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■2022年舞台ベスト10

■ 母  演出: 鄭義信,出演:みょんふぁ,演奏:李昌燮 ■ 蹠の剃刀  演出・出演:工藤丈輝,劇場:座高円寺 ■ さまよえるオランダ人  演出:M・V・シュテークマン,劇場:NNTT新国立劇場 ■ 岩船  出演:大槻文蔵ほか,劇場:東京国立能楽堂 ■ 流れる  演出:大塚健太郎,出演:劇団あはひ ■ 盲人書簡・少年倶楽部篇  演出:J・A・シーザー他,劇団:演劇実験室◉万有引力 ■ 天の敵  演出:前川知大,出演:劇団イキウメ ■ レオポルトシュタット  演出:小川絵梨子,劇場:NNTT新国立劇場 ■ シッラ  演出:彌勒忠史,演奏:ファビオ・ビオンディ&エウローパ・ガランテ ■ ベンガルの虎  演出:小林七緒,劇団:流山児★事務所 *並びは上演日順. 当ブログに書かれた作品から選出. 映画・映像は除く. *2022年舞台総鑑賞数は81回,チケット代は52万円(1チケット平均額6.4千円)だった. 映画・映像は除く. 歌劇が入るため平均チケット代は高くなる. *昨年のベスト10・・「 2021年舞台ベスト10 」.

■2022年舞台映像ベスト10

■ シンデレラ  演出:マシュー・ボーン,劇場:サドラーズ・ウェルズ劇場 ■ ボリス・ゴドゥノフ  演出:スティーブン・ワズワース,劇場:METメトロポリタン歌劇場 ■ エウリディーチェ  演出:メアリー・ジマーマン,劇場:METメトロポリタン歌劇場 ■ 桜姫東文章  出演:片岡仁左衛門,坂東玉三郎,劇場:歌舞伎座 ■ からたち日記由来  演出:鈴木忠志,劇団:SCOT ■ 貧乏物語  演出:栗山民也,劇団:こまつ座 ■ ハムレット  演出:ニール・アームフィールド,劇場:METメトロポリタン歌劇場 ■ プライマ・フェイシィ  演出:ジャステイン・マーティン,劇場:NTロイヤル・ナショナル・シアター ■ ザ・ウィンターズ・テイル/アンダーグラウンド  演出:早坂彩,劇団:フォスフォレッスセンス ■ メサイア  演出:ロバート・ウィルソン,劇場:ザルツブルク・モーツァルト劇場 *並びは上映日順。 当ブログに書かれたライブビューイング(映像)作品から選出。 *ライブビューイングとは舞台公演を撮影して配信(ライブ又は録画)・映画にしたもの。 当ブログではラベルが「映像」に該当。 *昨年のベスト10・・「 2021年ライブビューイング・ベスト10 」

■サド公爵夫人(第二幕)

■作:三島由紀夫,演出:鈴木忠志,出演:佐藤ジョンソンあき,齊藤真紀,鬼頭理沙ほか,劇団:SCOT ■吉祥寺シアター,2022.12.16-24 ■2019年に当劇場で観ています。 また、みてしまいました。 ある種の耽溺性に陥りそうですね。 前回は4人の関係が分からず上滑りをしてしまった科白が今回はビシビシと我が身体で受け止めることができました。 サン・フオン伯爵夫人の登場で緊張が高まり、サド公爵夫人ルネと母モントルイユ夫人のすれ違いで幕が降りる。 張り詰めた劇的状況が途切れない。 国際演劇評論家協会日本センター会長本橋哲也と演出家鈴木忠志のアフタトークを聞く。 「4人の俳優の弛まぬ集中力はどうして生まれるのか?」。 最初の質問に鈴木忠志の答えは戦後日本の歌謡曲から始まる。 でも話題が広がり聞き役も手に負えなくなってくる。 ヤクザ映画、ギリシャ演劇やヨーロッパ公演、そして「なぜ利賀に行ったのか?」の理由に集約されていく。 この舞台は演出家の戦後からの累積された成果だと改めて感じさせられます。 当上演チラシに菅孝行、渡辺保、大澤真幸の評論が数行だが掲載されている。 アフタトーク後に再度読み返すとナルホド!、的を得ていて合点しました。 *CoRich、 https://stage.corich.jp/stage/211493

■パリ・オペラ座、響き合う芸術の殿堂

■感想は、「 パリ・オペラ座、響き合う芸術の殿堂 」 *話題となる語句は、「R・ワーグナー」「S・ディアギレフ」。 

■諏訪敦、眼窩裏の火事

■感想は、「 諏訪敦、眼窩裏の火事 」 *話題になる語句は、「大野一雄」「川口隆夫」「DUOの會」。  

■凪げ、いきのこりら

■演出:岡本昌也,私道かぴ,出演:森脇康貴,日下七海,沢柳優大ほか,劇団: 安住の地 ■シアタートラム,2022.12.16-18 ■漫画から飛び出てきたような舞台です。 ダンスや歌も取り入れた役者達の科白や動きがそれを連想する。 キビキビした身体、そして声も通っている。 喋り方も吹き出し風です。 漫画演劇と言ってよい。 物語も漫画から抜け出してきた? 世界戦争後の未来を描いている。 地球上では土地も食料も少い。 難民となった多くの種が混ざり合っていく。 「あやまちはくりかえさない!」。 戦争への反省はみられる。 しかし再び戦いの世界に戻るのか? 激しい争いのすえ仲間の一組が卵を産む・・。 その卵に未来を託して戦士たちは自死をしてしまうストーリーのようです。 戦いに疲れてしまった? 残った者たちが凪の海辺で陽にあたりながら幕が降りる。 上演時間は110分。 表面は多彩ですが似たような場面が繰り返される。 飽きてしまいました。 この為せっかくの卵が付け足しのようになってしまった。 そして地面に開いた穴はなんでしょうか? 終幕の盛り上がりが散ってしまった。 残者が佇まう凪の静かさもデジャブな未来的光景ですが、ここは中々の場面でした。 90分にまとめればメリハリが出ると思います。 演出家は役者達の活きの良さを優先したようです。 *シアタートラム・ネクストジェネレーションvol.14 *安住の地第8回本公演 *劇場、 https://setagaya-pt.jp/performances/next14.html

■よく生きろ!

■演出:小田尚稔,出演:加賀田玲,こばやしかのん,小林駿ほか ■こまばアゴラ劇場,2022.12.9-18 ■場内でスタッフが「体調がすぐれない人は申し出でて・・」のアナウンを2回も繰り返すので不安が過る。 客数は25人前後です。 しかも不調とは無関係な20歳代の観客が多い。 ・・? はじめて観る演出家とその劇団です。 若者の貧困を描いている。 ホームレスになり池の魚や蛙を料理する男性、共同住宅で残飯を食べる人々、アルバイト先での些細なトラブル、そして売春をする女性、それを買う男。 幾つかの場面が粛々と描かれていく。 彼らは勝負もしていないのに敗戦者になってしまった? それを恨んでいる。 それは挑発的な態度・行動で示されます。 観客の目を見つめながら「たすけて!」と何度も叫ぶ。 「演劇界をぶっ壊したい!」。 同時に敗戦を受け入れようとしている。 「負けたっていいじゃないか!」「頑張るのをやめよう」。 この鬩ぎ合いに悩んでいるようです。 演出家の言う「エゴイズムと自己犠牲という矛盾した二つの生き方の緊張の中で   苦しみながら生きていく・・」に対応しているのでしょうか? 終幕、ホームレスの男性は蛙の毒にあたり、また売春の女を詰り過ぎて男は殺されてしまう。 途中、女性が池に突き落とされる事件が描かれるがこの結末がよく分からない。 小説を読んでいるような舞台でした。 モノローグが多く入るからです。 各シーケンスの繋がりが練られていないように感じました。 モノローグが原因かもしれない。 若者の貧困を激しく現前させてくれました。 激しすぎて「よく生きるには?」の手段として貧困を使ったようにもみえてしまった。 カーテンコールの拍手が疎らだったのは若者に救いが無かったからでしょう。 *劇場、 http://www.komaba-agora.com/play/12594

■能楽堂十二月「内沙汰」「竹雪」

*国立能楽堂十二月普及公演の□2作品を観る。 □狂言・和泉流・内沙汰(うちさた)■出演:佐藤友彦,井上松次郎 □能・宝生流・竹雪(たけのゆき)■出演:武田孝史,大坪海音,水上優ほか ■国立能楽堂,2022.12.10 ■「内沙汰」は主人公が関わる揉め事を裁判所に提訴しようとする。 そこで妻から裁判の練習を勧められる・・、しかし裁判官を演じた妻にコテンコテンに負かされて夫婦仲に亀裂が入ってしまう。 劇中劇の面白さがある。 「竹雪」のプレトーク「家族再生の物語」(小田幸子解説)を聞く。 ・・「金春禅竹の資料から推測して1450年頃の作品だろう」「幽玄能が確立した時期の為その対極にある当作品のような人情物には禅竹も警戒していたはず」「それでも継母にいじめられる子供と実母の再会は人気があった」「現代にも通じる母子の姿がある」「実母は継母を、姉は父を批判し最後に父が詫びる」「当時の家族観が垣間見える」などなど・・。 息子の死を告げられ現場に向かう実母と姉、笠を被り白の道行姿の二人が橋掛かりを歩く姿に圧倒される。 物語がぎゅっと凝縮されているからだ。 面は母が「曲見(しゃくみ)」姉は「小面」。 演者が遠い世界から全人生を背負ってやってくる姿を見事に捉える「橋掛り」は凄い。 先日の「弱法師」もそうだった。 この姿に会うため能楽堂に通うのだ。 *劇場、 https://www.ntj.jac.go.jp/schedule/nou/2022/12112.html?lan=j

■失われた線を求めて

■演出:勅使川原三郎,出演:勅使川原三郎,佐東利穂子 ■NHK,2022.12.4放送(両国シアターΧ,2022.10収録) ■4章構成のようです。 序章は背景に絵画を映し出し二人は踊りだす。 でもPCの調整をしながら観るので気が入らない。 絵画は見た記憶がある? 荻窪スタジオ「カラス アパラタス」のギャラリーかもしれない。 勅使川原三郎が描いたドローイングらしい。 象徴主義的な感じがしますね。 2章で佳境が訪れます。 交代でソロが続く。 二人の持ち味を十分に活かしきっています。 バロック系弦楽器もいいですね。 前章の激しさから一転、3章は東南アジア風打楽器が聴こえてスローな振付になる。 そして終章は再び絵画が映し出され、しかも初めての意味ある振付になる。 絵画とダンスの関係はよく分からなかったが、久しぶりの二人の舞台は満足度満点でした。 *劇場、 http://www.theaterx.jp/22/221007-221009t.php

■能楽堂十二月「素袍落」「逆矛」

*国立能楽堂十二月定例公演の□2作品を観る。 □狂言・大蔵流・素袍落(すおうおとし)■出演:善竹彌五郎,大藏彌太郎,大藏吉次郎 □能・観世流・逆矛(さかほこ)■出演:梅若紀彰,宮本健吾,馬野正基ほか ■国立能楽堂,2022.12.7 ■「素袍落」で太郎冠者は伯父から門出の酒を振る舞ってもらう。 その深酔いの演技が奥深い。 5杯は飲んだろう。 腰も目も据ってしまった。 年季の入った伯父のおおらかさもなかなかだ。 「岩船」を観てから脇能の面白さを知った。 「逆矛」も期待を裏切らない。 7人も登場する。 後場は天女のリズミカルな舞、次に瀧祭明神の力強い舞。 その対比が素晴らしい。 両者の面は小面と天神、前シテの老人は子牛尉(こうしじょう)。 小書「替衣装」「白頭」が付いているから衣装も申し分ない。 とてもリッチな舞台だった。 贅沢な時を過ごした気分だ。 ところでワキの科白に力が入りすぎて棒読みに感じられた。 脇能では時々見受けられる。 今日は外国からの団体客数十人が来ていた。 先日は女子高生の団体をみた。 劇場もウイズコロナの段階に入ったようだ。 *劇場、 https://www.ntj.jac.go.jp/schedule/nou/2022/12111.html?lan=j

■夜明けの寄り鯨

■作:横山拓也,演出:大澤遊,出演:小島聖,池岡亮介,小久保寿人ほか ■新国立劇場・小劇場,2022.12.1-18 ■斜めに吊るした大鏡が舞台床に描いた海を写している。 波や鯨は浮世絵風です。 舞台美術が気に入りました。 物語もどこか浮世絵風です。 巷ではよくある。 寄り鯨の意味がわかりました。 ところで捕鯨是非の議論が活発にされるが食文化のある日本では深まらない。 是は仏教の見方に行き着くような気がします。 非は感情的な話でよく分からなかった。 元を辿ればキリスト教的な背景があるのかもしれない。 ゲイの話もある。 ある環境下での若者の同性愛は一時的に見られます。 それは自然に卒業していく。 また想像豊かな緻密な絵を描く男子もよくいる。 詳細なロボットや鉄道線路、都市を描きそして地図を描く・・・。 面白い地図を描きゲイ疑惑のクラスメイト、ヤマモトヒロシが旅先で失踪してしまう。 たぶん周囲の保守的な煩い女性たちから逃げたかっただけでしょう。 ヤマモトヒロシに深い理由はありません。 真剣な顔をしていたが、本人はそう言っている(ようにみえた)。 喜怒哀楽の感動、人知を超えた衝撃、ある種の不思議さ、等々も無い。 よくある若者のすれ違いです。 浮世絵演劇と言ってもよい。 *NNTTドラマ2022シーズン作品 *劇場、 https://www.nntt.jac.go.jp/play/beaching-at-dawn/

■能楽堂十一月「太子手鉾」「弱法師」

*国立能楽堂十一月企画公演の下記□2作品を観る。 □狂言・和泉流・太子手鉾(たいしのてぼこ)■出演:野村又三郎,野村信朗 □復曲能・世阿弥自筆本による・弱法師■出演:大槻文蔵,大槻裕一,福王茂十郎ほか ■国立能楽堂,2022.11.30 ■「太子手鉾」は聖徳太子が使った鉾を物部守屋に掛けて漏り屋(雨漏り屋根)の意味に使った冗談話。 「弱法師」は四天王寺の住職、その従僧と能力、高安通俊そして俊徳丸の妻も登場して賑やかな舞台である。 幕が開き、妻の肩に手をのせて橋掛かりを歩く俊徳丸は演劇的な姿にみえた。 舞踏的な「蝉丸」と比較をしてしまった。 今日の舞台は現実的な演出である。 そのぶん劇的さが無い。 聖徳太子建立の由来、俊徳丸の舞、<みえてくる>西の海の風景、雑踏のなかで転んでしまう姿。 これらは淡々と舞そして語られる。 緻密に組み立てられた構造から物語がリズム良く流れ出てくる充実感は十二分にあった。 黒長髪で「弱法師」の面を付けた俊徳丸は何とも言えない若者の表情が漂う。 ツレは「小面」。 本日は満席、その6割は女性客だ、いつもは4割くらいだが。 着物姿も30人はいただろう、いつもは5人くらいだが。 ところで地謡前の通俊野村萬斎は目が据わっていないようにみえたが。 *劇場、 https://www.ntj.jac.go.jp/schedule/nou/2022/12110.html?lan=j

■ベンガルの虎

■作:唐十郎,演出:小林七緒,出演:伊藤俊彦,井村タカオ,成田浬,山丸莉奈ほか,劇団:流山児★事務所 ■スズナリ,2022.11.23-28 ■小林七緒演出「少女都市からの呼び声」が面白かったので早速劇場に駆けつけたの。 しかもコロナ感染拡大で昨年中止になった作品でもある。 はたして期待を裏切らない舞台だった。 旧日本軍の遺骨を収集をする生き残った者たちが此岸と彼岸の境界を飛び越えて日本と南方を行き来する壮絶な軌跡。 「ビルマの竪琴」「からゆきさん」などを絡ませながら物語を膨らませていく。 混乱の戦後社会を現前させ、同時に肉体と言葉を融合して劇的な舞台を作り上げていた。 唐十郎が世界へ飛び出した頃の勢いが失われていない。 楽しかったわよ。   *CoRich、 https://stage.corich.jp/stage/195325 *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、小林七緒 ・・ 検索結果は2舞台 .

■春の祭典

*次の□2作品を観る。 □半獣神の午後■演出:平山素子,出演:福田圭吾,奥村康祐,中島端生ほか □春の祭典■演出:平山素子,出演:米沢唯,福岡雄大,ピアノ:松本詩奈,後藤泉 ■新国立劇場・中劇場,2022.11.25-27 ■「半獣神の午後」は初演らしい。 12名前後の男性ダンサーが登場する。 今回は端席のため舞台を横から観るような感じだ。 このため前景と後景が分かれてしまい調子に乗れない。 振付もどこか活気がない。 不発だった。 この中劇場は使いにくい。 演劇も舞踊も神経を集中できない。 「春の祭典」は何度か観ている。 平山素子は踊らない。 米沢唯と福岡雄大だ。 米沢は華奢過ぎる。 バレエ身体から逃げられない。 福岡雄大は肉付きが良すぎる。 バレエなら引き締まるのだろうが、ダンスだとブヨブヨしてしまう。 筋肉の使い方が違う為かな? 心地よい緊張感がやって来なかった。 でもこの作品の振付は見ごたえがある。 ピアノ演奏も良かった。 「半獣神の午後」を楽しく観ていたら今日はご機嫌だったはずだ。 *NNTTダンス2022シーズン作品 *劇場、 https://www.nntt.jac.go.jp/enjoy/record/detail/37_024590.html *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、平山素子 ・・ 検索結果は13舞台 .

