコットが踊っている姿をみると、ほんとうに彼はバレエが好きなんだなーっておもう。
作品はラコットとギレーヌ・テスマーの履歴書を映像化したような内容。 二人から見た20世紀後半のバレエの歴史が語られていて、100分の短さだったけど感慨に浸ることができたわ。
彼は組織というものが何か知っていた。 組織に対していつもチャレンジを投げかけたの。 そして具体的テーマは<古典の再生>。 この明確な目標があったからテスマーを含め多くの人々との出会いができたのね。
*劇場サイト、http://www.bunkamura.co.jp/cinema/lineup/12_ballets.html

2014年5月19日月曜日

■テンペスト

演出:白井晃,出演:古谷一行,高野志穂ほか
新国立劇場・中劇場,2014.5.15-6.1
舞台は工場内の仕掛倉庫のようです。 遠くまでダンボールやクレーンが見えていて壮観ですね。 役者の流れに合わせてダンボールを棚ごと移動したり、生演奏の動きも工場倉庫で働いているようで面白い。 布の使い方や照明もよかった。
一番嫌いな劇場ですがその欠点をすべて克服していました。 この劇場が活き活きしているのを初めて見ました。 しかも芝居内容とは無関係な場所のようでビータ・ブルックの何もない空間を思い出させます。
前半は少し眠くなりました。 休息を挟んで後半は俄然生き返りました。 リズムがピッタリ合いだしたからです。 前半はもっと硬さが有ったほうが入り易いかもしれない。
古谷一行は「台詞を喋っている」ような喋り方で面白い。 科白を忘れてしまうのではないかとハラハラする場面もありました。 しかしそれがテンペストが持っている肝心な何かを齎しています。
白井のオセロを一年前に観ていますが、彼の劇場の使い方が近年素晴らしくなっていますね。 次作も楽しみです。

2014年5月15日木曜日

■マルコ・スパダ

作曲:D・F・E・オベール,演出:P・ラコット,出演:D・ホールバーグ,E・オブラスツォーワ,ボリショイ・バレエ団
■イオンシネマ系,2014.5.14-15
ロシアのフルコースを食べて胃が凭れた感じね。 美味しかったけど。 音楽がバレエに妥協しすぎている感じよ。 これで舞台全体に古き良き時代を漂わせることができるのは確かね。 当時のワーグナーより人気があった理由じゃないかしら?
ホールバーグは飛び抜けた上手さだけど、若さのみで踊っているようにみえる。 鋼鉄のボリショイ・バレエ団に似合っているわ。 でも彼自身の個性をそろそろ出す時期ね。
今シーズンを観終わって感じたことがあるの。 それはボリショイ・バレエ団は帝政ロシアの時代が恋しいのよ。 ソビエトの肉体でロシア帝国の夢を見る。 自信を取り戻してきたから、強くて大きい時代に戻りたいということのようね。
*ボリショイ・バレエinシネマ作品
*主催者サイト、http://bolshoi-cinema.jp/

2014年5月13日火曜日

■清教徒

作曲:V・ベッリーニ,指揮:M・マリオッティ,演出:L・ペリ,出演:M・アグレスタ,D・コルチャック,M・クヴィエチェン
東宝シネマズ日本橋,2014.5.9-15(2014年収録)
舞台上の建物や部屋は骨組みだけなの。 門や窓や塔は意匠で作り込んでいるし、回り舞台で四方から確認できるからイメージは壊れない。 中まで丸見えよ。 これで空間を越えた歌手同士の遣り取りや演技ができるの。 素敵な構造ね。
この幾何学的で色彩の無い風景と、分かりきった事のようで深く立ち入らない歴史背景で歌唱と演奏に集中できたわ。 広いバスティーユ舞台の合唱団の動きも整然ね。 特にアグレスタは隠れる場所が無いので諦めからくる余裕が感じられたのかもね。
娘エルヴィーラが騎士アルトューロに捨てられたと勘違いするが最後は結ばれる他愛のない物語だったけど、これら散らばりの有る余裕で結構楽しめたわ。 新しいコレド室町内の館だけあって設備もよかった。
*パリ・オペラ座ライブビューイング2013作品
*映画COMサイト、http://eiga.com/movie/79955/

