2017年4月24日月曜日

■フィガロの結婚

■作曲:W・A・モーツァルト,指揮:C・トリンクス,演出:A・ホモキ,出演:P・スパニョーリ,A・ミコライ,A・パルカ,中村恵理,J・クルコヴァ,演奏:東京フィルハーモニ交響楽団
■新国立劇場・オペラパレス,2017.4.20-29
■白い立方体の内側は床が傾いているから目眩がする。 ダンボール箱が転げ落ちないか気が散ってしまう。 しかも幕開き顔見世は歌手たちがバラバラにみえる。 演奏と歌唱が馴染まない。 1幕のスザンナ中村絵理はここで全力を出し切るべきね。 外国歌手のパワーに負けた印象を与えてしまうからよ。 2幕は慣れてきたせいか舞台に集中できたわ。 スザンナとケルビーノ、伯爵の重唱で一気に物語世界へ。 終幕まで一気通貫だった。 ピエトロ・スパニョーリのインタビュを事前に読んでいたから当時の時代背景を考えながら伯爵の歌唱を楽しんだわ。
*NNTTオペラ2016シーズン作品
*劇場サイト、http://www.nntt.jac.go.jp/opera/performance/9_007961.html

2017年4月21日金曜日

■城塞

■作:安部公房,演出:上村聡史,出演:山西惇,椿真由美,松岡依都美,たかお鷹,辻萬長
■新国立劇場・小劇場,2017.4.13-30
■牢獄のような薄汚い部屋は両側の壁が遠近法で造られていて安定感ある砦のようにみえる。 そして奥窓の赤いカーテンへ目が落ちて行きます。
男は男の父が朝鮮脱出劇をなぜ演じて来たのか明快に応えます。 戦争と企業の関係、そこから見えてくる国民の戦争の立ち位置をです。 男の妻や踊り子も男の裏を暴き出す。 謎は一つも無い。 昨年観た眞鍋卓嗣演出と思わず比較してしまいました。 面白さの質が違うのです。 今回ここまでハッキリ言い切っているのは社会に余裕が無くなっているからでしょう。
50年代のSF、「砂の女」から始まる衝撃の60年代作品、70年代「箱男」から「方舟さくら丸」の80年代中頃までのヒット小説を面白く読んだ時期があったが、「城塞」の二公演をみて安部公房が大きく一回転して始まりに戻ってしまったように感じる。 「終わりの始まり」の一つの形かもしれません。
*NNTTドラマ2016シーズン作品
*劇場サイト、http://www.nntt.jac.go.jp/play/performance/16_007980.html

2017年4月18日火曜日

■ハングメン Hangmen

■作:マーティン・マクドナ*1,演出:マシュ・ダンスタ,出演:デヴィト・モリシ,アンディ・ナイマン,ジョニ・フリン
■TOHOシネマズ日本橋,2017.4.14-20(ウィンダム・シアタ,2015年収録)
■死刑執行人を一般市民に担当させるとは驚きです。 元執行人である主人公はパブの経営をしている。 20世紀中頃の英国地方が舞台です。
死刑執行場面から始まるのですが、その後に続く日常でのパブ店主と客たちの噂話が面白い。 主人の妻と娘も加わるが洗練さに無縁な地方のオバサンとムスメを演じます。 北部や南部を貶すことやビールの好き嫌いなどを聞いていると英国の素顔がみえてきます。 またシャイやユーモアの言葉の遣り取りも流石イギリスです。 大戦の話からドイツ野郎へ、フランス人の祈りの行動、モンゴメリ元帥からニーチェ、キェルケゴールまで話題に上る。 死刑執行時代の店主のインタビュー記事も当時の噂の質を見ることができる。
後半は誘拐殺人犯と間違えて青年を絞首刑にしてしまう。 いかにも芝居に戻った流れになってしまった。 60年代英国片田舎のパブを覗いてきたような楽しさが残ります。
*1、「スポーケンの左手」(小川絵梨子演出,2015年)
*NTLナショナル・シアター・ライヴ作品
*映画comサイト、https://eiga.com/movie/86629/

2017年4月17日月曜日

■エレクトラ Elektra

■演出:鵜山仁,出演:高畑充希,村上虹郎,中嶋明子,横田栄司,仁村紗和,麿赤兒,白石加代子
■世田谷パブリックシアタ,2017.4.14-23
■古手と若手の演技や科白の落差に最初は戸惑ってしまった。 特にエレクトラはギリシア舞台に現代が侵入してきた感じだ。
解説のような科白が続くが母クリテムネストラと娘エレクトラの対面の場から調子が出てくる。 なぜ夫アガメムノンを殺したのか? 母は女の憎愛の正当性を主張するが娘は殺人という一般論で反駁するだけである。 我慢のしどころが続くが、母を殺した後のエレクトラと息子オレステスの空虚感が上手く表現されていた。 クリテムネストラとアガメムノンの白石加代子と麿赤兒古手二人は後半ギリシアの神々として再登場する。 ここがまた楽しい。 終幕は新興宗教のような世界で終わるが突飛にはみえなかった。 期待に沿う面白さがあった。
*作品サイト、http://mtp-stage.co.jp/elektra/top.html