■ボリス・ゴドゥノフ

■原作:A・プーシキン,作曲:M・ムソルグスキー,指揮:大野和士, 演出:マリウシュ・トレリンスキ,出演:ギド・イェンティンス,小泉詠子,九嶋香奈枝ほか,演奏:東京都交響楽団 ■新国立劇場・オペラパレス,2022.11.15-26 ■ゴドゥノフの息子の小部屋はA・タルコフスキーの宇宙船内、そして舞台背景に映し出される歌手の白黒映像は悩める研究者達にみえる。 「惑星ソラリス」は原作がポーランドで監督がロシア、でも今日はその逆ね。 それにしても複雑な内容が詰まった楽曲に聴こえる。 それは東ヨーロッパから中国までの風景が波のように押し寄せてくる。 面白い。 しかも歌唱を引き連れた演奏は演劇を強く意識するの。 演劇的オペラと言って良い。 ロシア史に疎いため?ゴドゥノフの深層心理が読めない。 ピーメンやドミトリーの権力志向やシュイスキーの心底も同じ。 人間関係の深みに到達できない。 歌唱で関係を作れなかった。 その関係抜きでも演劇力は強い。 この落差が新鮮に感じるわね。 3幕休憩で席を去った人が多くいたがこの矛盾に耐えられなかったのかも。 この作品は<場面の勝利>といえる。 物語の流れは弱かったが一つ一つの文節に力があったからよ。 *NNTTオペラ2022シーズン作品 *劇場、 https://www.nntt.jac.go.jp/enjoy/record/detail/37_024502.html

■笠井叡DUOの會

*次の□4作品を観る。 □犠儀(朝日講堂,1963年) □丘の麓(青年座,1972年) □病める舞姫(スパイラルホール,2002年) □笠井叡の大野一雄(新作) ■演出:笠井叡,出演:川口隆夫,笠井端丈 ■吉祥寺シアター,2022.11.16-19 ■劇場に着くと「笠井叡 体調不良で出演できず・・」と貼ってある。 どうなるのかな? 何もなかったように幕が開く。 笠井叡の語りがスピーカーから聞こえる。 録音に代えたのだろう。 4作品すべてを川口隆夫と笠井端丈が踊る。 その背景に「土方メモリアル」(2002年)で録画した映像を映し出す・・? 二人が踊っている後ろで映像の二人が踊る感じだ。 しかも映像の中の背景に大野一雄と笠井叡の二人が踊っている古い映像を映し出している・・! つまり同時に3組のダンスを観ていることになる。 最初は目が回ったが次第に一番古い映像に焦点が絞られていく。 どれも数十年も前の舞台だ。 笠井叡はドイツに近づいていたので「タンホイザー」でも振付はブレない。 しかしワーグナーはより上手だ。 このため生舞台の二人が掠れてしまった。 こういう企画・構成だからしょうがない。 でも最後の新作は面白かった。 笠井叡の振付と一目でわかる。 笠井端丈も調子に乗っていた。 音楽はモーツァルト「レクイエム」らしいが字幕を付けてくれると舞台への親しみがより深まったろう。 やはりワーグナーやベートーヴェン「 ハヤサスラヒメ 」よりモーツァルトが似合う。 *CoRich、 https://stage.corich.jp/stage/200306

■お國と五平

■作:谷崎潤一郎,演出:神田真直,出演:飯坂美鶴妃,柊木樹,杉田一起,劇団なかゆび ■こまばアゴラ劇場,2022.11.17-20 ■能面を付けたお國、鎖に繋がれてお伴する犬の姿の五平・・。 いや、彼は五平ではない。 鎖から逃げてドラム缶に隠れたからです。 再び同じ姿で二人が静かに登場。 黒一色の暗い背景での幕開けは印象に残りました。 友之丞と五平の鎖姿が強烈ですね。 武家社会の掟から逃げられない、そして男女の愛着からも逃れられない。 この二つをなんとか収めようとする3人の藻掻く姿は観る者に迫ってきます。  しかし友之丞とお國、互いの身体から漏れる心の微妙な揺れが弱い。 仮面を付けて動きの少ないお國を前に、ドラム缶の中で動けないが上肢の動作が大げさな友之丞、くわえて屈託のない喋り方。 このアンバランスがそうさせたのでしょうか。  これを差し置いても衝撃力はありました。 狭すぎる舞台、能を取り入れた姿や動き、五平のバットの振りと缶の音などなど、身体へ食い込む外からの力は巧い。 ぎっしり詰まった緊張感ある一時間でした。 演出家と佐々木敦のアフタートークを聞く。 ・・「演劇人コンクール作品で原作のカットはしていない」「俳優は動かしてはいけないと言う原作者に従った」「鎖は文楽から、尻たたき(の音)は講談から、仮面は能から、梵鐘はドラム缶で、あらゆる古典芸能を利用した」「岸田國士以降の作者は苦手だ」「ゴドーを待ちながら、しあわせな日々は入っているのか? それは無い」「赤堀雅秋や三浦大輔の流れにみえるが? そうかも」などなど・・。 以上がトーク概要。 観客は約30人、マチネーの為か男性高齢者が8割だった。 みな芝居好きにみえます。 役者と観客の年齢差が大きい。 これは原作目当てか?受賞作目当てか?劇団目当てか? たぶん全部でしょう。 *演劇人コンクール2020年優秀演出家賞受賞作品 *劇場、 http://www.komaba-agora.com/play/12592 *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、神田真直 ・・ 検索結果は2舞台 .

■能楽堂十一月「附子」「大江山」

*国立能楽堂十一月度普及公演の下記□2作品を観る。 □狂言・大蔵流・附子(ぶす)■出演:茂山忠三郎,茂山逸平,茂山茂 □能・観世流・大江山■出演:上田公威,森常好,舘田善博ほか ■国立能楽堂,2022.11.12 ■「附子」とは毒草トリカブトのことらしい。 主人が附子と言って隠していたのは実は美味しい蜜菓子だった。 それを召使はこっそり食べてしまう。 主人への頓知の効いた言い訳がオチになっている。 「大江山」のプレトーク「二つのおおえ山と酒呑童子の首」(小松和彦解説)を聞く。 「・・話は丹後丹波の国境のようだが、丹波山城にある老い坂峠(おいのさか)が大江の坂にそして大江山になったとも言われている。 ・・童子の首は宇治に葬られたのか?京までのぼったのか? 諸説ある。 これは王権が揺らいでいたのを元に戻すための作品に違いない・・」等々を語る。 登場人物が多い舞台である。 そのため橋掛りの隅々まで巧く使い人物を動かしていた。 終幕、酒呑童子が源頼光に食らいつき、頼光が刀で切り返す打合働も詞章の一字一句ちがわずに進んでいく。 その前に、童子が寝所(一畳台)から姿をなかなか見せないことに期待が昂った。 ここで面は大童子から獅子口に変わる。 しかし童子の素直な性格は変わらない。 遡り、間狂言の強力と女の結婚話には客席から笑い声も聞こえていた。 力強いストーリーに淀みがなく観ていて気持ちが良い。 能というより歌舞伎に近い舞台だった。 *劇場、 https://www.ntj.jac.go.jp/schedule/nou/2022/11123.html?lan=j

■能楽堂十一月「悪太郎」「羽衣」

*国立能楽堂十一月度定例公演の下記□2作品を観る。 □狂言・大蔵流・悪太郎■出演:山本則重,山本泰太郎,山本則孝 □能・金剛流・羽衣■出演:豊嶋彌左衛門,福王茂十郎,矢野昌平ほか ■国立能楽堂,2022.11.9 ■「悪太郎」の飲みっぷりは豪快である。 何杯でもいける。 涎がでた観客も多いはずだ。 後半、仏教への接近は話が飛び過ぎる。 しかし江戸時代の信仰は日常の一コマなのかもしれない。 特に悪太郎は信仰の高揚と酒の酔は同列とみているのだろう。 「羽衣」はシテの姿勢が天女にみえない。 声は響いていたが身体がそれに付いていない。 老化天女だ。 能面は増。 シテが科白を忘れたり飛ばしたりすることはよく有る。 前者は地謡が小さな声で教える。 後者はシテの次声に周囲が合わせていく。 どちらも観ていて気にならない。 リピートが容易な能楽はリカバリが早いからだ。 ところで当舞台は金剛流の盤渉(ばんしき)という小書が加えられた。 序ノ舞で笛が甲高い音律に変わる。 どこかで聴いた音色だ。 何回も繰り返すので懐かしさが漂ってくる。 遠い記憶のなかを彷徨ってしまった。       *劇場、 https://www.ntj.jac.go.jp/schedule/nou/2022/11122.html?lan=j

■ペール・ギュント

■作:ヘンリック・イプセン,翻訳:毛利三彌,音楽:棚川寛子,演出:宮城聰,出演:武石守正,池田真紀子,石井萠水ほか,劇団:SPAC ■静岡芸術劇場,2022.10.8-11.6 ■この舞台は「 2010年ベスト10 」に推薦したことを覚えている、でも中身は殆ど忘れてしまった・・。  しかもこの作品は上演が少ない。 この12年間では日韓文化交流企画のヤン・ジョンウン演出を観ただけ。 場面展開が多く道具や衣装がいろいろと必要な為かな? 揃わなくても可能だが演出は大変になりそう。 もちろん今回の公演は早くからスケジュールに組み込んでいたわよ。 演出ノートには「自分探しの旅ができるのは男性だけ・・」、翻訳家は「女をほったらかして世界中を飛び回り、したい放題のあげく、死に際になって慰めを求めて女のところに舞い戻ってくる・・」と、男性ペールに手厳しい。 この作品は母息子の関係が強い。 母の子宮から出て再びソルヴェイの子宮に戻る話にもみえる。 これが母娘の関係になると娘の子宮をどう位置づけるかで違ってくる。 また別の輪廻転生物語ができそう。 今日の舞台は旅を双六遊びにして子供たちがペールを動かしていく。 劇中劇ね。 子供をみると時代は日本の太平洋戦争中にみえる。 ゼロ戦で遊んだり、防空頭巾を被っての空襲場面もある。 でも作品との繋がりは弱い。 雑音に聞こえてしまった。 どうしても男性形に拘りたいのね。 そして旅物語で終わらない面白さは悪魔(釦職人)や魔王(閻魔大王)がペールに審判を下そうとする終幕があるからだと思う。 此岸と彼岸の境界まで旅が広がり死が迫ってくるから。 そこではキリスト教価値観を越え観客のカタルシスは倍増する。 衣装は中高生向きだが気にならない。 ソルヴェイが指揮者というのも面白い。 今回もとても良く出来ていて期待を裏切らなかったわよ。 *SPAC秋春のシーズン2022作品 *劇場、 https://spac.or.jp/au2022-sp2023/peer-gynt2022

■私の一ヶ月

■作:須貝英,演出:稲葉賀恵,出演:村岡希美,藤野涼子,久保酎吉ほか ■新国立劇場・小劇場,2022.11.2-20 ■オモシロイと言ってよいのか、ツマラナイと言ってよいのか、不思議な舞台でした。 複雑な構造をしている。 空間が三つに分けられ時間も過去と現在が交差する。 そこに誰かの思い出らしき過去も入る(?)。 母と娘の交換日記の佳境場面ではジワツと感動がきました。 しかし観終わった後にはそれが遠のいていく。 日常生活によくある一時的な非日常のような作品です。 母の泉と二人の子、明結(あゆ)と拓馬、それに祖父母の実と美由紀が伊川家の構成かな? 途中、明結が「拓馬オジ」(?)と言ったので困惑、そして「拓馬は明結のお守りを・・」という台詞に混乱。 やっと拓馬が明結の父親と分かる。 科白に訛があるので聞き違えが多分にあったようです。 拓馬の行動は異常にみえる。 なぜコンビニで何回も買い物をするのか? 観客を脅迫的にさせます。 彼は自死をしたらしい。 家族がいくら語ってもしかし、それが行動と繋がらない。 「拓馬を利用した」。 この台詞が全体に当てはまってしまった。 司書である佐藤と明結と拓馬の関係は人工的だが気になりません。 「私の一ヶ月」は感動の日記に繋がり文句のない題名です。 実験的な舞台にみえました。 巧く言えませんが。 ワークショップの賜物でしょうか? この流れを作ることができれば芝居世界がより広がります。 母娘の親密な関係が光っていました。 *NNTTドラマ2022シーズン作品 *劇場、 https://www.nntt.jac.go.jp/enjoy/record/detail/37_024425.html *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、稲葉賀恵 ・・ 検索結果は3舞台 .

■シッラ Silla

■作曲:G・F・ヘンデル,演出:弥勒忠史,指揮:ファビオ・ビオンディ,演奏:エウローパ・ガランテ,出演:ソニア・プリナ,スンヘ・イム,ヴィヴィカ・ジュノー他 ■神奈川県立音楽堂,2022.10.29-30 ■ヘンデルは今年3本目、どれも印象が強かったからヘンデルイヤーと言ってよいわね。 青年ヘンデル28歳の作品のためか多彩な曲でバロックを揺さぶっている。 この劇場は狭い。 客席前に作られた楽団との間隔は2mしかない。 前席近くに座ったので楽譜が読めるくらいの近さなの。 ビオンディの指揮とバイオリン、エウローパ・ガランテの動きが手にとるようにわかる。 オペラも楽団は表に出るのが最高ね。 ところで舞台は、カウンターテナーがいないの。 神を除いて全員が女性で主役はコントラルト。 でも一番はレピド役でソプラノのヴィヴィカ・ジュノーだったかな? 彼女の唇の動きはまるで別の生き物のよう。 全身に震えがくるわね。 メテッラ役スンヘ・イムは二幕から調子がでてきた。 暴君シッラの目に余る性悪で物語は極端すぎて面白くない。 これで演出家は歌舞伎風に仕立て叙情から形ある叙事に読み直したのかな? これは成功したとおもう。 でも歌手が厚化粧で素顔が想像できない。 化粧だけは普通にして欲しい。 終幕の空中サーカスは予想外の驚きね。 楽しかったわよ。 *音楽堂室内オペラ・プロジェクト第5弾 *劇場、 https://www.kanagawa-ongakudo.com/d/silla2022

■能楽堂十月「野宮」「謀生種」「飛雲」

*国立能楽堂十月度特別講演の下記□3作品を観る。 □能・金剛流・野宮■出演:今井清隆,宝生欣哉,野村万蔵ほか □狂言・和泉流・謀生種(ぼうじょうのたね)■出演:野村萬,野村拳之助 □能・観世流・飛雲■出演:藤波重孝,原大,原陸ほか ■国立能楽堂,2022.10.29 ■地謡やワキのテンポに徐々に近づいていったが、「野宮」の前シテの動きや謡が始まりはとても遅かった。 しかも衣装は派手、面は孫次郎だ。 微妙にチグハグな感じがする。 六条御息所の一つの表現として理解できるが気に入らない。 後場になると違和感が一掃される。 衣装と面がぴたりとハマった。 葵の上との車争いを激しく回想した後に突如として序ノ舞を舞う。 この動静の転換が劇的である。 野宮の風景=御息所の心情を語り再び静から動への破ノ舞に入る。 「火宅の門を出でぬらん・・」。 後場で御息所らしい姿に戻った。 「飛雲」はまるで劇画をみているようだ。 末社来序や舞働などあまり見かけない場面もある。 山伏と鬼神との戦いが楽しい。 面は前シテが笑尉、後シテが顰(しかみ)。  「野宮」がチェンジアップ高めから入るスローボールなら「飛雲」は内角へ揺さぶる直球だろう(日本シリーズ第六戦を見ながら)。  *劇場、 https://www.ntj.jac.go.jp/schedule/nou/2022/10125.html?lan=j

■スカパン

■原作:モリエール「スカパンの悪巧み」,演出:串田和美,出演:大森博史,武居卓,小日向星一ほか ■神奈川芸術劇場・大スタジオ,2022.10.26-30 ■1994年7月にシアターコクーンで「上海バンスキン」を観て、いたく感動したが同年初演の「スカパン」は見逃してしまい結局は、今日になってしまった。 簡素な照明やスピーカそして引幕がとてもいい。 進行転換に使う幕の開閉も歯切れが良い。 下町芝居という感じだ。 それにしてもスカパン串田和美は声が嗄れて萎びたアルレッキーノに見えた。 串田・小日向の親子出演だったが世代交代が感じられる。 旅芸人一座がやって来てスローモーな動きをする幕開き、スカパンが仮面を被り転げ回る場面、暗い照明のなか若者4人が遊び回る様子、大団円での円舞光景、そしてスカパンが倒れる終幕、喜怒哀楽を昇華した演出家の形が表現されていた。 保守的な社会の姿に反抗する若者が元の鞘に収まる結末も、「先のことはくよくよしない」「何もやらないより良い」スカパンの行動で、観客にも元気を与えてくれる舞台だった。 *劇場、 https://www.kaat.jp/d/scapin2022 *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、串田和美  ・・ 検索結果は7舞台 .

■階層

■作・演出:岡田利規,映像:山田晋平,キャスト:オーディションで選考された市民ほか ■東京芸術劇場・シアーターイースト,2022.10.19-25 ■観客15名は厳かに場内に入り客席に座る。 幕が上がると前回の客が映像を観みている姿が舞台にみえる!? 次は我々の番だ。 舞台に登ると奈落のような割れ目があり下を覗くとガラス板が立てられている。 そこに映像が映し出される。 2階から芝居を観ている感じです。 役者たちは例のフニャフニャ動きで科白を喋る。 そして奈落に落ちた理由や表舞台への嫉妬を語る。 ここは衣・食・眠が不要で永遠に生きられるらしい。 これは演劇論なのか? それとも社会の格差問題を語っているのか? 何とも言えません。 観客と映像役者との階差、それも観客から見難い物理位置など変わった構成に考えさせられました。 しかし演劇空間が立ち上がったかと言われると疑問符が残ります。 それよりも科白が意味深く聞こえました。 戯曲を読みたくなる作品です。 客同士を対面させるのは(舞台側の客は演技もできるし)楽しいですね。 この数日は池袋へ通っているが、  西口公園の「嵐が丘」で片桐はいりが歩きまわっているのをいつも目にします。 気合が入ってますね。 *東京芸術祭2022参加作品 *劇場、 https://tokyo-festival.jp/2022/program/kaiso

■FORMULA

■構成・演出・振付:森山未來,中野信子,エラ・ホチルド,出演:川合ロン,笹本龍史,東海林靖志ほか ■東京芸術劇場・プレイハウス,2022.10.15-23 ■さいしょに森山未來の挨拶があり、・・彼を含め6人でダンスが始まる。 力は入っているがゆっくりと手足を動かす。 おおらかな振付で気持ちがいい。 古い木材を持ってそれを各々が引き継いでいく。 途中に雑音のような科白が入る。 次第に感情表現が多くなり、家族内の、男女間の、諍いも振付に入ってくる。 そして一人の死に遭遇しながらも、生きている者は互いに寄り添う。 突然マイクが天井から降りてきて森山未來が科白を早口で喋る。 ダンサーはアフリカ民俗あるいはシャーマンが着るような派手な衣装になり踊り終わる・・。  このような流れでした。 脳科学を駆使した新しいダンスが観られるかもしれない。 チケットを購入した理由です。 しかしダンスは気に入ったが脳科学との関係はよく見えなかった。 考えていた舞台とは違っていたからです。 森山未來の科白がテーマを語っています。 「あなたは一人ではない。 互いに支え合っている。 そして他者との繋がりの豊かさが、人類がここまで生き延びてきた理由だ・・」と。 ロビーでは関連する作品、たとえば共感する脳波や心臓、脳内分泌、儀式や信仰そして祭などなどが展示されていた。 脳科学は緩やかに関係づけられている。 予期せぬ展開でしたが予期せぬ驚きもありました。 *CoRich、 https://stage.corich.jp/stage/174302 *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、森山未來  ・・ 検索結果は5舞台 .

■レオポルトシュタット

■作:トム・ストッパード,翻訳:広田敦郎,演出:小川絵梨子,出演:浜中文一,音月桂,村川絵梨ほか ■新国立劇場・中劇場,2022.10.14-31 ■「メルツ家とヤコボヴィッツ家の家系図」はオペラパレスにも飾ってあった。 でも一気には覚えられない人数ね。 もう無視して中劇場へ向かったの。 それでも細かい所はともかく、主要な関係は追えたわよ。 時間軸は1899年、1924年、1938年そして1955年の4時代になっていたと思う。 主人公ヘルマンからみて両親、子供、孫の4世代に対応していたのかな? この骨格は強い。 歴史がユダヤ系家族を動かして激動の物語を紡ぎ出していく。 「家族写真には名前を必ず書いておくこと・・」。 この科白には頷くわね。 1955年、孫の世代が家系を遡り家族親戚の亡くなった場所が読み上げられる。 アウシュビッツの声が繰り返されるなか幕が降りる・・。 重厚なリズムが最後まで崩れなかった。 それは廻り舞台を巧く使った美術にも言える。 一気に観させてくれた。 子役が子・孫の関係を上手く繋いで物語を生き生きさせていたわよ。 でもヘルマンの計画、妻に不倫をさせてアーリア人の子供を産ませるのは狂逸だわ。 歴史に翻弄される家族の状況がより迫ってきたけどね。 終幕、違った理由で宗教と家族の柵からイギリスへ逃げた孫(名前は忘れた)の清々しさは未来への救いかもしれない。 *NNTTドラマ2022シーズン作品 *劇場、 https://www.nntt.jac.go.jp/enjoy/record/detail/37_024325.html

■夢と錯乱

■作:ゲオルク・トラークル,訳:中村朝子,演出:宮城聰,出演:美加理 ■東京芸術劇場・シアターイースト,2022.10.14-16 ■寒々しいヨーロッパの自然を背に一人の青年が彷徨い歩く・・。 一人芝居の舞台は暗い。 人生の苦悩を象徴的な言葉で表現した朗読劇を観ているようでした。  科白と役者に集中を傾けたが、深刻な詩的世界に飛び込むのは難しい。 青年役の美加理は特徴を出さずに、どちらかというと淡々と科白を喋っていくので詩の持つ狂気が伝わってこない。 どう観ればよいのか迷ってしまいました。 ゲオルク・トラークルは初めて聞く詩人です。 これは象徴派演劇とでもいうのでしょうか? 彼のように「生き死に関わること」をいつも心の片隅に持っていないと瞬時に対応できない。 現代人はつい大事なことを置き忘れてしまう。 演出家ノートにヨシ笈田の話が載っていましたね。 「言動分離」でも言葉と肉体のハーモニーは可能です。 言葉は肉体の一部だからです。 「言葉は身体の外のもの・・」。 演出家が以前言っていたことも覚えています。 状況ではどちらにも取れるのでは? *東京芸術祭2022参加作品 *東京芸術祭、 https://tokyo-festival.jp/2022/program/yume

■ジュリオ・チェーザレ

■作曲:G・F・ヘンデル,指揮:リナルド・アレッサンドリーニ,演出:ロラン・ペリー,出演:マリアンネ・ベアーテ・キーランド,森谷真理,藤木大地ほか,管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団 ■新国立劇場・オペラパレス,2022.10.2-10 ■ズボン役とカウンターテナーが混ざり合う舞台は、もうひとつの宝塚版と言ってよいかしら? レチタティーヴォとアリアが延々と続くバロックオペラにたっぷり浸かる4時間だった。 激しいが軽やかで柔らかい演奏が心地よい。 舞台はエジプトの博物館らしい。 古代彫刻や絵画から歌手たちが抜け出して歌い出すという仕組みなの。 館職員には歌手は見えない。 面白い演出ね。 しかも彫刻などの展示物が只者ではない。 新国ならではの物量作戦を展開してくる。 目の驚きにはなるが時代遅れの感も避けられない。 でも先日の「浜辺のアインシュタイン」と同じく映像を使わなかったのは正解、それを使えば生身の身体が蒸発してしまうから。 幕が進むほどに安定が増して言ったかな? 歌手たちも適度な疲労と楽日で気合が入っていた。 カーテンコールでの指揮者の燥ぎようをみて大きな拍手を贈ってあげたわよ。 *NNTTオペラ2022シーズン作品 *劇場、 https://www.nntt.jac.go.jp/enjoy/record/detail/37_024145.html *2022.10 投稿者名を「白犬黒猫」から「しろいぬ」に変更しました.