2014年5月5日月曜日

■NHKバレエの饗宴2014

■指揮:大井剛史,演奏:東京フィルハーモニー交響楽団
■NHK・Eテレ
去年が面白かったので今年も観てしまった。 NHKの映像・音響は技術も技能も確かである。 近頃舞台作品を映画などでよく観るがNHKよりも質が落ちる。 今年は6作品を上演。 気に入った作品は残念ながら無かった。
「スコッチ・シンフォニー」、振付:G・バランシン、音楽:F・メンデルスゾーン、出演:スターダンサーズ・バレエ団
バランシンとメンデルスゾーンの組合せは初めてかな? ダンサーを通しての音楽は良かった。 でもダンサーとバランシンの関係は平凡に感じた。 振付・音楽・ダンサーの組合せに何かが不足しているようだ。 うまく表現できないが・・
「3月のトリオ」、音楽:J・S・バッハ、チェロ演奏:古川展生、振付・出演:島地保武・酒井はな
振付は面白い。 島地の動きが良い。 酒井は一歩退いているようだ。 この為二人の関係が少し疎遠にみえる。 チェロが粘っても二人の心は近づかない。 これで彼らが対等になったら作品は完成だろう。
「THE WELL-TEMPERED」、音楽:J・S・バッハ、ピアノ演奏:若林顕、振付・出演:首藤康之、中村恩恵
二人の精神は親密だ。 神聖さも漂っている。 前作品の島地と酒井の固さが再び過る。 上演企画者は「3月のトリオ」と比較しろと言っているようにみえる。 振付は「3月のトリオ」の方が新鮮味があった。
「ドン・キホーテ第1幕」、原振付:M・プティパ、演出:貝松正一郎、出演:貝松・浜田バレエ団
初めて見るバレエ団である。 群衆も衣装も振付もこのゴチャゴチャしたところが、なるほど大阪を感じる。 繁華街の道端で上演しているようで楽しい。
「ラ・シルフィードからパ・ド・ドゥ」、振付:A・ブルノンヴェル、音楽:H・レーヴェンショルド、出演:吉田都、F・バランキェヴィッチ
吉田はまさに自然体といってよい。 <悟りを開いている>ようにみえる。 相棒のバラキュヴィッチは人工体だ。 残念ながら悟りを開くには程遠い。
「ベートーベン交響曲第7番」、振付:U・ショルツ、出演:東京シティバレエ団
いわゆるシンフォニック・バレエというものらしい。 しかしこの曲はリズムはあるが機械というものを思い出してしまう。 つまりロボットである。
インタビュで「ヘトヘトになる」とダンサーが答えていた。 これはヒョットしたらヘトヘトになって楽しいぞ! しかしそのように見えなかった。 最後まで機械で押し通したのが立派である。

2014年5月3日土曜日

■五右衛門ロックⅢ

作:中島かずき,作詞:森雪之丞,演出:いのうえひでのり,出演:古田新太,三浦春馬,蒼井優,劇団☆新感線
丸の内東映,2014.3.29-(2014.3.29収録)
演劇的余白が無かったですね。 相当カットしたのでしょう。 これで中身が凝縮し過ぎてしまった。 でも歌詞がストーリーにピッタリ寄り添っていて盛り上がりましたね。 早いテンポはまさにロックを聞くより観ているようでした。
前半は新しいキャラクタがタイミングよく次々と登場するので、その都度物語の奥に分け入るドキドキ感が持てました。 しかも空海の秘宝を追い求める物語も想像力が沸き起こります。 堺商人やポルトガル商人?を絡ませたのも厚みが増しましたね。
五右衛門の云う「若い役者に台詞を譲る」に、明智心九郎と猫の目お銀も見事に答えています。 秀吉の朝鮮出兵などを批判して「自分の国は外から見るとよくわかる」の通り、ポルトガル?へ旅立つ終幕も力強さがありました。
しかし深い悲しみや不安などの心情は描かれていません。 ただ心九郎とお銀の恋心が微かに見えただけです。 「本作は頭をからっぽにしてお楽しみいただける作風となっております・・」とチラシにありましたが、その通りの作品です。
*ゲキXシネ作品