■天の敵

■作・演出:前川知大,出演:浜田信也,安井順平,盛隆二ほか,劇団:イキウメ
■本多劇場,2022.9.16-10.2
■粗筋を読まないで観たのは正解でした。 イキウメは特にそうですね。 牛蒡のバルサミコ炒め、豆腐・長葱・人参と発芽玄米の混ぜご飯。 客席にも美味しい匂いが届きました。
その匂いが消え、次第に緊張が高まります。 主人公長谷川卯太郎の120年の過去が劇中劇を伴って語られる。 役者の動きは少ない。 しかし存在感がありますね。 緊張は終幕まで続く。 良質なSF小説を読んでいる気分です。
でも最後に、鰻の話で緊張が壊れてしまった。 主人公と医師夫婦の行く末は、舞台では演じられないが、凡庸です。 このまま「ポーの一族」として生きていく手もあった? これでジャーナリストでありALS患者の寺泊満が思い悩んで冷蔵庫の扉を閉める場面が強く浮き出ました。
終幕の流れから「天の敵」の意味を噛みしめました。 人間の健康や寿命のことを、生物としての生と死をです。 久しぶりに血肉に響いた舞台でした。 カーテンコールの拍手が大きかったですね。 流石です。