■スカーレット・プリンセス

■原作:鶴屋南北「桜姫東文章」,台本・演出:シルヴィウ・プルカレーテ,出演:ルーマニア国立ラドゥ・スタンカ劇場カンパニー ■東京芸術劇場・プレイハウス,2022.10.8-11 ■原作に忠実な流れの為か歌舞伎を思い出しながら粗筋を追ってしまった。 しかも花道はあるし途中にすっぽんもある。 下座音楽に似せて上手に演奏台も作られている。 まさに歌舞伎だ。 結構ハチャメチャな舞台でオモシロイ。 やはり刀を持つと振り回したくなる。 チャンバラ場面を多くしたいのも分かる。 しかも桜姫は舞踏ダンサーのように白塗りの半裸体で動き回る。 芭蕉の俳句も登場する。 何でもアリだ。 しかしどこか調子がずれている。 舞台からリズムとテンポがみえてこないからだろう。 擬音はあるが演奏は少ない。 ルーマニア語の科白もリズミカルには聞こえない。 お家騒動を強調しすぎた為か主役三人の数奇な運命が薄められてしまった。 原作を知らないと三人に近づけないだろう。 美術や衣装、そして小道具、役者の動きもずれっぱなしで楽しい。 外見はオモシロイが内面がツマラナイといえる舞台だった。 日本語で作ったシェイクスピア舞台を英国の客席から観るとこうなるのではないかと考えながらみていた。 今日の客は年齢層が高い。 プルカレーテ仕様の歌舞伎は受け入れただろうか? *東京芸術祭2022参加作品 *劇場、 https://www.geigeki.jp/performance/theater320/   *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、プルカレーテ  ・・ 検索結果は6舞台 . *2022.10 投稿者名を「茶熊赤狸」から「かなへび」に変更しました.

■浜辺のアインシュタイン

■音楽:フィリップ・グラス,演出:平原慎太郎,指揮:キハラ良尚,出演:松雪泰子,田中要次,中村祥子ほか,演奏:辻彩奈,中野翔太,高橋ドレミ他,合唱:東京混声合唱団 ■神奈川県民ホール,2022.10.8-9 ■平原慎太郎が彼本来の振付で演出しようと決めたのね。 P・グラスの音楽を「有機的な繰り返しと変化の機微」として捉え、「永遠の輪廻のようでありアジアの思想にも通じる観念でもある」と彼は解釈したからよ。 宝塚大階段を使いながらも照明は控えめに、そして美術と衣装は地味にしたのはこの演出家らしい舞台だわ。 台車や鏡を持ち歩き、ゴワゴワしたビニールを広げ、古臭いモノを使って身体を蘇らせる・・。 映像を使わなかったのが良い結果をもたらした。 圧巻はACT3かな。 音楽とダンスが一致して無我の境地に入れた。 ビジュアル的・彫刻的だったR・ウィルソンを比較すると今日はその対極の舞台だった。 より過去へ向かったダンスは多くの賛否が出るはず。 合唱団はもっと目立ってもよいかもね。 *開館50周年記念オペラ *劇場、 https://www.kanagawa-kenminhall.com/d/50th-opera1 *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、平原慎太郎  ・・検索結果は 8舞台 .

■住所まちがい

■原作:ルイージ・ルナーリ,台本・演出:白井晃,出演:仲村トオル,田中哲司,渡辺いっけい,朝海ひかる ■世田谷パブリックシアター,2022.9.26-10.9 ■「コメデア・デラルテ」と聞くと当劇場で上演した「二人の主人を一度に持つと」を思い出します。 でも今日はその系統と違い、身体性より科白優位が目立つ舞台でした。 しかも原作の宗教性をそのままにして背景を現代日本に書き換えた面白い台本になっている。 死を身近に感じた時の行動はどの時代どの宗教でも変わらない。 ここに舞台の面白さがあります。 そのうえ密閉された部屋から逃げられないSFの楽しさも発揮されていた。 重たい主題を軽いノリで演ずる役者たちも熱演でした。 演出家はこの劇場の新監督になったのですね。 就任一作目として適度な刺激が有り一般受けの良い理想的な作品でした。 三軒茶屋へ行く楽しみが続きますね。 有名演出家が引き続き担当することに安心感があります。 でも若い演出家もどんどん出て来てほしい。 *劇場、 https://setagaya-pt.jp/performances/20220910three-on-the-seesaw.html *2022.10 投稿者名を「黄虎青狐」から「かえる」に変更しました.

■能楽堂十月「鎧腹巻」「雨月」

*国立能楽堂十月定例公演の下記□2作品を観る。 □狂言・和泉流・鎧腹巻■出演:野村萬斎,野村万作,石田幸雄 □能・観世流・雨月■出演:武田宗和,武田宗典,森常好ほか ■国立能楽堂,2022.10.5 ■「鎧腹巻」は、主人から「鎧」を買ってきてくれ! 頼まれた太郎冠者はしかし鎧の知識がない。 結局は詐欺師から別物を買わされてしまい・・。  万作萬斎の親子舞台は久しぶりである。 「雨月」は西行法師が住吉神社参詣の途中に宿を借りるところから始まる。 宿の主が歌の下句を詠み、これに上の句を付けたら宿を貸すと言う。 西行は見事に上句を詠む。 そして住吉明神が現れ和歌の徳を讃えて舞を舞う。 その歌は、 「月は漏れ雨はたまれと思ふには、賤が伏屋を葺きぞわづらふ」 (撰集抄) 老夫婦が家の中で並んでいる姿、そして住吉明神の憑いた宮人が舞ったあとに醒めて退いていく姿、この二つ場面がとてもよかった。 前シテの面は朝倉尉、後シテが小尉、ツレは姥。 *劇場、 https://www.ntj.jac.go.jp/schedule/nou/2022/10122.html?lan=j

■ガラスの動物園

■作:テネシー・ウィリアムズ,演出:イヴォ・ヴァン・ホーヴェ,出演:イザベル・ユペール,ジェスティーヌ・バシュレ,シリル・ゲイユ他 ■新国立劇場・中劇場,2022.9.28-10.2 ■劇場は満席です。 イザベル・ユペールのバリューですか? J=L・ゴダール追悼で先週みた「勝手に逃げろ」にも登場していましたね。 40年前の映画だが当時と比較しても今日のユペールは衰えのない演技をしていた。 さすがです。 それにしても中劇場は合わない。 小劇場向けの作品でしょう。 間口があるので(特に)姉ローラの動きが強くみえる。 活動的なローラです。 彼女が毛布にくるまっている時は全く存在感が無い。 極端すぎる。 長男トムも微妙な関係から逃げている。 オコナーは中庸の演技で巧い。 主役は母アマンダでしょう。 娘を案ずる場面が圧倒的ですね。  この作品は何回も観ています。 4人の微妙な描き方で舞台は大きく変わる。 関係性を密に表現する日本の劇団の舞台が私は好きなのですが・・。 外国の劇団は骨はあるが荒っぽい。 それでも結婚に辿りつけない男女のすれ違いはいつみても涙を誘います。 *NNTT演劇2022シーズン作品 *海外招聘公演(フランス国立オデオン劇場) *劇場、 https://www.nntt.jac.go.jp/enjoy/record/detail/37_024182.html

■プティ・コレクション

*下記の□3作品を観る。 □プティ・セレモニー/小さな儀式 ■振付:メディ・ワレルスキー,音楽:ヴィヴァルディ他,出演:小林美奈,成田紗弥,堀内將平ほか,舞団:Kバレエ □プティ・バロッコ/小さな真珠 ■振付:渡辺レイ,音楽:C・エイヴィンソン他,出演:飯島望未,山田夏生,石橋奨也ほか,舞団:Kバレエ □プティ・メゾン/小さな家 ■振付:森優貴,音楽:S・ラマニノフ,出演:辻久美子,世利万葉,日高世菜ほか,舞団:Kバレエ ■神奈川芸術劇場,2022.9.30-10.1 ■ローラン・プティに関連した公演か? いや、違った。 チラシをみると「プティ」は本来の意味に従う。 それも「いとうつくし」と訳すらしい。 なんとなく分かった(?) 「小さな儀式」のダンサーたちは正装で踊る。 ピナ・バウシュを思い出させる音楽・振付がところどころにみえる。 しかし動きはより激しく硬い感じだ。 優雅というか、落ち着きはある。 ジャグリングや白い箱など小道具も多く取り入れている。 でも、よくわからない舞台だ、解説を読んでも。 演出家の思考過程が複雑に現れている作品だった。 「小さな真珠」はダンスを創る楽しさが伝わってきた。 音楽も複雑な絡み合いを奏でていて面白い。 女性ダンサーの衣装はサルートらしいが舞台に似合っていた。 ダンスを観る楽しさがあった。 後味の切れも良かった。 「小さな家」は「小さな儀式」が描いた(狭い)社会をより広げた作品だ。 それは白と黒、天使と悪魔などの対立項で構造を明確化している。 ラフマニノフのピアノに合わせるのでダンサーのテンポは速い。 しかし衣装がゆるゆるで身体がよくみえない。 床に敷き詰められた紙屑が多すぎて動きにも雑音が入る。 現代社会の一面を表現しているが修飾過多にみえる。 もっとスッキリさせても意図は伝わったとおもう。 「小さな儀式」も「小さな家」もヨーロッパの匂いを強く感じさせてくれた。 でも「小さな真珠」は違う。 「ダンスは20世紀に出尽くしている」「新しいものをつくり出すより共感できるものを探りたい」。 「プティ」とは何か? 渡辺レイのインタビューにその答えがあるようだ。 *劇場、 https://www.bunkamura.co.jp/orchard/lineup/22_opto_petit/ *「ブログ検索🔍」に入

■メサイア

■作曲:G・F・ヘンデル,編曲:W・F・モーツァルト,演出:R・ウィルソン,指揮:マルク・ミンコフスキ,出演:エレナ・ツァラゴワ,ヴィープケ・レームクール,リチャード・クロフト他,演奏:ルーブル宮音楽隊 ■NHK・配信,2022.9.19(ザルツブルク・モーツァルト劇場,2020.1.21,23,26収録) ■ロバート・ウィルソンの名前があったので観ることにしたの。 この時期に会えるとはラッキー! 10月公演の「浜辺のアインシュタイン」のチケットも入手したし・・、今回は演出が平原慎太郎だから楽しみね。 この「メサイア」もウィルソンらしい舞台になっている。 照明や美術は無彩色系に統一して、逆光やスモークも使い神秘性を表現している。 宗教音楽のため派手なところはみせない。 ただし歌手が舌を出したりウィンクするところ、女の子が登場する場面などは遊び心ある演出家に戻るの。 「ハレルヤ」では宇宙飛行士も登場して楽しいわね。 今回は配信をパソコンで観たけど生の舞台ならより集中できたとおもう。 ヘンデル唯一のオラトリアで聖書の歌詞も表面は分かり易い。 でも歌詞は吟味しないと深みに行けない。 イエス・キリストを描いているが物語性は弱い。 むしろ詩楽を観たような感じかな。 *NHK、 https://www.nhk-ondemand.jp/goods/G2022122744SA000/

■能楽堂九月「空腹 そらはら」「薄」

*国立能楽堂九月企画公演の下記□2作品を観る。 □復曲狂言・空腹■出演:野村又三郎,野口隆行 □復曲能・薄■出演:金剛永謹,有松遼一,山本則秀 ■国立能楽堂,2022.9.23 ■どちらも復曲作品である。 狂言「空腹」は男が何某にカネを借りにいくが断られる。 そこで男は心にもなく切腹するぞ!と何某を脅す。 しかし逆に切腹を勧められてしまう。 男は切腹から逃げようとするが・・、カネも欲しい。 さいごまで気を揉む舞台だ。 能「薄」では<薄の精>が登場する。 能世界の山川草木の描写はどれも素晴らしいが、これは植物学的な作品にもみえる。 なんと薄の種類まで謡われる。 薄を愛でた登蓮法師を回向する話だが補陀落信仰に繋がるらしい。 「舞金剛」と言われるように後場の序之舞が見所である。 増女が似合う。 前シテは小面だった。 絣?衣装がゴワゴワしていて踊り難いようにみえたが。 「・・今は忘れ去られてしまった」。 鴨長明の無常観に繋がっていくのだろうか? *劇場、 https://www.ntj.jac.go.jp/schedule/nou/2022/4116.html?lan=j

■天の敵

■作・演出:前川知大,出演:浜田信也,安井順平,盛隆二ほか,劇団:イキウメ ■本多劇場,2022.9.16-10.2 ■粗筋を読まないで観たのは正解でした。 イキウメは特にそうですね。 牛蒡のバルサミコ炒め、豆腐・長葱・人参と発芽玄米の混ぜご飯。 客席にも美味しい匂いが届きました。 その匂いが消え、次第に緊張が高まります。 主人公長谷川卯太郎の120年の過去が劇中劇を伴って語られる。 役者の動きは少ない。 しかし存在感がありますね。 緊張は終幕まで続く。 良質なSF小説を読んでいる気分です。 でも最後に、鰻の話で緊張が壊れてしまった。 主人公と医師夫婦の行く末は、舞台では演じられないが、凡庸です。 このまま「ポーの一族」として生きていく手もあった? これでジャーナリストでありALS患者の寺泊満が思い悩んで冷蔵庫の扉を閉める場面が強く浮き出ました。 終幕の流れから「天の敵」の意味を噛みしめました。 人間の健康や寿命のことを、生物としての生と死をです。 久しぶりに血肉に響いた舞台でした。 カーテンコールの拍手が大きかったですね。 流石です。 *CoRich、 https://stage.corich.jp/stage/164667

■NHKバレエの饗宴2022

*以下の□7作品を観る。 ■指揮:冨田実里,管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団 ■NHK・配信,2022.9.18(NHKホール,2022.8.13収録) □パ・ド・カトル Pas de quatre■振付:アントン・ドーリン,音楽:プーニ,出演:中村祥子,菅井円加,永久メイ,水谷実喜 □バリエーション・フォー・フォー Variations for four■振付:アントン・ドーリン,音楽:キーオ,出演:厚地康雄,清瀧千晴,猿橋賢,中島端生 □牧神の午後への前奏曲■振付:平山素子,音楽:ドビュッシー,出演:小尻健太,柴山紗帆,飯野萌子,フルート:高木綾子 □ウェスタン・シンフォニー■振付:ジョージ・バランシン,音楽:ケイ,出演:スターダンサーズ・バレエ団 □「ロメオとジュリエット」からバルコニーのパ・ド・ドゥ■振付:レオニード・ラヴロフスキー,音楽:プロコフィエフ,出演:永久メイ,ビクター・カイシェタ □「ドン・キホーテ」からグラン・パ・ド・ドゥ■振付:マリウス・プティバ他,音楽:ミンクス,出演:菅井円加,清瀧千晴 □アンダンテ Andante■振付:金森穣,音楽:バッハ,出演:中村祥子,厚地康雄,バイオリン:小林美樹 ■幕開き2作品「パ・ド・カトル」と「バリエーション・・」のダンサーを「ロメオとジュリエット」「ドン・キホーテ」「アンダンテ」にも出演させる構造になっている。 コロナ禍の都合もあったのだろう。 国内外で活躍しているダンサーをじっくりと見せてくれた。 アンドレ・ドーリンは初めて聞く振付家だ。 落ち着いていて、そこに豊かさもみえる。 ソロを重視しているが、でも全体への繋がりは雑だ。 気に入ったのは「ロメオとジュリエット」。 ビクター・カイシェタのダイナミックさと永久メイの繊細さが上手く調和していた。 それと「ウェスタン・シンフォニー」。 西部劇の酒場にいるような楽しい雰囲気がとても良かった。 「曲から入るタイプである」と「アンダンテ」の金森穣は言っている。 しかしバッハの選択はどうだろうか? 「・・二人のカラダは人生をかけた作品」とも言っている。 二人は名誉K中村祥子とオールマイティ厚地康雄のイメージが強い。 大人の厚い味は出ていたが、もう少し華麗な楽曲にして二人の人生をより肯定しても面白

■グッバイ・ゴダール

■監督:ミシェル・アザナビシウス,出演:ルイ・ガレル,ステイシー・マーティン,ベレニス・ベジョ他 ■アマゾン・配信(フランス,2017年作) ■雑誌「リュミエール」に蓮實重彦と武満徹が涙を流しながら抱き合っている記事を思い出してしまったの。 二人はA・タルコフスキーを観て涙が止まらなかった・・。 タルコフスキーで私は涙を流したことはない。 でもJ=L・ゴダールは何度もある。 1980年代の「パッション」以降、彼の作品の幾つかは涙が止まらない。 特に1990年代に入ってから、たとえば「愛の世紀」「新ドイツ零年」などなど。 喜怒哀楽とは別の涙ね。 映画的・音楽的リズムや演劇的・劇的とも違う。 ゴダールは新しい映画芸術の涙=感動を私に与えてくれた。 「グッバイ・ゴダール」はアンナ・ヴィアゼムスキーの自伝的小説を映画化したものらしい。 彼女はR・ブレッソンの「バルタザールどこへ行く」に、ゴダールでは「中国女」から「万事快調」まで出演している。 素人の感じがいつも離れなかった。 ブレッソンの影響が続いたのかしら? それはゴダールの当時の方針にも合っていたのかも。 今回の作品は夫婦からみたゴダールの裏側が見えて楽しかったわよ。 そして本当に最後になってしまった・・、グッバイ ゴダール! *映画com、 https://eiga.com/movie/88998/

■笑顔の砦

■作・演出:タニノクロウ,出演:井上和也,FOペレイラ宏一朗,緒方晋ほか,庭劇団ペニノ ■吉祥寺シアター,2022.9.10-19 ■舞台には身窄らしい長屋の二部屋が並んでいる。 下手は漁師の船長の部屋。 ここで同僚と一緒に食事もしている。 カネは無さそうだが人生を謳歌しているようです。 上手の部屋は新たに引っ越してきた父と娘、父の母の三人家族。 母は認知症らしい。 家族の崩壊が見え隠れする。 そして二部屋で物語が同時進行していく。  ・・船長は隣の家庭を覗き見した後にふさぎ込んでしまう。 身近な<現実>を見てしまったためです。 自身の将来を考えてしまった。 しかもテレビでC・イーストウッドの「荒野の用心棒」(?)を観たのでなおさらです。 自身の孤独も考えてしまった。 しかし同僚のくだらない笑いで船長は救われます。 隣の家族も食事で笑顔が戻り幕が下りる・・。 調理や食事の場面が多い。 でも上手くまとめています。 「ただ食って、ただ飲んで、・・」。 日常生活の裂け目から現代人の不安や孤独が見えてくる。 「この人生、酒のツマミになればいい」が舞台の結末です。 追い詰められているが思い切りの良い人生ですね。 「笑顔の砦」が「笑顔が砦」になっていました。 今日の客席は老若男女にばらけていました。 このような観客席も近頃珍しい。 でもC・イーストウッドの映画を知らない客は煮え切らなかったと思います。 別作品を重要な場面に挿入するのは難しいですね。 E・ヘミングウェイも同じでしょう。 イーストウッドが大好きな私には逆に舞台が膨らみましたが。 *CoRich、 https://stage.corich.jp/stage/163940 *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、タニノクロウ  ・・検索結果は5舞台.