2017年4月16日日曜日

■オテロ Otello

■作:G・ヴェルディ,指揮:P・カリニャーニ,演出:M・マルトーネ,出演:C・ヴェントレ,S・ファルノッキア,演奏:東京フィルハーモニ交響楽団
■新国立劇場・オペラパレス,2017.4.9-22
■この作品は出来栄えに左右されない。 いつも感動するの。 嫉妬を極限までに煮詰めているからよ。 この舞台は身体より歌詞からくる嫉妬が強い。 オテロの化粧が濃くて繊細な表情がみえないためもある。 ロボットのようなオテロだわ。 歌唱も嫉妬の濁りがない。 逆に彼の苦しみが現れていたのは硬直な身体のお蔭かもしれない。 デズデーモナも淡々と熟していた。 両者の均衡から来る安定のある内容だった。
幕開き、客席後方からのオテロの登場は最高ね。 でも旗持ちがいなかったのは残念。 花火や火の使い方も言うことなし。 ただし水はコスパが悪い。 舞台中央に一軒家を置いたのは型破りで面白い。 舞台の面に小物を置くと集中し難くなるからやめて! ところで今日は客の入りが少なかったようね。
*NNTTオペラ2016シーズン作品
*劇場サイト、http://www.nntt.jac.go.jp/opera/performance/9_007960.html

2017年4月15日土曜日

■忘れる日本人

■作:松原俊太郎,演出:三浦基,劇団:地点
■神奈川芸術劇場・中スタジオ,2017.4.13-23
■小舟の下に隠れていた役者がはい出して横摺足でラップのようなリズムで喋り始める。 小舟を神輿にして担ぐ時は観客も手伝いに参加するの。 ちょっとしたお祭り騒ぎね。 科白は社会や政治の言葉が含まれるけど断片的でまとめられない。 情報量過多のため世界を有機的に繋げられない現代社会のようだわ。 「忘れる日本人」だと忘れたことも意識しなくなってしまうようね。 このラップリズムは新しく取り入れたのかしら? 地点独自のリズムまでに磨かないと情報と同じでラップという均一化に絡めとられてしまう。
*劇場サイト、http://www.kaat.jp/d/w_nihonjin

2017年4月10日月曜日

■ 南島俘虜記

■作・演出:平田オリザ,劇団:青年団
■こまばアゴラ劇場,2017.4.5-23
■緑に囲まれゆらゆら揺れる天井の中にいると心休まりますね。 次の戦争の話らしい。 南島に収容されている日本人捕虜たちが主人公です。 彼らは拘束されているが結構自由にすごしている。 日本社会の縮図のようです。 でも前の戦争の軍歌が歌われiPodの配給もあるので時代も場所もあやふやになっていく。
これは「新・冒険王」の続編でしょう。 「新々・冒険王」と言ってもよい。 冒険王は捕虜に内心はなりたがっているのでは?
退屈についてチラシに書いてある。 しかし舞台に退屈は感じられません。 平田オリザの作品は退屈が見えない。 台詞と台詞の間に緊張感があるからです。 この緊張から役者の存在が立ち現れ、この存在が退屈を演じて観客は<退屈>を感じる。 でも舞台に表れている退屈は世間の延長である捕虜収容所に飽きている(楽しんでいる)だけにみえました。
坂口安吾の戦争の話も退屈とは言えない。 この舞台のように戦争で退屈は描けない。 退屈は人生にとって最高の贈り物の一つだからです。 戦争とは逆の方向にあるものです。 でも退屈な舞台は勘弁してください。 
*劇場サイト、http://www.komaba-agora.com/play/4422

2017年4月8日土曜日

2017年4月2日日曜日

■どぼん

■演出:中村しんじ,振付:川野眞子,出演:ナチュラルダンステアトル
■座高円寺,2017.3.31-4.1
■ダンステアトルを演劇舞踊と訳すらしいがストーリーのあるダンスに近い。 もちろん科白はない。 通勤途中のサラリーマンがホームから転落して別世界に行く話である。 そこは昭和時代の田園風景が広がっている(らしい)。
田圃の小川で鯉や鮒、蛙やザリガニと踊る楽しくそして少し怖い舞台である。 子供時代と生き物の良き関係を「・・なくしたものの後悔と未来に続ける営み」として表現していく。
振付は大袈裟だが若いダンサーたちに似合っている。 ダンステアトルらしい楽しい動きだ。 ジャワ島出身ダンサーのリアントの独特な表現がまた素晴らしい。 島の生活と踊りが融合・昇華し宗教的な域に達している。 アニメーションも使う。 ゆるキャラのような被り物を付けて小川の生き物を演ずるので子供も喜びそうな内容である。 居酒屋の赤提灯や魚の姿造りをみたら「千と千尋の神隠し」を思い出してしまった。 この舞踊団は「文化芸術による子どもの育成事業」も行っている。 当時の田圃や小川で遊んだ人にはノスタルジアを若い人には小動物と接する身体的想像力をダンスを通して与えてくれる作品だ。
*作品サイト、http://natural-dance.com/cn2/pg208.html