■笑顔の砦

■作・演出:タニノクロウ,出演:井上和也,FOペレイラ宏一朗,緒方晋ほか,庭劇団ペニノ
■吉祥寺シアター,2022.9.10-19
■舞台には身窄らしい長屋の二部屋が並んでいる。 下手は漁師の船長の部屋。 ここで同僚と一緒に食事もしている。 カネは無さそうだが人生を謳歌しているようです。 上手の部屋は新たに引っ越してきた父と娘、父の母の三人家族。 母は認知症らしい。 家族の崩壊が見え隠れする。 そして二部屋で物語が同時進行していく。 
・・船長は隣の家庭を覗き見した後にふさぎ込んでしまう。 身近な<現実>を見てしまったためです。 自身の将来を考えてしまった。 しかもテレビでC・イーストウッドの「荒野の用心棒」(?)を観たのでなおさらです。 自身の孤独も考えてしまった。 しかし同僚のくだらない笑いで船長は救われます。 隣の家族も食事で笑顔が戻り幕が下りる・・。
調理や食事の場面が多い。 でも上手くまとめています。 「ただ食って、ただ飲んで、・・」。 日常生活の裂け目から現代人の不安や孤独が見えてくる。 「この人生、酒のツマミになればいい」が舞台の結末です。 追い詰められているが思い切りの良い人生ですね。 「笑顔の砦」が「笑顔が砦」になっていました。
今日の客席は老若男女にばらけていました。 このような観客席も近頃珍しい。 でもC・イーストウッドの映画を知らない客は煮え切らなかったと思います。 別作品を重要な場面に挿入するのは難しいですね。 E・ヘミングウェイも同じでしょう。 イーストウッドが大好きな私には逆に舞台が膨らみましたが。
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