■能楽堂九月「昆布売」「殺生石」

*国立能楽堂九月普及公演の下記□2作品を観る。 □狂言・和泉流・昆布売■出演:前田晃一,高澤祐介 □能・金春流・殺生石■出演:櫻間右陣,江崎欽次朗,三宅右矩ほか ■国立能楽堂,2022.9.10 ■三浦裕子のプレトーク「能・狂言の動物誌、狐を中心に」を聴く。 「殺生石」にも狐が登場する。 動物とヒトは非日常でも距離は近かった。 この作品は詞章を読んでいるときは狐は脇役に座っている。 しかし舞台では狐が主役に躍り出てくる。 地謡が背景に後退する為だろう。 地謡の場面が長いからだ。 「昆布売」は、侍が昆布を売るはめになるのだが、謡節・浄瑠璃節・踊節で売り声や動作を変えていく姿は楽しい。 刀は重い。 脇差も加わる。 長く差していると侍も疲れる。 *劇場、 https://www.ntj.jac.go.jp/schedule/nou/2022/9119.html?lan=j

■能楽堂九月「鶏泣」「自然居士」

*国立能楽堂九月定例公演の下記□2作品を観る。 □狂言・大蔵流・鶏泣■出演:山本秦太郎,山本東次郎 □能・観世流・自然居士■出演:片山九郎右衛門,福王茂十郎,福王和幸ほか ■国立能楽堂,2022.9.7 ■鶏は鳴くのか歌うのか? 主人と太郎冠者は古歌でこれを競い合う。 「鶏泣(けいりゅう)」は<言葉争い物>と呼ばれるらしい。 観阿弥作の「自然居士(じねんこじ)」は将軍義満が絶賛している。 力強い舞台だ。 なんとしても子供を助けたい。 居士の意志の強さが現れている。 勧善懲悪チャンバラ時代劇をみているようだ。 後半は居士が舞、簓(ささら)、羯鼓(かっこ)の芸を披露してく。 これが剣劇にもみえる。 そして芸能も仏道修行と同等という思想に感心する。 ところで「自然居士」は正面席で観る作品だ。 正面に向かって演ずる場面が殆どだから。 いつもの脇正面を選んでしまったのは失敗。 *劇場、 https://www.ntj.jac.go.jp/schedule/nou/2022/9118.html?lan=j

■Dance Speaks

*以下の□2作品を観る。 ■神奈川県民ホール・大ホール,2022.9.3 □ウェスタン・シンフォニー ■振付:ジョージ・バランシン,音楽:ハーシー・ケイ,振付指導:ベン・ヒューズ,舞団:スターダンサーズ・バレエ団 ■19世紀アメリカ開拓時代を舞台にした作品。 枯草の香りがする音楽を背景にカウボーイ姿のダンサーが舞台を走り回る。 馬が駆けまわるように。 女性ダンサーはカンカン風の振付が入っているのかな? 終章のフィナーレは華やかだったわよ。 開拓時代のイメージは西部劇に行き着く。 それはジョン・フォードの作品を思い出してしまうと言うこと。 先日、本屋で「ジョン・フォード論」をみかけたが蓮實重彦は遂に一冊にまとめあげたのね。 □緑のテーブル ■台本・振付:クルト・ヨース,作曲:フリッツ・A・コーヘン,ピアノ:小池ちとせ,内山祐大,出演:スターダンサーズ・バレエ団 ■スターダンサーズ・バレエ団総監督小山久美のプレトークを聞く。 作品の振付などを簡単に説明してくれた。 緑のテーブルを囲む黒服の紳士たちは政治を語っているのかしら? 次の場面からは有無を言わせず戦場の真っただ中へ。 そこで闘う兵士や市民には死神がいつも寄り添っているの。 音楽も振付も大袈裟だが悲劇的にならず柔らかみもある。 2台のピアノが舞台を仕切る。 ブレヒトとの親近性もみられる。 戦争に巻き込まれた人々が、鎌の替りに血で汚れた旗を持つ死神に先導され踊る場面はベルイマン監督の「第七の封印」そのもの、まさに死の舞踏といえる。 再び紳士たちは緑のテーブルを囲み語り合う。 でも問題解決は先延ばしかしら? 1930年頃の舞台は当時の音楽・演劇・舞踊・映画を引用し混ざり合い大戦に挟まれた時代の雰囲気をつくりだすの。 そして再び戦争がやってくる予感で幕が下りる。 *劇場、 https://www.kanagawa-kenminhall.com/d/SDB_DS2022

■毛皮のヴィーナス

■作:デヴィッド・アイヴズ,翻訳:除賀世子,演出:五戸真理枝,出演:高丘早紀,溝端淳平 ■シアタートラム,2022.8.20-9.4 ■この芝居の注目はオーディションという設定にある。 つまり劇中劇の面白さだ。 「裏舞台もの」の楽しさ、たとえば演出家と俳優の関係逆転もある。 舞台好きにはたまらない。 しかしこの作品はとても難しい。 いわゆるマゾヒズムを論じているのだが、ギリシャ神話や聖書、歴史や慣習が随所にでてくる。 西欧精神の硬さを強く感じる。 しかも現代のジェンダー問題に繋がっていく。 ・・女優ワンダと演出家トーマスの100分二人芝居だ。 美術はすんなり入れる。 前半は内側の劇が芝居がかっていて違和感があった。 ワンダの喋りが棒読みの為だ。 科白にこびり付いている西欧の垢に戸惑ったのだろう。 いや演出かもしれない? 後半はよくなる。 外と内は次第に溶け合っていく・・。 ところで尿瓶劇場はどこにあるのだろう? 「ご主人様!」と聞くと寺山修司の舞台を思い出してしまう。 それは形を変え三島由紀夫に辿り着く。 この作品はロマン・ポランスキー監督で2015年に観ていた。 ポランスキーの糞真面目さがでている傑作だ。 演出家五戸真理枝は劇中劇が好きなようだ。 *劇場、 https://setagaya-pt.jp/performances/202208venusinfur.html *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、五戸真理枝  ・・検索結果は2舞台.

■高円寺阿波おどり

■出演:舞蝶連,朱雀連,弁慶連,華純連,遊夏連,吹鼓連,美踊連,のびゆく連,飛鳥連,灯連,しのぶ連,花菱連(登場順) ■座高円寺1,2022.8.27-28 ■いつもの劇場で久しぶりの阿波踊りを観る。 両側に客席を設けた演舞場で全12連が一連づつ8分前後で踊っていく。 子供が多い連、男女の比率や鳴り物の構成もそれぞれで多彩だ。 大太鼓を10台も繰り出す連もある。 素人らしい振付の連も見うけられた。 劇場内で踊るので制約がある。 やはり人数の多さが決め手だ。 粗密の動きは考えたい。 特に密で踊る場面が必須である。 でないと締まりがでない。 楽しい90分だった。 *劇場、 https://za-koenji.jp/detail/index.php?id=2744

■ザ・ウィンターズテイル/アンダーグラウンド

■演出:早坂彩,脚本:山科有於良,出演:岡崎さつき,葵,丸山港都,劇団:フォスフォレッスセンス ■演劇三昧・配信,(こまばアゴラ劇場,2020.11.29収録) ■変わった作品です。 「冬物語」の王妃ハーマイオニが不在だった16年間を舞台にしているからです。 彼女は地下室でポーリーナとずっと住んでいた。 そこへ彫刻師がやってきて彼女の像を何体も彫るという話です。 ハーマイオニが王妃とは別人の態度をとるので反シェイクスピア系の作品かな?と観ていたが、途中から王妃らしくなっていく。 離れていた「冬物語」が再び近づいて来る面白さが有ります。 彫刻師の尽力が大きい。 その彫刻師は「冬物語」大好き人間らしい。 さいごに、彼が昔みた甘いハーマイオニを彫刻にする、まるで観音菩薩を彫るように。 そして彼女を「冬物語」に復帰させようと寄り添う。 そのように感じさせます。 *CoRich、 https://stage.corich.jp/stage/110468

■無畏

■作・演出:古川健,演出:日澤雄介,出演:林竜三,渡邊りょう,浅井伸治ほか,劇団:チョコレートケーキ ■東京芸術劇場・シアターウエスト,2022.8.24-27 ■主人公は陸軍大将松井石根。 彼は「日支提携・アジア保全を進めたが南京事件の責任を問われ極東軍事裁判で死刑・・」・・。 舞台は上海事件の1937年頃から死刑執行の1948年迄を回想形式で時代が語られる。 タイトルは彼の辞世の句から採ったらしい。 松井役林竜三が熱演でした。 彼の思想であるアジア主義が蒋介石に見放され、また部下にも反映されない苦悩が描かれる。 特に南京での部下の不法・略奪行為に彼は心を痛ませる。 脇道に逸れるが、私の伯父が昭南島で英軍捕虜になった時の話を思い出しました。 伯父は兵士から弁当を貰ったことがあり、その中にはビスケット等々と紙に包まれた煙草が2本入っていたことを興味深く話してくれた。 煙草の入った弁当が兵士に配られていたことに愛煙家の伯父は衝撃を受けたようです。 伯父は既に亡くなっています。 舞台でも兵站(へいたん、ロジスティクス)が話題になります。 日本軍兵士の食料は現地調達になっている。 これが最悪の結果を招く。 調達は軍では徴発だが、混乱してくると徴発は略奪へ強姦へそして殺人へと向かうからです。 「戦争の素人は戦略を語り、玄人は兵站を語る」。 日本軍はアジアで非道に振舞ってきたのがわかる。 なぜなら兵站、特に兵士の食料、を軽んじていたから。 南京事件も同列です。 兵站を論ずる芝居ではないのですが、主人公松井石根の思想が戦場の物欲に飲み込まれてしまった。 悔恨で振り返っても生々しい核心に辿り着くのは大変です。 *劇場、 https://www.geigeki.jp/performance/theater307/t307-2/ *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、日澤雄介  ・・検索結果は10舞台.

■へそで、嗅ぐ

■演出:山口茜,ドラマトゥルク:ウォルフィー佐野,出演:福角幸子,高杉征司,芦谷康介ほか,劇団:トリコ・A ■こまばアゴラ劇場,2022.8.20-23 ■「へそは胎児の口だった・・」。 此の世に生まれる迄はとても大事だったが今では不用になってしまった。 臍はもはや無用の長物なのか? 舞台がお寺とは意味深ですね。 此岸と彼岸の境界のためいろいろな人が集まる。 はたして作務の永山や隣に住む女和江など境界にいるような人が登場します。 そこへ住職の次女一家が寺を引き継ぐことになる。 次女の仕事は仲人業らしい。 俄然物語が騒がしくなる。 寺に居候する和江や永山を結婚させようとする。 結婚は無用を有用にすることです。 「結婚は幸福になることではない!」「結婚は妥協だ!」。 次女の言葉にもそれが表れている。 彼女の夫も結婚観は保守現実的ですね。 もう一人、境界人に加えるのは寺の住人である長女です。 彼女は先天性脳性マヒらしい。 役者として自然体で舞台に馴染んでいました。 結局、次女とその夫はこの寺を出ていくことになる。 寺の住人達は無用から別れさせようとする次女の偽善を見破っていたようです。 この芝居を観る直前に偶々「現代優生学の脅威」という本を読んだが、舞台をみながら思い出してしまいました。 本の感想は Twitter に投稿済。  *劇場、 http://www.komaba-agora.com/play/12719 *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、山口茜  ・・検索結果は3舞台.

■knob

■作・演出:夏井孝裕,出演:米田敬,佐藤晃子,木村圭吾ほか,劇団:reset-N ■演劇三昧・配信,(SPECE EDGE,2016.7.1収録) ■白い壁際に小さなスペースを空けただけの舞台。 近くまで観客が迫っている。 役者7名が交互に登場する、ほぼ対話が主の科白劇です。 切羽詰まった人間関係を話し合っているようにみえる。 自殺や殺人場面もある。 抽象的ですが科白のイメージは想像できます。 水分を抜き取った干物(ヒモノ)にしたような言葉に聴こえる。 でも背骨はしっかりしていました。 息抜感が無い。 日常のようにみえるが、次元が違う創造の戯曲世界とでも言うのでしょうか? 受賞作品だけあって科白の匙加減がいい塩梅でした。 緊張感が濁っていたのは映像のせいかもしれない。 *第四回(1998年)劇作家協会新人戯曲賞受賞作品 *CoRich、 https://stage.corich.jp/stage/74610

■帰還不能点

■脚本:古川健,演出:日澤雄介,出演:岡田篤,今里真,東谷英人ほか,劇団チョコレートケーキ ■東京芸術劇場・シアターイースト,2022.8.17-9.4 ■舞台は1950年頃? 政府機関で働いていた同輩が飲み屋に集まり戦時を振り返る話です。 その組織名は総力戦研究所。 彼らは戦争シミュレーションを仕事にしていたらしい。 その成果は1941年8月に首相官邸で発表された・・。 彼らは飲み屋で模擬実験を再現する。 政府・軍のトップ、たとえば近衛文麿・松岡洋右・東條英機の役に彼らはなり切る。 しかも場面ごとに役が入替る。 次々と劇中劇が展開していく面白い構造です。 研究所は戦争必敗の結論を提出していたのだが・・。 なぜ戦争を止められなかったのか? 「日露戦争でも・・、しかし勝った・・!」。 東條の言葉です。 途中で「帰還不能点」が何かわかりました。 それは南部仏印進駐の是非です。 政府が進めてきた近視眼的な外交政策が軍部の保身、つまり石油・ゴムの資源獲得、を許してしまった。 この進駐で米国は対日石油全面禁輸に踏み切り、そのまま日本は真珠湾攻撃へと突き進む・・。 20世紀史としての興味が尽きません。 現代でも形を変えて繰り返していることを認識させてくれる。 飲み屋の女将の夫が研究員だったこと、ナビゲータとしての彼女の立ち位置がよかった。 でも終幕の私的場面は付け足しの感じがしないでもない。 幕の下ろし方が難しい作品です。 *劇場、 https://www.geigeki.jp/performance/theater307/t307-3/

■ロックン・ロール・サーカス  ■チャーリー・イズ・マイ・ダーリン

*ザ・ローリング・ストーンズ主演の□2作品を観る。 □ロックン・ロール・サーカス ■監督:マイケル・リンゼイ=ホッグ,出演:ザ・ローリング・ストーンズ,ジョン・レノン,ザ・フー,エリック・クラプトン,オノ・ヨーコ他 ■Bunkamura・ルシネマ,2022.8.5-(イギリス,1968.12収録) ■サーカス小屋でのライブイベントらしい。 途中、空中ブランコが数分映し出される。 でもサーカスとの融合はみえない。 観客にカラフルな同じマントを着させたのも頂けない。 背景は最低だ。 前半はザ・フーやジョン・レノン、オノ・ヨーコが登場する。 レノンやヨーコは癖のある歌唱を披露する。 ヨーコはパフォーマンス系丸出しだ。 後半はストーンズが登場し数曲歌う。 「ジャンピン・ジャック・フラッシュ」「悪魔を憐れむ歌」の2本が最高だ。 最期にミックを囲んで「地の塩」を歌う。 労働者階級を意識した終幕にみえる。 □チャーリー・イズ・マイ・ダーリン ■監督:ピーター・ホワイトヘッド,出演:ザ・ローリング・ストーンズ ■Bunkamura・ルシネマ,2022.8.5-(イギリス,1965作成) ■1965年アイルランド・ツアーを撮ったドキュメンタリー作品である。 当時のストーンズメンバーそれぞれが新鮮だ。 色あせていない。 この時期は絶頂期だったこともある。 アイルランドの風景や人々との交流をふんだんに取り込んで作品としても上出来である。 *ザ・ローリング・ストーンズ結成60年記念&チャーリー・ワッツ追悼公開作品 *映画com、 https://eiga.com/movie/96784/

■プライマ・フェイシィ Prima Facie

■作:スージー・ミラー,演出:ジャスティン・マーティン,音楽:レベッカ・ルーシー・テイラー,主演:ジョディ・カマー ■TOHOシネマズ日本橋,2022.8.5-(ハロルド・ピンター劇場,2022年収録) ■「最後の決闘裁判」(リドリー・スコット監督)を偶々4月に観ていた。 ジョディ・カマーは覚えています。 マッド・デイモンとアダム・ドライバの激しい決闘場面に隠れてしまったが。 今回の事件は決闘まで行かない。 裁判まで、しかもカマーの一人舞台です。 職業弁護士から性的暴行被害者に変わっていく彼女の熱演で2時間は一気通貫です。 暴行か否か!? 親しい友人でも性行為はしたくない! 主人公テッサは無理やり行為へ向かう相手に抵抗するが・・。 早速、弁護士事務所の同僚を訴えるが裁判では負けてしまう。 被告の立証が困難!? 制度に無意識的な男性優位が見え隠れしている為です。 「男性客は考えてくれ・・」とインタビューで言っている。 性行為での同意とは何か? お互い幸せな気分になることが前提条件でしょう。 拒否があるのに強制するのは暴行にあたる。 夫婦間でも同じです。 気持ちよく楽しみたいものです。   *NTLナショナル・シアター・ライヴ作品 *映画com、 https://eiga.com/movie/97501/

■能楽堂七月「賀茂物狂」

■出演:観世清和,福王茂十郎,福王和幸ほか ■国立能楽堂,2022.7.28-30 ■天野文雄のプレトークを聞く。 ・・夫婦の別離と再会の物語である。 金春禅竹作の女狂物を、しかも前場がある本来の形で上演しよう! 禅竹は狂女ものが少ない。 これが企画概要である。 岩本社業平と橋本社実方の関わり方、東下り、御手洗川付近の地形、過去の評価などなど・・、30分ほど話す。 前場を付けたので上演は100分を越える。 さすが後半は集中が鈍ってしまった。 しかし面白い。 シテ役観世清和の貢献が大きい。 彼の動きと声は無駄を削いで淡々としている。 一挙一動に目を見張った。 劇的と言ってよい。 新作に近いと手垢が付いていないので素直に向き合うことができる。 これは囃子、地謡そして観客も同じだ。 気持ちがいい。 プレトークでも話題になったが佐成謙太郎や田中充の「男女の情の切なるものがない」「・・冗漫な長編」の評価も当たっている。 しかし前場を付けると厚みが増すのは確かだ。 寝不足を避けて客席に座る作品と言える。 *国立能楽堂七月特別企画公演 *劇場、 https://www.ntj.jac.go.jp/schedule/nou/2022/3172.html?lan=j

■ブレスレス、ゴミ袋を呼吸する夜の物語

■作・演出:坂手洋二,出演:鴨川てんし,川中健次郎,猪熊恒和ほか,劇団:燐光群 ■スズナリ,2022.7.15-31 ■前半はコロナで公演中止になってしまった。 再予約をする。 当日清算は払戻も不要だ。 単純システムの良さだろう。 場内を見渡すと男性7割、内60歳以上が6割と言ったところか? ひどい混みようだ。 ハイカラな女性が開幕直前に入ってきたが、ダラッとした観客の姿を見るや否や、そそくさと逃げて行ってしまった。 暑いので自宅に居るような姿も何人かいる。 慣れない客には酷な光景かもしれない、幕が開けば気にならないが。 その幕が開いてすぐに唐十郎の舞台に引きずり込まれる錯覚に陥ってしまった。 ゴミ袋の中で役者が吐く科白や聴こえる音楽が唐風だったからだ。 しかも徐々に山崎哲風に収斂していく・・。 ゴミ教団というカルト系を登場させたからだろう。 面白い出足だった。 不満な点は、駅ホームで人を殺してしまった?女とその周辺にまとまりが無かった。 物語の本流に無理やりくっ付けたようにみえる。 現実レベルが他と違うからだ。 「・・21世紀まで3912日」の科白があったので初演が1990年頃と知る。 いま演出家の挨拶文を読むと「千石イエス」「天皇葬儀」「オウム真理教」「坂本弁護士失踪事件」などなど。 そこに「リア王」を被せてゴミ問題を論じている。 古臭さが漂っていたが、教団のパパと娘たちのゴミ対話、その行方は現代そして未来をも射程に入れている。 面白い物語だった。 帰りは新しくできた下北ミカンをブラブラする。 *第35回岸田國士戯曲賞受賞 *CoRich、 https://stage.corich.jp/stage/156845 *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、坂手洋二  ・・検索結果は9舞台.

■ハムレット

■作曲:ブレッド・ディーン,指揮:ニコラス・カーター,演出:ニール・アームフィールド,出演:アラン・クレイトン,ブレンダ・レイ,サラ・コノリー他 ■新宿ピカデリー,2022.7.15-21(メトロポリタン歌劇場,2022.6.4収録) ■「ハムレット」のオペラは初めて、しかも幕が開いて「生きるべきか死ぬべきか」の一声で始まり・・、それにしても音楽が忙しい。 雑音が混じっている? このため歌詞が聴き難い。 気にかかる。 指揮者のインタビューを聞いて疑問が解決したの。 金属棒やバネを使い、石どうしをぶつけたり、ペットボトルを潰す音を取り入れているらしい。 またピット内に合唱団員を少数配置し破裂音などを担当させ、会場横にも楽器を置き立体的にしている。 ずいぶん凝っているわね。 でも物語りの展開はよかった。 主要な約10場面をほぼ独立に繋ぎ合わせていくからテンポがある。 数場面が過ぎてから調子に乗ってきたわよ。 ハムレット役アラン・クレイトンは道化的な動作を取り入れている。 演技派と言える。 原作から外れる箇所は、ローゼンクランツとギルデンスターンが英国にも行かず終幕までカウンターテナーでスパイスを効かせていたことかしら。 それと、旅芸人の得意な科白が「生きるべきか死ぬべきか」だって! オペラというより演劇を観たような後味が残る。 理由の一つに音楽が雑音のように聴こえ背景に退いてしまったから。 生舞台ならここまでなかったはずよ。 でも記憶に残る「ハムレット」になりそう。 *METライブビューイング2021作品 *MET、 https://www.shochiku.co.jp/met/program/3761/

■「からたち日記」由来

■原作:鹿沢信夫,演出:鈴木忠志,出演:加藤雅治,内藤千恵子,塩原充知,劇団:SCOT ■YouTube・配信,2022.5.27-(利賀大山房,2022.3.19収録) ■この作品は3人の役者が座りっぱなしで動きも少ない。 このため映像にした時の欠点が少ない。 配信を決めた理由だろう。 特に科白がビシビシと脳味噌を刺激する。 声が優先されるからだ。 この舞台は2015年に吉祥寺で観ている。 生舞台では身体五感を働かせるのでもっと生々しかった記憶がある。 芳川鎌子の恋愛の行方が胸に迫ってくる。 映像でも劇的感動は弱まらない、但し醒めた気分が強いが・・。 脳味噌で処理する割合が多いのかもしれない。 *CoRich、 https://stage.corich.jp/stage/129653

■貧乏物語

■作:井上ひさし,演出:栗山民也,出演:保坂知寿,安藤聖,山﨑薫ほか,劇団:こまつ座 ■NHK・配信,2022.7.3-(紀伊国屋サザンシアター,2022.4.21収録) ■「河上肇が登場しない井上ひさしの「貧乏物語」」です。 1934年春、ト書から河上肇は治安維持法違反で獄中にいることが分かる。 彼の家族、妻と娘そして女中たちで物語が進められていく・・。 官憲は河上肇に転向を迫るため、説得から拷問まであらゆる手を使い妻や娘に近づいてくる。 しかし彼女たちはそれを撥ね返す。 「監獄はお寺だと思え!、牛鍋は出ないが・・」。 ユーモアある説得で河上肇に転向を留めさせようとする。 女中たちの身の上話や明るい行動が湿り気を寄せ付けない。 この明るさは権力と対峙する時の必要条件でしょう。 平等についての問題点も論じられ河上肇の思想の一端が窺える。 貧困を如何に無くすか!? 1934年はそのまま現代に繋がっていますね。 *CoRich、 https://stage.corich.jp/stage/122533 *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、栗山民也  ・・検索結果は18舞台.

■パルジファル

■作曲:R・ワーグナー,指揮:セバスティアン・ヴァイグレ,演出:宮本亜門,出演:清水勇麿,清水宏樹,山下浩司ほか,合唱:二期会合唱団,演奏:読売日本交響楽団 ■東京文化会館・大ホール,2022.7.13-17 ■この作品は「インディージョーンズ」や「猿の惑星」そして「マトリックス」を思い出しながらいつも観てしまう。 今回は「2001年宇宙の旅」や「ゲド戦記」まで広がってしまった。 でも聖杯や指輪、己自身を探し求めるのはワーグナーが元祖だからしょうがない。 魔法使いクリングゾルを倒す2幕まではグイグイ引き込まれてしまった、これもいつもの通り。 3幕は形式的な宗教色でカッタルイけどね。  宮本亜門の演出は楽しい。 なんと現代の美術館が舞台なの。 絵画や彫刻が物語に入り込む仕組みになっている。 「キリスト磔刑」が数十枚もぶら下がっていたがもっと分散させるのが面白いとおもう。 それでもワーグナーは強い。 風変わりな演出背景でもワーグナーは気にしない気にならない。 そしてパルジファル役伊藤達人のテノールが若々しい。 クンドリの橋爪ゆかを含め主要歌手は役割を十二分に発揮していたと思う。 今回は特にクンドリの立ち位置について色々と考えさせられたわ。 公演は5時間。 ワーグナーは集中力を最大に持っていくから疲れない。 しかも観た後もハイな状態がづっと続くからよ。 *二期会創立70周年記念公演 *フランス国立ラン歌劇場共同制作公演 *二期会、 http://www.nikikai.net/lineup/parsifal2022/index.html

■ペレアスとメリザンド

■原作:M作曲・メーテルリンク,作曲:C・A・ドビュッシー,指揮:大野和士,演出:ケイティ・ミッチェル,出演:ベルナール・リヒター,カレン・ブルシュ,ロラン・ナウリ他,管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団 ■新国立劇場・オペラパレス,2022.7.2-17 ■ドビュッシーの舞台と言えば「牧神の午後」かな、でもオペラは初めて。 錯綜する時間のなか、全てが未完のまま揺れ動いていく音楽と物語の流れに身動きがとれなくなってしまった。 それはメリザントの分身?を登場させ、逆歩きで時間を遡上し、しかも暗幕で周囲を隠した小さな舞台に視線を集中させて緊張感を高めていたからよ。 ペレアスの内面が見えないから不安も募る。 そして三角関係の結末だけが近づいて来る・・。 ここで演出家のインタビューを読む。 「ドビュッシーは・・、テキストは追加の楽器であり・・、楽器の音と語音を区別しない・・」。 なるほど納得。 「メーテルリンクにチェーホフの影響がみえる・・」。 たしかに。 「メリザンドが夢を見ている設定にした・・」。 演出家は考え抜いたと思う。 しかし神経質なところがでてしまった。 もう少し図太く構えてもよかった。 そうすれば、美術が面白いから、絵画的な感動もしっかり現れたはず。 それでも象徴主義的な原作・音楽・美術を一つにして閉じ込めた稀有な舞台だったことは言える。 この雰囲気はなかなかのものね。 楽しかったわよ。 *NNTTオペラ2021シーズン作品 *劇場、 https://www.nntt.jac.go.jp/opera/pelleas-melisande/

■ワレワレのモロモロ2022

■演出:岩井秀人,出演:秋草瑠衣子,板垣雄亮,岡部ひろき他 ■シアタートラム,2022.7.7-10 ■6つの小作品から構成されている。 それぞれの主演役者が作者らしい。 役者の現実と舞台が混ざり合うところに面白さがあります。 劇中劇とかメタ演劇の要素が入ってくるからです。 幕が開いて役者の仕草や発声から、あっ!これはハイバイだ!と思い出し、久しぶりにその独特のリズムに共振しました、例えば道具類を無意味に動かしながら喋るところ等々で・・。 作品では「目を合わせるのは優しい頃を踊りたいだけだよ」「自己紹介岡部」が気に入りました。 家族、とくに父と息子の関係は迫るものがあります。 父に芝居を教わる場面は入れ子構造の不思議さがでている。 他の作品も笑いでは負けていない。 「川面の出産」は子供を産むことの大変さが伝わってきます。 ウンコや出産など身体を拡張していく楽しさもみえる。 ハイバイは高(ハイ)く買(バイ)っても損しない。 *劇場、 https://setagaya-pt.jp/performances/202207hi-bye.html *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、岩井秀人  ・・検索結果は8舞台.

■能楽堂七月「とちはくれ」「百万」

*国立能楽堂七月普及公演の下記□2作品を観る。 □狂言・和泉流・とちはくれ■出演:小笠原由祠,野村万蔵,野村万之丞 □能・宝生流・百万■出演:大坪喜美雄,村山弘,野村万緑ほか ■国立能楽堂,2022.7.9 ■竹本幹夫のプレトーク「百万と物狂」を聴く。 「百万」の作品構造を面白く解説していた。 当時の清凉寺の位置付や大念仏の状況、関連する能作品や和歌を引用して世阿弥の創作過程を想像しながら組み立てるので興味が尽きない。 能楽堂の席は正面、中正面、脇正面の3つに分かれる。 近頃は役者の遠近感が強い脇正面で番号の高い席を選ぶのだが「百万」には合わない。 舞は多いのだが平面的な印象が強いため正面席が良いはず。 しかもシテと地謡の対話が多いので緊張感を持続させないと捨てられてしまう。 くたびれる舞台だった。 「とちはぐれ」はことわざ「貧僧の重ね斎」の舞台化らしい。 僧も食っていくのに必死だ。 帰りの北参道駅ちかくで空を見上げると旅客機が高度を下げて羽田に向かっていくのがみえる。 新飛行経路の直下に当たっている為だ。 マチネーが終わるこの時刻には数分に1機は飛んでくる。 明治通りの騒音と同じくらいか? 住民にとっては何とも言えない微妙な音だろう。 *劇場、 https://www.ntj.jac.go.jp/schedule/nou/2022/7128.html?lan=j

■刻の花  ■moments

■振付:鈴木ユキオ,出演:鈴木ユキオ,八木咲,安次嶺菜緒,赤木はるか,山田暁ほか ■シアタートラム,2022.7.1-3 ■鈴木ユキオプロジェクト2本立てを観る。 「刻の花」をトキノハナと読む作品は鈴木ユキオ自身が踊り、八木咲の写真が舞台に写し出されます。 写真家も舞台を動き回る。 ダンスはサッパリした振付、写真はシットリしている感じで対照的ですね。 小さな椅子を倒し洗面器の水を溢し缶を転がす場面もある。 日常のささやかな断片をダンスにしたような作品です。 「moments」は8人のダンサーがストップモーションを取り入れて動き回る。 強い視線を観客に投げかける場面も多い。 うかうかしていられない雰囲気です。 パフォーマンスに近い。 「ムーブメントではない・・。 空間写真のように・・」と鈴木ユキオの音声も入る。 数人に分かれ踊り続ける終幕はダンスを観る喜びに浸れました。 2作品は時間というより時刻を描いている。 時刻は社会性が加わる。 作者はこれを深く考えたいようです。 それがダンスに反映されていたか?  「moments」は物理的=身体的に理解できたが、「刻の花」はなんとも言えない。 振付が<時>とは無関係にみえたからです。 この劇場はダンスには狭すぎる。 今回はD席迄を取り払った広い舞台にしていた。 最低限の広さが確保でき観ていても安定感がありました。 *劇場、 https://setagaya-pt.jp/performances/202207suzukiyukio.html *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、鈴木ユキオ  ・・検索結果は4舞台.

■朝倉摂展

■感想は、「 朝倉摂展 」 *話題になる語句は「近松心中物語」「下谷万年町物語」「タンゴ冬の終わりに」「唐版滝の白糸」、「唐十郎」「蜷川幸雄」。

■盲人書簡、少年倶樂部篇

■作:寺山修司,演出:J・A・シーザー,構成・演出:髙田恵篤,出演:伊野尾理枝,小林桂太,木下瑞穂ほか,劇団:演劇実験室◎万有引力 ■ザスズナリ,2022.5.27-6.5 ■「盲人書簡」に人形篇、棺桶篇、上海篇などがあるとは知りませんでした。 何度か観ているが気が付かなかった。 原作は手に取ったことがないので詳細は分からない。 しかも今回は、ぼ・ぼ・ぼくらは少年倶樂部篇♪ その表紙が舞台上で強調されていたがどの篇も大きな違いは無いようです。 物語を切れ切れにして適当に繋げた内容ですが味のある作品です。 それは・・1920年代後半の魔界都市上海を背景にして国民革命軍や日本軍の暗躍、共産党の気配などなど時代の大きな渦が迫っているからです。 寺山修司が憧れた魔窟の都の中で、明智小五郎と小林少年が捩じれた時間を泳いでいく・・。 科白の端々には想像を膨らませる力があります。 たくさんの歌唱も時空を飛ぶための燃料ですね。 もちろん飛ぶことができました。 安定感ある舞台でした。 近頃の舞台はどれも熟れています。 レパートリー作品だからでしょうか? 暗闇とマッチの炎も、安心して観ることができる。 演劇の立ち位置が変わってしまったからでしょう。 それでも幕後のカタルシスは申し分ありません。 *演劇実験室◎万有引力第73回本公演 *CoRich、 https://stage.corich.jp/stage/138167

■能楽堂五月「俊成忠度」「宗論」「綾鼓」

*国立能楽堂五月特別公演の下記□3作品を観る。 □能・観世流・俊成忠度■出演:観世喜正,観世淳夫,中森健之介ほか □狂言・大蔵流・宗論■出演:茂山千五郎,山本泰太郎,松本薫 □能・宝生流・綾鼓■出演:金井雄資,小倉健太郎,工藤和哉ほか ■国立能楽堂,2022.5.28 ■現代人にとっても身につまされる内容だ。 ・・「俊成忠度」は評価の不服を唱え、「宗論」は流派争いが延々と続き、そして「綾鼓」は老いて女性問題に悩む。 しかも能では死んでも恨み、老人は女御の胸ぐらをも掴む。 狂言では理性を失っていき、さいごは踊り狂う・・。 見所はシテ忠度が突然の登場場面だろう。 修羅出立ちで面は業平。 これは清々しい、予想が少し外れたが。 ここで囃子と地謡が一斉に唸りだし「前途程遠し、思ひを雁山の夕べの雲に馳す、・・」。 劇的だ。 演劇の醍醐味だろう。 *劇場、 https://www.ntj.jac.go.jp/schedule/nou/2022/5119.html?lan=j

■オルフェオとエウリディーチェ

■作曲:C・W・グルック,指揮:鈴木優人,演出・振付・美術・衣装・照明:勅使川原三郎,出演:ローレンス・ザッゾ,ヴァルダ・ウィルソン,三宅理恵,ダンス:佐東利穂子ほか,演奏:東京フィルハーモニー交響楽団 ■新国立劇場・オペラハウス,2022.5.19-22 ■「 エウリディーチェ 」は2月にも会っているの。 また会えて嬉しい。 しかも今回は指揮鈴木優人、演出勅使川原三郎コンビでバロックオペラ、オペラバレエを十分に堪能でき、しかもハピーエンドで物語が終わるから重ねて嬉しい。 当時を再現した器楽が入っているためか慎み深い世界が広がる。 オルフェオのカウンター・テナーがそれに被さり静寂が生れる。 あらためて劇場の広さを感じるわね。 でも美術と照明は舞台空間と均衡が取れていた。 その中でバッハとモーツアルトに挟まれたグルックの揺らぎが伝わってくる。 少し物足りないところもある。 歌手の少なさも一因ね。 ダンサーも同じ。 でも、この薄味が作品の深みに近づけてくれる。 「歌手の技巧誇示を抑えて歌を平明にし、伴奏付レチタティーヴォで劇の緊張を維持しながらドラマをスムーズに進め、雄弁な管弦楽を採用する」(作品ノート)。 グルックのオペラ理念がはっきりと舞台に現れていた。 腹八分の充実感が心身に気持ち良い。 *NNTTオペラ2021シーズン作品 *劇場、 https://www.nntt.jac.go.jp/enjoy/record/detail/37_023383.html

■ブック・オブ・ダスト、美しき野生

■作:フィリップ・プルマン,演出:ニコラス・ハイトナー,出演:サミュエル・クリーシー,エラ・ディカーズ,ナオミ・フレデリック他 ■TOHOシネマズ日本橋,2022.5.13-(ブリッジ・シアター,2022収録) ■「ライラの冒険」は読んでいない、観てもいない。 でも密接に繋がっているらしい。 それはストーリーが追えないから。 イギリスの大学街を背景に疑似科学や心身二元論に近い魔法やダイモンが登場するの。 「ハリー・ポッター」も読んでいない、観てもいないけど同類かしら? この種の作品はどうも苦手なの。 科白はとても聴き易かった。 でも子供向け舞台のようで・・、そうとも言えない。 中途半端な感じがする。 誰の為に作った舞台なの? この質問に答えられない。 パペットの使い方や川の流れの映像技術は認めてもいいわね。 でも映画にすると効果が薄れる。 やはり生舞台に接しないと分からない。 原作シリーズを知らないと面白半減な舞台になることは確かだわ。 *NTLナショナル・シアター・ライヴ作品 *映画com、 https://eiga.com/movie/96679/ *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、ハイトナー  ・・検索結果は9舞台.

■能楽堂五月「富士松」「小袖曽我」

*国立能楽堂五月普及公演の下記□2作品を観る。 □狂言・和泉流・富士松■出演:野村萬,野村万蔵 □能・観世流・小袖曽我■出演:上野朝義,上野雄三,野村昌司ほか ■国立能楽堂,2022.5.14 ■プレトーク「兄弟の絆・母の愛」を聞く。 「小袖曽我」では、母がなぜ弟時致(ときむね)と会わないのか? 詞章を読んでも分からなかったが坂井孝一の話を聞いて納得した。 兄祐成(すけなり)と弟時致が一緒にいると父の仇討ちを話しているのではないか? 周囲に怪しまれるのを恐れて母は弟を遠ざけたらしい。 もう一つ、詞章に登場しない小袖の件だが、父の仇を討った後に兄弟の形見の小袖を母のもとに届けられるところまで話が続くことで、これも納得。 どちらもトークのタイトルに繋がる。 これらは「吾妻鏡」や「曽我物語」を開けばわかることだがそこまで趣味は広くない。 舞台後半は兄弟が男舞を相舞で見せてくれる。 父の仇、工藤祐経(すけつね)を討つ意志が感じられた。 迫力は十分にあった。 狂言「富士松」は和歌の付合をしていく話だがシテ・アドのテンポが速くて吟味できなかった。 「それは教養が無いからだ」と坂井孝一に言われそうだ。 *劇場、 https://www.ntj.jac.go.jp/schedule/nou/2022/5116.html?lan=j

■ロビー・ヒーロー

■作:ケネス・ローガン,翻訳:浦辺千鶴,演出:桑原裕子,出演:中村蒼,岡本玲,板橋駿谷,瑞木健太郎 ■新国立劇場・小劇場,2022.5.6-22 ■チラシの粗筋も読まないで劇場に行ったのは正解でした。 4人の対話に集中できました。 喋り過ぎの緩みから心の中を見せてしまい人間関係を損ねてしまう。 よくあることですね。 フェイクが多いなか事実はとても貴重です。 事実に沿った真実を作れるか? その真実は正義なのか? これらを対話で見せる面白さが舞台にある。 事実は物理現象に近い。 真実は事実に自身の主観・主張を塗りこんだもの、これに社会の調和を塗りこむと正義ができあがる(と勝手に考えています)。 事実は動かないが真実も正義も時と場所で変わっていくはず。 物語りは、自身の食い扶持と身内共同体の維持に見合った真実を作り上げていく・・。 終幕、駆け出しのジェフとドーンの二人は事実に絡みつく真実と正義の関係を止揚したようにみえたが定かでない。 古参ウィリアムとビルはこれを<社会の調和>つまり正義で解決するしかない。 喋り過ぎの楽しさを堪能しました。 *NNTTドラマ2021シーズン作品 *劇場、 https://www.nntt.jac.go.jp/enjoy/record/detail/37_023358.html *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、桑原裕子 ・・ 検索結果は6舞台 .

■私のコロンビーヌ

■作:ファブリス・メルキオ,演出・出演:オマール・ポラス ■静岡芸術劇場,2022.5.3-4 ■コロンビーヌとは何(誰)か? コロンブス、コロンビア・・。 意味から始まり国や部族、植物や動物の話が続きます。 一人芝居の演出家でもある役者はコロンビア出身と知る。 この国の内戦は何十年も続いている(いた?)。 ・・舞台は彼の子供時代へ。 家族や学校の話には月がいつも寄り添う。 そしてコロンビア軍に入隊・・。 「敵は誰だ!?」。 人づてを頼りにパリヘ・・。 「生まれながらの道化はいない」「笑いは笑い」。 食うための道化をメトロで演じながら多くの人々に出会う。 アルベルト、リリアナ、パシャママ・・。 ついに<劇場>を発見! 月がここに運んでくれた。 ・・というような役者の身の上話でした。 舞台上のオマール・ポラスは初めてです。 彼の即興を感じさせる俊敏な動きや発声からは豊かな経験がにじみ出ている。 コメデア・デラルテのパワーでしょう。 コロンビアとパリの組み合わせが新鮮です。 舞台に現れた彼が語るコロンビーヌを受け止めることができました。 「私たちのコロンビーヌ」ですね。 *ふじのくに⇆せかい演劇祭2022 *劇場、 https://festival-shizuoka.jp/program/ma-colombine/

■桜姫東文章

■作:鶴屋南北,補綴:郡司正勝,出演:片岡仁左衛門,坂東玉三郎,中村錦之助ほか ■新宿ピカデリー,2022.4.8-(歌舞伎座,2021.6収録) ■先月始めに上巻、昨日下巻を観る。 上映時間は計4時間20分。 途中1ヶ月空いたので上巻はうろ覚えだ。 上下を一気に観ないと作品の感動がやってこない。 釣鐘権助の泥酔が原因で呆気なく終幕になってしまうからだ。 下巻だけではこの呆気なさに耐えられない。 しかし、それを差し引いても面白さは群を抜く。 権助が桜姫ばかりか他人の女房や捨子を次々に<交換>していく経済的人間関係、僧清玄幽霊の顔傷を引き継いでいく怨念的人間関係には驚くばかりだ。 「坂東玉三郎の為に作られた作品・・」。 片岡仁左衛門がインタビューで語っていたがその通りの内容だ。 姫が女郎にまで転落していくなか、刻々と変わる作法や言葉の見応ある玉三郎の演技に納得。 桜姫の周りで姿や身分を変えながら演じていく仁左衛門とのコンビは言うことなし。 「36年ぶりの奇跡の舞台」と書いてあるが、「これが最後」と玉三郎は言っていた。 残念ながらこれも納得。 すべてが納得の舞台であった。 *シネマ歌舞伎第38弾,第39弾 *シネマ歌舞伎、 https://www.shochiku.co.jp/cinemakabuki/lineup/46/

■カリギュラ

■作:アルベール・カミュ,演出:ディアナ・ドブレヴァ,劇団:ブルガリア・イヴァン・ヴァゾフ国立劇場 ■静岡芸術劇場,2022.4.29-30 ■イヴァン・ヴァゾフ劇場は初来日と聞きました。 ブルガリアと言えばヨーグルトですね。 そのブルガリアがロシアから天然ガスの供給を停止されたニュースはつい先日のことです。 プーチンの仕掛けたウクライナ紛争がローマ皇帝カリギュラの領土拡大政策と重なり舞台は現実味を帯びてくる。 薄暗いなか黒衣装で規律ある兵士たちの動きが舞台を硬くしている。 ヨーロッパ演劇の負の歴史の形ですか? ただ一人、裸体に近い皇帝に観客の視線が絞り込まれていく。 科白も詩的ある硬さを持つ。 字幕でも聴き応え十分です。 権力者の心情が迫ってくるが、それを様式美にまとめあげている。 プレトーク(大岡淳)で「・・自由を論じている」と話していたが、権力と自由の関係は見逃してしまった。 しかし満足しました。 それはギリシャ悲劇を観た後のカタルシスに似ています。 舞台装置の輸送が間に合わなかったそうですが、予告ビデオを見ると中央階段での演技がもっとあったようですね。 座席を並べた舞台前方も気にならない構造でした。 カーテンコールでブルガリア大使館員の挨拶がある。 でも悪天候で交通が止まるのが心配でアフタトーク(演出家x宮城聰)は聞かずに劇場をあとにしました。 *ふじのくに⇆せかい演劇祭2022 *劇場、 https://festival-shizuoka.jp/program/caligula/

■ナクソス島のアリアドネ

■作曲:R・シュトラウス,指揮:マリク・ヤノフスキ,演出:エライジャ・モシンスキー,出演:リーザ・ダーヴィットセン,ブレンダ・レイ,イザベル・レナード他 ■東劇,2022.4.22-28(メトロポリタン歌劇場,2022.3.12収録) ■冒頭にピーター・ゲルブMET総裁のウクライナ支援インタビューが入る。 そして物語は、・・パトロンから悲劇と喜劇を一つにまとめて上演してくれと開幕直前に言われ慌てふためく人々の一幕、そして二幕はそれを見事に成し遂げる・・。 一幕はモリエール「町人貴族」の延長らしい。 混沌とした舞台にみえる。 モーツァルトらしき作曲家役イザベル・レナードの歌と演技を十分に楽しめる内容だった。 次の二幕は前幕の劇中劇になっているの。 ここで悲劇と喜劇を同時に上演することになる。 ギリシャ悲劇アリアドネ役のリーゼ・ダーヴィドセンの歌唱に陶酔できたのは最高の収穫だわ。   そして 所々にアルレッキーノに囲まれたツェルビネッタ役ブレンダ・レイの歌が入り神話の世界にスパイスを効かす。 この悲喜劇にパトロンはきっと大満足ね。 *METライブビューイング2021作品 *MET、 https://www.shochiku.co.jp/met/program/3765/

■エドガール

■原作:アルフレッド・ド・ミュッセ(「杯と唇」),台本:フェルディナンド・フォンターナ,作曲:ジャコモ・プッチーニ,指揮:アンドレア・バッティストーニ,出演:樋口達哉,大山亜紀子,成田伊美ほか,演奏:東京フィルハーモニー交響楽団,二期会合唱団 ■Bunkamura・オーチャードホール,2022.4.23-24 ■セミ・ステージ形式オペラなの。 この形はオペラに一番似合うはずよ。 指揮者と奏者が舞台に登り歌手と<三位一体>になり観客身体へ迫ってくるから。 ピット演奏の音質との違いもよく分かる。 そして少ない演技で歌手は歌唱により専念できる。 背景の垂幕に印象派系の絵画を映し出し物語を修飾するのも巧い。 その背後に写る合唱団の位置も良い。 申し分のない舞台だった。 公演が一回のため歌手たちはとても張り切っていたわね。 物語は14世紀オランダの長閑な村の、男女四人のダブル三角関係かな? エドガールが愛人ティグラーナに宝石をちらつかせて嘘の証言をさせたのは酷い、彼女の本心がどうであれ。 そしてエドガールの棺をウクライナ国旗で覆った時は現実に戻されてしまった! これは異化効果もある。 映画音楽を聴いているようなパートもあり、重唱が深くなるほど混沌としてくる。 初めての作品で驚きがいっぱいね。 楽しかったわよ。 *二期会創立70周年記念公演 *東京二期会コンチェルタンテ・シリーズ *二期会、 http://www.nikikai.net/lineup/edgar2022/index.html

■スワン・レイクス

*下記□3作品を観る。 □スワン・ケイク,■振付・音楽:ホフェッシュ・シェクター出演:ゴーティエ・ダンス □7人のダンサーのための無題,■振付:カエターノ・ソト,音楽:ピーター・グレックソン,出演:ゴーティエ・ダンス □シャラ・ヌール,■振付:マルコ・ゲッケ,音楽:ビョーク他,出演:ゴーティエ・ダンス ■NHK・配信,2022.4.17(シアターハウス・シュツットガルト,2021.6.27-28収録) ■「白鳥の湖」の特集らしい。 他にマシュー・ボーン、モンテカルロ・バレエも上映していたが今回はゴーティエ・ダンスに絞る。 タイトルが複数形なのは3作品あるから。 この中で気に入ったのは「スワン・ケイク」。 エリック・ゴーティエが話していた「ゼリーの中で踊る」のような振付がオリジナルにはない明るさを引き寄せていた。 気取らない衣装がいい。 徐々に激しくなっていきチャイコフスキーが聴こえてくる終幕に<白鳥の湖>だったことに気付かされる。 面白くみることができた。 「7人のダンサーのための無題」は背景の黒と衣装の黒が混ざり合い見難かった。 映像では尚更である。 しかも床に接地する頻度が多い振付で洞窟の黒鳥物語といえる。 「シャラ・ヌール」は鋭利で忙しないパントマイム風な振付が最後まで続く。 ビョークらの漏れるような唸るような声がダンサーに絡まり付き動きを豊かにしている。 しかし規格ばった振付だけでは飽きてしまう。 マシュー・ボーンと違って今回の3作品は解釈がより自由になっている。 「スワン・レイクス」を隠せば白鳥に結びつけることはできないだろう。 *NHK、 https://www.nhk.jp/p/premium/ts/MRQZZMYKMW/episode/te/WYPGZNNZ34/

■アンチポデス

■作:アニー・ベイカー,翻訳:小田島創志,演出:小川絵梨子,出演:白井晃,高田聖子,斉藤直樹ほか ■新国立劇場・小劇場,2022.4.3-24 ■会議形式で物語を創作していく舞台のようです。 一人づつ自身の過去を語り他メンバーがそれを膨らませていく、のではなく書記が記録していくだけです。 メンバーからの圧力が語らせる。 それでも会社の会議を思い出してしまった。 会議へのトラウマは会社員なら何かしら持っているはず。 リーダーに指名されたら私ならどのようにまとめるのか? 同調や無視が室を覆う・・。 劇場で仕事モードになってしまった!  メンバーの話しはシモネタ経験談から始まるがどれも冴えない。 ダラダラ会議の典型にみえる。 物語の分類などが読み上げられるのも興醒めです。 しかしある種のリズムは感じられる。 サンディのリーダーとしての捌き方が巧い。 変わった観後感を持ちました。 ツマラナイけれどオモシロイ。 「ゴドーを待ちながら」と同じ構造かもしれない。 そういえば「 フリック 」もゴドーが感じられた。 ・・物語を待ちながら。 でも物語なんかどうでもよい! こんな雰囲気が漂っていました。 *NNTTドラマ2021シーズン作品 *劇場、 https://www.nntt.jac.go.jp/enjoy/record/detail/37_023072.html

■ばらの騎士

■作曲:R・シュトラウス,指揮:サッシャ・ゲッツェル,演出:ジョナサン・ミラー,出演:アンネッテ・ダッシュ,妻屋秀和,小林由佳,与那城敬ほか,演奏:東京フィルハーモニー交響楽団 ■新国立劇場オペラパレス,2022.4.3-12 ■ミラー演出でこの作品を観るのは3回目かな。 プログラム掲載の演出家ノートを今回初めて読んだの。 「・・(登場人物たちが)時代の大変動を薄々感じている。 しかし先のことはわからない・・」。 1911年初演で18世紀の世界を描いたこの作品を、当舞台は1912年に設定し直した演出にしているのね。 初演時1911年の3年後には第一次世界大戦が勃発している。 時代の変化に気づいている元帥夫人。 それは彼女自身の身体の衰えから、愛する人の離散の予感から、貴族社会の崩壊からみえてくる。 彼女が持つ倦怠感、退廃感はやんわり伝わってきたわよ。 一幕はこの雰囲気が感じられる。 でも二幕、三幕はコミカルが強すぎて混乱してしまった。 歌唱中はともかく、日本人歌手たちの動作表情が細かすぎるからだと思う。 おおらかさが不足している。 オクタヴィアンは逆に直立不動になってしまった。 過去の舞台では気にならなかったけど・・。 オックス男爵、オクタヴィアンの出演者変更も影響しているとおもう。 初演と同じように現代も先のことは分からないと言うことね。 *NNTTオペラ2021シーズン作品 *劇場、 https://www.nntt.jac.go.jp/enjoy/record/detail/37_023046.html *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、ばらの騎士  ・・検索結果は4舞台.

■流れる  ■光環(コロナ)

*劇団あはひレパートリー2作品(下記□)を観る。 ■東京芸術劇場・シアターイースト,2022.4.3-10 □流れる ■作・演出:大塚健太郎,出演:上村聡,中村亮太,鶴田理沙ほか,劇団あはひ ■幕が開いて・・、チェルフィッチュを思い浮かべたが直ぐに離れていった。 ゆっくりした動作の中で「静かな漫才」を聞いているような感じだ。 「おくの細道」「隅田川」を骨格にしているらしい。 能楽ファンとして嬉しい。 身体的に気持ちのよい舞台だが「隅田川」の母と子を意識してしまった。 (鉄腕)アトムが登場するが気にならない。  近ごろは小劇場でもマイクを使うことが多くなり耳障りだ。 でも当舞台はマイクの効果がでていた。 それは透き通った声の響きが「隅田川」と共振していたからだろう。 特にアトムの無感情の声に涙を誘われた。 能を観た後と同じような感慨を持った。 「井筒」には戸惑ってしまった。 むしろ外したほうが舞台に凝縮力が増す。 引用の匙加減は難しい。 当舞台をみて「光環」を観るか否かにしていたが観ることにした。 九龍ジョーと大塚健太郎のアフタトークを聞く・・。 「・・いろいろな断片から記憶が揺り動かされイメージが広がる。 ボーと思いを過ぎらさせてくれる時は良い舞台だ(九龍)」(私も同感)「・・能は引用の宝庫だ(九龍)」「・・軽さが大事だが、過程の血豆を忘れるな(九龍)」「・・デリダを意識している(大塚)」「・・日本の漫画は世界のマイノリティに支持されているのを日本は忘れている(九龍)」「大塚英志の鉄腕アトム論を参考にした(大塚)」「・・手塚治虫は戦争体験が根底にある(大塚?)」などなど・・。 □光環(コロナ) ■作・演出:大塚健太郎,出演:古瀬リナオ,安光隆太郎,渋谷采郁ほか,劇団あはひ ■ポーの名前からは予想できない舞台だった。 科白も衣装も美術も全てが詩的である。 選ばれなかった全ての可能性を問う時、この世に生きているのは奇跡である。 宇宙138億光年を射程にいれた壮大な舞台にみえる。 太陽コロナを写す照明や水の利用には驚きがあった。 人物配置も良い。 音響も合格だ。 「流れる」では音が割れていた箇所があった。 このような舞台は弛れることが多いが、そうならない。 面白い舞台だった。 岡田利規と大塚健太郎のアフタトークを聞く・・。 「「三月の5日間」を意識した(大塚)」「舞台や人

■能楽堂四月「通円」「八島」

*国立能楽堂四月定例公演の下記□2作品を観る。 ■国立能楽堂,2022.4.6 □狂言・大蔵流・通円■出演:山本東次郎,山本則孝,若松隆ほか ■茶屋亭主の通円が多くの客に茶を提供して過労死した話である。 「舞狂言」のため能形式に従っている。 もちろん囃子や地謡を伴っている。 しかしシテの動作が大げさだ。 コミカルにも感じられる。 能として見てしまう為だろう。 いつもとは違った面白さはあるが(能に)近づくほど興醒めしそうだ。 □能・喜多流・八島■出演:長島茂,佐々木多門,大日方寛ほか ■小書に弓流と那須が添えられている。 前場はとてもゆっくりしたテンポで進んでいく。 屋島浦の長閑な風景が気持ち良い。 続く「  錣引 しころびき 」などの威風ある戦語りに巧く繋がっていく。 中入で那須与一「扇の的」を仕方話で語り上げるのだが迫力満点である。 そして後場では義経の霊が登場し小書の「弓流」が特に強調される。 しかし後場が盛り上がらない。 「錣引」も「弓流」も「那須」の威勢の良さに隠れてしまったからである。 「那須」は科白量が多く力強い演技だ。 屋島風景とシテの戦闘描写の絶妙な絡み合いが壊れてしまった。 小書のサービス過剰と言ってよい。 *劇場、 https://www.ntj.jac.go.jp/schedule/nou/2022/4108.html?lan=j

■S高原から

■作・演出:平田オリザ,出演:島田曜蔵,大竹直,村田牧子ほか,劇団:青年団 ■こまばアゴラ劇場,2022.4.1-24 ■「静かな演劇」の初期に戻った雰囲気があります。 つまり身体がより自然に、とくに役者の手の動きが自然体に戻っていた。 静けさが科白の間ではなく身体の間に発生する。 舞台に雑音が感じられるのはこの為です。 科白の影響が抑えられている。 患者の恋人の友達が婚約を報告する場面がクライマクスでしたね。 患者が後ろ姿を押し通すことで盛り上げていました。 作者の挨拶文に「風立ちぬ」と「魔の山」を意識したと書いてある。 舞台には結核とは違う気分が漂っていました。 でもエイズは結核の替わりにはならない?、話が逸れますが。 同年初演(1991年)の「 エンジェルス・イン・アメリカ 」が過ってしまう人もいるでしょう。 それはともかく、この静寂感は最近の舞台とは違った面白さを持っていた。 新鮮でした。 *青年団第92回公演 *劇場、 http://www.komaba-agora.com/play/12610 *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、平田オリザ  ・・検索結果は34舞台.

■名付けようのない踊り

■脚本・監督:犬童一心,出演:田中泯,石原淋,大友良英ほか ■アップリンク吉祥寺,2022.3-3.31(日本,2021年作) ■田中泯の生い立ちから現在までを編集したドキュメンタリーである。 戦後の頃はアニメで表現している。 当時の記憶に現れる自身を<私の子供>と彼は名付けている。 しかも彼の朗読は素直で優しい。 牙が抜けてしまった。 この監督の作品は初めて見るが童話作家の出身か? ゴツゴツした濃紺の古コートを着て登場する彼の舞台を何度も見たことがある。 そのコートは彼の父が警察官巡査時代に着ていた形見であったこと。 そして「名付けようのない踊り」がロジェ・カイヨウの言葉からとったらしい。 田中泯のダンスにある<遊び>と<聖なるもの>の関係を知ったこと。 この二箇所が記憶に響き残った。 公演等の映像では福島県浪江町?で一匹の蜘蛛を前にした場踊りが気に入る。 蜘蛛と一体化していた。 また「 形の冒険 」や写真集「 田原桂一 」、松岡正剛とのコラボ「 村のドン・キホーテ 」は当ブログに投稿されている。 近況では「 HOKUSAI 北斎 」に出演していた。 いろいろと中途半端で雑多な感じがする映画だった。 でも、それは多様多彩に囲まれた「場踊り」と同期しているからだろう。 *映画com、 https://eiga.com/movie/95713/ *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、田中泯  ・・検索結果は5作品

■業火 GOUKA

■原作:中村文則,脚本・演出:こしばきこう,出演:三木美智代,劇団:風蝕異人街 ■こまばアゴラ劇場,2022.3.25-27 ■女の一生、いや半生を語る舞台です。 聞き手は精神科医らしい。 8才の頃に火遊びで火事を出してしまったことを皮切りに主人公は語りだす・・、両親の不和、不良仲間との交際、妊娠と中絶、高校時代の退学、工場での労働、そして23才に結婚。 しかし夫の浮気、義理母との確執、・・。 てんこ盛りの人生ですね。 でも一つ一つの事件は古臭く、20世紀中頃までに引き戻されてしまった。 太宰治のダイジェスト版を読んでいるような感覚がやってくる。 医師の人生肯定の説教で彼女が立ち直るのも拍子抜けです。 熱演の一人芝居でした。 明るく湿度の低い演技です。 どろっとした戯曲とからっとした身体のせめぎ合いに面白さがあります。 でも二つは交わらずに終わってしまった。  *劇場、 http://www.komaba-agora.com/play/11187 *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、こしばきこう  ・・検索結果は4舞台.

■能楽堂三月「袴裂 はかまさき」「岩船」

*国立能楽堂三月特別企画公演の下記□2作品を観る。 ■国立能楽堂,2022.3.25-26 □狂言・袴裂■出演:野村又三郎,奥津健太郎,奥津健一郎 ■小田幸子のプレトークを聞く。 「天正狂言本」と江戸時代の「狂言絵」をもとに新たな解釈を加えて蘇らせた舞台らしい。 一着しかない袴を切り裂き、太郎冠者と舅の二人がエプロンのように付けて聟入りの対応をする話である。 袴は繋がっているので二人は一緒に行動しなくてはならない。 舞いの場面では珍しく笑ってしまった。 □復曲能・岩船■出演:大槻文蔵,大槻裕一,福王和幸ほか ■天野文雄のプレトークを聞く。 彼の著書・編著には目を通すことが多い。 祝言能に前場を復元、後場は天探女(あまのさくめ)が岩船に乗って登場し龍神がその船を牽引し住吉の浦に着岸させるという舞台である。 前場から囃子の大鼓、ワキの臣下・隋臣それに供女に力強さがみえる。 緊張が感じられる。 後場の天探女の舞、つづく竜神登場と舞は圧巻である。 探女の静と龍神の動が見事に噛み合っている。 岩船や宝珠などの小道具も舞台を程よく修飾している。 全体の流れもよく考えられている。 脇能で興奮するのは久方ぶりだ。 *劇場、 https://www.ntj.jac.go.jp/schedule/nou/2021/3108.html?lan=j

■リゴレット

■作曲:G・ヴェルディ,指揮:ダニエル・ルスティオーニ,演出:バートレット・シャー,出演:クイン・ケルシー,ローザ・フェオラ,ピュートル・ベチャワ他 ■東劇,2022.3.18-24(メトロポリタン歌劇場, 2022.1.29収録) ■新演出と聞いて早速映画館へ・・。 背景を特に現代にして上演することの多い作品だが今回は1920年代ドイツらしい。 インタビューで美術・衣装担当が苦労話をしていたけど、でも効果は薄い(ようにみえた)。 客船からヒントを得た公爵館も物語に馴染んでいない。 住居も飲み屋も単純に貧弱だけ。 その三つの建物を取り込めなかった廻り舞台の出来も60点くらい。 退廃的に見えたのはリゴレットの衣装と化粧くらいかな? リゴレットの二面性の面白さも一幕舞踏会で暴力的とも言えるマントヴァ公爵の乱痴気騒ぎで潰れてしまった。 モンテローネの呪いも言葉だけ。 娘ジルダを誘拐するため住居に押し寄せる大人数の公爵部下、彼女を誘拐したあとの館の部下たちの多さに興醒めね。 歌わない合唱団を登場させる事情はわかるけど。 娘の辱めと父親の惨めさしか残らない。 コロナ禍のため演出家の意図が発揮できなかった? ところでピュートル・ペチャワは身体も声も肉付いてノッている時期が続いているようね。 演技も歌唱も自信が溢れていた。 ヴェルディ・バリトンのクイン・ケルシー、二度目のローザ・フェオラの父娘はどうにか役を熟したかな。 ヴェローナへ逃げる彼女の男の子姿は似合っていたわよ。 でもカメラのアップが以前より多くなってきたのは目障りだわ。 *METライブビューイング2021シーズン作品 *MET、 https://www.shochiku.co.jp/met/program/3766/ *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、シャー  ・・検索結果は6舞台.

■椿姫

■作曲:G・ヴェルディ,指揮:アンドリー・ユルケヴィチ,演出・衣装:ヴァンサン・ブサール,出演:中村恵理,マッテオ・デソーレ,ゲジム・ミシュケタ他,演奏:東京交響楽団 ■新国立劇場・オペラパレス,2022.3.10-21 ■アニタ・ハルティヒで観たかった。 昨年末の「 蝶々夫人 」が中村恵理だったこともあるので。 コロナが長過ぎるぅぅ。 そして前奏曲を聴くだけで涙がでてくる。 ヴィオレッタは1幕から走り続けるから大変ね。 中村恵理は蝶々夫人のほうが似合うと思う。 高級娼婦は謎が多すぎるし・・。 アルフレードとジェルモンの息子と父が舞台を固めてくれた。  ヴァンサン・ブサールの演出はこれで3度目だわ。 少し飽きてきた。 そろそろ新演出にしてちょうだい。 *NNTTオペラ2021シーズン作品 *劇場、 https://www.nntt.jac.go.jp/enjoy/record/detail/37_022514.htm *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、ブサール  ・・検索結果は3舞台.

■能楽堂三月「縄綯 なわない」「箙 えびら」

*国立能楽堂三月普及公演の下記□2作品を観る。 □狂言・和泉流・縄綯 なわない■出演:松田高義,奥津健太郎,野口隆行 □能・観世流・箙 えびら■出演:杉浦豊彦,大日方寛,井上松次郎ほか ■国立能楽堂,2022.3.12 ■プレトーク「三つの世界を流れる生田川」(横山太郎)を聞く。 三つとは「来る年の矢の生田川・・」の時象徴の川。 二つ目が修羅世界の「血は涿鹿の河となり・・」。 そして三つ目、梶原景季が修羅の戦いの最中に「心を静めて見れば、所は生田なりけり、時も昔の春の、梅の花さかりなり、・・」と瞬時に平座になって我にかえり、一ノ谷に向かう直前の生田川風景を現前させる。 修羅道の舞は重たかったが一ノ谷再現からは軽やかにみえた。 時空の転換に驚くばかりである。 狂言「縄綯」がH・メルヴィルの「 バートルビーズ 」に似ているとの指摘があった。 主人公は「・・したくない」と言って主人の頼みを拒否する話である。 しかし哲学的な内容より太郎冠者の身勝手な行動が前面に出ていたようにみえる。 主人の妻や子供の悪口もいただけない。 *劇場、 https://www.ntj.jac.go.jp/schedule/nou/2021/3113.html?lan=j

■透き間

■台本・演出:山口茜(イスマイル・カダレ「砕かれた四月」より),作曲:増田真結,振付:足立七瀬,出演:高杉征司,芦谷康介,達矢ほか,劇団:サファリ・P ■東京芸術劇場・シアターイースト,2021.3.11-13 ■舞台には2m四方の台が4x4=16個作られている。 その台の間をぬい、台の下を這い、5人の役者が動き回る。 その動きは振が付いている。 ダンスに近いですね。 科白もそれに合わせて詩的に聴こえる。 初めて聞く作者と作品です。 配られたチラシの登場人物と場面構成を読んでいなければストーリーは意味不明です。 読んでいても同じかもしれない。 役者の動量と話量が比例しないからです。 台詞が少なすぎる。 このため科白が身体に絡んでこない、ダンスも科白も別々でみると面白いが・・。 「掟(カヌン)と呼ばれる伝統的な慣習法に支配された」世界が遠くて敷居の高い舞台に感じられた。 *サファリ・P第8回公演 *劇場、 https://www.geigeki.jp/performance/theater301/ *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、山口茜  ・・検索結果は2舞台.

■牢獄天使城でカリオストロが見た夢

■演出:笠井叡,出演:山田せつ子,杉田丈作,大森政秀,齊田美子,山崎広太ほか,ピアノ:島岡多恵子 ■世田谷パブリックシアター,2022.3.3-6 ■「天使館を通り過ぎ、遠く離れていったダンサーたちが今此処に・・」。 笠井叡と天使館ダンサーの他に大森政秀、山崎広太、山田せつ子の名前も載っている! さっそく劇場へ。 ダンサー17人の控えを左右にとり遠近を出せるように深い舞台にしてある。 さいしょに大森政秀が階から舞台に上り3人のオイリュトミーをコロスにして舞い始める。 次に杉田丈作、山田せつ子、山崎広太と続くの。 「遠く離れていった」4人は自身の振付で舞う。 山崎広太は天使館との距離を語っていたが、この劇場で彼の公演を観ていた頃を思い出すわね。 そして笠井叡は椅子に座って登場。 科白を時々発する。 途中、笠井久子が朗読しながら車椅子で現れる。 どちらもダンスと言葉、革命と自由を語っているように聞こえる。 終幕近く笠井叡は椅子から離れて踊り喋り転げ回る・・。 カーテンコールで足を引きずっていたけど、だいじょうぶ? いつものオイリュトミー公演では身体の解放感が訪れるが今日の舞台は少し違った。 中堅ダンサーたちに苦しみの表情がみられたから、そして科白が天使館の思想面を語っていたからよ。 「天使館ポスト舞踏公演」としての区切りをつける舞台だった。 *劇場、 https://setagaya-pt.jp/performances/202203cagliostro.html

■能楽堂三月「牛馬」「朝長」

*国立能楽堂三月定例公演の下記□2作品を観る。 □狂言・大蔵流・牛馬■出演:善竹隆司,善竹隆平,茂山千三郎 □能・金剛流・朝長■出演:金剛永謹,福王茂十郎,福王和幸ほか ■国立能楽堂,2022.3.2 ■馬を引き牛を追う動きだけでその風景が立ち上がる。 現代と違い、家畜が入ると心が和む。 博労たちのセコセコした様子との対比が面白い。  「朝長」は前シテと後シテが別人の為か物語が繋がっていかない。 しかも登場した朝長は戦いに忙しい。 青墓宿長者と旅僧が語る朝長への言葉を膨らませて主人公の心を覗くしかない。 しかも舞台上の長者と朝長が別演者にみえてしまった。 前場のある場面で長者がよろけそうになり観ていて緊張したが、後場は声も動きも朝長が生き返ったかように若々しかった。 ブログラムには両シテ役ともに金剛永謹と書かれていた・・!?   この作品は朝長はもとより父兄弟の最後の場面が繰返し語られる。 作者は源氏一族のゴシップを描きたかった? 観世元雅が活躍した頃の「平治物語」は未だ同時代だったのだろう。  *劇場、 https://www.ntj.jac.go.jp/schedule/nou/2021/3114.html?lan=j

■ザ・ビートルズGetBack、ルーフトップ・コンサート

■監督:ピーター・ジャクソン,出演:ジョン・レノン,ポール・マッカートニー,ジョージ・ハリスン,リンゴ・スター他 ■TOHOシネマズ日比谷,2022.2.25-(アメリカ,2022年作) ■「ザ・ビートルズGetBack」(約6時間)の中からロンドンのアップル社サビル・ロウ本社屋上での「ルーフトップ・コンサート」を抜き出して1時間に再編集した作品と聞いている。 1956年からのビートルズの歩みをざっとお浚いし、1969年1月30日に行われた40分の屋上コンサートを映し出す。 8曲前後を歌ったかな? 「ゲット・バック」、「ドント・レット・ミー・ダウン」「アイヴ・ガッタ・フィーリング」「ワン・アフター・909」「ディグ・ア・ポニー」・・。 途中に2度3度と同じ曲を歌っている。 このコンサート録音からアルバム「レット・イット・ビー」を作成したようだ。 それにしても酷い映像編集だ。 騒音のため警察が止めに入る場面を何回も映し出す。 ここは一度で十分だろう。 周辺群衆へのインタビューもつまらない質問が多い。 コンサートの雰囲気が萎んでしまった。 警察に解散させられた後、当ビル地下スタジオに場所を移し残曲を録音するのだがこれも中途半端だ、クレジットタイトルも入り強く言えないが。 編集方針を変えてもう一本作ったらどうだろうか?  *映画com、 https://eiga.com/movie/96546/

■能楽堂二月「佐渡狐」「花月」

*国立能楽堂二月企画公演の下記□2作品を観る。 □狂言・佐渡狐■出演:山本則重,山本東次郎,山本則秀 □能・花月■出演:長島茂,則久英志,山本則孝ほか ■国立能楽堂,2022.2.23 ■大蔵流狂言師山本東次郎のプレトークで始まる。 父である三世東次郎の話、墓前の決意、空襲下の稽古、舞台での心得などなどを面白く聞かせてもらった。 トーク後の「佐渡狐」で佐渡の百姓を演じる。 「花月」は父子の再会物語である。 「小歌、曲舞、鞨鼓など室町時代の遊興がテンポよく構成されており・・」、しかも淡々とした流れで気持ちが良い。 再会も淡白である。 喝食姿の花月の存在感も緩まなかった。 もう少し若さを出してもよい。     二月プログラムに岡本章の文章が載っていた。 昨年観た「 盲人達 」の話だ。 「・・能楽師櫻間金記氏に能の居グセ演技<せぬ隙>のさらなる挑戦をしてもらった」とある。 老神父を思い出した。 この舞台は照明が暗すぎて効果が薄れてしまったように覚えている。 この演技は能や舞踏はもちろん現代演劇にも欠かせない。 <せぬ隙>の圧倒的存在美を舞台で楽しむことができれば最高だろう。 *劇場、 https://www.ntj.jac.go.jp/schedule/nou/2021/2137.html?lan=j

■音楽舞踊劇IZUMI

■演出・振付・出演:平山素子,三味線:本條秀慈郎,アイヌ・ウボボ:床絵美,サウンドスケープ:スカンク ■シアタートラム,2022.2.17-20 ■平山素子のダンスに三味線の本條秀慈郎とアイヌの唄ウポポの床絵美が共演。 物語は「鷹の井戸」に着想を得ているらしい。 これにサウンドスケープが時々入る。 「鷹の井戸」を意識していたが途中から止めた。 拘ると意味を追ってしまう。 サウンドスケープと同じに背景として感じればよい。 ・・ダンスと三味線とウポポを直截に受け入れたら気が楽になった。 ダンスはいつもとは違う。 相撲力士が腰を落としたり両腕を横に広げるような振付もあり力強い。 巫女が祈祷踊りをしているようにもみえる。 彼女は鷹か? オノマトペのような発声でリズムを取り合う場面もある。 ダンス、音楽、歌唱がどれも突出しないで上手くまとまっていく感じだ。 同期していくのがわかる。 三味線にダンス、ウポポにダンスに最初は違和感があったが終幕近くには解消されていた。 でも「鷹の井戸」に(観客が)馴染んでいないと劇が立ち現れてこないかもしれない。 *劇場、 https://setagaya-pt.jp/performances/202202hirayamamotoko.html

■エウリディーチェ Eurydice

■作曲:マシュー・オーコイン,指揮:ヤニック・ネゼ=セガン,演出:メアリー・ジマーマン,出演:エリン・モーリー,ジョシュア・ホプキンス,ヤクブ・ヨゼフ・オルリンスキ他 ■新宿ピカデリー,2022.2.18-24(メトロポリタン歌劇場,2021.12.4収録) ■「オルフェオとエウリディーチェ」の妻にフォーカスをあてた作品らしい。 それは別の角度から<冥府下り>を見たらどうなるか?ということね。 これは必見! ということで早速映画館へ足を運んだの。 ・・結論を先に言うと、物語はイマイチだけど歌詞・歌唱・音楽・美術は文句なしにオモシロイ。 それは、物語にエウリディーチェの父を登場させたから。 ギリシャ神話の親子関係には鋭さがある。 でも舞台上の父娘は日常の延長を演じてしまった。 ここにオルフェオとの三角関係も入り夫婦の愛がボヤケてしまった。 台本担当S・ルールが自身の父娘関係を論じていたのでこのストーリーになったのね。 しかも終幕にオルフェオも冥界に降りてきたので混乱したわよ。 しかし、歌詞・歌唱は日常の語彙とリズムを持っているが散文詩のように耳に届くの。 これに寄り添いそして急がせる演奏も何とも気持ちがいい。 「演出に合わせて作曲した」とM・オーコインが話していたがこの方法が成功したのね。 そしてオルフェオはバリトンとカウンターテナの二人一役にして吟遊詩人を、ハデスは高音域テノールで冥界の王になりきっていたのが楽しい。 舞台美術はシンプルだが物語の核心を突いていた。 忘却の川であるレーテをシャワー室にしたのも巧い。 歌詞字幕を舞台上に修飾表現をして、冥界とこの世の遣取を手紙にしての言葉重視は音楽との愛想が良かった。 でもカーテンコールの拍手が弱かったのは物語の消化不良で観客の感情が高ぶらなかったから?・・ *MET2021シーズン作品 *MET、 https://www.shochiku.co.jp/met/program/3768/

■フィガロの結婚

■作曲:W・A・モーツァルト,演出:宮本亜門,指揮:川瀬賢太郎,出演:与那城敬,高橋絵理,種谷典子,近藤圭,郷家暁子ほか,演奏:新日本フィルハーモニー交響楽団,合唱:二期会合唱団 ■東京文化会館・大ホール,2022.2.9-13 ■中止になった「 影のない女 」の代替公演が今日の舞台。 宮本亜門演出は観ていなかったので振替手続きをしたの。 客の入りは8割以上かしら? 正方形の大枠で形作ったシンプルな舞台構成は演出家の意見も取り入れたようにみえる。 床は道具類が少なくて歌手に負担をかけない。 大枠が移動したり連なる鳥居のように変形していくのはお見事。 日常の行動を次から次へと目まぐるしく展開していくオペラも珍しい。 その内訳は恋愛の駆け引きでいっぱい。 モーツァルトの頭脳の回転速度がそのまま伝わって来るということね。 毛並の良さが揃った歌手たちもこの流れに遅れることが無い。 観て良し聴いて良しの舞台だった。 2月に入って3本目のオペラ観賞だけど、この劇場は人間世界から声が届くように聴こえる。 新国立劇場の異世界から声が届くのとは違うわね。 このため新国立劇場は非日常を描くオペラが似合う。 フィガロはもちろん東京文化会館が合うと思う。 いろいろな劇場が揃っている、これが舞台ファンからの条件かな? *二期会、 http://www.nikikai.net/lineup/figaro2022/index.html

■マーキュリー・ファー MERCURY FUR

■作:フィリップ・リドリー,演出:白井晃,翻訳:小宮山智津子,出演:吉沢亮,北村匠海,加藤将樹ほか ■世田谷パブリックシアター,2022.1.28-2.16 ■「2015年日本初演の衝撃が再び!」とチラシにある。 多くの謎と溢れる血で 衝撃を受けたことを未だ覚えている 。 ということで、再び観ることにしました。 麻薬と暴力、残酷へ進む性的倒錯、そして戦争へ。 初演から7年たっても衝撃力がありますね。 幻覚に侵された身体からみえる世界を描いている。 そこに登場人物が好んで語る過去がその世界を重層化していく。 狂気の精神と血塗られた肉体の対比が鮮やかです。 しかし今日の舞台をみて多くの謎は消えてしまっていた。 狂気も世界の一つとして納得してしまった為です。 観客の私がこの7年で変ったから?それとも世界が狂気に近づいたから? ところで客席の殆んどが若い女性とは驚きでした。 贔屓筋でしょうか? *劇場、 https://setagaya-pt.jp/performances/202201mercuryfur.html *追記・・プログラムを開くと演出家が愛について語っていた。 そういえば激しい状況下で、 それを促す台詞が散りばめられていました。 しかし硬い言葉の交換が多く、愛というより家族の絆を求めるようなものにみえた。 今再び6人の関係を辿ると(広義の)愛が光り出し作品に深みを与えていたのを確かに感じます。

■愛の妙薬

■作曲:G・ドニゼッティ,指揮:G・デスピノーサ.演出:C・リエヴィ,美術:L・ペーレゴ,出演:砂川涼子,中井亮一,大西宇宙ほか,演奏:東京交響楽団 ■新国立劇場・オペラパレス,2022.2.7-13 ■先ずは目に入った緞帳デザインが前回舞台を思い出させてくれた。 この作品も同じ演出が長いということね。 コロナ禍が続くと演出更新は当分お預けかな? 今回も「さまよえるオランダ人」と同じ状況になり入国制限で指揮者と歌手が変更になってしまった。 凡庸な三角関係を物語にしたこの作品が何故こんなにも面白いのか? 「好きだ」「好きかな?」「結婚したい」「結婚できるかな?」、「結婚しよう」、これしか言っていない。 三角関係は多くの人が経験しているはず。 自身の記憶や思い出などを重ね合わせて観るから味がでるの。 ・・娘アディーナとネモリーノはお互い好きなのに彼女はベルコーレにも接近してしまう。 終幕、ネモリーノからの愛の言葉に彼女はやっと決心する・・。 この作品は振付(仕草)も大事ね。 それは心理描写が単相だから。 軍曹や偽医者は過去(経歴)を持っているから仕草が上手い。 でもアディーナとネモリーノは何者なの? 二人は歌唱のみで勝負するの? 巧い仕草は物語が活きてくるが、でも脇道かもしれない。 そしてアディーナはソロはともかくデュオ以上は太い歌唱でいきたい、ここの広い劇場では埋もれてしまう。 ところで合唱団は近ごろ集中力が感じられる。 胸に迫ってくるわよ。 *NNTTオペラ2021シーズン作品 *劇場、 https://www.nntt.jac.go.jp/enjoy/record/detail/37_022175.html *追記・・プログラム掲載の「作品ノート」(香原斗志著)は面白く読ませてもらった。

■観世会2月「二人静」「土筆」「野守」

*観世会定期能2月公演の下記□4作品を観る。 □能・二人静■出演:寺井栄,武田宗典,工藤和哉ほか □狂言・土筆■出演:山本泰太郎,山本則孝 □仕舞・弓八幡,笹之段,須磨源氏■出演:津田和忠,観世清和,関根知孝ほか □能・野守■坂井音隆,殿田謙吉,山本凛太郎ほか ■観世能楽堂,2022.2.6 ■はじめの「二人静」から心地よい気分に入っていけない。 音響のせいかもしれない。 前方の席位置が悪かったかな? 大鼓が始終、序の舞では笛が増幅されている感じだ。 囃子が謡や舞を除けているようになる。 囃子のない狂言では声が強すぎる。 音が逃げないで籠もってしまうためかな? 「野守」は激しい表現があるため打ち消していたが。 場内は正面席が厚くて脇正面が薄い。 つまり長方形空間のため一方の距離が短く、しかも壁板の1枚1枚が下に傾いていて客席に音が集中するようになっている。 音の逃げ場が無い? などなど幾つかの要因が考えられる。 声や音が<やってこない>そして<去っていかない>のだ。 「・・やってきて、去っていく」のは演者だけではなく声や音の条件と言える。 そして長方形より正方形空間が落ち着ける音響になる。 ここはエンタメ(=実用)を意識して設計された能楽堂にみえる。 今回は能を観る喜びがやってこなかった。 次回は席を後方に変えようとおもう。 *劇場、 https://kanze.net/publics/index/539/

■さまよえるオランダ人

■作曲:R・ワーグナー,指揮:ガエタノ・デスピノーサ,演出:M・V・シュテークマン,出演:河野鉄平,田崎尚美,妻屋秀和ほか,演奏:東京交響楽団 ■新国立劇場・オペラパレス,2022.1.26-2.6 ■序曲を聴くと身震いがしてくる。 しかも展開が劇的でそのまま終幕まで釘付けになってしまった。 過去公演と同じ演出家だが何度観ても飽きないわね。 コロナ禍で指揮者や歌手が来日できず日本人歌手以外は総入れ替えになってしまった。 しかも当日、マリー役も急遽交代になり二人一役(歌唱と演技を別々に受け持つこと)にして乗り切ったの。 でも心配は無用だった。 オランダ人もゼンダそしてエリックも心力が籠もった歌唱で見事に役をこなしていた。 この状況下で歌手との一体感をより求めた為か演奏はとても分かりやすかった。 それが劇場空間の広さを感じさせない音質を作り出したとおもう。 ところでゼンダがオランダ人と初めて対面する場面で喜びの表情を浮かべていたが頂けない。 ここは喜怒哀楽を越えた表情にしてほしい。 演出家ノートを後日読むと「・・神話的人物像を・・人間の側へと引っ張りたい」。 つまり演出だったと言うことね。 なるほど。 そして今年初めてのワーグナーを観てやっと調子がでてきたかな? うん。 *NNTTオペラ2021シーズン作品 *劇場、 https://www.nntt.jac.go.jp/enjoy/record/detail/37_022098.html *「ブログ検索」に入れる語句は、シュテークマン  ・・ 検索結果は3舞台

■夜叉ヶ池

■作:泉鏡花,演出:宮城聰,音楽:棚川寛子,美術:深沢襟,衣装:竹田徹,出演:永井健二,布施安寿香,奥野晃士ほか,劇団:SPAC ■静岡芸術劇場,2022.1.22-3.5 ■美術や衣装が凝っていますね。 役者たちのマスクもです。 異界の白雪姫と家来の鯉・蟹・鯰の演技が派手で楽し過ぎる。 このため晃・百合夫婦を含めた村人たちの物語が異界から離れてしまった。 彼岸と此岸の境界を彷徨う面白さが薄くなったのは免れないでしょう。 そして地上では、晃と百合の死に向かう姿を強調していましたね。 動かぬ二人の白装束姿はロミオとジュリエットです。 その要因となった村人の行動や掟は現代共同体をも通底している。 「ときは現代」の字幕に作品の意図が感じられる。 鏡花を現代に如何に取り込んで表現するのか? 中高生鑑賞事業作品らしい作り方です。 ところで鏡花を打楽器だけで表現するのは難しい。 今回はメリハリを出して物語を巧く引き立てていました。 鏡花的感動は少ないが充実した舞台でした。 総合芸術としての満足感がありました。 *SPAC2021秋春シーズン作品 *CoRich、 https://stage.corich.jp/stage/116345

■Fire Shut Up in My Bones

■作曲:テレンス・ブランチャード,演出:ジェイムズ・ロビンソン,カミール・A・ブラウン,出演:ウィル・リバーマン,エンジェル・ブルー,ラトニア・ムーア他 ■新宿ピカデリー,2022.1.28-2.3(メトロポリタン歌劇場,2021.10.23収録) ■「子供時代に受けた性暴力のトラウマを背負った青年が魂浄化への旅に出る・・」。 主人公チャールズは子供と青年の二人一役で演じられる。 子供時代の1幕と青年時代の2幕構成で、子供が登場する場面には必ず青年が近くで彼を見守っているの。 子供時代は回想にも取れるわね。 前半の歌詞歌唱は素朴素直で気持ちがいい。 母と5人の息子、伯父と2エーカの土地、そして家に寄り付かない父親、そこに近隣の人々や労働現場を入れて南部の貧困生活を淡々と描き出している。 この描写が終幕まで続いても文句は言えない。 チャールズは末っ子の甘えん坊ね。 この作品はヴェリズモ・オペラに入るのかしら? 指揮者や作曲家のインタビューではプッチーニの影響を認めているが、そこにジャズや映画音楽が絡まり合い親しみやすい楽曲になっていた。 後半は社交団体の活動や失恋などチャールズの大学生活が語られダンスも幅を利かせて舞台が派手になっていくの。 でも心の描写が消えてしまい前半の心地よいリズムが崩れてしまった。 主人公が持つトラウマを物語に乗せることができなかった。 「ときには何もせずに放っておくべきこともある・・」。 復讐の炎を骨の中に閉じ込めてしまった。 同時に彼が母のもとに戻る甘えん坊で終わってしまったのは残念。 未来に踏み出して欲しかったわね。 *METライブビューイング2021作品 *映画com、 https://eiga.com/movie/95906/

■能楽堂一月「二千石」「求塚」

*国立能楽堂一月特別公演の下記□3作品を観る。 □仕舞・雲林院■出演:梅若万三郎,青木健一ほか □狂言・二千石■出演:茂山七五三,茂山宗彦 □能・求塚■大槻文藏,森常好,茂山逸平ほか ■国立能楽堂,2022.1.26 ■「求塚」は面白く観ることができた。 若菜摘み3人の白装束が新鮮だ。 シテの存在感は十分に出ていた。 特に後場の声と動きは劇的ともいえる。 身体の存在力が地獄に打ち勝っていた。 この力で彼岸が溶解し此岸に引き寄せられてしまった。 地獄の苦しみはこの世の苦しみそのものであり、世界と人の間には埋められない事象が多々ある。 この境地に達して処女の霊は消えていく・・。 兎名日処女が地獄へ落ちた理由は諸説ある。 しかし謡本を開くだけでは分からない。 今日の演者をみて彼女自身に原因があるとは思えなくなった。 普遍への志向性が感じられたからだ。 戯曲は別物だ。 考えさせられる舞台だった。 *劇場、 https://www.ntj.jac.go.jp/schedule/nou/2021/1135.html?lan=j

■初春歌舞伎「南総里見八犬伝」

■作:曲亭馬琴,脚色:渥美清太郎,監修:尾上菊五郎,出演:尾上菊五郎,中村時蔵,尾上松緑ほか ■国立劇場・大劇場,2022.1.3-27 ■舞台に流れるゆっくりとした時間に触れて正月に逆戻りした感じだ。 異類婚姻譚に陰陽と儒教を結びつけたこの作品を初芝居にしたのは総出演ともいえる多数の役者を動員したことにある。 騒がしさの中に正月特有の静けさが出ていた。 犬塚信乃役尾上菊之助もその空間に包まれていた。 七場の舞台美術も場所と風景が多彩で目が喜ぶ。 途中に劇場広告が入りドローンが登場したのは驚いたが・・。 伏姫・八房の場が映像説明で逃げたのは残念。   この作品は少年文庫で中学時代に読んだ記憶があるが今でも伝奇の面白さは心に残っている。 チケットを購入したときにダイジェスト版を再読して劇場へ行ったが舞台は小説とは似て非なるもの。 作品が持っているイメージやリズムの違いがもろに歌舞伎では現れるからだろう。 それはともかく初春公演が持つまったりした時を過ごせた。 *国立劇場開場55周年記念作品 *劇場、 https://www.ntj.jac.go.jp/schedule/kokuritsu_l/2021/42210327.html

■ボリス・ゴドゥノフ

■作曲:M・ムソルグスキー,指揮:セバスティアン・ヴァイグレ,演出:スティーヴン・ワズワース,出演:ルネ・パーペ,デイヴィッド・バット・フィリップ,マクシム・パステル他 ■新宿ピカデリー,2022.1.21-27(メトロポリタン歌劇場,2021.10.9収録) ■粗筋だけを読んで映画館へ行った為か直ぐには物語に入り込めない。 ボリスは何に恐れ、なぜ苦しんでいるの? 皇子ドミトリーを暗殺して手に入れた権力だから? いや、もっと奥がある・・。 多くの地名や川の名前が歌詞に登場するがイメージが付いてこない。 ロシア皇帝の名前も。 これらの風景や人物像が浮かんだら豊かな舞台になったはず。 全てを覆うロシア正教がコロス(合唱団)を動かし、小さな波が繰返し押し寄せてくる達成感の無いリズムで充満している。 しかし、これが少しずつ充実感として貯められていくの。 変わった舞台だわ。 こういうオペラも悪くない。 宗教と権力が縦糸と横糸になり編み上がっているようにみえる。 しかしその織物は荒い。 プーシキン物語もムソルグスキーも遠い時代にみえる。 でも息子を後継者に指名し息絶えるボリスは権力者そのものね。 横糸はなんとか解けたかな?  *METライブビューイング2021作品 *映画com、 https://eiga.com/movie/95905/

■蹠の剃刀 あしうらのかみそり

■作・演出・出演:工藤丈輝,音楽:曽我傑,美術:黒川通利 ■座高円寺,2022.1.12-16 ■舞踏家は独自の動きや形を持っているが、工藤丈輝にはそれが無い(ようにみえる)。 全身が読んで字の如く河原乞食です。 これが型かもしれない。 今回は音楽と美術のコラボが効いていた。 聴覚・視覚・触覚=音楽・美術・身体が共鳴して躍動感が舞台から伝わってきました。 型を見せない身体は容易にシンクロできるのかもしれない? 全12章で組み立てられた作品だが、章を追うごとに異形に驚きながら、日常から離陸していき非日常に入り込むことができました。 黒で始まった衣装変化も身体に馴染んでいましたね。 途中、顔を覆っていた黒布を外した時の凄みの表情もいい。 頭髪の先まで突っ張っていた。 10章前後で拍手をした観客が少なからずいたが「いや、これは終わりではない」? 等身大のパペットと踊る「屍のソシアルダンス」、光り輝く大円盤を背景に踊る「東西胎夢」、そして蜘蛛の巣まみれになるフィニッシュはいただけない。 もっとスマートに終幕へ持っていけたら後味が良かったはず、そして観客は拍手をより集中できたはずです。 総合力の強さが感じられる舞踏でした。 *劇場、 https://za-koenji.jp/detail/index.php?id=2582 *「ブログ検索」に入れる語句は、工藤丈輝  ・・ 検索結果は6舞台

(中止)■THREE QUIET DUETS

■振付:ウィリアム・フォーサイス ■Bunkamura.オーチャードホール,2022.2.4-6 ■「・・「外国人の新規入国停止」については、「本年2月末までの間、継続するものとする。」との発表がございましたため、出演者、スタッフの来日が叶わず、残念ながら全公演の中止を決定いたしました・・」。 久しぶりのフォーサイスだったのに残念。 コロナ下でのチケ購入後の中止はこれで36公演になってしまった。 今年前半はオミクロンで再び増えそう・・。 *劇場、 https://www.bunkamura.co.jp/orchard/lineup/kashi/20220204.html *「ブログ検索」に入れる語句は、フォーサイス  ・・検索結果は4舞台。   

■九十九龍城

■作・演出:上田誠,出演:石田剛太,酒井善史,角田貴史ほか,劇団:ヨーロッパ企画 ■本多劇場,2022.1.7-23 ■香港へ行けば必ず面白いことがある! 右側窓席に座って街を横に見ながら啓徳空港に降りていく時のドキドキ感は忘れない。 九龍城砦は行ったことが無いが<香港>を魔界にするランドマークでした。 でも今は香港への興味が遠のいている。 中国に飲み込まれつつ有るからです。 数ある都市の一つになってしまいそうですね。 舞台美術は苦心しているのが分かります。 ビルを外から描いているが透視技術を使ってビル内を望遠鏡で覗き見できる仕掛けになっている。 ビルの壁が動き部屋の中が見える!? それは豚肉処理、スマホ組立、雀荘、キャバレーでどれもイカガワシさに溢れている。 でも主人公らしき刑事二人が遠くから見ているだけではツマラナイ。 そこで彼らが途中から魔窟に潜入する・・。 演出家が得意とする繰返しや併合、再帰を駆使している。 それが思いもかけない展開の架け橋をしていた! 彼らがRPG(ロール・プレイング・ゲーム)世界の住人だったとは・・。 マトリックス以来、使い古した手ですが気にならない。 物語構造がプログラム構造と相似の為です。 その気配が最初から舞台に充満していた。 この巧さがチケット販売を抽選にできたパワーでしょう。 さすがです。 唯一残念なところは、ゲーム世界から戻る劇中劇が無かったところですか? *ヨーロッパ企画第40回公演 *CoRich、 https://stage.corich.jp/stage/115322 *「ブログ検索」に入れる語句は、上田誠  ・・検索結果は3舞台。

■歌舞伎座一月「岩戸の景清」「義経千本桜」

*近頃はテレビをみなくなった。 気になる作品はWEB経由のパソコンで観る。 この正月は初春大歌舞伎第三部の2作品(下記□)を久しぶりにテレビで鑑賞した。 ■NHK,2022.1.2(歌舞伎座, 中継) □岩戸の景清,難有浅草開景清 いわとのかげきよ,ありがたやはながたつどうあけのかげきよ ■作:河竹黙阿弥,出演:尾上松也,坂東巳之助,中村種之助ほか ■これは楽しい。 初めてみる作品だが心が浄化していくように感じる。 近代の演劇・バレエ・ダンスでは浄化できない部分、つまり母語としての言語、身体、世界の深層を揺さぶられるのかもしれない。 平家の勇将藤原景清そして源氏諸大名の立ち姿は見ごたえがある。 コロスを含めて衣装も風景も素晴らしい。 □義経千本桜,川連法眼館の場 よしつねせんぼんざくら,かわつらほうげんやかたのば ■出演:市川猿之助,中村雀右衛門,市川猿弥ほか ■猿之助で何回か観ている作品だが、彼はこのごろ出突っ張りではないだろうか? 多くの舞台で名前をみる。 彼を初めて知った時はモーリス・ベジャールを連想してしまった。 バレエとは質が違うが、演者としての身体言語が似ているように思えたから、顔貌も。 40代後半に入っている今が絶好調なのかもしれない。 *歌舞伎座、 https://www.kabuki-bito.jp/theaters/kabukiza/play/738 *追記・・下記□8本も正月に観る。 □岸辺露伴は動かない(一巻〜六巻)■作:荒木飛呂彦,出演:高橋一生,飯豊まりえ他 □柳生一族の陰謀■原案:野上龍雄ほか,脚本:大石哲也,出演:吉田鋼太郎ほか □シンデレラ■演出:マシュー・ボーン,出演:アシュリー・ショー,アンドリュー・モナガン,ミケラ・メアッツア他 ■どれも楽しく観ることができて選択は正解だった。 「 シンデレラ 」はこのブログに感想を載せた。 「柳生一族の陰謀」は徳川家光暗殺の話だが、歴史上の権力者が偽物に入れ替わる可能性は低くないだろう。 なりすまし以外にも誰が親か?誰の子か?を含めれば、遡る歴史に生物的繋がりの意味は薄い。

■シンデレラ

■演出:マシュー・ボーン,出演:アシュリー・ショー,アンドリュウ・モナガン,ミケラ・メアッツア他 ■Streaming+・配信,2021.11.5-2022.3.31(サドラーズ・ウェルズ劇場,2017.12.16収録) ■ザ・ブリッツの実写映像から入っていく。 1940年、大空襲下のロンドンが舞台だ。 シンデレラの家はてんやわんやである。 兵士の出入りは多いし街は混乱の極みだ。 そこに空襲警報が鳴り響き燃え盛る夜空に飛行機の影がみえる。 このような状況下の為かダンサー達の動きが大きく荒々しさがある。 戦時中の雰囲気を出す為の振付にみえる。 空襲の合間に舞踏会場が作られ兵士や市民そして継母と姉たち、遅れて魔法使いに連れられたシンデレラが集まってくる。 会場はどこかいかがわしさもある。 彼女は一人の兵士と恋に陥りベッドを共にする。 午前0時に再び空襲に見舞われ舞踏会場は消え失せ皆散り散りになってしまう。 後日、兵士は彼女が忘れていった片方の靴を持って地下鉄や娼婦街などを探し回るがやっと病院にいるシンデレラに再会することができる。 そして二人は友人たちに見送られながら列車でロンドンから離れる・・。 シンデレラと言うより戦時下での男と女の出会いを描いた恋愛物にみえる。 兵士も主人公も並の男と女だ。 明日の命がみえないなか、魔法使いがいなくても彼女は別の男と出会っていたはずである。 物語の必然も偶然も溶解していくような舞台だった。 *映画com、 https://eiga.com/movie/89717/